あれから1週間の日が経っていた。
この1週間は凄く大変だった。
学校終わり→バイト→曲作り&勉強。
これを繰り返し。
バイトがない日は、最低限弦巻と奥沢と集まって曲作り。
松原さん達は自主練をしていると言っていた。
このように意外にも、真面目にバンド活動をしていた。
そして今はと言うと…………
こころ「あ、八幡!美咲!
あたし、この最後の所はやっぱり「わーー!」って楽しい感じで終わりたいわ!!」
八幡「最後の所?…………ふぅ。
……ココか。」
美咲「こころ!!コレがラストだからね!!
もう何回歌詞変えてるのかわかってるの!?」
………そう。
俺と奥沢は弦巻の家にいて、歌詞の最終確認をしているのだが………
コイツめちゃくちゃ歌詞を変えてくる。
奥沢の言う通りもう何回変更してるか数えるのを諦めたレベル。
美咲「………最初は「グワーッ」て感じがいいとか言ってたけど、
「わーー!」と違いあるの?」
八幡「知るか。コイツが言ってるんだから違いがあるんだろ。
…………でもまぁ。コレだけやればな……」
美咲「………うん。凄く大変だったけど……」
八幡、美咲「弦巻(こころ)語は大体わかってきた。」
美咲「ココはこっちの歌詞の方がいいかな?」
八幡「ん…………そうだな。それでいいと思うぞ。
……この最後のところは、コレでいいよな?」
美咲「うん、それでいいと思うよ。
……………ってことはようやく、」
八幡「あ、あぁ。」
八幡、美咲み「やっと終わった………」」
こころ「あたしにも見せてちょーだい!!」
…………疲れた。
作曲の遥か倍は疲れた。
まぁ、作曲は鼻歌があったから思ったより楽だったんだけども。
こころ「うんうん……………と〜ってもいい!!
と〜っても素敵よ!!2人とも凄いわ!!ありがとうっ!」
美咲「あたし達も改めて見よっか………」
八幡「………それもそうだな」
正直色んな歌詞を書いたから何が使われてたか、ごちゃごちゃになってる。
八幡「……………コレ、俺たちが書いたのか………?」
美咲「あ、あははは…………
自分で言うのもなんですけど凄い歌詞。」
わっわっわーい!とか、ここボーカル以外の俺たちのパートだよな?
ちょっと………いや、かなり恥ずかしいぞコレは?
いや、女の子が歌う分には構わないと思うけど、俺は…………口パクでいいや。
こころ「口パクはダメだわ!折角一緒に作ったのよ?
八幡も歌うのよっ!」
美咲「…………??」
八幡「おい、なんで口パクの事知ってんだよ。
声に出してなかったぞ。」
怖いよ怖い。
え、脳内覗けるの?思考読めちゃうの?
こころ「それじゃあ早速、みんなを呼んでスタジオ練習しましょう!!」
×××
曲が完成してから5日経つ。
あれから俺は、放課後弦巻たちとは会っていない。
他のみんなも自主練などで頻繁には集まっていないらしい。
そして今俺が何をしているかと言うと…………
八幡「いらっしゃいませー」(棒)
CiRCLEで絶賛バイト中。だけども暇だ。
お客さんは割と来るけど、忙しい程ではない。
この間にもキーボードの練習をしたいものだ。
バイト終わりにも少しだけ、月島さんに頼んでスタジオをタダで借りて練習する時もある。
「八幡君、キーボード弾くの!?え、なんで!!もしかしてバンドやってる!?」
と質問のマシンガンを食らったので正直に話した。
バイト終わって暇な時はタダでスタジオ貸してあげるからね。と言われた時は泣くかと思えた程だ。
ただし条件は、ライブする時はココ(CiRCLE)でじゃんじゃんやってね!
と言われたくらい。願ったり叶ったりだ。
そして、俺たちの初ライブ場所はココに決まったしな。
【ウィーン】
蘭「モカ、着いたよ。結局食べ終わらなかったじゃん。
やっぱりパン買いすぎ。」
ひまり「そーだよ!!食べ終わってないじゃん!」
モカ「味わって食べてるからね〜」
つぐみ「ふふっ。
モカちゃんはやまぶきべーかりーのパン大好きだもんね!」
巴「確かに美味しいけど、モカの場合は好き………というか、あのパンがないと生きていけない位のレベルだと思うぞ………」
それにしても、ライブまでに全員で合わせて確認取らなきゃいけないけど、アイツらは大丈夫だろうか……?
