彼ら彼女らは青春を謳歌する……?   作:えーく。

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黒服たちは突然に

今日は水曜日の放課後。

ライブまで残り3日を切り、文化祭までは4日を切った。

 

 

 

 

こころ「はちまーん!!

美咲が凄いのよっ!!マジックできるの!!」

 

 

美咲「ちょっ、こころ!

『できるの!!』じゃないでしょ!

あんたも出来るようにならなきゃいけないんでしょ!」

 

 

 

 

花咲川学園の文化祭、通称『咲祭』

本番まで残り数日のため、放課後は学校中が忙しそうに音を立てている。

 

 

 

こころ「はちまーん!見てみてー!」

 

 

 

俺たちのクラスはやることが多いため、準備もそれなりにギリギリまでやるかと思いきや、クラスの奴らが優秀…………というか、文化祭テンションで物凄いスピードで取り組んでいた。

 

 

こころ「ほら!!美咲のマジック何回やっても成功するのよ!」

 

 

 

………工作系の準備は既に終わってしまった為、俺のやることは基本的に無くなっていた。

残りはそれぞれの仕事担当の取り組みになるので、当日に仕事のない俺は覚えることが無いため、暇を持て余していた。

 

帰っていいかな?委員会も今日無いし。

まぁ、これで帰ったらクラスの奴らには白い目で見られ、次の日には黒板にありったけの悪口と共に俺の椅子と机は無くなっているのだろう。

 

 

こころ「はちまんが全然美咲のマジック見てくれないわね?

こんなにも凄いのに!」

 

 

まぁ、この学校にはきっといじめはないのだろうから?

その心配はいらないよな。うん。

そーっと帰ればバレないだろ。バレると思って行動出来ないのは自意識過剰だ。

大丈夫、お前はバレない。誰も気にしてない。お前が消えても変わらない。

 

…………うん、やめよ。自分で言ってて悲しくなってきた。

今日の晩御飯でも考えてよう。

でも、小町が作ってくれれば何でも美味いからなー。

あ、これ八幡的にポイント

 

 

八幡「たかぁいいだっ!」

 

 

美咲「比企谷君忙しそうだね。

でも急に声を上げるとビックリするからやめて欲しいな。」

 

 

今の状況を説明すると、教室の4つの机をそれぞれ2つずつ向かい合わせにくっ付けて座っている。

グループで取り組む授業する時とかに机をくっつけるアレだ。

 

弦巻と奥沢が向かい合わせ、俺が弦巻の隣に座っているのだが………

奥沢に机の下から足を踏まれた。結構強く。 

今も奥沢は喋っているが、目が笑ってない笑顔で凄く怖い。

 

 

 

美咲「………はぁ。

さっきからこころがずっと私のマジックを、目をキラキラさせながら見てくるの!

途中からむず痒くなってきたというか、恥ずかしくなってきたというか………。

こころが比企谷くんに見せるまで永遠とやらされてるんだから早く見て!」

 

 

 

八幡「待て待て。

弦巻が目をキラキラさせてんのはいつもの事だろ。」

 

 

美咲「そこっ!?

いや、そうだけど……………てか、何誤魔化そうとしてるのかな?

早く見ろ。」

 

 

 

怖っ。

マジックを自分から見ろって許容してくるとかどこのパリピだよ。

まあ弦巻の反応が、小さな子どもと同等のピュアっピュアなものだから、相当恥ずかしくなっているのだろう。

本番も小さな子ども結構来ると思うし、練習と思えばいいのでは?

 

 

 

美咲「えー、じゃあ始めます………

まずはこのスペードのエースを…………」

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

こころ「…………………」わくわく

 

 

 

美咲「……………あ、待って。無理、無理ですコレ。

めちゃくちゃ恥ずかしいじゃんコレ。

まじまじに見られるとやってられないよコレ。」

 

 

 

八幡「は?お前が見ろって言っだぁ!!」

 

 

 

美咲「ん?何かな?」

 

 

 

八幡「いや、だから…『ん?何?』ヒ、ヒェ……なんでもないです。」

 

 

 

こっわ。

てか、理不尽極まりないだろコイツ。

気持ちは分からなくもないがな。

 

 

美咲「ダメだ………。

小さい子なら大丈夫だけど、同級生の前でやるのは凄い恥ずかしくなる…………」

 

 

八幡「おい、弦巻弦巻。

弦巻忘れてっから。アイツあれでも一応同級生だから。」

 

 

 

でもそうか…………

奥沢が言ってるのは見た目ではなく精神的年齢という意味なのだろうな。

それなら納得。むしろ正解すぎる。

 

 

先生「弦巻〜。弦巻はいるかー!」

 

 

先生?

