来週は少し忙しくなるので次回は休むかもしれません
あれから少しだけ時間が経った。
姐さんを倒した後、俺は疲労が限界に達した為か気を失ってしまい気づけば医務室であろうベッドに寝かされていた。
「起きたみたいですね…体調は大丈夫ですか?」
「ああ、そうだな…別段問題はないって感じだな、ゆんゆんは大丈夫そうか?」
目を覚ますと隣で看病してくれていたのかゆんゆんが椅子をベッドに近づけて座りながらリンゴを剥いている。
「私は特に問題はありませんね、あの時カズマさんがかばってくれたので精々擦りむいた程度で済みました」
「そうか…なら良かった」
幸いにもゆんゆんは怪我がなかった様で姿を見ても傷という傷は見られなかった。
「それで俺が倒れてからどうなったんだ?」
「そうですね…色々ありましたけどウォルバクさんは黒い炎に焼かれてからそのまま姿が無いみたいですね」
「そうか…やっぱり姐さんは居なくなったんだな」
彼女の言葉を確かめる様に冒険者カードを見てみると、討伐リストにウォルバクの名前が書いてありレベルがだいぶ上がっている事が確認できるが、何故かウォルバクの名前が印字の都合なのか半分くらいの濃さになっている気がする。
そういえば半身がどうとかいつだったか言っていた気がするのでもしかしたら片割れがいるのだろうか?
「それで砦関係はどうなったんだ?ニホンジン達は何処かに行っちまった後か?」
「いえ、カズマさんが倒れてからそこまで時間は経っていないのでまだ皆さん居ると思いますよ」
「そうか…で、俺はどれくらい気を失っていたんだ?」
漫画ではこういう強敵との戦いの後では一週間眠りっぱなしみたいな事がよくあるが、今回の戦いで俺はどれくらい眠っていたのか気になってしまう。
「そうですね…3時間くらいですかね」
「え?」
ゆんゆんは備え付けの時計を見ながら少し悲しそうに時刻を告げた。
悲しい事にどうやら俺は長く眠っていたようで実際にはそこまで長くは眠っていなかった様だ。
「まあ何にせよみんな無事でよかったよ…」
「そうですね、カズマさんが来てから死傷者数は殆ど無かったらしいですね」
「そうなんだ」
姐さんは元々好戦的では無かったのかそれとも誰も殺すつもりが無かったのか、彼女の考えを今更知る事はできないが少なくとも道連れにしようと思えばこの砦の戦力を半分程道連れにできたのでは無いかと思ってしまう。
「もしかしたらこの砦にいるのが、この世界の最終戦力なのかもしれないな」
「そうなんですか?…でも確かに腕利きの実力者には皆声が掛かるってここの所長が仰っていましたね」
「やっぱりそうか…?」
「どうかしましたか?」
「いや、だったら俺達になんで声が掛からなかったんだ?」
「あっ」
そう、この国の実力者が呼ばれるのであれば魔王軍幹部を数体屠っている俺達にも声が掛かってもおかしくは無いのだ。
「でも、ここ数日のカズマさん殆どギルドによっていなかったじゃ無いですか?」
「そう言えば確かに…何だかんだ全員揃ってアクセルに居たのは俺が返ってきた時が最後でギルドは紅魔の里に初めて行った少し前か…」
思い返せば色々あったなと思うが、一体いつになれば俺の求める安心した生活が送れるのだろうかと思いを馳せる。
「色々考える事があるとは思いますが、魔王軍幹部を倒したんですから今は何も考えずに休んでください。はい、あーん」
「あーん」
確かにゆんゆんの言うように今日くらいは何も考えないで休んだほうがいいのかもしれないので、ここは彼女のお言葉に甘えて休むのもいいかもしれないと、剥き終わり等分にカットされたリンゴを差し出されそれを口で受け止める。
「どうですか?裏の果樹園の採れたての果物だそうですよ」
「う、上手いな、もう一つくれないか?疲れて手が動かせなくてさ」
