この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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お気に入り400超えありがとうございます。
ベルディア編も書いて見たら長くなってしまいましたので気長にお読み下さいm(__)m


デュラハン襲来3

全身に支援魔法を掛けれるだけ掛け、めぐみんを背負うとそのまま街の外へと向かった。

爆発音が響いてからそれなりに時間が経っている、このまま2人で歩いていけば間に合わなくなる。ならば支援魔法を掛けた状態で全力疾走した方が結果的に早くなるだろう。幸いにも彼女を背負いながら走る事はいつもの日課で慣れている。

ギルドから街の入り口まで走る。

 

「凄いですねカズマ、いつも帰りはこれでお願いします‼︎」

 

風を浴びながら彼女はジェットコースターにでも乗っている様な感想を述べる。

 

「ふざけんな‼︎街に戻るだけで魔力を消費してたまるか‼︎それにゆんゆんが置いてきぼりになるだろうが‼︎」

 

後ろに吹き飛びそうな彼女の足を押さえながら走り続ける、街の外までは歩けばそれなりに時間が掛かるが、支援魔法を掛けて走ればあっという間に外に辿り着く。

門に近づく頃には外の様子が見える。走りながらなので視界がブレブレで分かりづらいが戦いはまだ続いている様だ。

しかし、状況は芳しくは無い様だ。見た感じゆんゆんは既に魔力切れなのか動けずに地べたに這いつくばっており、現在は前衛のミツルギと後衛にその他有象無象のウィザード達が中級魔法で応戦している状態になっている。他の戦士などの冒険者達は後方にてプリースト達の回復魔法を受け療養しており、回復次第応戦に向かっては下がっての繰り返しになっている。

魔剣持ちであるミツルギですら俺から見ても遊ばれている様に見える。どうやらクリスが言っていた事は本当だった様だ。クリスのトレーニングを受け続けて何とか分かる領域だが、ミツルギの弱点、それは単純な実力不足だ。彼は初期から魔剣を女神から授けられ、その剣に見合った膂力を与えられる。つまりは最初からステータスは最強でどんな敵をもそのチートでゴリ押して来たのだろう、途中苦難があった事も考慮してもその魔剣に頼ってきた事に変わりは無い。しかし今回の敵は魔王軍幹部、恐らくだが自身の実力だけでここまでのし上がって来たのだろう、彼との違いはそこにある。ベルディアはゼロから始めたのなら、途中自分より格上の相手との戦闘も経験している筈でその対処法も備えているであろう。なのでミツルギがどんな力を持とうと魔王軍幹部ベルディアからすれば当たらなければ良いだけの話になる。

彼の攻撃は物の見事にベルディアに躱し去なされる。逆に攻められれば彼は必死に受け止めるだけである。それでも周りのウィザード達のサポートによりベルディアの追撃を抑えて何とか現状を保っている様だ。

 

「めぐみん‼︎そろそろ着くから魔法撃てる様に待機しておけ‼︎」

「わかりました。ですが舌を噛みたくないのであまり揺らさない様にお願いします」

 

背負っているめぐみんが詠唱準備に入る。ミツルギ達が優勢なら良かったのだが、実際には劣勢に立たされている。このまま闇雲に突っ込んでも奴に八つ裂きにされて終わるだけだ、ならこうして脅し程度に彼女の爆裂魔法を発動待機にしておいた方が奴も躊躇するだろう。

 

「飛ぶぞ‼︎舌噛むなよ」

 

入り口には倒れている人達が療養の為横になっていたのでそれを飛び越える。支援魔法を掛けての跳躍は普段の俺のジャンプからは想像出来ない程高く人達の海を一っ飛びした。

 

 

 

 

 

ミツルギの剣が上空に弾かれ体は後ろに弾かれ、彼の表情は絶望の色を見せる、反対に奴は勝利の笑みを浮かべているだろう、そして周りの冒険者は次ば自分の番だと恐怖に怯える。

さてここから何しようかとベルディアは大剣を丸腰のミツルギに向けたタイミングで2人の間に割り込む事に成功する。

 

「「何⁉︎」」

 

