「私がお風呂に入っている間に何があったのですか⁉︎」
先程まで繰り広げられた野菜との戦争は呆気ない形で終わりを迎え、散らばった野菜片達の片付けをする為によっこいしょと体勢を立て直していると、戦いを終わらせた張本人であるゆんゆんが慌てふためきながらそう言った。
「何って… 野菜と愉快に遊んでただけだけど」
冒険者として流石に此処まで来ておいて今更野菜と苦戦していたなどと言える筈もなく、憮然とした態度で適当に誤魔化す。
「ええ…何ですかそれ。何でこの時間に野菜と遊ぶんですか‼︎完全に遊ばれていたじゃ無いですか‼︎」
「うまいこと言って責めるんじゃねえよ‼︎」
適当にボケてまさか返が来るなんて思わなかったので返事に戸惑う。だがこのままでは今後の俺の威厳に関わってくる。
「めぐみんもなんか言ってやれ‼︎」
ゆんゆんが言葉の反撃を始める前にめぐみんを使い畳み掛ける。ロリとは言え女性を使うと言う表現は些か失礼に当たるかもしれないが、あくまで頭で思うだけなので大丈夫だろう。
「そうですね…人間相性というものがあるでしょう。まあ今はそんな事より調理に集中したいので後にしてもらえますか」
気づけば既に野菜を拾い終えていためぐみんが調理を始めていた。いかんな、このままでは俺が滑ったみたいになってしまう。
「そうだな、時間もかかりそうだから次は俺が風呂に入る…」
こうなってしまっては仕方がない、流石に疲れもあってか頭が回らない。このまま変に捻り出そうものなら墓穴を掘ってしまいそうで怖いので、ここは戦線離脱という事で風呂に逃げ込むとする。
「え?そ、そんな…」
言い合いは俺の逃走により有耶無耶へとなってしまい、残されたゆんゆんは話の落とし所を失いラウンジで一人ポツンとするのだった。
一人残されたゆんゆんの嘆き声が聞こえる最中俺は風呂に向かう。この屋敷の浴槽は正直一人で使うには広すぎるので、水道代が些かもったいない気がするのだが、流石にこればかりはどうにもならないだろう。
服を脱ぎ散らかし、体を洗い終えると浴槽へと向かう。
最初女子の残り湯だと若干はしゃいでいたが、今ではほとんど何も感じなくなってしまっている自分がいる事にふと気づく。
人間良い事も悪い事も慣れるというが、こればかりは慣れないで欲しかったと思わずにはいられない。俺の甘酸っぱい思い出というものは世知辛い現実に埋められていってしまうのだ。
それはそれとして、やはり大浴場を一人貸し切れるというものは中々に良いものではある。
大浴場を貸し切り一人くつろいでいると、ふと唐突に背後に気配を感じる。これがマンガの始まりの導入だったら昔抜けた組織の一人が俺に接触する感じなのだが、俺にそんな過去は無く実力もない。
で、あるのなら一体何なのだろうか?
