この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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遅くなりました。話を進ませようと思ったのですが予想以上にグダグダになってしまいました…


カズマの日常10

クリスに瞬く間に裁断されたミイラは音を立てずに灰燼へと帰した。残ったのは部屋のベットに寝そべった女性の骸骨と先程まで寝ていたと発言されたミイラの灰だけだった。

俺はその光景を眺めながら何も言えなかった。いや、何も言ってはいけない気がした。

クリスは呆然と床に積もった灰を見つめたと思うと、体勢を変えずにゆっくりと太刀を鞘へと戻して再び背中へと背負った。

 

「見苦しいものを見せちゃったね…」

 

深呼吸をし頬を叩いたと思ったら、彼女は此方へと振り向いた。その表情は悪戯がバレて恥ずかしそうに説明をする様な、照れた様なそして悲しそうな表情だった。

 

「いや、別に俺は気にしないよ。俺にも俺の事情がある様に、クリスにもクリスの事情があると思うんだ。クリスだって俺の事余り聞かないだろだったら俺も聞かないのが筋ってもんだろう」

「へぇ…君、意外に優しいんだね」

「当たり前だろ、俺を誰だと思ってるんだ?アクセルでも知らない人は居ないカズマさんだぞ」

「そうだね。まあ、それが悪評じゃなきゃ良かったんだけどね」

「うぇ…それを言うなよ」

 

かっこよく決めたのだが、最後の所で普段の私生活が裏目に出てしまった様だ。今度めぐみんが油断してカエルに食われてベタベタになって、処理が面倒だから街の小川に突っ込んで洗浄するのはやめておこう。

 

「まぁ色々あってね、そこの女性の人に旦那さんが1人で苦しまない様に何とかして欲しいって頼まれちゃってね。前からこのダンジョンを探ってはいたんだけど中々この部屋まで到達できなくって参っていたんだよ、そしたらギルドの人がこの場所に通じるかもしれない隠し通路を見つけたって言うからこうして君を連れて来たって訳さ」

 

どうやらそこに横たわっている骸骨の人と話す機会があったらしい。とても彼女には霊感がある様にはって言うかそもそもアンデットが居る時点で霊感もクソも無いが、多分教会のシスターか何かに仲介されたか、未練を残して幽霊か何かになって彼女に伝えたのだろう。

 

「へーそうなのか。それでその刀っていつも集めている神具ってやつか?」

「あーこれね」

 

聞かないとは言ったが、やはり気になって仕方が無いので聞くことにした。だが、もし彼女が答えに渋る様だったらすぐ話を切り替える算段ではあるが、出来れば聞いておきたかった。

 

「これは神具と言えば神具だけど、今まで見てきたものとは少し毛色が違うかな。これは女神の祈りを集約して結晶化したものを刃に鍛錬したものだよ」

「なんだそれ?具体的に違いが分から無いんだけど」

 

そう言えば神具は持ち主が決まっており、それ以外の人間が使用すればかなりの制限を受けると言っていた。例えば俺がミツルギの剣を奪ったとしても所有権はミツルギのままなので、俺のステーテスに補正は掛からず、かつ切れ味が落ちるらしい。

なので、これがいつもの神具であれば能力が低下するので流石のクリスと言えどもあのミイラを最も簡単に裁断することは出来ないだろう。ならばあの太刀は一体何なのだろうか?

 

「まあやってみればわかるよ。えい」

 

可愛い掛け声を発して彼女は背中の太刀を抜き、その声色に反して残酷にも俺の体を一振りで上下に真っ二つに薙いだ。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎何すんだよ‼︎」

 

クリスが薙いだ刀身は俺の胴体部を右から左へと通り抜け、何事もなかった様に再び鞘へと納まった。俺はその光景に驚き慄いたが、俺の胴体が上下に分かれることは無く、依然として俺の体は生命活動を続けている。

どうやら彼女の持つ刀は選択的透過性を持つのだろうか、何かしらの基準を持って切れるものと切れずに透過する物を選択しているのだろう。あのミイラを切り裂いたと言うことは、対象はアンデットかそれともモンスターか…

 

「はははっ‼︎そんなびっくりしなくても大丈夫だよ」

「大丈夫な訳あるか‼︎こちとら死ぬかと思ったんだぞ‼︎頼むから心臓に悪い冗談だけはやめてくれよ‼︎」

「まあまあ落ち着いて、さっき言った様にこの太刀は女神の祈りを収束させてできた結晶を鍛えた物になってるから、アンデットや悪魔とか魔性なる物やそれに由来するものしか切ることが出来ないんだよ。だから君みたいな普通の人間を切ってもさっきみたいにすり抜けるだけって訳さ」

