「……やめてぇええええええええええええ!!!!!」
トリガーに指を掛け、味方のジェガンに銃を向ける、錯乱して引き金を引こうとするその刹那。頭の中でアムロさんの声が頭を駆け抜ける。
「君は撃たなくていい。だけど自分が銃を向けられた時は、引いても誰も責めないよケーラ」
そうだ。アムロさんだって銃を向けられたら撃てって……。
少し前の事を思った時、脳みそに直接針を刺されたかの様な痛みが走る。
「……っつ!!」
――
……目を開くと霧の中にいた。
今にも泣きそうな酷い顔で辺りをゆっくりと見渡す。霧がかった森の様な場所、地面は薄く雑草が這っていて、土がむき出しになっているところもある。私はその真ん中にぼっと突っ立って居る。勿論先の景色は見れない。帰り道は今しがた自分の手でなくしてしまった。
全てを諦めた足でとぼとぼと一人で歩く。ふと心に思う。
私は何て事をしてしまったんだろう。みんなの期待を裏切って、自分の帰る場所も失って、誰も守れなくって、自分は変わったと思ったのに何も変わらない。
迷い込む。ただ朝日を探して同じ場所をぐるぐると。そうしていると気付いた。
「ここは……。そうか、私みたいに行き場が無くなった人が最後に来る場所……」
理解して、今までの事を思い出して疲れて苔の生えた岩にぺたと座る。少ししたら風も冷たくなってきた、心の中も焦りから諦めへと変わってきた。黒く冷たい何かがじわじわと心を食べていく。
穴だらけの心を突かれて、溜めていた涙が溢れ出してしまった。
「ごめんなさいアムロさん、ごめんなさいアストナージさん。私は馬鹿だ、やっぱり馬鹿なんだ。できもしない事を無理やり自分に嘘ついて引き受けて結局、混乱させるだけ混乱させて……」
疲れと後悔で、重力に引かれたようにその場から一歩も動ける気がしなくなった。手の感覚が無くなってきた、喉もカラカラ、食料はない。
「……体が重い」
……しばらくしてぽたぽたと地面に落ちていた涙の痕を赤い顔をしながら靴でごしごしいじくると、いつの間にやらその足に人型の影が掛かった。
顔を上げると何やら人型がこっちをすぐそばで見つめている。
人型では伝わらないだろうから、その人の様子を詳しく話すと、まるで濃い霧の中で浮かんでいる人を見ているみたいに形が不安定で本当に影だけが見えるなんとも魔訶不思議な……人? するとその恐らくの人物が話しかけてきた。
「やあ、緊張のし過ぎだね?」
「……はい。みんな不幸にしてしまいました」
何故かその人に、その影が喋りかけてくることに私は驚きもせず答える。きっと誰でもいいから話を聞いてほしかったのかもしれない、例えそれがもしもの人でなくても。
「アムロ・レイは何もしてくれなかったの?アストナージは?」
「みんな、みんないっぱい頑張ってくれました。それなのに私は……撃つ相手すら間違えて……」
さっき涙は流したばかりなのに、また泣いてしまう。影は私を糾弾するでも叱るでもなく、ただ問いかける。スカートは涙でぐしゃぬれだ。
「そっか……。でも間違えたってことは、正すこともできるよね?」
「ねね、大尉の言葉をよく思い出してみてよ?」
「……はい? アムロさんの……?」
その言葉を口にして私はあの時思い出せなかった、味方に銃を向けヒステリーを起こしたという無様な紐で雁字搦めになっていた記憶を解いていく。
君は撃たなくていい。だけど自分が銃を向けられた時は、引いても誰も責めないよケーラ。
アムロさんはそう言っていた。……ただそれだけ……?
