この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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すいません、暫く忙しい状況が続いてなかなか投稿が出来ないので更新が遅くなります。


デストロイヤー襲撃

警報が鳴り響き静かだった街の雰囲気が一気に喧騒へと変わる。街で如何やらまた何かあった様だ。俺の記憶を思い返しす限り最後に聞いた警報の内容はベルディアだったが今回は一体何だったのだろうか?

 

「おいおい…また何かあったのかよ前回からまだ時間はそれ程経っては無かったと思うんだけどな」

 

ボリボリ頭を掻きながら隣にいたウィズに悪態をつく。

 

「さあ、如何なんでしょうか。取り敢えず向かって見ない事には分からないと思いますけど、私は一旦店に戻って伝票の整理が途中でしたのでそれを済ませてから向かいますね」

 

彼女はくるりと踵を返し屋敷を後にする。如何やら彼女も何かを感じたのだろうか、ベルディア討伐作戦には参加しなかったのに今回は参加する様だった。

 

「取り敢えず二人を連れて行かないとな…部屋で大人しくしてれば良いんだけど」

 

墓の掃除は一通り終えたので、剥がした苔などや使っていた掃除道具を片付け終え屋敷に向かう。二人はウィズと話し始めている頃には草刈りを終えて各自休みに入っているので部屋にるのだろう。

幽霊の件が彼女達の中で納得していなかったのだろうか、二人の部屋はいざという時に互いがすぐ合流できる様にと近くの部屋を選択していたらしい‘。いつか時が来たら幽霊になってしまった彼女を紹介した方が良いのだろう。

 

「おーい二人とも居るか?なんか呼び出し掛かっているから行くぞ」

 

ガチャリと部屋を開けるとゆんゆんがグッタリとカーペットにうつ伏せで倒れており、横にあるテーブルに備え付けられた椅子に座りながら頬杖をついているめぐみんがいた。

 

「何やってんだよ…お前ら」

 

もはや何時もの光景とかしたこの状況に半ば呆れつつも二人に突っ込む。先程まであった緊張感が抜け切ってしまい若干脱力してしまう。

 

「ふん、私の前でまざまざと大きなものを揺らすのがいけないのですよ。お陰で気分を害しました」

「うっ…酷いよめぐみん…ただ着替えてただけじゃない…」

 

半泣きで横を向くゆんゆん、如何やら何か技を掛けられた様だ。

 

「はぁ…もう良いから準備を済ませろよ…」

 

ボリボリ頭を掻きながら扉を閉める。何だかんだ言って俺も作業着で装備を整えなくてはいけないので一度部屋に戻り掛けてあった冒険者の装備に手を掛ける。

ここ最近色々動く事が多かったためか服に少し解れ始めている事に気づく、そういえばゆんゆんと買い物に出掛けてからこの一張羅を着まわしている事を思い出す。なんだかんだ言ってベルディア討伐の際の報償金に手を付けて居ないので金には余裕があるし、また近いうちにでも買いに行かないといけなそうだ。

装備を整え再びラウンジに戻ると装備を済ませいつでもどうぞと言いたげな二人が居た、流石に未だに警報が鳴り響き続けている現状に危機感を感じたのか先程までの緩んだ表情から一転引き締まった表情をしている。

 

「準備は済んだ様だな、じゃあ行くぞ。まあ、どうせまたロクでもない様な案件だと思うけど締まって行こうぜ」

 

ええ、どんな相手でも私の爆裂魔法で一撃ですよ、と何時ものフレーズを聞き流す。嫌な予感は尽きないが案内にもあったギルドへと向わなければ何があったかは分からないので向かう事にする。

 

 

 

ギルドに向かう途中に街の人達がキャベツ事件の時とは対照的に大きな荷物を背負いながら俺達の向かう方向とは反対方向の街の外へと向かって行く。失礼だがその光景はまるで夜逃げをする商店街一同の様に見えた。

まあ今は昼なんだが。

不審に思いながら街に流れる放送を確認するため耳を澄ませると内容が冒険者の召集だった物に街の皆に向けた避難のメッセージが含まれていた。

 

「何か…今回はヤバめの雰囲気がするんだけど、俺の気のせいだったりしないか?」

 

念の為後ろの二人に確認するが、二人も街の雰囲気を察したのか

 

「さぁ、如何なんでしょうか?少なくとも私がこの街に来てからこの様な放送はなかったですね…」

 

ゆんゆんがおずおずと答える。

 

