この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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申し訳ないのですが、何度かデータが吹っ飛んでしまった為、急いで一から書き直したのでいろいろ誤字が目立ちますが容赦ください。


カズマの日常(爆裂編)

「おい待てよ」

 

彼女に負けじと食材を掻き込みそのままギルドの外に飛び出す。

彼女を見失ったが、幸いにも他にも現場に向かう人達の列が出来ていたので、その列をなぞりながら負けじと後ろから列を追って付いていく。

しかし走れども目的地にはなかなか着く事はなく、前を見れば火の出ているところは大分先の景色になっている。

マジかよ…どれだけ遠いんだよ。

走っている最中も何人かに抜かされていった。やはりステータスの差なのだろうか。

 

 

走る事数時間ようやく現場に辿り着くが、どうやら消火活動はおおよそ終了していたのか、既に辺りは暗くなっている。

 

「今回は早く消えた様だな」

 

消火に関わっていた人の一人だろうか、燃え炭になり掛けている木々を眺めながらボソッと呟いた。

 

「今回はって事は前回は凄かったんですか?」

 

何と無く興味半分に聞いてみる。

 

「あぁそうだな、前回はこんな爆発…威力みたいなのは無かったんだが、黒くてよくわかんねぇ炎でな、消そうとしても全く消えねえしな、しょうがねぇもんだから周りの草木を全部切り払って燃え尽きるのを待ってたんだよ」

「そ、そうですか…大変でしたね」

 

黒い炎、多分俺がこの世界にきて初めて放った闇の炎の事だろう。これ以上追及されたらボロが出かねないので即座に話を終わらせ退散する。

適当な話にすり替え何とか違和感なく退散する。そう言えばゆんゆんは何処なのだろうか?消火活動に向かったのならこの辺りにいても良いのだが。

 

「すいません、ゆんゆんって言う黒髪を後ろで二つに詰んだ赤目の女の子知りませんか?」

 

取り敢えずそこら辺でたむろしている集団に確認すると、そのうちの一人が見かけたらしく。

 

「その子なら奥にいると思うぞ」

 

と、奥の方角を指差す。確かに耳を済ませば何かガザガザした音が聞こえる。

 

「ありがとうございます」

 

お礼を言い、森の奥に向かう。

 

「あ、カズマさん来ていたんですね。丁度よかったこっちに来てください」

 

森を進むと丁度反対方向から彼女がひょっこり現れる。

 

「おっおう、まあ良いけど」

 

彼女の案内を受け森の更に奥に向かう。やはり先程の音は爆発だったのだろう、多分爆心地だと思われるであろう奥に進むにつれ木々が燃え墨になっている範囲が広がり、やがて何も無い焦土へと変わっていった。そしてその爆心地にたどり着く。

 

「何だこれは」

 

その光景を見て唖然とした、範囲にしておおよそ半径二十メートルくらいだろうか、地面に大きな半円球状のクレーターが生成されていた。

そしてそのクレーターを囲む様にしてウィザードだろうか、ローブを羽織った人達が並びながら砂を上からかけ埋めていた。

 

「下級魔法を使える方々でこうしてクレーターを埋めているんです、カズマさんも確か下級魔法使えましたよね」

 

ゆんゆんに促されクリエイトアースにより砂を生成しクレーターに流し込んでいく。因みに魔法で作られたこの土は栄養価が高く、農家などで野菜を作る際に役立つと言う。まあ冒険には役に立たないけど。

 

「しかし、この砂、質量保存の法則はどうなっているんだ?」

 

素朴な疑問である、魔力で生成されるこの砂は一体何処から持って来られるのだろうか?もし周りから集めるのならこの作業の果ては大きな地盤沈下になるだろう。

 

「質量ほ…何ですか?よくわかりませんが、皆さんはそう言うものは取り敢えず使える物は使うだそうなので気にしないほうがいいですよ」

 

マジか。どうやらこの世界は魔法などが発達したが、その分科学の分野が遅れているのだろう。

しかし、周りと見比べると流れる砂量は俺と比べると大分多い、やはりステータスかレベルのせいなのか周りと比べると俺の性能が大分劣っていると考えられる。女神からチートとして闇の炎を貰ったがどうやらステータスは素のままなのだろうか、それともこの異常に高い幸運値がチートの副賞みたいなものだろうか?

そんなこんなで、大きなクレーターはウィザードの生成された砂により埋まる。

 

「では皆さん!次は水をお願いします」

 

それを確認すると彼女の合図により砂から水へと皆切り替え、砂にクリエイトウォーターにより水をかけていく。

 

「何だ?ここの指揮はゆんゆんが行なっているのか?」

 

彼女は人を使うよりも使われる方の人間だと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。

 

「あ、い…いえ、何故か気づいたらいつのまにか私が仕切ることになってしまったと言いますか…」

 

俺の考えは外れた。どうやらただ押し付けられただけの様だ。

 

 

 

 

それから水を掛け終わった後、他のウィザードの魔法なのか焼け焦げた木々がまた一から生え始め森林は復興されていった。どうやらこの世界の魔法には自然再生の魔法も存在するらしい。この魔法を日本に持ち帰ったら地球温暖化は解消されるだろうに。

