彼ら彼女らは青春を謳歌する……?   作:えーく。

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それぞれの想い

 

 

今日も今日とて家を出て学校に向かう。

もうすぐ学校に着いてしまうのだが、昨日のこともあって少し行きたくない…………

 

なんで俺が気まずさを感じなければならんのだ。

あー、嫌だなー、帰りたくなって来たなー、帰っちゃおっかなー…

いや、帰るのはダメだな。

まず、どういう感じで話せばいいんだ?

 

 

 

沙綾「あ、比企谷君……?おっはよー。」

 

 

 

普段通りに話せばいいのか………?

てか、なんで俺は話す前提で話を進めてるんだ……

…………恥ずかしすぎるだろ。

昨日の件で俺に話し掛けるのを辞めた可能性だって……

 

 

沙綾「あ、あれ?比企谷君?おーい」

 

 

 

いや、弦巻こころに限ってそれは無いか………

多分。

関わりにくくなったのは間違いないはずなんだけどな。

だけど、もう無関係者とは言えない所まで首を突っ込んでるしな。

黒服の人にもライブの件はこっちでやるって言っちまったし。

奥沢だけに任せるのも気が引けるしな……

はぁ。これからどうしたもんかね……

 

 

沙綾「ひ、き、が、や、くーん!!」

 

 

八幡「ひゃい!!?」

 

 

沙綾「やっと気づいた………

声掛けてるのに全く反応しないからビックリしたよ。

…………ふふっ、ひゃいって笑」

 

 

耳が…………耳が………

コイツ、朝から人の耳を破壊する気か?

いや、朝じゃなくてもダメだけどさ。

てか、俺に話し掛けてたのか………

………何笑ってんだコイツ。

なんかボソッと言ってた気がするけど聞こえなかった。

 

 

 

八幡「わ、悪い。比企谷君とは聞こえてたけど俺の事呼んでるとは思わなかったわ。」

 

 

沙綾「………え、どういうこと?

名前って比企谷 八幡じゃないの??」

 

 

お、おぉ。

名前を覚えられてるだけで感動しそうになったの初めてだわ。

ヒキタニ君呼びが定着するレベルだもんな。

 

 

八幡「お、おう。合ってるぞ。

ただ、アレだ。小学生や中学生の時にヒキタニやら、ヒキガエルとか言われてたからな。

比企谷って言われる方が珍しいから慣れてないだけだ。」

 

 

ヒキタニ呼びだったら、気づいてた時点で少々ヤバイかもしれない。

しかもヒキガエル呼びは、最終的にヒキが消えてカエル呼びになってたし……………

 

 

 

沙綾「え、えー…………

そ、そんな悲しい出来事があったんだね……」

 

 

 

ごめんねと謝ってくる山吹。

同情するなら金をくれ。ホントマジで。

 

 

 

沙綾「で、でも、大丈夫!!

私は絶対そんな呼び方しないから!」

 

 

 

俺の手を握って「心配しないで!」と言ってくる。

だから急に手を握るな!心の準備というものがですね!!

あー、近いし柔らかいし、なんかいい匂い………パンの匂い?

とはいえ、流石は2人の下の子を持つ姉である。

姉スキルが高いな。

だが、俺を弟扱いするのは辞めてもらおうか……

俺は小町の兄だからな!

 

 

 

八幡「わ、わかったから!

と、とりあえず落ち着け、な?」

 

 

 

沙綾「あ、ご、ごめん!

でも、さっき言ったことは本当だからね!」

 

 

 

八幡「ど、どうも。

じゃあ俺はここ…………で……」

 

 

沙綾「???急にどうしたの?固まって…………!?」

 

 

美咲「比企谷くん随分と楽しそうだね。

あ、ごめんね?邪魔しちゃって。

じゃあ、私はコレで。」

 

 

すっごい笑顔なんだけど、目が全く笑ってない。

怖い。怖いよ怖い。怒ってんのか?