そして、なんで弦巻呼んでんの?

 

 

こころ「呼んだかしら!」

 

 

 

先生「お前がさっき言ってた、2階の広い階段の踊り場は文化祭の時使っていいか聞いただろ?

普通の階段の踊り場は狭いし危ないからダメだが、あの広い踊り場なら別に問題無いみたいだが何をするんだ?」

 

 

 

こころ「それは当日のお楽しみよっ!」

 

 

 

八幡「いいのかそれで。」

 

 

 

美咲「ていうか、こころが事前に許可を貰ってる事に驚いてるんだけど。」

 

 

 

八幡「たしかにそれは驚きだな。

おじいちゃん嬉しいぞ。」

 

 

 

美咲「………ん?」

 

 

 

さっきからかるーく、俺たちで弦巻の事煽ってる気がするんだけど気のせいだよな。

いやでも煽ってるというか、事実を言ってるだけだしな。

 

 

美咲「………………え」

 

 

奥沢と俺は被害者というか、迷惑かけられてるからな。

まあ最近は迷惑とも思わなくなくもないが、直接言うと恥ずかしいから絶対に言わないけど。

 

 

美咲「…………ひ、ひきがやくん。」

 

 

 

八幡「………どうした?」

 

 

 

なんか心無しか奥沢がケータイ持って震えてる………というか、顔色が悪い気がするんだけど?

何?ケータイの画面割れた?

 

 

美咲「こ、これ………」

 

 

 

八幡「は?なんだ………よ………っ!?」

 

 

 

俺たちが見たのは、奥沢宛に送られてきたメールの相手が黒服だったって事だ。

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

薫「やぁ、子猫ちゃんたち。

今日も私の出迎えをしてくれるなんて、嬉しいよ。」

 

 

 

完全下校の時間が過ぎたので、俺たちはこのままライブ練習のため、CiRCLEへ向かう途中に瀬田先輩がいる羽丘学園に寄っていた。

 

てか、瀬田先輩大きい紙袋持ってるけどあれ何?

 

 

美咲「まあCiRCLE行くまでに通りかかりますからね。」

 

 

 

おいそう言ってやるなよ。

瀬田先輩以外は花咲川で一緒なんだから寂し…………くはないか。

何よりこの人には、たくさんのファンがいるし。

 

 

花音「薫さんは、劇をするんだったよね。

ギターの練習もあって、大変だったりしない?」

 

 

 

薫「もちろん大変ではあるけど、どちらとも私1人でやることではないからね。

私は私の出来ることをするだけだよ。焦ったって仕方ないからね。

かのシェイクスピア曰く、『賢明に、そしてゆっくりと。速く走るやつは転ぶ』と言うからね。」

 

 

 

花音「………うんっ!

私も薫さんのように頑張るねっ!」

 

 

 

松原さん感激じゃないですか。まあ今のは、かっこよかったな。

瀬田先輩は普段ポンコツ………いや、普段はカッコイイ?

というか、何で女子であんなにカッコイイんだよ。

俺にそのカッコ良さ分けて!少しでいいから!

 

 

 

はぐみ「こころん!

CiRCLEまで競走だよっ!」

 

 

 

こころ「負けないわよっ!!」

 

 

 

美咲、八幡「「……………」」

 

 

 

花音「あ、あれ?2人共……止めなくていいの?」

 

 

 

八幡「え?あぁ、まぁ、別にたまにはいいんじゃないんですかね?

室内で走ったら止めますけど、今はほら………外ですし?」

 

 

 

美咲「そ、それに、止まれって言って止まる2人じゃないじゃないですかー。」

 

 

 

美咲、八幡「「はははっ」」

 

 

 

花音「………??」

 

 

 

松原さんは知らなくていいんです。

ただ1つ言えることは弦巻、もしくは弦巻の近くの何かに盗聴器らしき物が仕掛けられてあることは確かで、それを聴いてるのが黒服ってことも確かってことです。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「CiRCLEの予約が埋まってる?」

 

 

 

はぐみ「うん。はぐみたちが来た時にはもう全部埋まってたよ!」

 

 

 

まりな「あー、みんなごめんねー!