しかし魔力の消費量は凄まじいのか、いくつかの範囲を生やすと一人また一人バタンと倒れていく。

 

 

 

木々がおおよそ自然の力だけで元に戻る程度まで回復した事を確認すると、彼女が散開している人たちを集め解散の音頭を取り、一人また一人とアクセルに帰っていった。

 

「ところで一体この爆発は何なんだ?」

 

解散しアクセルに向かう途中、気になって仕方がなかったので彼女に尋ねる。

 

「そうですね、多分爆裂魔法ですね…」

 

爆裂魔法…聞いたことはないが、名前の字面的にそのままだが強力な爆発魔法なのだろう。しかし上級職のアークウィザードである彼女の魔法を全部ではないが、いくつか見てきてここまで凄い威力のモノを見たことが無い。

黙って考えていると彼女は話を続け。

 

「爆裂魔法は風や炎などの複数の属性をまとめた複合魔法で威力は魔法の中では最強と言われています」

 

複合魔法、聞こえはカッコいいがその分習得難易度もすごく高いのだろう。

 

「マジかよ、じゃあゆんゆんもこんなの使えるのか?」

「いえ…私は使えません…爆裂魔法は威力は勿論ですが、習得も難しくて…ポイントを50も消費するんです」

 

50だと⁉︎

余りのポイントの多さに絶句する、この世界に来て数日、レベルも大分上がったが一度に上がるのはせいぜい数ポイント、50ポイントまで何も取らなかったとしてもかなりのレベルが必要になるだろう。

 

「そんなのを取るなんて余程の凄腕なんだろうな、ゆんゆんも目標は爆裂魔法なのか?」

 

ほえーと適当に考えて発言する

 

「いえ私は特に取ろうとかは考えてないですね…爆裂魔法は魔力消費が激しくて、私の里で一番魔力量が多い人でも一度放てば魔力切れを起こして動けなくなる位だと言われています」

 

マジかよ、それにダンジョンだと爆発で崩れていくとか、高い威力の代償に様々なデメリットがあるとまるで見てきた様に説明される。

 

「なのでうちの里では誰も取らないネタ魔法と言われていますね」

 

ネタ魔法か…確かにこの魔法を取ると他の魔法が取れなくなり、この爆裂魔法一点型になるだろう。そして撃てば1日動けなくなる、戦争でも無い限りは普通は取らないな。

しかし、ふと疑問が出てくる。

 

「じゃあ何でそいつは爆裂魔法なんて取ったんだろうな?」

 

一体これを取った人は何を考えこの魔法を取ったのか、その答えが知りたくなった。

 

「さあ、私にもそれは分からないですね……私は上級魔法を取りなさいと言ったんですけど…」

 

最後の一文はボソッと俺に聞き取れない位の声量で何かを呟いた。

 

「ん?最後何て言ったんだ?」

 

確認するが、何も言ってないですよとはぐらかされる。

 

「じゃあ本人に聞いた方がいいな、消火活動の時倒れている姿の奴が見えなかったけど…」

 

犯人は現場にいる、とまでは言わないがこんな事になったら様子くらいは見にいくものだろう。この森の修復の報酬だってアクセルの税金から賄われるそうだし、逃げてなくも特に損は無いだろう。

 

「多分もうアクセルに帰ったんじゃ無いですか?居ても邪魔になるだけでしょうし」

 

同じアークウィザードなのだろうか、少し語尾がきつめだった。確かに動けなくなるんだったら居てもしょうがないだろう。

 

「そう言われるとそうだな、今度ギルドにいたら教えてくれ」

「えぇ…」

 

彼女は少し嫌そうに言う、何だ?過去に何かあったのだろうか?

 

 

そんなこんなでアクセルにたどり着く、こんな事もあってかいくつかの店は開いている為、いつもみたいに真っ暗ではなく街灯も付いている。

 

「そうだゆんゆん、明日はどうする?俺はしばらくキャベツの金でゴロゴロする予定だけど。何かあるなら付き合うぞ」

 

門を潜り、彼女の泊まっている宿への分かれ道で話しかける。

 

「それなんですけど、ごめんなさい。明日はちょっと用事がありまして…また明後日に会いましょう」

 

何…だと⁉︎

彼女に予定がある事に衝撃を受ける。ボッチだと思っていたのだがどうやら違ったらしい。

そんな事を考えていると彼女はそれを読み取ったのか。

 

「酷いですよ!私にも用事くらいあります。それにカズマさんも人のこと言えるんですか?」

 

プンスカ彼女が怒る。確かに言われてみれば、最初のクエストから彼女と行動を共にしている為か、他の連中とは話はよくするがプライベートまで関わった奴は居ない。

ゆんゆんの次に仲がいいと言えばクリスになるが、意外と神出鬼没でタイミングが合わないと会えない日が多々ある。

 

「ゆんゆんにだけは言われたく無い事を言われてしまった」

 

がっくしと膝と手ををつき当てつけの様に項垂れる。

 

「私にだけってどういう事ですか⁉︎私には受付の人や道具屋の店員さんとか他に知り合いは居るんですからね‼︎」

 