探知スキルで気配を探ると、この屋敷にいつもある実態の無い気配と一致する。つまり前の窓のメッセージを描いた犯人で、前にウィズの言っていたこの屋敷に居る前の持ち主という事になるだろう。
「居るのは分かってるんだよ、良い加減出てきたらどうだ?」
この屋敷のどこでも無いところに声をかけるが、返事が返ってくる事はなく、水の流れる音が部屋に響いているだけだった。
流石に良い加減に何かしらの意思疎通をして見たい気持ちがあるのだが、相手がそれを望まない以上こちらからはどうしようもない。コミュニケーションとは相手がいて初めて成立するもので、一方的に話しかけたままではただの独り相撲と相違ない。
だが、だからと言って話してはいけない事では無いので伝えたい内容だけは喋ることにした。
「暫く外に出掛ける事になったから、この屋敷を留守にする事になる。もし何かあったらウィズの所に行ってくれ、なんか凄いイケすかない悪魔もいるけど頼りにはなると思うんだよ」
またしても返事は無かったが、しゃべり終えてから少しの間を挟んだ後に今まで感じていた気配が消えて無くなった事から、俺の言葉は一応は伝わったようだ。
「全く、一体なんだってんだよ」
もう誰も居なくなった大浴場に向けて独り言を放つ。当たり前だが返事が返ってくる事はなく、イベントを掠めるような感覚を繰り返していく毎に何か大切な事を見逃している様な不安感に苛まれる。
だが、そんな事を気にしている余裕は今の俺には無いのかもしれない。明日は温泉の国の様な所に旅行に行くのでなるべく楽しむ事だけに集中したい。
…そろそろ出るか。
ボーと明日はどうするか?なんて適当な事を考えながら内心はしゃいでいると時間はあっという間に過ぎ去りラウンジから聞こえていた喧騒はすっかり落ち着いて、今は不気味なまでに静寂を保っている。
「おい出たぞ。飯の準備は終わったのか?」
適当に着替えを済ませ、ラウンジに向かうと既に食事は完成されておりテーブルの上に煌びやかに配膳され、それを囲む様に二人が着席していた。
どうやらギリギリ間に合った様だが、何だか二人の表情があまり芳しくは無い。もしかしたら何やらやらかしてしまったのかもしれない。一応念のために聞いておこうかと思い確認する。
「遅いですよ、一体いつまで入って居るつもりだったのですか?あともう少しで先に食べてしまおうかと思ったくらいですよ」
「そうですよ。あの後暴走するめぐみんを抑えるのにどれだけ苦労したと思っているのですか?」
どうやらあの後めぐみんが調理の一手間か何かでやらかそうとして、それをゆんゆんが止めに入り妨害された事で二人とも機嫌が悪口なった様な感じだろう。
藪蛇な気がして確認するに確認できないので、ここはあえてのスルーに決め込む事にする。
やはり世の中スルーするに限る。もしも冒険者カードにスルースキルがあるなら一目散に取得したであろうが、生憎そんな物は無いのでここはクリス直伝ないスキルは自分で作り出すを使う事にする。
どんな能力も極めればスキルに昇格して冒険者カードに登記されるらしいので、挑戦してみるのまた一興だろう。
「まあ、何にせよ。折角のご馳走なんだ美味しくいただこうぜ」
二人の物言いたげな表情を見て見ぬフリして並べられた料理に手をつける。
自分自身もだが、こうして他人の料理を食べていると段々と個性が見えて来る。ゆんゆんは秀才型故なのか分量がきちんとしているので、味付けにバラ付きがなくしっかりとした印象を受ける。俺自身は料理スキルを陰でコッソリと習得している為か普通としか言えない。めぐみんは素材を活かしたワイルドクッキングの様な感じだ、本来捨てられる部位などを器用に活かして材料にしている所から今までの境遇を推し量れそうだが、飽食となった現在においてはもう少し選り好んだ方がいいと思う。
適当に雑料理漫画の色レポを頭で考えながら呑気に食していると、俺が何も聞かずに虚空を見ながら料理にがっついている光景を見て、二人とも呆れた様に料理に手をつけ始めた。
どうやら俺の作戦勝ちの様で、先程までのギクシャクした雰囲気が若干和らいだ様な感じがする。
食事を済ませ、各自自由行動の時間になり、各々が明日の準備に取り掛かる。
俺は既に済んでいるので適当に二人の様子でも見にいく程で冷やかしにでもいこうかと思う。
「おーい、ゆんゆん居るか?」
流石にいきなりだと驚きの余り魔法で吹き飛ばされそうなのでノックして彼女の応答を待つ。