「だからってやって良いことと悪いことがあるだろ⁉︎切れなくてもショック死するわ‼︎」

「それに関してはごめんって言ってるじゃん‼︎」

 

笑いながら説明する彼女に対して何とか表情が引き攣り掛けたが笑い返した。確かに透明に透き通る刀身を見ればそんな事を予想できたかもしれないが、だからといって切られて大丈夫と言う訳では無いのだ。

このままだと話は平行線になりかねないので取り敢えず話を置いて置き、彼女の話の続きを促す。

 

「そうそう、で、話は戻るけど祈りに由来する以上はアンデット系に対してかなりの弱点になるわけさ、何せ女神の祈りは最高峰の退魔魔法以上の効果があるからね。リッチーでも防ぐことは不可能なんだよ」

「へぇーそうなのか」

「まぁ、取り敢えず話は後にして、そこにあるお宝を持って帰ろうか。多分罠は仕掛けられてはいない筈だよ」

 

彼女が再び太刀を背負い部屋の奥に乱暴に置かれた金品を指差す。それはこの迷宮の最深部である此処に辿り着いたものに対する報奨の様な物だろうか、それなりに価値がありそうな品々がそこにはあった。

 

「へへへ、コレだよコレ‼︎コレがあるからダンジョン探索はやめられねぇぜ‼︎」

「おーい、口調が明かに悪者になってるぞー。それに君はダンジョン初めてとか言ってなかったけ?」

「そんなこと言うなよ‼︎折角の雰囲気が台無しだろ‼︎」

「ははは…君は盗賊というか強盗だよね」

「何言ってんだよ、俺は冒険者だぞ‼︎辛く苦しい冒険の果てにはこう言ったお宝があるのは常識だぜ、それにこんないい物頂かない方が失礼ってもんだぜ‼︎」

「はぁ…まあ別に良いんだけどね」

 

彼女は、今まで気怠そうだった俺の態度がお宝によって一転した事に呆れながらせめてもの餞と部屋を軽く掃除し始めた。

俺はそんな彼女に気にも止めずにお宝をバックに入れていた袋に詰め始める。感知スキルの視界なので色は分からないが触った質感からか相当なお宝だろう。

コレはかなり分け前をクリスに持っていかれたとしてもかなり残るぞ、今夜は4人でパーティーだな。

 

 

宝をカバンにしまい背中に背負うと、彼女は先ほど裁断したリッチーについての話を来た道を辿り帰りながら話し始めた。

先程のミイラの名前はキールと言い、国の中でも一流のアークウィザードと謳われていた者だった。そして彼はその才覚に見合った功績を挙げ、国からの褒美何でもやろうと御決まりの台詞に対していの一番にその王の妻を選択されたそうだ。

まあ、妻と言ってもその当時の貴族は一夫多妻制を行なっていたため、地位や人脈などの社交的関係により無理やり嫁がされ、そしてそれだけでは無く先に嫁いだ他の妻たちに出の悪さなど指摘されるなど様々なイジメを受け、最悪な事に国王はその状況を黙認していたらしい。

そこでキールは彼女を報酬に選択した。どうやら何でも褒美をくれてやろうと豪語しておいて出来まで来ませんでしたでは、王家のメンツに関わるのでその場では許可を出して無事に結婚をされたそうだ。

だが、やはり王様はそれを良しとしなかったのか、王家に使える騎士などを自国の国防に影響がない範囲で追手として彼に差し出したらしい。しかし彼はその追手を自慢の魔法で尽く返り討ちにして逃亡を始め自国を後にしたらしい。

数々の英雄的なエピソードを繰り広げながら彼は病気に罹ってしまい、それでも彼女を守りたかったのでリッチーなる選択肢を選んだそうだ。

 

人1人のためにリッチーになる。それには大きな覚悟が必要だっただろう、リッチーになれば生物特有の寿命の概念がなくなり死を克服してしまう。それは、その時の現状とは逆に妻を守り切った先も人生が続いていく事になる。

そして彼は妻を看取った後に何をするでも無く自身の体が自然淘汰によって朽ち果てていく様に先程迄長い眠りについてていたらしい。

 

