この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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遅くなりました…
なるべく完結できるよう頑張っていきます泣


魔王侵攻2

一月前

 

 

 

セレスディナを山に捨ててきた俺はそのままアクセルの街へと戻る。

彼女の四肢を切り裂いた影響で俺の四肢ももげてしまい、その修復の代償なのか全身に激しい倦怠感と違和感を覚えた。

 

「戻ったぞ…ゆんゆんは無事か?」

 

セレスディナを殺した事による達成感かそれとも人間を殺してしまった罪悪感か分からないが、よく分からない感情のまま俺は教会へと戻るや否や俺はシスターに状況の説明を求める。

 

「貴方ならその感知スキルで分かっているでしょう?無事ですよ」

「ああ、そうだったな、すっかり忘れていたよ」

 

確かにアクセルの戻った時点で皆の気配を感じていたので最悪の事態は回避できたのだろう事は分かっていたが、それでも誰かの口から彼女達の安否について聞きたかったのだ。

だが、そんな俺の心情も知ってかしらずか、シスターに嗜められ俺は知らないふりをする。

 

「それで、あの子は…」

「俺が帰ってきた時点であいつがどうなったかなんて言わなくてもわかるだろう?」

「…そうでしたね」

 

先程の意趣返しと言わんばかりに俺はシスターに強い言葉を返す。

俺はやられたらやり返す男なのだ。

 

「ゆんゆんは上の部屋にいるのか?」

「ええ」

 

シスターの背後にある2階の部屋を指差して尋ねると彼女はそうですと言いながらその部屋の鍵を俺に差し出した。

多分俺が操られた時用に鍵をしてくれていたのだろう。

 

 

「ああ、カズマですか。随分と遅い帰りだったじゃないですか?」

「ああ、悪かったな、少し山登りがしたくてな」

「そうでしたか…」

 

部屋に入ると先程の怪我なんてまるで無かったかの様な姿のゆんゆんがベッドに寝かされ、その横に看病していたのかめぐみんが座っており俺の姿を見るや否や少し嫌味を言ってきた。

 

「腹の傷は大丈夫そうか?」

「ええ、治療の際念の為隣で警護しておりましたが、無事傷跡も残らず綺麗に治しておりました」

「それはよかった」

 

これで一件落着だと思い気が抜けたのか、俺はそのまま地面に腰を降ろした。

 

正直今回の戦いはかなり不味かったと思う。

何せ殆どの仲間が敵に回っていたのだ、シスターというメタ的存在が居なければ勝つどころか勝負にすらならなかっただろう。

 

「そう言えばミツルギはどこにいったんだ?」

 

今回の戦いを記憶の中で反芻しているとそう言えばと彼の存在を思い出した。

今回の件で重傷を負った人は全てここで管理されている手筈の為、本来であれば奴の気配も此処にあると思っていたが、どうやらここに奴の気配は無く此処には居ないようだった。

 

「あの男でしたら回復を済ませるや否や罰の悪そうな顔をしながら謝罪して街に戻って行きましたよ」

「そうか、何か悪い事しかもだからな」

「いいんですよ、あの男の事は気にせずさっさと忘れてしまったほうが世のためです」

「酷い言いようだな」

 

剣を奪い取り、それを奴の腹に突き刺し地面に縫い付けたのだ、本来であれば致命傷だが奴のレベルとステータスを考えればギリギリ無事だったのだろうと適当に自分で答えを出して話を終わらせる。

 

「カズマもお疲れ様でした。私はこのまま隣のベッドで寝ますので、カズマは隣の部屋を用意していただいたのでそっちで寝て下さい」

「ああ、そうさせてもらうよ。おやすみめぐみん」

「ええ、おやすみ下さいカズマ」

 

俺はめぐみんに促されるまま隣の部屋へ行きそのままベッドで眠りにつく。

 

 

 

「起きて下さい、お話があります」

「ん…なんだよ?」

 