間に入った事に驚愕の声を上げた2人だったが、ベルディアは直ぐさまその状況に気づいた。

 

「貴様、こんな所でそんなものをぶちかまそうと言うんじゃ無いだろうな。だとしたら貴様らの頭は狂ってるとしか言いようが無いぞ⁉︎」

 

爆裂魔法の発動待機状態であるめぐみんを見据えながら奴は警戒心を露わにする。退魔魔法同様に例え耐性があったとしてもこの距離からの爆裂魔法を受けては奴もタダでは済まないだろう。

 

「ああ、確かにこんな所でこんな物をぶっ放したら俺達はお終いだな!だけどお前もタダでは済まない筈だ」

 

めぐみんを背中から降ろし奴の間合いから出るように後方へと押す。彼女は魔法発動待機状態を維持しながらで俺に従い後ろに下がる。

 

「確かに流石の俺もタダでは済まないだろう、俺を倒す事が目的ならこんな自爆みたいな事はせず遠くから仲間ごと吹き飛ばせば良いだけだろうに。なのにわざわざこんな何も意味のない事をすると言うんだ、何か目的があるんだろう、貴様の要件を聞こうか」

 

流石は魔王幹部、この数回の行動で俺の意図を見抜いた。

 

「俺の目的はただ一つだけ、ベルディアお前はこのまま俺達を見逃し、城へと帰るんだ」

「ほう」

 

奴は俺の要求を聴くと、まるで見定める様な目線で俺を眺め顎に手を当てた。首から上がない状態で顎に手を当てると言うのはなかなかにシュールな光景だが笑うわけにはいかない。

 

「この俺に引けと言うのか?別に構わないが良いのか?そこの紅魔族のガキを助けられる絶好の機会をこうして自ら捨てる様な物だぞ」

 

確かに奴の言う通り、このまま奴を城に返すと言う事はわざわざ与えられたチャンスをみずみず捨てる様なものだろう。しかしこのまま戦えば俺達に待ち受けるのは全滅と言う2文字である。

 

「ああ別に構わねよ、むしろ逆に俺はいつでもここに居るから何かあった時はここに来いよ」

 

奴の発言に挑発で返す。奴は呆れた様に溜息を吐くと。

 

「ふん、威勢だけは1人前だな、良いだろう貴様に免じてここは引いてやろう」

 

勝者の余裕と言うやつだろう、どちらにしろ彼女の呪いを解くには奴の討伐が必須になる以上奴は焦る必要は無いのだ。踵を返して奴は城へと戻っていった。

 

「ふぅ」

 

奴が見えなくなり一安心したのか気が抜ける。取り敢えずの危機は去り、この状況は何とか改善する事ができた。問題はこの後如何するかだ。

 

「カズマ‼︎話が違うじゃ無いですか‼︎あの魔王軍幹部に爆裂魔法をぶち当てるのでは無かったのですか‼︎」

 

後方に待機させていためぐみんが不満そうに俺に食い掛かる。そう言えばそんな事を流れで言ったことを思い出した。

 

「ちょっと待ちなさいよ‼︎こんな所で爆裂魔法を放とうとしていたの⁉︎正気なの⁉︎」

 

先程までグッタリしていたゆんゆんが回復したのかめぐみんに突っかかり揺さぶる。だがめぐみんは知らん顔で目を逸らす。

 

「私何の為に頑張ってたのよ…」

 

やがて落ち込んだ様に崩れ落ちる。ここまで止めにきた彼女だがどうやら本当に限界だった様だ。

 

「で、未だ待機状態の爆裂魔法はどうしますか?」

 

めぐみんはそう言いながら杖の先端に顕在化している、臨界点ギリギリの爆裂魔法の種の様な魔力塊を俺に見せる。これが諸悪の根源かと思いながらその魔力塊を覗くと中で小さな光が何重にも重なり小さなプラネタリウムの様だった。

 

「お…おい、それ何とかならないのか?元の魔力に還元とかさ」

「出来ません」

「…マジか?」

「マジです」

 

