この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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誤字脱字の訂正ありがとうございますm(_ _)m
今回は少し設定を追加しますので注意して下さい…


三章
紅魔祭1


ダクネスの号令に従い後ろに控えていたダスティネス家直属であろう兵士達が俺たちを抑えに掛かってくる。

 

「…すまない」

 

罪悪感からか目線を俺から逸らしながら彼女は俺に謝罪する。

そこまで後ろめたいなら捕るのもやぶさかではないが、その先の事を考えればそれが悪手であることは考えるまでもない。

 

兵士達の掴みかかりを手で払い除け首の後ろを手刀で叩く。

正直漫画で見た技なので効果は無いだろうと思っていたが、実際にやってみると相手は物凄く濁った声を出しながら地面へと伏せていったところを見るに案外効果があるんだなと実感する。

 

ダクネスの兵士である以上俺の計画では味方にしなくてはいけない戦力なので殺してしまうなんて事は出来ない。

だが、たった3人でこの人数を相手にしてアクセルの街から逃げようとするなら兵士たちの目の前で仲間を数人は殺して相手に躊躇させる必要がある、

 

そうこう考えていると屋敷の後方から爆発音のような轟音が響いてくる。

多分この屋敷は包囲されていてそれから免れるためにゆんゆんが魔法か何かを使ったのだろう。

 

兵士を投げ飛ばし、武器を破壊して鳩尾を殴り抜き、ドレインタッチで体力を回復させつつ戦意を奪ったりしながら思考を巡らせる。

このまま行けば俺が捕まるのは時間の問題だろう。

単純に俺だけであれば逃げられるが、それだとめぐみんが捕まってしまう可能性が高くそれに付随してゆんゆんも捕まってしまうだろう。

 

状況だけを見ると非常に不味い。

具体的に何が不味いかは相手がダクネスだと言う点だろう。

 

相手がもしクレアであればフラガラッハの脅威があるが、まだ抜け出せる余地がある。アイツは俺たちの事を市民と見下し貴族である驕りがある分俺相手にわざわざ本気を出したりしないだろう。

しかし、今回の相手はダクネス。

アイツは俺の性格を理解している上にクリスとの付き合いも長い。

 

俺の作戦を組み立てる思考回路等々はクリスの指導を受けて作られているものが殆どで、それはその個人が行動する上で癖となって表れる。

つまりクリスの教えを守っている俺の行動はどうしてもクリスと類似してしまう。ではクリスの教えに背いた考えで行けばいいかと思うかもしれないが、それを現状の刹那の時間に行う事は中々に厳しい。

例え俺がクリスの考えに背こうとしても、必ず何処かしらに無意識に癖となって表れるのだ。

 

それを踏まえるとダクネスはクリスとの付き合いが長い分彼女の考えを俺よりも掴んでいる可能性がある。

故に俺とゆんゆんが別れて行動すると踏んで屋敷を大人数の兵士で囲み、逃げ場を防いだ上に小手先の技でどうにでも出来ないように数で俺を圧倒できる人数で来たのだろう。

 

普段はポンコツだと言うのに俺の時だけ優秀になるのはいくら何でも酷すぎるだろう。

よくゲームで味方になった敵役は弱体化を受けるといったものはよく見てきたが、裏切った仲間が強くなるなんて事はあまり見た事ない。

 

…さてどうするか。

今の所剣は抜いてはいないが、俺が剣を抜けば相手も抜かざるを得なくなる為怪我を負う危険が高くなる。

現状誰一人として剣を抜いていないのはここの兵士が王都奪還作戦で一緒に戦ってきた仲間だっただからだろう。共に死戦を潜り抜けてきた行為が仲間意識を生み俺を仲間と認めた上で、それでも仕方なく俺に危害を加えなくては行けない状況だと思い義理を通すために得物を使わない事で意思表示しているのかもしれない。

 

