この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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カズマの日常も次回で最後になりますのでもう少しお付き合いください…。


カズマの日常(修行編2)

シスターにお礼を告げ。俺とクリスは再び酒場に戻った。

教会を後にした俺達は、酒場にたむろしていたチンピラと同じパーティーに属するアーチャー職の人から千里眼や狙撃スキルを教わった。

 

「それで、教わったスキルは結局まだ取ってないんだ?」

 

俺の奢りで運ばれてきたクリムゾンビアを飲みながら彼女は気になるのか聞いてくる。

一応知りたいスキルは一通り教えて貰い、俺のギルドカードには沢山のスキルが未習得の状態で表示されていた。しかし、それを全て取るにはスキルポイントが大分足りないので考える事とひと段落つく為に酒場に向かい今に至る。

 

「沢山ありすぎて困るな…一応必須なのはいくつかあるけど、余ったポイントで取ろうかと思っている残りのスキルが悩みどころなんだよな」

 

必須の候補としては、攻撃力上昇と速度強化、千里眼に狙撃、以上になるが念の為にブレイクスペルも取っておきたいし、クリスから教わった他のスキルも捨てがたい。

 

「まあ好きに考えると良いよ、時間は沢山あるんだし」

 

あ、おかわり下さい、と彼女は店員に再び注文を済ます。おや?今回も俺のおごりなのかな?

 

「うーん、どうしようこれは決まらない…」

 

あれでも無いこれでも無いと完全に思考の泥沼にはまってしまう。昔からだが、考え事をしてこの状態になるといくら時間をかけても考えが纏まらない。

 

「決まらないか…それじゃあ外で少し動こうか、実際に動きながらならどれが必要か分かるんじゃ無いかな?」

 

悩んでいる俺を見かねたのか、追加の飲み物を飲み干した彼女はそう提言する。

確かにそれなら分かりやすいかもしれない。習うより慣れろ、意味は少し違うかもしれないが実際に動きながらなたどれが良い選択なのか分かるかもしれない。

 

「おーそれ良いな、それじゃさっそく頼むよ」

 

会計を済ませて、クリスに案内されるがまま公園に連れて行かれる。

 

 

 

 

「それじゃあせっかくだし趣旨と少しずれるけど、これから私と手合わせお願いしてもらうよ」

 

公園に着いて早々、彼女はボソッと、さも当然の様にそう言いストレッチを始める。

 

「え?ちょっと待てよ⁉︎手合わせってクリスとか?流石にいきなりそれは…」

 

ゴブリンを倒したからと言っても俺のレベル、ステータスは低水準に位置している。クリスもレベルは正直俺は知らないが、多分俺より上な事に違いないだろう。

 

「あーそれに関しては大丈夫だと思うよ、それにこれは君のトレーニングも兼ねているんだよ。実際に出力されるステータスは本人の肉体と冒険者カードに表示される数値をある式で合わせたものになるからね、こうして体を動かせば自然と筋力もついてパラメーターも上がると思うよ」

 

成る程、実際の筋トレ等の努力も数値に反映されるのか。それに片手剣スキルで、ある程度動きに補正がつけられたとしても、実際の動きが悪ければ同じランクのスキルでも差が出るという事になる。なので今回みたいに体を動かすついでに彼女と手合わせする事で俺の総合出力が上がるかもしれない。

 

「成る程な、オッケー。そんじゃ最初なんで優しく頼むよ」

 

今回は只の手合わせなので実際の剣やダガーではなく、同じ位の丈の木刀で代用する事になる。それでも木刀なので直撃すれば痛いだろう、しかし、俺にはヒールがあるので例えば怪我しても多分大丈夫だろう。

荷物をベンチに置き、互いに獲物を握りながら相対する。彼女の武器はダガーで俺の剣よりリーチは短く、その分速度と手数が多い。油断して畳み掛けられればそれで終わるが、一撃一撃は軽いので決め切れないのが難点になっている。

 

「最初のスタートは君からで良いよ」

 