朝目が覚めるや否や分かっていたかのようにシスターが部屋を訪ねてきた為、俺は眠い目を擦りながら彼女の訪問に応える。

 

「此処で話す様なお話ではないのでコチラへ」

「あ、ああ」

 

いつもと違う様な雰囲気を醸しだしている彼女に圧倒されながら俺は彼女に案内されるがまま促された部屋へ向かう。

 

「ではコチラへ座ってください」

「ああ」

 

彼女に促されるまま椅子に座り、俺の正面に向かい合う形で彼女も座った。

 

「それで話って何だよ?これから街の様子を見に行きたいから早くしてくれると助かるんだけどな」

「そうですね、話事態はそこまで長い物ではありません…それは…」

 

彼女はまるでいつか言わなくてはいけなかった話をするかの様に頭の中で決められたセリフを繰り返しているみたいだった。

 

「はぁ…下手に取り繕っても意味がありませんね」

「何でもいいから早くしてくれよ」

 

エヘヘ、とまるで今までの彼女からは想像がつかない態度に違和感を覚えるが、それに追求する前に話が始まった。

 

「それでは単刀直入に言います、あなたの肉体はそろそろ限界を迎えます」

「…え?」

 

先程の空気から一変まるで癌の宣告をする医師の様な趣で彼女は俺にそう告げた。

 

「限界…?」

「ええ、そうです。今回の件で少し違和感を覚え始めたのでは無いでしょうか?」

「ああ、確かに回復魔法をかける度に何とも言えない感覚があるのは俺も分かっていたけど」

 

どうやらあの感覚は回復魔法の代償の様な物だったのだろうか?

 

「回復魔法…聞こえはいいですがあれは単純に傷を治す物であって元に戻す魔法ではありません」

「それって、あれか?あくまで再生を早める物であって復元するものでは無い的な?」

「…よく分かりませんが、概ねその様な感じのものかと」

 

どうやら回復魔法は元の世界の漫画の様に都合よく治るものではなく、回復のリソースは自身の肉体から消費され、魔法はそれを活用するだけのものらしい。

であれば、使えば使うほど寿命を削っていくのは自明の理、誰も生命の循環から抜け出すことは出来ないようだ。

 

俺自身回復魔法自体についても本などで勉強していたがその様な情報は一切なく、彼女の思い込みでは無いかと思っていたが、わざわざこんな部屋に案内してまで言う程の嘘でもなく彼女にそれを言うメリットもないだろう。

 

「なんで分かったんだ?俺も回復魔法をかけた事があるが治療の対象の状態なんか分からないぞ?」

「それはそうでしょう…これは経験と勘によるものです。あなたは普段から足りないステータスを支援魔法で無理矢理上げ、その無茶にあげた支援魔法の代償であるオーバーヒートを回復魔法で補ってきました。これがどれ程寿命を縮めて居るのかあなたならわかるでしょう?」

「ああ、そうだったな…」

 

正直そんな気がしてきたが、この方法を教えてくれたクリスを信用していた為そんな事は無いだろうと見て見ぬふりをしていた事に気づく。

ああ、これが自身の病気を見て見ぬふりをして悪化させる患者の気分かと思いながら後悔しても遅いと自分に言い聞かせる。

 

「それで、シスターの見立てでは俺は後どれくらい生きられるんだ?」

「そこまでは…ただこのまま力を使い続ければもって一年くらいでしょう」

「…そうか」

 

この世界に来てはや数年、色々あったがそれもあと一年だと考えると案外呆気なく感じてしまうものだ。

 

「何かこれを回避する方法は無いのか?」

 

しかし、ここも腐っても異世界である以上何かしらの方法があってもおかしくは無い。

俺もこの世界の馴染んできたと言っても所詮思考のベースは元の世界のまんまで今だに見たことの無いような法則なり現象や物をよく見る。であればこの余命宣告を打ち破る方法もあってもおかしくは無いはずだ。

 

