めぐみんが目立ってゆんゆんの影が薄くなりますが一応めぐみんはゲストヒロインと言う扱いになりますので宜しくお願いします。
次の日の朝、集合場所の公園に俺は立っている。
早目に来たはずなのだが、俺が着いたときには既にゆんゆんが1人悲しくブランコを漕いでいた。張り切って早めに来たのは良いが、どうやら来るのが早過ぎたとかそんな感じだろう。
「あ、カズマさん来たんですね…よかった!私また場所を間違えたのかと思いましたよ」
彼女は俺を見るなりブランコ止めてから降りるとこちらに向かって来る。クソ‼︎あのまま飛んでくればパンチラが拝めたのに。
まあ、心で思っているだけで口にはしないが、なんだか負けた様な気がする。
「ゆんゆんはいつから来ててんだ?」
念の為確認する。現在は時刻の9時50分で集合は10時位になるわけだが…彼女なら30分前には来ていそうだ。
「私もそんなに早く来たわけじゃ無いです…出る時に時計を見たのですが大体9時頃でした」
早い‼︎此奴は入社したてのサラリーマンか‼︎。それよりも早く来ている人は沢山居るが後40分くらいはのんびりしてて良いのではないだろうか。
「なあ、ゆんゆんは何時も待ち合わせにはどれ位の時間に来るんだ?」
「時間ですか?そうですね…大体何時も1時間くらい前には居ますね、遅れて置いて行かれたくないですし」
「早えよ⁉︎大体早くても五分位が平均だろ」
「え⁉︎そういうものなんですか?待ち合わせなんて最近ですとカズマさん位しかしてなかったので…」
あ、ヤバイこれ以上は彼女の地雷を踏みそうだ。
「その話は置いといて、他の連中は遅いな何やってんだか」
「そうですね?何故皆さん来ないのでしょうか?」
話を逸らす事に成功したが、2人が来ないと言う新たな疑問が生まれてしまった。
「しょうがねえな、俺が2人を探してくっから、ゆんゆんは此処で待っててくれ」
「ちょっと待って下さい‼︎私を1人にしないでくださいよ」
公園を後にしようとすると彼女に袖を掴まれ止められる。
「そんなこと言ってもな…誰か残ってくれないとあいつらが遅れて来た時にすれ違いになっちまうしな…」
ミイラ取りがミイラになるとはこういう事を指すのだろう。すれ違いになってこの場所を四人で行ったり来たりしてしまったらすごい時間のロスになってしまう。
「じゃあ、こうしましょう」
そう言い彼女は公園の地面に文字を書きはじめる。成る程地面にメッセージを残すのか、でもすぐ消えなく無いか?と思ったがその後に氷結魔法を地面に掛けて文字の部分を氷のプレートで覆った。
「これで大丈夫ですね‼︎さあ行きましょうか」
出来上がった物をドヤ顔で俺に見せつけると、彼女は俺の腕を掴み公園の外へと引っ張っていった。
「おいおい…まあいいか」
全ての物事は、なる様になる。ならば流れに乗るのも致し方ない。決して2人でデートできるとかそんな事を考えては居ない、何せめぐみんの命がかかっているんだからな。
彼女に連れられギルド、装備屋、銭湯、色々回ったが何処にも2人の姿が見えなかった。もうこれはこの街に居ない可能性が強くなってきているんじゃないかと思うくらいだ。
「何処にも居ないな」
「居ませんね…本当に2人は一体何処に?このままだとめぐみんが居なくなっちゃう」
親友の命がかかっている事もある為か、徐々に彼女の表情に焦りが現れはじめる。本当に何処にいったんだあいつらは…
諦めて公園に戻るが、そこには2人の姿どころか誰も居なかった。
「おいおいどうすんだよこれ…」
呆れて言葉も出て来ない、いっそゆんゆんと2人で作戦を練り直すかと思った矢先に、道に居た人の話し声が聞こえてくる。
「おい、聞いたか!外でソードマスターのアンちゃんとクルセイダーの嬢ちゃんが決闘するらしいぞ‼︎」
「…おい」
「はぁ…」
互いに溜息が漏れる。どうやらあの2人は此処にくる途中でバッタリ出会ってそのまま話がもつれたのか、それとも実力の見せ合いなのか分からないが、こうして外で争うことになってしまっているらしい。
「あの2人は一体この緊急時に何やってるんだぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
叫ばずには居られなかった。ダクネスは百歩譲って分かるが、ミツルギまで一体何をやっているのだろうか。これで明日の作戦は上手く行くのだろうか…
「おいゆんゆん走るぞ‼︎」