どうやら始まりのスタートは俺に任せるらしく、彼女は只佇みながらこちらを目視している。

 

「それじゃ行くぜ」

 

掛け声とともに踏み込み剣を振り下ろした。

 

「遅い、それにいきなり大振りは危険だよ」

 

踏み込むと同時に彼女の姿は横に、ちょうど俺から見て右側にスライドしていき振り下ろされた剣を躱す、当然空を切って唖然とした俺の右腕を彼女のダガーで持っていない方の腕で掴まれるとそのまま景色が一回転した。

 

「痛⁉︎」

 

一瞬何が起きたのか分からずに座りながら唖然とする。どうやら俺は彼女に投げられたらしい。

 

「はぁ…その剣でただ切れば良いって訳じゃ無いんだよ。それに踏み込み、足運び、重心移動、その他エトセトラ全然ダメだよ、こんなんじゃこの先やってけないよ」

 

呆然と彼女を眺めていると、彼女は仕方が無いと言いたげに話を続ける。

 

「ほら立ちなよ、最初はパパッと済まそうと思ったけど、なんか不安になってきたから、ある程度仕上がるまでは面倒見てあげるよ」

 

そう言うと彼女は地ベタに座っている俺に向けて手を差し出す。

ようやく状況が分かってくる、どうやら俺の動きは彼女的には全然駄目らしい。だが、そんな事言われてもしょうがないと言えばしょうがないだろう、日本育ちの俺は喧嘩も戦争も経験せず只のんびり平和に生きてきたのだから、いきなり剣を持って戦えっと言われてパパッと動かれたらこの世界の住民に対して侮辱になるだろう。

 

「それに君には期待してるんだから頼むよ」

 

期待とは?一体彼女俺に何を期待しているのだろうか?

彼女の手を取り起き上がる。どうやらこれだけでは終わらせてくれないらしい。スキルの必要性を確かめる本来の目的はどこに言ったのだろうか?

 

「分かったよ、それじゃよろしく頼みますよ、クリス師匠」

 

先程思いっきり投げられた恨みが少しあるので少し嫌味を込めてそう言うと、彼女はそれを挑戦と受け取ったのかニヤリと笑みを浮かべ

 

「次は私から行くよ、出来る限りアドバイスするから頑張ってね」

 

今度はクリスから攻めてくる、彼女がダガーを持ち踏み込んだタイミングで後方に飛び体勢を整える。

 

「後ろに避けない‼︎」

 

しかしその判断は彼女的には駄目だったようだ、その証拠に先程距離をとった彼女が眼前まで迫って来ていた。どうやら先程の踏み込みはどうやら完全に重心を預けていなかったようで、俺が避ける事を見越して半分ほどの重心を預け俺の回避方向に合わせ次の一歩で再び踏み込んだのだろう。

ピタリと首元に彼女の木製のダガーをあてがわれる。もしこれが殺し合いだったら死んでいただろう。

 

「今回ので分かったと思うけど、重心を完全に預けるのは確実に相手に攻撃を与えられるタイミングだけに。そして普段は常に回避か追撃出来るようにある程度余裕を持たせておく様にして、重心は動かせば動かす程隙が出来ると思っておいて」

 

ダガーを引き下げ、彼女は再び距離を取り仕切り直す。

 

「次は俺からか?」

「分かってるじゃん、早く来なよ」

 

彼女は挑発するかの様に手招きする。

呼吸を整え、剣の柄を再び強く握る。流石にこれ以上彼女にいい様にされる訳には行かない。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!」

 

掛け声と共に彼女に向かって距離を詰める。先程言われた様に半分の重心移動で踏み込み牽制の意図で剣を右に払う。

しかし彼女はこれを体を後ろに逸らす事で躱し、続くであろう左への横払いを俺の手を押さえることで止める。

 

「うーん、どうやら君は剣以前に武道から知った方がいいかもね」

 

ニッコリと笑った後、再び視界がひっくり返った。

全然手も足も出せない…

最低職の冒険者な俺でも、ここまで遊ばれるとそれはそれで辛い、彼女は一体何者なのだろうか?それともこの位は普通なのだろうか?

