先頭を任されたケーラ隊の一人が後方を向くと、隊長のはずのケーラ中尉は後方に陣取っている。話通り少し変わったサマだ。
作戦会議中に聞いたところ、大尉からのブライト直々の作戦変更らしく、彼女の体調を見るに必要な処置との事。どうやらメディカルルームの検査結果も持って来たらしくと、そこまで用意されれば話を聞かないわけにはいかない。
「マニュアルよりちょっと位置取りが狭いかな。でも、何時もの中尉だ」
この位の変化程度ならば戦闘結果はそう変わりはしないだろうと隊員は安堵の息を最後まで吐いた。だがそれは長年の信頼からくるものであって、もしケーラ・スゥが別人でもあれば話は違ってくるだろう。果たしてそれを知れば同じ顔は出来るのだろうかと意地悪に問いたい。
……私は真っ暗な海の中で小さく光り輝く月を探すかのように前のジェガンに張り付く。
アムロさんのリガズィはずっと先へ行ってしまった。この作戦、5thルナの核パルスエンジンが始動する前に破壊、または停止させるという時間制限のある戦いにおいて、アムロさんの程頼りになる一番槍は存在しない。
私一人の命より5thルナ落下による死者数の方がシーソーが傾いて宇宙まで飛びあがるが如し……いや、それを遥かに超える程大きい。それを踏まえても、わざわざ一人の役立たずパイロットをお守りをしている隙など、この作戦どころかどの戦場を見渡しても無いだろう。
仮にこの戦いで生き残ったとしても、今後アムロさんが付きっきりで私の介護をするわけはない。勿論理解していたが、心細さは生まれてしまう。だが間違いなくこれは贅沢な悩みだろう。逆に私が頼りなくて同じ隊の人たちには申し訳なくすらある。
「……ふぅ」
ミノフスキー粒子が散布された今の状況ではまともなレーダーは使えない。今の私はこの光、戦場へ向かうロンドベルの仲間達、ジェガンのバーニアから漏れ出る光に向かって突き進むしかない。
ミノフスキー粒子は散布することで通信障害を引き起こす目には見えない不可視の物質。この透明な物のせいでMSと云うマシンが誕生し猛威を振るったこの世界に無くてはならない物だ。
目には見えないけどそこに有る物、例えて友情とか愛とかいう人も居るけどその前に目の前の空気のありがたさを知るべきだろう。身近な物への感謝が無ければ愛は生まれない。
……などと遊び事を掻き立てていると急に、耳元で大きな雷撃の様な声が耳を抜けた。
「……アムロ・レイ交戦に入った、宙域SS6!」
「……通信が入った!結構近い!」
前方のジェガンが合図をする。
「ええと……この合図は……ママよっ!」
全く違う意味で叫んだ言葉だがこうでもしないと恐怖で押しつぶされそうだったことを言い訳にしておこう。
――
……闇の中一筋の光が見える、よく見れば後ろに同じような線が幾つも見えるが、最初に目に入ったこの光だけは彼方から見ても、不思議と輝いて見える。
「……これが限界か…… 敵!」
通常のパイロットなら敵どころか味方も見失ってしまいそうなほどのスピードの中アムロは手慣れた様に手中のハンドルレバーを動かし、MA形態のリガズィを紙飛行機でも操るかのように機首を上げ慣性を殺す。と、絶妙な推進量で先ほどの猛スピードが嘘の様に力なく進み、さらにそこから緩やかに右にローリング、MS二機分ほどの岩石に鮮やかに隠れた。
簡単に説明したが、この動作だけでも神業と呼べるレベルの動きであり、真似できようパイロットが居るものならそれは世紀の天才か人類を統べる覇者かの二択だろう。
「……前方にギラドーガ一機、自分なら簡単に捻れる」
報告を済ませたアムロは息を突く間もないまま敵に突進した。無論それは5thが理由で通常ならほぼ有り得ない選択だが自分の腕を信じアクセルを踏んだ。
――
「……ん?」
ここで、ミノフスキー粒子でおぼつかないレーダーがようやく鳴り響いた。
シャトル型のMAがこちらに突進してくる。
「ロンド・ベル!」
そしてギラドーガのモノアイが捕らえたそれはまるで――
――爆発音、間もなく。
「……カーフ・ソウがやられた! お前たち行くぞぉ!」
一人の命が破壊され、誰かが叫ぶとその周りに隠れるようにしていたギラドーガが集まった。
「三機もいた……! 囲もうとして……!」
人間とは思えない速度で反応したアムロはトラップだと知った時、その場から離脱するでも後方に逃げるでもなく、大きく旋回、逆に向かっていったのだ。
案の定、移動の隙を狙われ好きな様に撃たれ放題になるがアムロ・レイはこれが決してミスではないと知っている。
「くそっ、糞!舐めやがって!落としてやるっ!」
5thルナが微量に残した岩石群を囮にしてするすると抜けていく、リガズィが弾幕を抜けて直ぐにギラドーガの方を向き、またも愚直に敵に突進。これは岩を盾にしているとはいえアムロ・レイらしくない一か八かの戦い。
……否、これは自分に弾を撃ち続ける続けるギラドーガ達から身を守る為に利用している岩の一つに向かってアムロは突進している。アムロ・レイには策がある。
「……落ちろ!」
そしてそれは、MAリガズィ機首に装備されているこの機体最高火力メガ粒子砲を、ギラドーガ達がわざわざ丁度良くなるまで「破壊してくれた」岩屑を巻き込むようにしてMSをズバリ撃ち抜いた。
「ばっ……! 化け物だっ……!」