「…成る程な、そんな事があったのか」

「そうなんだよ。まぁ全部隣に居た彼女に頼まれた時に聞いただけだから完全に全てが正しい訳では無いと思うんだけどさ。でも、そんな優しい人をこのまま放って置くのは流石に出来ないから、こうして出向いた訳なんだよ」

「そうなのか。まぁ、でも間違ってはいないんだと俺は思うぜ」

 

クリスに切られる前、椅子に座り滅びの時を待っていたリッチーは何処か安堵したやり遂げた表情をしていた事を思い出す。彼はもう後悔は無いと安らかに眠っていたのだ。

 

「なぁ、話は変わるんだけどさそろそろ目隠し外してもいいか?いい加減疲れてきたんだけど」

「あーまだ駄目だね、取り敢えず街に戻るまでが修行だから」

「マジかよ⁉︎キツ過ぎないか?」

 

あまり気にしない様にしていたが、先程から長時間能力を発動し続けている為か疲労で精神が限界だ、そろそろ休憩かそもそもの目隠しを外したい所だが彼女はそんな事はさせないと、バインドか何かの魔法で目隠しを固定し外れない様にした。

 

「おい、コラ‼︎ふざけんな…クソ‼︎外れねぇ‼︎」

「ははは、無理やり外そうとしても無駄だよ。今の君じゃあ私のバインドは解けないからね」

 

無理やり外そうとするが、ガッチリと固定されている為結び目を引っ張ってもびくともしない。ブレイクスペルを使用使用しようとしたが、感知で彼女が何か警戒していることから多分対策をしている事がわかるのでやめて置く。

仕方なしに諦めて両手を上げて降参する。

 

「そうそう、物事は諦めが肝心だよ。そのまま観念して暫く着けているんだね」

「はぁ…全くクリスには敵わねぇよ」

 

迷宮の主が消えたからか、ダンジョン内の雰囲気が変わり何処か物静かになった様子を肌で感じながら道を戻る。敵もある程度駆逐してしまったので次に向かった際にはまた違ったアルゴリズムを持ったモンスターが現れるかもしれない。もう来ることは無いだろうが次来る様な事があるなら用心しておこう。

背中に背負った宝の重みを感じながら入り口前の階段を登る。ダンジョンを出ると時間が遅いのか、来た時に感じていた暖かな雰囲気はなくなり何処か肌寒くなっていた。

 

「あちゃーもう夕方か、また急いで帰りたいところだけど、流石の私もそこまでスパルタじゃ無いからね。諦めて夕方の便を夜の便にしてゆっくり山を降りようか」

「そうだな、それが良いと思うんだけど。なあクリス…この目隠しは…」

「え?外さないよ。言ったでしょ街に帰るまでが修行だからって」

「はぁ…そうだよな」

 

山をゆっくり降りれるのは良いのだが、それに比例してこの感知スキルを持続し続けないといけないので、俺からしたらどっちもどっちな気がしなくも無い。コレだったらいくつかのスキルを取らないでテレポートでも取っておいた方が良かった気がする。

諦めて行きで登ってきた山道を下っていく。こうして降りてみれば分かるのだが、意外と登るよりも降る時の方がキツく感じる。もし彼女が強行突破で全力で降り始めていたら間違いなく俺は転んでいただろう。そうなれば背中に背負っている宝が傷付き台無しになる所だった。

 

山の麓に着く頃にはすっかりと夜になっていたのだろう、彼女が結局そうなったかーと言っていた。一応ゆんゆんには遅くなるとは言っていたが流石に日付を跨ぐのは避けておきたい。

麓の屋根付きのベンチで馬車を待っていると、時間になったのかアクセルに向かうバスが向かってくる。

馬車に乗り込む際に運転手に目隠しをしている事が目に入ったのかギョッとした様な表情で此方を見てきたが、クリスが今日はサプライズパーティーがあるんですと言いながら誤魔化して難なきを得た。

馬車の荷台にあたる部屋に入り荷物を降して一息付くと時間になったのか地面が揺れ出した。どうやら今回も乗客は俺とクリスの2人となっている様で小屋には誰の気配も感じなかった。

 

「所でこの宝と報酬はどう分けるんだ?半分にするのか?それともクリスに殆ど持っていかれる感じか?」

「あー、報酬ね。それだったらそのお宝は君が全部持っていって良いよ、殆ど君が此処まで運んできたからね。私はクエストの方の報酬だけで良いよ」

「良いのか?このクエストの報酬と換金したこの宝とでは大分差が出てきちまうけど?」

「良いよ、私はそんなにお金が必要な訳じゃ無いし、いつもクエストとかの報酬は生活費を除いて全部教会に寄付しているし」

「そうか…だったら頂くよ。ありがとな」

「まあ、その代わり神具とか出て来たら頂くからね」

「おうよ、任せておけ。俺には使いこなせないからな」

 

