この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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ボッチとの遭遇

「はっ」

 

気がつくと、どこかの草原の真ん中に立っていた。

 

えっ、いきなりフィールド?と思ったが遠くに大きな門が見えるので多分だが最初の街周辺に飛ばされたようだ。

まあ、確かに急に街中にいきなり人が現れたら街の人にびっくりされてそれどころではなくなってしまうと思うのであの女神も考えるところは考えているのだろう。

 

このままあそこ街に進んでも味気ないので、折角なので貰った能力を試してみるのも良いだろうと思い、まずは形からと俺の思うかっこい攻撃ポーズを決める。

俺があの女神から貰った能力は闇ノ炎、あの時間が無い状況で名前の響きと、俺の美的感覚がこれを選べと言っていたので素直に従った。けれども選んだ瞬間にこの世界に飛ばされたので詳細は詳しくは分からないが、能力の使い方などはこの世界の言語と一緒に頭にインストールされている。

 

「闇の炎に抱かれて消えろ‼︎」

 

何処かで聞いたような中二的台詞と共に、すぐそこにあった茂みに照準を定めて炎を放つ、威力は調節出来るので出来る限り出力は抑えて放出する。

 

「って、えぇぇぇぇっぇぇ⁉︎」

 

軽い気持ちで放った小さな黒い炎は、茂みに当たったかと思うと勢い良く辺りを巻き込みながら燃え広がり出した。

正直こんな事になると思ってなかった俺は驚愕し、急いで着ていた上着で叩いてその炎を消そうとするが意外にも炎は全く消えず、最悪の手段である小便を掛けても消える事は無く無慈悲にも炎は着々と燃え広がって行った。

 

「不味い…逃げろ‼︎」

 

このまま続けても埒が開かないので消火は諦め全力で街に向かって走りだす。

本当なら華麗なスピードで街まで走るはずだったが、残念な事に引き篭もり生活が長かった為か長時間の走行は体力的にキツく途中何度も休憩を挟みながら他の人に見つからない様に気をつけ何とか街の反対側の門に回り込む。

街の入り口に近づくと既に消火活動が始まっていたのか、多数の人影が見えたのでこそこそと木々などに隠れながら進み何とか入り口にたどり着くと、入り口に門番が居たので何も知らないフリをして声をかける。

 

「あの、すいません旅の者なんですけど…」

「旅の方ですか?どうぞお通り下さいここはアクセル、駆け出しの冒険者の集まる街ですよ」

 

門番は規則なのかいくつか俺をその場で検査し、それが終わり何も害がないと判断して優しく丁寧にこの街について軽く説明を始めた。

 

「あの、冒険者ギルド的なものはありますか?」

 

説明を聞き終える。門番の話ではこの街に冒険者ギルドなるものがあるらしい。

 

「冒険者ギルドですか?それならこの道を真直ぐ行ったとこを右に曲がってください、その次の十字路を左に曲がってください、でも先程火災がありまして現在人が少ないですけど、夜になれば人が増えるから色々聞くといいですよ」

 

説明の途中に談笑を挟みながら探るが炎についてはばれていない様だ。ならわざわざ言う必要も無いのでここは知らない振りが最適だ

他にも聞ける事は聞き、ありがとうございますと門番にお礼を言いいそのままギルドに向かう。

道中様々な種族に目を光らせながら進むと、街の中枢だろうか大きな建物に行き着いた

 

「ここがギルドか」

 

中に入ると、やはり服装などが違うためか冒険者希望ですかと聞かれ、いくつかの応答の後にウエイトレスに受付に案内されギルドについて説明を受ける。

 

 

 

 

 

「成る程、俺のステータスは幸運値以外は凡凡で基本職の冒険者にしかなれないのですね…」

 

職業を決め冒険者カードを作成するが、カードに描かれた俺のステータスの数値は予想外にも低く、自身のステータスにガックリと項垂れる。

受付嬢はそんな俺を見かねたのか

 

「ま、まあ、レベルが上がれば他の職業に転職出来ますので…あ、そうださっそくですがクエストを受けますか?」

 

と、慰めの言葉をかけてくれたので、あっはいと軽い気持ちで返事をするとそのままトントン拍子でクエストが受注される。

しかし装備が何にもない為、受付の人に確認すると最初の間は貸出用の剣を使えるようでそれを片手に先程俺が原因で起きた火災の方向とは逆の草原に向かう。

 

「よっしゃーやってやるぜ‼︎」

 

初めてのクエストに若干テンションが上がりつつも不安が残る、果たして上手くやれるのだろうか…。

今回の依頼は繁殖期に増加したジャイアントトードの討伐。名前の通りその姿は巨大で足を抜いた直径は見ただけでゆうに3メートルを超えており、このカエル達は繁殖期になると農家のヤギや子供を飲み込み近所の住民達に迷惑をかけているらしい。

草原を歩いていると、聞いた通りの巨大なカエルに出くわす。

 

「ゲームで見る敵キャラも、こうして現実で見ると絶景だな」

 

蛙を目の前にしてそんな事を言ってると、こちらに気づいたのか蛙は目玉をこちらに向ける。

 

