この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

104 / 122
遅くなりました。
半年ぶりなので文章がおかしい部分があると思いますがご容赦ください…


紅魔祭4

「何だ、一体何が起きているんだ?」

 

キャンプファイヤーを行っている現在地よりも遠く、ちょうど里の端っこの方にある家から火の手が上がっているのが千里眼でわかる。

やはり予言の通りこれが滅びの前兆なのだろうか?そ俺とも前に2人が言っていた様にいつもの癖で魔法を使おうとして暴走しただけなのかもしれない。

 

「カズマ‼︎これは」

 

ボヤ騒ぎの中めぐみんが何かに気づきそれを伝えようとしたが、彼女の声は何かの原理で里中に響き渡った族長の緊急アナウンスによってかき消された。

アナウンスの内容を簡単にまとめると里に何者かが侵入し紅魔族を襲い始めていると言ったもので、里の皆は打ち合わせの通りに避難してくれと言ったものだった。

 

「俺は火災があった場所に向かうから2人は先に避難してくれ‼︎」

「え?」

「ちょっとカズマさん‼︎」

 

2人の制止を振り切りながら火災のあった場所へと向おうとする俺についてこようとした2人だったが、流石に人混みを掻い潜る事は出来なかった様で避難する里の皆と一緒に流れていった。

 

現在紅魔の里は簡易的だが強固な壁で一周囲まれており、避難する経路となれば転移装置により前回シルビアから避難する際に使用した場所へと転移する流れになっているが、転移装置による搬入人数は限られているためそこまでの時間稼ぎをしなくてはいけない。

最悪族長より教わった昔からある避難経路があるが、そこは里の隅にある小屋の地下室にあるため大勢の避難には向かないのだ。

 

 

 

 

 

「何だこれは…一体どうなってやがる」

 

それぞれの転移ポータルに向かう里民を掻き分けながら火災の現場に向かうと、そこには傭兵なのだろうか武器を携えた人間の集団が避難し遅れた人間を惨殺していた光景だった。

里の外壁がある以上この里に侵入してきたといえばモンスターか何かが地中からやって来たのかと思っていたが、実際に俺の目の前にいたのは俺が想像から最初に排除した人間だった。

本来人間が地面を掘るにはエレメントマスターのスキルが必要な上に周囲にそれを悟られずにそれを行うには少々煩過ぎるのだ。

 

正直意味が分からなかった。

この世界の構造は人間対魔王の対立構造で成立している以上、利権争い以外で人間同士が殺し合うなんて事はそう無いはずである。

それに紅魔族といった隠れ里でひっそり暮らしている人々を絶滅させたところで人間側には何も得られ無いはずだ?

…いや、魔王軍の幹部が人を雇っているのかもしれないが、だとしてもスパンが早過ぎるし、今まで魔王軍幹部を見てきたがこの様な事をする様な連中では無かったはずだ。

 

 

潜伏スキルで近付きながら傭兵の首を刎ねる。

幸い数は2人程だった為そこまで苦労する事はなかったが、これで終わりとはそう思えない。

 

倒れている紅魔族の死体に手を合わせながら感覚を上げるスキルを使用し周囲の状況を探る。

里の皆は事前に説明されていたであろうポータルの所へ向かっており、それに追随する形で傭兵部隊の反応がある。

 

追いかけている傭兵は配置されている騎士団がどうにかしてくれているとして、俺は里の入り口に向かうことにする。

里に入り込んだのが人間である以上この里に侵入する方法は入り口しかない。仮に空から侵入したり外壁を破壊しようものならその時点で騎士団の見張りに見つかりすぐさま迎撃される手筈になっている。

その為今回の様に人間が侵入してきた以上入り口で何かしらあったに違いない。

 

 

 

「これは…」

 

入り口に向かうと、先程まで空いていた門その物が無くなり代わりに周囲と同じ様な外壁が立っていた。

一体どういうことだろうか、侵入者が入って来た事により安全が脅かされた対策としてこれ以上侵入しない様に入り口を閉じたのだろうか?

だが、それであれば何かあった時用に騎士の1人でも残して置くのが定石であるが感知スキルでは周囲に人の気配は感じられない。

 

死体を隠されたのかと思ったが、周囲には戦闘痕自体が見えないためここで何かあったとは考えられない。

里の現状を見た騎士はこの門を埋めて侵入者の迎撃に向かったのだろうか?

