初ライブが終わり翌日、俺は家でゴロゴロ休日満喫……………とは行かず、学校へ向かっていた。
今日はなんと!!!
待ちに待ってない文化祭
昨日のライブ自体は、肉体的に疲れてないけど精神的な疲れはある。
ライブが終わって家に着いた時は、布団に倒れ込んだレベル。
まあ、ライブが無事に終わって何よりなんだけどな。
小町もハロハピのファンになったって喜んでくれたし。
他のメンバーは大丈夫だろうか。
もちろん心配してるのは、奥沢と松原さん。
奥沢は正直1番疲れてるはず…………特に肉体的に。
そして松原さんはきっと、精神的に疲労してるはずだ。
ライブでも、めちゃくちゃ緊張してる松原さん見てたら、逆にこっちが冷静に慣れたからな。
他の3人は心配など微塵もない。
北沢は終わった後も元気いっぱいに走り回ってたし、瀬田先輩はファンサする余裕もあったし、弦巻は…………………
「はちまーーん!!」
このバカに疲れるって感情は持ち合わせてないのだから。
×××
こころ「今日の文化祭とっても楽しみね!」
八幡「いや別に。」
文化祭なんて誰しもが楽しみにしているものでは無いのだ。
別に陽キャだけが楽しめる行事とまでは言わない。
文化祭を好きな奴がいるように、嫌いな奴もいるってだけの話だ。
学校によって文化祭で出来る事もそれぞれらしい。
食べ物はダメだとか、危なそうなことは出来ないとかな。
招待制で、家族は含めず友人2人までとかもあるらしく、厳しいところは厳しい。
うちは特にそういうのはなく、一般の方も自由だし、食べ物なども制限はない、多分。
こころ「色んな人の笑顔が見れるのよ!
素敵と思わない??」
キラキラした目で俺に訴えかけてくる。
八幡「………素敵といえば素敵かもな。
まあ、俺はあまりこういうイベントが好きじゃないってだけだ。」
こころ「大丈夫よ!
はちまんは今日、きっと誰かを笑顔にするわ!!」
八幡「は?」
弦巻は突然俺にそう言う。
意味がわからん。
こいつに意味を求めるのもどうかと最近思ってきているのだが。
こころ「誰かを笑顔にしたら、「今日はいい日だった」って思えるでしょ?
そしてはちまんも笑顔になるのっ!
笑顔はそうやって増えていくのよ!!」
…………こういうことを恥ずかしげもなく、普通に言える人はこの世に何人いるのだろうか。
少なくとも俺は弦巻しか知らないし、これ以上いても困るかもしれない。
なんの根拠もないのに、明るい笑顔で言い放つ弦巻に、真面目に返答するのも馬鹿らしくなった。
八幡「…………まるで病気だな。」
こころ「そうよ!笑顔は世界で1番いい病気なの!
そして、笑顔を広めていくのが私たちハロハピよ!!
だから…………八幡、貴方ならきっと誰かを笑顔にするわ。」
優しく微笑みかけてくる少女に見惚れかけ、恥ずかしさを紛らわすように顔を明後日の方向へ向いた。
八幡「俺は今日は文化祭実行委員の仕事で、記録係兼見回りだから、笑顔にするってよりは、笑顔になった人を見かける方なんだよなぁ。」
こころ「もうみんな集まってるわ!
ほら早く行くわよー!」
八幡「おいっ!聞いてんのか………………きゅ、急に走んなって!!」
×××
香澄「さーや来ないなぁ…………」
八幡「……………なんで俺に言うんだよ。」
たえ「香澄、家行ったんだよね?」
香澄「うん、ちょっとだけ…………」
文実の集まりも終わり、一般生徒もぼちぼちと通学して来た頃、戸山達が話しかけてきた。
香澄「はっちーは、さーや見た?」
八幡「いや、見てないけど………。
え、なに、ひょっとしてあいつサボり?」
香澄「さーやはサボらないよ!!」
八幡「お、おう……………」
何で俺がキレられなきゃならんのだ。
てか、コイツらのクラスって山吹の家のパン使うんだろ?
じゃあそれの手伝いだろ、知らんけど。
「あ、いたいた!
山吹さん家のパンが届いたよー!
運ぶの手伝って!」
香澄「あ、うん!今行くー!」
たえ「ほら、はっちんもはやく!」
八幡「……………は?俺?なんで?
そもそもクラス違うんだけど」
香澄「レッツゴー!!」
弦巻といい戸山といい…………
頼むから腕を掴まないでください!
