この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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やっぱりめぐみんに死の宣告は不味かったですかね…。
ベルディア編も長くなりそうなので応援も願いしますm(_ _)m


デュラハン襲来2

酒場の中に入ると、ガヤガヤと中で作戦会議をしているのか騒がしかった。

どうやら明日この街に来る魔王幹部ベルディアの迎撃に関して意見交換を兼ねて作戦会議をしているらしい。意見交換というのも纏める人が居ない為か雑談みたいに芯の無い状態で纏まりが無く正直意味があるのかと言う感じだ。

あまり関わりたくは無かったが、今回の件はめぐみんが原因で起きた件なので罪悪感を覚え、夕食はテイクアウトして帰ろうと思ったがそれをせずに酒場の端っこに彼女と座りこの集まりの行く末を見る事にした。

 

「さあカズマ、ゆんゆんは居ませんが夕食にしましょう」

 

注文した料理が手元まで配膳されると、彼女は何処か乾いた笑みを浮かべながらいただきますと食事を始める。彼女とは違い俺は気が落ち着いていない為、その彼女とのギャップの差に調子が狂わされながら食事を始める。

グダグダと話が続いていており食事を続けながら聞き流していたが、その流れは酒場にある人物が入る事で切り替わる。

青い鎧に茶色い髪、俺の故郷に通じる顔立ちに腰に下げられた煌びやかな剣。彼を見て俺と同じ立場の人間だと直感する。多分俺よりも早くこの世界にやって来て俺以上に上手く立ち回っているのだろう。背後には槍を持ったのとダガーを持っている二人の女性を連れている。

 

「なあ、めぐみんはあいつのこと知っているか?」

 

彼が来たことで周りの空気が一変したので多分有名な人なのだろう、ならばめぐみんも知っている可能性がある。

えーと彼女は食事を一旦やめ興味なさそうに彼を視界に入れ眺めた。

 

「あの人との面識はありませんが、名前は確か…ミツラギでしたっけ?たまにああ言うカズマみたいな異国から来た人が居て何故か特別な武器か魔法を持っていますね。そう言った人達を我々は勇者と呼んでいます」

 

念のため確認したのだが、どうやらこの世界の転生者は特典を未だ使いこなせない俺とは違い、女神から貰った能力で皆成り上がっているらしい。当然といえば当然の話なんだが…なんでこう上手くいかないんだろう俺の人生。

貰うべき能力を間違えたかな、と考えているとどうやら例のミツラギが酒場の奥に進み場を仕切り始めた。

やはり勇者と呼ばれるだけあってか周りの信頼は高く、皆なんの抵抗も無く彼を受け入れベルディア迎撃の話がようやくまともな話になりだした。

 

「話は聞いたよ、魔王軍幹部のベルディアが明日このアクセルの街に攻めて来るそうじゃないか。でも安心して欲しい!あの魔王軍幹部はこの僕がいる限りこの街に危害が加えられないと約束しよう‼︎」

 

彼の宣言と共に周りの人達が活気付く。中には彼を盲信しているのか叫び声で名前を叫んでいる者までいる。ん?ミツルギって…

どうやら彼女が言った名前は違って正確にはミツルギらしい。あいつが居なかったら恥をかく所だったと胸をまで下ろし安心する。

 

「違うじゃねーか‼︎」

 

小声で彼女に抗議する。

 

「そんな事言われましても、私もうろ覚えだったので仕方ないじゃ無いですか。それに私は爆裂魔法以外の事に興味はありません」

 

キッパリと言い切る。

 

「それでだ、まずは状況を知りたい。誰かあのデュラハンの情報を知っている者は居るかな?」

 

まずは情報収集なのだろう。深く関わったのは俺達だがあの戦いを見ていた観客は他にもいるので此処は名乗りを上げなくても大丈夫だろう。

 

「それならそこに居る奴に聞けば良いだろう、そいつが全ての元凶なんだからよ」

 

たまっていた人達のうちの一人が此方を指差し、集団の目線が一気に此方に集まりなんとも言えない沈黙が生まれた。

仕方ない。いつもの平常運転時なら兎も角、今のめぐみんに説明させる訳にはいかないので代わりに説明する為に立ち上がった。

その時だった。

 

