この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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赤髪の悪魔7

「姐さん…」

「久しぶりだね坊や」

 

ローブから顔を出して現れたのは前に世話になった女性だった。

 

「姐さんが魔王軍幹部邪神ウォルバクなのか?」

 

心の中ではただの人違いか双子か、それとも人の記憶の中から戦いづらい人を選出してその姿を真似る能力を持った魔物で、騙し討ちをメインにここまでのし上がって来たタイプなのか、どれでも良いから姐さんではありませんでした的な展開を予想したいが、俺の持つ感知スキルがそれら全てを否定している。

そう、答えを聞くまでもなく彼女は俺の知っている彼女なのだろう。

 

「ええ、そうよ。私が魔王軍幹部ウォルバク、今はあなたの敵よ」

「…」

 

心の中では彼女がウォルバクであると確信していたのだが、そうですと言われればそれはそれで心に来るものがある。

 

「そろそろ来る頃だとは思っていたけれど、随分と遅くなったようね」

「…どういう事だ?」

「さあね、そんな事よりもこれから坊や達はどうするのかしら?」

「しまっ⁉︎」

 

ウォルバクの言葉に気づき、周囲に気を回すと俺達を囲む様に夥しい程のモンスター達の気配が集まり始めていた。

 

「ここで爆裂魔法を撃ち続けている限りいずれ誰かが待ち伏せしてくると思ってね、まさか坊やとは思わなかったけれど」

「クソッ!反対に嵌められたわけか」

 

俺の作戦は気づかれない様に魔王軍幹部に近づき攻撃を与え、仕留めれば上々最低でも何かしらのダメージを与えられればいいと思ってはいたが、その作戦は相手があの姐さんだった事で失敗に終わりむしろそれにより動きが止まった事を逆手に取られ追い込まれてしまっている。

 

「こうなったらしかたねえ!ゆんゆん援護を頼む‼︎」

「え?はっはい‼︎」

 

ゆんゆんに後方支援を任せ姐さんの前に一気に踏み込み距離をつめる。

 

「へぇ、そう来るのかい」

「なっ‼︎」

 

ゆんゆんの後方からの魔法攻撃と正面からの俺の攻撃で相手は二つの間合いからの攻撃を防ぐため次への隙ができやすく、次につなげやすい戦法なのでよく使っていたが、姐さんは今までの相手とは違い俺の元に踏み込むことでゆんゆんの攻撃を躱し俺への攻撃の対処だけに移行させた。

 

「舐めるな‼︎」

 

踏み込み足のバネを利用し剣を横薙ぎに姐さんの胴体を切るように腕を振るうと、彼女はそれを俺の腕を掴む事で斬り付けを止めそれにより出来た隙で俺のボディに一発拳を沈め、仰け反ったタイミングで下からの突き上げを喰らいそのまま後方へと飛ばされてしまう。

 

「がはッ⁉︎」

 

正直目で追いきれず痛みと感覚による予想でしか無いが、今まで彼女は俺の前で本気を出していなかったのだろう事は分かった。

 

「かっカズマさん‼︎」

「何て事を…え?」

「…どうした?」

 

後ろに吹き飛んだ俺を回収すべくゆんゆんが姐さんに魔法攻撃を飛ばし牽制しながら俺の元に向かうと、ゆんゆんは姐さんの顔を見て何かに気づいたのか素っ頓狂な声をあげていた。

 

「あら、これまた随分と久しぶりな顔じゃない…そうちゃんとパーティーを組める相手が見つかったのね」

「え?はい…その節はお世話になりました」

 

どうやら過去に何かしらの関わりがありその時にお世話になったのだろう。

人の事を言えたわけでは無いのだが戦闘中なので出来れば真面目にやって欲しい気持ちは存在する。

 

「それでこれからどうするの坊や?ここはもう私の部下に囲まれて貴方の目の前には私が居る、逃げ場なんて無いわよ」

「逆に聞きたいけど、姐さんは俺を追い込んで攻めずに何がしたいんだ?」

 