俺のノックしてから少し遅れて彼女からの返事が返って来た少し後に扉が開かれ、先程と同じパジャマ姿の彼女に迎えられる。
「どうかしましたか?今明日の準備でいろいろ考えていまして…いつものくだらない事でしたらまた明日にできませんか?」
彼女は俺に一瞥くれると最初に申し訳なく言っていたのが、何かの基準でもあるのか俺が手ぶらなのを知って途中からジト目で俺を疑う様に見てくる。
「全く、失礼なやつだな。明日に向けて何か手伝える事が無いか聞きに来ただけだよ」
「…そうでしたか。それはすいませんでした、いつもでしたらめぐみんと結託して何かしら悪巧みを企んでいましたので、つい」
どうやら日頃の行いは何とやら、と言う奴だ。普段の行いが裏目に出たが、あくまで今回は手伝いと言う程になっている以上何も後ろめたい事は無い、その結果がどうなろうともあくまで建前は手伝いなので何も悪い事は無いのだ。
「良いんだ、ゆんゆんが分かってくれれば俺はそれだけで満足だ」
「あの、何かいい感じに話を持って行きながら勝手に部屋に入らないでください」
「あ、バレた?」
ポンと彼女の肩に手を当てながら、意味深げにウンウンと頷きながら部屋に入ろうとするとピシャリと咎められる。どうやら何時もみたいに一筋縄ではいかない様だ。
「バレたじゃないですよ‼︎私にもプライバシーって物があるんですよ‼︎」
「まあそんな怒るなって、ゆんゆんの事だから別に散らかっている訳じゃないんだろ?」
「そ、そうですけど」
「なら問題なしだな、お邪魔しまーす」
押し通したのは自分自身とは言え、我ながら最低だなと思い心の中で彼女に謝っておく事にした。
そして、適当に彼女の言葉を躱しながら部屋に侵入する。内装は至ってシンプルなザ・女の子の部屋という感じだ。
正直友達を作る黒魔術的な装飾がされていたら俺はもう二度とゆんゆんと顔を合わせられないと思っていたが、一面にめぐみんの写真が散りばめられている事は無く若干ファンシーな感じはあるがつまらない程に普通だった。
そして全体的に綺麗に整頓されていたが、一箇所だけ不自然に散らかっている場所を発見した。
「あーやっぱりか…」
「あの…残念そうな物を見る様な目でバックを見るのは止めて貰えませんか…」
彼女は旅行に行き慣れていないのか、こういう遠出なので家を開ける際などの荷物が異常な程に詰まっているのだ。主にゲームやお菓子などの食料なのだが、それらが完全に役目を果たした事はほぼ無いと言っても過言では無い。
概ね、使うかもしれないと言った不安から来る代償的な行為に過ぎないのだが、もうパーティーを組んでから短くは無いのでいい加減に加減というものを知って欲しいのである。
「なあ…」
「カズマさん…そこから先を言うのは止めて貰えませんか?多分今からカズマさんが言うであろう言葉は私に効きます…」
「いい加減に荷物をコンパクトにできないか?暇な時に役立つときはあるけど、此処まで詰め込む必要性はないと思うんだよ。同じ種類のバリエーションとか要らないからせめてシンプルに一つだけでも充分だと思うんだよ…」
「言わないで下さいって言ったじゃ無いですか⁉︎確かに使わない事が多いかも知れませんが完全に使わない事なんてその時にならないと分からないじゃないですか‼︎こうなったら意地でも詰め込んでいきますからね‼︎」
普段は俺に指摘する側の彼女が今回は逆に俺に指摘され立場が無くなったのか、逆上して荷物を無理やり詰め込んでいった。
別に俺はいくら詰め込もうと構わないのだが、めぐみんが爆裂魔法を放った際に彼女の背中が埋まってしまうのでやや不便ではあるのだ。後は普通に邪魔でしか無いのもあるが。
再び彼女に視線を合わせるとオラオラオラオラと荷物をウィザード系にしては高い筋力に任せて詰め込んでいく。普段からこれ位情熱的にやって欲しいものだが、あくまでめぐみんの保護者を気取りたい為か少し引っ込みがちであるのだ。
しかし、ドン引くのは良いのだが、このまま彼女の好きにさせて置くのは癪なので俺も何かしようと思い考えを巡らし、その結果全身に支援魔法をかけ詰め込んでいる彼女の元へ向かう。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄×nーーーっ‼︎」
無限の様に荷物を詰め込まれていく彼女のバックから、俺の独断と偏見により不必要と決められた荷物を、彼女の詰め込むスピードを上回る速度で引っこ抜いていく。