 

疑問に疑問が続くが、今は立ち止まって考えている場合ではなく里の避難する人達を護るのが先決だろうと思い現時点から一番近いポータルの方へ向かう。

ここから近いポータルはゆんゆん達が向かっているであろう場所よりも遠いが、今は私情を無視して里の皆を助ける事を考えなくてはいけない。

 

 

 

 

 

 

「くそ‼︎数が増えてきてやがる‼︎」

 

先程感知した傭兵の数よりも気配が増えており、見つけ次第狩っていはいるがそれでも数が減る気配は感じられない。

そうしているうちに避難している紅魔族の最後尾を見つけ声を掛けようとしたが、たまたまタイミングそうだったのかは分からないが集まり集団とかしていた紅魔族達が我先にと散開しだした。

 

「ま…待ってくれ⁉︎何が起きているんだ‼︎」

 

悲鳴に近い雄叫びと共に我先にと逃げていく紅魔族の流れに逆らうように進みポータルのところへ辿り着き、先程確認したポータルを視界に入れる。

そこには数人の紅魔族の死骸と紅魔族を殺した傭兵が立っていた。

 

「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーっ‼︎」

 

即座に剣を抜き傭兵らに斬りかかりそのまま斬り伏せる。幸い闘技場の連中らと比べてばそこまで実力が高いわけでは無かったので苦労はしなかったが、魔法が使えない紅魔族となると話は別だろう。

傭兵を片付け、周囲の気配を探り残りの傭兵を殲滅しようとした時にすぐ側で新しい気配が増えた。

 

そう。

新しい気配はポータルから現れたのだ。

新しく現れた傭兵は、今まで見ていた傭兵と同じ装備と格好をしていた為考えるまでも無く奴らはこのポータルを使用しこの里に攻め込み、紅魔の里の皆は避難する経路から敵が現れた事によりパニックになって逃げ出したのだろう。

 

「クソが‼︎」

 

すぐさま傭兵を切り伏せ、新しく侵入されないようにポータルを破壊する。

避難経路にポータルを使用する事を予測され、それを逆手に取られたのだろうか、それとも…

 

ポータルは残り二つ、それまでに紅魔族は何人残るのだろうか。

…いや紅魔祭も残り数時間、紅月の作用が後どれくらい続くかは分からないがその時間まで持ち堪えられれば形勢は逆転するだろう。

 

頬を叩き気合を入れ、次に近いポータルへと向かう。

その途中いつもの紅魔族の死体が散乱しており、その死骸を辿りその先にいる傭兵を狩りながら進むうちにある事に気づく。

 

気づくと言っても俺の勘違いかもしれないが、道端に転がっている紅魔族の死骸はどれも綺麗な状態でどの遺体も全て顔が傷つかないように置かれているのだ。

一体何故だと考えているうちに二つ目のポータルに向かうとそこでは紅魔族がスクロールなどの道具を駆使しながら傭兵部隊と渡り合っているのか紅魔族の死骸の周囲に傭兵の死体も転がっている。

 

やはり紅魔族もバカでは無いので逃げ回りながら道具を回収し、反撃に転じているのだろう。

確かスクロールなどの魔道具を外部に出荷していると前にゆんゆんが言っていたので、俺が何もしなくても自力で持ち堪えるかもしれない。

 

まあ、だからと言って助けない訳にもいかずポータルを破壊しようとするが、既に誰かがやったのかそれは破壊されており紅魔族達に応戦に加わる。

一体騎士団は何処で何をしているのかと思いながら傭兵を片付けると、その途中で騎士団の二名こちらに向かってくる。

 

これならこの場を任せてゆんゆん達の向かっているであろう三つ目のポータルに向かえるだろうと思いその場を離れようとしたが、こちらに向かってくる騎士団達は傭兵に斬り掛かるのではなく、何故か護るべき対象である紅魔族に切り掛かったのだ。

 

「は?」

 

目の前で味方が切り伏せられる光景を目の当たりにして最初は何かの間違いかと思ったが、そんな淡い期待は打ち砕かれ騎士団の連中らはそのまま残りの紅魔族に切りかかったのだ。

呆気にとらわれている間に次の紅魔族の方が斬られそうになったので、すかさず間に入り切り捨てようとしたが、やはり騎士団に入るだけあってか簡単にはいかずに持っていた剣で防がれ、その間にもう一人の騎士に切り捨てられる。

 

「クソ⁉︎何がどうなってやがる‼︎」

 