支援魔法を掛けゆんゆんを抱き抱え走り出す。最近走ってばっかりだなとつくづく思う、支援魔法を教えてくれたシスターには頭が上がらないぜ。今度お礼を言っておこう…多分嫌味で返されるけど。
「え、ちょっとどういう事なの?なんで私お姫様抱っこされてるの?え…え?」
めぐみんで慣れていた為か俺自身なんの抵抗もなく彼女をいきなり持ち上げてしまったので、彼女が混乱して何時ものめぐみん相手の口調になってしまっている。
「話は後だ‼︎取り敢えず外にいるあの馬鹿どもを連れに帰るぞ‼︎」
「は、はい‼︎分かりました」
彼女は混乱しながらも落とされない様に俺にしがみつき、思わず邪な考えに支配されそうになる。ヤバイ俺のカズマが元気になってしまいそうだ。
考えるな、落ち着け、心を無にするんだサトウカズマ、お前ならできる…そうだ素数を考えるのだ。
数分だったが、この世界に来て色々あったと思い出す…やはり俺の本当の敵は自分だった様だ。
なんとか自分を抑えながら街の外に出る事に成功する。これ以上は流石に俺も限界なので彼女を降ろし、集まっている人だかりの中を掻き分けて進んでいく。
人集りの最前列に着くと、2人が互いに向き合ってガチンコ対決していた。
「やっと来てくれたか、早速で悪いんだけどお願いがあるんだ、彼女を止めてくれないか?いくら攻撃してもビクともしないんだ」
ミツルギは俺を見つけるなり、彼女を止める様に説得を頼んでくる。
「来たかカズマ。聞いてくれ‼︎私はおかしくなってしまったのかもしれない」
「元々だろ」
「くっ⁉︎こんな所で辞めろ‼︎お前は時間と場所をわきまえられないのか‼︎」
意味がわからない‼︎ミツルギはこんなのと今まで相手にしていたのか。哀れミツルギ…今度決闘するときは正々堂々戦ってやろうと思う、思うだけだけど。
「で?何がおかしいんだ?」
通り会えず彼女の話を聞く、見た感じこの決闘騒ぎも原因は彼女にあると俺は見ている。なので彼女の要望を聞く事がこの場を収める最短距離だろう。
「待ち合わせ場所に向かう時に、あいつに会ったんだ。それで噂の魔剣使いと戦ったら気持ちよ…気持ちが昂ぶるかと思ったのだが、おかしいんだ‼︎どんなにあいつに痛めつけられても痛いだけで何も感じないんだ‼︎」
「おかしいのはお前の思考回路だーーっ‼︎」
思わず叫ぶ。久し振りに会ったので少しはマシになったと思ったが、全然そんな事はなく寧ろ逆に悪化したんじゃ無いかと思うくらいだった。
「彼女の攻撃は僕に全然当たらないから此方にダメージは無いけど、流石に持久戦に持ち込まれると明日に疲れが残りそうだからどうしようかと思ってたんだよ。彼女は君の知り合いだろう?この場を何とか納めてくれないか?」
息を切らし、今尚彼女の攻撃を躱し剣の腹で反撃し距離を取るミツルギ。彼程報われないソードマスターも中々居ないだろう。
「ゆんゆん」
「はい、何でしょうか?」
横でドン引いているゆんゆんを呼ぶ、この状況を何とか出来るのは彼女くらいだろう。取り敢えず彼女を止める為に魔法を放って欲しい事を伝える。
「え?そんな事をしたらダクネスさんが危ないと思いますけど…」
流石に冒険者と言えど人間相手に魔法を放つのは心に訴えるものがあるのか、彼女は動こうとしない。
「ならしょうがない…仕方ないけど此処はめぐみんに頼んで一発ぶっ放してもらうか、幸いまだ日課はやってないみたいだし」
それを聞いた途端彼女の顔が引きつった。彼女は紅魔族の長を一応目指しているらしく、同期で天才と言われているめぐみんをライバル視しているところがある。なので基本めぐみんを例に挙げて対抗意識を煽れば…
「分かりました、分かりましたよ…やれば良いんですよね‼︎ 詠唱するので少し待っててください」
この通りだ。自分でやっといて何だが、ゆんゆん…ちょろく無いか?時折本気で彼女の事が心配になってくる。
「トルネード‼︎」
詠唱を終え彼女が魔法を唱えると、何処からか発生した竜巻がダクネスを飲み込んだ。
「わぁぁあっぁぁ⁉︎これだ‼︎この感覚だーーっ‼︎あぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
「他に人が居るんだからお前は黙ってろーっ‼︎」
竜巻に飲み込まれ彼女の動きが止まったまでは良かったのだが、そのまま上昇気流に乗せられ彼女は上へと揚がっていってしまった。
