この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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VSキャベツ(前)

目が醒めると、酒場のベンチに横になっていた。

横には不安そうに見つめているゆんゆん、目が覚めたことに気付いたのか。

 

「先程はごめんなさい」

 

ペコりと頭を下げる。

 

「いや、いいんだ事故とは言えゆんゆんのパンツをとったのは事実だから…」

 

ホッと起き上がり頭をさすると後頭部にデカいタンコブが出来てる。

辺りを見渡すと、クリス達はどこかに行ったのか姿が見えない。

結局御礼が言えなかったなぁと思っていると、ゆんゆんは軽く咳払いし二日酔いが覚めたのか元気そうに

 

「コホン!さぁカズマさん、まだ時間はありますので気を取り直してクエストに行きましょう‼︎」

 

ガタンと、椅子から立ち上がると俺の肩を掴み、依頼用紙の貼り付けられている掲示板へと引っ張られる。

力強く引っ張られているわけだが、先程まで気絶していたのでもう少し優しくしてくれると助かるのだが。

 

掲示板の前に立つと、彼女はうーんと悩みながら一枚一枚見ている。

 

「なぁゆんゆん、俺はまだレベル低いから簡単なものだと嬉しんだけど」

 

どうやら彼女はそれなりにレベルが高いらしいが、それに比べ俺のレベルは未だに一桁、彼女のレベルに合わせたクエストを受けると最悪死ぬかもしれない。なんだかんだ言って蛙も倒せなかったし。

 

「大丈夫です‼︎私に任せて貰えれば万事OKです」

 

一緒にクエストに行く仲間ができて嬉しいのか、彼女は楽しそうにプレゼントを選ぶかのように依頼書を一枚一枚値踏みする。

 

「さぁ、これなんてどうですか?」

 

何か良さげな物があったのか、ベリっと用紙を剥がし俺に突き出す。

彼女が剥がしたのはゴブリン討伐と書かれたもので、内容としては山に現れ農作物を荒らすゴブリンを討伐して欲しいというもの、報酬は一体毎に支払われ条件としては問題はないだろう。

 

「確かに条件は良いけど、結構遠くないか?」

 

依頼書には何とか山とか書かれているが、アクセルから一番近い山だとしても景色に見えるかなくらいな物なのでかなりの距離があると予想される。

電車でもあれば数時間で行けるだろうが、この世界にそのような物は見当たらないのでよくて馬車みたいな乗り物くらいだろう。

 

「確かに少し遠いですけど、行商人の馬車に乗っていけば明日にはつきますよ」

 

明日って…俺はもっとお手頃なのを、と彼女に言うがどうやら近場のモンスターは既に他の冒険者に狩り取られこの時期にはジャイアントトード位しかクエストが無いらしく、他のクエストは少し遠くに行かないと行けないらしい。

 

「じゃあ仕方ないか、せっかくゆんゆんが選んでくれたしこれにしよう」

 

ここまで任せておいて文句しか言わないのも何だか気が引けるのでここは彼女の言うようにゴブリン討伐をする事にした。

俺の返事を聞いた彼女ははーいと返事をしクエストの用紙を受付に持って行こうとしたその時だった。

 

「緊急クエスト‼︎緊急クエスト‼︎街の中の冒険者は至急ギルドへ集まってください‼︎」

 

突如鳴り出した警報音と共に放送が響いた

 

「おい緊急クエストって何だ?何が起きたんだ?」

 

尋常じゃない雰囲気に当てられ彼女に問いただすと、彼女は何かを思い出し少し嫌そうな顔をし

 

「そう言えばキャベツの収穫の時期がそろそろでしたね」

 

はぁ、と溜息をついて掴んでいた紙を掲示板に貼り直し

 

「まぁ、これも良い機会です!カズマさんも行きましょう‼︎」

 

そう言い彼女は俺の肩を掴み引っ張る

 

「ちょっと待て!意味が分からん、何でキャベツの収穫にこんな騒ぐんだ⁉︎」

 

引っ張られ街路に出ると、街の人たちがまるで嵐が来るかのように戸締りや防壁を作っている。

 

「何言ってるんですか?キャベツの収穫ですよ、そして今年は生きが良いらしいみたいですよ‼︎」

 

訳が分からない…この世界に来て早2日、前の世界の常識が通じなすぎて辛い

彼女に置いていかれない様に走る事数分、ようやく街の入り口に辿り着いたが俺の体力は既に限界を迎え肩で息をしていると

 

「カズマさんいくらレベルが低いからって体力なさすぎですよ、普段動いてますか?」

 

息を切らした俺とは対照的に彼女は普段通りと言うかケロッとしていた彼女に指摘される。

クソ‼︎ここに来て引き篭もりの影響が‼︎

入り口に辿り着くと、町中の冒険者達が集まっていた。中にはギルドに居なかったクリス達も居た。

クリスは俺の視線に気付いたのかこちらに駆け寄り

 