「しょうがない人ですね、はいあーん」
「あーん」
「人が寝ている隣でイチャつかないでもらえませんか?」
「「うわぁ⁉︎」」
人目を気にせずいちゃついていたら隣にめぐみんがいた様で見ていられないとクレームを頂いた。
「めぐみん居たのか?」
「そりゃあ爆裂魔法で指一本動けんませんからね、あなた達が居ない以上ここに運ばれるのがどうりでしょう‼︎」
どうやら意識はあったが雰囲気を壊したく無かったので気を使って黙っていたが居た堪れなくなって止めたらしい。
「め、めぐみんは大丈夫そうか?」
「ええ私は問題はありませんよ、爆裂魔法を撃った後の受け身は完璧ですからね」
「なら良かった、ほらくすねてきたマナタイトだ」
「ありがとうございます」
この砦にあるマナタイトは全て作戦の時につかってしまい無かったのだが、偶然にも一つ余ったので取っておいたのだ。
「何も出来ませんが、動ける事はできる様になったので着いてきて欲しい所があります」
「ん?何だよ急に」
マナタイトで魔力を吸収して魔法は撃てなくとも日常生活くらいは出来る様になっためぐみんは、ベッドから起き上がり連れて行きたい場所があると俺達を案内し始めた。
「これです」
彼女に案内された場所は以前にも足を運んだ倉庫で、今二つあっても使いこなせないと結局元の位置に戻した杖を再び拾い上げ俺たちの前に突き出した。
「これって、前に倉庫にあった少し古びたやつだよな?それが今更なんだって言うんだよ」
「そうです、これは私がここに来る前にあった杖ですが、今は私の杖になります」
「ん?どう言う事だ?」
「カズマにしては頭が働きませんね、ウォルバクに頭を殴られて知能が下がりましたか?」
「下がっておらんわ⁉︎」
めぐみんは何かが嬉しいのか古い杖を振り回しながら舞っている。
「そう言えば今まで使っていた杖はどこにいったんだよ?3時間前とは言えみんな砦に居るんだから片付けは終わっているだろ?」
個人でモンスターと戦っている時は放り投げた道具や武器は仲間が拾わない限りそのままだが、今回みたいな総力戦の場合は物を落っことしても戦闘が終われば仲間の誰かが拾って持ってきてくれるのだ。
その証拠に俺が姐さんと戦った時に置いておいた剣はベッドの横に置かれていた。
…まあゆんゆんが持ってきてくれていた可能性はあるが。
「ふふっようやく掠りましたね。もう少し焦らしたかったですがここで答えを発表しましょう」
久しぶりにめぐみんが厨二くさいポーズを取り始め解説をはじめた。
「そう、これは未来の私からの贈り物だったのです‼︎」
「なっ、何だって⁉︎…どう言うことだ?」
「そうですね…掻い摘んで話しても分かり辛いので最初から説明しましょう」
「ああ、助かる」
「まず私と魔王軍幹部ウォルバクの最高峰の爆裂魔法同士が衝突しあった結果時空が歪みました」
「ああ、あの意味わからないやつってやっぱりあれは時空が歪んでいたのか」
「そうですとも、それでその歪んだ時空はその歪みを直そうと周囲の空間を吸い込み始めてしまうんです」
「だからあんな爆風が起きたのか」
「そう、私もあの爆風に飲み込まれまいと必死に踏ん張りながら爆裂魔法を放ったのですが、最後に杖を持って行かれてしまったのです」
「それで最後何も持っていなかったわけか」
「ええ、おかげで体を支えるものがなくて地面に叩きつけられる事になりましたが、それはまあいいでしょう」
「いいのか?」
「それでこの杖が私が来る前からあったと聞いてピンときたのですよ、この杖は未来からタイムトラベルしてきたと‼︎」
「なっ、何だって‼︎」
めぐみんの話曰く高密度の爆裂魔法同士がぶつかると空間が歪み始め最終的には時空間も歪んで現在の物質を過去に飛ばしてしまうらしい。