「よし、ゆんゆんもう良いぞ、ゆっくり徐々に出力を下げていってくれ。流石にこの高さからじゃダクネスも危ないかもしれない」
今尚絶叫している彼女に対して、降ろす様に指示する。しかし彼女から帰ってきた言葉は俺の予想をはるか斜めの方向を向いていた。
「出来ません…」
彼女は俺から目を逸らしながらそう言った。おいおいマジかよ…。思わず溜息が出そうだ。
「どうすんのさ、これ?」
「どうしましょうか…」
ははは…とやってしまったぜ、と言いたげに彼女の乾いた笑い声が響く。本格的にこれからどうしよう…いくらクルセイダーと言えどもこの高さから落下すれば死んでしまうだろう。
「おい、そこの魔剣使い」
「ん?それは僕のことかい?」
「お前の力であいつを受け止められないか?」
「流石に無理だね…僕のステータスだとフルアーマの彼女を受け止めきれないかな。悔しいけど僕の膂力はこの魔剣を握っていないと発揮されないんだ」
何だこの戦闘しか取り柄のないチートは…まあ剣だから仕方ないか。それに俺のチートじゃあ彼女を殺す事が出来ても助ける事は到底出来ない。
「カズマさん、魔法がもう解けます‼︎早く何とかお願いします‼︎」
無責任にも彼女はあたかも俺に責任があるかのように指示を仰ぐ。本当にそういう所だけはちゃっかりしてんな‼︎
彼女が言った通りに魔法が解けると、重力を取り戻したダクネスが上から落下してくる。
「あ、あああああ‼︎落ちるぅぅぅぅぅぅ‼︎しかしこれはどうなるんだぁぁぁぁぁ‼︎」
「こんな時にも興奮してるんじゃねえーーっ⁉︎」
落下しながらも何処かで期待したかのような彼女の表情を見ると、案外行けそうな気がしなくもない。
しかし、これで回復魔法の限界を超えるダメージ又は落下死を迎えられては困るので、助ける方法をこの短期間で頭をフル回転させ考える。
「よし‼︎ミツルギ‼︎剣を貸せ」
呆然と上を見ているミツルギから剣を奪い取る。そして支援魔法を自身にかけると落下してくる彼女が地面につくタイミングを予想し、野球のスイングの構えを取りながらタイミングを合わせ。
彼女が俺の目の前まで来たタイミングでフルスイングした。
「ふん‼︎」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ‼︎」
綺麗にミツルギの剣の腹を彼女にミートさせると、小気味好い金属音が響き渡り彼女は落下の勢いを殺され横に吹き飛んで転がっていった。
「クソ…なんたる仕打ちだ…流石だカズマ。私の目に狂いは無かった‼︎」
遠くまで転がったと思ったら、何事も無かったように彼女は立ち上がり興奮したようにそう言った。
「全く、お前らは大事な時に何やってんだ?俺たちのパーティーメンバーの命が関わってんだぞ」
取り敢えずこれ以上ふざけられると困るので少し強めに2人に釘をさす。しかしながら何でこんな事になったのか…。
「取り敢えず剣返すよ、ありがとな」
ミツルギに剣を返すと胸を撫で下ろすように息をつきながら受け取り、鞘にしまう。チートが剣というのも案外リスクなのかもしれないとその時思った。もし何かの手違いで自分の手から離れてしまえば、すぐにでもそこらへんに居る一般人へと成り下がってしまうのだから。
そう思えば俺の能力は半永久的に使用できるので良かったのかもしれない…まあ制御できないから危険きわまりない事には変わりないのだが…
「よし、じゃあもう此処でいいや。これよりミーティングを始めます‼︎」
3人を座らせ、その前に立つ。人前に立つのは緊張するが何回か立ってしまえば中々悪くない感じだ。
「じゃあ最初だからまず連携の練習から始めようか」
連携…いきなり3人でやってくださいは無理があり過ぎるので、こうして誰かを相手にして体で覚えた方が効率がいいだろう。
「その前に各自の戦闘スタイルを言い合おう…どうしたダクネス?それにミツルギも?」
話していると2人が挙手したので、発言の指名をする、取り合えず先にミツルギだな、今のダクネスに話をさせると方向性が変わってしまいそうで予想がつかないので最後に回す事にした。
「すまない、連携の事だけど先程の勝負で彼女の戦闘スタイルはおおよそ分かったから、いいんじゃないかな?」
「確かにな、私もそう思う。彼の癖や戦略はおおよそ分かったから今日はもういいんじゃないか?」
2人揃って特訓を無かった事にしようとする。何だ?やる気がないのか、それと他に何かあるのか?