昨日、俺がいない間に何があったんだよ……

 

 

 

沙綾「さ、さっきの人は比企谷君の知り合い?」

 

 

 

その言い方だと、「比企谷君に知り合いなんていたの?」

みたいなニュアンスに聞こえるのは気の所為でしょうかそうですか。

 

 

 

八幡「まぁ、そんな感じだ。

もうすぐチャイム鳴るから行くわ。」

 

 

 

沙綾「あ、うん。またねー」

 

 

 

×××

 

 

こころ「はっちまーん!」

 

 

八幡「うおっ!?…………お前か。

どうしたんすかね。」

 

 

昨日の今日でよくいつも通りに話せるな。

それとも俺が明らかに変だったって事がバレてないとか?

………いや、それはないか。コイツだけならまだしも奥沢と松原さんがいるし。

まぁ、自分から昨日の話題に触れないようにしよう。

 

 

 

こころ「お前じゃないわ!!あたしは弦巻こころよ!」

 

 

八幡「あー、はいはい。すいませんね。

………そろそろ席に着いた方がいいぞ。

チャイム鳴るし。」

 

 

こころ「放課後に話があるの!!全員集合よ!!」

 

 

 

話って昨日の事か………

やっぱり気づいてたよな……

まぁ、丁度いいな。

俺も理由をハッキリと言わないといけないからな。

 

 

×××

 

 

 

放課後になり、俺たちは弦巻家に着いた。

会議室に着くと、中には既に瀬田先輩がいた。

 

 

 

薫「待っていたよ。子猫ちゃんたち。」

 

 

 

こころ「待たせたわね!それじゃあ、早速会議を始めるわ!!」

 

 

八幡「あー…………その事なんだが、ちょっといいか?」

 

 

もう昨日の件もあるし、ここでキッパリと言った方がお互いのためだろ。

 

 

 

花音「ど、どう……したの………?」

 

 

5人が俺を見る。

雰囲気で察したのか、心配そうな顔で見られたら言いにくくなるからやめてほしい。

 

 

 

でも…………コイツらは本気だ。

奥沢はまだどう思ってるかわからんが何かと面倒見が良くて優しいやつだからな。

近いうちにでも脱退することなんてやめて、一生懸命にバンドに取り組む事だろう。

 

 

それなのに俺は、まだ何も言ってない。

出来ない理由を伝えなければ行けない。

 

 

 

八幡「俺は……バンドは出来ない。

バンドはやらない。」

 

 

 

5人「………っ!!」

 

 

 

少しの沈黙が訪れる。

弦巻まで黙るとはな。

 

 

こころ「………理由を聞いてもいいかしら?」

 

 

八幡「……あぁ。

俺は………俺の家は母子家庭なんだ。

今は、妹と母さんとカマクラって猫と一緒に暮らしてる。」

 

 

 

八幡「母さんは俺たちのために、割と無理して働いててな。

それに、前の家のローンとかも払わなきゃいけないんだよ。

俺も少しでもいいから手助けがしたい。

だから、バイトをしなきゃ行けないんだ。」

 

 

 

八幡「だから、悪い。

俺はバンドに入らない。」

 

 

 

5人「……………」

 

 

 

最初から言ってればよかったな。

別に言いたくない理由はなかったんだけどな。

話すことでもないと思ってた。

だけど、散々引きずったせいか、それともコイツらの顔を見て思ったのかは分からないが、少しだけ…………寂しいと感じた。

 

別に会えなくなる訳じゃないし、

寂しいと言うのは少しおかしいのかもしれない。

この感情が何を意味してるかなんてどうでもいい事だ。

だが、ライブの件はちゃんとやりきろう。

CiRCLEでも探せるし、まりなさんに聞けばしっかりとした所が見つけられるかもしれないしな。

 

 

 

美咲「そう………だったんだね。

………あたし達、昨日比企谷くんが帰った後に話したんだ。

様子がおかしかったから何か事情があるんじゃないかって」

 

 

美咲「……1つ聞いてもいい?

なんでこころがキーボードを頼んだ時に、悲しそうな顔をしてたの?」

 

 

 

八幡「っ!?」

 

 

 

おいおい。そんな顔もしてたのかよ。

ポーカーフェイスさん仕事してくれよ。

まぁ、別に黙ってる事でもないけどな。

 

 

 

八幡「あー、それはアレだ。

……小学生の頃弾いてたんだ。

小学生の頃は外で遊ぶタイプでもなかったからな。

ずっとピアノを弾いてたんだよ。

でも、父さんが死んだ時から弾くことを辞めてな。

それからは勉強ばっかりしてた。

中学の奨学金目当てで、ピアノなんて忘れるくらいに。」

 