こういう時は先手必勝だ‼︎

 

腰にかけていた借り物の剣を片手に持ち勢いよく蛙の腹に叩きつける。

 

「剣道とかやってないけどこんな感じで大丈夫だよな?」

 

剣術なんてやったことは無いので見様見真似で蛙に斬りかかるが、流石に漫画のようには行かずに俺の振り下ろした剣は蛙の腹に直撃すると、まるでゴムボールにぶつかったかのように弾かれる。

 

「あれ?」

 

弾かれた反動でそのまま尻餅をつくと、蛙の長い舌が右手に持っている剣に巻き付き、俺の手からすっぽ抜けるとそのまま蛙の口に入っていく。

武器を取られたこれは不味い、これは実に不味いぞ、しかしあの炎を使うわけにも…

先程使用した闇の炎つまり黒炎は制御が出来ず、この反対側の草原を焦土に変えかねない。

しかしながら蛙と距離を、取りながらと言うか逃げながら考えていると他の蛙も俺に気付いたのかこちらに寄ってくる。

 

「ちくしょう‼︎増えてんじゃねえよ‼︎」

 

全力で逃げるがその途中石でもあったのか、躓いてしまい倒れながら地面を転る。何とか体勢を整え起き上がるが目の前には既に蛙がスタンバイしていた。

もう駄目だ…周りが火災になるのも仕方ない、炎を使おう。

諦めて闇ノ炎を使おうとした、その時だった

 

「ライトオブセイバー」

 

叫び声と共に轟音が鳴り響き、空に光の柱の様な閃光の線が現れたかと思うといきなり目の前に居た蛙達が真っ二つになっていった。

 

 

 

 

 

「おわぁぁぁぁ‼︎」

 

目の前で蛙を真っ二つにする様に線が入ったかと思うと、そのままカエルは爆発し辺りに内容物が飛散する、俺はそれを腕で顔を隠しながら轟音が収まるまで待つ。

何だ一体、何が起きたんだ?

辺りが静かになり既に事が済んだのだろうと腕を下ろし辺りを見渡すと、スラっとした体型に黒いローブに身を包んだ赤い目が特徴の少女が、先ほど蛙がいた場所の後方に立っていた。

そして、彼女は俺と目があった事を確認したかと思うと顔を赤らめ

 

「我が名はゆんゆん、アークウィザードにして、上級魔法を操る者、やがては紅魔族の長になる者」

 

ゆんゆんと名乗る少女は、何処かで見た特撮のポーズをとりながら最後にマントを翻した。

成る程、彼女の名前はゆんゆんと言うのか。

あだ名みたいな名前だろうけどここは異世界、いくら言語が調整されるとしても名称はそのままなのだろうか?仮にこの世界においてのキラキラネームだとしてもからかうのは失礼な話だ。

 

「俺は和真、助けてくれてありがとうゆんゆん」

 

体に着いた内容物を軽くはたき落とし立ち上がるとゆんゆんに向き合い礼を言う。

 

「えっ、私の名前を聞いて笑わないのですか?」

 

あぁ、やっぱり変わった名前だったのか…

 

「名前が変わってるくらい、本人の人格には関係ないだろ?」

「そうですか…」

 

彼女は俯くと少し嬉しそうに照れていた。可愛い奴め。

 

「所で何で助けてくれたんだ?」

 

一応確認してみる。もしも新手の詐欺か何かだったら後々大変なことになるので逃げたい。

 

「えっ、えぇっと…そうだ‼︎困ってる人がいるなら助けるのは当たり前ですよ」

 

そうだって言ったぞ、この子

けどまぁ助けてもらった事は変わりないし

 

「なぁ、お礼を兼ねて一杯行かないか?報酬が貰えるしそこから奢るよ」

 

まぁ、大体はと言うか殆どは彼女が倒したのだが、ここは新しい俺の異世界生活の為、何としても報酬は頂かなければいけない。

どの様に報酬を総取りするか考えていると彼女は何故か嬉しそうに

 

「え、一杯って一緒にですか⁉︎言いましたね‼︎もう断っても駄目ですからね」

 

やりぃっと言いたげに彼女はガッツポーズをする。

何だろうか?すごい高いものでも奢らされるのだろうか…

 

「では、まず蛙をギルドに運ばないと行けませんね、ちょっと呼んできますね」

 

てっててと小走りに彼女はアクセルの街へと駆けていく。カエルを一瞬のうちに屠った事も含めて彼女はレベルが高いのだろう、走り出した視界の彼女は直ぐに豆粒サイズまで小さくなった。

なんて純粋で優しい子なんだろうか、これも高い幸運値のおかげか…

 

 

その後彼女の呼んだ者達により蛙達の亡骸が運ばれていく、なんでもジャイアントトードの肉はさっぱりして少し歯ごたえもあって大変美味しいらしく高値で買い取られるらしい。

運ばれていく蛙を眺めながらギルドに向かう、途中ゆんゆんに冒険者としてのノウハウやこの世界について教えてもらう。やはり日本とは大分常識がズレており適応するまで大変そうだ。