「そうかそうか、それなら大丈夫だな……ってなるか⁉︎馬鹿か‼︎ダクネスはともかくミツルギまでどうしたってんだ⁉︎」
「私ならともかくとは何だ⁉︎」
自分と比べられ下げられた事が気に入らなかったのか、彼女は俺の発言に訂正を求めた。
「すまない…正直に言うと、これ以上彼女と居ると疲れてしまいそうで…」
何だと⁉︎と彼女は怒りの矛先をミツルギに向けるが、奴は思いっきり目を背けた。どうやらあのナルシストでフェミニスト気味なあいつでもダクネスは手に余るらしい。
「よし分かった。じゃあこうしよう、これからゆんゆんが上級魔法を放っていくからお前達はそれを上手く避け彼女の下まで来てみろ」
取り敢えずゆんゆんの魔法を避け切れるくらいなら大丈夫そうだろう。
「何だ、そんなもので良いのかい?」
それに対して余裕そうな表情を浮かべるミツルギ。
「いや、今回は俺の仲間の命も掛かっているからな。俺も参加させてもらう」
二対一となればゆんゆんが不利になってしまうので、そこは俺がカバーしようと思う。まあ正直俺が居ても何も変わら無いと思うんだが。
「え?」
それを聞いてミツルギの余裕の表情が一瞬にして引きつった。どうやらあの酒場での一件は奴にとってトラウマになってしまったらしい。
手合わせを終える。殆どゆんゆんに任せる事となったが彼女の圧倒的な数の暴力で2人を制圧した。確かに2人の言う様に連携というかコンビネーションはとれていた様で、少なくとも互いが互いの邪魔をしない様には立ち回れていた。
「はぁ…はぁ…どうだい、君の御眼鏡には適っただろう」
魔剣を地面に突き刺し体勢を整えながら彼はそう言った。ダクネスとの私闘の疲労もあってか大分動きが鈍くなっており、俺に動きを制限されながらゆんゆんの魔法を浴びせられダウンした。
本来なら魔剣の力もあったが、それを使うと俺達が死にかねないので考慮してくれたのだろう。
ダクネスはそこでへばっているが、ダメージ自体は少ないだろう。彼女の耐性は攻撃力を犠牲にしている為か、通常の人のものを上回っており中級魔法は殆ど弾かれたので、最終的に上級魔法で沈められていた。
「なあ、ミツルギ。ベルディアと戦った時にあいつはどんな戦い方をしていたんだ?」
地面に腰を付け休んでいる彼に話しかけると、少し遠そうな目でその時の状況を話し始めた。
「ベルディアは最初に大人数のアンデッドナイト…通常のアンデッドの上位種を召喚してきて、まずこいつらと戦えと僕達に言ってきたんだ。その軍勢はアークウィザードの彼女を筆頭にしたウィザード達で何とか迎撃したのだけれど、問題は彼女たちはそれで大分魔力を消費してしまったみたいで、後半は殆ど僕との一騎討ちになって…後は分かるだろう」
彼は自分が負けた話をあまりしたくは無いのか、少し嫌そうな感じのトーンで話した。
成る程、最初に軍隊で戦力を削いでから自身は戦いに参加したのか。ゲームのボスみたいに、ただ力だけで押してくるわけではない様だ。
ならば今の課題はアンデッドナイトの軍勢の対策と、ベルディアの戦闘へのパターンツリーの開拓だろう。
「オーケー何となくだけど分かった、これ以上は明日に響くから何通りか動きの型を決めてもらって後は休んでくれ」
了解したよ。と彼は転がっているダクネスを担ぐと街の方へと帰っていった。
「残りはゆんゆんだ。聞きたいことがある」
後ろに振り向き、座って休んでいる彼女に話しかける。
「は、はい!何でしょうか?」
朝から色々あったせいか少し眠そうだった。
「魔法で聞きたいことがあるんだけど、風の属性で遠くに飛ばせる魔法はあったりする?」
残る課題はどうやってベルディアを城から引き摺り出すかだ。
話を終え、頭の中に描かれていた大方の作戦が纏まっていく。要所要所で賭けの要素が入ってくるが、それらが成功すれば勝機が見えて来る。
酒場で1人飲み物を飲みながら木製の駒を弄りながら思考にふける。戦略的なゲームをオンライン環境で数え切れ無いほどプレイした為か、こう言った思考は苦手なわけでは無い。