 

「今度は、剣は無しで全身を利用して戦おうか」

 

倒れた俺を見下ろす様に視界に彼女が現れ呆れた様にそう言う、そしていつの間にか彼女の手には俺の木刀が握られている。どうやら先程の手合わせの際に取られていた様だ。

 

「実は盗賊と言うのは仮の姿で実は激強の戦士だった、ってオチは無いのか?」

 

あまりの理不尽さに思わずそんな事を想像してしまう。

 

「そんな事ある訳ないじゃん。ふふ、君も大概だね」

 

彼女の手を借り再び起き上がる。

 

「やっぱりいきなり実践はきつかったかな…暫く日にちは空いてるかな?やっぱり基礎からやっていこうか」

 

僅か数回組んだだけでボロボロになった俺を一度客観的に眺め、やはり自分の考えは間違っていたと言わんばかりに彼女はそう言う。

 

「暫く金はあるから俺は大丈夫だけど、ゆんゆんがクエスト行きたいって言ったら多分行くことになるけどそれで大丈夫か?」

 

念のため確認する。どうやら彼女の教育スイッチか何かを押してしまったらしい。めぐみんの事もあり自信は無いがクリスも多分年下なのだろう…年下の子にボロボロにされるってどう言う事なんだろうか?

これが弱肉強食の世界、異世界生活という事なのだろう。

 

 

 

 

あの後もう日が落ちて暗くなって来たので明日空いてたらという話になり解散する。

 

「痛たた…」

 

汗をかいてしまったので、再び銭湯に向かい一風呂浴びる。

クリスとの手合わせで何度も体を地面に打ち付けたので鏡を見ると全身擦り傷だらけになっていた。こんなに傷を負ったのは初めてかもしれない、彼女との手合わせはそれ程激しく厳しいものだった。

しかし、この状態で明日を迎える訳には行かないので、治癒魔法で傷を塞いで行く。

やはり便利だな治癒魔法。冒険者は専用スキルが無い代わりに、こうして他人のスキルを会得できるというのは良い強みなのだが、もう少しステータスを上げて欲しいものだ。

入浴を済ませ、宿に向かう。

前回はランクの高い部屋に泊まったが、今回は流石に贅沢できないので部屋のグレードを下げれるだけ下げ、日本のビジネスホテルの様なベットと少しの空間だけの簡素な部屋を借りる。

基本俺みたいな冒険者は日中を外で過ごす為、この様な簡素な寝るだけの部屋が有れば充分である。

ロビーで鍵を受け取り部屋の入ると、そのまま設置されているシングルサイズのベットに向かってダイブする。もう疲れが限界なのかベットに乗った瞬間から体から力が抜けていく。しかし、このまま寝るとアレなので、何とか布団から抜け出し、明日の準備をだるい体を引きずりながら済ませる。

 

 

 

けたたましいアラームの音と共に目が醒める。

ギルド集まるので起き上がろうとするが、やはりというか何というか体を動かそうとする度に全身の筋肉に痛みが走った。

 

「痛えぇぇぇぇぇえ⁉︎」

 

俺の体は絶賛全身筋肉痛だった。

 

 

 

 

何とかストレッチで誤魔化し、予定より少し遅くなったがギルドに併設された酒場に着くと、ゆんゆんとめぐみんの2人が先に朝食を摂っていた。

 

「おはようございますカズマさん、動きがぎこちないですけど大丈夫でしょうか?」

 

俺の筋肉痛を見抜いたのか彼女が心配そうにこちらを見る。本気で心配してる事からどうやら単純に怪我か何かと思っている様だ。

 

「ああ、いやこれは只の筋肉痛だよ」

 

こんな事で本気に心配されたのが少し恥ずかしいので、頭を掻きながら感情を誤魔化し対面の席に座る。

 

「冒険者が筋肉痛ですか?しっかりしてくださいよ」

 

ふふっとめぐみんは軽く失笑しながら朝食を口に運ぶ。

 