×××
香澄「おはようございます!」
山吹父「おはよう、香澄ちゃん、それにおたえちゃんも。
…………比企谷君も一緒なんだね。
あ、それとパンの受け取りのサインを貰ってもいいかな?」
八幡「ど、どうも。」
覚えられてた………。
この前の山吹弟と妹を家に送った時の1回しか会ってないのに。
香澄「はい!……………あの、さーやは?」
そう、山吹が先程から見当たらないのだ。
山吹父「…………それが、今朝妻が倒れてね。」
香澄、たえ「「ええっ!?」」
八幡「……!?」
山吹父「ああ、大きな病気という訳じゃないよ。
妻は昔から貧血気味で、よくあることなんだ。」
そういえば前に、山吹とバンド仲間だった海野が言ってたな。
山吹父「ただ、沙綾が心配して、病院に連れて行くと聞かなくて。
今日は文化祭には出ずに、妻の付き添いをするそうだ。」
香澄「そう…………なんですか………」
山吹父「前に妻が倒れた時のことをあの子は気にしていてね。
自分がそばにいなくて、弟と妹に怖い思いをさせてしまったから」
たえ「そんな…………」
山吹父「家のことは気にせず、好きなことをしてほしいんだが…………
ああ、でも最近はよく香澄ちゃん、おたえちゃん、りみちゃん、有咲ちゃんの話をしているよ…………比企谷君もね。」
香澄「え?」
山吹父「君達といるのが楽しみみたいだよ。
放っておくと家の事ばかり気にしてしまう子だから、
これからもあの子を気にかけてもらえるかい?」
香澄「はい!もちろんです!
あの、さーやにもこっちは大丈夫だって、伝えてください!」
山吹父「ああ、伝えておくよ。
ありがとう、本当に。
それと、うちの娘からも伝言があるよ。」
沙綾『文化祭成功しますように。
ライブ成功しますように。』
香澄「……………おたえ!沙綾の分まで頑張ろ!!
みんなも、がんばろー!」
「おーー!!」
すごい盛り上がってんなぁー。
俺だけ別のクラスメイトで浮いてるわ。
まあ、自分のクラスメイトでも浮いてんだけどな。
今ならバレずにこのまま撤退できるのでは?
俺はそもそもパンを運ぶ手伝いをする義理もないのだ。
てかもう残り少ないじゃん、俺は用済みだな、うん。
それでは俺はこれで失礼しまー「比企谷君」
八幡「ひゃい!?」
そーっと逃げようとしたところ、急に自分の名前を呼ばれたので驚きのあまり、変な声が出てしまった。
山吹父「あぁ、驚かせて悪かったね。」
八幡「い、いえ、大丈夫っす」
山吹のお父さんだったのか。
でも、何で俺は声を掛けられたんだ?
不思議そうに思っていると…
山吹父「私の妻と沙綾は、〇〇病院にいるんだ。」
八幡「…………………はい?」
山吹父「今は紗南と純も一緒だ。
〇〇〇号室にいるよ。」
八幡「え、えっと……………」
話が見えない。
何を言ってるんだこの人は?
今は戸山含めたA組は、山吹の家のパンを教室へと運び切ろうとしていたので、今ここにいるのは俺と山吹のお父さんの2人だけ。
山吹父「……………君は紗南と純にすごく好かれている。
君とあった日は必ず楽しそうに話してくるからね。」
八幡「………………………」
山吹父「その2人からの願いでもあり、妻と、そして私からのお願いを聞いて貰えないだろうか?