「私にも分かりませんね、でも何があろうと私はただ全てを吹き飛ばすだけですよ。この爆裂魔法でね」

 

ニヤリと中2的な笑みを浮かべながら決めポーズをとるめぐみん、お前はプレゼン中のジョブズか。

如何やら今回の様子を見るにベルディアが攻めてきた時とは違い、より事態は深刻な様だ。急ぐ気持ちもあるが焦って避難中の住民にぶつかってしまうと危険なのでペースは変えずにギルドに向かう。

 

 

街の喧騒から一転、ギルドに入ると異様な静けさに包まれた空間に全員とは言えないが冒険者が奥に設置されているホワイトボードに集まり何やら作戦会議をしている様だった。

 

「お‼︎何だカズマじゃねーか‼︎来ると思っていたぜ。早くこっち来な」

 

ドアを開けると金髪に見つかり会議の溜まりへと引き込まれる。二人を後ろへと残し集まっている人を掻き分けて最前列に出るとホワイトボードの左右の端に並ぶ様にカツラギと受付のお姉さんが配置され進行を取り仕切っていた。

そのホワイトボードを眺めると沢山の作戦名なのだろうか色々な文字の羅列が書かれてそれら全てに横線が引かれていた、如何やら現状いい案が浮かんでいない様だ。

 

「良いところに来たね、丁度君の意見が聞きたかった所だよ。あの魔王軍幹部であるベルディアの討伐を指揮した君の事だ何かいい案はあるんじゃ無いかい?」

 

最前列に躍り出た俺を見つけたのか、少し驚いた様な表情を浮かべたが、すぐさま元のキリッとしたキメ顔に戻しながら澄ましたようにこちらに考えを伺ってくる。

 

「いや…特に無いかな。そもそも何が起きてるか分からないからわざわざこうして聞きに来た訳だし」

 

ハッっと自虐気味に笑い飛ばすと、かっこ良く決めたかった目論見が叶わなかったのか目尻をひくつかせながらも笑顔で説明を始めた。

 

「確認も含めてもう一度説明しようか。今回の招集は単純だ」

「前置きは良いから本題から入ってくれよ」

 

時間がなさそうなこの状況に置いて前置きや前座などは要らないだろうと、彼の話の腰を折る。まあ一から説明を求めたのは俺なので言ってはいけないのだが。

 

「…コホン。では本題から入ろう、デストロイヤーと言う兵器がこちらに向かって進行しているらしい」

 

彼は咳払いをして自分を落ち着かせると再び説明を始めながらホワイトボードに描かれていた文字の羅列を消していき蜘蛛のような絵を描き始めた。

 

「形は細い8本足が特徴で中心の塊部分に重要機関があると推測される。これは昔に有ったとされる魔法大国ノイズにより対魔王用にと国家予算をふんだんに使用して作られた魔導要塞になっている。そして現在は何かの手違いかなんかで暴走し自国を破壊した後にこうして通りがかった街を破壊し尽くしている」

 

その後色々と話し始めるミツルギ。結局は俺知っているぜアピールが多いので割愛するが要は蜘蛛型の兵器が此方の街に向かって来ているらしい。

 

「大体の情報はこんな所だろう、それでだ。これを聞いて君は如何考えるんだい?」

 

話終え気が済んだのかようやく俺に話を振った。

 

「そんな事急に言われてもな…俺たちのやり方って言ったら高火力でゴリ押しして行くだけだしな。めぐみんの爆裂魔法をぶつけて吹き飛ばすくらいしか無いぞ」

 

はあ、と適当に答えを返す。いきなり概要を説明されて攻略方法を考えろなんて今のご時世ゲームでも無い位だ。まあ仕事となればどうなるかは分からんが。

 

「そうだ言い忘れてたね…デストロイヤーには周囲を囲む様な結界の様な防壁が貼られているんだ。実はこれが一番厄介でね魔法攻撃等を全て無効化してしまうんだよ」

 

奴は後になってとんでもない事を口走った。魔法を無効化する敵…いつかは出てくるとは思っていたがまさかこんな早くに出てくるとは思わなんだ。俺のパーティーの火力はほぼ二人のアークウィザードによる魔法が主であるので魔法を封じられた時点で無能の集になってしまうのだ。それを防ぐ為に何とか物理的なアタッカーになろうとして居るのだがやはり冒険者のステータスの低さが仇となってかこのザマである。

 