バサッと、ローブを翻し高らかに宣言する。店員さんはともかく受付さんの心情は知っているので何だかいたたまれなくなり。反撃しようと思った気持ちが薄れてしまった。

 

「まあいいや、わかったよ明後日な。やる事なかったら俺は酒場にいると思うから声かけてくれよ」

 

ポリポリと頭を掻く。しかし彼女はそんなしおらしい対応した俺に驚いたのか、彼女もシュンとし

 

「私もこの街からは一応出ないつもりなのでどこかで会うかもしれませんね」

 

と俯きながら宿に向かっていった。

 

 

 

 

彼女と分かれ、銭湯に向かい一風呂浴びて宿屋に向かう。今回は今までとは違い懐に余裕があるので贅沢して宿屋の広い大部屋を予約してあるのだ。この世界に来て早数日、馬小屋で寝泊まりしていたが、ようやくまともな寝床につけそうだ。

ゆんゆんも用事があって会えない事もあり、折角なので色々買っておいて明日のチェックアウトまで楽しもうじゃないか。

物資を補給するために雑貨屋に向かう。時間も大分遅くなり開いていた屋台や店も大方閉まっている、しかし、今の時間でもやっている店はこの世界にもありそれがこの雑貨屋。

他の店と比べると品揃えは少ないがいつでも買えるをモットーに夜遅くに戻って来る冒険者から愛用されている。日本でいうコンビニの様なものである。

ギルドから近く、今目の前にある角を曲がれば店が見えるだろう。

 

「ん?」

 

角を曲がると、店までの通り道のど真ん中に誰かが倒れている。見た目からして黒いローブにブーツ、そして黒いとんがり帽子。まるでファンタジーの世界にいる魔法使いを、本からそのまま引っ張てきた様なそんな姿をしている。

 

「おい大丈夫か?」

 

美人局みたいな詐欺じゃ無いだろうかと警戒しながら近づきその人を起こす。その人は意外にも軽くサイズからして多分女の子だろう。

 

「う…」

 

どうやら本当に倒れている様なので、軽く仰向けにして抱き上げる。

 

「何だ、何があったんだ?」

 

近くには彼女の物だろうか、杖やアイパッチが散乱している。もしかしたら誰かに襲われたのかもしれない。

彼女は苦しそうに必死に腕を動かし俺の肩を掴むと

 

「お、お腹が…お腹が空きました」

 

それと同時にグルルルと彼女のお腹が空腹を訴える様に音を鳴らした。

 

「そ、そうかーそれは大変だな、でも道のど真ん中に居たら危ないぞ」

 

何でだろうか、すごく嫌な予感と俺の危機察知センサーがサイレンを鳴らしている。意外にもこういった時の直感は当たるものなので、そのまま彼女をお姫様抱っこの要領で持ち運び道端の壁に寄掛けさせる。

このアクセルは駆け出しの冒険者が集まる街、朝になればエリス教の方々が炊き出しを行なっているし、女性なので何処かは分からないが保護してもらえる所があるだろう。つまりこのまま置いておいても大丈夫だろう…多分。

 

「じゃあ暗いけど気を付けてな」

 

ヨイショ、と彼女を下ろし離そうとする。彼女はそれをボーと眺めたと思った矢先に、ガシッと首の後ろから腕を回しお姫様抱っこの状態でホールドする。

その体勢になると必然的に顔が向かい合う。うん、やはり整った顔だな今はまだロリっ子だがあと何年かすれば良い感じになるだろう。

そんな事を考えていると、彼女はそれを、俺から引き剥がそうとする事を観念したと思ったのか。

 

「お願いします‼︎何か食べさせて下さい‼︎もう何日も何も食べてないんです‼︎何でもしますからお願いします‼︎食べ物を!」

 

がっしりホールドした状態で、彼女は俺の耳元で大声で叫んだ。あまりの音にビックリし振り解こうとするが食べ物への執念なのかビクともしなかった。

 

「分かった!分かったから離せ‼︎あと静かにしろ近所迷惑だから‼︎」

 

今度は俺がガシッと彼女の顔にアイアンクローを決め無理やり黙らせる。

 

「本当ですかありがとうございます‼︎」

 

それを聞いた彼女は叫ぶのをやめてアイアンクローをされたままの状態で、もがもがと感謝の言葉を述べる。

ついでに引き離そうとするが全然ビクともしなかった。

チクショウ ‼︎これがステータスの差か‼︎

 

 

その後彼女を背負いながら雑貨屋に入る。店員の目線が突き刺さったが何とか買い物を済ませて宿に向かう。

 

「なあ、このままだと俺と宿に入る事になるけど大丈夫か?帰るなら何時も泊まっている場所まで運ぶけど」

 

一応彼女は女性なので確認するが、彼女はそんな事は気にも止めず。

 

「大丈夫ですよ、それに外で食べるよりゆっくり中で食べた方が私的にも有難いです」

「えぇ…」

 

唖然としていると彼女は言葉を続け

 

「それに、今はこんな体たらくですが、これでも人を見る目はあります。私が見るにあなたは超が付く位のお人好しです‼︎」

 

ビシッと昔流行った某占い師もビックリな位に彼女は宣言する。間違っては居ないが俺ってそんなに分かりやすいのだろうか。

 