そうなればここで俺が得物を出すのはそれを踏み躙る事になる。

彼らを戦力に加えなくては行けない以上、俺達が正当防衛以上の危害を加える事はこれから先に必要な信頼関係にヒビを入れる事になる。

 

「ダクネス‼︎」

 

力や小手先ではどうにもならない以上、この場を穏便に済ませる為に俺に出来るのは交渉だけである。

現状俺が切れるカードは無いが、それはダクネスから事情を聞いて考えればいい話である。

 

「悪いな…ここでお前と会話をする事は禁じられている」

「…くそ‼︎」

 

ダクネスに話しかけるが彼女は俺に目線を合わせる事は無く、まるで台本で決まっていたかの様にそう言った。

多分彼女の隣にいる動かない兵士が監視役として着いているのだろう。

 

「…仕方ないか」

 

もはや俺に出来る事は無く、何も失わずに事を落ち着かせる選択肢は無いのだろう。

 

「カズマ‼︎助けに来たぞ‼︎」

「え?」

 

これ以上構っている事は無理だろうと判断し仕方なしに剣の柄に手をかけようとしたタイミングで少し離れたところから声が聞こえてくる。

その声は久しぶりに聞いた声で、その正体は

 

「ダスト⁉︎一体どうしてここに?」

 

俺の悪友ダストが援軍として現れ、彼の後方にはアクセル中の冒険者達が血気盛んに着いてきていた。

 

「このアクセルの街でお前の事を聞き回っている奴がいてな、それで俺の仲間がお前を見たって言っててもしかしてと思って来て見たらこんな状況だったからな。暇そうな奴らを連れて助けに来たぞ‼︎」

「何だと⁉︎」

 

流石のダクネスも監視役も予想外の展開だったのかダスト率いる街の冒険者の軍団に驚愕しながら対応するように兵士に指示を出す。

正直街の冒険者からはいつもたかられて不満しか無かったが、その辛酸を舐める日々が報われる時が来るなんて流石の俺も思っていなかった。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉアクセルの冒険者を舐めるんじゃねぇーーっ‼︎」

 

三対集団の戦いから集団対集団の戦いになり、俺の屋敷の前が戦場へと変わる。

もはやどう収拾がつくのかは分からないが、現状が好転したことに変わりはない。

 

「カズマ‼︎」

「ありがとうな」

「おうよ‼︎それで話だがおおよそはシスターから聞いたぞ、とりあえずここは俺達に任せてしばらく何処かで身を隠してくれ。この街はお前の帰る場所だからな必ず何とかして見せる」

「ダスト…」

「へへっ‼︎お礼なら今度サキュバスの店で奢ってくれよな‼︎」

「ああ‼︎二人で一番高いフルオプションで行こうぜ‼︎」

 

ガシッと俺たちは握手をし、漢の約束を取り付けるとそのままゆんゆん達の方へ向かう。

 

「カズマさん‼︎」

「待たせたな‼︎、話は後で考えるとして一旦アクセルから逃げるぞ‼︎」

「分かりました‼︎」

 

潜伏スキルを使いながら身を隠し戦いの渦中をすり抜けるように俺達は街の端へと移動する。

 

「それで何処に行くと言うのですか?出来ればあまり人のいない所が私達には都合がいいですが?」

「そうだな…」

 

着いたところでどこに逃げるかを考えていなかった事に気づくが、そこはここまで逃げる事に必死だったので許してほしい。

 

「それじゃあ紅魔の里に行きませんか?そろそろあの日も近いので」

「あの日?」

 

時間が無い焦りがあるのでいつもより思考がまとまらないという制限があるなか頭を捻っているとゆんゆんが申し訳なさそうに手を少し挙げながらそういった。

 

「そうですねゆんゆんにしてはいいこと言いますね、カズマ事情は後で説明しますので今はこの街から出ましょう」

「ああそうだな、それじゃあゆんゆん頼む」

「え?あ、はい…………すいません何を頼まれたのでしょうか?」

「え?」

 