「この女‼︎こんな所に居やがったのか‼︎お前のせいで俺達は散々な目にあったんだぞ ‼︎」

 

奴の発言により、端でコソコソしていた俺達の存在に気づいたのか集団の一人、多分見た目から商人だろうか。そして、これは俺の予想だが、魔王軍幹部に狙われた街というレッテルを貼られてしまい商談などが白紙になってしまったのだろうか。その一人がめぐみんに向かって手元にあったコップの様な何かを彼女に向かって投げた。

奴の投げたコップは綺麗な放物線を描きめぐみんの頭部に激突し、頭皮を切ってしまったのか彼女の頭から血が一筋額から流れた。

 

「おい大丈夫か⁉︎」

 

とっさに椅子から立ち上がり、彼女の元にまわり血を紙ナプキンで拭き取る。

 

「そうだ、お前が毎日あいつの城に爆裂魔法なんか撃たなければこんな事にはならなかったんだ‼︎」

 

さっきの投擲がきっかけとなり、周りに居た他の人達も彼女に向かって物を投げ始める。ミツルギは奴らを静止させようと声を掛けているが周りは聞く耳を持たない。こうなってしまったらもう手がつけられない、ここは撤退と行きたいが今この席を離れて動けばいい的になりかねない。幸いにも此処は端の角席なので一方向から飛んでくるだけで済んでいる。

これ以上彼女に物が当たらない様に、防御力向上の支援魔法を掛け抱きかかえる様に庇う。ゴツゴツと背中にコップや皿等が激突する。

 

「大丈夫ですよ、これは私の行動が招いた結果です。カズマまで傷つく必要はありません」

 

俺の腕の中でスッポリと収まっている彼女は淡々とそう言った。彼女はもう諦めているのだろう、余命一週間を突き付けられ、親友を失い掛け、魔王幹部を倒すという試練を目の前にして彼女は悟りを開いたのでは無く、単に心が折れてしまい、もう何もかもどうでも良くなってしまっているのだろう。

 

「でもな…一応だけどなお前は俺のパーティーのメンバーである以上、俺には守る義務があるんだよ」

 

ビクッと彼女が反応した気がするが、この体勢だと顔が見えない。さて彼女はこのまま守るとして、この後はどうするかだ…

 

「もう大丈夫ですよ。私もパーティーの一員ですからね。他のメンバーに迷惑を掛けない様に考えを改めないとですね」

 

ふふっと彼女は笑いながら俺の手から抜け出す。幸いにも周りはミツルギの静止のお陰かもう物を投げるのを辞めて彼女の行動を眺めている。

 

「皆さん私の爆裂魔法で結果的に迷惑を掛けてしまい、本当にすいませんでした」

 

あの変にプライドが高いめぐみんが皆の前で頭を下げた。彼女の強気な性格はこの街の誰もが知っていた為か、皆驚きが隠せないのかオロオロと動揺している。

よし、この流れなら行けるだろう。人間自身の予想の範疇を超えた事が起きた時は感情がリセットされるらしい、であればこのまま話し合いに戻せば大丈夫だろうと、ミツルギにアイコンタクトを送ろうとしたその時だった。

 

「何がすいませんでした…だ⁉︎ふざけるな‼︎俺は謝罪が欲しいんじゃね‼︎一週間で死んじまうお前と違ってなこっちにはこれから先があるんだよ‼︎」

 

ビュンと奴が持っていた鉄の様な硬いコップが頭を下げて無防備なめぐみんに激突し、彼女はそのまま膝をつきぶつかった頭を抑え蹲った。

 

「テメェ‼︎ふざけんじゃねぞ‼︎」

 

プツンと俺の中で何かが弾けた。奴の気持ちも分からなくもないし、アルコールで酔っ払っての行動だとも理解できる。だが、だからといってここまでしていい理由にはならないだろう。

彼女にヒールを掛け、腰の剣を抜き奴に向かって摑みかろうと前に進む。

 

「ま…待ってくだ…さい、私は大丈夫…ですから…」

 

彼女が痛みで震えながら、俺を止めようと手を伸ばすが、それが俺に届くことはなく。

 