「…私の知識の範囲ではありますが、これを回避する方法は今のところありません」

「何でだ?他の冒険者だって回復魔法は使うはずだろう?であれば誰かしら俺と同じ状態になる奴がいてもおかしくは無い、そいつらはみんな寿命で死んじまったのか?」

「ええ、この世界の冒険者の寿命は短く、本来の天寿を全うする人はそもそも前線に立たないので回復魔法に頼るなんて事はそうそう無いです」

「…そうか」

 

確かにこの世界は戦争をして居るようなもので、俺たちの世界の様に寿命で亡くなる方が珍しいと言うものだ。

そもそも回復魔法すら奇跡に近い物なんだ、それが無ければ既に死んでいたいた命感謝こそすれど恨むなんてもってのほかだ。

 

「まあ、時間を止める魔法でもあれば何とかなりますが、生憎そんな魔法はありませんし…」

「ああ、神具にそんな物があるのは聞いた事が無い」

 

苦し紛れにシスターはそう言うが生憎そんなものが存在しない事はクリスから聞いている。

 

「…話は以上です。私もやる事がありますので」

「ああ…ありがとな」

 

シスターは伝える事は伝えたと俺に一礼しながら部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「めぐみん、ゆんゆんは目を覚ましたか?」

「いえ、まだ寝たままですね…全くこの子もお寝坊さんですから」

 

あの後俺は思考を停止させながら再び当初のタスクであったゆんゆん達の居る部屋へと戻り彼女が目覚めたか確認するが、どうやら依然として目を覚さないらしい。

 

「…カズマ?何かありましたか?」

「いや…何も無い」

「…そうでしたか、私の勘違いでしたら問題ありませんが、もし何があっても私はカズマの味方ですからね」

「ああ、ありがとな」

「…まあ、カズマが居なくなったら私達は路頭に迷いますので味方をせざる得ませんが」

 

珍しくふざけずに言葉を返すと気まずくなったのかめぐみんがブラックジョークをかましてくる。

本来なら明るく返せるが、今の俺には少し心に来る内容に少し話を誤魔化しながら逃げるように俺は部屋を後にした。

 

「…いったいどうすればいいんだ」

 

あまりにも少ない残り時間にこれからどうすればいいんだと、悲しみよりも先に焦燥感が勝る。

魔王を倒せば全てが解決すると思っていたが、まさか魔王を倒す時間が此処まで削られるとは思ってもいなかった。

 

魔王軍幹部の討伐ペースを考えればギリギリ間に合わなくもないが、少なくなった魔王軍が今までの様に行動するとも考え辛い。

アイリの件や王都の件もまだ残っている。

 

全てを解決するのに一年という時間はあまりにも時間が短く、そもそも一年間今までの様に活動できるのも怪しい。

シスターの話で無ければ信じなかったが、あのシスターが言った以上そうなんだろう事は今までの関係から疑う余地はない。

 

せめて2人は何とかしてやりたいが…

まあ、金銭に関しては使いきれないほど残せると思って居るので大丈夫だが、果たしてあの2人がそれだけで生きていけるかと思うとそれはそれで不安が残る。

 

俺の思考は残りの時間どれだけ魔王を追い詰められるかでは無く、どうやって余生を過ごすかにシフトしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけばクリスに教わった泉の前に立っていた。

泉はご主人を失って居るのにも関わらず神秘性を失わず神がかった輝きを放っているが、以前の様に大太刀が置かれていることはなかった。

…やはりあの大太刀はクリスが用意してくれた物だったのか。

 

「…」

 

泉に映る自分を眺めながら今後について考える、一体これからどう魔王を倒すのだろうか?