チェックメイトを取ったが故の慢心で相手を遊ばせる奴は度々見て来たのでそういう人種が居る事は分かっていたが、姐さんがそんなん事をする奴だとは思えない。

であれば、何かしらの意図があるのは考えるまでも無いだろう。

 

「そうね…坊やあなた私の仲間にならないかしら?」

「はぁ?」

 

何かと思えば魔王軍への勧誘だった。

確かに俺の実績を見れば既に半分の勢力を倒しており仲間に加える戦力としては十分すぎる、それに半分も減っているのでその穴埋めににもなるしこれ以上幹部が減ることもない。

そして思い上がりかもしれないが短い時間ではあるが姐さんと闘技場で過ごした日々もある。

考えれば考えるほど魔王軍に俺達が入ることのメリットが大きい。

 

だが、俺達の本来の目的は魔王討伐であり、そのために特典をもらっている以上魔王軍に与した所で何かしらの罰があるかもしれない。

某漫画では裏切った瞬間能力が暴走して異形の生物に変わったりするので、もしかしたらこの世界でも魔王軍に屈服した瞬間チート能力にやられたりするかもしれない。

 

「残念だけどそれは出来ないよ。反対に姐さんがこっちこへ来ない?ちょうど戦力集めていたし仲間になってくれるとすごい助かるんだけど」

「そうね…確かにそれは面白そうね、正直今の魔王にはあまり従う気がしないもの」

「なら」

「それは坊やと同じよ、残念だけどそれは出来ないわ。今の魔王とは別に昔にした約束があってね…悪いのだけれどそれを優先させて貰うわ」

 

やはり魔王軍幹部が知り合いに言われてその職務を放棄するなんて事はあり得てはならない。

正直姐さんが1人でも仲間になってくれれば戦力が揃って王都に行けそうだったんだが、流石に無理がすぎたお願いだろう。

 

「それで互いのお願いが却下されたわけだけど、もう一ラウンドやるか?」

 

再び剣を構えて姐さんに向き直る。

正直今回のケースは考えてはいなかったので何も対処法が浮かばない。

 

「そうね、折角の私の誘いを断ったんだからそれ相応の報いを与えないとね」

「ーーっ⁉︎くるぞゆんゆん、めぐみん‼︎」

 

パチンと姐さんは指を鳴らすと、それに反応してか周囲の魔物の気配がこちらに向かって集まってくる。

 

「流石にこの人数は無理だ!テレポートで一度砦に戻るぞ‼︎」

「そんな事させると思っているのかしら?」

 

ゆんゆんが詠唱を始めている最中姐さんは彼女の詠唱を止めようと黒い稲妻の魔法を放ち、俺はそうはさせまいと黒い雷を魔力を帯させた剣で上手くパリングさせ遠くにいるであろうモンスターの群れに飛ばす。

 

「めぐみん‼︎モンスターが集まる前にこっちに来い‼︎」

 

先程からずっと後方にいためぐみんに声をかけゆんゆんのテレポートの発動範囲に来る様に声を掛ける。

 

「クソ‼︎」

 

黒い雷では俺たちを妨害できないと判断した姐さんは近接戦で俺達を片付けようと距離を詰め走り出す。

 

「クソッ‼︎間に合ってくれ‼︎」

 

黒い稲妻を今度は姐さんに向かって弾き返すが、元々姐さん由来なのか跳ね返した魔法が当たる事はなく、刻一刻と彼女は近づいてくる。

正直今の場の流れでは姐さんを倒す事は出来ないうえ、距離を詰められればなすすべなく蹂躙されてしまう。

 

「お待たせしましたカズマ‼︎」

「めぐみん?何を⁉︎」

 

こうなれば2人だけでもと肉体強化の魔法を全力でかけようとした瞬間に先ほどまで後ろにいためぐみんが前へと飛び出してくる。

 

「お久しぶりですね…」

「ごめんなさいね、あなたは誰?」

 