「そうか?一発魔法使ったら動けない何処かのポンコツアークウィザードに比べれば全然マシだと思うけどな」

 

目には目を悪態には悪態を、俺は真の男女平等を願う者、相手が女性だろうがやられたらやり返すのだ。

 

「ほう…誰がポンコツアークウィザードか聞こうじゃ無いか‼︎」

 

カチャン、とスプーンが食器に落ちる音がした後にめぐみんがこちら側に回って来ようとする。

 

「ちょっと待ちなさいよ ‼︎何でさっそく騒ぎを起こそうとするのよ‼︎」

 

立ち上がっためぐみんを必死にゆんゆんが掴み動けない様にホールドする。

しかし、当のめぐみんは慌てるどころか、寧ろ落ち着いた様に。

 

「あのですね、友達の居なかったゆんゆんには分かりませんが、これは俗に言うBOKEとTUKKOMIという身内漫才みたいな者なんですよ」

 

さっきのやり取りの何処にボケとツッコミがあったのか分からないが、まあこれくらいはおふざけの範囲だろう。

 

「ええ…そうだったの…そんな私そんな事を知らずに…」

 

しかし、本来はとか友達だったらと、そんなフレーズに弱いのか彼女はオドオドと狼狽し始めた。

 

「ええ、そうなんですよ。ゆんゆん貴女はそれを邪魔してしまったんですよ。全くこれだからボッチは…」

「そんな⁉︎」

 

何だこのボケしかない漫才は。

そんなやり取りを眺めていると、まだ注文していないのに俺の元に料理が運ばれてくる。店員に確認するが間違っては居ないらしい。

 

「なんだ?俺の分まで頼んでくれていたのか?」

 

何か入っていたら怖いので、念のため2人に確認するが

 

「いえ、私では無いですね…もしかしてめぐみん?」

 

どうやらゆんゆんは違うらしい。

 

「私に聞かれても困りますよ、これでも今現在私は一文無しですからね」

 

フンスっと彼女は無い胸を張って誇らしげに言った。

 

「それ誇る事じゃ無いでしょう⁉︎今日の朝食も私のお金なんだからね‼︎」

 

相変わらず仲良いなと思いながら考える。けれど2人じゃ無いなら誰がこんな事するんだ?と考えていると、奥のカウンターに居る受付のお姉さんが俺に向けて手を小さく振っていた。

何時も俺を邪魔者扱いする人が、突然俺に優しい笑顔を向けていると言うのはとても不気味だった。

後から何か厄介事を押し付けられたら嫌なので、ゆんゆんにめぐみんの朝食を取らない様に頼み受付に向かった。

 

「おはようございます、ところでアレはお姉さんの仕業ですか?」

 

親指で俺達の座っているテーブルを指差す。一応めぐみんが食事を奪わない様にゆんゆんに頼んでおいておいたが時々確認する。

 

「そうです、アレは私からのお礼みたいな者です」

「お礼ですか?俺が一体お姉さんに何かしましたか?」

 

うーんと考えるが、受付のお姉さんに対して何かした様な記憶はない。もしかしたら誰かと勘違いしているのか、それとも偶然か間接的に助ける様な事をしたのだろうか?

 

「いえ、私に直接何かされたとかそう言う事は全くありませんよ」

 

何のかよ⁉︎だとしたら一体何だ?

 

「めぐみんさんの事ですよ」

 

めぐみんの名前を聞いた途端、あー成る程なと肩の力が大体抜ける。

 

「彼女は爆裂魔法以外使える魔法が無くてですね、こちらも困っていたんですよ。確かに威力は強力なのですが、このアクセル周辺だと中級魔法が有れば大体事足りてしまうので…」

 

やはり彼女の扱いにはギルド側も困っていた様だ。話を聞くとこのアクセル以外の街のギルドにはレベル制限があり、どこも彼女を登録出来るところはないらしい。その為この駆け出し冒険者の集まるこのアクセルは必然的に全ての冒険者を受け入れることになっている。

