この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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お気に入り340人超えと誤字脱字の報告ありがとう御座います。とても助かっていますm(_ _)m
デュラハン‥ベルディア編という事で暫くシリアスで行こうかと思っていますので、暫く付き合って頂けると嬉しいです。


デュラハン襲来

魔王幹部ベルディアはいたくお怒りだった。めぐみんが爆烈魔法を打ち込んでいた城はどうやら奴の住んでいた城で、毎日住処が爆発される事にとうとう堪忍袋の緒がきれたらしくこうして報復しに来たのだろう。

 

「おい、この街に居るのは分かっているんだ、誰でもいい!そいつを此処に連れて来い‼︎」

 

奴の目的はめぐみんらしい、事態を荒波立てずに済ませるにはこのまま彼女を差し出せばいいのだが、何をされるか分からない以上無闇に差し出すわけにはいかない。半ば強制的に加入したとは言え彼女は俺の仲間である以上街の仲間を見捨てても助けてやりたい。

奴の発言に周囲の冒険者が騒めきだし、この街に在籍するウィザード達の名前が犯人探しの様に上がっていく。

このままだと不味いな…。

このまま行けば、街の人たちはやがてめぐみんに辿り着くだろう。そうなれば恐怖に支配された街の人達はめぐみんを厄介者の様に外に叩きだすだろう。

後ろのめぐみんに目を向けると彼女は杖を抱き締めながら俺の陰に隠れて震えていた。彼女が恐怖するのも仕方ないだろう、何時も威張っているがそれでも彼女は13歳、日本ではまだ中学生だろうしまだまだ子供なのだ。そんな子供がいきなり幹部の前に出て行くなど出来まい。

 

「あのカズマさん…取り敢えずめぐみんを宿屋に避難させます」

 

ゆんゆんはめぐみんの体を覆う様に隠す、このまま何処かに彼女を隠せればこの街に居ないと思い奴も去っていくだろう。

 

「違います私じゃ無いです‼︎」

そうこうしているうちに騒めきから魔女裁判に発展していき、特に何の害のないウィザードが犯人に仕立て上げられていく。このままいけば彼女が犠牲になるだろう、このまま彼女が犠牲になるのは心が痛むが、だからっと言ってめぐみんを此処で差し出すわけにはいかない。優先度を考えればこうなってしまうのは仕方がないのだ。

 

「あっめぐみん⁉︎」

 

ゆんゆんの声が聞こえたと同時に黒い影が俺の前を過ぎった。どうやらゆんゆんの制止を振り切って前に出てしまった様だ。

 

「なんだ小娘、俺が探しているのは爆裂魔法の使い手だ。お前見たいな子供は危ないから家で大人しくしておけ」

 

めぐみんが奴と相対する。しかし奴は彼女の事が眼中には無いようで、まるで子供をあやす様に優しく話しかける。魔王軍の幹部なのに根が良いのだろうか?

 

「我が名はめぐみん‼︎紅魔族一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操る者‼︎おい、そこのデュラハン、あまり私を馬鹿にしないでほしい‼︎」

 

バサッとマントを翻しながら、彼女は決めポーズを取る。こいつは相変わらずブレないなと思いながら事態がややこしくなる前に彼女のもとに向かう。

 

「ほう、お前は紅魔族だったのか、成る程そのふざけた名前も頷ける」

 

やはり、変な名前に関する認識は人間も魔族も共通なのか、奴も紅魔族と言うワードに納得してしている。

紅魔族とはそこまでおかしな種族なのだろうか?もし機会があるなら一度行ってみたいところだ。

 

「つまりあの毎日行われる傍迷惑な爆裂魔法はお前の仕業だったのか?」

 

確認の為か再び奴はめぐみんに問いただす。

 

「私の名前に文句があるなら聞こうじゃないか‼︎…確かにあの爆裂魔法は私が放ったものだ、しかしお前はこの崇高な爆裂魔法を迷惑と言った‼︎その考えをこの場で改めてもらおうじゃないか‼︎」