全く持って例えるのはそれしかない。
――
「……アムロ、敵と交戦、四機撃墜。恐らく偵察要因だ、敵を落としたこの宙域から5thルートへ向かう」
「……へ? 撃墜って……? 四機も……? 三十秒経った……?!」
「……この先は5thが落としていった遮蔽物の無い戦いになる、ケーラは特に注意しろ!」
「……は、はい……」
通信越しにもっと気を入れろと怒られる。これは中々に恥ずかしい。だが確かに気は少し入った。
アムロさんはやはり最強だ、ここまで強い人が味方なんだ、なんと心強い。アストナージさんも指折りのメカニックマン、この二人が仲間なんだという事が今は唯々私の心に少しの安心を与えてくれる。ロンドベルの人たちも、おまけにブライトさんまでもいる。
杞憂だったこの人たちが居れば、私なんかが居なくてもシャア・アズナブルの作戦を……。
――ピシューン!!
突然後ろのジェガンがライフルを放つ。さらにその後方の同機体も真似するかのように銃を撃つ。そうすると味方が銃を向けた反対方向から何故か同じように、同じ光が……。
「……え、その方向に味方のジェガンなんていた……」
味方の怒号が電撃の様に足から頭上まで走る。
「……ケーラ! 何やってる! 宙域DS6に敵だ! 撃て!!」
まるでその電撃が本当に感電したかのように体中をザクザクと突いて回る。体が、足に力が入らない。
先ほどまでの余裕が嘘の様に震える。手が、足がまるで私の物などではないかのようにぴりぴりと痺れ始める。
……モニターの敵は私を狙っていない。大丈夫、落ち着いてやれば……。
……息継ぎをする、……息を吸っては吐き、吸っては吐き、……だけどいつかの時の様に肺に酸素が入らない、入ったような気がしない。……変な息遣いになっている事は自分でもわかる。治さなきゃ、普通に、普通に治して、みんなと一緒に敵を撃たなきゃ……!
ゆらゆらと震える指がトリガーへと掛かる。そうだ、思い出さなきゃ、あの時の決意を……。
モニター越しのギラドーガの腕が取れた。もう少しだ。
……私は……私は、アムロさん達と戦うんだ、アストナージさんを守るんだ! ……こんなところで立ち止まっていられない! 敵を撃たなくてもできる事が在る筈だ! ……例えばワザと外すように打っても銃なら牽制になるはずだ……! 少しでも弾幕を張らないと……! 撃たないと……!
――――デモソレデ死ンダラキミノセイデモアルヨネ?
その言葉が心臓を駆け抜けた時。
「……いたい……」
「……っ!!」
瞳の中に泣いているあの子が映る。心が揺れる音がする。痛い痛いと頭を押さえ助けを呼んでいる私の友達が、台詞が頭の中でぐるぐると周る。そうすると私の頭もぼやけてきて……。撃たなきゃ! 今あの子に構っている暇はない。逃げたいなら勝手に逃げればいい。撃たなきゃ! じゃないと私が撃たれて……アムロさんも撃たれて……アストナージさんも撃たれて……みんな死んじゃうんだ! 撃たなきゃ!
敵が銃口を別の味方に変えた、狂ったように乱射している。それを見て私は射撃体勢を取ったまま、ぼーっと間抜けに立ちつくしている。周りの味方は皆で敵を攻撃してギラドーガはボロボロになって……いや、イジメてい……る? これは何……? なんでみんなで一人を殺そうとしてるの……? なんで? かわいそうじゃないの……?
「……みんな、私をいじめてる……の……?」
ジェガン部隊がライフルで応戦する中、モニターに映るターゲットのはずの鉄屑間近になったギラドーガが最後に私を見て喋りかけた。
「たすけて……」
心が折れた音がした。
「やめて……やめて……やめてぇええええええええ!!!!!」
……私は、人生で出したことも無いような声で叫び、震える手で味方のジェガンに向かって銃を抜く。
これから色々キャラが出ますが焦点を当てて欲しいキャラはいますか?※主人公と絡んで欲しい要望は後からやります。アムシャアは描写集中確定
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クェス
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ギュネイ
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アデナウアー
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ブライト
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ナナイ
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アストナージ
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ホルスト
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レズン
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カムラン(投票しないで)
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チェーン