騎士団二名を相手取りながら状況を確認しようとするが、予想もしていなかった事態に頭が追いつかず考えが纏まらない。

 

「カズマ殿援護します‼︎」

「ああ、助かる」

 

もしかしたら傭兵が騎士団を倒し鎧を奪って着ている可能性に掛けながら攻撃を捌き反撃の機会を窺っていると、紅魔族の数名がスクロールを取り出し騎士団に向けて魔法を飛ばす。

放たれた魔法は統一感がなくバラバラの属性だったが、同じ属性だと共鳴して威力が高くなる分反対属性の魔法で防がれてしまうのでこちらの方がかえって良いのだろう。

 

魔法攻撃でできた隙を狙って俺が攻撃をするスタイルはいつもの戦闘スタイルに近いので、たとえゆんゆんでなくても安定はするだろう。

だが、放たれた魔法を見て騎士団の連中らは臆する事なく俺への攻撃を続けた。

 

「なっ…どう言う事だよ⁉︎」

 

本来であれば魔法が飛んできた時点で距離を置くか何かしらの防衛策を取るはずなのだが、その騎士団達は飛来する魔法を見てまるで何も来ていないかのように振る舞ったのだ。

 

「はぁ?」

 

そして放たれた魔法が騎士団の連中に激突したと思った瞬間に、魔法はその攻撃性を見せる事なく一瞬にして霧散したのだ。

そう、その霧散の仕方は昔に見た光景…紅魔族がよからぬ事を企んだ時にそれを鎮圧するために作られた魔術師殺しの効果に似ていた。

 

「ここは俺に任せて三つ目のポータルに向かってくれ‼︎」

 

魔法が通用しない以上この場に居られると俺の不利になる可能性が高い。ならばここは俺が殿となって皆を逃すことに徹した方がいいのだろう。三つ目のポータルが一番隠し通路に近いのでもしかしたらそこから避難出来るかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…何とかなったな…」

 

騎士団の2人を片づける。

硬い鎧を着ていた為、結局関節部を斬り動きを封じ込めながら頸部を切り裂く羽目になったので大分時間を取られてしまう。

 

「…」

 

息を整える間に騎士団の1の兜を剥がし素顔を見るが、やはり傭兵達とは違い肌の質感や清潔感からして傭兵の奴らとは一線を引いている風貌から見るに傭兵の奴らが騎士団から鎧を奪って着ている線は無くなった。

つまりこの紅魔族虐殺事件に騎士団が一枚噛んでいた事になるわけだ。

 

「どうなってやがるんだ…」

 

騎士団の隊長とは昔からの付き合いだと言っていたが、この計画は昔から考えられていたものなのだろうか?それともあの騎士団長以外が結託して今回の件を起こしているのだろうか?

もう少し死体を調べて魔法を打ち消した原因を調べたかったが、そんな事に時間を浪費して仕舞えばその分だけ紅魔族の方々が狩られてしまうので後ろ髪を引かれるが三つ目のポータルへ向かう事にする。

 

支援魔法を掛けながら全力で里を駆け抜ける。

普段はすぐ行き来できるような気がしたが、やはり急いでいると長く感じてしまう様で走れども目的地に着く気がしない。

 

…あれは何だ?

 

走っていると後方支援部隊だろうか少なくとも紅魔族が着用しなさそうなデザインのローブを着た人間が紅魔族の遺体をいじくり回していた。

一体何をしているのかと思い、走りながら狙撃スキルでナイフを投擲しローブを着た人間の頭を貫き殺害する。

 

そしてその遺体を素早く漁り一体何をしようとしているかを調べる。時間をかければかける程誰かが犠牲になってしまうのだが、何の情報もなければ準備している相手に対して不利になってしまう。

傭兵に騎士団、それぞれに役割があるのであればこのローブ姿の奴にも何かしらの役割がされているのだろうと思いながら近づくと、遺体の周りにはガラスのコップに蓋がついているような太さのシリンダーが遺体からこぼれ落ちたのか転がっていた。

 

それを拾い鑑定スキルを発動して調べようとしたが、その中身を見た時点でそれが無意味であることを悟る。

 

これは…。

 

思わず放り出しそうになる衝動を抑える。

シリンダーの中に入っていたのは紅く煌めく紅魔族の眼球だった。

 

シリンダーを持ったまま先程まで弄られていたであろう遺体を見ると、致死に至った傷よりも丁寧に眼球が抉られていた。

これで今まで謎だった奴らの目的がはっきりする。

 