「それでその結界はどんな感じで貼られているんだ?本体一体を囲んだ球体状か?それとも膜の様に張り付いているやつか?魔法を感知してシールド的な奴が現れてくるやつか?」

 

結界と言ってもそれぞれに種類がある。逆転の発想でもし自分がその結界を張る力を持っていると仮定して、その状態で相手にどう破られるかを考えると自ずと答えが見えてくる物だ。なのでそれぞれの結界の貼り方によってあり得るであろうメリットデメリットを知る為にもこの情報は外せない。

 

「うーんそれはだね…」

 

俺の質問は予想外だったのか、困った様な表情を浮かべ受付のお姉さんへと視線を向けて回答のバトンを渡す。

 

「そうですね…これはあくまで私の考えですが、此方に残っている報告書には魔法攻撃はデストロイヤーに触れたが強力な結界に阻まれた、とありますので恐らくですが本体の表面を包む様な形で貼られているのではないでしょうか」

 

成る程、どうやら結界は膜状にデストロイヤーを包んでいることになる。球体状であれば通す物と通さない物の差を見極め攻撃方法を確立できたが膜の場合はそれが出来なくなる。だが膜状であるなら結界を少しで貫けば本体にもダメージを通す事ができる可能性がある。

 

しかし膜状では無く球体状で有ったなら結界内つまり足元に入ってしまえばそこから攻撃が可能だったのだが膜状となってしまえばその貫通させる方法が作戦のネックとなるだろう。漫画とかにある巨大なパイルバンカーなどの高火力物理的兵器などが有ればそれで解決なのだが、そんなものは帝都にあっても初心冒険者の集まるこの街にはないだろう。それにエレメンタルマスターが大穴を空けてそこに落としたらしいがその多足な足で織りなされる動きにより抜け出したらしく、仮にそんな物があっても当てることが出来るかどうか分からない。

ならばどうやってあの結界を破るかと言う話になるのだが、それを周りに聴きながら案を浮かべて白板に書き込んで行くがどうも的を得ない。

 

「なあカブラギ、お前のその剣であの結界を破れないのか?」

 

彼の持つ剣も一応は女神の与えた魔剣であり、その剣を持つだけでかなりのステータス向上の待遇を受けられると、いつだったか言っていた様な記憶がある。ならばあの要塞の持つ結界も破れるのではないだろうか。

 

「いやミツルギだって前から言っているのだけど…コホン!確かに僕の魔剣グラムで有ればあの結界は破れるかも知れないが、それはあくまで部分的な物になると思う。結界を破ったところですぐに修復されるだろうし無駄だと僕は思うね」

 

やれやれと言った感じだが内心はやや悔しいのか苦虫を噛み潰した様な表情になっている。

 

「他にお前みたいな魔剣持ちは居ないのか?」

 

ミツルギにだけ聞こえる様に耳打ちする。俺たちの存在はこの世界の住人に言ってはいけないのかは分からないが、他の人には言わない方がいいと思ったのでなるべくは大きな声で言わないように気をつける。

 

「…何名か心当たりはあるけど、今この街に居るのは多分君と僕の二人だけだね」

 

ボソッとミツルギに耳打ちされる。

 

「成る程な…」

 

あれ程の力を女神から受け取っていればそのチート使いにとってこの街はチュートリアルにあたる為、そうそう長居はしないのだろう。しかし普通こんな街に要塞が来るか?

頼れるチートはミツルギと俺の二人のみ、仮にミツルギに結界を一時的に破らせそこに黒炎を入れたとしてもそこからデストロイヤーを俺の炎で燃やし切る前に要塞がこの街にたどり着かれるのが落ちだろう。

話を聞けば地上に向かってのセンサーの様な感知器に上部にはバリスタ等々の対空設備もあると聞く。どうやって近づくのかも作戦で決めないといけない。

うーんと3人で首を傾げながら唸っていると、ウィズが此方に手招きをしてくる。表情からしてどうやら俺に用がある様だ。一体何だろうか?拉致が開かないので店の商品を持って避難したいとかだったら困るのだが…。

悪い一旦席を外すと二人に告げその場を離れる。

 

「どうしたんだいったい?」

 

周りの人達を掻き分け列の後方にいたウィズの下へ向かうと何やらこっそりとさっきの様に俺に耳打ちする。

 

「此処ではあれですので一度此方へ」

 