どうやらこの宝は俺の独り占めにできる様だ。しかし、彼女が此処まで無欲だとこっちはそれが不安になる、世の中はギブアンドテイクで成り立っていると俺は考えている以上、何かしらの還元を彼女は受け取っている可能性があるかもしれない。まあ多分俺の考えすぎだろうが、それでも用心するに越した事はないだろう。

一体彼女は俺を鍛えてどうするのだろうか、聞けばもしかしたら教えてくれるかも知れないが、聞けばもう戻れなくなるかもしれない危険性があるので怖くて確認できない。

 

そんな事を考えているうちに疲労がピークに達していたのか、気づけば寝てしまっていた。

 

「おーい、着いたから起きなよ‼︎」

「おわっ⁉︎」

 

トントンと肩を叩かれて目を覚ます。目を開けると視界が真っ暗だったので驚いたが、そう言えば目隠しをしていたのを思い出し、すぐさま感知スキルを発動して周囲を確認する。

まだ完全に目が覚めていないのか、まだ気配がボヤボヤだが馬車の外に色々な建物があることからクリスが言った様にどうやらアクセルに着いたようだ。

 

「あぁ、悪いな。どうやら寝ちまったみたいだ」

「別にそれは構わないけど、早く降りないと馬車が出発できないよ」

「そうだな、それよりも…」

「いいから早く降りる‼︎」

 

彼女に無理矢理引っ張られ馬車を下ろされる。馬車を降りるとクリスが馬車の主に謝罪をし、ついでに俺の頭を素手で鷲掴みにして下げた。

 

「私の仲間が迷惑を掛けてすいませんでした」

「良いんだよ、べつに気にしないでくれ。それにその子今日パーティーの主役なんだろ早く祝ってあげなさい」

「はい、分かりました。ありがとうございます」

 

そう言えばそんな設定だったなと頭を下げながら思い出す。夜風に当たったからかかようやく目が覚めて来た。

その後2人で礼をいい、馬車を見送る。

 

「全く、あの人が良い人だからってボサッとしてちゃ駄目だよ」

「あぁ、悪い悪い、おもいっきり寝ぼけてたよ」

 

どっかの誰かさんがスパルタで疲れたんだよ、とは流石に言えなかったが中々に理不尽だろうと思った。

 

「そうだ、そろそろコレ外してくれないか?さっき寝たとは言え、いい加減疲れたぞ」

「そうだった街に着いたら外す約束だったね。すっかり忘れてたよ」

 

今度はこっちの番と言わんばかりに責めると、彼女は笑いながら悪びれると俺の目隠しに掛かったバインドを解いた。

 

「おぉ…久し振りの外の景色だ」

 

バインドを解かれ目隠しを外すと、最初は眩しかったが久し振りの色の付いた視界に感動を覚える。やはり大切な物のありがたみは失ってから気付くと言う事がハッキリと分った。

しかし鮮やかな反面、先程まで全方位確認出来ていた万能感が無くなり背後の光景が分からない不安に駆られる。それを取り除くにはどうやらこれから感知のスキルを併用しなくてはいけないので、また面倒な事になりそうだと課題がどんどん増えて行く事に肩が重くなる様な気がした。

 

「ふふふ、次会う時には目を開けていても出来る様になっていてね」

「はぁ…どんどん課題が増えていく。なぁ俺は後何個課題をこなさないといけないんだ?」

「そうだね…他にも色々あるけど、多分次くらいで修行は一応ひと段落だね」

「マジか!よっしゃーって‼︎ひと段落かよ⁉︎」

 

喜びも束の間、これでひと段落という事はこれから先もこんな事が続いていくのだろう。強くなって行く自分自身に満足感はあるがそろそろゴールが見えないと辛いものがある。

各種目を極めた選手でもゴールが分からなければ頑張れないのだ。

 

「取り敢えずギルドに向かおうか、私この後用事があるんだよね」

「そうなのか…って事はこの後も仕事か?あれだけ動いて仕事って相変わらずクリスの体力は化け物みたいだな」

「そんな事言わないでよ‼︎これでも1人の乙女なんだよ」

「…ぶっ‼︎あれだけ俺をボコボコにしておいて乙女って、色々おそ…グハッ‼︎」

「余計な事言うと温厚で有名な私も流石に殴るよ」

「もう殴…ってんじゃ…ねぇか」

 