「……。……ちがう。……アムロさんが言ってたことはそれだけじゃなかった」
その台詞の後……
――出撃前MSデッキ。
「……でもねケーラ、僕は君に誰も撃ってほしくない」
素っ頓狂な顔をする私に、アムロ・レイはやはりと言う顔をして、唇の左横を少し吊り上げて笑った。
「……君は、人の為に無理をしてしまう人だ。俺は君ほど素直じゃないが、自分もそうだった。素直じゃないから逃げ出したりもしたが」
「その中で、悔し泣きしたり、誰かを好きになったり、新しいだれかと出会ったり、その自分を変えていく、成長していく日々の中で唯一自分に要らない物があったとすれば……」
「……戦争だよ、ケーラ・スゥ。だから君に撃ってほしくない」
――
……手が震える。言っていた、言ってくれいてた、私の為に、私の事も考えて……。言ってくれてたのに私は自分の想いばかりに目が言って……!
「……馬鹿です。私って本当に馬鹿……」
後悔はし過ぎているつもりだった。両親にもっと甘えられなかった事、元の世界の事、あの子の事、アストナージさんの事、そして今。……だけどそれと同じくらい、いや今はそれ以上の後悔が押し寄せてくる。
なんで錯乱したのか、なんでその前に考えられなかったのか、なんで思い出せなかったのか、そればかりが頭の中で浮かび上がり一つも消えないまま強く残る。
「今のままでいいの?」
人影が私に優しく話しかける。私の持っていたサイコフレームよりは少し強い声だが、通りの良いまるでどこかで聞いた事のあるような艶のある声だ。
涙が流れっぱなしの私は、選択を求められた。
そんな私は止まらない涙をぬぐっては拭ってはの不細工で格好の悪い姿だが、心には強い後悔と、ある思いが火に掛かっている。
「……いや……です。私は、あの世界で私に出来る事をしたい……です……!」
涙は流れたままだったが、私にはまだ終わりたくないという気持ちが確かに体の真ん中にある。
それを見て「そっか」と恐らく笑った人影が私の頭をなでた。
「……実はまだ終わってないんだよね。今の君は味方に向かってガングリップを握っているだけ」
「でもさっきの君はこのままだと撃っちゃうだろうね。でもいまは……どうしたい?」
もう私の言葉は要らなかった強く、強く心に思う、今の私はどうしたいのか?そうだ、今の私は。
……周りの景色が黒く崩れて行く、その景色は唯の真っ黒に見えたがよく見るとぽつぽつと小さな光たちが見える。端には大きな青い星が見えた。それに沿うように私は手の平をかざす。
崩れて行く景色の中で人影が笑って散っていく、顔は霧がかっていたがまるでこれからの未来を見通して笑っているように見えた。満足そうに……最後にこう言い残して。
「アストナージによろしくね、ケーラ・スゥ」
「あなたは……!」
……かざした手の平の先その最後の言葉を私は手では無く言葉で掬い取るしか出来なかった。
――
……ボロボロの、鉄くず同然のギラドーガがこちらに向かって同じく手を突き出している。
……私はそれを逃げないように、目を逸らさないように差し伸べていた自分の手を下ろしてしっかりとこの眼で命の散る様を捉えた。
こちらに手を向けているのは未だに戦おうとしているのか救いを求めようとしているのかは解らない、装甲の隙間から火が出て紫色に散っていくその様。
その人は純粋な悪でも世界を騙す卑怯者でもない、ただの命令された普通の人だ。私と違ったのはただ仕事と立場だけ。その命が散る様を、そのあたり前を、ただ目に焼き付けた。
腰のサイコフレームは淡く緑色に光り輝いている。
アムロに戦争が要らないという話をさせるのは迷いましたが、戦わない人には戦わない人の顔がアムロにはあったと思ったのでそのままGOしました。
これから色々キャラが出ますが焦点を当てて欲しいキャラはいますか?※主人公と絡んで欲しい要望は後からやります。アムシャアは描写集中確定
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クェス
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ギュネイ
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アデナウアー
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ブライト
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ナナイ
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アストナージ
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ホルスト
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レズン
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カムラン(投票しないで)
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チェーン