事情は分からないがめぐみんが提案したので何かあるのだろうと思いゆんゆんに転移を頼んだのだが、彼女はその意図が分からなかったみたいでキョトンと首を傾げながら説明を求めてきた。

 

「いやだからテレポートで紅魔の里へ行こうって話だったじゃん?」

 

テレポートを使用していたのはアイリと住んでいた村から脱出する際に確認していたので習得しているもんだとおもっていたが、もしかしたらそれに似た何かだったのかもしれない。

 

「ごめんなさい…テレポートを習得してから紅魔の里に行っていないので登録がまだなんです…」

「え?」

「いいですか?テレポートは実際にその場所に足を運んでその場所を座標にして登録しないといけないのですよ」

「そうなの?」

「めぐみんの言った通りです…」

 

どうやら俺が思っていたテレポートと実際のそれは違ったようで、ゲームのショートカットの様に便利なものでは無かったようだ。

 

「まあ、仕方ない…あまり行きたくは無いけど前と同じ順路で行こうか…」

「そうですね…」

 

紅魔の里へと行くとなるとあのオークの集団の居た平原を進まなくては行けない事になる。

その時俺にトラウマを植え付けたオークは既に姐さんに始末されているが、だからと言って新しいトラウマが生まれない事を保証するものでは無いのだ。

 

「まあいいや…今から馬車を借りて行こうか…」

 

紅魔の里へはアルカンレティア付近へ馬車で進みそこから徒歩で進むしかアクセスが無い。

なのでゆんゆんがテレポートを使用できると記憶を取り戻したときは歓喜したのだが、現実はそう甘くは無かったようだ。

 

 

 

急ぎで馬車を貸切りアルカンレティアへ向かう。

この経路をダクネスに辿られると厄介だが、彼女が俺らに追いつくであろう時間には既に里へ着いているので問題は無いだろう。

そう思いながら馬車に乗り込み途中での停車を全て飛ばしてアルカンレティアまで飛ばしてもらう事にした。

 

「それで?何か都合があるとか言っていたけど何があるんだ?」

 

念の為に見張を交代で行いながら目的地に向かい現在はゆんゆんが担当している状況で手持ちぶさなのでめぐみんに先程言っていたことを確認する事にした。

 

「そうですね…そろそろ紅月の日が近いので折角なら里帰りでもと思いまして」

「紅月?リンゴか?」

「リンゴ?何でリンゴが出てくるんですか?」

 

紅月と聞いて青森で食べたりんごのことを思い出したので言ってはみたが、結果はどうやら違った様でめぐみんにもキョトンとされる。

 

「…まあいいとして、それでそれがあると何があるんだ?」

「そうですね…色々ありますが簡単にいってしまえば魔力がうまく制御できなくなります」

「え?マジかよヤバイじゃん」

 

まるで何とも思っていないかのようにサラッと彼女はとんでもない事実を告げた。

 

「魔法が使えなくなるってことか?」

「いえ、そう言うわけでは無いのですが…まあ簡単に言ってしまえば魔法が暴走しやすくなるといえばいいのでしょうか?」

 

めぐみんには珍しく困惑しながらどう説明したほうがいいか分からないと言ったように腕を組みながら唸る。

 

「制御が難しいから加減ができないって言いたいのか?」

「まあそう捉えてもらった方がカズマにはいいかもしれません。他にも色々ありますが本能が剥き出しになったりと他にも色々と制御が出来なくなったりしますね」

「へぇーそれじゃあ何も無かったらどうしてたんだ?今回みたいに実家に向かったのか?」

「何もなければそうですね、多分に屋敷の部屋で落ち着くまで閉じこもって居ましたね」

「そんなんでいいのか?」

「アクセルの街は比較的安全なので問題ないかと思いまして」

「そう言うもんか?」

「そう言うものです」

 

