めぐみんを宿まで運び、ゆんゆんと再びギルドに戻る。
取り敢えず、めぐみんの爆裂習慣の途中に拾えるだけ山菜をゆんゆんに拾ってもらったので、これをカウンターで買い取ってもらう。
このアクセルでは採取クエストなどは少い。それはアクセル周辺のモンスターは既に大多数が討伐されている為、大体の物は依頼に出して取ってきてもらうより自分で取りに行った方が安いからだ。
しかし、だからと言って物資が全く必要ないと言うわけではなく、こうして受付に持っていけば幾らかで買い取って貰う事ができる。
「なんか凄い爆発がありましたけど、大丈夫だったのですか?」
受付のお姉さんに薄々感づかれているのか、山菜を渡す際にボソッと言われる。
「何とか…森林火災にならない様な場所をターゲットにうまくやってますよ」
後々何かあった時にサポートしてもらいたいので、色々はぐらかしながらだが伝える。こう言う地道な活動こそがいざという時に役に立つのだ。
「そうだったのですか、それはご苦労様でした。ではこちらですね山菜の等級とグラムで換算した額をお渡しいたしますね」
山菜の買取が終わる。金額は普通のクエストと比べれば安いが、あの俺にとっては無意味に思えた行動に意味を与える事ができたので良しとしよう。
金を受け取り、ゆんゆんが座っているテーブルに向かい座った。
「でどうする?めぐみんが居なくなったからまた2人になったけど」
「どうしましょうか、また人生ゲームでもしますか?」
めぐみんを部屋に運んだ際に持ってきたのか、少し大きめのバックからドンと紙の箱が取り出される。箱のデザインが違う事から山にゴブリン狩りに行った時の物とは違うものらしい。
また人生ゲームか、いい加減違うゲームをしたくなってきたな。
基本的に2人なので、大人数でやるゲームなどを行っても多数で行う様な事が出来ず、基本は俺とゆんゆんのガチンコ勝負になってしまう
「よし、じゃあ俺の国のゲームやろうぜ」
適当にカードを配ると俺はルールを説明した。
「もう嫌…前から思っていたんですけど、カズマさんはゲーム強くないですか?」
なんだかんだ言って運が強い俺はゆんゆんとの勝負に勝ち続けてしまった為、とうとう不貞腐れてしまい。現在テーブルに上半身を預け伸びている。
「まあ落ち着けって、これは俺の幸運値が高いだけであって別にゆんゆんが弱いとかそう言うわけじゃないからな」
まあまあ、と彼女をなだめる。しかし彼女の夢だった他人との遊ぶと言う行為は俺の幸運による一方的な勝利に終わった。
「うぅ〜そう言われればそうですけど、なんか納得できません‼︎」
彼女は一体何が不満なんだろうか?
彼女は対等なくらいの力量で互角に戦い合いたいのだ、つまり要は運が関わってないゲームをすればいいのだ。
「しょうがねえな、じゃあ次は外でやろうか」
彼女を外に連れ出し、前回クリスと特訓した場所に向かった。
公園には誰もおらず広いスペースが貸切状態となっている。なので何をしようが文句が出ることは無いのだ。
さてこんな所まで来て何をするかと言うと。
「よし、じゃあ俺の国のメジャーなスポーツ、サッカーをやろうぜ」
「サッカーですか?聞いたことないですね、またカズマさんの国の競技ですか?」
へーと彼女は俺の足元のボールを眺める。この世界にもボールの概念はあったみたいで、この公園に行く前に雑貨屋にて購入しておいたのだ。
ボールは有るのだが特にどう使うとかそう言ったルール等の遊びは特に決まってはいないみたいで、アクセルの子供は転がしたりして単純にボールとして遊んでいるようだ。
「そうなんだよ、それでルールっていうのは単純でボールを手を使わずに相手の後方に設置したゴールに入れるんだ。それと」
今回は2人なので、ある程度ルールを弄りながら説明する。あと念の為に大人数の時のルール等も説明した。