キリッと此方を見つめるめぐみん、この状態をキープしているのも案外辛いらしく早く決めて欲しいと判断を急かす。

 

「仕方ない、そこら辺の何も無い辺りにでも放ってくれ」

 

適当に離れた草原を指差す。ここなら特に燃え移る物もないだろうし大丈夫だろう。

 

「おーい、みんなー‼︎疲れている所悪いんだけど、うちの連れが一発かますから耳塞いでくれ‼︎」

 

大声で疲れてグッタリしている者達に声を掛ける。

 

「何?あの爆裂魔法をかい?こんな所でそんなものを放ったら…」

「‥何だって?」

 

俺の注意勧告を聞いたミツルギが何かあるような意味深なセリフを言おうとするがそれは途中で爆音によりかき消されてしまう。

 

「エクスプロージョン‼︎」

 

爆裂魔法の発動により爆音と爆風が辺りを吹き飛ばそうとする。それを皆最後の力で踏ん張って耐えきる。

 

「ふぅ…やはり爆裂魔法は最高…です」

 

彼女はそう言い残しゆんゆんと同様にバタンとその場に倒れる。

 

「朝はあんなに震えていたのに何でこうなるのよ…」

 

自分と同様に倒れためぐみんを横目に眺めながらゆんゆんは溜息混じりにそう言った。

 

「はぁ、これからこの2人を運ぶのか…」

「「あっ宜しくお願いします」」

 

俺の呆れた様な発言に反応してか、2人の声が下から重なって聞こえてくる。ゆんゆんも倒れた時用にキャスター付きの荷台でも作るかと本気で悩む。

 

「ふ…くっ…」

 

そんなこんなでどうやって2人を運ぼうか考えていると、ミツルギが魔剣を拾い上げそれを杖にして立ち上がる。

 

「どうした?疲れてるんだから休んどけよ」

 

一応応急措置の為にミツルギのいヒールを掛ける。

 

「く…すまない感謝する。それよりも君達は何てことをしてくれたんだ…」

「あ?何言ってんだ?俺が居なかったら今頃どうなってたと思ってるんだ?」

 

不満を言うミツルギに向かってメンチを切る。

 

「違う…その件については正直助かったと思っている、流石にあそこまで攻撃を読まれると僕も思ってはいなかったからね」

「違うんだったら一体何のことを言っているんだ?」

 

どうやらミツルギが怒っているのはベルディアとの戦いに割り込んだ事では無いらしい。ならば一体何の事を指しているのだろうか?

 

「見てみるといい」

 

そう言いミツルギが先程爆裂魔法が放たれて出来たクレーター周辺を指差した。

 

「何だよ、何も起きて無いじゃ…何だと⁉︎」

 

クレーターの周囲からまるで火山の噴火のように突然土が盛りあがりだしたと思ったら。

 

そこからカエルが現れたのだ。

 

「おいミツルギ‼︎何でそれを早く言わなかったんだよ⁉︎言ってくれたら他に考えようがあったてのによ‼︎」

 

ギャーギャーミツルギに突っかかるがそれは全て後の祭り、何故こうなったよりもこれからそうするのかを考えるべきなのだ。

 

「そんなこと言われても忠告する前に君の所のウィザードが魔法を放ったんじゃないか」

 

ミツルギは不満そうな表情を浮かべ魔剣を構える。まだよろけているがカエルを倒すには充分だと言うように前に進んでいく。

 

「仕方ない、後はあいつに任せて俺達は…あれ?」

 

後ろを振り向き彼女達に話しかけようとするが、そこに彼女達の姿は既になく。

 

「おーい何処行ったんだ?」

 

周りを見渡そうと顔を上げようとする時にベチャベチャと横で音が聞こえる。嫌な予感が的中しない様に心で祈りながらその発音元に目を向ける。

そこには既にカエルとそれに飲み込みかけられた彼女達の足が見えた。

 

「って、既に食われてんのかよ⁉︎」

 

腰から剣を引き抜きカエル達に飛びかかる。幸い食事中だった為、動かなかったのでそこまで苦戦することなく駆逐する。他はどうなっているのか眺めると流石は魔剣持ち、カエルなど恐れるに足らずとあっという間に倒してしまっていた。今現在は残りのメンバーを街まで誘導している。