答えは出てこないが、この泉の水を飲めば回復するかなと思い水を掬おうと屈みながら顔を泉に近づける。

 

「うわっ‼︎」

 

感知スキルには何の反応も無かったが

ドン、と何者かに背中を押された様に体が前のめりになり、気付けば泉に体を落としていた。

 

「な…」

 

言葉は言葉にならず気づけば何かに引っ張られるように湖の底へと向かい俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はっ」

 

気づけば何処かで見た村の公園の様な場所のベンチの様な出っ張りに腰掛けていた。

 

「まだ迷って居るのかな?それとも諦めちゃった?」

「クリスか…」

 

気づけば隣にクリスが座っており、何故ここに死んだ筈の彼女が居るのかという疑問は一切湧いてこずありのままの光景をただ受け入れていた。

 

「俺はなんかもう、よく分からなくなっちまったよ」

「そっか」

 

俺は何も考える事も無くただただ思った事を口にしていた。

 

「色々考えたんだけどさ、魔王軍の幹部もだいぶ倒したし後は他の冒険者に任せてこのまま残りの人生を3人で過ごすのも良いのかもしれないと思っている自分もいるんだ」

 

今までここに送られてきた転生者達の功績を見る限りでは一番功績を上げているのは俺だろう。魔王軍も残り2人となるまで追い詰めている事を考えれば十分だろう。

バルターを倒して紅魔族の復讐も果たし、王都はきっとダクネスが何とかしてくれるだろう。

残りの人生はゆっくり過ごしても罰は当たらないかもしれない。

 

「…そっか、それが今の君の考えだったんだね」

「ああ、みんなには悪いけど俺はもう疲れたのかもしれない」

 

昼頃になったのか前方には子供達が鞠の様な薄汚いボールで遊んでいる。

 

「いいこと教えてあげようか?」

「え?」

 

本音を吐露する俺に彼女はまるで悪戯をする少女の様な表情で話を続けた。

 

「このままいけばダクネスはクレアに潰され王女様は一生傀儡のまま、君を失って標を失った2人は魔王軍幹部を倒したパーティとして祭り上げられ、紅魔族と言うもの目をつけられ紅魔族再興の名目で酷い目に遭うだろうね」

「それは…」

「魔王軍だって馬鹿じゃない、半分以上も部下を失ってだまっていると思う?詳しくは言わないけど近いうちに何かするよ」

「…そんなの…っ分かるわけ…え?」

 

気付けば長閑な風景だった目の前が瞬く間に火の海になり、別の村の人達だろうか?明らかに服装の違う人達が村に火を放ち男を殺し女を襲っている。それは子供も例外では無い。

 

「君はいつから鈍感になったのかな?君が守ってきた物を君以外が守ってくれるわけないでしょ?守るばかりで自分の身を守る方法を教えて無かったのは君だよ」

「ぐっ⁉︎」

 

襲われている村の子供を助けようと立ち上がった所を彼女に捉えられ地面に抑えつけられる。

 

「クリス…お前は一体何がしたいんだ?」

「何がしたいかって?それは私が一番聞きたいことだよ。君こそ何がしたいのさ、ようやく覚悟が決まったかと思えば日和出したりさ、君に振り回された人達は一体どうするの?」

「それは」

 

セレスディナを殺した時に覚悟は決めた筈だった、死んでもいいと思っていた。

だが現実はそうはいかず、いざ自分の前に死が近づいてしまえばそんな覚悟簡単に打ち消されいつもの弱い自分に戻ってしまう。

 

「また言い訳かな?正直そろそろ聞き飽きてきたよ…」

 

クリスに頭を掴まれ視界が地面から正面へと移されるとそこには2人に似た少女が男達に組み伏せられおり、そこから行われる行為は想像に容易かった。

 

「やめろ…止めてくれ…」

「止めないよ、君はこの光景を見るべき」

 

彼女は俺が目を逸らさない様に首を固定し、何かの魔法で瞼を閉じ続けられない様にして目の前の見たくもない光景を見させられ続ける。

 

「取りこぼしたものは前に見せたよね、今度は君が取りこぼすであろうものを見せてあげるよ」

「や…」

 

そこから先は地獄だった。

彼女はまるで俺の全てを理解しているかのように的確に無駄なく、ただ俺を追い詰めることに関しては100点満点の地獄を見せ続けた。

 

「お…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーっ!」

 

存在しない内容物を吐瀉し、俺の精神は限界を迎えていた。

 

