沙綾「……………………」
1人窓越しから外を見つめる。
文化祭はどうだろうか。
自分のお店のパンが使われるのは少しばかり緊張していた。
きっと香澄達は元気にやっているだろう。
私がいなくてもきっと何も変わらない……………。
私がいなくても…………
紗南「お姉ちゃん………………」
純「姉ちゃん…………………」
沙綾「っ、、平気だよ?
お母さんは大丈夫だから。」
この2人には心配させたくない。
まだ小さいから私がついてないといけない。
私は…………大丈夫だから。
沙綾母「沙綾の言う通り大丈夫よ。
だからあなたも…………文化祭行ってらっしゃい。」
沙綾「っ…………。
きょ、今日は休みって連絡してるし、ここに居るって!
ほら!じゅん、さな、こっちで遊ぼ!!」
笑って言った。上手く笑えてるかは分からないけど。
誰にも心配させたくない、誰にも迷惑かけたくないから。
沙綾母「さあや。
でもそれじゃあ貴方が…………!!
ふふっ……でもね沙綾?
王子が迎えに来たわよ?」
私とお母さんは向かい合っている。
私の後ろのに誰かがいるのだろう、お母さんは一瞬目を凝らしていた。
沙綾「お、王子?どういう………………っ!?」
振り向いてみるとそこには………………
目の腐った…………
八幡「いや、腐ってないから。
ちょっとアレなだけだから」
王子というには少し……いや、かなり似合ってない猫背の青年がいた。
×××
病院にいるのは、朝に山吹父が言ってたから分かってたが後で小町に文句を言わなきゃ気が済まない。
沙綾「比企谷君………………どうしてここに……………」
八幡「残念ながら王子ではないですね。
……………強いて言うなら、毒林檎をあげる魔女とかそっち系です。
おじゃま虫的な感じっすね。」
まあ、そいつらが物語にいるおかげで素晴らしい作品となるのだがな。
困難に立ち向かい、乗り越える所が見所になるのだ。
俺なんて小学生から村人Gとか、木や草役などにしかして貰えなかったがな。
にしても病院にいてくれてよかった。
先に念の為、山吹家に行ったが誰も出なかったし、コッチ来る時にすれ違ってたら面倒なことになってた。
八幡「てかお前、ケータイ持ってないの?」
沙綾「え…………あ、家に置いてきちゃった。」
八幡「通りで……………」
戸山達が連絡しても一向に出ないからそんな気はしてた。
自分の母親が倒れたのだ。
それだけ慌てていてもおかしくはない。
紗南「お兄ちゃんだ!文化祭はどうしたのー?」
純「ほんとだお兄さんだ!でも、なんで………?
あっ、もしかして…………」
紗南、純「「サボり??」」
八幡「ばっ、、ちげーよ。ここにいるのも仕事の一環だ。
それに、サボりは俺じゃなくてお前らの姉ちゃんだよ。
文実のくせにいい度胸してるよな。」
沙綾「なっ!?サボりなんかじゃない!!
お母さんが…………」
八幡「あぁ、確かにな。
でも……もう行けるだろ?」
沙綾「………っ。
そ、それでもお母さんや純、紗南が心配で……『自分のやりたいことを』
八幡「自分の好きなことが出来ないのを、大切な家族のせいにするなよ。」
沙綾「…………っ!!」
心配?そりゃそうだ。
コイツは………山吹沙綾は、立派で優しいお姉ちゃんなのだ。
上の子が下の子を心配するのに理由なんていらない。
ウチは小町が立派だからな。
環境のせいもあるが、そこらの同年代の奴らより小町は精神的に大人だろう。
でも、小町が純やさーちゃんくらい小さかったら、俺だってめちゃくちゃ心配する。
でもな……………
八幡「違うんだよ、お前は。
今のお前は、心配『する』側じゃないんだよ。
心配『されてる』側だ。」
沙綾「っ………!!!」
八幡「……………コレを聴け」
俺は自分のケータイから、ボイスメモを開く。
そこには1件の録音ボイスがあった。
沙綾「……………何………コレ………」
たえ『マイクチェック、マイクチェック!