 

どうやらめぐみんは恐怖で震えていたのでは無く、爆裂魔法を否定された事の怒りで震えていた様で彼女の口から聞き慣れたフレーズが聞こえ始める。

 

「な…なんだ⁉︎」

 

突如巻き起こった魔力の奔流に奴も驚いたのか背後に仰け反る。

 

「おいおいおーい⁉︎待てやコラ‼︎こんな所で爆裂魔法をぶっ放そうとすんなよ‼︎」

 

何とかギリギリ間に合いめぐみんの口を手で塞ぐ。こんな所でそんなものぶっ放されたら奴どころか俺達まで巻き込まれかねない。

口を塞がれた彼女は不満なのかバタバタと暴れ回る。何でこいつはこんなに喧嘩っ早いのか。

 

「ビ…ビックリした…兎に角‼︎俺の言いたい事はもう爆裂魔法を使うなと言う事だ。流石に俺もこんな低レベルの人間達に危害を加える程落ちぶれてはいないからな」

 

それを聞いて安心する。奴はあくまで止めに来ただけで特に復讐しに来た訳では無いらしい。奴も幹部ではあるが騎士道の様なプライドでもあるのだろうか?とにかくこの場をこのままやり過ごし、爆裂の場所を変えれば解決だ。

 

「嫌です」

「なんだと?」

「嫌だと言ったのです」

 

これにて一件落着と思っていたが、彼女はそんな事お構いなしに拒否した。それを聞いたこの場に居た人…魔族も含め全員が驚愕した。

 

「何言ってんだ、お前は馬鹿か⁉︎」

 

思わず声を荒らげる。この一つ間違えれば殺されかねない状況で、しかも奴も口頭注意で済ますなどかなり譲歩されたこの状況で一体何を口走っているのだろうか?

 

「私も最初は何でもよかったのですが、あの城を爆破する度に段々と…何というかあの硬さが癖になってしまいまして」

 

彼女は恥ずかしいそうにモジモジと体をくねらせ頬を赤く染めた。

 

「何故照れる、てかモジモジすんな!」

「良いでは無いですか‼︎私は意見を変えるつもりはありませんからね‼︎」

 

彼女も強情なのか中々意見を変えない、もう少し素直になってくれれば可愛げがあるのだが…

 

「考えを変える気が無いのならこちらにも考えがある」

 

スゥっと奴は腕を持ち上げ指をこちらに向け、ブツブツと何かを呟いたと思ったら指をめぐみんに向ける。

 

「貴様に死の宣告を」

「え?」

 

めぐみんの拍子抜けた声が聞こえた後、ドンっと彼女の姿がバグったテレビの画面の様にブレる。

 

「大丈夫かめぐみん⁉︎」

 

膝をついて呆然としている彼女に近寄る、見た感じ彼女に見た目に変化は無いことから外傷はない様だが、彼女は自分が何をされたか気づいている様で青ざめている。

 

「ほう、流石は紅魔の娘だな。俺に何をされたか分かっている様だな。そうだ、貴様には死の宣告をかけた、これにより貴様の寿命は残り1週間になった」

 

奴は満足げに頷くと踵を返し、またあの城に帰ろうと遠くに止まっていた首なし馬の方に向かおうとする。

 

「もしこの呪いを解除して欲しければ、あの城まで来ると良い。もし、私の部屋まで辿り着く事が出来れば解いてやろう」

 

フハハと高らかに笑いながら奴はのそのそと歩いていく。

俺は何も出来ずにいる自分に嫌気を感じながら、只々その背中を眺めていると、突如その背中目掛けて光の柱が振り落とされた。

 

「ライト・オブ・セイバー」

 

静かだと思っていたゆんゆんはどうやら小声で詠唱をしており、奴の死の宣告に間に合わなかったが撤退前には間に合った様で、上級魔法の光剣で奴の背後から切りかかった。

 

「行けゆんゆんそのまま奴を消してしまえ‼︎」

 

思わず声が出る。

 