「なんだお前やる気か⁉︎いいのか?冒険者が俺みたいな街の住民に手を出してもいいと思っているのか‼︎」

 

まさか向かってくるとは思わなかったのだろうか、奴は腰を抜かしながら俺から逃げようとうしている。

 

「どうでもいい」

「なんだと‼︎」

「もうなんだっていいって言ってんだよ」

 

この世界の法律がどんなものなのかは知ったこっちゃねぇ、今は彼女の覚悟を踏みにじったこいつをどうにかしてしまわないと、気が狂ってしまいそうだ。

後ろのテーブルに引っかかったのか、奴はそれ以上後ろに退がれずに困惑する。

 

「くそ‼︎来るな‼︎こっちくんじゃねえ‼︎おい誰か居ねえのか、ここは冒険者の集まるギルドじゃないのか‼︎」

 

人望が無いのか、それとも先程の自身の行った行為言動に対して皆思う事があったのか誰も俺を止めるものは現れず、奴の前に相対する。

異世界でも人間は変わらないんだなと、ぼんやり思いながら奴を蹴り飛ばし、持っていた剣を振り上げる。

 

「やめ…やめろ‼︎」

「じゃあな、あの世でまた会おうぜ」

 

逃げない様に奴の足を踏みつけ、そのまま剣を振り落とした。

 

「あ?」

 

しかし、俺の剣は奴に当たることはなく、光輝く魔剣とやらに止められる。

そう、ミツルギが間に入って割ってきたのだ。そして奴は気絶したのか、ピクピクとミツルギの後方で痙攣をしている。

 

「おい退けよ、偽善者」

 

一度後ろに下がり体勢を立て直す。ここまで来て引いてしまっては、ただでさえクライシス気味な俺のプライドと今後のめぐみんの立場に関わってくる。

 

「一旦落ち着きなよ、頭に血が登るのは分かるがここは引いて欲しい」

 

ミツルギは剣を鞘に収め俺に対して敵意が無いことをアピールし頭を下げた。

確かにここは彼が顔を立ててくれた事に感謝して引くべきだが、それでは俺の気が治らない。俺のパーティーメンバーに危害を加えておいてのうのうと生きている事が今の俺にはどうしても許せなかった。

 

「うるせえ、退けって言っているんだ」

 

彼の言う通り頭に血が上っていてまともな判断が出来ていないのも理解している。それでも奴の行為は俺の中では許されるものでは無いのだ。

 

「分かった、じゃあこうしよう」

 

ミツルギは頭をあげるとキッと此方を真剣な眼差しで見ると

 

「僕が代わりに君と戦おう。もし君が勝つ事が出来たらこの人を好きにするといい、だがもし君が負けたらここは潔く退いてくれるかな」

 

そのミツルギの言葉に反応してか、周りの皆が騒めきながら椅子やテーブルを退かしていき、決闘用なのかサークル状にスペースが作られていく。

 

「良いだろう、でどうすんだ?木刀でチャンバラでもやるのか?」

 

剣を鞘にしまい、彼に向き直る。

 

「いや、このままで行こう」

 

俺を殺す気なのかそれとも余程の自身があるのか、一切のルールなしのガチ試合を申し込んでくる。

互いに一定の距離を取り向き合う。奴は魔剣を構え、俺は魔法剣を構える。先程剣を受けとめられた感触からただの剣で無いのは明らかだ。奴の魔剣はランクで言えば彼の魔剣と比べ天と地ほどの差があるだろう。

先程まで周りに居た人達も巻き込まれたく無いのか、距離をとって遠くから此方を観戦している。

 

「で、何をもって勝ちになるんだよ」

 

勝負である以上それにはルールが伴う、もしルールがなければそれはもう殺し合いでしか無い。

 

「相手が参ったって言うか気絶したり戦闘不能になったら勝利でいいかな」

「逆に禁止事項とかあるのか、後から反則とか言われたく無いんでね」

「特に反則とかは無いよ、君は冒険者だっけ?魔法が使えるんだった使って貰っても僕は構わないよ」

 

やはりチート持ち、レベルも高いのだろうか物凄い自信だ。最初はいい奴だと思っていたが少しナルが入ってるのも相まってか飛んだキザ野郎になってやがる。後ろに侍らせている如何にもミツルギ様と崇高している女達がその証拠だ。