もう今日は予約全部埋まっちゃってるんだ。

せっかく来てくれたのに申し訳ないよー」

 

 

 

美咲「いや、まりなさんが謝ることは無いですよ。

それは仕方のないことですし。」

 

 

 

花音「じゃ、じゃあ今日はどうする………?

ライブはもうすぐだし、このままだと………」

 

 

 

こころ「大丈夫よ!

私の家でやればいいわっ!」

 

 

 

美咲「まぁ、そうなるね……

こころがいいのなら遠慮なくやらせてもらおっかー。」

 

 

 

まりな「えっ?弦巻さんの家?

あー、有咲ちゃんみたいな蔵とかかな?」

 

 

八幡「あー、はい。まぁ、そんな感じですね。

どちらかと言うと蔵ではなく、城ですけど。」

 

 

口で説明しても信じ難いことだし、見たところで思考停止はすると思うから適当に流そう。

 

 

 

こころ「そうと決まれば早速行くわよっ!」

 

 

 

美咲「あー、じゃあ私1回帰ってもいい?

荷物とか置きたいし、着替えたいから。」

 

 

 

薫「私も今日文化祭の練習中に、子猫ちゃん達から貰った沢山の差し入れがあるから置いてから向かうとするよ。」

 

 

 

あー、その大きい紙袋に入ってるのって差し入れだったのか。

流石だ。

 

 

 

こころ「わかったわ!

それじゃあみんな、準備が出来たらいつでも来てちょーだい!」

 

 

 

八幡「じゃあ俺は少しCiRCLEに残って、月島さんにセトリチェック貰ってくる。」

 

 

 

美咲「あー、じゃああたしも」

 

 

 

八幡「いやいい、俺自転車だし。」

 

 

 

美咲「そう?じゃあお言葉に甘えさせて貰おうかな。」

 

 

 

花音「ご、ごめんね……?

2人にそういうこと任せちゃって………」

 

 

おっと…………松原さんが申し訳なさそうな顔をしている。

本当に優しいなー、天使だなー。

 

 

八幡「いやいいんですって。

好きでやって………はないな。流れ……というか、適材適所です。」

 

 

美咲「そうですよ。

それに比企谷くんはああ言ってますけど、意外と私たちこういうの嫌いじゃないので。」

 

 

 

八幡「おい。」

 

 

勝手に決めんなよ。

当然好きでやってはない………うん、そのはずだ。

じゃあ嫌いか?と言われたら、即答で嫌いではないと答えられるな。

 

……………嫌いじゃないじゃん。

 

 

 

美咲「それじゃあ後でね。」

 

 

 

はぐみ「ばいばーい!」

 

 

 

 

八幡「おーう。」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

奥沢たちと別れ、月島さんにセトリの相談を受けたが特に注意されることも無く、当日もこれで大丈夫と言われた。

思った以上に早く終わった。

俺は自転車なので普通に早く行けるのでは?

 

まぁ、集合時間も決められてないし、1度俺も家に帰るかな。

 

 

 

 

 

 

八幡「なんて思ってた時期もありました。」

 

 

 

紗南「お兄ちゃん、誰に向かって言ってるの??」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

CiRCLEの帰り道、公園を通りかかったところで、見覚えのある子たちから声をかけられた。

 

これが同級生とかだったら完全に気付かないふりして帰ってたのに。

俺ってば年下に甘いとか優しいなー。

 

 

そして、成り行きで家まで同行することに。

 

 

 

純「送ってくれてありがとうございます…………」

 

 

 

少し照れくさそうに言う山吹家の長男(多分)。

今思えばコイツらの最初の出会いは感動的だったな。

 

 

…………何も感動出来ないけどね。

泣けるのは俺1人なんだけどね。

めちゃくちゃ怖がられてたし。

 

 

 

紗南「お兄ちゃんは文化祭何やるの?」

 

 

 

む、さすがはあの、からかう面倒なお姉さんの妹だ。

まだ小さいというのにコミュ力高い。ただの興味本位で聞いてきたとしてもコミュ力高い。

 

 

 

 

八幡「俺は………まぁ、色々だ。色々ありすぎてやることないって感じの人だ。」

 

 

 

紗南「…………??