 

「あっちは大丈夫そうだな、でお前らは大丈夫か?」

 

カエルの粘液に塗れた彼女達に声を掛ける。2人とも魔力を使い果たしているので動き出せずモゾモゾと蠢いている。

 

「まさかここに来てカエルに食べられるだなんて…これも全てめぐみんのせいよ…」

 

ゆんゆんはカエルに食べられ掛けるのは初めてなのか半泣き状態でめぐみんに不条理だと嘆きをぶつける。

 

「流石の私もまさか爆音でこんなに沢山の個体が出てくるだなんて思いもしませんでしたよ。けどあの状況でこうする以外に方法は無いでは無いですか?むしろこの程度で済んだのですから、むしろ感謝して欲しいくらいですよ」

 

そう言えばめぐみんはカエルに捕食され掛けるのは2回目だったな。それで慣れていたのか彼女は何時もの様に悪態をついている。

はあ…この2人をこれから運ぶのか…機会があったらピュリフィケーションでも覚えようかと流石に今回は思う。

 

「ではカズマこのまま銭湯まで宜しくお願いします」

 

粘液で滑り易くなったのかめぐみんが地を這ってこちらに向かってくる。それを足を使ってうまく弾いているとゆんゆんが申し訳そうに。

 

「あの…私のポケットにマナタイトがありますので使ってください、中級魔法は使えませんが支援魔法を掛ける位には代わりになると思います」

 

取り出す気力はないのか右のポケットですと俺に指示する。女の子のポケットに腕を突っ込むのは気がひけるが、このまま引きずって街まで帰るよりはマシなのだろう。

 

「悪いなゆんゆん、手を突っ込むぞ」

「…はい、お願いします」

 

彼女の元に近寄り座ると、彼女のスカートのポケットに手を突っ込む。なるべく内側に行かない様に大腿部の外側に沿って手を進めていくと固い感触に触れる。途中くすぐったいのか艶かしい声を発する彼女にドキドキしながら確認する。

 

「これでいいのか?よければ引き抜くけど」

「はい、大丈夫です…んっ、早くお願いします」

「へへ、変な声出すなよ⁉︎」

 

大丈夫そうなので、そのままその硬いものを引き抜く。どうやら引き抜いたものは予想外の物ではなく、ちゃんとしたマナタイトと呼ばれる小さな鉱石だった。

マナタイトを手に持ちながら支援魔法を再び自身に掛ける。掛け終わったと同時に手に持っていたマナタイトが消失する。彼女が言ったようにマナタイトは魔法に必要な魔力を肩代わりしてくれるらしいがこのように使用してしまえば消えてしまう使い切りの代物になる。

 

「うえ…触りたくない…」

「そんな事言わないでお願いします…このまま放置は流石に嫌ですよ」

 

カエルの粘液でベチャベチャになっている彼女らを両脇に抱える。幸い支援魔法を掛けているお陰か難なく2人を運べたがカエル独特の生臭さがどうも馴染まない。

 

「カズマどうしたのです?先程の速さは何処にいったのですか‼︎」

 

なるべく粘液が服に移らないようにゆっくり歩いていると、先程の疾走が癖になってしまったのだろうか、めぐみんが不満を告げてきた。

 

「煩せえ‼︎運んでもらっているんだから黙ってろ‼︎」

 

めぐみんを叱咤する。全く、先程の弱気な彼女は何処に言ったのだろうか。

 

 

 

 

街に着いて早々、俺は2人を洗濯用に流れている小川に放り込んだ。

 

「ぎゃー‼︎何するんですか⁉︎正気ですか⁉︎」

「うぅ…酷いですよカズマさん…」

「煩せえ‼︎このまま銭湯に行けるか⁉︎俺は男だぞ‼︎女湯まで運べると思ってるのか‼︎せめてそのヌルヌルを落として動ける様になるまではそこに居ろ‼︎」

 

