この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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お久しぶりです。
少し時間ができる様になったので少しずつですが不定期に投稿しようかと思います…



紅魔祭3

「ふあー楽しかった」

 

久しぶりにハメを外して楽しんでいたらあっという間に時間は過ぎていき気づけば予定の時刻を大幅に過ぎていた。

シュワシュワの限界に達していたのかフラフラになっていたねりまきをソファーに寝かせ、出来るだけの清掃を行うとそのまま店を後にした。

 

時刻は夜遅く、陽なんてものはとうに落ちて周囲は真っ暗な闇に包まれていた。

 

「そろそろ帰らないと不味いな…」

 

遅くまで遊んでいた事やねりまきと会っていた事に対する背徳感が罪悪感へと変化し、一刻も早くゆんゆんの家に守らなくてはと足を早める。

念の為に潜伏スキルを使ってはいるが、女の勘ほど恐ろしいものは無いと以前何処ぞの田舎に住んでいた時におっちゃんが言っていた事を思い出し、そう言った後妻であるおばちゃんががそのおっちゃんを何処かに連れて行った事も連鎖的に思い出される。

 

ねりまきの親父さんが経営する酒場は里の外れにあり、ゆんゆんの屋敷へ向かうにはそれなりの距離を進まなければ行けないが、彼女曰く途中の森を抜ける事でだいぶショートカット出来るという情報を得たのでその通りに進む。

そして、潜伏スキルは便利で、森の中を進むにあたって現れる虫達からもその存在を隠し吸血や卵を産みつけてくるといった被害を未然に防ぐことが出来るのだ。

 

何となく出来ている獣道を草を掻き分けて進みゆんゆんの屋敷を目指す。

抜け道の特性なのか、進むにつれて道幅が徐々に狭くなっている様な違和感を覚えるが整備されていない道なんてそんな物だろうと思い足を進める。

 

そういえばと前回夜中に帰って来た時みたいに執事が襲ってくるのでは無いだろうかという思いがフラッシュバックし、俺の背筋に冷や汗をかかせあるのか分からないが俺の危機感知スキルの様な第六感が危機を知らせる。

 

何か不味い気がする。

虫の知らせだろうかそれとも罠感知のスキルが作動しているのだろうか、緊急地震速報が鳴った瞬間に地震が来る時の如く一瞬の間に俺は自身の思考の至らなさを呪った。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーっ‼︎」

 

そう、いつもなら引っかかる事の無い簡単な罠………………落とし穴に引っ掛かったのだ。

本来落し穴程度の罠なら感知スキルがなくても引っかかる事はないのだが、今回は酔いが抜けきらなかった事や焦燥感に駆られて足元がお留守になっていて警戒が不十分だったと言い訳したい。

 

「痛ってぇ‼︎」

 

まるで俺がハマることを予測し計算したかのような幅と深度で、俺の体は落し穴にシンデレラフィットし首から下が見事に行動不能にされ自力では抜け出せなくなってしまう。

ここは里なので魔物が襲ってくる心配は無いのだが、場所が場所の為助けに来るかが微妙な所で仮に見つかり救出された所でゆんゆんに何故ここにいたのかを聞かれるのでゲームオーバーになってしまう。

 

「不味いな…」

 

酔っているせいで若干ふわついている思考を上手く纏めながらこの状況を打開する策を考え出す。

首から下を上手く動かせない以上身体強化でではどうにも出来ないので、何かしらのスキルか魔法を使用しなくては行けないが生憎そんな便利な魔法を習得しているわけはなく、精々水を生成して上手く穴から押し出されるしか無いのだろうが、それだと彼女の屋敷でずぶ濡れになった言い訳をどうするかを考えなくていけない。

 

そんな事をボート考えていると、何処からか誰かが近づいてくる音がして感知スキルがおざなりになっている事に気づき精度を高めその気配を探る。

もしかしてこの落とし穴を作った犯人が向かって来たのかもしれない。

 

里の誰かが森の動物を捕らえるのにこの落とし穴を作り、何かしらの感知スキルが反応したから獲物を見に来たのかもしれない。

正直こんな所に罠を張ったことを責め立てたいが、今はそんな事よりこの罠から抜け出す事が大切だ。取り敢えず話せば分かってはくれると思うが相手は紅魔族なので多分無事では済まないだろう。

 

「……マジかよ」

「こんばんはカズマさんこんな夜遅くに会うなんて奇遇ですね?何をされていたんでしょうか?」

 

地面に埋まり身動きが取れない状態で気配が近づくのを待っていると真っ赤な光が二つ俺の元に近づいてくる。

そして、俺の目の前に現れたのはよりにもよってゆんゆんだった。

 

「ああ…奇遇だな…どうしてこんな所にいるんだ?祭りはとっくに終わっただろ?」

「ふふふ…おかしいですね?質問しているのは私ですよ」

 