いや、俺も人の心配をしてる場合ではないのだが。
いくら、昔にピアノ歴があったとしても習ってた訳でもないし、キーボードとピアノは似てても似つかないからな。
松原さん以外音楽は初心者だし…………いや、瀬田先輩は演劇で軽くギターやってたって言ってたけどそれだけだろうしな。
巴「今日もスタジオ予約してたんだよな?」
ひまり「うん!バッチリだよ!
すみませ〜んっ!17時から予約してた上原ですっ!
…………ってあれ?」
モカ「あー、この人アレじゃない?
えーと………あの時の……」
蘭「この前公園であった人………」
つぐみ「あ、本当だ!
比企谷さん……だよね?」
そもそも弦巻が突然すぎるんだよな。
バンド結成してから数週間でライブやろうって、無茶苦茶すぎる。
全員が経験者ならまだしも、ほとんど素人だぞ。
コレで失敗でもしたらこの先良くないんじゃないの?
…………めちゃくちゃ不安になってきた。俺が心配しすぎなだけ?
蘭「あの、すいません。」
つぐみ「あ、あれ………?」
巴「私たちに気づいてないぞ………」
モカ「どーする?クレームでも入れちゃうー?」
ひまり「いや、流石にそこまでじゃ………」
蘭「……………あのっ!!すいません!!」
【バン!!】
八幡「うおっ!?」
え、何!?
急に机叩かれたんだけどもしかしてヤクザ?
………あ、バイト中だわ。考えに没頭し過ぎてて忘れてた……
八幡「す、すいませんでした。
えっと…………ご要件は?」
絶対さっきご要件言ったと思うけど、聞くしかない!
嫌だなー、顔見れないなー、怖い人だったらどうしよう。
巴「蘭…………いくら知ってる人だからってやりすぎじゃないか?」
モカ「いやいや〜、蘭。今の最高だったよー」
蘭「べ、別にそんなつもりじゃっ!」
…………なんか盛り上がってらっしゃる。
要件ないなら帰ってもらってもいいですかね?
恐る恐る顔を上げると5人の女子がいた。
………はて?どこかで見たような気もするが、気の所為だな。
ひまり「えっと、17時に予約してた上原です!」
つぐみ「あ、あと…………
あのー、比企谷さんですよね?」
あ、17時に予約してたんですね。それはすみません………
えーと、うえはら………あ、あった。コレだな。
それと比企谷?2つも予約してんのか……?
てか、比企谷って俺と同じ苗字だな。
俺と同じくひきたにとか呼ばれたりするのだろうか……
少し気になるところだ。
八幡「ご予約の上原様。
確認が取れましたので、あちらのスタジオでお願いします。
それと、比企谷という名前の人は予約にはありませんでしたけど……」
つぐみ「………えっ!?あ、ち、違います!!
予約じゃなくて、あなたの名前です!」
あなたの名前?
………ってことは俺の名前?
いや、確かに比企谷だけど………なんで知ってんの?
名札は付けてないんだけど?
巴「よっ!久しぶり。
比企谷はココで働いてたんだな」
蘭「そ、そのっ!さっきは机叩いてごめん………
ただ、ちょっと、無視されたから………」
モカ「おー!蘭が謝ってらっしゃる〜。
まぁ、正直言っちゃうと蘭はあまり悪くないんだけどね〜」
えっ!?何!?知り合いなの?
会話がナチュラルに進んでるからもうビックリ。
…………あ。思い出した…………
八幡「…………お前らか」
この前のやまぶき事件の時に一緒にいた5人組だ。
そう言えばあの時、自己紹介してたな。
記憶力には自信があるが、すっかり記憶の片隅にあったわ。
てか、そもそも顔をあんまり見てなかった。
巴「お前ら?おいおい、あたし達はお客さんだぞ?
そんなこと言っていいのか?」ニヤニヤ
ひまり「と、巴がSモード的なのに入った………」
め、めんどくせー。
さっさとスタジオに行きやがれ………
八幡「すいませんでした。あちらへどうぞお客様」
モカ「なんか暇そうだね〜。相手してあげよっか〜?蘭が〜」
蘭「ちょっ!?モカ!!」
八幡「いや、結構です。」
モカ「あー、残念。蘭振られちゃったね。」
蘭「はぁ!?別に振られてないしっ!