聞こえてたら返事してー!』
有咲『ボイスメモなんだから返事が帰ってくるわけねーだろ!!』
沙綾「!?」
りみ『と、とりあえず、沙綾ちゃんに伝えたいこと話そう?』
沙綾「みんな……………なんで…………」
香澄『さあや?かすみです!
お母さんどう?さーなん泣いてない?
じゅんじゅん元気?
さあや……………大丈夫?
カフェはね、大成功!
みんな凄いの!
お客さんパン美味しいって!
お持ち帰りする人もたくさん!
コッチは大丈夫!すごく楽しい!
すごく、すごく、すっごく。
だから、ライブ頑張るね!
さあやに届くぐらい頑張るからっ!
それから歌詞、見てね。
はっちーが持ってるから!
さあやとみんなで作った歌、良かったら読んでね!』
ケータイの画面には繰り返し再生ボタンが表示されてる。
彼女たちのボイスメモが終わった。
山吹がケータイを持っていなかった為、言葉を届けるためにはコレが手っ取り早かった。
アイツらはライブがあるから、ここには来れないしな。
沙綾「………っ………かすみ…………みんな………」
山吹は俺のケータイを、ぎゅっと抱きしめたまま泣いていた。
その姿はいつもの山吹ではなく、弱々しい小さい子どもが泣いているかのように。
山吹母「………さあや、行って?」
沙綾「………………」
山吹母「さあやは優しいね。
お母さんにも、みんなにも、すごく優しい。
………その優しさをもっと自分に向けて?」
沙綾「…………出来ないよ」
弱々しく首を振る。
山吹母「さあやなら出来るわ。1人じゃないんだから。」
紗南「さーながいるから大丈夫!」
純「俺も!」
山吹母「ね?」
沙綾「さーな…………じゅん…………」
八幡「…………そういや、俺もお前に言いたい事1つあったわ。
ずっと言いたかった、ずっと前から思ってたから」
全員が山吹に伝えたいことを伝えた。
俺も伝えるべきだろう。
沙綾「…………………え?」
八幡「【バンドやらない】とか、言うのは勝手だけどな。
それだったら…………毎回毎回やりたそうな顔してんじゃねぇよ。
クライブの時だって、悲しそうに私もやりたい!!
みたいな顔でずっと見てたし。
戸山達との会話中ですら、下手な笑顔で取り繕ってやがる。」
沙綾「……………………っ」
笑顔鑑定1級以上を持つ、弦巻が見たらなんて言うやら。
まあ俺も多分、小町の前とかではそんな感じの顔してたんだろうけどな。
ピアノを辞めた時だって、机を弾く癖は消えないし、音を聴くだけで悲しいような羨ましいような感情があった。
俺も弦巻たち、ハロハピがいたから乗り越えれた。
もちろん小町も。
理由がなきゃ動けないから、理由を作ってくれた。
山吹は自分を許す事が出来ないのだ。
自分だけ楽しむことが行けないのだと。
自分は傷ついてもいいけど、他の人は傷ついてはいけないと。
だがそんなに世の中は甘くない。
自分は良かれとやった事でも、相手からしたら良いことになるかは別なのだ。
相手側の受け取り方で変わってしまう。
善意だろうと悪意だろうと。
八幡「もうハッキリ言って迷惑だし、手遅れだ。
お前は既に迷惑も心配も沢山の人にかけてんだよ。
振り回される俺にも気を使え!
…………ったく、ほら、コレ。」
俺は山吹にある物を渡す。
沙綾「………手紙、とコレは…………?」
八幡「ボイスレコーダー。そこには戸山達が聞いて欲しい曲があるらしいぞ。
あとはお前が勝手に決めろ。
俺はそれを渡す事と、ボイスメモを聞かせるのが仕事だったからな」
これで任務は達成。
それでも行かないって言ったらもう俺は何も言わない。
まさか曲作りに使う、弦巻の鼻歌ボイスレコーダーが役立つとはな。
沙綾「…………比企谷君………」
山吹母「さあや…………行って?
