日菜「あたしは氷川日菜だよ!
よろしくね!!」
八幡「え、全然無理です。
ていうか手、離してもらっていいすか??」
この全然訳が分からない状況で困惑しているが、今すぐこの人から離れた方がいいと思った。だってこんな出会いから自己紹介してニコニコしてる人が普通なわけが無い!!
日菜「比企谷八幡って君だよね~??」
氷川日菜と名乗るこの人はどうやら俺の事を知ってるらしい。
…………氷川?てか、この髪色…………
─────いやいやいやいや、ないないないない!
流石に失礼よね、うん、失礼だ。
心の中で謝っておこう、ごめんなさい。
日菜「おーい、聞いてんのー?」
八幡「あ、い、いえ、僕は材木座って言うんで人違いですね!
比企谷さんならまだ学校にいると思いますよ、それではっ!」
何故俺の名前を知っているのかとか聞きたいけど、撤退の方が大事!
再び材木座を名乗るとは思っていなかったが、自然と名前を出せたので嘘だとは気づかれにくいはず!
日菜「ちょちょちょ!なんで嘘つくの~!」
はい、もう嘘ってバレましたけど?なんで嘘ってわかんだよ。
今度は俺の腕を掴み、そして揺らしてくる。
ちょいちょいちょい!やめろください!
日菜「だってきみ、文化祭でキーボードやってたでしょー!
おねーちゃんを見に花咲川に来たけど偶然君が演奏してる所を見たんだー!
そしたら聴いてるうちにルンっ♪て来てさ!
あ!!おねーちゃんっていうのは氷川紗夜って言って、ちょっとコワイけど」
…………うるっっっっさ。
え、めちゃくちゃ喋るじゃんこの人。
マシンガントークが鳴り止まないんですが?
てかやっぱり嫌な予感は当たってたんだ!
明らかに弦巻や北沢タイプの人の話効かない人って出会って5秒でわかったわ!
ん?
というか最後になんて言ったこの人…………
日菜「ねぇってば!聞いてるのー?」
全然聞いてないんで帰っていいですか?
………うん、無理だ。
その証拠に自転車がピクリともしない。
イヴ「ヒキガヤさんこんにちは!」
八幡「うおっ!
あ、え、こんにちは」
背後から急に話しかけられると流石にビビるよね。
…………若宮さんか。
以前お花見で知り合ってから廊下とかで会うと挨拶してくれる、もうね、普通に良い人。
第一印象はちょっと良くなかったけど人は見た目じゃないんだなって思ったね、うん………第一印象はヤバかったけど。
日菜「あれ?イヴちゃんじゃーん!
偶然だね~!」
え、知り合い?
というか偶然じゃねーよ、ここ学校の前ですけど??
結構必然ですけど???
イヴ「ヒナさん?!
ヒキガヤさんとお知りあいでしたか!」
え、違います。
まだ知り合ってはないです、ギリギリセーフです。
日菜「うん、友達なんだー!」
え、違うよ?
イヴ「ヒキガヤさんは流石です!
女性とのお知り合いが多いのですね!」
八幡「おい待って、待ってください!
そういう言い方はちょっとやめようか、ね?」
悪口とかにはなってないんだけどね、他の人とかが聞くと「ん?」ってなるから!
日菜「よーし、それじゃあイヴちゃんも一緒に帰ろうよ!
この後事務所でしょ?」
イヴちゃんも?ってなに?
自意識過剰だったら本当に恥ずかしいし、申し訳ないんですけど俺は1人で帰りますよ?
………ん?事務所?
イヴ「はい!ご一緒させていただきます!」
あ、はいそれじゃあ失礼しまーーー
×××
日菜「なるほどねー。
じゃあそのお花見でイヴちゃんたちは知り合ったんだー」
イヴ「はい!とーっても楽しかったです!
皆様には感謝してもしたりません!」
日菜「えー、いいなー!
あたしも行きたかったなー」
イヴ「それでは来年はご一緒にやりましょう!
パスパレの皆さんも連れて!」
春が過ぎ、今は6月で夏の匂いが強くなってきた。
日が長くなってきた分、袖が短くなり、快適に過ごすにはクーラーが必要になってきている頃、お花見の約束をしている俺より少し前で歩いてるお2人。
あの後1人で帰ろうとしたが、水色髪のショートカット先輩に止められた。
なんでやねーん、俺いらんやーん。
それにしても、約1年先のスケジュールを埋めるなんてアイドルかなにかですか?
花の女子高生は忙しそうで大変そうですね!
イヴ「そういえば、ヒナさんはヒキガヤさんとどうして一緒に?」
突然こめかみに指を当てながらこちらを振り向き、「私考えています」みたいなポーズで話をかけられる。
何ともあざとい仕草、しかし俺は騙されないぞ!と、言いたいところだがこの若宮イヴという人はマジのまじ。
本気と書いてマジと読むくらいには天然的で打算の無い女の子なのだ。
いや、対して知り合って間もない関係だし、
俺の勝手な思い込みかもしれないが、これは信じてたい!