サボり?」

 

 

あらヤダ。俺サボりと思われてんのかしら?

……ビックリしすぎてオカマ口調になっちまったよ。

 

 

 

山吹父「純?紗南?

それに君は…………」

 

 

もう既に俺たちは商店街の中にいて、山吹家まで着いていたようだ。

山吹のお父さんらしき人がこちらへ近づいてくる。

 

 

 

純、紗南「「パパー」」

 

 

ちょっと?そんな走っていくと危ないよ?

転ぶとかそういう意味じゃなくて、俺が危ないよ?

まるで俺から走って逃げた的な解釈になったらどうしてくれるの?

 

 

 

山吹父「2人ともおかえり。

………ところで彼は?」

 

 

 

お、割と冷静だぞこのお父さん。

殴りかかってきたらどうしようかと思ったわ。

このまま去るのもいいけど、一応近所までとは行かないが、地元が一緒だからまた会う可能性を考えると、自己紹介はしといた方が良さそう………あ。

 

 

八幡「………………」

 

 

 

沙綾「………………」

 

 

 

八幡「……………よ、よう。」

 

 

 

 

沙綾「お父さん、私たちあの人知らないよ。」

 

 

 

 

八幡「や、山吹さん?

そ、そういう冗談は良くないんじゃないかなーって………」

 

 

 

沙綾「知らないよね〜、さーな?」

 

 

 

紗南「うんっ!知らなーい!」

 

 

 

天使が悪魔に堕ちた……………

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

山吹父「そうかそうか、沙綾の同級生か。

2人を送ってくれた事、感謝するよ。」

 

 

 

山吹の父さん優しくて良かったー。

話が通じない人だったら殴られてた気がするわ。

 

てか、山吹の奴マジで人をからかうのにも限度があると知っておいた方が良さそうだな。

妹が天使で無くなってしまう前に…………

 

 

 

山吹父「良かったらコレ、うちのパンを貰ってはくれないかな?」

 

 

 

そう言って紙袋を差し出してきた。

結構沢山入ってるんだけど!?袋から飛び出てる量があるんだけど…………

 

 

 

八幡「いや、でも自分お金がないので……………」

 

 

 

山吹父「お代は当然いらないよ。

お店で残った余り物だからね。」

 

 

沙綾「あ!

余り物だからって美味しくないわけじゃないからね。」

 

 

いや、それはそうだろうな。

にしてもコイツ、自分の家のパン大好きだな。

 

まあ俺も?

小町が作る料理は大好きだしそんな感じだろうな、うん。

 

 

八幡「いやでも自分が勝手に送っただけなので大丈夫です。」

 

 

 

あのまま「じゃあな!」なんて言える度胸がなかっただけなんだけど…………

姉に知られてたら学校でまたいじられるし。

 

それよりも弦巻の家に行かなきゃな。

遅すぎたら何言われるかわからんし。

 

 

沙綾「ほら、この前のお礼も兼ねてだよ。

それに比企谷君が貰ってくれなきゃ結局捨てちゃうし。」

 

 

八幡「は?………………んんっ!

…………捨てるくらないなら俺が貰う。」

 

 

*貧乏性

 

 

 

沙綾「はいっ、どーぞっ!

当然捨てるのは嘘だけど、もう比企谷君が触れたから返却不可って事で!」

 

 

 

八幡「……………はぁ。

……………どうも。」

 

 

 

返却不可ってなに…………。

俺が触れたからとか言わなくてもいいじゃん。

まあ今回はパン貰ってるから許してやるけどな、お父さんに免じて。

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「う〜〜んっ!今のはすっごく良かったわ!」

 

 

 

はぐみ「うんっ!!

いけるよ! !はぐみ達なら本番も大丈夫だよっ!!」

 

 

 

弦巻の家で2時間ほど練習をした。

今日ラストの合わせだったが、2人の言う通り中々上手くいった…………と思う。

 

まぁ、ライブもすぐだし、上手くいかなきゃ行けないのは当たり前なんだけどな。

それでもやはり嬉しいものがあるのだろう。

 

 

 

花音「みんなお疲れ様。

美………ミッシェルは大丈夫………?」

 

 

 

ミッシェル「いやちょっと休憩したいかなー。

喉乾いた。比企谷くんなんか飲み物。」

 

 

 

八幡「ナチュラルにパシんなよ。まあいいけど。」

 

 

 

コイツが1番大変なのは見ずとも分かるからな。

でも飲み物飲むなら一旦部屋から出るか、なんかしなきゃ行けなくない?

