学校の休み時間と言えば授業が終わり、次の授業が始まるまでの時間である。
この休み時間の主な理由は、トイレや水分補給、移動教室の準備、自習、友達との会話etc……
学校でのルールを破らなければ別段何をしても構わない時間である。
俺も他の人とは変わらず、しっかりと休み時間を充実させてる………はずだったのに、、、
こころ「休み時間よ!起きてーー!
さあ!!何して遊ぼうかしら!!!」
ナンデイルノコイツ……………
俺の身体や机を揺らしているのは、机に伏せてる状態からでも分かる……
まぁ、声でも何となくわかるけど。
【弦巻こころ】
入学式が終わってから数週間が経ち、今ではクラスのグループやらカーストやらが徐々に決まりつつある。
そして、弦巻こころには………異名?あだ名?的なのもある。
《花咲川の異空間》
……うん。凄い名前だな。
誰が付けたかは知らないが割と広まってるらしい。
話す人もいない俺ですら、情報が入ってくるレベルだからな。
なんでそんな有名な人が俺に関わって来るんですかね。
八幡「起きてる。起きてるから。
だから揺らすのやめてくれますかね……」
そろそろ酔いそうなので、迷惑なんだよオーラを全開で頼んでみる。
こころ「起きたわね!じゃあ何して遊ぼうかしら!」
ダメかー。
まぁ、そうだよな。こんなので撃退できるなら苦労してない。
てか、なんで遊ぶ前提なの?俺には拒否権ないの?
本当に疑問だ。
自己紹介の日は話しかけられたが、それ以降は挨拶程度しか交わしておらず、それから1週間ほど経ってからは、ずっとこの調子で声をかけられてる。
放課後はバイトがあるからと言うと、「ならまた明日ね!」と別れ、朝学校に来るとHRが始まるまでずっと俺の机に引っ付いている。
おかげで俺は朝のHRの1、2分前に席に着くことを心がけるようになった。
だけど、休み時間は無理だな。
寝たフリも効かない………というか関係ないしなコイツには。
八幡「いいか?休み時間ってのはその名の通り身体を休めるためにある時間なんだ。
移動教室の時とかは仕方がないが、通常は水分補給やお手洗いを済ませたらしっかりと休むのが休み時間だ。
遊ぶための時間ではないから遊びません。
はい。分かったら自分の席に座って身体を休めてろ」
こころ「思いついたわ!にらめっこなんてどうかしら!」
………………えっ?
あれ?俺いま口に出してなかったっけ?
え、嘘!?今の俺の独り言!?
マジかよ。確かに特技だけど、今のは確実に弦巻に言った気がするんだけど。
八幡「遊ばないっつーの。」
こころ「休み時間は身体を休めるためにあるのでしょ?
私は誰かと喋ったりすると凄く休まるわ!
それに遊んだりすると元気も出てくるし楽しいわ!」
あ、良かったー!ちゃんと言ってたわ俺。
それにちゃんと聞いてたのね。八幡感心……じゃねーな。
てか、超理論にしか聞こえないし、
遊びは結局休みにはならないじゃねぇかよ…………
でもコイツが言うと心の底から思ってるのだと感じてしまう。
それほどまでに、彼女の笑顔は輝いていた。
八幡「あ、もう分かった!分かったから!
やればいいんだろやれば。じゃ『キーンコーンカーンコーン』あ………」
こころ「あら時間ね!それじゃあまた後でやりましょ!」
誰がやるか…………
×××
放課後になり、今日はバイトがなく家に真っ直ぐ帰ろうと支度していると……
こころ「さぁ放課後よ!遊びましょ!まずはにらめっこからね!」
出たな俺の平穏を脅かす悪魔め!
だが、放課後は俺の勝ちが決まってることをコイツはまだ理解していないのか。
コレだから凡人の脳は困るんだ。
八幡「悪いな。今日もバイトがあるんだ。じゃあな」
少し罪悪感が無くもないが、嘘をつかせて貰ったぞ。
今日はゆっくりと休み、勉強するんだ。
誰にも俺を邪魔はさせん!
こころ「今日はバイトないのよね!」
……………ヴェ?
こころ「黒服の人達が言ってたわ!あなたは今日バイトがないのよね!なら遊びましょ!」
……………ドウナッテンノ?
え、なんでなんで!?
なんで知ってんの?黒服?
kurohuku?クロフク?
誰だよそれ!?
まさか…………月島さんと知り合い……なのか?
それだと合点がいくが……
ちっ。まさか月島さんと知り合いだったのか。
あの人俺の情報を漏らすなよ………
でも、あの人黒服着てたか…?
とぼけるしか無さそうだな。
八幡「あ、あれ?そ、そうだったかなー?
………あ、ほんとだ!今日バイトなかったわ。
日にち間違えて見てたわー!サンキューな助かった!