なのでどんなに問題児でもこのギルドは受け入れざるを得ないのである。

 

「パーティーを組んでも一度の魔法で倒れてしまいますし、森で爆破されたら消火活動しなくては行けませんし。彼女の属している私達ギルドもクレームと消火活動の費用で擦り切れていたんですよ。それでたまたま旅行団の防人の募集がありましたので、めぐみんさんを上手く丸め込んでしばらくの期間遠くに行ってもらったんですが、旅行団が再びここを通る際にクレームと共に返品されてしまったんですよ。そしてまた何も知らない新しいパーティーに押し付けたのですが、前回の火災騒ぎになってしまって、またフリーになってしまってどうしようか悩んでいたんですよ」

 

受付のお姉さんは大分ストレスが溜まっていたのか、俺に余計な返事をさせる暇を与えない位のスピードで今までの不満を吐き出した。

何だろうか、この人も大分苦労しているんだなと思っていると話はまだ続いていた様で

 

「そんな時に現れたのがカズマさんですよ。ゆんゆんさんに続きあのめぐみんさんまで、しかも私が何も言わなくても仲間にして面倒を見て頂けるなんて…やはり貴方は私の救世主ですね」

 

彼女はまるで神を崇めるかの様に俺を讃える。なし崩し的にめぐみんを仲間にしてしまった事はもしかしたら失敗だったのかも知れない。

はあ、と溜息が漏れる。

そうでしたか、了解でーすと軽く会話を済ませテーブルに向かう。そう言えば朝食がまだだった為お腹が空いてきた。

 

「…何だこれは⁉︎」

 

テーブルに戻り変化に気付く。なるべくテーブルに目を離さない様にしていたのだが、話の後半にはそんな事をすっかり忘れてしまっていた。

そう、俺の席にあった朝食を乗せた皿は既にめぐみんの前に置かれ、丁度食べ終わった後だった。

 

「ああカズマですか、先程の朝食ならもうありませんよ。冷めてしまっては作っていただいた方に申し訳ないので、カズマに代わりこうして私が頂きました」

 

彼女は食べ終え、口の周りをナプキンで拭きご馳走様ですと手を合わせた。

 

「何食ってんだ⁉︎ゆんゆん、ゆんゆんはどこに行った⁉︎」

 

朝食を守る様に頼んでおいたゆんゆんが見えなくなっている。トイレに行ったのだろうか?

 

「カズマさん…」

 

呼ぶと、居なくなって居たゆんゆんの声がテーブルの下から聞こえてくる。

 

「なあ、めぐみん?」

「はい、なんでしょうか?」

 

食事を満腹になるまで済ませご機嫌なのか、笑顔で返事をする。

 

「なんかお前身長伸びたか?」

 

彼女に対して少し大きめだったテーブルは現在丁度良いサイズに見える。テーブルのサイズは小さくなる事は無いので必然的にめぐみんが大きくなった事になる。全体のサイズ的には変わらないので、座布団でも入れたのか高さが違うのだろう。

 

「いえ、そんな事はありませんよ、カズマも疲れているのでは無いですか?」

 

何を言っているんだこいつはと言いたげに彼女は首を振る。

 

「あー確かに疲れは溜まっているな…ってそんな訳あるか‼︎」

 

下から覗くとめぐみんのスカートの中が見えてしまうので、体を乗り上げテーブルの向こう側の席を覗く。

 

「カズマさーん…」

「ゆんゆん⁉︎何やってんだよ…」

 

なんとゆんゆんはベンチの上でうつ伏せの状態で、めぐみんの下敷きになりながら半べそをかいていた。

 

「彼女なら現在私の座布団になっていますよ」

 

シレッとさも当然という様に彼女は言った。こいつはゆんゆんには相変わらず容赦がないな…

 

「ゆんゆんは私の食事を邪魔しようとしてきましたので、こうしてお仕置きしてあげました」

 

ふふん、と鼻を鳴らしながら胸を張る。

 

「何勝ち誇ってるんだよ⁉︎朝食食った事は許すからゆんゆんを解放してやってくれ」

 