どうやら彼女達にも彼女達の理由がある様でこうして色々と向き合っているのだろう。

と言うか今更そういう事を言われるといざと言う時に対処できなくなるのでやめて欲しいところだが、人間一つや二つは知られたくは無いこともあるのだろう。

 

「だから下手な場所に潜伏しないで安全な紅魔の里に行こうって事か」

「そういう事になりますね、まあこないだまで居たので懐かしい気はしませんが」

 

そう言えば俺がアイリのゴタゴタを片付けている間の二人は紅魔の里の再建をしていたんだなと思い出す。

折角戻って来たのにまた里に戻ると言うのも何だかなと思うが、今は緊急事態なので仕方あるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬車により俺たちは無事にアルカンレティア前に着き、そこから紅魔の里へと歩いていく事になる。

里への道は基本的に平原なので追ってくれば分かりやすくて助かるが、それは相手も同じなので気をつけたいところだ。

 

「あの…私達は何故ダクネスさんに追われているのでしょうか?」

「ああ、そうだった説明してなかったな」

 

歩きながら周囲を警戒しているとゆんゆんが思い出したようにそう言い、そう言えば説明しようとしたタイミングでダクネスが襲撃して来たなと思い返す。

 

「話せば長くなるんだけどな…」

 

そこから俺はクレアに妨害された所から何があったのかを説明する。

村の部分とシルフィーナの件は、説明すれば多分記憶がなかったと言っても酷い目に遭わされそうなので、その部分はあえて何も言わなかった。

 

「そう言うことがあったんですね…だからダクネスさんはあんなに悲しそうな顔をしていたんですか」

「まあそう言う事だな、貴族にも貴族の立場があるからこう言った事は仕方がない部分もあるよ」

 

貴族に対して知ったかぶった態度をとり話を強引に進める。二つの件を省いているので考える時間を与えると抜けた情報の存在に気付きかねないのだ。

 

「とりあえずアクセルはダストに任せて俺は情報を集めようかと思っている」

 

何をするにもまずは情報が必要なのでシルフィーナの情報提供を含めてまずは変わってしまった王都の政治事情を集めなくてはいけない。

だが、これからいく紅魔の里は俺の求めている王都の政治事情から最も遠い所に位置しているので、結果として無駄足になってしまう可能性も否定できないが、めぐみんから聞いた二人の事情を考えると必要な儀式みたいなものだろう。

 

これから先一人で国を相手にするのは難しく、必ず何処かで彼女らの協力が必要になる。

多少時間を無駄にしたとしても二人を大切にしなくては何処かで後悔してしまう気がしてならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから俺達は歩きに歩き途中例の植物とかと再会を果たしたりオークとの戦闘を繰り広げてたり野宿したり大変だったが無事に紅魔の里へと辿り着く。

時間は既に夕方でそろそろ綺麗な夕焼けが見えそうだった。

普段なら何もなく普通の村みたいな感じに入れるはずだったが今回は何故か全身を鎧で固めた騎士みたいな人達が居たので念の為認識阻害のスキルを使用し近付く。

 

認識阻害のスキルは基本的に自身よりも低位の存在かつ自身の姿を知らない事を前提にしなくては発動しないスキルだが、関所の辺りから何故か指名手配されているので念の為やっておいて損はないだろう。

もしダクネスが先回りして兵士を派遣していたらここで詰んでしまう危険性があるが、兵士の配置から見て里を守っている様なので多分俺の考え過ぎだろう。

 

「あの…すいません紅魔の里に用事があるのですが…」

 

申し訳なさそうに入り口を守っている兵士に話しかける。

 

「ああ、旅の方ですか?申し訳ありません現在紅魔の里は紅魔祭に向けて外部の人の立ち入りを遠慮してもらっているんですよ」

「…へっ?紅魔祭?」

 