めぐみんにより俺と姐さんの間にスクロールの魔法が放たれ突然の事に姐さんは反射で距離をとり、その隙にめぐみんが話かけるが姐さんはめぐみんの事を覚えてはいなかった様で困惑していた。

 

「…そうですか、それではさようなら、ゆんゆん今すぐテレポートを‼︎」

「…ッ⁉︎」

 

多分そうだろうなと思っていたのかめぐみんの返事はそっけないものだった。

そして、ゆんゆんのテレポートが発動し始める最中姐さんの足元に爆裂魔法の魔法陣が現れ、俺達はその爆発を見る前に光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ君たちか、脅かさないでくれよ」

 

光に包まれ俺達は砦へと戻って来ると目の前にミツルギがおり、突然現れた俺らに対して驚愕していたようだ。

 

「悪いな、正直余裕がなかったんだ」

「そうなのかい?それよりもさっき爆発が起きたんだけどそれは君達の仕業かい?ちょうどそこの子も動けなくなっているみたいだけど」

 

ミツルギはめぐみんがぐったりしている様子を見て今回の爆裂魔法の発動者はウォルバクではなくめぐみんだと合点した様だった。

 

「そうだな、待ち伏せして不意打ちしてやろうかと思ったんだけどバレちまってな、何とか爆裂魔法を相手にぶつけて逃げて来たんだよ」

「へーそれは凄いじゃないか!という事はもう幹部は倒したって事でいいのかな?」

「いや、多分それは無いな。爆裂魔法を喰らったにしては気配がピンピンしてやがる、多分しばらくしたら爆裂魔法が飛んでくるぞ」

 

普段なら引っ込んでいるであろう姐さんの気配が無くなってはおらず、魔力を高めているのか少しずつ気配が大きくなっている。

これはめぐみんを見ていて思ったのだが、威力の高い魔法を扱う時に見られる予兆の様なもので、大抵この後に何かしらの大きな一撃が飛んでくる事が多い。

 

「それは非常にまず…うぉあ⁉︎」

「ほらな」

 

ミツルギが俺の言葉に驚きながら何かを言おうとしたタイミングでいつもの地響きが鳴り響く。

ただ何時もより規模が小さい気がするのは気のせいだろうか?

 

「ミツルギ、敵の正体が分かったから今夜みんなを集めてくれ、作戦会議を始める」

「そうかい、ついに君も動き出すんだね。分かったよ、皆には僕の方から声を掛けておく」

「ああ、まかせた」

 

砦の損壊具合を見て多分今から何かしなくては爆裂魔法に耐えきれず壊れてしまうのが目に見えている。

ここの長が何もせずただ間諜を図っているだけであるなら俺が何か指揮した方が上手く行く行かないにしてもまだマシだろう。

 

 

 

 

 

 

「それで話を聞きたい事があるんだけどさ、とりあえずゆんゆんからウォルバクについて知っていることを話してくれないか?」

 

部屋に戻り2人を呼び作戦会議の前に情報を集めておく事にした。

正直俺以外に面識のある人間がいたのはビックリだったのだが、まさか2人とも面識があったのがさらなる驚きだった。

 

「私はそうですね…紅魔の里を出た時に馬車で一緒になったと言いますか…アクセルに来るきっかけになったと言いますか…」

 

話を聞くとどうやら旅の途中で馬車を一緒にしたみたいで色々人生のアドバイスを受けたそうだ。

正直ゆんゆんから話しかけに行ったとは思えなかったので、多分気まずくなって姐さんから話しかけたのだろう。

 

「それでめぐみんだ、色々と隠している様だったけど話してもらえるか?」

「別に隠していたつもりはありませんが…いいでしょう私の知識を全て明かすとしましょう」

 

こうして彼女の口から語られた衝撃の事実は昔にかなり脚色され長い物語の様だったが簡単に纏めると、邪神ウォルバクの封印を解きそのお礼に爆裂魔法を教わった事だった。

 