「ハイハイありがとうございまーす」

 

適当に返事をし宿屋に入る。宿屋は日本のホテルの様に一階にロビーがあり受付に人が台を挟んで向こう側に立っている。

一度彼女を椅子に下ろし、受付にチェックインの手続きと一人増える旨を伝えると、どうやら客人用の布団があるのでそちらを使用してくださいとの事だった。

日本の宿との違いに驚きながら鍵を受け取ると、再び彼女を背負いながら部屋に向かう。景色を楽しむ事を考慮し上の階を取ってしまった為彼女を背負いながらの階段の昇降に部屋の階数を間違えたと後悔する。

 

「ほら着いたから一旦降ろすぞ」

 

部屋の前に立ち鍵を開ける為に彼女を降ろし、解錠し扉を固定すると再び彼女を持ち上げ中に入る。

 

「おぉ‼︎」

 

目の前に広がるのは日本でも中々見ない綺麗で広い洋風の部屋だった。

 

「何ですかこの贅沢な部屋は⁉︎あなたもしかしてお、お金持ちだったのですか」

 

彼女も同じ感想だったのか、後ろから感嘆の声が聞こえる。

 

「いや違うから、全然金持ちじゃないから、今日だけ奮発しただけだから、いつもは馬小屋だから」

 

このまま彼女にたかられるのは嫌なので、ある事無い事を羅列する。まあほとんど真実なのだが。

 

「そう…でしたか」

 

彼女は少しがっかりした様にしょげる。

取り敢えず部屋の中に入りテーブルに備え付けられた椅子に彼女を座らせ、帽子とマントを剥ぎ取る。彼女も脱がされる事に慣れているのか体勢やバランスなどのサポートが上手く少なくとも抵抗されることはなかった。

 

「申し訳ないのですが、早く夕食にして頂けると嬉しいのですが」

 

帽子とローブをハンガー等々に掛けていると、グルルと彼女のお腹が鳴る。

 

「はいはい、分かったよ」

 

先程雑貨屋で買ってきた袋をテーブルの上に乗せ中身を展開していく。

 

「おぉ、これですよこれ‼︎」

 

雑貨屋で彼女にせがまれた多分大好物であろう物を並べると、ここに来るまでに回復したのか辿々しい手付きで食べ物を漁りながら食べていく。

かく言う自分も先程の消火活動で魔力を消費した為か、空腹気味なので彼女に取られまいと手を伸ばす。

何度かおかず等々の取り合いがあったが、無事食事が終わり二人とも食欲が満たされたのか、何とも言え無い満足感に満ちた雰囲気になる。

 

「そう言えばこんな遅くに何をしていたんですか?」

 

ポケーとしながらそんな質問が飛んできた。

 

「あぁ、何処かの誰かが爆裂魔法をぶっ放して、今まで消火活動に追われていたんだよ」

 

元々の夕食を邪魔された恨みもあった為か少しキツ目に言うと、何故か彼女がビクッと反応した。

何だろうな、と思っていると

 

「そう言えばお前の名前を聞いてなかったな、聞いても良いか?」

 

何だかんだ言って名前を聞きそびれた事を思い出す。何と無くだが雰囲気が彼女にそっくりだったのか、話す事に違和感は無く寧ろ話しやすくここまで来てしまった。

 

「そうでしたね、私とした事が…ちょっと待っててください」

 

雑貨屋の袋に一緒に入っていたウエットシートの様なもので口元を拭く。明るいところで改めて見ると黒髪に耳の後ろを部分的に肩口まで伸ばした髪型にどこかで見た様な赤い目をしていた。

 

「では、遅れてしまい失礼致しました」

 

コホンと前置きをする。うん?自己紹介するのに何で気合いを入れているのだろうか?

 

「我が名はめぐみん‼︎アークウィザードを生業とし紅魔一の最強の魔法の使い手」

 

ババーンと何処かで見た様なカッコつけのポーズの亜種版と自己紹介を見せ付けられる。

そうかゆんゆんと同じ紅魔族だったのか、道理で雰囲気が似ている訳だ。見た目からして多分年下だろう、一応ゆんゆんの事を聞いておこうかと思ったが人見知りな彼女の事だ多分嫌がるだろうから伏せておこう。

彼女の自己紹介に成る程な〜と納得していると

 

「さあ、次はあなたの番ですよ」

 

と、催促される。そうだったと慌てながら彼女に続く。

 

「悪い悪い、俺はカズマよろしくなアークウィザード」

 

そう言いながら手を差し出すと、彼女は何か言いたげに無言で俺の手を握り返した。

 

 

その後、洗面室で歯磨き等を済ませ、彼女を客人用の布団に転がし俺は自分のベットに潜る。

 

「電気消すけどいいか?」

 

確認の為声を掛けると、不自然に盛り上がった布団からニョキっと顔を出し。

 

「私は構いませんよ、どのみち今日はこれ以上動けませんし」

「オッケー」

 

パチンと電気を落としベットに潜る、本来なら女の子と一晩過ごすのにドギマギする展開だが、よくよく考えてみるとクエストとは言えゆんゆんと二晩過ごしている為、めぐみんと同じ部屋で寝る事に何も感じる事は無くそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

