この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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トレジャーハンターカズマ

目が醒めると知らない天井と背中の藁の感触でここが異世界だった事を思い出す。

 

「はぁ〜あ」

 

軽く欠伸をし、体を色々動かしストレッチを行いこの世界に着て来たジャージに着替えギルドへと向かう。

 

昨日飲みすぎたせいか体が怠い、本来なら休みたいがゆんゆんを待たせるのも悪いな…

ギルドに着いたら水でも貰おう。

 

ギルドに着き周りを見渡すと隅の席にゆんゆんが一人突っ伏していた、多分二日酔いだろう。

近くにいた酒場のウエイトレスに温かいスープと飲み物を頼みゆんゆんの元に向かう。

 

「あぁ、カズマさんおはようございます…」

「おはよう、ゆんゆん」

 

ゆんゆんは俺に気づくとゆっくり顔を起こしこちらに顔を向け、安心したのか少し微笑みながら再び突っ伏した。

 

「なんだ、体調が悪いなら休んでおけば良いのに」

 

俺は自分の事を棚上げし、ゆんゆんに気を使うと

 

「だって‼︎今日来なかったらカズマさん他の人とパーティ組んでしまうかもしれないじゃないですか‼︎」

 

ゆんゆんは突っ伏しながら叫ぶ、その声色には哀愁が漂っている。どうやら過去に何かあったのだろう、触れないでおこう。

後、居なかったら他の人を探そうと思ってたのは墓まで持って行こう…。

 

「お待たせしました」

 

凄いタイミングでウエイトレスから注文の品が運ばれ、それをゆんゆんにまわす

 

「ほらゆんゆん、これでも飲んで少し休もうぜ」

 

ギャーギャー過去の話をする彼女は止まり。

 

「え、これは私に?」

 

驚いたのか、皿と俺を交互に期待半分、何かないか警戒半分でみる

 

「そうだよ、ゆんゆんは同じパーティーでやって行くんだからこれくらい当然だろ」

 

ポンと彼女の肩に手を当て、反対の手で親指を立てる

 

「か、カズマさん」

 

それを聞いた彼女は感動したのかウルウルと涙を滲ませながらスープに手を伸ばし口にする。

こんなに便利なアークウィザード、そうそう手放すものか。

スープを飲み終えると再びグッタリと机に伏せるゆんゆん

 

「すいません、スープありがとう御座います…ですけどまだ調子が良くないのでクエストは午後からに…」

 

スースーと俺が居なくならないと安心したのか、彼女は寝てしまった。

 

「えぇ…ってちょっと待って!起きろゆんゆん、スキルとか色々教えてくれよ‼︎」

 

体をゆさゆさ揺らすが起きる気配はなく 、ただスースーと心地良さそうな寝息が聞こえるだけである。

とりあえずジャージの上着を彼女にかけ、これからどうしようと考えていると

 

「ねえねえ聞いたよ、君冒険者なんだって?盗賊スキルで良かったら教えられるよ」

 

席に座りながら冒険者カードを眺めてると、先程の話を聞いていたのか頬に傷のある銀髪の少女が立っていた。

 

「え、ぜひぜひ‼︎でも盗賊スキルって何が有るの?」

 

俺は即答で返事をすると

 

「元気いっぱいだね、盗賊スキルは使えるよー罠の解除に敵感知、潜伏に窃盗持ってるだけでお得なスキルが盛りだくさんだよ、それにポイントも少ないしどうだい?いまならクリムゾンビア一杯でいいよ」

「お願いします‼︎」

 

即座に飲み物を彼女に注文し、彼女から職業やスキルについて話を聞く。

彼女の名前はクリス、そしてどうやら冒険者にはスキルは無く、他の職業の人に一つ一つに教えてもらう事で習得ができるらしい。

中々便利だが、必要ポイントは多く威力性能はやや劣るらしいが多彩性が有るので何とかなるだろう。

一通り話を終えるとゆんゆんを受付嬢に任せ、ギルドの外の広場に出ようとすると、クリスが

 

「ちょっと待ってて、技を教えるのにもう一人必要だから」

 