引っ込み思案の彼女は何処へやら…情熱的に詰め込んでいくゆんゆんに対して強化された俺によって引っこ抜かれて行くと言う作業を、暫くの間1と0を行ったり来たりを繰り返しながらバックの中身は徐々に選定されて行き、彼女のバックはようやく俺が思い描いた規定のサイズに収まる。
「もう駄目…もう動けません…」
「はぁ…はぁ…てこずらせやがって…ようやくまともな量になったか…しかし、よくこんな大量に詰め込めたな…」
激闘の末に遂に彼女のスタミナ切れを起こし辛くも勝利する事に成功する。
だが、失った物は多く。食事等で回復した魔力を殆ど使い切ってしまい次のめぐみんの番に苦戦を強いられる事になりそうだ。
だが、ゆんゆんとの勝負に勝利し、俺が排除して隣に積み上げられた荷物の量を改めて確認すると驚愕する。一体この小さなバックにどれだけ詰め込まれていたのだろうか?これだけでレポートが書けそうなくらい難解で可能性を持った問題だが、今はそんな事を考えている場合では無いのだ。
実際にあった事はもうあったのだから今はそれで良いと問題を置いておき、倒れているゆんゆんに向き直る。
「これで明日もばっちしだな。感謝しろよ」
「何ですかそれ…折角今日沢山買い込んだのに」
うつ伏せにバタンと倒れている彼女の背中を叩きながらそう言うと、今日1日かけた準備が台無しになったと言いたげに彼女が嘆き出したので諦めろと止めを刺して置く。
「それで?一体何をこんなに詰め込んでいたんだ?」
「え?あ、ちょっと待ってください⁉︎」
「別にいいいだろ?特にやましい物は入ってないんだし、もし俺が必要だと思ったら再び入れる事を許可しよう」
「えぇ…何で許可がいるんですか…私の荷物なのに…」
そう言えば雑に剪定したので何を買い込んだのかもっと良く確認して置くのもいいかも知れない。後々あの時持ってきておけば良かったのに、なんて言われれば後々事ある毎に嫌味を言われかねない。
ほぼ外装はお菓子で埋め尽くされている山に視線を当てる。こんなに要したところで街に着いたら名産品を食べればいいのだから必要ないだろう…。
山に近づくと俺が居なくなった後に再び詰めようと思っていたらしいのか手を伸ばす俺の腕にしがみついてくる。
しかし、ゆんゆんの抵抗虚しく、荷物の山に手を突っ込み適当に手に触れた物を引っ張り取ると最初に出てきたのは何かの本の様だった。
「どれどれ…」
それは表紙からしてどこぞの旅行雑誌だった。この世界にも印刷技術が発達しているのかと思い中身を確認してみると、やはり異世界故か綺麗な写真などはなく代わりに丁寧なスケッチと説明文が描かれていた。
ギルドの依頼票が手書きな所から大体分かっていたが、この世界の印刷技術はやはり日本と比べて劣っているらしい。
「成る程な…」
「成る程な…じゃ無いですよ‼︎何勝手に読んでいるんですか‼︎」
パラパラとめくりながら内容を軽く確認する。じっくり読んで仕舞えば彼女の部屋で夜を更してしまいそうなのでそこは細心の注意を怠らない。
ある程度読んで満足したので本を彼女に渡して残りを確認する。
「よし、次いくか」
「え?まだやるんですか?」
彼女の妨害を切り抜け…と言うか雑に押し除け山に手をつける。
そこから引っ張り出されたのはよく見るボードゲームの一つだった。日本では人生ゲームなどと言われているが、この世界の役職はかなり多く尚且つ不安定な所もありスキルや魔法などもあってかかなり複雑なルールになっているのでかなり面倒くさい。この間三人でやった時は出来る出来ないの水掛け論となりめぐみんのちゃぶ台返しで幕を閉じたこともあった。
「やっぱりこれは無しだな」
「え⁉︎何でですか‼︎面白いじゃ無いですか‼︎」
「うるせえ!コレのせいで雰囲気最悪だったじゃねえかよ‼︎」
「そ、それは…確かにそうですけど、コレは前のものとは違う改良された新しいボードゲームになっているんですよ‼︎」
このままだと新しいゲームとやらの説明になりそうなので、折角開いた彼女の口から説明される内容を無視して次の山に手を入れる。
「な!ちょっと聞いているんですか⁉︎」
次に出てきたのは何と…何だこれは?
「何これ?新しい道具か?」
「あ、それは…その…」
箱を開けると中には何かの液体が入った小瓶がクッション材に包まれて収納されていた。何かの薬だろうか?