初めて聞く単語に変な声を出してしまい羞恥心でこ死にたくなったが、めぐみんから聞いてないと自身に言い訳をして乗り切る。

 

「あーすいません私達紅魔族で、この男は私の仲間ですので通していただきませんか?」

 

そんな俺を見かねてかめぐみんが俺を押し退けて前に出て来たと思ったら兵士に向けてそう言った、

 

「紅魔族…確かにそのおかしな格好は紅魔族だな、例え潜入しようとしてもそんな格好だけはしたくないからな」

「何ですと⁉︎貴方達は私に喧嘩を売っているのですか‼︎」

「落ち着けめぐみん、すいません分かっていただけたら通して貰ってもいいですか?」

「ああ、構わないよ、君も大変だね」

 

何故か煽られてキレるめぐみんを宥めながら同情される光景に疑問が無くはないが、現状トラブルを起こすわけにはいかないのでここは穏便に済ませる事にする。

 

 

 

「何ですかあの兵士たちは⁉︎」

「まあまあ言わせておけばいいじゃない」

 

里に入る事は成功したがそれでも格好を馬鹿にされた怒りは消えていないようで、プンスカ怒りながら文句を言うめぐみんをゆんゆんが隣で宥めている。

 

「それで紅魔祭ってなんだよ?」

「紅魔祭は紅月の日に行われるお祭りみたいなものですね」

「へぇ、そうなんだで何するお祭りなの?」

「特に何かすると言うことはありませんが、皆屋台を出したり出物をしたりして楽しいですよ?」

「へー楽しいですか?私はゆんゆんが参加した所見た事ありませんが今ままでのもので何が一番楽しかったんですか?」

「そ…それは…」

「やめとけめぐみん…」

 

先程の怒りが消えていなかったのかその矛先がゆんゆんに向いて来たのでやめさせる。

 

「それであの兵士は一体何なんだ?いつもこの時期になるといるのか?」

 

一番気になるのはそこだ。

もしいつも居ないのであればあの兵士たちの目的は俺達になるのだろう。

 

「いえ、いつも紅魔祭の時はこうして王都から騎士の方を派遣して貰って周囲から警護して貰うんですよ」

「警護って必要なのか?シルビアの時は確かに危険だったけど普段は魔法を使えるんだから大丈夫だろ?」

「いえ、紅月の時の私達はいつもの様に魔法が制御できなくて危険なので何かあった時に対処できる方々が必要なんです」

「そう言うもんか」

 

強過ぎる力には必ず制御がつくとは言うが、紅魔族にも何かしらの制御機構でもあるのだろう。

その兵士たちの鎧などを見ていると騎士団の紋様があるので騎士団の連中だと推測する。

まあそれはそれとして騎士団の連中らも昔からのルーティンでこの里に来ている為俺がいるなんて事は考えていないだろうし、わざわざ居るか分からない俺を探したりもしないだろう。

俺の捜索はあくまでダクネス率いるダスティネス派の仕事で王都直属の騎士団の仕事ではないのだろう。騎士団も所詮は俺達の世界で言う公務員の様なもので、例えるとついでに出来そうな仕事でも裁量権が与えられなければ何も出来ないという悲しき制約があるのだ。

 

「なあ、めぐみん?」

「何でしょうか?」

「お前の爆裂魔法が暴走するとかあるのか?」

「えぇ⁉︎」

 

ふと疑問に思ったので聞いてみると何故かゆんゆんが隣で驚愕の声をあげていた。

…一体何でお前が驚いているんだとツッコミたくなったが、答えが帰ってくるまで黙っておく事にする。

 

「安心してください、爆裂魔法の発動は中々に繊細で難しい工程を含みますので、魔力が暴走したとしても勝手に発動したりしません」

「そうなの…よかった…」

 

ほっと一安心したのかゆんゆんは胸を撫で下ろした。

 