「ぐっ…上級魔法か、しかもかなりの出力だな。しかもその目貴様も紅魔の娘か、ほうなかなかどうして…こんな街に居るのはレベルの低い雑魚だと思ったが違ったらしいな」

 

ゆんゆんが放った光剣は一切のブレなく一直線に奴のもとに向かって振り下ろされたが、奴はそれを難なくといつの間にか持っていた大剣で受け止める。

軽く受け止めてみせる奴に対して、ゆんゆんは上級魔法を放出し続けているためその表情は苦悶の表情に満ちて行っている。

 

「ゆんゆんでも駄目なのか」

 

正直心の何処かでゆんゆんが居ればどうにかなると思っていた。しかし、現実はそうではなく魔王軍幹部ベルディアは易々とゆんゆんの魔法を防いでいる。このままいけばジリ貧で先に彼女の魔力が尽きるだろう。

受付嬢曰く、彼女のアークウィザードとしての実力はこのアクセルの街では右に出るものはいないと言われてる。もし、彼女が何か理由があって本気を出していないのであればまだ期待が持てるが、彼女の表情がそれを否定する。

 

「どうした、もう1人の紅魔の娘よ‼︎貴様の力はそんなものか?」

 

奴は大剣を斜めにしてゆんゆんの光剣を逸らす。だがそれをゆんゆんも読んでいたのか、光剣のつば競合いの最中に次の魔法を詠唱しており、間を空けずして次の魔法が放たれる。

 

「ライトニング・ストライク」

 

奴を起点として魔法陣が現れ、そこに一筋の落雷が落とされる。

 

「ぬん‼︎」

 

奴は大剣を上に持ち上げると、それが避雷針がわりになったのか落雷の魔法がそこに着弾する。そしてそのままの体勢で大剣を構え彼女の方まで向かって行く。

 

「フフフ、久し振りに楽しめそうだな、紅魔の娘よ」

 

彼女との闘いで昔の記憶でも思い出したのか、奴のやる気はオンになってしまっている。奴にやる気を出させ城に引き込ませる前にこちらで戦闘を始めた事は僥倖だが、奴に勝つにはあまりにも戦力が不足している。せめて彼女と同じクラスの前衛が数人必要だろう。

 

「くっ…ライトニング‼︎」

 

上級魔法を弾き、再び距離を詰める奴に対して、彼女は中級魔法で距離をとろうとする。

初心者殺しの時もそうだが、上級魔法は詠唱に時間が掛かるので、こうした即興で発動するには中級魔法になってしまうそうだ。本来普通のウィザードであれば中級魔法にも詠唱は必要だが、レベルか熟練度か何かのファクターにより彼女は中級魔法を無詠唱で放つことができるそうだ。

 

「残念だったな、この程度の魔法なら軽く避けれるわ‼︎」

 

スススっと奴は走りながらそれを躱す、流石は魔王軍幹部、幾つもの歴戦を潜り抜けたのだろうその実力は、俺達の想像を遥かに上回る。

 

「間に合え‼︎」

 

気付けば俺はめぐみんを放置して彼女のもとに走り出していた。例え彼女がこの街最強のアークウィザードだったとしてもあくまで役割は後衛で、それで前衛なしで魔王軍幹部とやり合える訳は無いのだ。

めぐみんが大事ではない訳では無いが、彼女も大切な仲間なのだ。例え俺が最低職の冒険者だとしてもやれる事はやりたい、それで二度目の死を迎えてでも。

速度上昇などの支援魔法を掛けれるだけ掛けながら全力で走る間にも、彼女は中級魔法で応戦している。だが上級魔法より出力も射出速度も劣るので奴に躱される。このままでは彼女は奴に切り掛かられ俺は二人のパーティーメンバーを1日で失ってしまうだろう。

 

「間に合ったぁぁぁぁぁ‼︎」

 

彼女が奴の間合いの中に入ったと同時に俺も彼女と剣の間に割り込むことに成功する。この瞬間、クリスには感謝してもしきれないと思いながら腰の剣を引き抜きベルディアに向けるのではなく、奴の剣と俺の間に滑り込ませる。