「へー結構難しいですね。オフサイドでしたっけ?結構際どい場合とかどうするんですか?」
「まあ、今回は2人なんだからオフサイドとか、そう言ったのは抜きでドリブルで勝負しよう」
サッカーのルールは難しいのでサッカーを好きな人には悪いが、ここは省略させてもらう。
「では、行きますよ」
対面に向き合うと、彼女は俺の後ろに棒で引いたゴールのラインに向かって蹴り飛ばした。
本来なら止めて終わりなのだが、彼女は筋力が高いので放たれたボールは空気を切るような音と共に俺の後方に飛んで行った。
「マジか、ドリブル勝負はどうなったんだ?」
「え?これってゴールにボールを通せば勝ちじゃないんですか?」
どうやら彼女はルールは分かったとしても、今回の趣旨を理解してはいないようだ。なんてことだ、とまた一から説明し再び1対1を再開する。
「はあ、はあ、このサッカーと言う競技は楽しいですね」
しばらくの間俺達は時間を忘れサッカーに興じた。やはりゆんゆんも頭がいいので、何回か説明したらルールを理解し始めて数回で俺とタメを張るくらいの実力になってしまった。
「はあ…はあ…畜生、まさか何も知らない初心者にこのカズマさんが負けるとは…」
パラメーターは彼女の方が上なので、テクニックで圧倒しようと思ったが予想以上にも彼女の上達に驚き、後半は互いに疲れたのか泥沼試合のように一心不乱に互いのボールを取り合った。
「取り敢えず今日はこの辺りにしよう、流石にこれ以上は午後に響く」
肩で息を切らしながらも呼吸を整える。午後にはクリスとの特訓とやらがあるので、あまり疲れるとこの先に響いてしまう。
「私も久し振りにこんなに動いて楽しかったのですが、疲れました」
2人とも秋なのに汗まみれになりながらその場に座り込む。
「悪いけど午後から用事があるから、この後は解散でいいか?」
「わかりました。私達も午後はお買い物に行きますので、何かありましたら前に行ったお店に来てくださいね」
どうやらめぐみんの服や生活雑貨を買いに行くらしい。一応ジャイアントトード分の金は渡してあるのでゆんゆんが払う事は無いだろう。
2人とも汗まみれになったので、汗を流す為に銭湯に向かう。この世界に来てよく風呂に行く様になったなと常図ね思う、大体は彼女が行くからついでに行くみたいな感覚だが、実際に入ってみると案外さっぱりするもんだ。しずかちゃんが学校帰りに風呂に入る理由がよくわかる。
「じゃあ、何もなければ明日酒場で会いましょう」
「ああ、またな」
入り口で別れ男性の湯に向かった。
風呂を済ませてジャージに着替える。今日の待ち合わせ場所は前回と変わらずに先程居た公園になっている。
今回は前回みたいに組手ではなく、基礎からやるそうだ。支援魔法を選ぶ為に軽く手合わせするだけだったのに一体何故こうなったのだろうか。まあ食事代でここまでしてもらえるのなら安い物だろう。
「時間通りだね、弟子1号君」
公園に着くと、先に来ていたクリスが外側に設置されているブランコを漕ぎながら、俺を見つけたのか声を掛けながらこちらまでジャンプする。
「よっとと…よし着地成功‼︎さてさっそくだけど始めようか」
彼女は俺の前に綺麗に着地すると、はにかみながらそう言った。ぱっと見可愛いのだがこれから始まる地獄の特訓を思えば笑えなくなる。
「うっす‼︎よろしくお願いします、師匠!」
後ろに腕を組み、まるで体育会系の様に振る舞う。
「ははっ、全く君は調子が良いんだから。よし、じゃあ今回はまず走りこもうか、逃走スキルはもう取ったよね」
さも当然と言うように彼女はスキルを指定する。確かに逃走スキルは取ったのだが、昨日実際に動いて見て選ぶ為に行った組手はただ疲れただけだったので、あの後に数時間ずっとスキルを考えて取り敢えずいくつかは取って迷うスキルは取らずポイントは残している。もし昨日の時点で取ってなかったら無理やり取らせるのだろうか?