「なるほどな…姐さんがめぐみんを爆裂魔にした元凶だったのか…」

「そんな…あんなに優しかった人だったのにそんな悪行に手を染めてたなんて…」

「なんて人聞きの悪いことを‼︎あの人は私の爆裂魔法の師匠つまり我が爆裂道の原点にして頂点ですよ」

「はいはい…そういう事にしておこう」

 

 

とりあえず納得しておかないと話が先に進みそうもなかったのでここは話を合わせておく事にして次の話へと進ませる。

 

「それでウォルバクはなんでめぐみんの爆裂魔法を喰らっても生きていたんだ?あれは全ての対象にダメージを与えるものだろ?」

 

これが今回のキーになるかもしれない事案である。

本来あの距離で爆裂魔法なんて物が放たれてしまったらたとえ魔王軍幹部であっても何を出来ずに消されてしまう流れのはずなのに、今回は少し魔力反応が弱まっただけで生命の気配そのものはあまり下がってはいなかったのだ。

それを考えるとその方法さえわかれば砦の爆裂魔法を防ぐ事が可能なのかもしれない。

 

「それですか?それは多分彼女が私の爆裂魔法に合わせて爆裂魔法を被せて来たからですよ」

「なんだそれは?」

 

期待して帰って来た答えは思ったよりも簡単な物だった。

 

「聞いただけではわかりづらいと思いますが、理屈は結構単純です。私の爆裂魔法を放つ際に魔法陣が出現しますよね?」

「ああ、出るな」

「あれに同じ魔法を重ねて発動させればそこで威力の相殺が出来ます」

「え?そんな単純なもんでいいのか?」

 

もしそうならめぐみんを砦の外壁の前に立たせて爆裂魔法が飛んできた時に合わせて発動して貰えれば、無効とまでは行かないが外壁の受けるダメージを減らせるのではないだろうか?

 

「単純であるが故に技術は必要です。相手の詠唱の癖及び術の組み立て方発動のタイミングそれら全てを合わせなくてはいけません。多分カズマはあの外壁の爆裂魔法を何とかしたい様ですが、あれを止めようとするには少なくとも彼女の姿が目視できるくらいに近づかなくては無理です」

「そうか…」

 

どうやら爆裂魔法を合わせて相殺させる技術というものは中々に難しいものらしく、やるのであるのならめぐみんを敵の縄張りの中に毎日待機させないといけない様だ。

 

「それに相殺している間は周囲に衝撃は行きますし狙ってやる様なものではありませんよ」

「そうだよな…」

「まあ、今回相殺されたのは多分私の爆裂魔法が彼女から教わったやり方でやっているからでしょうね、出なればあそこまで急ピッチで合わせられたりしないでしょう」

「そういうもんなのか?」

「ええ、魔法のジャミングやインターセプトはよくありますからね、皆少し詠唱や術式の組み方を変えて解らないようにしたりしていましたね」

「へー色々あるんだな」

 

どうやらこちらの世界にも色々あるようで、それ相応の対策もあるみたいだ。

 

「私達は話しましたけど、カズマさんは一体何があったのでしょうか?」

「ああ。俺はな…」

 

俺は記憶喪失中だった時の闘技場の件を詳しく2人に説明し直した。

 

「…なるほどその時の方がウォルバクさんだったって事ですね」

「そうなるな…正直味方になってくれれば嬉しいんだけどな」

「…そうですね魔王軍幹部の方が仲間になってくれれば王都攻略が可能になるかもしれません。王都をどうにかするのであれば魔王軍は特に関係なさそうですし」

「そうだな、その戦利品としてクレアを差し出せば全てが丸く治るかもしれないしな」

 

我ながら名案が浮かんだかもしれない。

姐さんと協力し、名目的には王都へ侵攻し事実上実権を握っているクレアを捕獲し、それを魔王へ献上するという流れになればお互いにwin-winの関係だろう。

 