これが計算的なら俺はもう人間を信じれなくなる!!
日菜「えー、んー、なんでだろ?」
八幡「いや、俺に聞かないでくださいよ。」
日菜「会いたかったから?」
八幡「……っ」
いや落ち着け俺。
この人が言うとロマンチックには聞こえないはずだ。
弦巻と一緒だ。
アイツに「会いたかったわ!」とか言われても最初に嫌な予感しかしないし、当然キュンもない。
QED、証明完了だな。
八幡「よし。」
日菜「???
まあでも理由っていう理由は特に無いかなー。
あたし、気になったりしたらすぐに行動しちゃうから!」
イヴ「ヒナさんは流石です!
私もブシドー精神をつらぬいていきたいです」
いや、尊敬する相手絶対間違ってると思うんですけどね。
日菜「それにしても、はっちんのキーボードなんか良いよね〜!
前からやってたの??」
はっちん?
ネーミングセンス大丈夫か?花園と一緒だぞ。
というかなんか良いよねってなんだよ……
八幡「褒め言葉として受け取っ…………ん…??
………何コレ、紙飛行機?」
突然目の前を過ぎった物体がひらひらと力なく地面に落ちていく。
どうやら紙飛行機が俺の目の前に着陸してきたらしい。
どうすんのよ目に入ってたら!危ないでしょ!
ブチ切れてやろうかな、絶対にそんな事出来ないけども。
たえ「それ、私のだから」
八幡「!!?」
たえ「…どうしたの?驚いたような顔して」
八幡「……驚いたような、じゃなくて驚いてんだよ。
てか、このやり取り前にもした事あるな、おい」
何なのこいつ、毎回毎回人を驚かせるプロなの?
気配無さすぎるだろ、忍者?幽霊?
イヴ「タエさんこんにちは、すごいです!
まるで気配を感じなかったです!」
日菜「おたえちゃんじゃーん、やっほー」
たえ「あ、イヴに日菜さんも、こんにちは」
あ、君たちも知り合いなのね、すごいね。
世界ひょっとして狭い?
……っていうか、コイツがここにいるってことは───
香澄「おたえーー!だいじょーーーーあっ!!
はっちー!それに日菜さん!!イヴちゃんも!!!」
うん、まあですよね。
お前らいっつもずっと一緒にいるもんな。
Afterglowかよ。
有咲「おいなんだ、とりあえず紙飛行機勝負は私の勝……」
八幡「………」
有咲「………」
八幡「あのー、先に帰ってもよろしいでしょうか?」
有咲「む、無視すんなぁ!」
八幡「え、無視も何も会話してなかっただろ」
有咲「目が合ったんだから挨拶くらいしろ!!」
八幡「えー……」
だってお前、俺の事嫌いじゃん……
話すとなんやかんやでキレられるから話しかけなかったのに、話しかけなくてもキレられるとかどうすればいいんだよ…….
沙綾「日菜さんがこうやって帰宅してくるなんて珍しいですね。
イヴと比企谷君も一緒にいますし」
香澄「確かにー!
紗夜さんと一緒じゃないんですね!」
日菜「ん〜、確かにそうかも??
おねーちゃんには会いにちょくちょく花咲川の方に来てたけど、今日ははっちんに会いたくて来たんだー!」
「「…………」」
八幡「………ははは」
え、いや、なにこの空気。領域展開した?
八幡「ってかそんなことより、お前らはなにやってんの?
紙飛行機持ってるけど…………え、まさかお前ら」
有咲「は、はぁ?べ、別にお前には関係な」
たえ「紙飛行機対決してた。誰が1番遠くに飛ばせるか」
有咲「おたえお前なー!!」
いや、分かってたけどね。
何ならさっきお前が勝ったとか言ってたじゃん。
ま、何よりこれで話題が逸れたな。
香澄「有咲が1番だったね!次は負けないよ!
あ、日菜さん達も一緒にどうですか!?」
りみ「うん!大人数の方が面白いよね」
日菜「えっ!面白そう!やりたーい!」
イヴ「ブシとして挑まれたからには、全力でお相手します!」
良し、なんかよくわからんけど俺は全くやりたくないから帰ろっと。
沙綾「比企谷君」
八幡「うおっ!……あっ、えっとですね?
俺は別に紙飛行機対決に興味無いからちょっとあの」
いや、待て……なんで俺は焦っているんだ。
別に帰っても問題ないだろう。
俺この後バイトありますし?まあ言うて3、4時間は余裕あるけど勉強とかダラダラタイム入れたら全然足りないな、うん。
止められたら正論を吐いて論破してやる。
人間、正論には弱いし勝てないってことを教えてやるか。
沙綾「比企谷君は日菜さんと前から知り合いだったの?」
八幡「………はい?」
沙綾「と、特に深い意味はないけどどうだったのかなーって!」
思ってたのと違うこと言われたから変な声出ちまったじゃねーか。
というか何その質問、深い意味がないなら聞かなくて良くない?