「まあ取りましたけど、この公園で追いかけっこでもするんですか?」
「いやいや、ここからギルドまで私と追いかけっこするんだよ」
「マジか」
「本当だよ」
どうやら彼女は本気で言っている様で、準備運動と言わんばかりにストレッチなどをしている。
「じゃあハンデをあげるよ、私は君が出て行った後に数秒待ってから向かうからね」
唖然としている俺を見て何かを感じたのか、こうしようと提案してくる。
数秒待たれても大して変わらなくないか?と思ったが、彼女の事だ何か考えがあるのだろう。
「よし、じゃあ行ってみようか」
とん、と背中を押されのを合図に俺は全力で走り出した。
彼女が準備運動をしている間に速度上昇の支援魔法を事前に掛け、逃走スキルを発動する。それにより俺の速度は昨日までの俺と比べれは天と地の差があり、今まで取らなかた事を後悔するくらいに加速する。
この疾走感と共にギルドまで駆け抜けようとするが、それは彼女が許さないのかいつのまにか後ろにいた彼女が俺の横まで詰めてきている。
「やっぱり支援魔法を使ってるからかだいぶ早いね、これなら大丈夫そうかな」
一体何が大丈夫なのだろうか?時々だがたまに彼女は俺の事を値踏みするかの様な視線で見ている節がある。一体何が目的なのだろうか。
「これ何の意味があるんですかね⁉︎」
ハンデと支援魔法を使っている事もあり何とかこの追いかけっこは俺の勝利に終わった。
「んーそうだね、まあ取り敢えず基礎訓練だからね、次行こう次」
それから彼女は俺の質問を全てのらりくらりと躱しながら、外壁まで再び追いかけっこに付き合わされた。
「次はこれだ!」
アクセルの街の外側を覆う壁、つまり外壁に着くと彼女はジャーンとバックから鍵爪付きロープを取り出した。
「なんでロープなんだ、クリスは束縛プレイが好きなのか?」
ケロッと何時ものトーンで質問する。
「違うから⁉︎私にそんな気ないから!全く、何で君はいつもそんな考えしかしないのかな」
面倒なので適当に突っ込むと彼女は恥ずかしそうにそれを否定する。人間どんな趣味を持っていようとも頭ごなしに否定するのは良くないと思うので、俺もなるべく否定しない様にしているのだ。
「まあ、クリスの性癖は置いといて、これでどうするんだ?」
「置いとかないでよ‼︎変な誤解したままにしないで良く話し合おうよ」
取り合えず話を進めようとするが、彼女は誤解を解きたいのか話を進ませようとしない。
「いやいや、ダクネスと仲良かった時点で大体そんなもんだと思ってたから、別に隠さなくて良いんだぜ」
昨日ボロボロにされたお返しを込めて話を引きずる。何だろうか、彼女を弄っていると今までの疲れも消えていく様だ。
「はあ…ダクネスか…あの子の事を出されると、私としては何とも言えないかな」
あはは…と苦笑いしながら頬を掻く。彼女にしてもダクネスは扱い切れないのだろう、一体あのド変態クルセイダーは何を目指しているのやら。
「で、これで何するんだ?」
再びロープを持ち上げ、彼女に質問する。
「君と話をしてると調子が狂うな…」
そんな俺の態度を見て呆れたのか、大きな溜息を吐きながら本来の話を始める。
「これを外壁の凹みに引っ掛けて、そこから上に登っていくんだよ」
彼女は見ていて、と手に持っていた鍵爪ロープを投げる。投げられた鍵爪は外壁のデザインなのか凸凹部分に引っかかり、それをロープ部分を引っ張り安定した事を確認すると彼女はそのロープを伝いながら上へと伝っていった。
「こういう感じだよ‼︎君もやってみなよ」