てててっと、彼女は他のテーブルに座っていた金髪で全身鎧を纏った女性としばらく話すと一緒にこちらに向かってくる。

 

「紹介するね、彼女はダクネス。クルセイダーで前衛を勤めてもらってるんだ」

 

年は俺と比べて一つか二つ上だろうか、整った顔立ちに凛とした風格を持った彼女は宜しく、と軽くお辞儀をする。

 

「カズマです、冒険者やってます」

 

うす、とこちらもお辞儀をする

 

「彼女も私も基本暇だからクエストする時によかったら誘ってね」

 

自己紹介が終わるとここでやるのも何だからと人気のない広場に移動する。

 

「ここら辺でいいか、ダクネスはここで立って待ってて」

「?、まあ構わんが」

 

クリスに言われダクネスを広場に立たせると、今度は俺を物陰に引っ張り

 

「いいかい?これから私が潜伏を使いながら彼女に近づいてこの石を投げるから、君はそれを見ていて」

 

クリスは地面の小石を拾いながら言うとそのまま樽を持ち上げスッポリ上から被り、ダクネスの後ろに回り込む様に進んでいく、一方ダクネスは何が何だかわからないと言った様にボーっと景色を眺めている。

潜伏を使っているであろう彼女の気配は全く感じられず、一度目を離せば見失いそうになるくらいに存在が薄くなっている様だ。

 

「ん?」

 

そのままダクネスの後ろに移動したクリスはタルの中から腕を出し、そのまま立ち尽くしている彼女に向かってどこからか出した石を投げた。

 

「痛っ⁉︎」

 

何も説明されていない彼女からすれば突然やってきた後頭部の痛みに顔面を歪めながらその石が投げられた方向を向くと、そこには潜伏スキルを解いて笑っているクリスがいた。

 

「敵感知、敵感知…おぉ‼︎ダクネスの殺気を感じるよ‼︎…ってちょっとダクネス⁉︎これはスキルを教える為だって言ったよね‼︎ま、待って‼︎ちょっと待ってってあぁぁぁぁぁあぁぁ‼︎」

 

どうやら感知スキルを教える為にわざわざ潜伏スキルを解いた様だが、タルを被って動けない彼女はいい的になってしまっていた様で、スタスタとダクネスは身動きの取れない彼女の元に辿り着き樽の淵を掴むと、何の容赦もなくその樽をそのまま横に回し転がしていった。

 

こんなんでスキルを習得できるんすかね…

 

 

「こほん、さてお次は私の得意なスキル窃盗だね、これは相手が君でも大丈夫だと思うから…」

 

ダクネスに転がされボロボロになった彼女は息を切らしながら次のスキルの説明を始める。因みにダクネスは気が済んだのか近くの木陰で休んでいる。

 

「このスキルは相手の持っているものを何でも一つ奪える事ができるんだけど、まぁ試しにいっちょ「スティール」」

 

話していてめんどくさくなったのか、彼女は手を突き出して叫ぶと手から光が広がり、気づけば彼女の手の中には俺の財布が握られていた。

 

「あー‼︎俺の財布⁉︎」

 

一瞬の間に俺の生命線で有る財布が取られてしまった。

 

「これで大体分かったでしょ、じゃあ財布を返すから…」

 

クリスは財布を俺に返そうとするが、寸で止められる。

え?と驚いて彼女の顔を見ると、彼女はイタズラっぽく笑いながら。

 

「そうだ勝負して見ない?スキルをここで習得してそのまま私にスティールをかける、この財布を取り戻すなり私の財布と交換するもよし、そして一番の目玉はこのダガー‼︎40万エリスはくだらないよ」

 

成る程、クリスの提案は面白い…酒場ではスティールは自身の幸運値に依存するらしいと聞いている。ちなみに俺の幸運値は全ステータスの中で最も高い。

 

あれ?ワンチャンいけるんじゃないか?