…………ちょっとモカ、こっちに来て。話があるから。」
モカ「え、えと、蘭〜?
ちょっと顔が怖いよ…………?」
巴「今のはモカが悪いな。」
つぐみ「あ、あははは」
モカ「そんな〜、モカちゃんは無実だ〜。」
なんなんだコイツら。
仲良しなのは伝わったからさっさとスタジオに行けばいいんじゃない?
しかもあの時赤メッシュに少し睨まれたし…………
ひまり「比企谷さんはココで働いてたんですね。」
八幡「お、おう。少し前からな……」
え、何?スタジオ行かないの……?
赤メッシュが銀髪をシバくまでいるの?
赤ロングは傍で笑いながら見てるだけだし。
髪の特徴がすげーや。
つぐみ「そうなんですね!
あたし達も結構来てるんですけど全然知らなかったです!」
まぁ、そりゃあ会わなかったからな……
八幡「そ、それよりもアレはあのままでいいのか………?」
本当にこんな所で何をしているのだろうか……
ひまり「大丈夫………です。
けど、他の人の邪魔になるようだったら直ぐに辞めますので!」
つぐみ「うん!コレも『いつも通り』だよね!」
『いつも通り』のフレーズの部分が若干嬉しそうだったのを見逃さなかったぞ。
………にしてもコレがいつも通りって、それはそれでどうかと思うんですが。
蘭「………お待たせ。じゃあ行こ」
巴「よっしゃー!早くドラムしたいぜっ!」
ひまり「今日は何からやろっか……!」
つぐみ「モ、モカちゃん………大丈夫?」
モカ「モカちゃんの心配をしてくれるのはつぐだけだよ〜。
蘭に怒られたよ〜」
八幡「……………」
…………変な奴らだな。
てか、バイト先で知り合いに会うのってなんかちょっと。
でも何かは分からないけどコレからも出会うような…………
ほんと、なんだかなぁって感じだ。
×××
今日は土曜日。
今日のバイトは午前中で終わりなので俺はもう家に帰宅している。
午後からは久しぶりに弦巻たちと一緒にライブに向けての練習だ。
今の時刻は14時30分。
15時にCiRCLE集合なので家を出るとしようか。
八幡「じゃあ、ちょっと出かけてくるわ」
小町「あ、また出かけるの?もしかしてキーボード練習?」
八幡「まぁ、そんな感じだ。
もうすぐライブだからな。」
小町「そっか!
小町が言うのもなんだけどあんまり無理はしないでね!」
小町に心配をさせる訳には行かないな。
まぁ、無茶をしろって言ったのコイツなんだけど……
でも可愛いから許しちゃう!やだ。俺ってば甘い。
八幡「へいへい。夜には帰ってくるからな。
じゃあ、行ってくる」
小町「行ってらっしゃーい!」
×××
この角を左に曲がったら…………
こころ「あー!八幡やっと来たわねっ!」
目的地のCiRCLE。
そして、もう既に弦巻たちはいた。
…………時刻は14時48分。
まぁ、遅刻じゃねーよな。
八幡「いや、やっとって言われてもまだ時間前なんだけど?
そんなに前にいたのか?」
はぐみ「こころんと薫くんとはぐみは14時には着いてたよ!!」
薫「子猫ちゃんを待つのも私の役目だからね。」
14時!?え、なんで!?
1時間前からいるの?
はえーよ。
いや、待ち合わせの時間より早く来るのは全然悪いことではないけどさ。
1時間前行動はやりすぎでは?
………まさか、コッチの2人も?
美咲「…………勘違いして欲しくないから一応言うけど、あたしと花音さんは今来たばっかりだからね。」
花音「あ、あははは。
私たちも15分前はちょっと早いのかな?って思ってたんだけどね。」
ちょっと?奥沢さん?
まだ何も言ってないよ?
視線で気づいたんだよね?そうだよね。
こころ「それじゃあ、早速スタジオへ行くわよ!!」
×××
CiRCLE店内にて
まりなさん「あ、来た来た。待ってたよ!!!