上に登りきった彼女はスルスルと登ってきたロープを降りて着地すると、俺にやれと手に持ったロープを手渡す。
「しょうがねえな、ほらよ‼︎」
ヒョイっと軽快にロープは投げられる、しかしその鍵爪は綺麗な放物線を描いたまでは良いが外壁の凸凹に引っ掛かる事はなく地面に落下する。
「何でやねん‼︎」
思わず関西弁で突っ込む、ここは綺麗に引っ掛かるところだろうに…
落下する鍵に唖然としていると、後ろから笑い声が聞こえる。
「あはははは‼︎何それ⁉︎あんなに綺麗に投げられたのに何で引っ掛からないの?」
フォームは完璧だった筈なのだが、何故か引っ掛からない事に彼女は笑っているのだろう。笑うのは構わんが教えたのはお前だぞ。
「まあ、いきなりで失敗するのは仕方がない事だよ。こういうのは鍵爪が壁に触れたら少し引くのがコツなんだよ」
再び彼女がロープを投げ実演する。今度はわかりやすい様にコツを強調しながら大振りの動作で行われる。
「投げて引っ掛かる事もあるけど、大体は引っ掛からないからこうして手首の返しも使って引っ掛けてあげるのさ」
ホイッと彼女は再び壁に引っ掛けてみせる。
「ほら、もう一回やってみなよ」
再び外したロープを渡される。流石に今回外したら恥ずかしいだろうか、緊張しながら2回目の投擲を放つ。
「おお、良い感じだね」
彼女が言った様に、投げられた鍵爪ロープはまた綺麗な放物線を描き壁にぶつかった。
「今だ‼︎」
ぶつかって弾かれる瞬間に手首を返しロープを引っ張る、それにより鍵爪は壁に上手く引っ掛かり固定される。
「いよっしゃ‼︎出来たぜ」
思わずガッツポーズを決めてしまうがそのくらいは良いだろう。
後は登るだけになる。クリスが言うには引っ掛かれば後は簡単だと言うが、なかなかどうしてこれが意外にも辛いのだ俺の筋力は支援魔法なしでは低く、この作業は殆ど腕の力に頼る事になるので上っている端から腕が疲れてくる。
「まあそればかりは慣れだから仕方ないよね。今日はこれを動けなくなるまで何回もやろうか」
「マジかよ⁉︎」
彼女曰く、まずは片手で何か出来るようにならなければいけないらしい。
「なあクリス、これ一体何の為にやってんだ?」
ふと疑問に思った、昨日の組手なら幾らか分からなくはないが今日のトレーニングはどこか別の意思の様な物を感じる。俺の知らない所で何か話が動いているんじゃないだろうか、心配になる。
「ふふ、勘のいい子は嫌いだよ」
彼女は悪い顔をしながら某悪役の台詞を吐いた。
「なん…だと⁉︎…で何なんだ?」
取り敢えず彼女のボケに反応し本来の目的を聞こうとする。
「いやいや、誤解があるようだけどこれも立派な基礎トレーニングだよ。今は腕が疲れていくけど、腕以外を代償的に使うと今度はだんだん下半身も疲れてくるよ」
嫌な気がするのは気のせいだろうか。しかし、彼女の言う通り腕に力が入らなくなってくると必然的に下半身を…つまり足を使って登りをサポートする形へとなってくる。こうやって徐々に疲れない使い方を実際に力が入らない状態を作り出して学んでいくらしい。
「大分動きが良くなってきたね、この調子なら私の助手も遠くは無いかもね」
体が慣れてきたのか、疲労困憊気味でクタクタだがスラスラと登れる様になり、ちょうど外壁の上を登っていいる時にクリスが独り言だろうか、何か言ったのかゴソゴソ声が聞こえる。
「おーい‼︎何か言ったか?」
外壁の上から大声で叫ぶが、彼女はなんでも無いと叫びかえしてくる。何なんだろうか?