じゃあな!」
こころ「困ったときはお互い様よ!じゃあ行くわよ!」
八幡「ま、待て待て引っ張るなって!行くってどこにだよ!」
にらめっこじゃねーのかよ。
×××
こころ「ふっふ〜ん♪ふっふ〜ん♪
どんなことしようかしらっ」
上機嫌で俺の前を歩く弦巻。
俺は学校を出て無理矢理、帰る道とは違う道へ連れられてきた。
もうほんと誰かタスケテ。
こころ「あ!そこのあなたっ。
ねえ、なにがいいと思うっ?」
「えっ、えーと、きゅ、急になんですか?」
こころ「なにって決まってるじゃない!楽しいことよ!」
八幡「いや、決まってねーよ。主語入れろよ。てか、楽しいことってなんだよ。」
もうほんとすいませんね……
名前も知らない人に心の中で謝罪する。
「なにって、ええっ。楽しいこと?」
「あ。大丈夫大丈夫。弦巻さんはいつもこうだから。日頃の『楽しいこと探し』だよ」
え、それって大丈夫なの?
てかいつもこんなことやってんの?
そんなに楽しさに飢えてんのかコイツ。
こころ「残念。思いつかなかった見たいね。
でも大丈夫よ!他の人にも聞いてみるわっ。
どうもありがとう!!」
八幡「俺は思いついたぞ。楽しいこと探し」
こころ「本当かしら!じゃあ早速やるわよ!何をするのかしら!」
八幡「俺は家に帰れればとても楽しい。
むしろそれ以外楽しくなる方法が無いまである。」
こころ「そうだわ!
いーーこと思いついた!行くわよっ。
ダッシュ、ダーッシュ!!」
八幡「おいちょっと待て!急に走るなっての!」
コイツたまに無視するよな……
あと、コレは前々から思ってたけどあえて言わせてもらう。
過度なスキンシップは控えてください。
今だって、手を掴まれて『手汗大丈夫かな』とか、『手柔らか!』とか思っちゃうんだからさ!
「行っちゃった………ね。
…ホントビックリしちゃった…」
「そんなことよりもあの弦巻さんが放課後男子と2人!しかも手を繋いで帰宅だなんて!中々やりますな〜」
「………とてもそうには見えなかったけど……」
「ふふっ。これからが楽しみですな〜」
×××
場所は変わり駅前。
まだ夕方前だが人は意外にもいる。
まぁ、駅前は基本人がいそうだしな。
そんな場所でも関係なくコイツは語りかけてくる。
こころ「私!今とーっても歌が歌いたいわ!」
八幡「そうか、俺はとーっても家に帰りたいぞ」
こころ「らんたらったらーん♪ららら〜♪」
聞けよ。
なんで急に歌うのん?てか、ここ道だよ?人いるよ?
恥ずかしく………ないよな、コイツは。
でもね?俺は恥ずかしいからさ、もう帰るのは諦めるから手は離してくださいお願いします。
八幡「お、おい。もう帰るのは辞めるから、その、とりあえず手離してくれません?」
こころ「じゃあ一緒に歌いましょ!」
歌わないからね?
こころ「あなたも歌うのよ!1人じゃまだ楽しくないわ。歌だけじゃ足りないのかしら。
これじゃあ世界を笑顔に出来ないわ」
え、世界を笑顔に?楽しいこと探しはどこ行ったの?
誰かほんとに助けてくれ。
俺の頭はキャパオーバーなんだけど?
「あの子急に歌い出したけど、路上ミュージシャン………?
………って、えと、大丈夫?」
???「ご、ごめんなさい…………っ。
あ、あの!私っ……道に迷ってしまって………
こ、この近くに楽器屋さんがあると聞いたのですが……」
「あ、それなら………!?」
こころ「ふっふっふ···············八幡!!
いいもの見つけたわよーー!!」
八幡「は、え?なに?もの?
ー!?うわっ!?だから急に走んなっつーの!」
何度も言うけど手を掴むな!
???「え、えっ!?
あっ……えーと、その、制服…花咲川の…?」
おい、ものっていうか人じゃねーか。
肩より少し長めの水色の髪。
それと……この髪型はなんだろうか。
髪型には全然興味もなく知識もゼロに近い俺では全くわからないが、左側だけサイドテール?の髪型をしている。
それにバックを2つ持ってるけどなんだろうか?
まぁ、どうでもいいけど。
てか、このバカを止めなきゃな。
こころ「そうよ!あたしは花咲川学園1年、弦巻こころ!
あなたの名前は?その荷物って楽器でしょ?
今、楽器店について聞いていたわよね?」
八幡「待て待て待てStay。落ち着け。
困ってるから。ついでに言うと俺も困ってる。
あ、すみません。
えーと、コイツと同じ花咲川1年の比企谷八幡です。」
こころ「コイツじゃないわ!弦巻こころ!」
あー、うん、そーだね。
コイツはともかく、この人どうするか。
なんか道を他人に聞いてたし、急ぎの用事なら大変だしな。
てか、なんでこの人が楽器持ってるってわかるんだよ。
???「1年生…………あ…………っ。
ま、松原花音と、いいます。
た、たしかに、楽器……ですが……」
楽器なのかよ!なんでこいつわかるんだよ。
あ、でも、形で何となく分かるか。
コレは……スネアドラム?
こころ「やっぱり!!花音ね!ありがとう!