「後一年だから何だって言うのさ、今の君には何がある?腕もあるし足もある魔法も使えるし技術もある。上澄のミツルギですら君には手も足も出ない、何でじゃない私がそうした…いや君がそうさせたんだよ。そんな君が残りの余生を安らかに過ごしたいなんて随分と甘えた事を言うんだね?周りを地獄に落としたんだ君も最後まで苦しまないと」

「…」

「もう一度聞くよ、それで君はどうしたかったのかな?」

 

これは最終通告だろう。

 

喜怒哀楽全ての感情の消え失せた声で彼女はそう俺に質問し、それに対して俺は答えをだす。

 

「…よくできました」

 

彼女は満足した様に笑顔でそう言うと俺の首根っこを掴み何処かへ引きずる。

 

「君に逃げる選択肢は無いんだよ、自分で始めたんだからケジメはつけないとね」

 

彼女はそう言うと俺の体を何処かの池に投げ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

気付けば泉の淵に打ち上げられており、全身はずぶ濡れだった事からやはり泉の中で溺れていたのだろう。

 

「…」

 

セレスディナの時の感情を思い起こし再び覚悟を決める。

目標を魔王討伐にし、そこから生まれるありとあらゆる犠牲に目を瞑ろう。

魔王さえ倒してしまえば後でどうとでもなる、ならば俺は…

 

俺はもう立ち止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセルの街の店の前に立つ。

あいつの事だ俺の行動は既に準備しているだろう。

 

「邪魔するぞ!」

「邪魔するのであれば帰れ‼︎この迷惑客が‼︎」

 

ドアを思いっきり蹴り開き剣を構えて店内に踏み込む。

やはり俺の進行は既に見通していたみたいで軽快な返事と共に光線が飛びそれを躱す。

2人以外の気配は無い事は既に確認済みで店内に聖水由来の煙幕をぶちまけ怯んだ隙に仮面の悪魔に斬りかかる。

 

「何と⁉︎」

 

奴の見通す能力は泉の水で一時的に防げる事は分かっているので見通す力で攻撃を読まれる事は無いだろう。

バニルの光線を頭を下げてかわし、後ろ足を蹴って横に逸れるとそのまま奴の懐へ潜り込もうとするが、奴も馬鹿では無いので膝を上げて俺の顔面に膝蹴りをかまそうとしたのを寸でのところで踏みとどまり、バックステップで距離を開けるとフェイントを交えて再び斬りかかる。

 

「ぐっ」

 

バニルにとって泉の水は弱点の様で、それが振り撒かれた環境での戦闘となると俺に分があるようだ。

弱体した奴の体を切り刻み、身体が崩れたところで仮面を掴み退魔魔法を掛けながら束縛する。

 

「こ…小僧よもやここまでやるとは…一体何は目的であるか?」

「へぇ随分とお前にしては弱気じゃねえか、いつもの威勢は何処にいったんだ‼︎」

 

奴の事だ、きっと何処かで何かをしてくると思い警戒を強めながら尋問を始める。

 

「悪いけど時間が無いんでな、手短に行くぞ。残りの魔王軍幹部は誰だ?」

 

あまりにも上手く行きすぎる展開にもしかして罠に嵌っているのでは無いのだろうかと全ての行動を疑いながら尋問を続ける。

 

「貴様も分かっているのだろう?最後は魔王の娘である」

「それはもう分かっている、ベルディア、お前、ハンス、シルビア、ウォルバク、セレスディナ、魔王幹部は8人後2人いる筈だ、魔王の娘と後1人は誰なんだ‼︎」

「それは我輩の口からは言えなぬな、何を焦っているのか分からぬが貴様の運であれば自ずと逢えよう」

「うるせぇ!こっちはもう時間が無いんだよ‼︎」

 

俺は煮えきれない態度のバニルに対して最終兵器である泉の水を組んだ容器を出す。

 