仕返しと言わんばかりに弄ると、目で追えない程凄いスピードで俺の鳩尾を殴られたのか突如腹部に激痛が走った。そのあまりの威力に一瞬呼吸が止まり身動きが取れずに膝から崩れ落ちる。

 

「ほら、ふざけてないで早く行くよ。あまり待たせたく無いから」

「ちょっと待て、誰のせいで…ちょっと待て‼︎立てるから引きずるな‼︎この装備買ったばかりなんだよ」

 

余程急いでいるのか、ポワポワした雰囲気に反して強引に俺の首根っこを掴んで、そのままギルドの方へと引きずっていった。抵抗したが彼女の握力はまるで万力の様に離れず、仕方ないので上手く地面に足をつけながら必死に装備が汚れない様について行った。

 

 

その後、ギルドにて新しい道のマップデータを提出しクエストの報告を済ませると、彼女は別れの言葉と共にそそくさとギルドを後にしてしまった。如何やら急いでいたのは本当だった様だ。

そしてポツンと残された俺は1人寂しく今回持ってきた宝を鑑定に出した。

 

 

 

鑑定に出して、現金に換金するには時間が掛かるので、待っている間適当にシュワシュワを飲んで潰そうと席を探すと見慣れた人物が席に座っている事に気づく。

折角なので一緒の席に座ろうと思い近づくと、めぐみんと見えなかったが対面の席に酔い潰れてノックダウンしているゆんゆんが居た。

 

「お、なんだ2人も此処に来ていたのか‼︎てっきり屋敷でくつろいで居るかと思ったぜ」

「おや、カズマですか。用事とやらはもう終わったのですか?」

「おう、何とかな」

「折角今日買った装備がボロボロになる位ですからね、余程のことがあったのでしょう」

「全くだよ…お陰で今日はこの後補修だよ。それで何でゆんゆんは潰れているんだ?」

 

自制心が強いゆんゆんの事だ、普段なら此処までベロベロになる事は無いのが、俺が居なくなった後に何かあったのだろうか?飲んだ暮れに絡まれて無理矢理飲まされる事はあったが、それだとめぐみんが今ほろ酔い位なのでそれは無いだろう。

取り敢えず潰れているゆんゆんの隣の席に座り、注文したシュワシュワが届くのを待つ事にする。

 

「そうですね…あまり言うとゆんゆんに襲い掛かられかねないので伏せておきますが、取り敢えずカズマが原因とだけ言っておきましょうか」

「何だそれ?俺が何かしたっけか?」

「逆ですよ。何もしないからこうなっているんですよ。全く、ボッチを引き取ったなら最後まで面倒を見てくださいね。これでも一応私の親友なんですから」

「ふふっ」

「何が可笑しいんですか?」

「いや、だって普段ゆんゆんが私達友達よねって言うと否定するかあやふやにして誤魔化していたからさ」

 

めぐみんはゆんゆんに対してはツンデレになる様だ。

そのことを本人に指摘すると、恥ずかしそうに耳を真っ赤に染めた。なんだかんだ言って昔からの腐れ縁って言ってたから仲がいいのだろう。

 

「はっ‼︎何を言い出すのかと言えばそんな事ですか。まあ自分で言うのも何ですが友達と言うとゆんゆんはすぐ調子に乗るのでなるべく言わないんですよ。それに必死に私との縁を確認する様がどうにも面白可愛いと思う自分がいるのも分かっています」

「ああ、それな。確かに必死になっているゆんゆんは可愛いよな」

 

シュワシュワが届き、互いに酔いが回って来たのか、本人を隣にしてゆんゆんに対して普段話さない恥ずかしいトークを繰り広げた。

 

「ところで、今日は何をやっていたのですか?わざわざこんな時間まで遊んでいたわけではないのでしょう?」

「ああ、そうだな。まあ簡単に言えばトレジャーハントだな」

「成る程、盗賊の方とつるんで居たのはそう言う事だったのですね」

「そうそう。それで今発見したお宝の鑑定待ちなんだよ。今回は大量の収穫だったぜ」

「本当ですか⁉︎」

「おう、もちのロンだぜ。ガッポリ儲かったら今日のところは俺の奢りだ‼︎」

「やりました‼︎では今日はいつも頼めない高い奴を頼んでも良いですか‼︎」

「おう、飲め飲め。何せ臨時収入だからな‼︎いくら使っても家計には響かないからねぇし‼︎」

「ゆんゆんには悪いですが、今日は羽を伸ばそうじゃないか‼︎」

 