沙綾を、うちの娘を……………助けて欲しいんだ」
八幡「……………助けるって、、、それになんで」
山吹父「沙綾はとても優しい子なんだ、本当に。
でも、優しすぎるが故に自分より他人の事を優先してしまう」
そう言った山吹のお父さんも、優しく笑いながら俺に目を向けた。
山吹父「母さんも自分のせいで沙綾がバンドを辞めたと思っていてね。
嫌々パン屋の仕事を手伝っていたらすぐに止めようと思っていたんだけどね。
それでも沙綾はすごく楽しそうだったんだ。
まあ、無理して振舞っていたとしたら本当に不甲斐ないばかりなんだけどね。」
…………そんなはずはないだろう。
俺が知る山吹沙綾はすぐにからかってくるが、人のことを想いやれる優しい女の子でもあると思う。あとお姉ちゃん気質。
それに、隙あらば自分のお店のパンを語ってくる「やまぶきベーカリー大好き女」だ。
そんな彼女が嫌々で自分のパン屋をやっているとは到底思えない。
山吹父「私達も強く言えなかった。
沙綾が手伝ってくれて実際に助かってるから。
だからあの子がもう一度自分の意思で何かをやりたいと言うまでは、沙綾の優しさに甘えることにしたんだ。」
山吹父「でも、あの子は自分の意思だけじゃもう踏み出してこない。
周りには優しくて、自分には厳しいから。」
悔しそうに力なく話す姿は、嘆きにも聞こえた。
山吹父「私は父親失格なんだ。
ここまで自分の娘のことを分かっていても、何も出来ない。」
山吹父「無責任で親らしくもない頼みだが、比企谷君。
娘の背中を押して貰えないだろうか。
香澄ちゃん達が引っ張ってくれた手を、あと一押しさえあればきっと踏み出してくれる気がするから。」
父親失格……………それは違う。
こんなに自分の娘のことで悩んで、ましてやまだ2回しか会ってない俺にこんな頼みをする人が失格な訳が無い。
それにこの人はきっと、山吹沙綾を完全に理解してはいない。
当然だ。俺も全くわからんし、わかりたくもないがこれだけは言える。
アイツは、家族も戸山達も大好きなだけだ。
バンドに入ると、また迷惑かけるから…………大好きなのに邪魔をしてしまうのが許せないから入らないのだ。
でもそれはパン屋のせいにしてる訳ではなくて、パン屋も大好きだから…………アイツは1つを大切に選び、苦しみながらも幸せと感じているのだ。
コレは俺の勝手な考え、思い込みだし、知ったかぶってるだけだ。
山吹のお父さんが、なぜ俺に頼んだかもあまり分かってない。
弟と妹に多少好かれてるだけで、頼まれる内容では無いだろうに………
もう分からないことだらけだ。
でも俺はアイツにずっと言いたいことがあったんだ。
クライブの時から…………いや、それよりも前だったかもしれない。
そして、ハロハピの初ライブが終わった帰り道、小町に言われた。
小町『沙綾さんね。お兄ちゃん達がライブしてた時、悲しそうな羨ましそうな…………いろんな感情がごちゃごちゃ混ざってる表情をしてたんだ。
ハロハピに入る前のお兄ちゃんみたいな。
だからね?小町は沙綾さんが何に困ってるか分からないけど、もし困ってたらお兄ちゃんが助けてあげて欲しい。』
八幡『………なんでだ?』
小町『お兄ちゃんならきっと出来ると思うし、この前食べたパンがすっごく美味しかったんだ!
あ、あと、沙綾さんが大好きになったから!
今の小町的にポイント高いっ!!」
八幡『パン目当てですか、そうですか。
でも、アイツはもう適任者がいるからな。
俺の出る幕はないだろうけど、まあやれることはやってみるわ。
可愛い小町の頼みだし。
あ、今の八幡的にポイント高い。』
小町『お兄ちゃんちょろすぎでしょ。
でも約束ね!』
純と紗南、小町の頼みと聞いたら、動かない訳には行かない。
下の子の望みは出来るだけ叶える、それがお兄ちゃんだから。
八幡「山吹沙綾さんは俺が背中を押さなくても、戸山達が蹴りあげてくれると思います。
なので俺は何も出来ない…………というか、何もすることがないと思います。
でも、純君と紗南ちゃんに頼まれたからには出来るだけ手は尽くしてみます」
山吹父「いつかでいいんだ。娘がその気になってくれるまで見守っていてくれるかい?」
八幡「…………もしかしたら案外早いかもしれないですよ。
その時はパンのサービス、期待してます」
山吹父「…………!
ふふっ、焼きたても期待しておくれ」
×××
文化祭が始まり、それぞれのクラスが活動を始めた。
お客さんもかなりの人数が来ており、ワイワイガヤガヤと賑やかに盛り上がっていた。
そして俺は文実の仕事であちこちを歩き回っていた。
トラブルとかがあったら、対処又は近くの先生に連絡とか言われたけど平和だ。
このまま何も起きないことを願う。
それよりも俺は、クラスの仕事がないとはいえ、どんな状況か気になるな。
内容だけ見れば豪華というか、種類はあるからお客さんは来てるはず。
小町「ありゃ?お兄ちゃん??」
八幡「小町?!
来てんなら連絡くれれば良かったのに」
文実の仕事を放棄し、小町の案内役として仕事を全うしていた所だった。
小町「お兄ちゃんをビックリさせたくって!