「そんな上手く行くわけないじゃないですか、相手は腐っても魔王軍幹部、例えそれが上手い話だとしても王都に攻め込む以上狙うのはカズマの目的であるアイリス王女ですよ」

「そうだよな…」

「ええ、そうです。彼女さえ落としてしまえば勇者の家系は全滅、魔王の一番の脅威は無くなったもんですよ」

 

確かにめぐみんに言われてハッとする、アイリは魔王軍にとっての一番の天敵である勇者の家系の末裔でしかも最後の1人である為、彼女が子供を産む前に捉え殺してしまえば勇者の残した武器防具は力を失い奴らの最大の脅威は消え去る事になる。

そんな千載一遇のチャンスを逃すなんて姐さんがやるとは思わないし、俺が魔王だったら王女を無視してクレアを持ってきたらその場で処刑してしまうほどだ。

 

「姐さんを仲間にするのはやっぱり難しいか…」

「難しいとかではなく不可能だと思った方がいいですよ、相手は魔王軍幹部なのですから」

 

迷い続けている俺に懸命に説得しにかかるめぐみん、ここで敵対する事が彼女なりのケジメなのかもしれない。

 

「仕方ない、とりあえずは姐さんを倒す方向性でいこうか」

「そうです、流石…流石カズマです」

 

めぐみんも辛いのだろうか、少し声に覇気がなく言い淀んでいるのか言葉が詰まる時がある。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ第一回邪神ウォルバク討伐作戦を開始する」

 

俺はあの後この砦の主にというか取り仕切っている王都の人に冒険者カードをみせ魔王軍幹部を4人やっている事を説明し、ここの指揮権を一月譲って欲しいと頼んだ所予想以上に快く受けてくれた。

多分彼もこの贄括らない状況に嫌気がさしていたのだろう。

 

「まずは彼女の特性についてだ」

 

その後よく解らないない日本のノリでゴリ押ししながら姐さんについての能力を説明する。

彼女は典型的なアークウィザードで爆裂魔法を今まで主として使ってきたが、本来は上級魔法を使いその上格闘のセンスもある。そして魔物を取り込みその魔物を影として操るそんな能力も隠し持っている事も予想される。

 

そして彼女の事だきっと他にも何かを隠していることがあるに違い無いから気をつけたほうがいい。

 

「以上が俺の知っている範囲でのウォルバクの能力だ」

 

俺の説明に今まで何も知らずに戦ってきた奴らから歓声の声が上がってくる。

ここまで知らないで戦って来たのかと思ったが、今回に関しては流石に俺に利がありすぎるためこれ以上は考えない様にする。

 

「それで森の情報だけど」

 

俺が昨日森で見てきた情報を仲間に伝えると、やはり奴らは無能では無かったと俺よりも多くの情報を教えてくれた。

 

あの森には罠が仕掛けられており、それはゴブリンによって管理補修されている。

ここまでは俺も知っていたが、昼になると俺が戦った様なやつではなく普通の精鋭が巡回しており何かがあるとそいつらが集まり出してくるとのことだ。

その精鋭のタイプは猿の様なもので木々の隙間を飛び回り弓矢や飛び道具を使い近づけば距離を取られたり草木の間に隠れて見えなくなるといったり姑息な手を使われるらしい。

まるで俺が指導したみたいな感じがして嫌なんだが、それは反対に俺がされたら嫌な事をみんなですればいいと考えられる。

 

「よし分かった。明日補修組出ないやつはできる範囲でいいから俺に能力を教えてくれないか?それで作戦を立てるから」

 

敵の情報はおおよそ纏まった。

これによりウォルバク討伐作戦を開始する。

 

 

 

 

 

 

「…はぁ、どうしたものやら」

 

仲間から預かった情報を紙に写しそれをベッドの上に並べる。

流石はチート部隊、一人一人の能力は最終決戦後の裏ボスを倒した後の装備や能力みたいなやつばっかりで頼りあり過ぎだが…

 

「どれも攻撃系に偏ってばかりだ…」

 

思わず言葉に出てしまう。

 

「そうですね…みなさんすごい能力だとは思いますがみんな戦闘しか出来ないみたいですね」

 