偶然に偶然が重なり偶々彼女がここに来たであろう可能性に賭けて話かけるが、現実は非情で彼女はニッコリと笑いながら俺の質問をぶった斬った。

稀に見るブチギレ状態のゆんゆんに戦慄するが、生憎逃げる手段を封じられているのでここは慎重に対処しなくては行けない。

 

「ねえカズマさん、こんな遅くに私を置いて何処に行っていたんですか?」

「そ…それはだな…」

 

地面に埋まっている俺の眼前にしゃがみ、笑顔を崩さないまま彼女は俺の頭を掴み顔を反らせられないように固定すると俺に質問を答えるように促す。

目が笑っていない彼女の笑顔は今まで戦ってきたであろう魔王軍幹部達とは比べものにならない恐ろしさを感じ、正直あっしゃがんだお陰でパンツが見えるなんて考えている余裕は無いのだ。

 

「それは、何ですか?」

「いやーまあ?そのアレだな俺も夜中の警備をだ…あだっ⁉︎」

「ごめんなさい、よく聞こえませんでした。もう一度言って貰えませんか?」

 

悪あがきも虚しく、俺の言い訳など最後まで言わせませんと言わんばかりに彼女は掴んでいた手の力を強め、俺の頭蓋骨からが聴こえてはいけないような音が骨を通して耳に響いてくる。

 

「す、すみませんでした‼︎」

 

もはや逃げ場は無いと思いながら彼女に謝り、これから受けるであろう報復を想像しながら俺は恐怖に身を投じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日の時が経ち、予言なんてものは最初から無かったかのように紅魔祭は順調に執り行われ、里周囲のモンスター等々の生態系や魔王軍にも違和感すら感じれるような物はなかった。

騎士団が作成した外壁も殆ど完成し、現在紅魔の里の周囲には高い壁がズラリと建てられ仮に周囲のモンスターや敵勢力が襲ってきても暫くは保つだろう。

 

「それで今日が紅魔祭最終日になるわけだが、周囲で変わったことはあるかね?」

「いえ、特に里及び里の周辺での変化は見られません」

 

族長の屋敷の会議室の中で重鎮達が集まり最後の対策会議なるものが始まる。

会議とは言ってもそんなに堅苦しいものはなく、里の老人達が部屋に集まりながら某ゲンドウのポーズをとりながら里周辺の変化の報告と予言への対策を毎回話合っているのだ。

 

ただ紅魔族のいる里とはいえ所詮は小さな里なので出来る内容は小さな自治体程度のものなので、漫画みたいな規模で何かが変わったりはせず精々人員の配置を変える程度のものだろう。

その為何の為にやっているのか分からないが、何もしないよりかはマシなのだろう。まあ、俺も里の状況を知ることができるのでありがたいのだが。

 

ただ依然として騎士団のリーダーが鎧で姿を隠しているのが気がかりでしか無い。

ここまで里の外壁の建設を短期間で行い、住民の逃走経路など何が起きた事に対して行う対策を一人で立案し、それに必要な条件のクリアを完璧にこなしている。

彼と言ってもいいんだろうか、団長の考える案は全てが完璧で俺の意見を挟む隙すら感じないほどに緻密で予定外の事態も対応できるその頭脳は、正直何か別の恐ろしさを孕んでそうで怖いほどだ。

 

会議が終わり族長と会話を済ませると俺は屋敷を後にする。

現在の予言の解釈としては魔王軍の誰かが攻めてくる・空から隕石のような何かが降ってくる・地下から前の世界でいうガスの様な物が湧いてくる・里に封印されている何かが蘇る等々色々あるが、後者の可能性は族長自ら調べて可能性は無いと判断されている。

 

であれば魔王軍が攻めてくるのが一番高い可能性だろう。

それが一番紅魔族を滅ぼす勢力として説得力がある。正直それが理由であって来れば俺も気が楽だ。

 

何せ紅魔族を滅ぼしにきたシルビアの勢力を考えれば、今回作られた外壁を越える前に奴らの侵入に気づき破壊される前に避難が出来るので滅びを回避するという事を目的とするのであれば、これ以上の好条件は無いだろう。

ただ逆に恐ろしい程の規模を持った隕石が降ってきた場合、今度は反対に外壁が仇となり避難が遅れてしまう可能性がある。

里全体を覆う外壁は里の入り口以外を全て囲み高さが数メートルを超えるもので、数日限定という制約を与えることで急拵えでの作成かつ高い防御性能を持つと言われている。

時期が過ぎればただのガラクタだが、予言を防ぐという名目であればこれ程役に立つ物はない。

 

一応上空からの何かを警戒して外付けの転移魔法ポータルを3箇所程度だが設置され得ており、何かあった際にはここから避難先へと転移出来るらしい。

まあ、里を一夜にして破壊する規模の魔法は存在らしく、仮にあったとしてもその規模の魔法を発動する条件はかなり難しく事前準備の段階で族長が気づくとの事だ。

 