 

「カ、カズマさん⁉︎」

「何だと⁉︎」

 

突然の割込みに2人とも驚きの声を上げる。上級者同士の戦いに俺みたいな雑魚が間に入るだなんて思ってはいなかっただろう。何の警戒もなくすんなりと近づけた。

そして俺の目論見通り奴の大剣は俺の剣に当てられる。悔しいが冒険者の俺にはそれを止め切れる程のステータスはなく、踏ん張りも虚しく彼女を巻き込みながら横に吹っ飛ばされる。

 

「きゃ⁉︎」

 

彼女の小さな悲鳴と共に地面を転がる。全身打撲で後々痛いだろうが大剣で真っ二つにされるよりは良いだろう。

 

「ほう、他にも勇敢な冒険者が居たのか、だが見た感じのレベルは低い様だな、悪い事は言わないお前はそこの震えている紅魔族を連れて帰ると良い」

 

奴から見て俺は相手にする価値の無い雑魚として判断された様で、奴は俺を一瞥すると再び彼女に視線を戻した。

だが、そこでありがとうございますと踵を返して帰るわけには行かない、このままではめぐみんの命は残り一週間のまま変わらず彼女は恐怖に怯えながら残りの時間をただ死を待つだけになってしまう。

 

「悪いが俺にも秘策はあるんでね…」

 

よっこらせ、と重たい体を起こす。後ろにいるゆんゆんも立ち上がり俺の後方に隠れる。

魔王幹部と言っても所詮はアンデッド、ならばこの魔法が適任だろう。しかし低級の退魔魔法なので効かない可能性もあるが、少なくとの足止めにはなるだろう。

 

「喰らえ‼︎ターンアンデッド‼︎」

「ほう」

 

俺の掛け声と共に奴の足元に魔法陣が展開し、奴を包む様に光の柱が立ち上がり収束する。まさかシスターから教わった魔法がこんな所で陽の目を浴びるとは思わなんだ。

しかし、本来であれば光の柱が立ち上がりアンデッドなら浄化されているのだが、奴はまるで問題なしと言わんばかりに先程と同じ様に突っ立て居た。

 

「何⁉︎おいゆんゆん何で効いてないんだ?やっぱりレベルが低いからか?」

 

確実ではないとは思ったがそれでも相手はアンデッド…多少は効果があると期待してたが、それは呆気なく裏切られ、俺は動揺しながら彼女に問いただす。

 

「さあ、分からないですね…私はプリーストの魔法にそこまでは詳しく無いので…」

 

先程まで激戦を続けていた為か、息を切らしながら彼女はそう言った。

彼女も分からない事があるのかと驚く。いや今まで聞いていたのは大体この世界での常識だったので答えられただけで、本職はアークウィザードなので他の職業の事はからっきしだろう。

 

「フフフ、残念だったな、俺は魔王軍幹部だぞ退魔魔法の対策くらい立てていないとでも思ったか?」

 

奴は自慢したかったのか親切に説明し始めた。どうやらあの鎧は魔王から授けられたもので、退魔魔法に対する効果があるらしい。つまり本来の正攻法は通じない事になり、他の弱点を見つけるか単純に威力の高い攻撃を当てるなどの泥試合を展開させないといけない事になる。

 

「だが、今の貴様の一撃は何故か少しだが痛かったな、低レベルの冒険者の退魔魔法が今の俺に効くとは思え無い、僅かだが貴様は女神の関係した何かが混じっているな」

 

どうやら俺には何かあるらしい、しかし女神と言えばあの人格破綻者くらいしか心当たりは無いがこのチートが関係しているのだろうか、それともこれとは別に何かあるのだろうか?