 

美咲「……そっか」

 

 

 

またもや沈黙。

間違いなく俺のせいだな。

だけど今日で終わるんだ………我慢しなきゃな。

 

 

こころ「………あたしね?八幡のピアノの演奏を聴いたことがあるの」

 

 

急に弦巻が口を開く。

 

 

八幡「………いや、俺は家族以外の前で弾いた覚えはないんだが、

一体いつ………あ」

 

 

八幡「あの迷子の女の子の時………お前まさかあの場に居たのか?」

 

 

こころ「そうよ!楽しいこと探ししてたらたまたま八幡がピアノを弾いているのを見かけたわ!

周りの人も笑顔にしてて、あたしもすーっごく楽しかったわ!」

 

 

こころ「……八幡、あたしはね?

あたし達のバンドは、みんなを、世界を笑顔にするバンドになるの。

あなたがいなくても、目標も、やるべき事も何も変わらないわ。」

 

 

八幡「……………」

 

 

こころ「でもね?

あたしは、あたし達はあなたと、八幡と一緒に、バンドをしたい。

一緒に音を合わせて、一緒に世界を笑顔にしたいわ。」

 

 

花音「こころちゃん………」

はぐみ「こころん………」

薫「こころ…………」

美咲「……………」

 

 

八幡「…………さっきも言ったが俺はバンドは」

 

 

こころ「えぇ。出来ないって言ってたわよね。」

 

 

八幡「……あ、あぁ。だから」

 

 

こころ「じゃあ、やりましょう!」

 

 

5人「……………え?」

 

 

おいおい。誰かコイツを止めてくれ。

 

 

こころ「………どうしたの??」

 

 

八幡「いやいや、話聞いてたのか……?」

 

 

美咲「そ、そうだよ。比企谷くんは出来ないって」

 

 

頭の中パニクってきた。

コイツは一体何を言ってんだ。

 

 

こころ「出来ないのなら出来るようにすればいいのよ!」

 

 

花音「え、えーと………こころちゃん?」

 

 

…………コイツが言おうとしてることがわかった気がする。

 

 

 

こころ「バンドが出来ない理由は、勉強とバイトがあるからよね?」

 

 

美咲「ま、まさか……お金を……??」

 

 

はぐみ、薫「「え………?」」

 

 

いや、それは無いな。

いくら常識がぶっ飛んでる弦巻でもそれは無いと言える……根拠はないが。

コイツが言おうとしてることは、多分………

 

 

 

こころ「違うわ。

勉強とバイト、バンドもやればいいのよ!」

 

 

何もかも無茶苦茶にしたり、言ったりするのが得意なコイツの事だ。

そう言うと思ったわ………

 

 

美咲「………滅茶苦茶だ。」

 

 

花音「あ、あははは………」

 

 

はぐみ「流石こころん!!根性だね!」

 

 

薫「ふむ。その発想は無かったよ。流石だこころ」

 

 

 

八幡「待て待て。俺はCiRCLEの他にもバイトをする気だし、勉強だって良い大学に行くために学年1位は余裕で取れなきゃ行けないんだけど?」

 

 

 

こころ「はちまんっ!あなたはピアノは好きかしら?」

 

 

 

八幡「………え?」

 

 

 

いきなり何を…………

 

 

 

こころ「小学生の頃は毎日弾いていたんでしょう?

それはピアノが好きだから出来た事だとおもうの!

じゃあ、弾かなくなった今はどうなのかしら?」

 

 

 

言って……………

 

 

 

 

こころ「………八幡、あなたは凄いわ!

きっと、八幡のやってきた事はとっても大変で辛い事だったと思うの。

自分の好きだった事をやめて、勉強するなんて簡単な事じゃないわ」

 

 

戸惑う俺に、優しい顔で問いかけてくる。

 

 

 

こころ「やっぱりさっきの質問を変えるわね!嫌いなわけないもの!