予言の滅びとは一体何なのだろうか気にはなるが、期限が紅魔祭である以上今夜には何かしらの決着がつくだろう。

 

「お疲れ様ですカズマさん」

「ああ、ゆんゆんか。待っててくれたのか?」

「はい、当たり前じゃ無いですか」

 

族長の屋敷の玄関を出るとまるで待ち構えるようにゆんゆんが居た。

あの夜からゆんゆんの束縛が強くなり、屋敷の中以外では基本的に俺の近くに居る様になったのだ。

 

「それで今日は何かあるのか?内容によっては付いていくけど?」

「いえ、今日は何も無いですね…屋台も殆ど回ったのでやる事もありませんし」

「だな、それじゃあちょっと俺の用事に付き合って来れないか?」

「え?何をするんですか?」

 

本当であれば一人でやりたかったが、この状況で一人でやりたい事があるなんて言えばどうなってしまうかなんて事は言うまでも無いだろう。

 

「ちょっとした里の調査だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば里の周辺にこんなに壁を作ってお父さんは何がしたいんでしょうか?」

「お祭りの間に魔物が攻めてきたら大変だろう?ただでさえこないだ攻められたんだから」

「確かに今の私たちは魔法が使えないですからね、魔物が来ても予備のスクロールで対応するしかありませんね…」

 

そう今の紅魔族は紅月の影響で魔法を使えば暴走してしてしまうので、戦力として動けるのは俺と騎士団の連中らだけだろう。空には燦々に輝る太陽と赤い月が薄らと輝いている。

そう思いながら新たな脅威についての可能性を考えながら外壁を調べる。

正直術式だなんだ細かいことはサッパリだが、やはり王都の派遣した騎士団が持ってきた設備なだけあって内側からでもその強度の高さが伺える。

 

周囲からは祭が最後の盛り上げに入ったのか皆の大声がここまで聴こえてくる。

この歓声の響が夜に悲鳴に変わらないようにできるだけの準備をしなくてはと己を鼓舞する。

  

里の周辺、魔王城、何時ぞや忍び込んだ遺跡や設備、それらを調べたが時に里の危機の原因になる様なものは見つからなかった。

何の手がかりも掴めないまま時間は夜へと変わり、紅魔祭は締めの段階に入った。

 

「全く遅いですよ二人とも、祭だから浮かれるのも分かりますが数日もこの調子だと流石の私も呆れて何も言えません」

「悪いって」

 

予想外に時間を食ってしまい、気づけばめぐみんの指定していた時間を超えていたので俺達は急いで集合場所である大広間に向かうと、案の定不機嫌なめぐみんに出迎えられる。

紅魔祭の最後は大広間で行われるキャンプファイヤーで、広間の中心で燃える炎を眺めながら不浄の気を祓うというものらしい。

 

「それでこれからどうしますか?」

「ん?何がだ?」

「何がじゃ無いでしょう?アクセルの街を追い出されてこれからどうするのかときているのです!まさかこのまま里で暮らすわけにもいかないでしょう」

「ああ、そうだったな」

 

里の滅びという占いの結果をどうにかする事ばかりに頭が入っていたので、現在自身の置かれている状態をすっかり忘れていた。

 

「そうだったなじゃ無いんですよ‼︎祭りに浮かれるのは構いませんが先の事をもっと考えてください‼︎」

「ああ、悪いって」

 

怒り狂う彼女を宥めながら頭の思考回路を切り替える。

正直今日一杯は予言の事を考えていたかったが、ここでこれからの事を先回しにしてしまえば彼女からの信頼を失ってしうまうだろう。

仕方なしに切り替えこれからの事を考える事にする。まあぶっちゃけ予言はこれ以上考えてもしょうがないので、これもいい気分転換になるのかもしれないなと思いめぐみんに今後の計画を話し合う。

 

「それで、この紅魔祭が終わったらどうしますか?」

「そうだな…まずは情報収集だな」

 

結局の所何をするにも情報が足りないのだ。

何処かでシルフィーナと合流出来ればいいが、この現状で王都に近づくには危険すぎるのでまずは情報を集めながら戦力を集めたい。

 

「そうですね、その考えはいいと思いますが何処かに当てはありますか?」

「無いな…ゆんゆんは何かあるか?」

「…え?私ですか?すいません何も聞いていませんでした」

 

行き詰まりゆんゆんに話を振ってみたが、どうやら彼女はキャンプファイヤーに見惚れていた様で素っ頓狂な声を上げながら飛び上がると腕を振りながら会話に参加していなかった事を謝罪した。

 

「…全くこれだからボッチは…」

「それ今の会話に関係あるの⁉︎」

「まあまあ落ち着けって、それよりだな………何だ⁉︎」

 

いつもの痴話喧嘩を収めようと2人の首根っこを掴んだところで里の端にある家が轟音と共に眼前のキャンプファイヤーの如く燃え出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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