あ、今の小町的にポイント……………高い?」
八幡「小町的のポイントなのに、高いかを俺に聞くのかよ」
小町「てへっ☆」
コイツ……………自分が可愛いって分かってやってるだろ。
タチ悪いな、本当に可愛いが故に。
小町の同級生の男子共が何人落とされているのやら。
まあ、小町に手を出したら弦巻の黒服部隊を出動させるけどな。
小町「それで、お兄ちゃんは何やってるの?サボり?」
八幡「1つ目の可能性でサボりを出してくる所にお兄ちゃんはショックを受けてるぞ。」
小町「うん、そういうのいいからいいから。
あっ、、、もしかしてハブられてる……?
………ごめんねお兄ちゃん、言いづらい事を聞いちゃって」
八幡「おい、その顔やめろ。
可哀想な物を見る目、違う、違うから!」
兄のことをなんだと思ってるんだこの妹は………
小町「それで?お兄ちゃんの実行委員の仕事の内容は?」
八幡「あぁ、だよね?家で実行委員って話したもんね?」
良かったー。
俺の話全く聞いてなかったのかと思ったわ。
八幡「まあ、パトロール的な役割と記録係だ。
このカメラでなんかいい感じの風景を撮ってくれと。」
マジで説明が適当だった。
俺以外にも数人の人たちもカメラを持っていて、後に学校紹介の時に使うパンフレットの素材にするかも?とは言ってたけど………
小町「へー、どれどれ………………………お兄ちゃん。
何も撮ってないじゃん。」
八幡「まあ、いい感じの風景とやらに出会えてないからな。」
第一、俺以外にもカメラ担当いるんだしその人達に任せようと思ってた。
小町「今から1年C組に行こうと思ってたんだけど……………。
アレ?そういえばお兄ちゃんって1年C組だよね?」
八幡「そうだけど……………なんで?」
小町「いま1年C組凄いらしいよ??
めちゃくちゃ混んでるとか。」
八幡「は?マジ??」
何それどこ情報?
小町ちゃんはとうとう千里眼でも身に付けたのでしょうか?
小町「SNSで載ってるからね。
「1年C組のクラスやべぇー!」とか、「マジックカフェって新しいな!」とか、「金髪の笑顔教徒がいる!!」とかね」
それはやばいな。
特に最後のヤツはかなり危ない。
小町「これ、こころお義姉……………ちゃんだよね!?
こまち、また皆さんに会いたいなー!」
八幡「いや、そうだと思うけど…………てか、絶対そうなんだけど。」
この子、弦巻の事を姉ちゃんって………しかもなんか若干違うニュアンスだったきがするのだが。
いや例え誰であろうと、小町の唯一の兄は俺であり、姉すらも誰にも名乗らせん。
小町「…………なんか変な事を考えてる顔してるなぁ。」
「1年C組いこーよ!」
「まだ行ってなかったのか?めちゃくちゃ混んでるからパス」
俺たちの横を通り過ぎるのは、知らない制服を着た学生の声が耳に入る。
え、そんなヤバいの……………?
×××
八幡「何コレ…………………」
俺のクラスは廊下にまで行列ができており、クラスのやつらは忙しそうにしている。
美咲「あ、ひ、比企谷君っ………」
こころ「はちまんやったわ!こんなにもお客さんが来てくれたわ!」
八幡「なんか凄い事になってるけど、何で…………?」
『食べ物色々手品演劇カフェ』がここまで一般的に受けるものだとは思わなかった。
しかも色々って言っても食べ物は、フランクフルトとパンケーキしかないし。
飲み物は多少あるけど………………。
美咲「こころがとんでもない手品をしたからね。
そこからずっとこんな感じ……………」
八幡「とんでもない?
…………………っ、まさか!?」
美咲「うん、多分それであってる。
黒服の人たちが用意した「OK、みなまで言わなくていい。」
まあそういうことですよ。」
コイツ……………前日までは全然よくあるようなトランプマジックやってた癖に。
なんか黒いハット帽みたいなのあるし…………え、あれって鳩?
白い鳩がいるんだが?これ、帽子の中から鳩が出て来るやつじゃね?
他にもそれらしきグッズがある…………。
まあ、これはセーフ……………なのか?