八幡は…………ピアノは『今でも』好き?」

 

 

八幡「………………俺は、、、」

 

………俺はきっと逃げていたんだ。

勉強を理由に………

 

 

 

 

こころ「…………八幡は前にあたしに言ったわよね?我儘だって」

 

 

 

弾く理由が無かった。

理由が欲しかったんだ………

 

 

 

八幡「…………あぁ。

めちゃくちゃ我儘なお姫様だよ、お前は。」

 

 

 

弾いてもいい理由。

俺がピアノを好きでいてもいい理由を………

 

 

 

 

こころ「じゃあ、今から我儘を言ってもいいかしら!」

 

 

 

八幡「………はぁ、なんで疑問系じゃないんですかね。」

 

 

 

だけど………………

 

 

 

こころ「あたし達と一緒にバンドをしましょ!!」

 

 

 

…………………コイツらが理由になってくれるらしい。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

八幡「たでーま。」

 

 

小町「おかえりー。バイトお疲れ様であります!

夜ご飯今から作るからちょっと……………ありゃ?」

 

 

 

八幡「え、何………?どうした?俺の顔を見て固まって。」

 

 

 

小町「いや…………まぁ、うん。

お兄ちゃん今日いい事でもあった………?」

 

 

 

八幡「……………は?」

 

 

 

小町「うーんとね、鏡見てくれば……?

なにがあったかは知らないけど、遠足前の小学生見たいな顔してるよ?」

 

 

 

八幡「………な、何を言ってござるんだ、い、いきなり」

 

 

 

小町「お兄ちゃんに言われたくないんだけど………

大丈夫……?熱でもあるの??」

 

 

 

八幡「………い、いや、熱は無い。

そ、それに俺はアレだから。

遠足前なんて絶望な顔しかしてなかったから。

当日なんて絶望通り越して無の状態だったから。」

 

 

 

小町「…………??

何を誤魔化してるのか小町にはさっぱりわからないけど、やっぱりお兄ちゃん変だよ?

いや、お兄ちゃんが変なのは今に始まった事じゃないんだけどさ。」

 

 

 

八幡「ちょっと?小町ちゃん?

急にお兄ちゃんディスるのやめようね?」

 

 

 

小町「ほらほらそんな事はいいから、小町に話してみそ?

聞いてあげるからさ!」

 

 

 

八幡「そんな事って…………

いや、お前は聞きたいだけだろ。」

 

 

 

小町「いいじゃーん!

お兄ちゃんいっつも、つまんなそうな顔してるじゃん!

なのに今日はその逆だよ?

気にならないわけないじゃん!!」

 

 

 

八幡「……………ドに……れた。」

 

 

 

小町「全然聞こえなーい!ほら!大きな声で!!」

 

 

 

八幡「………バンドに誘われた。」

 

 

 

小町「…………………」

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

小町「………あ、もしもしお母さん?今日は赤飯炊くから何かお祝い的な食べ物買ってきてー」

 

 

八幡「……ん?ちょっと?小町!?」

 

 

 

小町「うん。いや、小町じゃなくてお兄ちゃんがね?

………そうそう。まぁ、帰ってきたら詳しく話すよー!

はい、じゃあ気をつけて帰ってきてねー」

 

 

 

八幡「………おい、何してんだ妹よ。」

 

 

小町「ん?何ってお兄ちゃんの為に夜ご飯をご馳走にしてあげるんだよ?

あ、今の小町的にポイント高い!」

 

 

八幡「いや、うん、それは八幡的にもポイント高いんだけどね?

まだ誘われたしか言ってないんだけど?」

 

 

小町「はぁ。お兄ちゃんは小町を舐めてるよ?

………いや、今回は小町じゃなくてもわかるよ、、、」

 

 

八幡「うぐっ……

…………お、俺ってそんなに顔に出てたか?」

 

 

小町「んー、、、まぁ、そこまででも無かったけど妹の小町には丸わかりって感じ!

他人が見たら気づかないかもしれない………かも?」

 

 

 

八幡「…………はぁ。

そうか。そんな顔してたんだな俺は。」

 

 

 

小町「うん!

お兄ちゃんのそんな顔見た事なかったから小町も嬉しいよ!

あ、今の小町的にちょーちょーポイント高い!」

 

 

八幡「あ、うん、高い高い。」

 

 

小町「わー、適当だー」

 

 

×××

 

 

時は経ち、3人で食卓を囲む。

 

 

 

お母さん「そんで??何がどうなったの?」

 

 

 

小町「ほらほら〜お兄ちゃん?言っちゃいなよ!」

 

 

 

八幡「おい、マジでそのノリ辞めろよ。

そこまで浮ついた話じゃなーからな」

 

 

 

お母さん「この流れだと一般的には彼女の話になるんだと思うけど、八幡に限ってそれはないと思ってるから大丈夫よ。」

 

 

 

流石母。略してさすはは。

俺の事をわかってらっしゃるー。

……だけどさ?なんか、こう、ちょっと酷くない?