仕方ありませんねと、めぐみんは起き上がりゆんゆんを先程いたところまで起き上がらせる。

 

「ううっ…カズマさん、ありがとうございます」

 

座布団にされる前にも何かあったのか、ゆんゆんは今にも泣きそうだった。

 

「おいめぐみん、あまりゆんゆんを虐めてやんなよ…」

 

はあ、と呆れた様に言う。ついでに店員が横を通ったので注文を済ます。

 

 

 

 

 

「で、お前ら今日はどうすんの?」

 

食事を終え、口直しに水を流し込んだ後、彼女たちにこれからの予定を確認する。

 

「私は特にこれといった事は無いですね、カズマさんに任せますよ」

「私は爆裂魔法が撃てれば何でも大丈夫ですよ」

 

2人とも特に用事は無いらしい。しかし、だからといって何もしないと言うのも冒険者としてどうなのだろうか?取り敢えずギルドの依頼の書かれた掲示板に向かう。

 

「あれ?殆どありませんね」

 

掲示板にはいつも沢山あった依頼の用紙が殆ど無くなっていた。いくつかは残っていたのだが、どれも難しくランクの高いものばかりで周りの冒険者達も取りあぐねている様だ。

 

「あの、何でこんなに少ないんですか?前には沢山あったのに?」

 

受付に確認すると、どうやら魔王の幹部がこちらに住み着いたので魔物が怯えて出てこないらしい。よりによって何でこんな場所に幹部がいるのだろうか?何にせよ迷惑な話だ、早く引っ越して頂きたいものだ。

討伐隊が王都で編成されると言うが、こちらに派遣されるまではそれなりに時間もかかるらしい。

 

「どうしますか?今日はお休みにしてトランプでもしますか?3人いるのでゲームの種類は増えますよ」

 

残念そうな表情を取り繕いながら、彼女はいつのまに出したのかトランプをパラパラと操りながら期待に胸を膨らました。

 

「えーそれは困ります。私の爆裂魔法はどうすればいいのですか?これでも私は1日1爆裂を習慣にしているのでこのまま中で引きこもるのは嫌ですよ」

 

なんとめぐみんはこの状況で外に行きたいと言い出した。と言うか1日1爆裂ってなんだ?

 

「何で金にならないのに外に行かないと行けないんだよ。危ないだけだろ行くなら1人で行け」

 

外に行くだけ命の危険が増すだけなので、めぐみんの提案をバッサリと断る。

 

「私は爆裂魔法を放ってしまうと動けなくなってしまうのですよ。最低でも1人は私を運ぶ為に欲しいです」

 

結局は道連れが欲しいだけかよ。

 

「だったらゆんゆんと行けよ、文字通り尻に敷いてんだからついて行ってくれるだろ」

「え⁉︎私ですか?」

 

面倒なので多分友達のゆんゆんに押し付ける。しかし押し付けられた本人はビックリしたようだ。

 

「いえ、ゆんゆんだと運ばれ心地が悪いのでカズマにお願いします」

「嫌だ」

 

しかし何度断っても彼女は引く事はなく、しょうがないので俺が折れることになった。

 

 

 

 

 

「何でゆんゆんまで居るのですか?」

 

売れそうな山菜などをついでに探す為に叢や森などを道に選びながら町の外へ進んでいく。

 

「だって2人が居なくなったら、私1人になっちゃうじゃない」

 

ゆんゆんにはお留守番を頼もうとしたのだが、予想外の反対を受けたのと受付のお姉さんの視線が突き刺さったので同行してもらうことになった。

 

「なあ、もうこの辺りでいいんじゃないか?」

 

ささっと済ませたいので通り道にあった大きな岩を見つけ、それを指差す。

 

「いえ、こんな物では私は満足できないですね、それにここじゃまだアクセルに近いので守衛さんに怒られてしまいます」

 

この大岩は彼女にはお気に召さなかったのかやれやれと言った表情で首を振る。

 