そして、思いっきり楽しんできて。
それが私の、母さんからの願いよ」
紗南「さーな、もう泣かないから!」
純「俺も泣かない!だから、ねーちゃん………」
沙綾「………………はぁ。
なんか私、全然ダメだね。」
山吹を見つめる3人は、優しい笑顔で……
「「「行ってらっしゃい」」」
沙綾「…………行ってきます。」
…………やっとか。
はあ、ここまで長かったな…………うん、本当に長かった。
今から行けば間に合う…………だろう。
ここに来る前にCHISPAのメンバーの海野が、
『一応Poppin’Partyの出番が遅れるように、時間は稼ぐから!』
って言ってたし。
文化祭のバンドイベントは、Poppin’Party以外にも多数あるらしいからな。
沙綾「比企谷君」
八幡「んあ?
…………え、なに、その手。」
右手を俺に突き出して、手の平を上に向けている。
沙綾「自転車の鍵だよ。
ほら、貸して?」
八幡「は?なんで??」
沙綾「歩いたら間に合わないかもでしょ?
自転車で行った方が速いから」
…………正気かコイツ。
沙綾「今日までは、私のわがままと迷惑を許して欲しいな。」
八幡「………………もう好きにしろよ」
いつも結構迷惑というか、からかいを受けてるんですが?
沙綾「ありがと。
…………本当にありがとね。」
八幡「へいへい。」
彼女の後ろ姿を見るに、もう大丈夫だろうと心から思えた。
×××
山吹が病院を出てから、少しの静寂もなく山吹母が話しかけてきた。
山吹母「比企谷君、本当にありがとね。
それと…………迷惑かけてごめんなさいね。」
そう言って頭を下げた。
八幡「い、いや、あれはあの言葉の綾というかその……………」
散々迷惑かけられてるって言ったの不味かったかな?
大丈夫かな?俺この後ボコボコにされたりしない?
山吹母「ふふっ、冗談よ。
…………それにしても沙綾は幸せものね。
こんなにもいいお友達が沢山いるなんてね」
心臓に悪い冗談は控えて頂きたいですね。
八幡「まあそうっすね。
幸せもんだと思いますよ」
Poppin’Partyのメンバーもそうだが、山吹本人はPoppin’Partyに入る事は、前にいたバンド「CHISPA」を裏切るって考えていたと思うが、海野は微塵もそんなこと考えて無かったし、なんなら山吹がバンドに復帰する事を応援してたくらいだ。
山吹母「…………あなたは違うの?」
八幡「…………え?あ、はい。
僕は友達じゃないっすね。」
アイツは友達ではないだろう。
そもそも友達と言う定義を是非とも分かりやすく…………
山吹母「えーと、それじゃあ…………彼氏さん?」
八幡「そういう冗談は本人がいる時に絶対に言わないでくださいね?
後で色々言われるのは僕なんですから。」
山吹母「あら、どうかしら?
案外満更でもないかも知れないわよ?」
八幡「いや、傷つくのは僕だけなんで遠慮しときます。」
流石は山吹沙綾の母親。
人を揶揄うスタンスは母親譲りだったか……
紗南「お兄ちゃんはこの後どうするのー?」
純「自転車は姉ちゃんが乗って行っちゃったし……。」
まあここから歩いて学校に向かうとしたら、30分かからないくらいか。
なんか左右から「行っちゃうの?」みたいな小さい視線を感じるのは気のせい………ではないな。
そりゃそうだ。
自分の姉を送り出すための強がりとはいえ、まだ小学生なのだ。
そんなの不安に決まっている。
紗南「あっ!!パパ!!」
純「!?ほ、本当だ!!」
病室の扉が開き、そこには山吹父がいた。
文化祭の仕事がようやく片付いたのだろう。
山吹父「ただいま。2人とも本当に良い子だな。
母さんもすまんな、任せっきりで。」
仕事を終えたであろう山吹父は、子ども達2人の頭を撫でながら優しい笑顔をしている。
山吹母「それはお互い様でしょ?私も心配をかけてごめんなさい。
それと沙綾は……」
山吹父「大丈夫、わかってるよ。
比企谷君本当にありがとうね。」
八幡「いや、お礼は僕ではなくもっとふさわしい奴らがいますよ。
それに小さなお兄ちゃんとお姉ちゃんも。」
うん、なんかちょっとかっこつけ過ぎてる気がするけど気にしたら負け。
帰って枕に顔を埋めてからでも遅くはない。
それにもう一個だけ仕事残ってるし……
山吹父「それでもだよ。今度しっかりお礼をさせてもらうよ。
それと学校へ行くんだろ?私が送ってあげるから乗って行きなさい。」
八幡「あー、それなんですけどね………実は」
山吹夫婦「「……?」」
×××
香澄「…………」
りみ「かすみちゃん……」
有咲「かすみ!!もうすぐ時間だぞ?!