「ふぁ〜あ」

 

朝目が醒める、やはりそれなりに高い部屋であるだけあって、起きた時の節々の痛みなども全く無く、馬小屋とは比べ物にならないくらい快眠だった。

勢いよく飛び起き顔を洗い、前回買った装備に着替え、お茶を淹れる。

そう言えばと彼女の存在を思い出す。

互いに自己紹介を終えた後に、お礼に用があって居ないゆんゆんの代わりにクエストに付き合うと言う約束になった。彼女もゆんゆんと同じ紅魔族、魔力値もうろ覚えなのでよくは分からないがゆんゆんよりも上の様だった。

二人分のお茶のカップを持ち客人用の布団に向かうと、彼女は既にいつでもいけると言った様に着替え、ポツンと布団の上で正座していた。

 

「あ、おはようございます」

 

近づく音で気づいたのか、こちらを振り向き挨拶する。

 

「おはよう、茶淹れたけど飲むか?」

 

カップを差し出すとありがとうございます、と俺の手から受け取り口をつけるが予想外に熱かったのか一旦離し、息を吹きかけながら冷まして口にする。俺も特にやる事は無いので彼女の横に座りカップに口をつける。

 

「ところで今日は一体何のクエストを受けられるのですか?」

 

互いにお茶を飲み干しひと段落したところで彼女が聞いてくる。

 

「そういえば考えてなかったな」

 

うーんと考えるポーズをとりながら考える。

アークウィザードが居るので、せっかくなので強いモンスターを狩るのも良いが、前衛が俺だけなのが厳しいかもしれない。よくよく考えると仲間には恵まれるが、いかんせん俺のスペックが低いのが仇になってしまう。

 

「しょうがない、カエルにしよう」

 

こう言う時は雑魚を倒してレベルアップに専念するべきだろう。レベルを上げれば補助魔法も覚えられるし一石二鳥だな、カエルならもしも彼女が最悪居なくても何とかなるだろう。

 

「カエルって、ジャイアントトードの事ですか?私的にはもっと硬いモンスターだと良いのですが…まあ仕方ありません。カズマがそう言うのならそれに従いましょう」

 

彼女は少し不満そうな表情をしたかと思うと、突然立ちあがり決めポーズをとる。何だろうか、この子はカッコつけないと死んでしまうのだろうか?

 

「じゃあギルドに行こうか」

 

 

 

荷物をまとめ、宿を後にする。ギルドには月極めでロッカーの貸し出しを行っているので、冒険者はそこに使わないアイテムなどをしまい手ぶらになるらしい。

 

「私はここで待っていますのでカズマは早くクエストの受注をお願いします」

 

ギルドの入り口についてそうそう、彼女は入り口横に設置されたベンチに座り出した。

 

「何言ってるんだ?」

 

何かよく分からんが理由を聞いてみる

 

「いえ、これは勘なのですが、この中に入ると何か嫌な予感がします。信じてくださいこれでも私の直感は結構当たるんです」

 

何言ってんだこいつと思ったが、もし本当だったら嫌なので一人で行く事にした。

ガチャとドアを開けると、そこは何時ものギルドの姿だった。どうやら彼女の考えすぎだった様だなと思い、奥にある受付に向かう。

 

「あれカズマじゃん‼︎おい、いつも居るあの子は今日はいないのか?」

 

受付に向かう途中に金髪のチンピラに絡まれる。あの子は多分ゆんゆんの事だろう。

 

「今日は用事だって」

「用事だって?ははは俺は遂に見捨てられたかと思ったぜ」

 

このチンピラは普段性格は良いのだが、こうしてアルコールが入ると一気に嫌な奴になってしまう。

 

「全く、この街じゃ彼女みたいなアークウィザードって言うのはレアな上におまけに紅魔族ときた。今まで誰とも組まなかったあいつと急にパーティー組んでるからな、一体どんな方法使ったの聞きたいくらいだよ」

 

ハッと嫌味たらしく笑いながらジョッキに注がれたアルコールを一気に飲み干す。

 

「ほら、他の人に絡まないの」

 

そんな奴を見かねたのか、横に座っていたポニーテールの女性が奴の袖を引っ張りこれ以上の行動を制限する。

 

「おい何すんだ!離せ‼︎」

「ごめんねカズマ、こいつは何とかするから用事済ませちゃいな」

 

そう言い悪戯な笑顔を浮かべると軽くウィンクし、何やらブツブツ呟き始める。奴はそれに気づいたのか

 

「おい待て待て待て‼︎落ち着けこんな所で魔法を使ってえええええええ」

 

ガシャーンと後ろで何やら魔法が炸裂した音が聞こえる。落ち着けカズマ、あれを無視しなければ余計な事に巻き込まれかねない。

 

 

 

 

「こんにちはお姉さん今日も相変わらずお綺麗ですね」

 

受付に着き、何時もの挨拶をこなす。

 

「はいはいありがとうございます、ところで今日はどういった要件で?」

 

受付嬢は俺の社交辞令を無視し本題に入ろうとする。本気にされたらそれはそれで困るが、かといってガン無視されるとそれはそれで辛いものがある。

 

「そういえばゆんゆんさんが今朝誰かを探し回っていましたけど、何かあったんですか?」

 