 

「ふ、このままお前達を始末するのは容易いが、俺も久しぶりに楽しませて貰ったからな…礼に明日この時間にもう一度来てやろう。その時は私も部下を引き連れてくるからな街の者達全員で向かってくるが良い、後もし詰まらん事になったら俺がわざ

 

わざ来てやった事に対しての不敬罪でこの街の住人を皆殺しにするからなハハハハハ‼︎」

奴はこの戦いで満足したのか、大剣を背負いそのまま首無し馬の方に向かって行った。

 

「おい待てよ‼︎まだ終わっちゃいねえぞ‼︎」

 

剣を再び構え奴に立ち向かう。あまり使いたく無かったが隙を見て黒炎を放てばまだ勝機があるかもしれない。まだ制御は出来ないがそれでも奴にダメージを与える事は出来るだろう。

それを聞いた奴は、はぁ、と溜息を吐きながらしまっていた大剣に手を伸ばす。

 

「何を勘違いしているのかわからんが、俺は見逃してやると言っているんだ」

 

一瞬だった。奴の大剣は俺の目視出来るスピードを遥かに上回る速度で振り下ろされ、気付けば眼前に切っ先を向けられていた。

 

「…っ‼︎」

 

動けば殺す。奴の剣先はそう告げるかの様に俺の首に迫る。

何もかもが規格外だ、先程までゆんゆんが苦戦していた理由がよく分かる。もしこれがゲームなら負けイベントだが、悲しくもこれはゲームでは無い紛れも無く現実で、負ける即ち死あるのみである。折角の黒炎も当たらなければ意味が無いのだ。

 

「フン!分かればいいのだ、ではさらばだ‼︎」

 

俺が動かない事を確認すると奴は再び首無し馬に跨り、あの城へと戻って行った。

奴の姿が見えなくなった事を確認すると、気が抜けたのかヘナヘナ膝から力が抜け地面に膝をつく。そして後ろにいた彼女が此方へと歩み寄ってきて。

 

「カズマさん、助けてくれてありが…」

 

話の途中で魔力切れを起こしたのか、バタンと彼女はそのまま地面に倒れた。無理もないあの化け物相手に一人で応戦したんだ、生きていただけでも勲章だろう。

それにあの状況で奴に立ち向かっていたら彼女は魔法を唱えられないので本当に俺達は殺されていただろう。本当に功に焦らなくて良かったと心の底から思った。

後ろを振り向くと、入り口にいた他の冒険者達は奴が帰ったタイミングだったのか、入り口には誰も居なかった。

誰も助けは無いのかとモヤモヤした気持ちでゆんゆんを拾い上げ、そのままめぐみんのもとに向かう。

 

「…」

 

死の宣告を受けた時からその場を離れずにめぐみんは自身の杖を抱き締めながら震えていた。

 

「おい取り敢えず帰るぞ、ここに居ても何も変わらないし意味無いと思うんだけどさ」

「…」

 

返事はない、何時も偉そうで騒がしい彼女がこうもだんまりだと一緒に居る此方も調子が狂う。

それも仕方ないか、彼女の寿命は奴の死の宣告により残り1週間になってしまっている。自業自得とは言えいきなりそんな事を突然言われれば誰でも言葉を失うだろう。

 

「ブレイクスペル」

 

取り合えず解除魔法を彼女に向けて放つ。この程度のレベルでは解除できないと思うが念の為に掛ける。もしかしたら何かが変わるかもしれない、奴が言うには俺には何かしらの加護があるらしい、ならこの解除魔法にも何かしらの変化があるかもしれない。

俺が唱えたと同時に彼女が淡い光に包まれる。本来であれば此処で彼女の体から呪いや状態異常が抜け出すが、やはり奴の呪いは強力なのか彼女の体から黒い影が浮き出てきて解除の光を打ち消してしまった。

 

「やっぱり俺じゃ無理か…」

 

分かっていたが、それでも実際に突きつけられると心にくるものがある。けれどもそれで大丈夫とはならない、こうしている間にも彼女の生命は一刻と死に向かっているのだ。

 

「すいませんでした…」

 

そんな俺の表情から何かを読み取ったのか、ボソッと彼女は謝罪する。表情は俯いている為よく分からないが、その声は掠れてしどろもどろだった。

 