そう言うと彼女は俺の手を引きながらギルドの外へと引っ張っていく。これが逢瀬だったら良かったのだが今回は状況が状況なだけに違うだろう、今は一刻を争う状況なだけに出来れば早く済ませて欲しいものなんだが。

 

「此処なら大丈夫そうですね。」

 

街の住人は俺達を除いてほぼ全員避難したのでギルドの外に出るだけでそこは一種の人気の無い場所になるのだろう、前回めぐみんが座っていたベンチの前でウィズと二人きりになる。

 

「話は聞かせていただいたのですけど…結界どうと解くかですよね、それに関して少し参考になるのかどうかはわかりませんが…」

 

話が終わりに近づくに連れて語尾の方が聞き取りづらくなっていく。

 

「別に参考になるかどうかは聞いてみないと分からないし、役に立たなかったとしてもそれがきっかけで新たな作戦が思いつくかもしれないから頼むよ」

 

とにかく今は時間がない、彼女なりに気を使っているのだろうが此処まできたらその行為自体がもどかしい。

 

「この話はここだけの話なんですが…私は一度魔王の城に乗り込んだ事があるのですが、その為に結界を破る必要があったのですけど、その方法なんですけどカズマさんもゆんゆんさんが使用している所を一度見ているとは思いますがライトオブセイバーと言う魔法になります」

「あの魔法は本来は自身の魔力を圧縮放出して剣状に形成して的を切ると言うかなり魔力を消費する魔法になるのですけど、それ故に一時的にですが結界の類の障壁を打ち破れる事ができると思います」

 

成る程な…魔王の城に乗り込んだ事が凄く気になるがそれは今は置いておこう…それよりも上級魔法であるライトオブセイバーにより結界が一時的に破れる事が知れたのは僥倖だろう。正直ミツルギの斬撃で結界を如何にかしようと思っていたがゆんゆんとウィズの二人が居ればその手数が三倍になるだろう、それにより結界を破り中に侵入できるかもしれない。

 

「サンキューなウィズ、お陰でいい案が浮かびそうだ」

 

彼女に礼を伝えて再びギルドに向かう。

残る課題はどうやって近づくかだ…下から近づけばあの多足な脚により潰され、空から近づけばバリスタにより打ち落とされる…

 

「なあ、空間移動の魔法とかあったりしないか?こう一気に指定した場所に一瞬で移動できるやつでもいいんだけど」

 

戻る前に確認する、もし俺の考える以上での最高の転移魔法があったなら結界など無視してそのまま要塞の中へと移動してしまえばいいと思うのだが。

 

「一応テレポートという魔法がありますけど、一度行って登録する必要がありますし空中に飛ばして失敗したら最悪機械の中に埋め込まれる形で転移して一生そのままになってしまいますのであまりお勧めする事は出来ませんよ」

「マジか、それじゃ無理か…そうだよなそんなに現実甘くはないよな」

 

石の中にいる。某昔のゲームソフトの様な展開はどの世界も共通の様だ、ならば他の方法を考えなければいけなくなる。ゲームや他の作品を参考するなら巨大なパチンコ等々などがあるがそれを作るには時間がたりないだろうが考え自体は悪くは無いと思う。

此方も無敵バリア見たいな物を張りながら飛んで行ければいいのだが、彼女曰く風を纏って簡易的なバリアを張るような中級魔法はあるが俺の要望する様な魔法は存在しないらしい。

 

 

 

 

思考を続けながら再び二人の元へと戻る。やはり俺が抜けて新しい案がいくつか出た様だがどの案にも横線が引かれ没となってる。此処で何か画期的なアイディアが浮かんでいてくれればそれはそれで良かったのだがそれはなかった様だ。

 

「で、彼女時からの助言か何かは役に立ちそうなのかい?」

 

戻ると難しい表情を浮かべていたミツルギは顔を上げ俺に聞いてくる。

 

「あぁ、上級魔法にあるライトオブセイバーでも結界を一時的に破る事が出来るそうだ。けどその案を採用するの為に要塞に近づくには障害が多すぎる」

「そうか…でもこれでパズルのピースは増えた訳だね」

 

少し俺に期待していたのだろう、言葉は前向きだがミツルギの表情の曇りが強くなる。

結局の処要塞デストロイヤーは兵器としては完全無欠過ぎるのだ。俺やミツルギが参考にするであろうゲームなどの作品にに現れる巨大な存在には必ず弱点が存在するのだが、此処は異世界といっても現実でありその様な