支えを失った彼女らはゴロゴロと川に転げ落ちる。幸い子供が溺れない程度には浅い所を選んだので窒息する事は無いだろう。このまま川の流れで洗われる事を待つのみだ。

時折落ちていた木の枝で突っつきながら様子を確認する。自身の扱いに不満があると逆上するめぐみんになんで私がこんな目に…と悲観するゆんゆんの様子を見ながら、粘液のついた上着を川で濯ぐ。

さてこの待ち時間でこの後はどうしようかを真剣に考える事にする。あの場で全滅する事を防ぐことが出来たが、ベルディアは再び自身の城へと帰っていってしまった。ミツルギ単体でのゴリ押しは不可能、またゆんゆんが居てもそれは変わらない。奴自身には魔王の加護があり退魔魔法に対しての耐性が存在する、しかし俺には女神か何かの関与があるため多少のダメージは通るが微々たるものだろう。今使えるポイントを使用してセイクリット級の上位互換を習得しても大して効果は無いだろう。

ベルディアの待つ城には幾多もの罠が張り巡らされていると予想されるので短時間の攻略は難しいだろう、それに奴にたどり着いたとしてもそこから奴との戦闘で勝ち抜ける程の体力が残っているとも考えづらい。

爆裂魔法で奴の城を破壊するのはどうだろうか?しかし、今まで打ち込んで破壊し切れなかった以上現実的では無いだろう。ならば…

口元に手を当てて考え事をしていると、2人が動けるくらいに回復したのか川から這い上がってくる。その姿はまるで怪獣映画の化け物の登場シーンさながらだった。

 

「カーズーマーサーン‼︎」

「カーズーマー‼︎」

「おい待ってて、回復したんだな。よしじゃあ銭湯行こうぜ‼︎2人とも疲れただろうし今夜は俺が奢る…って何だ⁉︎やめろ…離せ‼︎」

 

俺の交渉虚しく2人に肩を掴まれ先程まで2人が漂っていた川に無理やり引き摺り込まれた。

 

「よくも私を川に投げ入れてくれましたね‼︎お陰で服が完全にずぶ濡れになったじゃ無いですか‼︎」

「今回は私も酷いと思います‼︎」

 

カエルの粘液で最初からずぶ濡れじゃねえか‼︎と突っ込む余裕もなく俺は2人によって川に引きずり落とされる。冷たい水の感覚とともに頭の中がクリアになっていく、そしてふとある作戦を思いついた。可能性は低いがそれでも試してみる価値はあるだろう。

無理やり川から這い上がり、2人に相対する。

 

「うわー‼︎御免なさい‼︎めぐみんがやれって言ったんです‼︎私は止めようって止めたんですけど…めぐみんがどうしてもって聞かなかったので…」

「何言っているのですか⁉︎途中までゆんゆんもノリノリだったじゃ無いですか⁉︎何今更いい子ぶっているのですか?」

 

俺が怒りで飛び上がって来たものと勘違いしたのか、互いに罪をなすりつけ合っていた。しかし、これはこれで面白そうだったのでしばらく座って2人のやり取りを眺める事にした。

 

「カズマさん‼︎見てないで助けてくださいよ‼︎」

 

やがて、いつもの様に取っ組み合いになって結局ゆんゆんが再び川に突き落とされていった。果たしてゆんゆんはめぐみんに勝てる時が来るのだろうか…

 

 

 

 

 

 

その後動ける様になった彼女らを連れて銭湯に向かい残ったヌメリを流し、装備を洗濯する。まさかこんな事が数回もあるなんて思わずに漠然とサウナで時間を潰していると、後ろから声を掛けられる。

 

「やあ、ここに居ると思ったよ」

 

声の主は先程別れたミツルギだった。奴の体は鎧を着てない為か些か貧相な細マッチョ系な体型だった。

 

「お前意外と細かったんだな」

「ははは、確かに君と比べれは些か細く見えるだろうね、でもステータスでは必要な数値は満たしているから大丈夫だよ」

 

気にすんなと言いたげに奴は笑って誤魔化すと、俺に声を掛けた理由を話し始めた。

 