何かあったと言われても…思い出せば何で予定が入っているかを聞いていなかったから分からない。しかし人探しか、言ってくれれば協力したのだが彼女の事だ変に気を使って俺には黙っていたのだろう。

 

「彼女の探し人は分かりませんが今日はクエストを受けに来ました」

 

ピラッとクエストの用紙を差し出す。受付嬢は怪訝そうにそれを受け取る。

 

「ジャイアントトードですか、これはカズマさん一人で受けられるのですか?」

「いえ、今日はゆんゆんは用事で居ないそうなので臨時で他の人とパーティを組んでます」

 

それを聞き安心したのかホッと彼女は肩を撫で下ろした。

 

「そうでしたか私はてっきりパーティーを解散されたのかと思いましたよ」

 

成る程、ゆんゆんが探してたのは俺の代わりだと思っていたのか。って事はあの心配は俺の事ではなく自分自身の事になるわけだ。

 

「はぁ」

 

思わず溜息を吐く。もう少し皆俺に優しくしても良いと思うんだけど。

 

「とりあえずクエスト承りました、ジャイアントトード5体ですね、頑張ってください」

 

彼女の愛想笑顔に送られギルドの外に出る。

 

 

 

「遅いですよ‼︎クエスト受注するのに何分掛けているのですか‼︎」

 

ギルドから出て早々彼女に怒られる、色々話していたせいでだいぶ時間が経ってしまっている。待たせる側は時間感覚が短くなるとはよく言ったものだ。

 

「悪い悪い、色々面倒な奴に見つかってな」

 

彼女を宥め、ギルドの前を後にする。

ジャイアントトードの生息域はアクセルからそう遠くないので、前みたいに馬車では無くこうして徒歩で行く事になる。

たまにはこうして自然の中歩くのも良いかもしれない。

 

「そういえば聞きたい事が有るんだけど、良いか?」

 

アクセルの門の前辺りで彼女に話し掛ける。

 

「何でしょうか?」

 

先程の機嫌の悪さは解消されたのか言葉に棘が無くなる。

 

「めぐみんは紅魔族って言ってたけど、そもそも何なんだ?」

「何なんだとはまた随分と曖昧な聞き方ですね。まあ良いでしょう、紅魔族というのはですね私みたいにみんなカッコいい名前を持っていて、他にも高い知能と魔力を持ったそれは素晴らしい種族なんですよ」

 

彼女は紅魔族に興味を持たれた事が嬉しかったのか、杖をブンブンと振り回す。

 

「ヘーソウナンダ」

 

自分で聞いといて何だが急に興味が無くなる。ゆんゆんが自虐的に言ってた様に、やはりおかしな種族そうだな…

 

「そして、その中でも私だけが最強魔法を扱う事が出来ます‼︎この魔法はカエルに会うまで秘密ですが、一度目にすれば冒険者のカズマも取得するためにポイントを集める事間違いなしです‼︎」

 

ババーンとカッコつけのポーズを決め宣言する。どうやら彼女は一々カッコつけないと死んでしまう病気なのだろうか…いや年齢的にもそんな時期なのだろう、いつか今の自分を見て苦しむ時が来るまで優しく見守って置いておこう。

 

「そうなのか、それは楽しみだな」

「ええ、そうなのですよ」

 

 

 

なんだかんだ言いながら、ジャイアントトードの目撃情報のあった地点に着く。

ジャイアントトードは肉食なので、今回みたいな牧場周辺か野生動物の居る林の近くを好んで現れるらしい。それ以外は土に眠って身を守っており、こうして繁殖期まで現れないらしい。

 

「おー沢山居るな、色んなカラーが選り取り見取りだ」

 

カエル達は何か会議でもしているのだろうか、遠くの方で4体ほど集まって口を膨らませながらゲコゲコ言っている様な感じだ。

 

「よし、じゃあ俺が囮になって近づくから、めぐみんも後から続いて射程距離ギリギリまで近づいて魔法を放ってくれ」

 

ゆんゆんと行動を共にし、まだまだお粗末な部分もあるだろうが大分魔法との連携も慣れて来ている。これも彼女の受け売りだが、魔法にはそれぞれ射程距離がある程度決まっており、その範囲を超えると威力や命中の精度が大分下がるらしい。

 

「いえ、その必要はありません、我が最強魔法は威力も絶大ですが射程距離も凄いのです」

「マジかよ」

「マジです」

 

成る程、紅魔族最強は伊達ではない訳か、なんか嫌な予感がするが此処は彼女のいう通りにしてみよう。

 

「俺はどうすれば良い?」

「これから詠唱しますので、カズマは何かあった際に備え私の周りを警戒しておいて下さい」

 

彼女は杖を構えると詠唱を始める、彼女が口ずさむ詠唱の文はゆんゆんが唱えたものとは違い、全く聞いたことのない初めて聞くものだった。

長い詠唱を終えると、彼女の持つ杖の周囲に魔力が集まり、最弱職である俺にすら分かるくらい濃い魔力が辺りに漂っている。

 

「ではお見せしよう‼︎これが人類の行える中で最も威力の高い最強魔法‼︎」

 