黒服さんパワーのアウトラインが微妙なんだよなぁ。
大体がグレーゾーンだからな…………。
×××
そして花咲川学園の文化祭、通称咲祭は午後へと突入していた。
なんと俺たちのクラスは午前中で商品が全て売れてしまい、閉店という形で閉じたのだが、数十分おきに弦巻がこの前先生から許可を貰った階段の踊り場で手品を披露するらしい。
あの時先生に許可を取ってたのはこのためだったのか………。
え、なに………予想してたの??ビックリだわ。
午後の内容も午前とは別段変わりはない。
ただ、文化祭のフィナーレを飾るのは、戸山達のバンド………Poppin’Partyのライブだ。
時間はまだあるが、準備はそろそろ始めないと行けない頃だろう………。
八幡「………それで?
お前達がなんでこんな所にいんの?」
キョロキョロと何かを探しているようにも見えるが、なんか………怪しい感じだな。
有咲「…………比企谷か。」
ねぇ、少しでいいから嫌そうな顔やめてくれる?
りみ「うん。さあやちゃん探してるの」
八幡「山吹?」
アイツ学校来てるのか。
病院にいるのかと思ってた。
香澄「電話してるけど繋がらないし…………」
たえ「ライブ…………参加できなくても観て欲しい」
なるほどな、だから探してんのか。
電話が繋がらないってことは、まだ病院にいる可能性が高そうだな。
まあ、お母さんが朝に倒れてるもんな。
やはり心配なのだろう。
香澄「今日歌う曲の中に、さあやと………みんなで作った歌があるから!
一緒に弾けなくても、それでも…………」
「……………なるほど!
あまり状況はわかってないですが、わかりましたよ!
つまり!沙綾さんを探して、皆さんのところに連れてくればいいんですね?」
突然聞き覚えのある声が俺たちの注目を集める。
………聞き覚えどころか、見覚えすらある。
なんなら毎日見てる。
有咲「だ、誰だお前は!!」
市ヶ谷が急な登場役にテンプレのような言葉を投げかける。
小町「いや〜、どーもどーも!
そこにいるぬボーっとした男の妹、比企谷小町と申します!」
りみ「えっ!?
…………ひき、、がやさんの?」
たえ「おー。全然似てなーーーい」
香澄「はーくんの…………?」
有咲「い…………い………い」
「「いもうと〜〜〜っ!?」」
なんか凄いデジャブ………。
有咲「全然似てねぇ……………。
え、兄の方はコミユニケーション能力取られたのか?
兄なのに?」
八幡「おい、俺と小町の似てないところはコミュ力だけじゃないだろ!
小町は顔が可愛いし、家事、料理全般、勉強もできるし、友達も多い。
似てるのは頭についてるアホ毛だけだ!」
小町「お兄ちゃんバカ!!
人前では恥ずかしいから辞めてって言ってるじゃん!」
有咲「え、なんでアイツはキレ気味で自分の妹を褒めてんの?
シスコン………?
妹も満更でもない様子だし…………」
その言い方だと家とかでは言ってもいいって事になるぞ、小町。
りみ「あははは………………」
香澄「小町ちゃん可愛い〜っ!
中学生?文化祭遊びに来たんだねー!」
たえ「うさぎ好き?うちの子達見る?」
場がカオス状態になった……………。
流石は小町だ。
小町の可愛さは世界を動かす力を持っているに違いないな。
有咲「そ、それで?
比企谷妹が言ってた沙綾を探すって…………いる場所知ってんの?」
香澄「た、確かに……………」
じーっと、小町をみんなが見つめる。
確かに小町はさっき、解決策を提示してきた。
それはつまり山吹の場所を知ってる……………もしくは、呼び出せるということになる。
小町「はい!
あっ、でも、こまちは知りませんよ?」
有咲「はぁー!??」
りみ「あ、有咲ちゃん………」
小町の思いがけない返答に怒鳴る市ヶ谷。
ほんとこえーな。
手を挙げたら許さんぞ、怖いけど。
小町「お、お兄ちゃん…………。
こまちあの人少し怖いよ〜。
お兄ちゃんの友達じゃないの?」
八幡「いや友達では無いな。
なんだろな。まあ、知り合い………………だと思う。」
知り合いにも満たしてないとか言われたら少し凹むかもしれんが、友達では無いのでまあこの表現が無難だろう。
小町「えー!
こまちのお義姉ちゃ…………、んんっ、でも困ってるんでしょ?
お兄ちゃんの出番だよ」
八幡「はい?」
俺の出番?
小町「えー、ここにいる比企谷八幡。
お兄ちゃんが、沙綾さんを見つけますので心配なさらず〜!」
「「「「えっ?」」」」
八幡「………………はい??」