合ってるよ?合ってるんだけどね?

傷つくというか、悲しいわ。うん。

 

 

 

八幡「まぁ、アレだ。

隠すことでもないから言うけど、バンドに誘われたんだ。

キーボードとして」

 

 

 

お母さん「ホントに!?」

 

 

 

勢いよく立ち上がり聞いてくる。

ビックリするから、いやもうビックリしてるから。

ほら、カマクラがなんか凄い顔してるよ?

 

 

 

八幡「お、おう。ホントに」

 

 

 

小町「やっぱりビックリするよね。」

 

 

 

お母さん「うん。だって……」

 

 

 

小町、お母さん「「八幡(お兄ちゃん)を誘ってくれるようなお友達がいたなんて!!」」

 

 

 

 

八幡「ご馳走様でした。お休みなさい」

 

 

 

小町「わー、待って待って!ごめんておにーちゃん!」

 

 

 

別に今から布団で泣くとかそういうのじゃない。

揃いも揃って俺をからかって楽しいのだろうか。

こっちは今、真面目に悩んで考えてるってのに……

 

 

 

お母さん「いやー、でも、そっか。

八幡、バンドに誘われたんだね。

………返事はしたの?」

 

 

 

八幡「…………まだ。」

 

 

 

小町「え!?そなの!?じゃあなんで嬉しそうな顔してたのさ!!」

 

 

 

八幡「いや、それは………

あの時は入ろうとしてた。ピアノが弾けると思うとワクワクもしてた。

だけど、やっぱり考えるんだ。それは俺の我儘じゃないのか。

全てを中途半端にしてしまうんじゃないか。とかな……」

 

 

 

小町「…………難しく考えすぎじゃない?」

 

 

 

八幡「………えっ?」

 

 

 

小町「……………小町はね?

小町は、お兄ちゃんに好きな事やって欲しいって思ってるよ。

もう一度ピアノを弾いてるお兄ちゃんに………

あの頃のお兄ちゃんを見たいな。」

 

 

 

お母さん「……………八幡。

カッコつけるのもいい加減にしときな。」

 

 

 

八幡「………な…」

 

 

 

お母さん「勉強頑張って、奨学金を取ってくれたのも嬉しい。

家の為にバイトをしてくれるのも凄く嬉しい。

ローンだって確かにあるけど、借金はないんだよ。

小町だって、家事もお買い物もしてくれて凄く助かってる。

2人にはいつも感謝してる。

2人とも小さい時からお父さんが亡くなっても強く生きてる。」

 

 

お母さん「でもね………?

自分のやりたい事を捨ててまでそんな事して欲しくない。

親が子どもを面倒見るのは当たり前の事なのよ?

どんなに疲れたって、辛くたってね?

あなた達が大好きだから頑張れるの。

あたしが1人だったらここまで頑張る理由はないの。」

 

 

 

お母さん「…………それなのに、

あたしのために……家のために、八幡が辛い思いをしていたら駄目だわ。

………八幡がピアノを弾かなくなった時、あたしは何も出来なかった。

弾かなくなった理由も知ってる。どんどん上がっていくテストの点数を見たり、あたしが夜遅くに帰ってくるのに、部屋の明かりがついてて勉強してる八幡を見ていたから。」

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

お母さん「あんたが変な所で頑固なのは知ってる。

だから、私の正直な気持ちを言うわ。」

 

 

 

お母さん「勉強も今まで通りしなさい。

バイトも辞めずに続けること。

そして、バンド……………好きな事もやって欲しい。」

 

 

小町「小町も同じ気持ちなのです!

全部やっちゃえばいいんだよ!」

 

 

 

八幡「……………は?え?は??」

 

 

 

弦巻と言い、この2人もだが…………そんな簡単に言わないで!?

 

 

 

小町「大体なんで絞ろうとか、出来ないとか言ってるの?

全部やれば問題ないよ!」

 

 

 

八幡「小町ちゃん?それはめちゃく」

 

 

 

小町「小町はね……?