 

「なあ、ミツルギお前少し勘違いしていないか?」

 

周りには聞こえないくらいのボリュームで彼に話かける。

 

「何かってなんだい?悪いけど僕が君の話術で油断でもすると思っているのかい?だとしたら諦めたほうがいい、これでも僕は君の様な言葉で動揺を誘ってくる様な人と何人か戦った事があってねえ」

 

後半自慢話が始まったので取り敢えず重要な部分を除き聞き流し、話終わるのを待つ。

 

「そう言う事じゃない、お前がその剣を貰った様に俺にも特典があるんだよ、お前の事だ俺が何処から来たのかわかっているんだろ?」

 

腕を前に突き出し、彼を脅す様にポーズを取る。

 

「そうかやはり君も日本から来たのか、どうりで懐かしい感じがするわけだ。だけどね、もしそれで強い特典を貰ったなら君は何故未だにこの街で燻っているんだい?他の人にも数人会った事はあるけど、この街には皆数日で見切りをつけてよその街に出て行っているよ。これは僕の予想だけど大方君はお金か何かを選んだんじゃないかな、君の仲間の料理を見ると随分と高い料理を頼んでいる様じゃないか」

 

黙っておけばペラペラと喋りやがって、勝手に想像して勝手に悦に浸ってるんじゃねぇよ

 

「へぇ、そう思えばそうなんだろうな。お前の中ではな‼︎」

 

スタートの合図はハンデなのか俺から自由に始めていいそうで、なら遠慮なくとミツルギの懐に腕を突き出す。彼はそれを俺が貰った特典の能力を発動させると思ったのか魔剣を盾にし様子見に入る。自信満々そうだったが、やはり自身の心の中では自分の仮説が正しいかどうか結果を出せずに按配で防御の手段を選んだ。

ニヤリと内心ほくそ笑みながら、俺はスキルを発動させる。

 

「スティィィィィィーーール‼︎」

 

周りとミツルギの口から「え⁉︎」と声が漏れた後、俺の手からスキル発動の淡い光が放たれ、その後ズシリと重たい感触が手に伝わる。

 

「な、何だって⁉︎」

 

右手には彼の持っていた魔剣が握られていた。何回かトライアンドエラーを繰り返すかと思っていたのだが、俺の幸運値が高かった事が幸いしたのか一発で窃盗する事に成功した。

 

「ちょっと待て、これは流石n…」

「えい」

 

動揺するミツルギの頭に容赦なく魔剣の腹で叩きつける。ゴンと小気味良い音と共に彼が前のめりに崩れ落ちる。顔が見えなくなるのが嫌なのか、それとも室内からなのか兜を被っていなかったあいつが悪いのだ。

 

「えぇ…」

 

周りはあまりの展開について行けていないのか、唖然と俺達を眺めたまま硬直している。さてこれからどうしたものか、そう言えばだがこの話し合いを仕切っていたのは彼だった事を今更思い出す。だったら剣を奪った時に脅しておけば良かったと後悔するがもう後の祭りである。

そう言えばめぐみんはどうなったのだろうか、頭に血が上っていたのでヒールを掛けてから覚えていないが…と思い彼女の方を見るとお前ならやると思ったよと言いたげに此方を呆れた様に一人長椅子に座りながら眺めていた。ひとまず彼女が無事な事を確認し安心したのかそれとも色々間が挟まってどうでも良くなったのか、先程の怒りもすっかり収まっていた。

このままだと話が進まなくなるので、取り敢えず彼にヒールを掛け目を覚まさせる為に体を揺さぶろうとしゃがんだ瞬間、ガラスの割れる音と共にいきなり後頭部に激痛が走り視界がグニャリと歪んだ。

 

「な…何だ…何が起き…た?」

 

揺れる視界に、響く後頭部の鈍痛、それらを無視しながら状況を把握しょうと周りを見る。まずめぐみんは心配そうに此方に駆け寄ってきている、そして後ろに誰かの気配がする。

何とか後ろを振り向くと先程のミツルギの取り巻きの多分戦士職が俺の後方に立ち、手には割れたビール瓶の様なシュワシュワの容器が握られている、恐らく彼女が犯人だろう。

 