あたし達ね。今歌ってるの。
だから一緒に演奏してくれないかしら!」
と、弦巻は松原と言う女の子の手を掴む。
そうやってすぐ手を掴んで!
誰でも良かったのね!私じゃなくても良かったのね!もう知らないっ!
………うん、やめよう。
てか、私達ってなに?俺は歌ってないんだけど?
花音「え………え?
あっ、待って、離して、ください……っ。
それに、私は……このスネアドラムはもう、
売るつもりで…………」
こころ「売っちゃうの?何で!?
あたし達と一緒に演奏するんだから、
売るのなんてやめましょうよ!」
もうやだ。帰りたい。
ここ路上。人いっぱいいるよ。
なんならこの状況で目がアレな俺がいるから、よりカオスな空間になってることに気づいて欲しい。
花音「そ、そんな………めちゃくちゃな……っ
ご、ごめんね。私、もう、行くから……」
こころ「めちゃくちゃじゃないわ!
だってあなたも、世界を笑顔にしたいでしょ?」
わー、あそこに人だかりが凄いあるぞー。
紫色の髪をした………イケメン?
いや、でも、制服は女性物だ。
じゃああれは女かー。
はっはっはー。
花音「ふ、ふぇぇ……。
い、意味がわかりません…………っ。」
《比企谷八幡は弦巻こころとは数日程度の付き合いだが、
弦巻が思い通りに動く事など、有り得ないことを知っていた!》
ならばこその無!!
比企谷八幡「お空……綺麗」
すまんな。松原さん。
おれにも意味がわからない。
弦巻をコントロールする事なんて出来ないんだ。
こういう時は……美味しい食べ物でも考えるんですよ。
×××
こころ「らーらるらーらるとぅるりら
ららりらるーららっ♪
ほら花音、あなたのドラムで、もっともっと
盛り上げなきゃ!」
花音「ふぇぇ……もう許してください〜っ」
こころ「どうしたの花音。緊張してるの?
ここで今から演奏するのよ!」
花音「き、緊張……します……っ。
だ、だって、私っ、1人でも上手く叩けないのに………
こ、こんなに、大勢の人の前で演奏だなんて……」
こころ「?それはそうよ?
1人で演奏しても、上手く叩けないなんて当たり前よ」
こころ「だって、あなたが上手いかどうかを
どうしてあなたが決めるの?
人に聴いてもらわなきゃ、わからないわ!」
花音「え…………
そ、それは………
で、でも…………私…っ。
そんな勇気も………なかった………し……」
弦巻が言うことは最もだ。
自分1人じゃ上手いか下手かなんてのはわからない。
自分に甘いヤツなら上手いと思うかもしれないし、厳しいやつならまだまだと思うかもしれない。
だから自分ではない人に聴いてもらうのだ。
でも、人前だと緊張して普段通り出来ない人だっている。
周りから見られてる。どう思われてるのかわからない。
それが酷く怖い。失敗したら…とか考えてしまうものだ。
松原さんの事は全然知らないが、話を聞いていて何となく分かったことがある。
この人はきっと、積極的なタイプではないだろう。
内気で引っ込み思案な性格だと思う。
そんな彼女に無理矢理やらせるのは気が引けるな。
どうしようか……コイツ(弦巻)。
こころ「勇気なら私があげるわっ!」
花音、八幡「ーーーーーー!?」
こころ「あたしね!
今ここで歌うのが、とっても楽しいの!
あなたも一緒にドラムを叩いてくれたら、
もっともーっと、楽しくなるっ!」
松原さんの目をしっかりと見ながら話を続ける。
こころ「楽しくなったら、あなたも笑顔になる!
そうしたらね、上手いとか下手とか、
そんなことは、すぐにどうでもよくなっちゃうんだからっ!」
花音「楽しくなったら……下手とか……上手いとか……どうでも……いい…」
こころ「そうよ!上手くたって楽しくなきゃ意味無いわ!
音楽はね!音を楽しむ物なのよ!
だからね、花音、あなたが必要なのっ。
さあさあさあっ!始めるわよ!」
弦巻は言う。
上手い下手なんて、関係ない。
楽しければそれでいい。
こんなのプロの人や、本気でやってる人からしたら、失礼な事かもしれない。
けれど、俺は……その言葉を聞き入ってしまった。
音楽とは音を楽しむこと。
きっとプロの音楽家だって、上手い上で楽しんでいる。
上手い下手は関係あるが、楽しんでるのはプロも同じだと思う。
楽しければそれでいい。
楽しむために大勢の人の前で、恥ずかしがり屋の松原さんに頼んでいる。
俺なんて強制的だし。
なんとも子供の我儘だろうか………
……………それでも。
こころ「八幡!あなたもよ!!
さっきから全然喋ってないけど……あ!
あなたも勇気が足りないのかしらっ。
それならあなたにもあげるわ!」
少しだけ…………
花音「で、でもやっぱり、恥ずかしいですっ
ひ〜〜んっ」
こころ「わかったわ!ほら、あたしの勇気
もっともっと、花音に届け〜っ!
八幡にも届け〜っ!!」
少しだけ、一緒にやりたくなってきたなんて死んでも言わねぇ。