お兄ちゃんのピアノ好きなんだ。

小町たち家族をたくさん笑顔にしてきたお兄ちゃんのピアノ。」

 

 

 

八幡「……………小町。」

 

 

 

お母さん「………はい。あとは、1人で考える時間よ。

自分は何がしたいかを決めるの。

〇か✕なんて決めないで。正解なんてないんだから。

ただ、もう少し………自分に優しくしてもいいんじゃない?」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はっちまーん!!」

 

 

 

八幡「ぐべふっ」

 

 

 

教室に向かう途中に突然背後からタックルされる。

ダメージもあるけど心臓にも悪いから辞めていただきたい。

足音は聞こえてたけど、やっぱりコイツだったのか………

 

 

 

こころ「おはようっ!」

 

 

 

八幡「いい加減、挨拶くらい静かにやってもらってもいいですかね。

………うす。」

 

 

 

こころ「挨拶はしっかり返すものよ?

うすじゃなくておはようだわ!」

 

 

 

八幡「あー、次から気をつけるわ。

………ちょっと?ここ俺の席。お前の席はあっち。OK?」

 

 

 

こころ「お前じゃないわ!!つる「だぁー、わかったわかった。」

 

 

 

八幡「弦巻……おはよう。」

 

 

なんかめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。

クラスの奴らの生暖かい目もあるし………

 

 

こころ「おはようっ!はちまん!!

それと、今日も会議室に集合よ!」

 

 

八幡「……へいへい、わかってますよ。」

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

学校が終わり、校門を出て少し歩くと黒いリムジンが止まってる。

そして、それに乗り込む俺たち。

 

 

 

花音「な、なんかこのリムジンに乗ることに抵抗が無くなって来ちゃった………」

 

 

美咲「あたしもですよ…………

こんなの絶対おかしいのに。」

 

 

八幡「3バカは普通の車に乗る感覚だろうからな。

………俺なんてリムジンは空想の話だと思ってたぞ。」

 

 

はぐみ「あ、薫くん!もう乗ってたんだね!!」

 

 

薫「あぁ。私はいつでも君たちのそばにいるよ。」

 

 

何それ怖い。

 

 

こころ「それじゃあ、出発よ!!」

 

 

 

×××

 

 

会議室に着き、全員席に座る。

 

 

 

こころ「美咲!今日もミッシェルはいないのかしら?」

 

 

美咲「あー、うん。いるんだけどね、、、ボソッ

みんなで話を進めといてって言ってたよ」

 

 

 

こころ「あらそうなの?わかったわ!!

じゃあ、会議をしましょう!」

 

 

 

花音「あ、その前に………いいかな?

えーっと………昨日の件なんだけどね?」

 

 

美咲「………うん。比企谷くんは結局…………」

 

 

 

はぐみ「あ、はぐみも気になってた!昨日はち君は、考えてくるって言ってたけど……………」

 

 

 

薫「……………答えは決まったのかい?」

 

 

 

昨日は結局、あの後何も言わずにバイトに行ったのだ。

あの時に答えてしまったら、間違いなく色々な感情に流された決断をしてしまうかもしれないと思ったからだ。

 

 

 

こころ「八幡はもう答えを持ってるのよね?」

 

 

 

八幡「……………あぁ。」

 

 

 

こころ「…………聞かせて頂戴?八幡の答えを。」

 

 

 

 

八幡「……………俺は、、、

俺はやっぱりキツイだろうって考えた。」

 

 

 

5人「………………」

 

 

 

5人は静かに俺の言葉に耳を傾けてる。

きっと、俺がどんな答えを出しても受け入れてくれるのだろうと、らしくもなく思ってしまう。

 

 

八幡「勉強は今まで通りだとして、バイトもある。

それに、俺はピアノをやってたけどキーボードは初心者だ。

軽くは弾けるかも知れないが、演奏となると全然だ。」

 

 

 

八幡「色々考えた。

バンドに入らなかった自分とバンドに入った自分。」

 

 

 

これはもう自分だけの問題ではないのだ。

入ったら当然、メンバーに迷惑をかけることになるかもしれない。

………いいや、きっとかけるだろう。

それなら入らない方がずっと楽でいい。

そう思ってた。

 