「私はこんなの認……な……、こんな…卑…よ‼︎」

 

何とかめぐみんにキャッチされたのか、女の子の特有の柔らかい感触が体に伝わってくる。クソ‼︎こんな状況じゃなければ楽しめたのにと後悔しながら俺の意識は深い沼に沈み込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ‼︎」

 

目が覚め飛び上がる。本来ならば気を失う直前の事はボヤけていて思い出すのに時間が掛かるが、危機的状況で緊張しているのか昨日の状況は鮮明に覚えている。

あの後、そのままギルドで寝かせられていたのか、昨日と変わらない状態なので、ベンチでタオルケットを掛けられた状況で横にされていた様だ。

外をギルドの窓から眺めると、すっかり夜は開けてしまい朝を迎えていた。

 

「あら、起きましたか」

 

コトンと、俺の前に水の入ったコップが置かれる。顔を上げると受付のお姉さんが気を利かせてくれた様だ。

 

「ありがとうございます」

 

お礼を言い、コップの水を飲み干す。そのお陰か少し残っていた頭の靄が晴れていき思考がクリアになっていく。

 

「ところで今は何時頃ですか?後、他の冒険者達は何処に向かったんですか?」

 

取り敢えずの現状確認。どうやら時刻は正午手前で、昨日あの後俺が倒れた後に回復魔法が効いてきたのかミツルギが目を覚まし作戦会議を再開したらしい。途中目が覚めたゆんゆんが加わりおおよそのベルディア討伐の道筋を立て解散し、本日つい先程まで此処で作戦会議を始め、手順や役割分担を再確認していたらしい。

何で起きなかったのかと、誰も起こしてくれなかったんだと思いながら自己嫌悪に陥る。

 

「で、カズマさんはどうされますか?」

「どうするって…」

 

あのミツルギの事だ、書き置きやお姉さんに伝言がない事から俺の事は恐らく作戦には入れていないだろう。俺が起こされなかったのが何よりの証拠だ。

 

「何もやる事が無いのでしたら、めぐみんさんの側に居てあげて下さい。今日の朝からだいぶ調子が悪いみたいで、いつも居るゆんゆんさんも今日は皆さんと外に出られてしまったので、今仮眠室で休んで貰っているんです」

 

どうやらめぐみんは作戦に参加せず仮眠室で座っているらしい。大方作戦から外されたのだろう、めぐみんの魔法は威力は凄まじいが、その分効果範囲も凄まじく今回みたいなレイド戦の様な戦いには向いていない。

こういった場合に輝くのはゆんゆんだろう、本来ならこう言った事には参加しないのだが、めぐみんの命がかかっている為気持ちを押し殺して参加したのだろう。

 

「わかりました、でも女子の所に入って大丈夫でしょうか?」

 

念のため確認すると、今は冒険者が出払っているので特別に解放してくれているそうだ。多分だが彼女の死の宣告の事知っての気遣いだろう。

そうですかと、お姉さんにコップを返しお礼を伝えるとそのまま仮眠室に向かった。

 

 

「おーい入るぞ」

 

扉を開けて中に入ると、ベットに座った彼女が杖を抱き締めながら小刻みに震えてていた。

 

「あぁ…カズマですか…すいません。昨日は大丈夫だったのですが、いざこうして自分が死に向かっていくと考えると震えが止まらないんです。」

 

昨日は偉そうな事言ってしまいましたね、と付け足し、当てもなくただ縋り付く様に杖に再び抱き着く。

漫画とかでは此処で主人公がカッコいい事を言いながら彼女を慰めるところだが、いざ自分がその場に立つと何も掛ける言葉が浮かんでこなかった。そしてこの状況で何も出来ない自分自身に腹が立った。

 

「なあ、めぐみ…」

 

だけど、何も話し掛けない訳にもいかないので、声を掛けようとしたが。

 

「すいません、カズマがこうして様子を店に来てくれて嬉しかったです、けど今は一人にして下さい」

 

彼女から帰ってきたのは拒絶だった。しかし、声のトーンからして心の奥底から拒絶している訳では無い様だ。

後が無いとはいえ彼女にもプライドがあって、恥ずかしい所を見られたく無いのだろうか。このまま居ても気まずいだけなので一度部屋を後にする。

 