俺のぼやきを聞いて俺の写しの紙を見てゆんゆんが率直な感想を述べた。

 

「そうなんだよな…まあ俺も人の事は言えないけどさ」

「そうなんですか?私はカズマさんは色々できると思っていますけど…」

「ん?あぁ…そうだよな、ありがとうゆんゆん」

 

そういえばゆんゆんにはチート能力のことを深く説明していなかったなと思い適当にはぐらかす。

ここでその話をすれば作戦を考える前に日本の話で時間が潰れてしまいそうだ。

 

「ともかくだ、この攻撃に偏った戦力でどうあの森を攻略していくかだ」

「これだけの戦力があれば普通に突撃すればいいじゃ無いですか」

「そんなことしたら罠に嵌って終わっちまうだろ、それに相手は森での動きに特化しているから正攻法じゃまずいんだって」

 

ゆんゆんの行き当たりばったり脳筋戦法では多分どうにもならないので別の案を考える。

 

「めぐみんはどう思う?」

「さあ、私もよく分かりませんが、一日一日丁寧に森の端っこから爆裂魔法で飛ばして奴らをアジトまで押し返してやればいいんですよ」

「そんな事してる間にアジトの外壁が無くなっちまうよ」

「ですよねー」

 

めぐみんは俺の話にあまり乗り気では無いのか砦の奥に仕舞われていた古書を持ち出しずっとそれを読んでいた。

 

「なあめぐみん、さっきから一体何読んでんだ?」

「これですか?これはなんて事のない魔導書ですよ」

「へーなんの魔道書なんだ?」

「まあ魔導書とは言っても所詮は爆裂魔法の文献ですね、ここは随分と爆裂魔法に苦しめられているそうなので対策に色々な爆裂魔法の文献が集まっているのですよ」

「つまりお宝を見つけてしまったというわけか」

「そういう訳です、私は私でやる事がありますのでカズマは作戦を考えていてください」

「はいよ」

 

めぐみんはああ見えて適当な事はしないタイプなので多分彼女は彼女なりではあるが、今回の戦いに役立とうと必死なのだろう。

 

姐さんの爆裂魔法はめぐみんが何とかしてくれるとして今は森の攻略に専念しないといけない。

 

 

 

 

 

 

「よし、それじゃあ皆で並んでこれから奴らのアジトに向かって特攻を仕掛ける」

 

おおーと言う歓声を聞きながら先日考えた作戦を伝える。

内容は本当に単純で俺を先頭にして森の中を破壊しながら進んでいくといったシンプルかつ確実な方法を選択した。

 

…まぁしたと言うよりかはせざるを得なかったと言った方が正しかったが。

 

ともかく俺たちは屋裏のアジトがあるであろう方向へと向かって森に入って行った。

 

 

 

 

 

森の中は思っていたよりも湿度が高く、全身を鎧で包んでいるミツルギの様な奴らからしたら最悪のコンディションかもしれない。

本来であればヒーラーや魔法使いなどが色々対策してくれるのだが、ここではその職業の方は貴重らしくこんな危険な作戦には参加させられないとパーティーメンバーに言われ最悪だが現在のメンバーは殆ど脳筋連中らと言う事になる。

 

「そこだ狙撃‼︎」

 

感知スキルに引っ掛かったであろう魔王軍の精鋭に向けて狙撃スキルでの矢を射り命中させ木から引き摺り落とし、それをみんなでタコ殴りにする。

罠に関しては俺が罠感知で見つけたものを解除するのではなくゆんゆんの中級魔法で破壊するといった感じになる。

 

まあ森の攻略は俺らが行い、あまり気が進まないがウォルバクやその配下は皆んなに任せた方が今回の作戦は成功するだろう。

出来れば俺たちでなんとかしたかったが、それを優先すればまず姐さんに会えないのだ。

 

「カズマさんここは前回来た場所です」

「ああ、そうだな」

 