 

 

八幡「だけど………」

 

 

 

 

俺は妹の…………家族のためならたいていのことはしてしまう素晴らしい兄なのである。

それは2人が俺にくれた1つの理由だ。

そして、この5人も俺に理由をくれた。

 

どこかでずっと…………理由を探していた俺に。

 

 

 

八幡「決めたよ。」

 

 

 

理由はもうある。あとは、俺が決めるだけ。

コレは俺の意思で決めなくちゃ行けない。

………正解なんてないと言われた。

今までは答えがある問題を解くために勉強をしてきた。

こういう時には全く役に立たねぇな、勉強さん。

それでも俺は……………例え正解じゃなくても、

『コッチ』を選んで良かったって言えるくらいにはなりたい。

 

 

 

八幡「花咲川高校1年、比企谷八幡。

担当はキーボード、これから……その、よろしく頼む」

 

 

 

 

 

5人「!!!!!」

 

 

 

こころ「ん〜〜っ!勿論よ!!」

 

 

はぐみ「わーい!!はぐみっ、すっごく嬉しいよ!!」

 

 

 

美咲「…………良かった。」ボソッ

 

 

 

花音「えへへ、あたしも凄く嬉しいよ!」

 

 

 

薫「あぁ、なんて儚いんだ!」

 

 

ワイワイと盛り上がってる光景を見ると少し安心する……

この人たちは人がいいからな……

 

 

 

こころ「じゃあ、早速パーティーよ!!」

 

 

八幡「…………パーティー?」

 

 

突然弦巻が言い出した。

周りの奴らも、あははーと苦笑いしてるのは何故?

 

 

 

美咲「じ、実はですね…………

昨日、比企谷くんが帰ったあとに…………」

 

 

 

花音「こころちゃんが………………ね?」

 

 

 

こころ「こっちの部屋よ!!ほら早くっ!」

 

 

 

俺の手を掴みダッシュで廊下を走る。

ホントに何度も言うけど辞めて貰えます?

 

 

 

×××

 

 

走る事数十秒………………

 

 

こころ「着いたわ!!ココよ!さぁ、はちまんっ!!入って!!」

 

 

またもやでかい扉の前に立たされる。

この家にある部屋は全て会議室位の大きさなのだろうか………

学校よりでかい事は見ればわかるけど、半端ないなマジで。

 

 

扉を開けるとそこには────

 

 

八幡「…………なんもないぞ?」

 

 

別に普通の…………普通?ではないが、物置部屋みたいな感じだ。

 

 

こころ「ここは物置部屋よ!」

 

 

八幡「だ、だよな………?

ここになんの用が………?」

 

 

こころ「ここには特に用はないわ!

目的の部屋はもう通り過ぎたものっ!」

 

 

通り過ぎたものっ!じゃねーだろ。

走ってこっちは疲れたわ。

 

 

こころ「………八幡。あたしはね。

みんなが笑顔になってる所を見たいの。」

 

 

突然に、弦巻は言い出す。

…………こんな事を真面目に言えるなんて流石としか言えないな。

 

 

 

こころ「難しい事なのはわかってるわ!

………でも、笑顔になりたくない人はやっぱりいないと思うの。」

 

 

 

八幡「……それは……まぁ…そうだな。」

 

 

 

 

こころ「あたしはみんなを笑顔にしたいけど、あたしの力じゃなくてもいいの!

誰かが誰かを笑顔に!

とにかくみんなが笑顔で楽しかったらそれでいいの!」

 

 

 

弦巻自身の力じゃなくても、みんなが笑顔になれたらそれでいい。

別にそんな事改めて言われても、何も変には感じやしない。

コイツは別に、皆のヒーローになりたいわけじゃないんだ。

弦巻はただ、みんなの笑顔を望んでるだけ。

 

 

 

こころ「…………でもね。

自分で…………笑顔にさせたい人が出来たの。

初めてかも知れないわっ。」

 

 

八幡「…………え?」

 

 

 

 

 

こころ「………ふふっ。

やっぱりなんでもないわっ!

………さぁ、こっちよ!!みんなが待ってるわ!!」

 

 

 

 

 

…………悪戯な顔で笑う弦巻はいつもの子どものような笑顔ではなく、ちょっぴり小悪魔のような揶揄う笑顔に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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