外壁を登りきったので再び降りる。流石に限界なのか着地してから体が動く気がしない。
「もう無理だ〜クリス今日はもうやめにしよう」
尻餅をつき、両手を地面に降ろしもう出来ないと地面に寝転ぶ。
「だらしないな全くもう、君体力なさ過ぎ」
彼女は俺の頭上にしゃがむと不満げに俺の頭を突っついた。
「いやいや、アンタらの体力がおかしいだけだろ。俺は最低職の冒険者だぞ」
「そうやって逃げてるといつまで経ってもそのままだぞー」
「うぇ…結構痛い所突くなよ」
気にしている事を容赦無く抉ってくる彼女を尻目に空を見上げる。太陽の位置も大分降りてきているので大分この作業を繰り返している事になる。これだけやってまだまだとか一体この盗賊の訓練は何処のスパルタ体育会系だよ。
「それじゃ今日はここまで、どうせ魔王の幹部が近くに居てロクなクエストは無いんだから暇でしょ?」
「まあ、暇と言えば暇だけど俺にもパーティーがあるしな…」
彼女達を放って置くわけにはいかない。何だかんだ言って彼女達のパーティーは案外居心地が良いので、俺から失う方向に行くわけにはいかないのだ。
「別にパーティーより優先させろって事じゃ無いからね、今日みたいに空けられたらで良いよ」
流石の彼女も気を俺に使ったのか、あくまでついでと言ってくれた。
しかし、彼女には特に得は無いのに何故ここまでして俺の面倒を見てくれるのだろうか?只の善意なのか、それともこの後に何か要求されるのか?出来るのであれば俺に被害が少ない方向でお願いしますよ。
地面に体を預け風を浴びていると、心地良くなってきたのか睡魔に襲われる。
「あっちょっと⁉︎こんな所で眠らないでよね。全く君はしょうがないんだから…」
目を閉じ疲労感から微睡んでいると、上から彼女の呆れたような声が聞こえ、気付くと寝ていた。
目が醒めると、酒場に運ばれていたのか何時も食事をしているテーブルのベンチで横になっていた。
「痛たた…何でギルドに?」
ベンチから起き上がり、正面に座っている人に声を掛ける。一応ここまで運んでもらったのだからお礼を言わないといけない。
「君が寝ちゃったからここまで私が運ぶ事になったんだからね」
既に注文したのか、パスタの様なものを頬張りながら彼女は不満げに言った。
「何というか申し訳ないんだけど、それじゃあお礼に夕食奢るよ」
「お礼って、もともと君が奢る話だったよね」
オイオイ忘れるなよ、と言いたげに彼女のジーとした視線が俺に突き刺さる。
そうだっけ?教えてくれるっていうからハイハイ言ってたら、どうやら夕飯まで奢る事になっていた様だ。
「そうだった、そうだったな今日は俺の奢りだから一杯食べてくれ」
「まったく、君は調子が良いんだから」
バタバタしたクエスト漬けの生活から一変、ほのぼのとした俺のアクセルの街の生活が本格的に始まった。
「エクスプロージョン‼︎」
「今日はこんなに取れましたよ」
「今日は罠を設置したから躱すトレーニングしようか」
「…」
「エクスプロージョン‼︎」
「この草は何でしょうか…え⁉︎毒草⁉︎」
「よし、じゃあ君も罠を作って設置してみようか」
「…」
「エクスプロージョン‼︎」
「カズマさん、大体どの草が高いか分かってきましたよ‼︎毎晩頑張って夜なべして図鑑読んで復習してきました」
「今日は音を立てないで走ってみようか、慣れたらそこまで競争だ‼︎」
「…」
「エクスプロージョン‼︎」
「あれから何日も…めぐみんも大概よね…あっカズマさん、今日から薬草で何か調合してみますね」
「え?趣旨がずれてきてる?大丈夫大丈夫!このクリスさんを信じなさいな」
「…」
「エクスプロージョン‼︎」
「何故かスキルポーションが出来てしまいました…カズマさんもどうですか…ってめぐみん何するの!やめて!どうせ爆裂魔法につぎ込むんだから飲んでも無意味でしょ!」
「君最近やつれてない?大丈夫?それで今回はこのバラバラの荷物を持って音を立てない様に運んで行こうか‼︎」
「……」
「エクスプロージョン‼︎」
「この植物なんでしょうか?え、新種⁉︎」