進むこと数時間、全力疾走で来た時とは違い歩きで進むとここまで違うのかとこれから先のことが思いやられると思ったが、いつも姐さんがここまで歩いていやって来ている事を考えれるともしかしたら奴らのアジトまで近いのかもしれないと希望的観測で考えてしまう。

 

「やっぱり威力が大分抑えられていますね」

「ながら歩行は終わりか?」

「いえ、後もう少しでおおよそ読み終わります」

 

ここにくる間ゆんゆんの背中に手を当ててバランスをとりながらずっと本を読んでいためぐみんに少し嫌味を言ってみたが、彼女はそれを当然の事ですと言わんばかりに風の返事で返してきた。

 

「それでめぐみん、話は戻るがこれをどう思う」

 

俺が指差す方向は前回めぐみんが爆裂魔法を放った所で、そのクレーターはいつもの習慣で出来るクレーターとは比べ物にならない程に小さく纏まっていた。

 

「さっきもも言ったでしょう、大分威力が抑えられていると。あの人はあの一瞬で私の爆裂魔法に自分の爆裂魔法を重ねてここまで相殺させたのです」

「そうか…それは結構厄介だな」

 

正直めぐみんの爆裂魔法を攻略されてしまうと、俺たちの決め手が無くなってしまい最大の難である火力不足が再び浮き彫りになってしまう。

 

「そうでもありませんよ」

「どうしたんだ?」

「これだけ防ぎ切れなかった。つまり相殺し切れなかったと言うことはその分のダメージは受けていると言う事になりますからね、昨日の外壁がそんなに被害を受けていなかったのは多分ダメージが残っていたからでしょう」

「そうか?気配ではそんな感じはしなかったけど」

「そうですね、多分ステータス的なものでは捉えられない細かい損傷が沢山あるみたいな感じです」

「へーそう言うもんか」

 

どうやらあの時に少し魔力が減った様に感じたのは細かい魔力の血管みたいなものが傷ついて、威力が低かったのはそれによって本気で魔法が撃てなかったって事なのだろうか?

大雑把に見えて色々隠しステータスみたいなもんがあるんだなと、この世界の創設者に感心する。

 

「まあ、でも回復魔法を受ければある程度は回復しますから今日の爆裂魔法の威力はいつも通りだと思ってください」

「ああそうか…え?」

 

ここに来て肝心な事を忘れていたと気づく。

彼女はいつもここで砦に向かって爆裂魔法を放っている。

そしてそこは昨日めぐみんによって破壊されている。

昨日は一体どこで撃ったのだろうか、その確認は多分誰もしていないが砦の場所的にこの辺りで放っている事は確かだろう。

さらにこの時間はいつも彼女が爆裂魔法を放っている時間。

 

つまり姐さんがこの辺りにいる確率は高い。

 

「不味い‼︎みんな撤退だ‼︎とにかくここから離れろ‼︎」

 

気づけば地面に見覚えのある魔法陣が現れている。

少し慢心していたのかもしれない。

それ程までに上手く誘導されていた。

今までチート持ちが苦労して来ていたのに俺が先頭に立ってレーダー役に徹せれば誰の犠牲も払わずに姐さんの元に辿り着けると本気で思ってしまっていた。

 

「ゆんゆん‼︎私が時間を稼ぎますからテレポートお願いします‼︎」

「分かったわ‼︎」

 

めぐみんが前に出た途端現れた魔法陣に被せる様に魔法陣が現れ互いの魔力が衝突し合っているのか地面が鳴り響く。

 

「みんな‼︎ルートは来た道を辿ってくれ‼︎安全が確認できたらスクロールで砦まで撤退」

 

俺の声に皆声を返しめぐみんが爆裂魔法を止めている間に次々と姿を消していった。

 

「よし‼︎全ての気配が消えた、ゆんゆんテレポート頼む」

「わ、分かりました‼︎」

 

ゆんゆんがテレポートを唱え俺たち3人は再び光に包まれる。

 

これで2度目の撤退、悔しいが次は手段を選ぶ事はできないだろう。

 

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