「つまりその杖はあの時飛ばしてしまった杖ってことか」
「そうなりますね」
と、言うことは周囲にある武器防具らはみんな他の奴らの物だったて事か。
「めぐみんが2人いればタイムトラベルが可能って事か?」
「理論的には出来ますが…流石に私は2人いませんので私と同等の爆裂魔法使いが居れば可能じゃ無いでしょうか?まああくまで私と同等の爆裂魔法使いが居ればの話ですがね‼︎」
「わ、分かったよ」
実質過去に戻れると言うことはこの世界にきた時からやり直せる事ができると言う事になるが、出来ても多分過去の自分に見つかるな的な条件の一つか二つは着いてきそうだ。
まあそれはそれとして結局めぐみんほどの爆裂魔法の使い手なんか居なさそうだし、仮に揃ったところで時間調節が出来なければ意味はなさそうだ。
「…カズマ、例え時を戻せる様になったからと言って過去を変えようだなんて考えないでくださいね」
「ああ、分かってるって」
「本当ですか?一応忠告しておきますが違う時から来たものはその時間の流れから外れてしまうと言われています」
「それってどう言う事だよ」
「さあ、私にはよく分かりませんね」
何が何だかよく分からないがめぐみんは時間を弄る事には反対なようだ。
まあ仮に出来るようになったところで俺達は神では無いので過去を簡単に変える事は出来ないのだろう。
「それでは食堂に急ぎましょう、王都にいるあの子を救う為に仲間を探しに来たのでしょう?」
「ああ、そうだったな」
少し考えていると今は前を向けと言わんばかりにめぐみんに指摘される。
「何だって⁉︎」
食堂に行きウォルバクを倒したので契約は無くなったから王都進行への協力をしてくれないかと頼んだところ、あの後魔王の娘が姿を見せたらしくその脅威からこの砦を守るべく新しい契約更新がが始まったらしい。
そしてそれは俺が寝ている間に行われたらしくそんなの反則だろうと思ったが、確かにすぐ行わないと皆自分が拠点としている場所に帰っていってしまうなと思い仕方ないが納得する。
折角戦力が揃うと思っていたところで飛んだ大誤算だとガックリと肩を落としてしまう。
一体仲間のチートを分類しランキングして優先順位頑張って決めていたのは何だったのか…
「やあ、サトウカズマ‼︎魔王軍幹部討伐ご苦労様、その様子だと特に残る様な怪我は無さそうだね」
「ああ、お生憎様で」
どうしようかと悩んでいるところでミツルギが声をかけてくる。
ここでは王都のように最大級の治癒魔法を受ける事ができないので、治しきれない怪我は王都へ帰って治さないといけない為にこう言う呼びかけになっているそうだ。
「それで、機嫌が悪い俺に何の用だよ?」
「そうだね、ここで話すのも何だから場所を変えないか?」
「ん?ああ、別に構わないけど」
何やら訳あり顔で奴はそう言うといつもの展望台のような場所へ俺を案内した。
「ここなら大丈夫そうだね」
「そうだな、感知スキルには何の反応もないから安心してさっさと話してくれ」
正直仲間が見つからない以上俺が魔王軍幹部を討伐し他情報を聞きつけて移動を始めるダクネス達に見つからない内に別の場所に移動しておきたいのだ。
「そうせかさないでくれ、君にも悪い話じゃ無いと思うんだ」
「いいから早く言えって」
「全く君は本当にせっかちだね…」
少し機嫌が悪かったの相まってミツルギに八つ当たりをかます。
「君は今少しでも戦力が欲しいんだろう?だから君のそれに協力してあげようと思ってね」
「え?協力してくれるのはありがたいけどお前はお前で仲間を探さないといけないんだろ?何だっけウィザードの子をさ」
正直ミツルギ1人でも協力してくれるとありがたいが、仲間探しを辞めさせてまで協力してもらう義理は無いはずだ。