 

「おっしゃー‼︎その提案乗った」

 

すぐさまカードを取り出し、窃盗スキルとついでに潜伏、敵感知を習得する、ポイントはだいぶ無くなったが大丈夫だろう。

 

「準備は大丈夫?さぁどこからでもどうぞ」

「何取られても知らねーぞ‼︎「スティール」」

 

手を前に突き出し唱えると、一瞬光が広がりそして手の中に何か掴んだ感触があった。

よし‼︎取り敢えずは成功だ、さてさて内容は…

 

「え⁉︎」

 

俺より先に何を取られた事を理解したクリスは顔を赤らめる

 

「こ、これは⁉︎」

 

手の中の布を広げ、自分が何を取ったのか理解した、これは当たりも当たり大当たり‼︎

 

「パンツ返してぇぇっぇぇぇぇ‼︎」

 

彼女はスカートを押さえ叫ぶ、それに対して俺は物を空に掲げ

 

「ヒャッハー‼︎」

 

高らかに雄叫びをあげ、戦利品に酔いしれていると木陰にいたダクネスは

 

「な、なんて鬼畜なやつなんだ‼︎」

 

何やら興奮した様に立ち上がった。

 

 

その後、色々一悶着あったものの無事スキルを入手しギルドに戻る。

扉を開けると、むすっとしたゆんゆんが酒場の椅子に鎮座していた。

 

「酷いですよ私を置いて外に出て行くなんて」

「わるいわるい…ってそれはゆんゆんが寝て起きなかったからだろ」

 

確かに俺はゆんゆんを起こそうとしたはず、起きなかったゆんゆんが悪い。

 

「そうですけど…って何で後ろの人泣いてるの?」

 

バツが悪くなったのか話題をそらす。

後ろの人?後ろにはクリスとダクネスが居るはずって…

後ろを振り向くとさっきまでケロっとしていたクリスが泣いていた、いや顔を両手で覆っている為本当かどうかは分からない。

 

「うむ、クリスはそこのカズマにパンツを剥がれた上に有り金を毟られ落ち込んでるだけだ」

 

ずいっと、前にダクネスが出ると、口を開き説明した。

 

「おいあんた、何言ってるんだ待てよ、間違ってないけどほんと待てって」

 

ダクネスの口を押さえ抑えると、今度はクリスが

 

「いくらでも払うからパンツ返して言ったんだけど、自分のパンツの値段は自分で決めろって、けど…満足しなかったらそのパンツは家宝として奉られるって…」

「だから待てって‼︎」

 

ダクネスに続きクリスの口を塞ごうとすると

 

「ふーんカズマさんって変態なんですねー」

 

不貞腐れた上にジト目でゆんゆんはこちらをみる、あぁやばいパーティー解散の危機⁉︎

 

「で、カズマさんスキルを教えて頂いたんですよね?」

 

ニッコリと彼女は笑いながらこちらに微笑む、どうしよう笑顔が怖い…

弁解してもらおうと後ろを向くと、二人とも目を逸らす。

 

「見ておけ‼︎ゆんゆんこれが俺のスキルだ「スティール」」

 

ヤケクソ気味に手を突き出し、叫ぶと手の周囲が光り手には何かの感触が残る

 

「え⁉︎スティールって窃盗の…きゃっ‼︎」

 

何かに気づいたのか、彼女はスカートを押さえプルプルと震えている。

あれ?この反応何処かで…

恐る恐る手を開くとそこには…

 

「あらららっら⁉︎奪えるのはランダムな筈なのに、何で‼︎」

 

ゆんゆんのパンツがそこにあった。

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎返してぇぇぇぇぇえぇ」

 

片手でスカートを押さえ、彼女が飛びかかってくる

 

「落ち着けゆんゆん‼︎これは偶然なんだぁぁぁぁ」

 

ヒョイっと彼女の攻撃をかわす、いや、躱してしまった…これが不味かった。

 

「カ〜ズ〜マ〜さ〜ん」

 

ギラっと彼女の目が紅く光ると

 

「ウィンドブレス」

 

彼女が唱えると、ブワっと身体が持ち上がったと思ったら、そのまま地面に叩きつけられ。

俺は意識を失った。

 

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