「怒られるって、まさか一度注意されたのか?」

「はい、前に他の方と行った時に見つかってそれはもう大目玉を食らいました」

 

めぐみんは何も悪びれる事はなく堂々とそう言った。こいつは爆裂魔法の事になるととことん強気になるな…

 

「めぐみん、それは自信を持って言える事じゃ無いわよ…」

 

彼女も呆れた様に俺に続く。里にいた間は彼女がめぐみんの爆裂魔法に付き合ったと聞くが、大変だったのだろう、ここまでついてくるだけで疲れた様な表情をしていた。

 

「おや、あの城なんかどうでしょうか?」

 

あれから暫く歩き、奥まで行くと遠くの丘の上に古城が建っていた。見た感じ誰も住んでおらず、ジメジメとアンデッドでも沢山住み着いていそうなそんな感じだった。

あの城なら別に爆破しても大丈夫だろう、特にアクセルの近くに誰かが住んでいる城は聞いたことがない。そう言えばクエストに廃古城の周辺のモンスターの討伐と書いてあった事を思い出す。

 

「いいんじゃないか?ゆんゆんあの城今は誰も住んでいないんだろ?」

 

念の為ゆんゆんにも確認する。

 

「多分、大丈夫だと思いますけど。私はどうなっても知りませんからね」

 

過去に何かあったのだろうか、確認した途端に私は関係ありませんと責任から逃れようとする。

 

「多分だけど、ゆんゆんも大丈夫だってよ」

「ああ…」

 

なんか嫌な予感がしたので、ゆんゆんも許可を出した責任者に混ぜておいた。それを聞いたゆんゆんは諦めた様に声を漏らす。

 

「では、再びお見せしましょう。我が爆裂魔法を‼︎」

 

杖を構え詠唱を唱え始める。めぐみんは少し詠唱にアレンジを加えているのか、前回と少し単語が違うところがあった。

そして詠唱が終わったのか、彼女の杖の周りに魔力が集まり収束を始める。この光景は何度見ても綺麗だと思えるくらい魔力の流れは澄みきっており力強い。

 

 

「エクスプロージョン‼︎」

 

 

呪文を唱えると、遠くの古城の上空に魔法陣が重なる様に展開されていき、瞬く間に巨大な爆発となる。しかし、古城は頑丈なのか少し崩れたが完全に丘の上が更地になる事はなかった。

 

「どうでしょうか?今日の爆裂は、これからも付き合っていたただきますので、よろしくお願いしますね…あう」

 

魔力を使い果たし、めぐみんはバタンとその場に倒れる。城が完全に崩れなかったのか悔しいのか城に向けて、挑戦的な目線を向けていた。

 

「「はあーあ」」

 

これからこんな事が続くのかと互いのに思ったのか、ゆんゆんと2人そろってため息が漏れた。

 

「あの…何を考えているか大体分かりますが、取り敢えず虫が登ってきてしまうので背負って貰えないでしょうか」

「はいはい」

 

モゾモゾ蠢くめぐみんを持ち上げ、そのまま背負う。

小さければ運ぶ分には楽なんだが、めぐみんもゆんゆん位までとは言わないがもう少し発育してくれれば、少しは楽しめたんだろうけどな…

先頭を歩いているゆんゆんを眺めながらそんな事を考えていると、急に首に掛けられていた腕が閉まり出した。

 

「今、とても失礼な事を考えましたね。言わなくても分かりますよ、言っておきますが私は大器晩成型なのであと数年すればゆんゆんが悔しがるくらいなナイスバディになりますからね‼︎」

 

ぎゅうっと首がどんどん締まっていく。

 

「分かった、俺が、俺が悪かったから…その手を離せ‼︎」

 

前回の事もあってか、謝るとパッと腕が解かれる。やはり紅魔族、知性が高いのは本当だったんだな。

 

「分かれば良いのです」

 

次から気をつけて下さいねと念を押される。

 

「全く、何やっているんですか…」

 

その光景を呆れた様にゆんゆんが見ていた。




少しクリスの脚色に無理があったようなそんな気がします…
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