物は設計の段階で誰かしらが気付き危険な要素を虱潰しに排除しているであろう。仮に弱点なる部分があってもそこは厳重に防御を固められ今からでは間に合わないだろう。

 

「そう言えばあの要塞が此処にくるには後どれくらい掛かるんだ?」

 

ふと疑問に思った。何だかんだこの会議に一時間程費やしているが、一向に巨大な要塞が来る気配が無く酒場自体は冒険者の声で騒がしいが外の様子は静寂そのものだ。

 

「そうですね…エレメンタルマスターから提供された情報から逆算すると残りの時間は後6時間程だと言われています」

 

その質問には受付のお姉さんが答える。どうやら何処かのエレメンタルマスターが精霊を使って俯瞰的に動きを観察していた処、その動きが直線方向で此方に向かっているそうだと情報を此方に流したらしく、その時の場所と方向そこにある山などの障害物を踏まえて計算した結果割り出されたらしい。

 

「成る程な…意外に時間はある様だけど」

 

そこまで時間があるなら俺の黒炎を飛ばす案も考えたが、そもそも要塞はまだ遠くにいるので合流するのに時間を取られゲームオーバーになる結果が見えた。具体的な指標が決まらない限りはこの6時間を使って待ち伏せをした上での短期決戦が妥当だろう。

 

「済まない、一ついいだろうか?」

 

唸っている処に女性が手を挙げた。何処かで聞いたことのある様な声の方向を向くと金髪碧眼の女性…ダクネスが居た。先程まで居なかった所を見るにどうやらこの騒ぎを聞きつけやってきた様だ。

 

「ダクネス居たのか、見なかったからてっきり逃げたのかと思ったぜ」

 

先程俺が来た時に言われた言葉を彼女に返す。やはり人間インプットされた事をアウトプットする傾向にある様だ。

 

「いや、冒険者を名乗っている以上逃げる様な事はしない」

 

人溜りの最前列に立ちなが彼女は堂々と宣言する。そしてそれに呼応する様に後ろから歓声が聞こえる、どうやら皆にはいきなり現れたダクネスがこの行き詰まった現状を打破する英雄に見えるらしい。まあ、映画とかを例にしてタイミングだけを見れば此処でいい案が浮かんで話が進む処だろうし。

しかし、皆には背中しか見えないから分からないが、その宣言した本人の表情は何かに対する期待を隠しきれないのか時折キリッとした表情が綻び愉悦に浸って恍惚とした表情が見え隠れしていた。

 

「お前…まさかあの要塞に突っ込もうとか考えては居ないだろうな」

 

そう、此奴はいわゆるMだ、それもドがつく程のな。そしてそんな奴が笑顔で進言して来るのだ結果はロクでもないことに決まっている。

 

「な、確かにそれが良いと最初は思ったのだが…だがしかしそれとはまた別だ」

 

その考えが一度でも思いついたらしく、図星を突かれた彼女はもじもじと抗議する。

 

「思ったのかい!!」

 

息を整え彼女の言う案に耳を傾ける。ドMと言ってもダクネスはアホでは無いのでもしかした本当に有用な意見が出て来るのかもしれない。

 

 

 

 

「成る程な…」

 

ダクネスが出した案はどうやってあの要塞に近づくかと言う今まさに欲しかった案の一つだったが、その方法があまりにもダクネスらしいと言うか、正直この女狂っているだろうと言わざるを得ない物だった。

 

「爆弾岩使って俺達毎吹き飛ばそうって作戦か…」

 

思わず口に出して反芻してしまう。

 

「そうだ、我ながら良い案だと思うのだが如何だろうか?」

 

はぁ…と溜息をつき呆れた様に頭を掻く俺に対して彼女は自信満々に胸を張り、この作戦が採用された際に起こるであろう光景に胸を躍らせているのだろうか、その様子はまるでご褒美をねだる子供の様だった。

 

「お前は殺す気か⁉︎爆発で俺達を要塞に飛ばす前に全滅するわ‼︎」 

 

アホか⁉︎と言わんばかりの剣幕で彼女に突っ込む、ステータスの高いミツルギならともかくステータスの低い俺達で人間大砲なんぞ放った日には最初の爆発の衝撃で粉々になってしまうのがオチだろう。

 

「そこは安心して欲しい、ベルディアとの戦いで気付いているだろうがこう見えて私の防御力はこの町でいやクルセイダーの中でも右に出るものは居ないだろう」

 

ふふんと自慢げに彼女はそう言った。

 