沙綾の事は一旦忘れろ!」
たえ「そうだよ香澄。
さあやも大事だけど、ライブも大事。
それにはっちんがいるから大丈夫。」
香澄「……うんっ!そうだよね!
さーやが来なかったとしても私たちがライブを成功させなきゃ!!」
【わーー!!】【ヒューー!】
有咲「うぅ、にしてもなんかすごい歓声だな……。
体育館埋まるくらいに人がいるじゃねーか。」
りみ「う、うん。めっちゃ緊張してきた……」
たえ「今演奏してるCHiSPAってバンド凄いね。
しかもなんか見た事ある」
夏希 (比企谷君は沙綾を連れてこれたのかな?
頑張って予定の時間より伸ばしたけど、もう限界……いや、沙綾を信じよう。
私はまた、沙綾が元気にドラムを叩いてる姿が見たいから)
そして、体育館で鳴るメロディが止まった。
香澄「あ、終わっちゃった」
夏希「ありがとー!!次のバンドも楽しんでってー!!」
【Fuーーーー!!】【いいぞーー!!】
『それでは次のバンド、
Poppin’Partyさん!!お願いします!!』
夏希(頑張ってね。Poppin’Party)
小町「あっ、Poppin’Partyの出番来ちゃった……。
お兄ちゃんと沙綾さん大丈夫かな……」
×××
自転車に乗ったのなんていつぶりだろうか。
そんな呑気なことを考えてる自分に少し笑みをこぼす。
沙綾「間に合う………かな。
香澄…………みんな……。」
学校が見えてきた、やはり自転車は徒歩より速い。
比企谷君には改めてお礼をしなきゃ。
他の人にも沢山迷惑かけたよね。
…………ゆっくり恩を返そう、私が出来ることならば。
だけど今は、今だけは………
私のわがままを、私の気持ちを、優先させてもらうね。
×××
たえ「私たちの番だね…………」
香澄「…………!」
有咲「だぁぁぁぁ!集中しろ!!」
香澄「あ、ありさ…………」
有咲「確かに心配はするけど、今はライブだろ?
それに!!そもそも沙綾はポピパに入るなんて一言も言ってないんだ。
沙綾だってパン屋があるし、色々大変なんだよ!」
りみ「か、香澄ちゃん。
まずはライブのこと考えよ?」
たえ「うん。私たちはやれることをやる。」
香澄「みんな…………」
有咲「そういうことだ。もう始まるんだから切り替えろよな!
もう今はボーカルの香澄だろ?」
香澄「…………うん。みんなありがと!
…………ふぅ、全力でキラキラドキドキしよう!!」
「それではお願いしまーす!!!」
「「「「はい!!!!」」」」
☆☆☆
会場は静寂とは言わずとも、期待と緊張で覆われていた。
司会「それではっ!!
次はPoppin’Partyの皆さんです!」
香澄「………行こう、みんな!」
有咲、たえ、りみ「「「オー!!!」」」
☆☆☆
香澄「こんにちはー!ぽっぴん『待て待て!!いきなり自己紹介だっけ!?』あ、あれ?!」
香澄「あ、そうだ!
ぶ、文化祭盛り上がってますかー!?」
「イェーイ!!」
香澄「………ふぅ。
それでは1曲目聞いてください!!私の心はチョココロネ」
☆☆☆
体育館外、CHiSPAが演奏を終え感傷に浸っていた。
夏希 「文化祭の演奏、ちょー緊張したし!」
まゆ 「いつ慣れんだよ〜あんたはー」
夏希 「だってー」
ふみか 「あ………………、さあや」
沙綾 「はぁはぁはぁ………………。
なつ、ふみか、まゆ、わ、わたしっ!」
夏希 「楽しかったよ。さあやとのバンド楽しかった。」
沙綾「っ!!」
夏希「さあやは?」
沙綾「っ、楽しかった!!楽しくて………大好きだったよ」
夏希「……うん、、、そんだけ!