「悪い邪魔したな、また来るよ」

 

取り敢えず彼女に見捨てては居ないと遠回しに伝え部屋を後にして、ギルドの外に出る。外の天気は俺の今の気持ちとは正反対の快晴で、まるで俺の苦悩をあざ笑っている様な日差しだった。

 

「いえ、お気遣いありがとうございます…」

 

部屋を出る時の彼女の消え入りそうな彼女の声が頭から抜けない。

 

 

ギルドの外に備え付けられているベンチに座り溜息を吐いた。まだベルディアの指定の時までは時間が余っている、このままめぐみんのそばに居てやるか、それとも今からでも作戦に加わり雑魚討伐の露払いでもしようかと思考を巡らせる。

このままめぐみんを残して行くのは憚れるが、かと言って皆にベルディアの討伐を任せっきりにするのも申し訳ない。どちらを選んでも後悔しそうな選択肢に悩み続ける。

 

「君はこんな所で何やってるの?」

 

そんな俺を見かねたのか、クリスが俺の目の前に現れた。

 

「何でクリスが?冒険者は皆外に行ったんじゃ…」

 

受付のお姉さん曰くだが、冒険者の皆総出でベルディア迎撃に向かうと聞いている、彼女の職は盗賊だが戦闘力は俺の何倍もあるだろうからこの街の連中から比べたら即戦力なので引き入れない事はないだろう。

 

「ああ、それね。そうなんだよねー、だから私はこれから仕事が忙しくなるから先に抜け出してきたんだよ。そしたら君を見つけた訳、君こそ私より行った方が良いんじゃない?」

 

仕事が忙しくなるとは一体なんだろいうか?彼女は冒険者の他にも何か職業でもあるのだろうか?

 

「いや、俺はめぐみんの面倒見るために待機だよ」

 

はあと呆れた様に彼女に告げる。口にしてしまった以上考えを変えて街の外に出る選択肢は消えた。でもこれで良いのかもしれない、俺みたいな搦め手でしか相手を倒せない冒険者職はめぐみん同様レイドにはむいていないのだ。

 

「面倒をみる?それは本気で言っているの?」

 

ムッと彼女は表情を強張らせて俺に詰め寄る。今まで笑顔と羞恥に悶えた表情しか見ていなかった為か、より一層迫力を感じる。今まで笑顔でいた人が急に怒り出した時のギャップで一層強く感じるというのもあながち嘘ではない様だ。

 

「ああそうだよ、クリスは知らないと思うけどな…めぐみんはデュラハンの死の宣告で残り後6日しかないんだよ」

 

今の彼女を放って置いて一人役に立つかどうかも分からない戦場に行く訳には行かない。

 

「だから何?」

「何って…」

 

クリスは、それがどうしたのかと言いたげに俺の言葉を切り捨てた。

 

「君はそれで良いと思っている訳?さっきからウダウダと良い加減にしなよ‼︎」

 

バチンと何かを引っ叩く音がしたと同時に俺の顔面に衝撃が走る、どうやらクリスが俺の頬を思いっきりビンタした様だ。

 

「めぐみんの面倒を見る⁉︎何それ?私はそんな言い訳を聞きにきたんじゃ無いんだよ‼︎何時も言ってたよね大事な仲間だって、その仲間を救う方法が目の前にあるのに君はそれを指を咥えて見ているっていうの⁉︎それに…それじゃあ、もう一人の仲間の子はどうなるのさ‼︎彼女は今その子を守る為に戦いを始めようとしているんだよ‼︎確かに君より強いかも知れない…けど、それでも彼女には君が必要な筈だよ」

 

突然頬を引っ叩かれ、呆然としている俺の胸ぐらを彼女は掴みそのまま引き寄せられる。

 

「だけどさ…あっちにはミツルギが居るんだ」

 

そう、俺よりは強いであろう魔剣使いミツルギ、悔しいが試合で勝てても殺し合いではあいつの方が強いだろう、レベルも俺の何倍も上らしい。ゆんゆんの前衛に必要なのは俺よりも丈夫なああ言う奴なのだろう。

 