「それを我輩にかければしばらく戻れなくなるな、いいのか?時間が無いのだろう折角のチャンスを水に流すのか?文字通りその聖水でな‼︎フハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハーーっ‼︎」

「ああ?上等じゃねぇか‼︎やってやろうか‼︎」

 

まるで俺を嘲笑うかのような態度のバニルに苛つき思わず泉の水をかけそうになる。

 

「待てください‼︎そんな事をされてしまっては困ります‼︎」

「ウ…ウィズ?悪いけど構っている暇は無いんだ、この水が掛かると危ないから離れていてくれ」

「その小僧の言うとおりだ、アホな事せず店の奥に引っ込んでいろ‼︎」

 

咄嗟の行動で台無しになるところを止めてくれた事は嬉しかったが、今はそれどころでは無いので彼女には少し離れて貰いたかったので,バニル同様店の奥へ引っ込んで貰う様に頼む。

 

「どうした小僧早くその聖水を我輩にかけるのでは無いのか?」

「バニルお前は‼︎」

 

バニルはあたふたするウィズを尻目に早く自分を処分する様に伝えるが,そうなってしまえば唯一の魔王軍への情報源が無くなってしまう。

見通す目を俺に使えなかったとしてもそれくらいなら誰でもわかるだろう、奴は悪魔である以上人を弱みにつけ込むなど朝飯前だ。

 

「カズマさん、残りの魔王軍幹部が誰なのか知りたいんですよね」

「ああ、そうだよ。だから早くコイツに口を割る様ウィズも何か言ってやってくれ‼︎」

 

ウィズは俺たちのやり取りを見て何かを覚悟した様な表情を浮かべながらコチラに歩み寄ってくる。

 

「止めろ‼︎貴様は自分が何をしようとしているのか分かっているのか‼︎」

「分かっています、バニルさんと過ごしている以上いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていましたから」

「な…何の話をしているんだ?」

 

魔王軍幹部の話をしている筈なのに何故か2人は別れの挨拶をしているかの様な空気感を漂わせている。

もしかしたら魔王軍幹部が以前にバニルに訪ねてきており、その際に口外しない様に暗示か呪いでもかけられていたのかも知れない。であればこの状況も納得ができるだろう。

 

「バニル‼︎何がどうなっているか分かんねぇけどお前が言えば済む話だろう?」

「ええいコレだからポンコツ冒険者とはやってられんのだ‼︎」

 

だったらウィズではなくコイツに話して貰えばいいだろうと思い暴露を促すが、バニル曰く話の争点はそこでは無いとの事だった。

 

「カズマさん、残りの魔王軍幹部は」

「ウィズ…?」

 

バニルの説得も虚しく彼女は重い口を開き

 

「私です。私が魔王軍の残りの幹部です」

「…はぁ?」

 

彼女の宣言に呆気を取られ思わず変な声が出てしまう。

 

「はぁ…ついに言いよったかこのポンコツ店主は…」

 

彼女の宣言に呆れた様に溜息を吐きながらバニルはそう言った事で、彼女の発言が嘘ではなく本当であると言う裏付けになった。

 

「本当にウィズ、お前が魔王軍幹部なのか?」

「はい、そうです。魔王様の娘と私が残りの魔王軍幹部です」

 

彼女は胸に手を当て自身の言っている事が嘘ではないと宣言した。

 

「ウィズ…この状況でそれを言う事が何を意味しているのか分かっているのか?」

「ええ、分かっております。幹部になった時から全て承知の上です」

 

彼女は全てを悟ったかのように目を瞑ると俺に首を斬れと言わんばかりにしゃがんで手を合わせ組んだ。

 

「待て小僧、話せば分かる。貴様も死を受け入れないで早く逃げろ」

「ごめんなウィズ…本当は色々話を聞きたかったけど、もう時間が無いんだ」

 

 

 

 

 

 

バニルを放り投げ剣を再び握りしめる。

まるで祈りを捧げるシスターの様に佇む彼女を見下ろしながら俺は持っていた聖水を彼女に掛ける。

まるで酸を浴びるように煙を出す彼女に俺は剣を振りかぶり

 