「正直外部の人間も頼って必死に探しては居るんだが手掛かりすら掴めないのが現状でね、そこで君の目的達成を手伝うからその片手間で僕の仲間の手がかりがあったら教えて欲しいんだ」
「成程そう言う事か…」
「正直君には頼りたくは無かったけど、僕にはもう君に頼るしか無いんだ…お願いだ‼︎」
ミツルギはまるでプライドを捨て何も捨てる物が無くなった無敵の人のように土下座を始める。
「魔王軍幹部を半分以上討伐している君の事だ、その周囲には沢山の情報が集まっていると思う、その情報集積の力を少しでいいから僕に分けて貰えないか‼︎」
正直謎にプライドの高いこいつが地面に頭を擦り付けながら頼み込む姿を見て滑稽に見えると思っていたが、状況が状況なだけに見るに耐えなかった。
「分かったよ、その代わり俺たちのやろうとしている事は魔王軍幹部とやり合うよりも厳しいからな」
「ありがとう…サトウカズマ」
ミツルギは心底嬉しそうに顔を上げならこちらを見上げお礼を何度も言っている。
正直俺の持っている情報収集能力は基本クリスが担っており、彼女が居なくなった今いつの間にかその席に座ったシルフィーナが代わりに情報を集めているに過ぎない。
正直ミツルギの仲間の情報なんて見つからないとは思うが、こちらも時間が無いので彼には悪いがその仲間思いな心に漬け込ませてもらおうかと思う。
「良いけどさ、契約はどうなっているんだよ?」
「それに着いては問題ないよ、僕は皆と違って更新していないからね。ここにいた時間分の報酬を貰って終わりさ、君もギルドに行けば諸々の報酬は受け取れると思うよ」
「そうなのか」
「それじゃあ僕は準備してくるからまっていてくれ‼︎」
「おー」
ミツルギは頼る相手を見つけた事で肩の荷が降りたのか顔の険がとれ清々しい表情で自身の部屋へと向かった。
「全くあいつも大変な奴だな…痛っ⁉︎」
ミツルギの背中を追いかけていると突然手に痛みが走る。
多分シルフィーナの方で何かあったのだろう。
「…カズマ様」
「うわぁ⁉︎ビックリした‼︎シルフィーナか」
行くあてもないので情報が集まるまではミツルギには王都で待機して貰って、その間はシルフィーナの安否を確認しようと思って居るといつの間に転移してきたのかシルフィーナが後ろに立っていた。
「怪我してるのか?今治すからな」
「…ありがとうございます」
振り向き彼女に向き合うと、ここにくる途中で怪我をしたのか彼女の左上肢は血で真っ赤になっていたので事情を聞く前に治癒魔法をかける。
「それで、その怪我はどうしたんだ?誰にやられたんだ?クレアか?」
「いえ…これは多分ですがカズマ様の探していたバルター氏による物だと考えられます」
「…そうか」
どうやら俺の暗示がうまく作用したようで、彼女は怪我を負ったら俺の元へ来るように命令しておいて良かったと改めて自身の危機管理能力に惚れ惚れする。
「それで報告がございます…バルターの所在、彼が根城としている工場は紅魔の里の外れにあるようです。ベルセルク式尺度での座標は〇〇の××です、そこを突き止めた瞬間何者かに襲われここまで飛んできた所存です」
「とにかく無事で良かったよ、何かあったんじゃないかって心配したんだぞ」
これ以上仲間が減るのはゴメンだと彼女を抱き締める。
「わぁ…あぁ……いけないいけない……怪しい集団が魔法使い系の職業の方を誘拐していく所を見かけて着いていったらバルターの名前が聞こえました」
「そうか…つまりあそこにバルターが居なくても奴につながる何かがあるって事だな」
「そうなります……すいません…ホッとしたら気が抜け………すぅ…すぅ」
気がつくと安心したのか命かながら逃走してきた緊張の糸が切れたのか、シルフィーナは俺の腕の中で眠っていた。