久し振りの馬鹿騒ぎに気を良くしたのか、後半は値段を気にせずに注文をし始め、最後の方には他の冒険者を交えてのパーティーとなった。

 

 

 

 

 

「うぇ…気持ち悪い…」

 

気が付くと周りのメンバーも飲めないのかバタバタと酔い潰れ椅子やテーブルなどお構いなく寝っ転がっていた。この状況でモンスターが攻めて来たらこの街も終わりだなと思わなくもない…。

俺はと言うと疲れていたせいもあってか気がつくとかなり酔いが回ってしまい吐き気と頭痛に悩まされている。宝は鑑定の結果かなりの値打ち物だったらしく、結果としてプラスとなったが、この惨状を見るにこれで良かったのかと疑わずにはいられない。

取り敢えず最初から寝っ転がっていたゆんゆんを小脇に抱えてめぐみんを探す。暫く人の溜まりを探すと端の方で爆裂魔法を打った後の様にグッタリと彼女が伸びていた。

 

「おーい。生きてるか?」

 

べしべしと頬を叩くと、うーんと唸りながらめぐみんが半目開きでこちらを見る。どうやらまだ酔っ払っている様だ。

 

「何だカズマですか…」

「何だとは何だ、お前たちの世話係のカズマさんだぞ」

 

彼女達、特にめぐみんが俺の目を離した隙きに色々と問題を起こすので、それを解決、又は事後処理をしている間にそんな渾名がついていたのだ。

まぁ、クズマだのゲスマと呼ばれるよりはマシだが、だからと言っていいわけではないのだ。

 

「カズマは…まあ私にもですがゆんゆんにもっと構ってあげてください。ゆんゆんは多分カズ…」

 

パタンとめぐみんが意識を失い、寝息を立てて落ちてしまった。

そう言えばなんだかんだ言って装備を買いに行くまであまり相手にしていなかった事を思い出す。出来ればこのままゴロゴロしていたかったが、明日からはまた3人でクエストに行こうと2人の寝顔をもながら思うのだった。

 

「って、起きろよ‼︎お前らが寝たら誰が運ぶと思ってるんだよ‼︎」

 

必死に揺さぶるがめぐみんが起きることはなく、ゆんゆんを運びながらめぐみんに荷物を運んで貰う作戦が台無しになってしまい、結局3人の荷物と2人の女子を俺1人で運ぶハメとなってしまった。

ポケットに残っていたマナタイトを使用して魔力を回復させ、支援魔法を重ね掛けして筋力を上げたら、力任せに荷物を背負い2人を両脇に抱き抱えて酒場を後にする。

悔しいが、クリスのシゴキのお陰で昔まではめぐみん1人で精一杯だったのが今では軽々と2人運べる様になった事に気付く。このまま行けば本当に他の転生者の連中に追いつけるかもしれない。

 

 

 

その後2人を抱えた状態で屋敷へと戻るとラウンジのカーペットに2人を転がし、そこら辺に掛けてあったブランケットを2人の上に掛けた後、体が冷えない様に薪を焚きながら暖をとる。

支援魔法をかけて余裕だったとは言え、それなりに動いたので酔いが醒めてしまう。それはそれで勿体無いので冷蔵庫に相当する箱から前に貰ったシュワシュワを取り出してカエルの干物と2人の寝顔を肴に一杯引っ掛ける事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日の光がが部屋に差し込み、目が醒める。机に突っ伏した状態で目が覚めた所から昨日はどうやらシュワシュワを飲みながら寝てしまった様で、朝にそれが祟ったのか首肩に違和感を覚えたので回復魔法をかけ誤魔化す。二日酔いはブレイクスペルを掛けると治る事が、前にふざけて発動させた時に判明したので速かに発動させて直す。

周りを確認するともう夕方だと言うのに2人はまだ寝ている様で、昨日と同じ体勢で床に寝そべっていた。

今日は特に用事が無いのでシャワーを済ませ体をサッパリさせると、そのままリビングで夕食を作り2人が起きるのを先に食べながら待つ。

そしてちょうど食べ終わった頃だろうか、チャイムが鳴り突然の来訪者が現れる。何だと思いながら2人をそのままにして外に出ると、そこにはきっちりとした青色の詰襟を来た女性と彼女に連なる様に屈強な部下達が俺に疑いの眼差しを向けながら立っていた。

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