「気にすんな、安心しろ奴は明日また来てくれるらしいから、その時に倒せば良いさ」

 

ボスッと彼女の帽子を押し付けグリグリする。

 

「何するんですか⁉︎この帽子はもう売って無いんですよ ‼︎それにゆんゆんが居て駄目だったのですよ‼︎無理に決まっているじゃ無いですか‼︎」

 

彼女は抗議する為に起き上がる。その顔はまだ悲しみに満ちていたがこのままここで腐っているよりは良いだろう。

 

「まだ諦めるには早いぞ、一旦ゆんゆんを寝かせたら来てもらいたい場所がある」

 

まだ可能性が無い訳では無いのだ。俺が駄目なのはしょうがないが、それなら他の者に頼めば良い話になる。こいう時のために人脈と言うものがある、正直あの人には頼りたく無いが背に腹は変えられない、やるしか無いのだ。

 

「一体それは何処でしょうか?」

 

それを聞いた彼女は不思議そうに俺の顔を覗き込んだ。

 

 

 

 

その後ゆんゆんをめぐみんと共に宿に運ぶ。いつもなら爆裂魔法を撃ち込んだめぐみんをゆんゆんと運んでいるのだが、それが逆になるとそれはそれで違和感を覚える。

 

「で、ゆんゆんを運んで次は何処に行くのですか?」

 

若干放心状態の彼女を連れて何時もの教会に向かうと説明する。あそこには性格に難があるが腕は確かなアークプリーストが在籍している、あのプリーストならもしかしたら彼女の呪いを打ち消す事ができるかもしれない。

永遠に思える道のりを歩き教会に着くと、久し振りに入り口の大きなドアを開ける。そこには前と同じように嫌味ばかり言うアークプリーストが立っていた。

 

「もう来るなと言ったのですが、やはり来ましたかポンコツ冒険者よ」

 

彼女は澄ました表情で俺たちを迎え入れる、なんだかんだ言って彼女も神に仕える身なのだろうか、こう言う時は律儀だ。しかし言葉は汚いがな。

 

「やはりって何か知っているのか?」

 

彼女の言葉が耳に残った、やはりと言うことは事前にこうなる事を知っていたのか?それとも俺の知らない間に別の話が進んでいたのか?

 

「先程クリス様がいらっしゃって、そこの紅魔族の子が呪いに掛かるので解いてやってくれとおっしゃられて幾らか寄付をされていきました」

 

どうやらクリスが先回りして話していてくれた様で、シスターに1から話す手間が省ける。

 

「そうか、後でクリスに礼を言っておかないとな」

「そうですね、まああなたの場合その命をもってしても感謝しきれないでしょうがね」

 

彼女の嫌味は相変わらず絶好調だが、今はそれの嫌味も聞いて安心する。

では此方へ、とめぐみんを何時もの部屋へと案内し部屋の真ん中の椅子に座るように指示する。そして座っためぐみんを彼女はジーと見定めるように見つめる。

 

「かなり強い呪いですね、ただ見ただけでも此方にも何かしらの飛び火が飛んできそうなそんな感じです」

 

彼女から見ても奴の呪いは強いようで、先程までの自信も少し薄れてしまったようで言葉が弱くなっていく。

 

「あの…私は助かるのでしょうか?」

 

それを聞いて不安そうにめぐみんは彼女に問いかける。

 

「めぐみんさん、全ての事柄に絶対などは存在しません。なので私は絶対や完璧などそのような言葉を貴方に掛けて安心させる事は出来ません」

 

彼女の心情なのだろうかそれとも信念か、下手な優しさを与えてから落とすような事はしないと彼女が気休めの言葉を掛ける事は無いのだろう。

 

「ですが、だからと言って私は手を抜く事ありません。これはエリス様の名に懸けて頑として誓います」

 

彼女らプリーストに対して自身の信仰する女神の名前を出すと言う事はそれ程の事なのだろう。彼女の決意を感じる。

 

「では、行きますよ。少し覚悟していてください」

 