八幡「いや、全然初めまして。
さっきもさっき、急に自己紹介されて無理矢理一緒に帰らされてた関係です」
いやー、正直者だから思ってたこと全部言ってしまった。
沙綾「え、じゃあなんで日菜さんは比企谷君を知ってたの?」
八幡「いや、まあそれは……」
沙綾「…………それは?」
八幡「…………知らん。」
沙綾「絶対知ってるじゃんそれ……」
いやだって文化祭のライブで興味持たれたって自分から言うのは違くない?
本人曰く、るん?っと来たらしいけどマジで何言ってんのこの人。ってなったわけだし。
八幡「じゃあそういう訳だから帰るわ」
沙綾「え、あ、うん…………またね」
山吹に背を向けて右手でじゃあなと軽く手を振る。
次また氷川日菜……さんに出会ったら何か言われるかもしれないがその時はその時だな。
─────それにしても見た目はともかく、性格は似て無さすぎだろ。
×××
時間は飛んでバイトのお時間。
あの後すぐに帰宅してお昼ご飯食べてだらだらしながら勉強をした。
最近は本当に休まる時間が少ない。
基本的にお客さんがいない時は、スタジオの掃除とか点検をやるのだが、それすらも終わった場合はゲームとかそういうの以外ならやっていいと言われていたので宿題やら勉強、作詞、作曲とかやってたんだけどな。
最近は何かと話をかけられたりしてそういう事もしていない。
まあ、良い事なんだろうけどさ。
まりな「八幡くーん!…………ってアレ?
お客さん来てないの?」
八幡「あ、月島さん。
そうっすね、さっきまで何組かいましたけど今は1組もいませんね。
……それで?俺に用件とかありました?」
そう、絶賛暇中なのである。
今日はそもそも学校が午前授業、当然勉強道具とかそういうのは家に置いてきた。
暇だとわかっていれば持ってきてたのに……
まりな「あ、あぁ、うん!
あの倉庫に届いたドラムなんだけど……」
八幡「あぁ、それならさっきスタジオに入れました。」
まりな「え、ホント?!
あと、それと………」
八幡「音がちゃんと出るかもチェック済みっすね」
ついでに周り含めた楽器やフロアも全て綺麗にしてしまった。
まりな「そ、そっか……。
う〜ん、今日はずっと暇かもね……」
八幡「かもしれないッスね」
月島さんは申し訳なさそうに言ってくるが、全然構わない。
むしろありがとうございますとお礼を言いたくなるレベルではある。
ただ、暇つぶし道具を持ってくれば良かったなとは思ったが無いものは仕方がない。
お客さんが居なくても仕事は仕事だしな。
まりな「うーん………八幡君は色々とバンドや学業でも忙しそうだからちょっと速いけど先に上がってもいいかなー。」
八幡「……え、マジすか?」
ヤバい、嬉しい提案をされて顔がニヤケそうになってしまうが大丈夫だろうか?
いやでも、せっかくバイトに来たからには最後までやってお金もちゃんと欲しい気持ちがあるから迷う。
最近はスマホも買ったし、バンド関係でも割とお金がかかるからな。
まりな「あ、もちろんタイムカードには終わりまでやったことにするからそこは大丈夫だよ」
八幡「ありがとうございます!!!」
神だ。ここに神はいた。いや、女神か。
この際何でもいい、今は目の前でニコニコしてるGODを崇め奉るのが今の自分に出来る最大の礼儀というものである。
まりな「うん!じゃあほら、明日も入ってるんだから今日はゆっくりお休みして【ウィーン】」
まりな「………」
八幡「…………」
今は事務室にルンルンで向かおうとしているため、入り口には背を向けている状態。
そして今自動ドアが開く音がした。
そう、これはお客さんが来たという可能性が大の大の大。
何故このタイミングなのだろうか?
もうちょい後に来いよ……
でも1組なら案内してすぐに帰宅も許されるのでは?等と色々な思考が頭の中を巡っていた。
???「こんにちはー!
……お、はちまんもいるじゃーん!!やっほ〜!」
???「こんにちは。
スタジオを借りたいのですが、すぐに借りれますか?」
なんか俺のことを呼んでる気がするけど気のせいだよな。
声とか全然知らないし、振り返ったら負けだ!
よし、帰ろう。1度許可もらってますし??
誰も文句は言えな……っ!?
八幡「………あ、あの、月島さん?」
不意に月島さんの手が俺の肩を叩く。
俺は首を動かしたくないので、月島さんの表情は分からないのだが何だか冷や汗が……
まりな「んー、、、普通の一般客だったら私が対応してたんだけどねー……。
お客さん達は八幡君をご希望のようだから………頑張ってね!」
八幡「………Oh」