しかし、今回失われるのはデータでは無く仲間の命。背中にのし掛かる重圧に先程飲んだ飲料等をアルコールを飲んでいないのに吐き出してしまいそうだ。
暫く脳内で何度も作戦を想定し繰り返す。様々な失敗のパターンを想定し、それに対抗するパターンを作りその作業を繰り返す。有るだろう、無いだろうの、水掛け論争になり思考がこんがらがる。
一度頭をリセットする為に冷たい飲み物をテイクアウトし、夜風に当りに外に出る。
高台で街の景色を眺めながらでもと思ったが、この街にそんなものは無くあっても防壁くらいな物だろう。仕方なしにいつも特訓で使っていた公園に向かう。
公園に着くと、先客なのか既にブランコに誰かが座っていた。こんな真夜中に誰だろうと近づくとゆんゆんが物思いにふけっていた。
「何だ、ゆんゆんも考え事か?」
飲み物を飲み干すと彼女の横のブランコを陣取り、合わせて漕ぎ始める。ブランコを漕ぐなんて一体何年ぶりだろうか。
「カズマさんこそ、こんな時間まで考え事ですか?早く寝ないと明日の作戦に支障が出てしまいますよ」
「俺は良いんだよ。何時も大体この時間まで起きてるしな」
この世界に来る前まではネットゲーム三昧だったんだ、今更こんな夜更まで起きていた所で何も変わら無い、むしろパワーアップするまでである。
「それもそうですね、そう言えば何時もこんな時間まで起きてましたね」
クスクス笑いながら、彼女は続ける。
「デュラハン討伐、明日は正直私は不安です…めぐみんも昨日、最後には笑っていましたけど今日姿が見えないところを見ると不安で一杯何だと思います。ああ見えてめぐみんはお姉ちゃんなんで、昔から誰にも心配をかけない様に一人で背負い込む所があるんです…」
彼女に言われて今日めぐみんを見ていない事に気づく。なんだかんだ理由をつけては俺達を振り回していためぐみんだが今日は何処かにでも行ったのか彼女でも姿を見ていないらしい。
幸い、おおよその作戦は予め伝えているので明日困る事は無いがそれでも姿がない事は気になる。ましてはこの狭い街の中でだ一体彼女は何をしているのだろうか?
「そうだな、今回の一件で自業自得と言われれば否定はできないけど、一番犠牲になっているのはめぐみんだからな。後残り4日何としてもアイツ…ベルディアの野郎をぶっ飛ばして呪いを解かないといけないからな」
改めて決意を新たにする。
「それで、カズマさん的には今回の作戦の成功率はどのくらいだと思っているんですか?」
「成功率か…正直半々って所だな。運の要素が強過ぎるのが大きいのと、みんなの連携がどれだけマッチするかで決まって来るからな」
結局のところ運なのだ、相手の弱点や行動パターンの把握などやそれに至るまでの事前情報が余りにも少な過ぎるので、実際に会って見て戦いその中で見極めて行かなくてはいけないのだ。
「そうですよね…もっと私に力があれば…」
ガックシと肩を落とす。紅魔族の長を目指している以上彼女にも何かしらのプライドがあるのだろう。しかし彼女はそれを目の前で砕かれ更に大切な親友をも失い掛けている。ぱっと見子供にしか見えない彼女だが、その背中には俺が思っている以上に大きな物がのし掛かっているのだろう。
「気にすんなよ。俺に言われるのもあれだけどさ、俺はゆんゆんが居たからこそここまで来ることができたんだぜ。最初に会った時だってゆんゆんが居なかったら俺は今頃カエルの養分だし、ゴブリンも今回のデュラハンだってゆんゆんが居なかったら全滅だったんだ」
「そう…ですか」
彼女は褒められ慣れていないのか、顔を赤くしながら横を向いてしまった。正直あんなので良かったのかは疑問だが、これで自信を持ってもらえれば上々だろう。
「そんな訳でありがとうな、少しだけど話せたお陰で大分頭がスッキリしたよ。俺はもう寝るからゆんゆんも早く寝ろよ」