いつかオークションで見たであろう紅魔族の眼球をこいつらは乱獲して、それをオークションで高値で売ろうと言う考えだろう。

またはその狂信的コレクターのどちらかだ。

 

シリンダーをその持ち主の遺体に返し、俺は目的地である第三のポータルへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カズマくん‼︎無事だった様だね」

「はい‼︎」

 

第三のポータルに着くとそこはまるで屍山血河とでも言うのだろうか、傭兵と紅魔族の遺体がそこらじゅうに転がり、それは今尚数を増やしている。

皆この事態を予見していたのだろうか、各々がスクロールを使用しながら傭兵に応戦しており形勢は有利に傾いているが騎士団の連中らが1人も居ない事が気がかりである。

 

着いてそうそう後ろで指揮をとっていたのだろうか族長が俺を見つけて声をかけてくる。

 

「状況は落ち着きつつある様だが、カズマくん君は他の場所から来たのだろう?他のポータルの様子はどうだったのかな?」

「他の二つは既に破壊しました。族長も存じていると思いますがあのポータルから傭兵が侵入してきています」

「やはり他のポータルもそうだったか」

 

やはりと言うことはここのポータルも同じ様に傭兵が出現し周囲の紅魔族を狩っているのだろう。

周囲を見渡すと遺体で隠れつつあるが壊れたポータルの姿が見える。

 

「騎士団の連中らが今回の首謀者みたいですね。アイツに何名かやられました」

「何?それは本当かい」

 

どうやら騎士団はここには現れてはいなかったようで、先程まで起こっていた事態を伝えると少し動揺しながらも事態を飲み込み考えを纏めている様だ。

 

「成程、であれば私たちの考えは筒抜けという事になる。であれば今から新しい計画を立てなくてはいけないね」

 

ふむ、と腕を組みながら新しく加わった条件をいれ策を考えているのだろう。

 

「考えているところ悪いのですが、奴らの目的は紅魔族の眼です。この傭兵とは別にローブを着た奴がいてそいつらが眼球を回収しています」

「やはりか…」

「何か引っ掛かるところがあったんですか?」

「いや、ただ紅魔祭の時期になれば我々紅魔族の眼は紅眼になるからそれを狙う集団が一定数いるのは分かっていたのだ」

「えぇ、だから毎年騎士団に護衛を頼んでいたんですよね」

「ああ、その通りだが…まさか騎士団が裏切るとは流石の私も考え付かなかったよ」

 

族長は悔しそうでいて少し悲しそうにそう言った。

昔からの付き合いで信用していた人間に裏切られたのだ、その精神的ダメージは計り知れない。

 

「それと騎士団の連中らは鎧の性能なのか魔法が全く効かず、当たった瞬間に打ち消されますね」

「…何だと。それは一体どう言うことかな」

「詳しくは…ただ消え方は前に見た魔術師殺しの防衛機構と同じ様な気がします」

 

 

 

「成程、君が言いたい事は分かった」

 

魔術師殺しの件から先程の騎士団の件にかけて説明をすると族長は何かに納得したのか

 

「つまりこの状況も騎士団の方々が来れば一気に傾くと言うわけだね」

「そうなりますね」

「成程…それでは君は以前説明した抜け道を使ってゆんゆん達とこの里を出てくれないか?」

「な…何を言っているんですか?」

 

族長の下した予想外の提案に思わず声を荒らげる。

 

「騎士団の方々に魔法が通じないのであれば我々ができる事は殆どないだろう。であれば魔法以外の攻撃方法を持つ君を先に隠し通路へ行かせてゆんゆん達を安全に里の外へ連れて行ってほしい」

「…分かりました」

 

普通の人間であれば自身の身を守るために俺をここに留めておくものかと思ったが、どうやら族長は自分らよりも先に避難させた後世を繋ぐ若者達を優先したと言うことだ。

 

「それでゆんゆん達は隠し通路のある小屋に向かったと言うわけですね?」

「ああ、学校では最初にあの場所を教えるからね。ゆんゆん性格はあれでも賢い子だからきっと覚えているはず」

「分かりました。検討を祈ります」

「ああ、それと何故かは分からないがテレポートや空間に干渉する魔法のスクロールが使え無くなっているから気をつけて欲しい」

「え?ああ、はい分かりました」

 

何か自分の知らない法則の様なものが裏で発動しているのだろうかこの里から楽をして出る方法は全て潰されているようだ。

 