3バカいるし。

 

 

 

薫「あぁ、本番がとても楽しみだよ!

子猫ちゃん達もきっと私たちを待っているよ。」

 

 

 

こころ「当然よ!

世界を笑顔にする第1歩だものっ!」

 

 

 

美咲「ふー…………にしても、あんたたちは気楽でいいね。

あたしは結構緊張してきたよ………」

 

 

 

八幡「いやお前、ミッシェルだから顔も出さないしそこまでって言ってたじゃねーか。」

 

 

この前言ってたからな。

顔隠れるのはちょっと羨ましいと思ったが、着ぐるみ着てやるのは辛いから勘弁。

 

 

 

美咲「いや、どちらかと言うと失敗しないか不安で緊張って感じかな。

なんせ、ライブ中こころが暴れそうだし。」

 

 

 

花音「あー…………うん………。

暴れそうだね…………」

 

 

八幡「暴れるな、間違いなく。」

 

 

練習で暴れてる時点でもう察し。

本番の熱とノリではしゃぎまくる未来見えた。

 

 

 

こころ「早くライブがしたいわーっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

〈山吹家から帰宅した比企谷家にて〉

 

 

 

八幡「たでーま。」

 

 

 

テトテト

 

 

小町「おかえりー!

………およ?お兄ちゃん何それ、パン?」

 

 

 

なんだお前可愛いなおい。

テトテトっておい、しかもエプロンっておい。

 

 

 

小町「お兄ちゃん?

…………あー、うん。

どうしたの、ごみいちゃん?」

 

 

 

八幡「いや、ちょっと待って。

『あー、うん。』で何を悟ったの?

そして、ごみいちゃんは酷いと思わない?」

 

 

 

小町「いや、お兄ちゃんが変なこと考えてるんじゃないかなーって。

それと、小町に蔑んで欲しいのかなーって」

 

 

八幡「前者はまあ惜しいが、後者はかすりもしてないね。

お兄ちゃんノーマルだから。

むしろ属性無さすぎて逆に強いかもしれないとか思ってるから」

 

 

 

小町が可愛いと思うことが変だと言うのなら、変なことは考えていたけど、蔑まれたくはないな。

 

 

 

小町「はいはい。

それでそのパンは?」

 

 

あら冷たい。

 

 

八幡「あー、コレな。

捨てられそうだったから拾った。」

 

 

 

小町「え、捨て犬なの?!

ダンボールから拾っちゃったの?!」

 

 

八幡「いやまあ貰いもんだ。

美味いらしいぞ。めちゃくちゃ自慢してくるほどには。」

 

 

 

小町「へー。

……………あ、本当だ。すっごい美味しい。」

 

 

 

ほう。

小町の笑顔が見れたので完全に今日の山吹のからかいは無かったことにしてやろう。

 

 

 

小町「あれ、中に封筒?

なになに……………んん??」

 

 

八幡「どした小町ー。」

 

 

 

小町「おに………おに…………」

 

 

 

おに?………鬼?

 

 

 

小町「お兄ちゃんに彼女さんがいたーーー!!!」

 

 

 

八幡「………………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷君へ

 

今日はありがとね!

前話してたパン、本当に美味しいから食べてね!

それとうちの店のクーポンも入れといたから来てね!!

 

 

 

 

 

 

 

比企谷君の彼女より

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………っ!」ビリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




美咲と八幡が見たメール。


奥沢 美咲様へ


文化祭やライブ等、こころお嬢様が毎日お世話になっております。
今後とも困ったことがあったりしましたら、私たち黒服を頼ってください。
私たちは常に、こころ様に付き添っています。
姿は見えずとも、こころ様に呼ばれましたら直ぐに駆けつけることも出来ます。
こころ様の周りで起きてることは、把握済みなのです。

いきなりおかしな話をして変でしたね。
今後ともこころお嬢様をよろしくお願いしますね。


あ、隣にいる比企谷様にもコレを見せるようにお願い致します。



黒服より。

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