それから彼女はブツブツと詠唱を唱え始める。やはりアークプリーストなのか、彼女の詠唱はまるで歌でも聞いているかの様な気分を連想させる。

 

「セイクリッド・ブレイクスペル」

 

彼女が魔法を唱えると同時に、めぐみんを包むように魔法陣が展開されるとそこを起点に淡い光が現れ包み始めた。

その神々しい光景に思わず声が漏れる。だが途中からその神聖な光はめぐみんの体から現れた黒い靄により阻まれ消滅する。

 

「何て強さなの…」

 

自身の魔法が通じなかったのか、再びブレイクスペルを掛けるが全て黒い靄に阻まれる。

しかし彼女もアークプリースト、この程度では諦めず詠唱に新たな節を加えるなどの離れ業などを繰り返しながら試行錯誤する。

 

「御免なさい…私の手には負えないですね」

 

何度目だろうか長い時間続いた解除作業もやがて諦めたのか、彼女はばつが悪そうな顔でめぐみんに謝罪する。そしてその後に俺に謝罪した。

 

「やっぱり、彼女程の方でも無理なら私はもう駄目みたいですね…でも良いんです、これは今まで爆裂魔法にかまけて来たバチなのですよ」

 

めぐみんは諦めた様に上を向くと耐え切れなくなったのか、その瞳から涙が溢れる。

 

「ちょっと待てよ、あんたがダメなら司祭でもいい他のプリーストを呼んでくれよ。金ならここに100万エリスあるんだ、なあ頼むよ」

 

気づいたら俺は彼女に掴みかかっていた。自分でもこんな事をするのかと思ったが今はそんな自己分析をしている場合では無いのだ。

 

「すいません、今現時点でこの街に在籍しているプリーストの方の中で最もレベルが高いのは私です…こんな形で自慢と言う訳では無いのですが、私が出来なければもう他の方でも無理なんです‼︎」

 

それに他の場所から呼ぶにしても一週間以上かかりますと付け加えられる。

 

「だったらなんでも良い‼︎他も方法は無いのか?どんな汚いことでも良い、最悪犯罪に手を染めても良い‼︎その為なら何でもする…なあ頼むよ…」

 

ここが公共な場所だと言うこと忘れながらも叫ぶが最後には弱々しく彼女に縋り付く様に彼女に問い掛けた。ゆんゆんの時もそうだった、心の何処かで俺より優れた誰かが最後にはどうにかしてくれると本気で思っていた。しかし現実は非情でいざ本当に困ったら誰も助けてくれる事は無いのだ。

 

「カズマもう良いです、その気持ちだけで私は充分です」

 

彼女を掴んでいた腕を止める様にめぐみんが割って入る。その顔はもう諦めたのか穏やかだった。

 

「御免なさい、私にはその呪いを解く方法は分かりません。あるとしたら、その術者を倒すか交渉するしかないでしょう」

 

彼女は俺から距離を取ると、そう言いながら部屋を後にする。せめて残りの時間に悔いがない様にと、最後にそう言い残して。

 

「なあ、めぐみん…お前はそれで良いのか?」

 

部屋に二人取り残され、彼女に問いかける。

 

「私は誰かにそこまで思って頂けたのでもう良いのです。爆裂魔法に生きそして爆裂魔法が原因で命を失う、これがきっと私の求めた爆裂道なのですよ」

「だけどよそれじゃ…」

「カズマ‼︎私はもう良いと言いました、なのでこの話はもうお終いです。それよりもお腹が空きました、ゆんゆんは居ませんが食事にしましょう」

 

まるでがん患者の様な死を悟った表情で話す彼女に対して俺は諦められずに話を続けようとしたが、それは彼女の声に一喝される。

流石にこれ以上は彼女の為にはならないだろう。ここは仕方なしにと彼女の提案を受け入れる事して教会を後にした。

 

 

 

 

酒場に向かう。互いに何も話さずに中に入ると酒場では何か話し合いをしているのか人が中央に集まっていた。

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