「それでは娘を任せたよ」

「…はい」

 

これ以上は何も言うなと族長はそう言い目線を戦場へ向け、再び指揮をとり始めた。

あれは自分の死を覚悟した人間だけができる表情で、彼らは皆を逃すためここで傭兵部隊と共倒れするつもりなのだろう。

 

 

 

 

 

 

紅魔の里の中心から離れる毎に木々が多くなり本当にこの道で合っているのか不安になってくる。

ゆんゆん達は既に隠し通路のある小屋に向かっているのだろうか、想像したくはないが既に捕まって殺されていないだろうかさらに不安になってくる。

 

「クソ‼︎やっぱりか‼︎」

 

小屋に向かう途中に騎士が逃げている紅魔族の女学生を攻撃しているのを発見しすかさず切り掛かる。

先程の戦いで奴らの攻撃の癖を見抜いてはいるのでそこまで時間を掛けずに倒す事ができる。

基本的に騎士団など集団で行動する組織は教育の効率を考えて動きの基礎が共有されている為、共通した行動の癖がデメリットとして出てしまうのだ。

 

「大丈夫か?怪我は…しているな。今回復させる」

「あっはい、ありがとうございます」

 

学生の子を助け出し足を見ると怪我をしていたので回復魔法で怪我を治す。

やはり学生なだけあってか目の前で命を狙われていたとはいえ人が殺される光景でショックを受けているのだろう。

 

「君は今1人か?」

「はい、友達はそこで…」

「…ああ、ごめんな」

 

他の仲間が何処かで隠れているなら一緒に連れ出さないといけないと思い仲間の所在を確認すると学生の子は悲しそうに俺の後ろを指差し、そのままの流れで後ろ見ると木に寄りかかるように倒れている。

感知スキルでは反応がないが念のため首筋に触れ脈と生命力を確認するが、分かったのはその子が死んでいることだけだった。

 

「ごめんな、もう少し早く来れれば助けられたかもしれなかった」

「いえ、いいんです。助けていただきありがとうございます」

 

学生の子は涙を堪えながら俺に頭を下げる。

 

「ゆんゆんかめぐみんを知っているかな?ちょうど君くらいの子なんだけど」

「いえ、知ってはいますが騒ぎが起きてからは会っていないですね」

「そうか…ありがとうな、それとこれから何処に逃げればいいか分かるか?」

「はい、それは分かっています」

「悪いね、俺は先に行ってさっきの奴らを倒して道を開けて行くから君は1人で行けるか?」

「大丈夫です」

 

1人残すのは危険だが、彼女のペースに合わせると彼女以外の人達を助ける事ができなくなってしまう。

かと言って、彼女を抱き抱えて進もうものならこの先助けた人達を抱えなくてはいけなくなるので現実的ではない。

 

だからこの選択は仕方がないのだ。

 

 

 

 

彼女に別れを告げ俺は再び道を進む。

やはり紅魔族は魔法が使えなければ基本的にステータスは村人と同じくらいで走る速度やスタミナのステータスは大分低い、そして騎士団は鎧を着ている為一般人よりかは早いがアクセルにいる初級冒険者程度の速度しか出せない。だからこそ俺が最高速度で走ればまだ間に合う余地があるのだ。

 

置いてきた彼女の事は気掛かりであるが今はそんな事を気にしている場合ではないと言わんばかりに前方で騎士が逃げている紅魔族を狩り始めている。

騎士団のメンバーが何人居るのか聞いておけばよかったなと後悔しながら剣を抜き騎士に切り掛かる。

 

 

 

 

 

 

一体どれだけの騎士と傭兵を殺してきたのだろうか、距離はそこまで遠くは無いが止まって戦闘を繰り返していることが大分時間ロスが生じてしまっている。

既に手は返り血で赤黒くなりつんざく血液の独特の匂いは鼻が慣れ始めているのかあまりしなくなってきた。

 

幸いにも体力はあまり減っておらず、まだ戦えるのが救いだ。

何となく流れに任せて色々戦って来ているうちに俺の想像以上に力がついてきていて、騎士団のレベルならそこまで苦労せずに相手できるのかもしれない。

 

だが、油断はする事は出来ない。

あの騎士団長の実力はまだ未知数で、出会った時から嫌な予感がしてならない。

 

疑問は尽きないが、そろそろ目的の小屋に着く距離だろう。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。