「そう…まだ君は逃げるんだ…なら良い事教えてあげるよ。あの魔剣使いの少年はベルディアには勝てないよ、絶対にね。」

「何でさ、あいつは最強の魔剣使いで高レベルの勇者なんだろ?」

「だからだよ、あの子は最強の魔剣を手に入れてしまったが為に、ただそれだけの勇者になってしまったんだよ。君とは違ってね」

「どういう事なんだ…」

 

あのミツルギでも勝てない?確かに俺の搦め手には見事はまってミツルギは無様に敗北した、しかしベルディアが搦め手を使うとは思えない、昨日相対したがあいつは正々堂々俺達を殺しに来た筈だ。

 

「ねえ、君さ…そろそろ気付きなよ」

 

スッと俺の頬にクリスの手が添えられる、その時の彼女は何時もの子供っぽい無邪気な表情では無く、何処か現実離れした天使の様な神秘的な何かを纏った悲しい様な優しい様な…そんな表情だった。

気づけば頬に涙が伝っている。

 

「何も失いたく無いのなら君は動くべきなんだよ。このままだと君は2人とも失ってしまうよ」

 

その通りだった。俺は動くのが怖かったのだ。弱っためぐみんと自身のレベルを言い訳にこの戦いから逃げたかったのだ。

街の外だろうか、大きな衝撃や爆発音が響いてくる。多分ベルディアがこの街に再来し、約束通り戦い来たのだろう。

ゆんゆんは一度負けたと言うのに再び立ち向かっている。それに対して俺は、こうして安全な場所で呑気に心配している素振りをして戦わない理由を探していたのだ。そしてあの夜に気を遣わされて起こされなかった事に拗ねていたのかも知れない。

俺は大馬鹿野郎だ、彼女の言った事が正しければめぐみんどころかゆんゆんまで失ってしまう。俺がここまで生きて来れたのはゆんゆんのおかげだと言うのに。

彼女は言いたい事を言い切ったのか、俺の頬から手を離し後ろに下がった。

 

「ありがとうクリス、お陰で目が覚めたよ」

 

彼女に背を向け涙を拭く。流石に彼女に泣き顔を見せるのは忍びない。

 

「そう、それは良かった。私もきた甲斐があったよ」

 

後ろで彼女は照れているのか恥ずかしそうな声が聞こえる。

 

「じゃあ、俺行くか……あれ?」

 

振り向くと、其処に彼女は居なかった。帰ったにしては後ろ姿も見えないし感知のスキルも反応しない。

どう言う事なのだろうかと思ったが、探すには時間の余裕がない。彼女の礼は後にして今はこっちを優先にしなければ。

 

 

その後、受付のお姉さんに話を通し、再び仮眠室に入る。

中には先程と変わらずにめぐみんが杖片手に震えていた。

 

「おいめぐみん、震えている時間は終わりだ。反撃と行こうじゃねえか」

 

ドアを叩きつける様に開き、震える彼女に言い放つ。ミツルギが勝てない以上こちらも頭を使わなければ行けないのだろう。そしてそれには彼女の協力が必要になる。

 

「何を言っているのですか?カズマもよく言ってたじゃないですか、私の爆裂魔法は大人数での戦いでは味方を巻き込むので使うなと」

 

彼女も先程までの俺と同じ気持ちなのだろう。

 

「いや、俺にいい考えがある。なあめぐみん俺に協力してくれないか?たまにはゆんゆんを見返してやろうぜ」

 

我ながら随分な誘い文句だなとつくづく思う。けど仕方がない、これが俺の精一杯なのだから。

 

「ふっ、なんだかカズマを見てると、色々考えていた私がバカらしく感じますね…いいでしょう、ゆんゆんを見返すと言う事の意味はよく分かりませんが、私の爆裂魔法が必要なら手を貸す契約でしたからね」

 

俺の表情を見て何かを察したのか、彼女は呆れた様に笑いながら立ち上がり、先程差し出した俺の手を取る。その手には先程とは違い一切の震えは無かった。

 

「ああ、行こうぜ‼︎あのナルシスト達に目に物見せてやろうぜ‼︎」




書き終えて気付いたのですがゆんゆんが居ない…次回から出番増やしますのでご容赦下さい…。
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