「いや、その代わり攻撃が当たらねぇじゃねーか⁉︎あの時どんだけ苦労したと思ってるんだよ‼︎」

 

彼女が言う様に全てのスキルポイントを防御に回している為かこの町のクルセイダーと比べてその防御力は桁違いだ、その代わり命中率が低く攻撃が当たらないのだ。もし彼女がバランスよくスキルポイントを割り振っていたのならベルディア討伐の際はあんな無茶苦茶な作戦はたてずそこまで苦労はしなかっただろう。

しかし、確かに彼女が盾になって間に挟まって爆破の際に此方に来る反作用の衝撃を受けてくれれば大丈夫な事は大丈夫だろう。

 

「まあ、出来なくはないけど。カブラギはそれで良いのか?」

 

念の為にミツルギに振る。この作戦が決行されれば間違いなく飛ばされるのは彼だろう、一応意見を聞き賛成票を貰わなければ後々面倒な事になりかね無い。

 

「ミツルギだって言っているだろう、いい加減そろそろお覚えてくれてもいいだろう、それともワザとなのかい?まあ、それは置いといて彼女が間に入って緩衝材の代わりをしてくれるって言うなら別にいいんじゃないか?」

 

名前の件は置いておいて如何やらミツルギは賛成らしい。性根はチキンだと思っていたが如何やら違ったらしい。

 

「ならば決定だな‼︎では早速爆弾岩を集めて来る‼︎」

 

ミツルギの了承を得るや否や、彼女はギルドを飛び出して言ってしまった。途中「前からやってみたかったのだ」と聞こえたが、なんだか物凄く嫌な予感がする。

 

「行っちゃったよ、飛ぶメンバーは他にも居るのに」

 

走り去って行く彼女を尻目に二人揃って唖然とする。俺より年上なのだからもう少し落ち着いて欲しいものなんだがそうはいかないらしい。

 

「仕方ない、二人には事後承諾という形を取るとして、残りの問題を解決しないとな」

 

取り敢えずはと白板の文字の羅列を消し、その上から今の所決まっている作戦を書き込んでいく。残る課題は空中から現れる敵に対しての迎撃システムに対しての対処と結界を一時的に破った後の事になる。

前者は風の中級魔法で弾くとして、問題なのは後者だ、足を狙ったとしても相手は8本足なので数本切り落としたところで残りで代用されるのがオチだろうし前方の管制室の様な部位があったと仮定した場合にそこを狙ったとしても何かしらの防御策を講じられているのがオチだろう。

ならば少し危険を冒してでも内部に侵入する方法選ぶべきなのだろうか?外壁に強力な結界が張られているということは要塞自体の強度自体は低い可能性がある。そこにうまくつけ込めれれば侵入できる可能性がある。

なので写真の様なもの、もしくはスケッチの様なものがあれば良いのだが、この世界にその様なものはなくさらに要塞を発見したエレメンタルマスターは現在何処かに避難したらしく外見を聞き出すこともできない。

 

「よし、決まった‼︎これで行こう」

 

パンと手を叩き周りを静かにさせると、これから行う作戦についての説明を始める。ベルディア攻略の時以上に運に作用される要素が多く、ソーシャルゲームとかでのチケット一枚で最高ランクのキャラを引き当てる様な難しさの気がしなくもないがそこら辺はなる様になるだろう。

 

「という訳だゆんゆん、俺達はクリエイターの作った乗り物に乗って爆弾岩の爆発に乗りながらあの要塞に行くことになった」

 

ポンと全体の説明を終えた後にゆんゆん方までわざわざ出向いて彼女の肩を叩いた。

 

「えぇぇぇぇえっぇぇ⁉︎私も飛んで行くんですか⁉︎3人で十分じゃないですか‼︎」

 

如何やら彼女は俺とウィズとミツルギの3人で行くものだと思っていたらしく、まさか自分が行くなんてと信じられない様な驚き方で叫んだ。

 

「いや、念の為というか呪文の方が範囲が広いだろ、それに俺はカブラギよりも俺の中で一番信頼できる仲間のゆんゆんを信じているんだ」

 

グッと彼女の両方を掴み真剣な眼差しで見つめる。

 

「えっ…一番…し…しょうがないですね‼︎そこまで言われるのでしたら私も期待に応えないとですね‼︎」

 

一番という言葉に反応したのか、彼女は上ずった様な声をあげ俺の考案した作戦に参加するのであった。

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