「今日は隠れ鬼ごっこやろうか、私に見つからない様に幽霊屋敷の部屋に入って奥の部屋にあるこの目印を持ってきたら合格、安心しなよちゃんと許可はとったからさ」
「…」
「エクスプロージョン‼︎」
「あの草やっぱり新種だったみたいです…名前は私に因んでゆんゆん草になったそうで、詳しくはこの紙に書いてありますよ。え?花言葉?一応花が咲くみたいですけど、そこら辺は学者さんに任せてまして…多分この用紙に書いてありま…え?花言葉は…孤独⁉︎」
「今日はスティール合戦だよ‼︎前回は酷い目にあったけど今回は大丈夫、この石ころ達を見よ‼︎前回比数倍だよ。お互い交互にスティールを掛けて各自決めた当たりを引いたら勝ち。よしじゃあ君からどうぞ…え⁉︎何でこうなるのよ⁉︎パンツ返してー!」
「…」
「エクスプロ…」
「何なんだ‼︎この異世界生活はぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
こんな生活が何日も続いて来ると段々と気が滅入って来る、それになくなって来た貯金もゆんゆんの山菜と薬草の加工品などでむしろ逆に増えてきている。
「何ですかカズマ、一体この生活に何の不満があるのですか?爆裂魔法を放ち次の日も爆裂、ああ…幸せ」
「良くねえよ‼︎何だよこの生産性の無い日常は⁉︎俺達完全にゆんゆんのヒモじゃねえか‼︎ゆんゆんも何か思う事あるだろ‼︎いつまでも気を使ってないでたまには本音を…って何やってんだ?」
俺が心の叫びを上げている間にも、彼女は草むらや茂みに体を突っ込み何か山菜を毟っている。
「ゆんゆんも大分馴染んできましたね…服装も完全に農家の人みたいに…これはもうアークウィザードではなくアークハーベスターですね」
呆れた様にめぐみんは変わり果てた友人を見つめる。
「そう言ってやるな、俺達がこうして生きていけるのはゆんゆんのお陰だぞ」
一応山菜等の報酬は3人で分配する事になっているので、最初は少なかった報酬もゆんゆんの努力のお陰で分母が増え生活が回る位には財布に潤いを与えている。
「痛た…終わりましたか…て何でしょうか2人して私を見つめて?あ、安心してください!次新種を見つけたらカズマさんの名前を付けますので‼︎」
モゾモゾと茂みの隙間から出てきた彼女を見ていると何かを察したのか、見当はずれな事を言ってくる。
「そうじゃねえよ‼︎ああもう、取り敢えず中止だ‼︎難しくても安全が確保できそうなクエストに変更だ‼︎一旦ギルドに行くぞいいな‼︎」
マシンガントークの様に言葉をツラツラ続け彼女達に反論させない状態で無理やりギルドに引っ張っていく。
「ああちょっと‼︎まだ1日1爆裂が」
「そんなもんはクエストの時で充分だ‼︎」
「で、連れて来たのは良いのですが、一体何のクエストを受けるんですか?」
その後2人を引きずりながらギルドに戻ったのだが、俺は勢いに任せて行動を起こした事を後悔した。
「本当にロクなクエストが無いな」
掲示板には一撃グマの討伐や、マンティコアとグリフォンの討伐などの危険なクエストしか存在せず、どれもこの街の人達には荷が重く誰も受けずに残ってしまった物ばかりが貼り付けられていた。唯一マシなのはカエルの討伐だけだろう。
「よしゆんゆんも居るしカエルにするか‼︎」
前回は悲惨な目にあったが、今回はゆんゆんもいる事だし何とかなるだろう。
「カエルってあのカエルですか⁉︎私は嫌ですよ‼︎一度飲み込まれた事のある人にしかわからないと思いますが、あの生命を脅かされる感覚はもう二度と嫌ですからね‼︎」
ベリッと用紙を運ぼうとする俺の手をめぐみんがさせまいと全力で阻止する。
「クソ、こら離せ‼︎カエルが嫌だと言うなら何か代わりになるクエスト探して来いよ‼︎」
俺の腕を掴むめぐみんの腕をもう一つの手で引き剥がそうとする、だが相変わらず彼女の腕力は強く中々剥がれない。
「おい、ゆんゆんもめぐみんに何か言ってやってくれ」
互いの力が拮抗している以上この争いの先は見えている。なので此処は第三者に任せてしまうのが手っ取り早いだろう。