「エクスプロージョン‼︎」

 

 

呪文を唱えると同時に彼女の杖に集まっている魔力の集まりが解き放たれ、一瞬のうちにカエルの上空に何重もの魔法陣が現れ重なり、一瞬の閃光と共に凄まじい爆発が巻き起こった。

 

「うぉぉぉぉぉ‼︎」

 

強力な爆発の熱線と爆風がこちらにも流れ、それを足を踏ん張り必死に耐える。

やがて爆風も落ち着き砂埃が晴れると、彼女の魔法の爪痕が姿を見せる。

 

「うわー何だこりゃ」

 

遠くでも分かるくらいに地面に大きなクレーターが空き、当のカエルはというと、爆発により粗方吹き飛んだのか原型どころか影も形も無かった。

そしてこの爆発音とクレーターを見ることで組み掛かっていた頭のパズルが、もう目を反らせないところまで完成してしまった。

そう、昨日の爆撃事件の犯人は彼女で間違い無いだろう。最初からなんかそんな感じがしていたが面倒ごとに巻き込まれたく無かったのか頭が理解してくれなかった。

 

「どうですカズマ‼︎これが我が究極奥義爆裂魔法です‼︎この魔法の前には全てが為すすべもなく蹂躙され…あう」

 

魔力を使いきり立っていられなくなったのか、その場でうつ伏せになる様に倒れこんだ。

 

「おーい手を貸そうか」

 

首は動くのか、横に回転させ呼吸路を確保し

 

「お願いしまーす」

 

彼女は満足そうに言いながら俺に気を使い持ち運びやすくする為に立ち上がろうとするが、力が入らない為かモゴモゴと蠢いているだけになっている。

 

「よいしょっと」

 

一度彼女を持ち上げ座らせ、後ろに背負う。昔親戚の介護を手伝った為かこういった介助は手慣れている。

 

「ありがとうございます」

 

後ろから手を回して貰い、しっかり彼女を固定する。

 

「取り敢えず帰るぞ、お前を担いだままじゃ、まともにカエルとは戦えないからな、残りは明日元のパーティーと…」

 

回れ右をし、アクセルに帰ろうとした時だった。彼女の爆裂魔法により目を覚ましたのか、目の前の地面が盛り上がりカエルが湧き出てくる。

 

「うあぁぁぁぁ出たぁぁぁぁ‼︎」

 

動けない彼女を背負ったままの状態では分が悪すぎるので全力で走り逃げる。

 

「お願いしますよカズマ‼︎全力で逃げてください」

 

しかし彼女を背負ったままの状態ではスピードは出ない。もしかしたら見逃してくれると考えたが、後ろからドシンと重たい音が近づいてくるのが聞こえるのでそれは多分無いだろう。

 

「カズマ無理です‼︎追いつかれます」

 

彼女が叫んだ途端、ドスンと後ろから押される様な衝撃と共にフッと急に背中が軽くなった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ」

 

後ろ振り向くと、カエルの伸びた舌に巻きつけられた彼女がまさにカエルの口に飲み込まれる途中だった。

 

「あわわわわ‼︎」

 

パクリと飲み込まれ、彼女の顔がはみ出る様な形でモゴモゴされている。きっと中で見え無いだろうが、激しい戦いが繰り広げられているのだろう。

 

「うわぁぁぁぁ‼︎食われてんじゃねーっ‼︎」

 

腰にかけた剣を取り出しカエルに向かって走りだす。

 

「か、カズマー‼︎食われ、食われます‼︎早く助けて下さい‼︎」

 

幸い、食事中の時は動かなくなる為、何とか俺一人でも討伐することに成功し、そのままカエルの胴体を横に蹴り倒す。

 

「あう」

 

べチャリと、倒れた衝撃で彼女がカエルの口から飛び出てくる。

 

「うわぁ…」

 

飛び出てきた彼女の状態を見て唖然とする。仕方がないがカエルの口の中に居たので、全身カエルの粘液でベチョベチョになっていた。

 

「うわーとは何ですか⁉︎カズマがしっかりしないからこうなるんですよ」

 

俺の反応を見て心外だと言わんばかりに抗議する。確かにそれもあるが、動けなくなるなら事前に言って欲しいものだ。

 

「で、動けないのは変わらないのか?」

 

ベチョベチョになった彼女を突っつきながら話しかける。

 

「はい、なので街までお願いします」

 

再び起き上がろうとするが、力が入らずモゴモゴする彼女を眺める。この状態のめぐみんを街まで運ぶのか、一応洗濯する場所が銭湯に備え付けられているが明日までに乾くだろうか。

 

「見てないで諦めて早く運んでくださいよ」

 

ある程度回復したのか、足首を掴まれそこから這い上がろうと次にズボンを掴んだ。その時のめぐみんは鬼の様な形相だった。

 

「分かったからこれ以上俺に触るな、カエル臭い‼︎」

 

諦め彼女を背負う、ベッチョリした感触と生臭い臭いが鼻先を掠める。…おかしいな女の子は皆いい匂いがすると思ったんだけど。

俺は女の子に対する幻想を打ち壊されガックリとしながらギルドに向かった。

 

 