 

「街に着いたみたいだな」

 

蛙運びの人と別れ、ギルドの受付嬢に報酬を貰いに行く。ギルドには先程の消火活動に向かって行った人達が帰って来ていたのか、来た時よりも大分人でごった返していた。

 

「あら、ゆんゆんさん、どうやら合流出来たみたいですね」

 

受付について早々に俺達の姿を確認するとニコリと受付嬢が笑いかける。なんだろう嫌な予感がする。

 

「ななな、何言ってるんですか⁉︎」

 

それを聞いたゆんゆんが慌てふためきながら受付嬢の言葉を遮る。

 

「わ、私は酒場の席を取ってきますね‼︎カズマさんはクエストの報告お願いしますから」

 

これ以上この場には居られないと、バタバタと彼女は併設された酒場に走っていった。

ゆんゆんが離れていった事を確認し、こっそり受付に耳打ちする。

 

「彼女、何かあるんですかね?」

 

ビクッと彼女は震えたと思うと気まずそうに目をそらし

 

「それでは、報酬の12万5千エリスと冒険者カードですね」

 

サササッとこれ以上は関わるまいと早々に要件を済まそうとする受付嬢の腕を掴む。

 

「あのう…その手を離して下さい、受付はこれで終わりですよ」

 

冷や汗をかきながら受付嬢は目をそらし続けながら口を開く。

 

「そう言えば彼女今フリーみたいですよ、どうですか彼女を誘ってみませんか?上級職のアークウィザードの彼女が居れば駆け出しのカズマさんも安心してクエストが受けられると思いますよ」

「へぇ〜そうなんですか?」

 

俺は空いている方の手で服に取り残した蛙の残骸をデコピンで嬢に飛ばそうとする

それに対し受付嬢は観念したのか

 

「分かりましたよ、はぁ…彼女は引く手数多なアークウィザードなんですけど、どうもその恥ずかしがり屋や引っ込み思案な性格が災いして中々パーティに入れないと言いますか…彼女と同じ紅魔族の方が彼女がくる以前から色々問題を起こされまして、何というか同じムジナの何とやらでおとなしい彼女も何かあると根も葉もない噂が流れ皆少し距離を置いてるんですね」

 

成る程、彼女もだいぶ苦労してるんだなぁと思い

 

「あと、構ってほしそうにうろうろしたり、他に冒険者がいないと私が色々ゲームとかの相手をさせられるんですよ…私の仕事はまだあるのに…」

 

それからそれから、後半はもはや彼女の愚痴のお祭りだった、成る程だから何も知らない俺みたいな他所から来た冒険者に紹介してくっ付けようって事か

 

「でも、構ってちゃんな所は有りますけど、彼女はしっかりしてますし悪くないと思いますよ」

 

何だか、このままパーティに入る流れになってますが選ぶのは彼女ですからね…

 

「カズマさん変な事考える前に彼女の元に行ってあげて下さい、待たされて泣きそうになってますよ」

 

受付嬢に言われゆんゆんの方向を見ると、そこにしか空いてなかったのか酒場の中央の席を陣取り一人で俯いていた。

流石に不味いと思い、報酬をぶん取るとすぐさまゆんゆんの元に向かう。

俺が近づくと彼女は気づき

 

「遅いですよカズマさん‼︎もう私を置いて帰ったのかと思いましたよ」

 

泣きそうだった彼女の顔から一転、パァっと笑顔になり俺を正面席に案内する

よっこいせっと、腰を落とし注文を済ませると辺りからヒソヒソと

 

「おい…あのアークウィザードの嬢ちゃんが他の人と居るぞ」

「えぇ‼︎あのソロのアークウィザードの方が」

 

他の方々からガヤガヤ聞こえ、気を良くしたのかフンスとゆんゆんが少し勝ち誇りながらネロイドと呼ばれる炭酸みたいな飲み物を一気飲みし、テーブルに叩きつけると

 

「さぁカズマさん‼︎明日からバンバンクエストをこなして行きますよ」

 

イェーイとアルコールが入って気が大きくなったのか、先程とは比べ物にならない位饒舌に語り出すゆんゆんがそこに居た。

この世界ではアルコールに対して年齢制限は無いらしく、それぞれの倫理に委ねられている。

そしてどうやら彼女とはこれからパーティーとして宜しくやっていくらしい。

 

 

あれから彼女から色々この世界の話を聞き、解散する流れとなった。

今回のクエストの報酬から見て高い宿には泊まるわけにはいかず、大体の駆け出し冒険者が泊まる馬小屋の一室を何とか借りて横になる。

ガサガサと藁が擦れる音と硬い地面の感触を受け我に返る。

因みにゆんゆんはあの後酔い潰れたのでいつも泊まっているであろう寮みたいな所に送り別れ、そのあとこの馬小屋の管理者に交渉し今に至る。

魔王を倒せって言われたけど、この街を見ている限りとても平和で危険な感じはないな。

なら今は生活を安定させる事が重要だ、取り敢えずはゆんゆんに頼んでレベルを…

そのまま眠りについた

 

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