「カズマさん…貴方の人生に救済がある事を願います」

「…っ⁉︎」

 

何を呟いた彼女の首を切り落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…え?」

 

俺はウィズの首を切り落とした。

しかし彼女の首は切り落とされたはいいものの、その頭部は依然として意識を保っており彼女の瞳は依然として俺を映していた。

 

な…何だこれは

 

不気味に思いながら俺は退魔魔法を掛けながらこぼれ落ちた彼女の顔面に剣を突き刺すが、それでも彼女が亡くなる事はなく、ただただ彼女の瞳は俺を見続けるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ…はぁ…何なんだこれは一体⁉︎」

 

あれから何回何十回と彼女を殺し続け、持っていた泉の水も掛けたが溶けるだけで消滅する事は無く、黒い炎は街を焼き尽くしてしまう為使えない、結果としてどんな手段を持っても彼女を殺し切る事ができず、ウィズはただただ早くしてくれと言わんばかりに俺を見つめ続ける。

 

「…」

 

さらに剣や魔法を振る、辺りには彼女の血と肉片が飛び散り、グチャグチャになった彼女の頭部からこぼれ落ちた眼球は未だに光が失われずにコチラを見つめていた。

 

「なんでだよ…何でなんだよ一体コイツは‼︎」

 

正直これ以上は俺の気が狂ってしまいそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…どうやら小僧ではこの店主を殺し切る事は出来なかった様であるな」

「バニル…」

 

気づくとどうやらダメージがら回復したのか先程とは思え程に調子を取り戻したバニルが立っていた。

コイツがいると出来るものも出来なくなってしまう。

再び剣を握り締め、バニル討伐第二ラウンドへと向かおうとする。

 

「小僧、これ以上は止めておけ。あれはポンコツでもリッチーである。殺そうとしても殺せぬこの世界の理から外れた存在、この世界で真の意味で殺せるは時間かあの小娘くらいの者よ」

 

泉の水は既に使い果たし、服も既に乾いてしまい何の後ろ盾のない俺は疲労も相まってバニルに組み伏せられてしまう。

 

「何だよそれ…」

「不滅の存在、故に魔王はあの者を最後の砦として魔王軍の幹部になる様交渉したのだ」

 

それを早く言ってくれと言いたかったが話を聞かずに突っ走ったのは俺なのでコレはしょうがない。

 

「あの小娘の付き人である小僧であったならもしやと思ったが、全然そんな事は無かったな‼︎」

「クソっ‼︎」

「ポンコツ店主もいつまでも散らばってのは流石に飽きただろう?早く元に戻ったらどうであるか?」

 

バニルの言葉に反応するように飛び散った肉片達が潰れた頭部に集まると、まるで何事も無かったかの様にウィズは元の姿へと戻った。

 

「…カズマさんお役に立てず御免なさい……死んで上げたいのは山々ですが私は死にたくても死ねない体みたいでして…そのクリスさんとのお付き合いのあるカズマさんでしたら出来ると思っていたのですが…その…申し訳ございません」

「まぁ…これで元通りであるな。小僧、迷惑料はしっかり取ると言いたいところだが…今回は見逃してやろう。今回の件はお互い何も聞かず何もしなかったと言う事でどうだ?」

「…ああ、そうだな。悪かったよ」

 

何故だろうか、殺しにかかったというのに2人の対応があまりにもやさしく、それ故か俺は毒気を抜かれそのまま呆然としたまま店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりの事態に脳が追いついていかず、気づけば教会へと戻っていた。

 

「おーいカズマ‼︎ゆんゆんが目を覚ましましたよ‼︎」

 

教会のベランダでてつだいなのか洗濯物を取り込むめぐみんに見つかり手を振られる。

ウィズを殺せない以上魔王城の結界を解く事は出来ない、ならば…

 

俺の視線はめぐみんに向けて硬直した。

 

 

 

 

 

 

 

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