あ、はい。と返事を返す彼女を尻目に公園を後にする。結局どう考えようと、その時になって見ないと事がどうなるか分からないのだ。ならば必要最低限の範囲を決めて後は流れに任せて行動するのが結果として良いものとなる事が多い。まあ戦略系のネットゲームの受け売りなんだけどな。
「あ、ちょっと待って下さい」
ブランコを降りると、引き止める様に彼女も降りて俺を追いかける。
「どうした?まだ何かあるのか?」
振り返り彼女に向き合う。彼女の手には多分マナタイトだろうか、石で出来たペンダントの様な物が握られており、それを俺に向けて差し出した。
「これ…あの時のお返しです。石の部分がマナタイトになっていていざと言う時に役に立つと思います…その…迷惑でなければ…」
「お、おう。なんかありがとうな、大切にするよ」
緊張で震えているであろう彼女からペンダントを受け取り首に掛けると首に少しだけだが重さが加わった。ペンダントなんて今まで掛けた事はなかったが、貰い物と言う事も含めて悪い気はしなかった。
暗くてよく分からないが、デザイン的に俺があげた物と同じデザインかそれに寄せた物だろう。
という事は彼女とお揃いと言うことになる。女の子とお揃いという事にも何だか照れ臭さを感じる、街で見せびらかしたいいが周りからの野次で恥ずかしさの余り死んでしまいそうなので服の下に隠す様に装備しよう。
「それではお休みなさい」
渡すものを渡せたのか、ホッとした様な表情を浮かべペコリとお辞儀をすると気不味いのか彼女は早足でそそくさと公園を後にしてしまい一人公園に残されてしまった。
これ以上ここに居ても特にやる事もないので、宿に戻る事にした。
それから特に何もイベントは起こらず、いつもの様に部屋に戻る。めぐみんを泊めて以来同じ部屋を取り続けているのでこの部屋が俺のホームになっている。その為か今日みたいな忙しい日は予備の服などが散らかりっぱなしになっている。そろそろ片付けないとゴミ屋敷に成りかねない。
上着をハンガーに掛けジャージに着替えると電気を付けずにそのままベットに潜り込む。ここまではいつものルーティンで考え事をしていようが体が覚えている為足が引っかからずに移動出来る。
潜り込んだのはいいが、めぐみんの事が気にかかる。何時もなら1日1爆裂と言った様に何かしらアクションを起こしてくるが、今日はそれが無かった。流石の彼女も自分の命が掛かった事になるとやはり緊張するのだろう。もし俺が彼女の立場になれば死の恐怖に怯えてこの部屋から出てこなかっただろう。
昨日は下らない言葉で引っ張り出したけど、もしかして彼女は俺に気を使ってくれていたのだろうか?自分の命の心配よりも俺の立場を優先するめぐみん、彼女の強みは爆裂魔法よりもその据わった胆力なのかも知れない。
考えていると朝になりかねないので、少し体勢を変え横向きになる。昔からの癖なのか横向きになるとスッと眠りにつける事がある、胎児の体勢なのだろうか落ち着くと昔テレビで聞いた事がある。
「………ん?」
横、つまり壁際を向くと、眼前に二つの赤い光が見えた。
どういう事だろうか、その様なランプは買ってないし、そもそも赤いランプ何て設置されていた記憶もない。今までも見た事のない全く身に覚えのない光だった。
と、言う事はつまりこれは…
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
勢い良くベットから飛び起き部屋から脱出しようと扉に向かう。しかしドスンと腰の辺りを掴まれ俺の目論見は止められる。やだ…俺の体幹弱すぎ⁉︎と思ったが、支援魔法を掛けなければそんなものだろう。
「ターンアンデッド‼︎ターンアンデッド‼︎」
夜遅くにいるという事は大方アンデッドだろう、泥棒と思ったが夜にわざわざ光を灯さないし発光しないだろう。つまりこの場合退魔魔法が適任だろう。
振り向き様に放たれた浄化の淡い光で暗い部屋が照らされていく、その光が照らしたのはアンデッドでも泥棒でも無く。
今日姿を見せなかっためぐみんだった。