みんな待ってるよ」
沙綾「……うん。ありがと」
???「あの……。コレ」
まゆ「うちの新メンバーのさとちゃん!」
ふみか「恥ずかしがりだけど演奏は派手」
さとちゃん「そ、そうかな?」
沙綾「ありがと、借りるね。」
渡されたドラムスティックを強く握りしめる。
その目にはもう…………
夏希「うん、いつもの…………あの沙綾だ。」
沙綾「……………行ってきます!」
CHiSPA「「行ってらっしゃい!!」」
そしてPoppin’Partyの演奏は観客の雰囲気を盛り上げていた。
香澄「ありがとうございましたー!
………………次は、今日のために作った曲です。みんなで作った曲。
今日は1人いないけど、いつか一緒に歌おうって約束しました。
いつかはまだだけど、信じてる。
一緒に歌うこと…………できるって。」
香澄「えっと、、そんな気持ちを込めて歌います。
聞いてくだ…………えっ!!」
香澄「さあや!!!」
☆☆☆
沙綾「えーっと、ドラム久しぶりだなぁ」
有咲「え、もう出来んの?!」
沙綾「どうだろ……。数回聴いただけだし、ボロボロ!」
たえ「そこは気持ちで」
りみ「一緒に頑張ろ!」
扉が開く音が聴こえたと思ったらそこには沙綾がいた。
香澄達は笑顔で迎え、他の生徒達はやや混乱していたが、エモい展開だと徐々に悟る人達がちらほら出てきていた。
沙綾がドラムチェックで音を出し始める。
その瞬間だけは沙綾の空間だった。
沙綾「よし、いつでも!」
香澄「うん、じゃあ行くよ?」
有咲「おう」
たえ「おっけー」
りみ「が、がんばろ!」
香澄「お待たせしました!聴いてください。」
【STAR BEAT !〜ホシノコドウ〜】
『ラララ〜』
☆☆☆
山吹母「比企谷君、本当に何とお礼を言ったら…………」
山吹母は目に涙を浮かべる。
紗南「お姉ちゃん達……!」
純「…………かっこいい」
山吹父「ははは、サービスが過ぎるんじゃないか?
本当に沙綾のこと好きじゃないのかい??」
八幡「自分も少し観たかったのと、一応文化祭実行委員なので文化祭を楽しんでもらう仕事をしたのでこれでサボりにはならないって事ですよ。」
まあ、確かにちょっと…………カッコつけ過ぎた気もするけど今日は文化祭だし、ちょっとくらい許して欲しい。
………あと山吹父。
娘想いというか、あそこで好きって言ったら僕はパンにされてたんですかね?
八幡が山吹母の病院に行く数分前のこと、、、
こころ「それ〜っ!!」
美咲「わ、ちょっとこころ!?
この鳩どうするの!?」
人集りのある所へ向かうとやはり、こころのマジック?で、お客さんも満席で盛り上がっていた。
八幡「いたいた…………え…」
てか何コレすごっ!?
観客いっぱいるし鳩もいるし、なんか凄そうな物も沢山置いてある。
さっき見た時より豪華になってない??
こころ「あら、はちまんじゃない!!
はちまんも一緒にやりましょ!!」
八幡「いや普通に色んな意味で無理」
美咲「比企谷くん…………。
なんか探してた感じするけど、こころに用事?」
さすが奥沢だ、空気読むのが得意で気も使える。
お前はきっといいお嫁さんになるな、うん。
八幡「あぁ。
弦巻、ちょっと黒服さん達に用があるんだけど呼ん「どうされましたか?」」
黒服「……………………」
八幡「……………………」
美咲「……………………」
黒服「……………………」
こころ「黒服がどうしたのかしら?」
八幡「いや、うん…………もう大丈夫みたいだ。
大丈夫じゃないかもだけど多分……平気なはず」
怖いよ怖い、あと怖い。
どうされましたか?じゃねーよ、どうしたんだよ本当に。
黒服って忍者なの??
八幡「じゃあちょっと黒服さんと話があるから、お前ら頑張れよ」
こころ「当然よ!みんな笑顔にしてみせるわ!