「でだ、今回は君に助けられたと僕は思っている。まずは君にお礼を言いたい、ありがとう。それで話は戻るんだけど、今回の作戦に参加している冒険者達の中には邪魔されたと憤っている人も何人か居たけど、その人達はさっき何とか説得する事が出来た」

「待て、お前はいきなり何の話をしているんだ?」

 

いきなりの話に頭の理解が追いつかない、出来れば一から説明してほしい。

 

「ああ、済まなかったね。まず結論から言おう、次の作戦の指揮は君に頼もうと思っている」

「はあ?何言ってんだ?どう考えてもお前が適任だろ、勝てなかったからって俺に責任を押し付けんなよ」

 

よくある社会の責任回避術だろうか、途中まで上手くいって良ければ続けて自分の手柄に、もしダメなら途中で他人と交代し失敗させ自分の名誉を守る。

 

「いや、その心配はしなくてもいい。今回の責任は今日の戦いで全滅し掛けた時点で僕の失敗となった。この内容は情報誌に記載されるだろうね悔しいけど。だから君が失敗しても君の名誉が傷つく事はない、寧ろ君が勝てば君の功績となる筈さ。それに今回君が助けに入った時点でおおよその意志は君の指揮下に入る事に賛成しているよ」

 

俺の心配をよそに話が進んでいく。先程のめぐみんとの強襲で何名かだが俺に賛同する者が数名現れたらしい。そして残りの反流分子をミツルギが説得してこうして俺を迎えに来たという訳になる。

 

「ったく、しょうがねえな。そこまで言われたら仕方ねえ、俺がやってやろうじゃねえか」

 

何の責任も無くアクセル中の冒険者達を指揮できるのも中々にない経験だ、この話を受けない手はない。めぐみんの事もあるし何としても成功しないといけない。

 

「では、話は決まりだ。けど約束の時間まで時間がある、少しスピーチの内容でも考えてくるといい」

 

交渉が成立して安心したのか肩を撫で下ろし、奴はサウナから出ようと腰を上げる。

 

「でも何でだ?何でお前はそこまでするんだ?このまま指揮をとってアイツを始末する事が出来た筈だろ」

 

奴の言っている事は理解できても納得する事が出来なかった。そうする事で奴にメリットが無いからだ、人の行動には何かしらの自分へのリターンの思考が存在する、どんな行動にも自身へのメリットが見え隠れし行われる。善行を積むのは、いざ自分が困っ時に助けてほしいからだ、しかし俺に今回の様に手を回しても特に奴に得はない。なら奴は一体何が目的なのだろうか。

 

「特に理由は無いんだ。ただ君に負け、魔王幹部にも負けて、考えているうちに自分というものが分からなくなってしまったんだ。だから今回は君に譲ろうと思う、それに君を見てると何かが見えそうな、そんな気がするんだ」

 

悔しそうに拳を握る奴の目には、自身に対する嫌悪感とそれに対する無力感が浮き上がっていた。

 

「そうか…お前が自分をどう思おうと俺は知ったこっちゃ無いが、それでも…」

 

後々ここの話を掘り返されたら死にたくなる様な台詞をアイツに伝える。我ながらよくもまあこんな台詞が出て来たなと常々思う。

 

「ふふ、まさか君にそんな事を言われるなんてね…そうだ、ここで話した事は誰にも言わない事にしないか?お互いのぼせたとしても流石に恥ずかしい話だからね」

 

正気に戻ったのか奴は恥ずかしそうにそう言った。男の羞恥に悶える姿を見る趣味は無いので潔くその提案に乗った。

 

「そうだな、互いに今日は疲れてんだ。さっさと作戦会議を済ませて早く寝ようぜ」

 

話を切り上げ奴はサウナを後にする。俺もそろそろ限界が近いので、奴と脱衣所で遭遇しないタイミングを見計らい扉を開けた。

 

 

 

 