「気を失ったけど大丈夫だったんだね」

「お陰様で何とか、あとスキルありがとな凄い助かった」

「良いよ良いよ、飲み物奢ってもらったしあれでチャラだよ」

 

取り敢えず礼は言えた、パンツの事は触れないでおこう…

 

「後、キャベツの収穫祭って何だ?何でみんな騒いでるんだ?」

「あぁ、あれ?そう言えば君は初めてだっけ、ここのキャベツは収穫の時期になると飛んでどっか行っちゃうんだよ、キャベツも死にたくは無いからね」

「何だそれは⁉︎」

 

ビックリしていると、前の列の冒険者から雄叫びのような叫びが聞こえる。

何だと思い前方を目を凝らし眺めているとそこには。

無数の大量のキャベツが浮遊しこちらに向かってくる。

 

「おいおいおいおい⁉︎そんなのありか⁉︎嘘だろ⁉︎」

 

キャベツの接近に合わせ、街の冒険者達が突っ込んでいく

 

「皆さん、今回のキャベツは一体につき最低一万エリス、捕まえるなりしてこちらの檻に入れてください‼︎尚、清算は数が数なので明日になります、くれぐれも怪我には気を付けてください」

 

何⁉︎あのキャベツが一体一万だと⁉︎

キャベツの値段に驚愕しつつも、俺も狩ろうと前に出るとゆんゆんが横から

 

「カズマさんどっちが多く狩れるか勝負しましょう‼︎負けた方が今日の夜ご飯は奢りです‼︎」

 

えぇ、アークウィザードに勝てる訳ない無いじゃん。

 

「ちょっと待て、せめてハンデを」

 

そんな俺の考えを意に介さず彼女は颯爽とかけていき

 

「トルネード」

 

彼女が呪文を唱えると前の前に竜巻が起こり、周りのキャベツを巻き込んでいき、そのまま檻に流し込んでいく。

 

「うわ汚な⁉︎それでもウィザードかよ」

 

俺の文句を聴くと彼女はふふっと笑い

 

「カズマさんも他の人から習ったスキルがあるのですからそれを使ったらどうですか、他の人から‼︎習った‼︎スキルで‼︎」

 

あ、あいつ二日酔いで眠ってた癖に最初に他の人からスキルを教わった事に怒ってやがる。

ならこっちにも考えがあるぞ

 

「なぁゆんゆん、この試合に何か禁じ手とかあるか?」

 

トルネードでキャベツを回収し余裕なのか彼女は

 

「特に無いですけど受付の人を脅したり数字を変えるのは無しですよ」

「成る程分かったぜ「スティール」」

 

ここに来てから多分最高の笑顔で叫ぶ。スキルの発動と共に手が光り、消える頃にはいつもの感覚が掌のなかにあった、と言うことは。

 

「え?あっ!きゃぁぁっぁあぁぁぁっぁぁぁ!!」

 

彼女は自身に何か起きたのか気づきスカートを抑える。

そしてこれだけでは終わらない、俺は教えなくてはいけないのだ‼︎彼女が誰に喧嘩を売ったのかを‼︎

彼女のパンツ片手に冒険者カードを弄る、やはり身を持って味わった為かスキルの一覧には俺の欲しいスキルが表示されておりそれを迷いなく習得する。

 

「行くぜ!俺に勝負を持ち込んだ事を後悔しやがれ‼︎」

「「ウインドブレス‼︎」」

 

心の奥から叫ぶ、レベルの低い俺では彼女程の強さは無いが軽い物を飛ばすくらいの風を起こす事は出来るだろう。

俺の手にに握られた物はウインドブレスの風に乗り飛ばされて行く。

 

「いやぁぁぁぁぁぁ‼︎カズマさんの変態ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼︎」

 

スカートを押さえながら彼女はひょこひょこ追いかけていった。

 

「うわー君最低だね」

 

見られていたのか、いつのまにかクリスが横にいた。

 

「俺に喧嘩を売ったあいつが悪い」

 

そう、俺は売られた喧嘩を買っただけだ、何も悪いことはしていない。

 

「えぇ…まぁいいや、それよりキャベツにスティールを使ってごらん、運が良ければ羽とか毟れるよ」

「成る程、ありがとうな」

 

どういたしましてと、彼女は再びキャベツにスティールを当て回収して行く

よし、俺も頑張らなきゃな。ゆんゆんを行動不能にしたのはいいがそれでも今までの分が残っている以上気を抜くと負けそうだ。

潜伏で気配を消しながらスティールでキャベツを狩っていく、何だろうこの単純作業が地味に楽しいと思っている自分がいる。

 

 

「おい‼︎第2波来るぞ気をつけろ‼︎」

 

しばらくして落ち着いた頃、再びキャベツの群れが遠くから見える。

 

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