午前はお疲れ様、八幡君!」
八幡「……うす。どうも。」
はぐみ「あ、まりなさん!!
今日もよろしくおねがいしまーす!!」
ロビーには月島さんがスタンバってた。
暇だったのか………
まりなさん「うんうん!今日もすっごく元気いいねー!
それじゃあ、ここのスタジオになるよ!
練習頑張ってね!!」
こころ「早くスタジオで歌いたいわ!!
いぇーい!!1番乗りー!!」
はぐみ「あ、こころん待ってよー!!」
美咲「ちょ!?危ないから走らないで!!」
八幡「……………小学生か。」
少なくとも高校生には見えないわな。
あ、そう言えば………
八幡「おい、奥沢。
ミッシェルはどうすんの…………?」
そう。DJをするのは奥沢ではなくミッシェル。
…………いや、奥沢なんだけどさ。
奥沢=ミッシェルという公式が成り立たない奴らがいるせいで、色々とこんがらがるな。
奥沢「あー、それはですね…………」
黒服「奥沢様。
準備が整いましたのでどうぞこちらへ。」
…………急な黒服の登場に少し驚く。
でも、そういう事か……
美咲「と、言うわけなんです………
黒服の人が持ってきてくれるんですよ。」
流石黒服だな。
…………すっごい今更だけどミッシェル着てライブ出来んの??
×××
花音「な、なんか練習………なのに、緊張してきちゃった……」
薫「緊張する事など何もないよ、花音。
練習は何度ミスしてもいいんだよ。」
おー、瀬田先輩気が利くな。
松原さんは恥ずかしがり屋だからな。(個人的な意見だが)
まぁ、俺も緊張してないとは言わないんだけどさ………
はぐみ「………あれ?そう言えばみーくんは?
みーくーん!!おーーい!」
こころ「あら、本当だわ。
どこに行ったのかしら?」
あー、そう言えば言ってなかったわ。
…………てか、なんて言えばいいの?
帰ったって言えばいいの?
ミッシェルがいる間、奥沢が来ることは無いぞ?
もう適当でいいや。
八幡「あー、アレだ。
奥沢はトイレだってよ。長くなるらしいぞ。
とりあえずミッシェルは呼んだから心配しないでって言ってたぞ。」
花音「は、八幡君!?」
はぐみ「お腹でも壊したのかな?」
薫「そういう事なら私たちで頑張ろうか。」
【ガチャ】
扉が開く音がした。
扉を開けた人物は…………人物じゃねーか。
ミッシェル「やっほー。ミッシェルだよー。」
ピンクの巨大クマが現れた。
………その棒読みどうにかならないのか奥沢。
3バカ「ミッシェルー!!!」
ミッシェル「や、やぁ。みんな元気だな〜」
こころ「と〜っても、元気だわ!!」
はぐみ「みーくんが少し調子良くないみたいだけど…………」
ミッシェル「……………ん?どういうことかなー?」
八幡「…………げっ。」
薫「美咲は今トイレにいるのさ。
少し長くなるらしいよ。」
ミッシェル「へ、へー。そうなんだぁ〜。
……………比企谷くん、後で……………ね?」
その、表情が変わらない着ぐるみで怖い事言うなよ!
めちゃくちゃ怖いから!
………いや、だって、トイレって理由が1番帰ってきやすいだろ!
八幡「お、おー。ミッシェル…………
久しぶりだな!
奥沢は…………トイr」
【バン!!】
花音「美咲ちゃん!?」
はぐみ「わぁぁー!!ミッシェルがはちくんをっ!!」
薫「八幡!しっかりするんだ!!」
こころ「はちまん!!大丈夫!!?」
ミッシェル「わー、ごめーん。
………背中に虫がいたからさ。」
こっわ!!ミッシェルこっわ!!
背中に虫っていうか、俺自体を害虫扱いしただろコイツ。
にしても痛い。
着ぐるみ越しのフワフワした手なのに、痛かった。
アイツは怒らしちゃダメだ。
八幡「ぜ、全然大丈夫だ。
さ、サンキューなミッシェル……………」
奥沢に悪かったと、目で言ってみる。
「ぷいっ」と顔を逸らすミッシェル。
機嫌を損ねたクマって鮭でもあげなきゃ許してくれねぇのかな……