アクセルに着くとカエルの粘液に塗れた彼女を背負った俺を皆怪訝そうな顔で眺めると、ヒソヒソと聞こえないくらいのトーンで話しだす。

あぁ…俺の評判が…

 

「皆さんカズマの事を見ていますね。もしかして有名人とかだったのですか?」

 

皆から当てられている視線の正体に気づいてないのか、能天気にそんな事を言う。

 

「馬鹿言うなよ、カエルの粘液でベタベタになっているお前を見てんだよ。めぐみんあとあれな、次があったら爆裂魔法じゃなくてライトオブセイバーとか、ああ言う上級魔法で頼むよ」

 

毎回ゆんゆんも暇ではないだろうし、彼女とクエストする事もこの先無くもないだろう。その時にまた爆裂魔法を使われておぶるなんてたまったものじゃない。

 

「出来ません」

「何だって?」

「出来ないと言ったのです。私は爆裂魔法しか使えないんです」

 

そう言えば爆裂魔法は会得スキルポイントが多いので他の魔法が取れないと、前にゆんゆんが言っていた様な気がする。

つまり彼女の運用的には巨大な一撃が必要な敵の時に役に立つという事になる。

しかし、ここはアクセル。駆け出し冒険者の街、そんな魔法が必要な敵が出て来ることが多分無いだろうし、そもそもゆんゆんが居れば充分だろう。

 

「そうか、取り敢えずギルドに向かおうか。報酬は半々でまた機会があったら臨時でパーティー組もうぜ」

 

その言葉におぶわれていた彼女の手がまるで離す気はないと言いたいのか強くなる。

 

「ふ、我が望みは爆裂魔法を打つ事。途中で動けなくなったのでお礼もまだ未完了という事で明日も付き合いますよ」

 

掴まれた手を離そうと力を入れて降り払うが、力負けしてるのかそれとも執念なのか、彼女の手はしっかりロックされビクともしない。

 

「いやいや、めぐみんは今日4体倒したろう、それで途中で倒れたのはチャラにしよう」

「いえいえ、そんな事は言わずに、それに私は食費と銭湯、宿泊費を出して頂ければ報酬は無くてもいいと思います。どうですお得でしょう?臨時では無く本格的にパーティーに加入させてはどうでしょうか?他のパーティーメンバーの方にも私から説得するのも手伝いますよ」

 

腕の力がさらに強まる。

 

「は、離せ‼︎ 一日に一回しか使えないウィザードなんて使い勝手悪すぎだろ、どうせ昨日もそれがバレて道に捨てられたんだろ」

 

図星を突かれたのか、一瞬彼女の力が緩まる。しかし、おぶっていた疲れもあるのか、力はそれでも彼女の方が上だ。

 

「な、何故それを⁉︎」

 

ワナワナと彼女が震える。この調子だ行ける‼︎

 

「当たり前だろ、その魔法しか使えないんだ、ダンジョンとか洞窟に行ったらそれこそ役立たずだな‼︎」

 

この好機を見逃さすトドメを刺す。これで流石の彼女も手を離すだろう。

しかし俺の考えとは裏腹に彼女の力は強くなり、首を絞める勢いだ。

 

「見捨てないで下さい‼︎もう何処のパーティーも私を拾ってくれないのです‼︎役に立たない時は荷物持ちでも何でもしますから‼︎紅魔族がパーティーに居るのも他の街に行けばブランドになりますから‼︎」

 

成る程、ギルドに入らなかったのは俺に余計な事を吹き込ませないためだったのか。あと紅魔族ってブランドになるのか。

 

「ちくしょう首が絞まってやがる‼︎それに紅魔族もアークウィザードも、もう居るんだよ‼︎」

「嘘言わないで下さい‼︎そんな簡単に紅魔族が居る訳ないでしょう‼︎殆ど里に篭って外に出ない引きこもりみたいな種族なんですよ‼︎」

 

おいおい、あそこまで誇っていた紅魔族ブランドを、こうも簡単にレッテルに変えやがった。

クソ‼︎こうなったら壁に叩きつけるしか。

良心がかなり痛むがこうするしか方法がない。もしも駄めぐみんをパーティーに入れたらゆんゆんに何て言われるか…

流石に壁に叩きつけるのは可哀想なので壁に当てぐりぐりする。

待てよ…そう言えばゆんゆんと知り合いならもしかしたら、上手くゆんゆんが断ってくれるかもしれない。人見知りだし里にも友達いない様な感じだったし。

そんな事を考えているとフラグがったのか、目の前にゆんゆんが通り掛かった。受付嬢が言ってた様に何か探している様だった。

 

「おーい助けてくれ‼︎」

 

首がどんどん絞まっていくため、少ない言葉数で大きな声量を出す。

そして俺の叫びは無事届いたのか、彼女は俺に気づきこちらに向かう。

 

「あれカズマさん、こんな所で何されているんですか?それに後ろにいるのは…」

「話は後だ、取り敢えずこいつを引き剥がしてくれ」

 

めぐみんを壁から離し、ゆんゆんに突きつける。

 

「あ‼︎この人、遂に他人に頼りましたね、卑怯者‼︎そこの人もこのヘタレに…え?」

 

二人の目線があったのか、両者の動きが止まった。

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