「いえ、あの私は皆さんと居られれば別にどちらでも良いのですが」
「こんな時に優柔不断になってるんじゃねえよ‼︎」
争いの間に入って欲しかったのだが、どうやら彼女では力不足らしい。
「いいから離せ‼︎スティールすんぞ‼︎」
仕方なしに強行手段の窃盗スキルの使用を仄めかす、流石にギルドのど真ん中ではクリスの一件もあってか使えないが、それでも脅し文句にはなるだろう。
「スティール?もしかして窃盗スキルの事ですか⁉︎こんな公共の場でそんなことしたら荷物のない私はスッポンポンになってしまうんですよ⁉︎よく考えてその手をしまってください」
俺の脅しが上手く作用したのかワナワナと震える。
「フヘヘへ…おいめぐみん、頭のおかしな子供から変態少女にクラスチェンジする覚悟は決まったか?」
空いている手をウネウネと動かしながらめぐみんに迫る。彼女はそれを体を逸らしながらうまく避けようとする。
「いえ、あのカズマ…よく話し合いましょう、人とは生物の中で唯一言葉を持つと言われている生き物なんですよ。それと私を頭のおかしい子なんて誰が呼んだんですか⁉︎」
めぐみん的にはスティールの脅威より名前を馬鹿にする事の方が気に触れるらしいのか、後半の語尾が強かった。
「お、おう…そうだな、でもしかしだな…カエル以外だとロクなクエストがだな」
一度放てば動けなくなるめぐみんの気持ちも分からなくは無いが、それでも俺の気持ちは変わることはない。
「緊急‼︎緊急‼︎冒険者の皆さんは武装態勢で街の入り口まで集まってください‼︎」
そんなこんなで揉み合っているとギルドの放送が流れる。どうやらまた厄介ごとが流れて来た様で、まだギルド内に居た冒険者達がせっせと装備を整え始める。前回のキャベツ狩りとは違いその表情は険しいものだった。
「緊急事態ってなんだ?またキャベツみたいな季節行事でもあるのか?」
「いえ、特にそう言うのはないですね。私もなんだかんだ言っても一年いるか居ないかくらいですので…」
めぐみんを押さえつけながらゆんゆんに聞くが、彼女は記憶にありませんと頬に指を当てながら記憶をなぞっている。
「取り敢えず行ってみますか?何かあるかもしれませんよ」
押さえつけられていた腕を外し、再びめぐみんは体勢を整える。
めぐみんの提案により、俺たちはできる限りの武装を行いながら街の正門前に向かう。そこには他の冒険者達が野次馬の様に集まり溢れ返っていた。
「で、結局何なんだ?」
最後尾に居た人に警報の理由を聞くと、どうやら噂で聞いた魔王軍の幹部がこの街の正門前に来ている様だ。
何でまたこんな辺境の地に?此処は駆け出し冒険者の集まるアクセルの街、特に幹部クラスの魔族が来る様な場所では無いはずだ。
「魔王軍の幹部ですか?カズマ、一目でいいので見に行きませんか?」
話を聞いていると、めぐみんが袖を引っ張りながらそう言った。彼女も魔王軍の幹部が気になるのだろうか?
「ゆんゆんも良いか?」
一応ゆんゆんにも確認する。彼女は別に皆さんが良ければと、特に反対では無いようだ。
すいません、と謝罪を繰り返しながら他の冒険者達の間を縫いながら進んでいく事数分、ようやく最前列に出ることができる。
「おお⁉︎」
表に出て魔王軍の幹部とやらの姿を見る。全身光の反射しないマッド加工の黒の鎧を身に纏い、本来あるはずの首が無く代わりに左手に自身のものだろう頭を携えていた。
「どうやら、これで大体揃った様だな。俺の名はベルディア、魔王の幹部をやらせて貰っている。今日此処にわざわざ来たのは聞きたい事があるからだ‼︎毎日毎日‼︎俺の城に爆烈魔法を打ち込んでいく頭のおかしい大馬鹿者は何処のどいつだぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
俺が来たタイミングが良かったのか、それとも何か別の理由があったのか、口を閉ざし沈黙を保っていた幹部が話を始める。
しかし、ベルディアと名乗ったデュラハンは自己紹介したと思ったら途中に怒りが抑えきれなかったのか、話の後半には叫び出した。