だから、八幡も頑張るのよ!!」
美咲「うん、比企谷君も頑張ってね」
八幡「………………どうも。」
何も言ってないんだけどな、分かるもんなのかね。
まあ俺は頑張ることないけどな。
奥沢も本当に頑張れよ。
お前に花咲学園の治安がかかってるかもしれないからな。
黒服「あの八幡様、それで話というのは?」
八幡「あー、ちょっと頼み事聞いて貰ってもいいですか?」
恐る恐ると黒服さんにお願いしてみる。
黒服「我々にですか?」
八幡「はい。ちょっと面倒な事かもしれないですけど………」
黒服「…………少し驚きました。
八幡様が私たちに頼み事をするとは…………
分かりました。
私たちに出来ることであれば力になります。」
八幡「えっ…………そんな簡単に了承していいんですか?
自分で言うのもなんですけど…………」
弦巻の頼み事なら一瞬で聞くどころか、頼み事言う前に叶えてくれてるまでありそうだが。
の〇太くんがドラ〇もんに助けを呼ぶ前に、ジャ〇アンぶっ飛ばしてくるぐらいには叶えてくれそう。
黒服「こころ様にも皆さんが困っていたら助けてあげてと申されておりましたので。
こころ様は寛大な心の持ち主であり、とても優しいお方なのでございます。」
そういえば初めて弦巻の家に行った時にそんな感じの事言ってたな。
てか後半………………黒服の人自慢げに語るじゃん。
表情は相変わらず無表情だが、なんかもうわかる。
言葉に好き好きオーラだだ漏れだったし。
黒服「それで八幡様。
要件というのは………?」
八幡「あぁ、それはですねーーーーー。」
黒服「なるほど、つまりPoppin'Party様のライブ状況を配信すれば良いのですね?」
八幡「はい。
お願いしてもいいですか?」
黒服「………………八幡様はお優しいですね。
山吹様の為にそこまで」
八幡「…………別にそんなんじゃないっすよ。
ただ、1番見たがってた人かも知れない人が見れないのは…………
寂しいじゃないですか。」
山吹のお母さんも、アイツ自身の優しさに沢山救われていると言っていた。
1度は娘が自分のせいでバンドを辞めるきっかけを作ってしまったこと。
だが、身体が弱い事を誰が責めれるだろうか。好きで弱い身体になってる訳なんてない。
山吹のお母さんと話した時に、
「あの子は優しすぎるの。でもその優しさを自分にも向けて欲しい」と言っていた。
アイツはまた自分のせいで1つのバンドに亀裂を入れたくはないのだろう。
それ故に戸山達の誘いを断り続けている。
そんな彼女の晴れ舞台を、
誰よりも観たいのはきっと…………
×××
山吹母「ふふっ、沙綾ったら楽しそうね。
それに、香澄ちゃん達も」
山吹父「あぁ、こんなに楽しそうな沙綾を見たのは久しぶりかもしれないな」
紗南「おねーちゃんがNew-Tubeに出てる!」
純「ねーちゃん達、New-Tuberになったってこと!?」
そう。
今俺たちは、世界中で人気のNew-TubeというアプリでPoppin’Partyのライブを見ている。
八幡「あー、New-Tuberにはなってないな。
ただ、花咲学園の紹介として文化祭の様子…………ライブを配信してるんだよ。」
バンドは今、日本でめちゃくちゃ人気だからな。
世界的にもなのか?そこら辺は分からんけども。
花咲学園の紹介としてってのは全くの嘘だけど。
今これは限定配信だから、黒服さんのアカウントをフォローしてる人しか見れない状態だからね。
つまり動画で観れてるのは俺達だけ、正確には俺のケータイでしか観れない。
後で5人に許可取ったら宣伝として動画上げてもいいけどな。
これバレたら怒られるのかな?
なんかうちの学校の風紀委員怖いって聞くけど…………怖い。
花咲の宣伝より自分の学校生活を優先すべきだよな、うん。
ここから状況説明とか、文実の事とか、クラスの事とか色々あるのめんどくせぇな…………………………
八幡「俺の状況も知らずに……」
『走りだす いつか走りだす』
八幡「ひどい演奏だな。
涙流して、テンポもズレてて、演奏とは言い難いようなライブ。
でも…………………… 」
画面の向こうでキラキラ輝いてる5人が幸せそうに笑っていた。