「それとも今ここで試してみますか?魔力の暴走が入るのでもしかしたらいつもより威力の高い爆裂が観れるかもしれませんよ‼︎」

「えぇ⁉︎」

「やめとけって、と言うかまだ紅月じゃないだろ?」

「…確かにそうですね」

 

俺の発言を挑発と受け取ったのか、めぐみんは持っていた杖に魔力を集め輝かせて脅かしてくるのでそれを全力で止める。

 

「それにしても厄介だな紅魔族は…」

 

先を進む二人の後ろでボソリと呟く。

最初に紅魔族の存在を知った時は反則だなと思ったが、知れば知るほどに色々と力に見合った制約があるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「お父さんは騎士の方と話しているみたいですね」

 

俺の宿泊所確保の為ゆんゆんの実家に入り挨拶をしようと思ったが、既に先客がいたようで隊長らしき人物が客間で族長と何やら話をしている。

話の内容を確認したかったが、その隊長は何かを恐れているのか室内であるにも関わらず俺よりも高位の認識阻害の付与されたフルフェイスの兜を被りながら対話をしているようだ。

変人なのかそれとも大物なのか分からないが族長の態度からそいつがいかに信用されている存在かが伺える。

 

 

そして部屋の前で待つこと数分、話が終わったのか団長が部屋を退室し俺の目の前を通る瞬間、兜の中の闇が俺の存在を認識したような気がし全身に悪寒が走る。

あの団長は仮面で全てが隠されているがその身のこなし方からして多分只者ではないだろう。だがあれ程の実力を持った奴が騎士団に居たなら王都奪還の際に何かしら出来た筈だと思ったが、ここに派遣されている時点でもしかしたら王都外を仕切っている者なのかもしれない。

 

ならばあの時に参戦して居なかったのはこうして別の任務について居たので仕方なかったと言える。

 

 

「おや、久しぶりだねカズマ君。あの一件では色々と世話になった様だね、遅くなってしまったが感謝を伝えよう」

「いえ、とんでもございません」

 

それから入れ替わるように執事の爺さんに案内されるがまま客間に入り、早々に族長に感謝される。

 

「娘からはアクセルの屋敷で過ごすと聞いていたが、何かあったのかね?」

「それなんですが…」

 

とりあえず族長には余計な心配をさせないようにある程度のぼかしを入れながら追われているので匿ってほしいとだけ伝える。

 

「成る程…よく分かった。君は娘が選んだ人だ。事が落ち着くまでここに居るといい、外の騎士には私の方から伝えておこう。なに、安心してくれ彼とは先代からの付き合いでね、例え君が王都から狙われていれも彼なら知らぬ存ぜぬで居てくれるさ」

「ありがとうございます」

 

どうやら深くは追求しない様で最初の話だけで納得し色々便宜を図ってくれる事を約束してくれた。

 

「では二人とも悪いのだけれども少し席を外してくれないか?私はカズマ君と二人だけで話がしたいんだ」

「分かりました?」

 

話が済み、これから次の会議があるから席を外してくれと言われるかと思ったがそんな事はなく、族長は俺に誰にも聞かれたくない話があるのか分からないが娘であるゆんゆんとめぐみんに席を外すように伝え、二人は頭にクエスチョンマークを受けべながら返事をして部屋を出て行った。

 

「…」

「…」

 

そして二人きりになったところで気まずい空気になり部屋に沈黙が訪れ、屋敷の窓でゆんゆんとめぐみんが何をしようか相談している様子が見える。

 

「それでだカズマ君、娘とはどこまで行ったのだね?」

「え?」

 

沈黙を最初に破ったのは族長だったが、今回俺と話したかったのは族長ではなく父親としてだったようだ。

てっきり何かあるのかと思って警戒していたのだが、これはこれでまた別の危険性が出てくる。

 

「そうですね…娘さんとは仲良くさせて頂いて居ます…」

 