外に出て風に当たる。やはり風呂上がりに風に当たるのも悪くは無い。

ミツルギから指揮系統を任せられたのはいいが、残りのピースが一つ足りない。ベルディアとの戦闘まで持っていく作戦は先程考えつき、賭けになるが無いわけでは無い。しかし奴との戦闘に対しての不安が拭えない、ゆんゆんとミツルギで駄目ならそれに+αが必要になってくる。そのαに俺とめぐみんは入る事が出来ない、彼女は戦力として一点特化すぎる、反対に俺は単純にステータスが低いのが大きい。出来れば前衛に1人上級職が欲しいところだが、この駆け出しの集まる街にそんな人材は居ないだろう。

風に当たりながら考えていると、誰かが俺に話しかけて来た。

 

「やあ、久し振りだな。確か名はカズマとか言ったかな?話は先程酒場で聞いたぞ、私が実家に帰っている間に魔王幹部とやり合ったそうじゃないか」

 

話しかけて来たのは何時ぞやのドMクルセイダーだった。金髪に碧眼の彼女、いつもクリスの側にいたが今回は違うらしい。

 

「そうだけど、それで俺に何か用か?俺は今作戦を考えて忙しいんだ。責められたいのなら今度にしてくれ」

 

ううっ‼︎ と彼女は俺の発言に悶えながら息を切らし、話を続ける。

 

「済まない。酒場で今回の指揮はお前と聞いてな、それでこうして私も加えて貰おうと直談判しに来たのだ。出来れば最前線で攻撃の的に成りやすいポジションで頼む‼︎」

 

最後の方には彼女の本音が見えた。どうやら協力は建前で、本音は痛めつけられたいだけだろう。そんな気がする。

だが考えてみれば彼女なら奴の攻撃に耐えられかもしれない。レベルを確認すると中々に高レベルでスキルポイントを攻撃に回していない分、彼女の防御力が桁違いに高かった。

 

「成る程な…これなら行けそうかもしれない。ダクネス、お前のお望み通りに最前線で戦わしてやる」

「何?それは本当か⁉︎ふふふははは‼︎」

 

前衛を任されたのが余程嬉しかったのか、興奮のあまり高らかに笑い出した。

 

 

こうして壁役、攻撃役、遠距離攻撃役の3つが揃った。後は3人の連携がどうなるかだが、3人の呼吸を合わせるには練習する時間があまりにも少ない。今日を抜いて残り5日、この作戦が失敗した事を考慮すれば1日くらいしか無いだろう。

ミツルギの指定した時間が近づいたので、彼女を連れて酒場に向かう。

酒場に入ると既に準備万端と言わんがばかりに、昨日ミツルギが立っていた部屋の奥に案内され、皆の視線が俺に集まる。その向けられた視線の中にはめぐみんやゆんゆんも含まれており、昨日とは違いちゃんと仲間に入れられている様で疎外感などは感じられなかった。

 

「さて、知っているとは思うけど、まずは自己紹介を…俺の名はカズマ‼︎今回この作戦の指揮をとる事になった。そしてまず最初に謝りたい事がある。今回のベルディアの襲来の原因は俺達のパーティーにある、すいませんでした」

 

素直に頭を下げる。これから命を互いに預け合う以上なるべく不信感やそう言った軋轢は無くしておきたい。

昨日みたいに罵声が飛んでくると思ったが、今回はそんな事はなく「気にすんな」などの励ましの言葉までもが俺に投げかける。どうやらあの一件のおかげか、それともミツルギの説得のお陰か随分と俺達の扱いが良くなったらしい。

 

「それで話を戻す。俺はこう言う時にどう纏めたら良いのか分からないから、単刀直入に作戦の内容を説明するから聞いてくれ」

 

俺はなるべく分かりやすく簡素に作戦を説明する。

 

「じゃあ、ゆんゆん、ミツルギ、ダクネス、作戦の要の3人は明日連携の打ち合わせがあるから指定する公園に来てくれ。残りのみんなは各自今日の疲れを取り除いたり、武器の手入れなどの準備をしてくれ。では解散‼︎」

 

パンと手を叩くと冒険者達が散って行く。これで準備は整った、後は細かい調整をすれば大丈夫な筈だ。

明後日の戦いが奴との最終決戦になる事を祈ろう。

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