父親を前に変な事を喋って墓穴を掘らないように慎重かつ丁寧に言葉を選ぶ。ここで少しでも言葉を間違えれば俺の人生計画は根底から崩れていくだろう。

 

「…そうか、すまない質問が分かりづらかったかな?では質問を変えようあまりこういった直接的な表現をするのは好きではないが…そうだね孫の顔を私はいつ見れるのだろうか?」

「ブゥーーーーーっ⁉︎」

 

あまりにも直接的な表現に思わず口に含んでいたお茶を吹き出してしまう。

 

「な…何を仰っているので…しょうか?」

 

漫画では誇大表現ではないかと思ってはいたが、いざ実際に同じ立場に立たされるとあながち嘘ではなかったんだなと実感させられる。

 

「紅魔族の女性はそう言った行為をすると目の色が変わるのだよ」

「マジすか⁉︎」

 

族長の発言を聞き思わず千里眼で外にいるゆんゆんの瞳を覗き込む。

 

「…まあ嘘だけどね」

「嘘なのかよ⁉︎」

 

族長の前にも関わらず勢いでテーブルを叩いてしまう。

流石にそれは無礼な行為だが、今回の件に関しては向こうに非があるのでそこは許して欲しいところだ。

 

「だが君の反応を見て確信したよ」

「クッ…殺せ⁉︎」

 

思わずダクネスの言いそうな台詞を吐いてしまう。この状況からわかる事はこれから俺にとって辱めを受ける以外の選択肢が選べない事を示している事だ。

 

「安心してくれ、別に責めるわけじゃない。寧ろ君には感謝しているんだ」

「感謝…ですか?」

「前に一度説明したとは思うけどあの子はこの里に馴染めていなくてね、外に出て悪い冒険者に酷い事をされて戻ってくるかと思っていたのだよ」

「…そうですか」

「それに娘はもう14だ、妻もその頃にゆんゆんを産んでね。私もそろそろ長くは無い、身せめて最後に孫の顔を見てから逝きたくてね…」

「でもお義父さん感知スキルで生命力を見るとピンピンしていてまだ生きられそうですよね?」

「それは言葉の綾だよ、君もあの事一緒に過ごしてきたから分か…確かにあの子はあまりここの表現を使いたがらないね、失礼失礼」

 

先程のまでの威厳は何処へやら、必死に取り繕うとしているがまるで孫を相手にする爺さんの如く鼻を伸ばしながらデレデレしているのを隠しきれていない。

何だか先程まで緊張していた俺が馬鹿みたいになってきたのでここらで肩の力を抜く事にする。

 

だが、そんな事の為にわざわざ俺を一人ここに残すのだろうか?

 

「旦那様失礼致します」

 

そう思っていると扉からノックと執事の声が聞こえ、族長がそれに返事をすると執事が頭を下げて部屋の中に入ってくる。

 

「これを」

「ふむ」

「やはり結果は変わらないみたいです」

「そうか…分かった」

「では失礼します」

 

執事は手に何処かで見た事のある紙束を持って族長の元へ向かい、それを族長は受け取るとフムと頷きながら一読し何かに納得したのか執事を後ろに下げる。

その紙束は前に占い師に頼んで調べた俺の素性の書かれた用紙にそっくりだという事に気づく。

 

「済まない…やはりこうなったか」

「あの…一体何が起きたんでしょうか?」

 

場の雰囲気が再び重苦しいものになった事を肌で感じ恐る恐る何が描かれているかを確認する。

 

「ああ、折角来てくれたところ申し訳ないのだけれど…」

 

族長はこの事実を俺に告げようか迷っている様子が窺えるが、その事を俺に伝える事は決まっていた様で少しだけ悩んだ末それを俺に伝える。

 

「この紅魔の里はこの紅魔祭を持って滅びると占いで出たのだよ」

「え?」

 

突如告げられた予想外の回答に俺の思考は停止した。




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