「まあ、これは好きにしてくれ」
勝手に押し入って見ている以上聞かれたく無いことに関してはなるべく効かないのがマナーという物だろう。まあ押し入っている時点でマナーもクソも無いだろうけど。
だが気にならないと言えば嘘になるがそれでも越えてはいけないラインはあるだろう。
「え、ええ分かりました」
俺の対応を意外そうに思ったのか、驚きながらも彼女は再びバックに詰め込んだ。
「取り敢えずはこんなもんだろう、お菓子はもっと少なめにな」
「はい…って大きなお世話です‼︎」
大凡の選別を終え、正直女子の部屋を漁って何をしていたんだと虚無感に苛まれるが、それでも俺に非がないかの様に様に適当に言い、やり遂げた様な雰囲気を醸し出しながら、不貞腐れるゆんゆんの部屋を後にする。
「次はめぐみんの部屋か…爆弾がたくさん設置されてそうだな」
「何勝手に入って来ておきながらため息を吐いて居るのでしょうかこの男は…それに私は爆裂魔法を愛するアークウィザードです、別に爆発が好きと言うわけではありませんので‼︎」
俺の横で呆れながらめぐみんがそう言った。
時にめぐみんは爆裂魔法以外に関しては普通の女の子なので、特に心配はないのだがゆんゆんの部屋だけ行くと言うのも体裁的にどうかと思ったので、こうして彼女の部屋にも向かってきた次第である。
「準備が終わってやる事無いから手伝うよ」
勝手に居座ったのは良いもののゆんゆんの部屋に比べてと言うか、普通の同年代に比べて部屋の内装がかなり些か質素な様な気がする。なので暇を潰そうにもゆんゆんの部屋と比べてリソースがないのでこうして手をもて余らせているのだ。
「何を勝手に…準備でしたらもう既に終わっていますよ。カズマのやる事は何もありません」
ピシャリと俺の出番など無いと言い切られる。
「そこを何とか」
「何とかと言われましても…と言うよりかは普段の日課に付き合って下さいよ‼︎ゆんゆんだといつもの場所より遠くまで付き合ってくれないので全然物足りないんですよ!」
ふざけて食い下がると、藪蛇してしまった様でづかずかと日頃の不満を告げてきた。確かに最近殆どゆんゆんに任せっきりで何時もの日課に付いてきてはいない様な気がする。
「あーそれは悪か…っておい‼︎まさかまた何処かの城とかにぶっ放したりはしていないだろうな‼︎」
「あ…いや…それは…その…」
ベルディアの件を反省したんじゃなかったのかと彼女に追求するといつもの彼女らしからず歯切れが悪そうに下がって行く。
しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。こいつら二人が何かを起こせば保護者扱いされて居る俺に責任がいくのでここで分らせなくてはいけないのだ。
「いいかめぐみん、さすがに城や建物はやめておけ。平地とか前行った炭鉱とかで我慢しろ」
「…ふぁ、ふぁい」
掴みかかり動きが止まっためぐみんの両頬を両手で掴みロックしながら言い聞かせる。多分暫くしたらすっかり忘れて繰り返すかもしれないが、それでも暫く平和が続けばそれでいいだろう。
「よし、オーケーだ」
ウンウンと頷いた事を確認して手をはなしめぐみんを解放する。ぷはっ、と息を吹き返した様に彼女は呼吸を整えると
「さすがにその辺は分かってはいますよ。ただ、やはり大きくて硬いものでないと満足できない体になってしまいまして…」
モジモジと恥ずかしそうに彼女はそう言った。小さい体ながらも放たれる艶美な動きと雰囲気に若干心が引っ張られそうになるが、そこはいつもめぐみんが余計な事をして俺が謝り回った事を思い出して現実に戻る。
「絶対その言葉外で言うなよ」
ピシャリと今度は俺が彼女を咎める。
「それで何でいきなりけし掛けられて怒られなくてはいけないのですか?」
話が落ち着いてきた頃に不満そうに彼女はそう言った。確かに旅行前に説教してしまえは前日が台無しになってしまう。
「…確かにな本当だったら楽しみで眠れない筈なのに、これじゃ台無しだよな」
「ええ、そうです。この責任どうとってくれるんでしょうか?」
俺が非を認めるとそれをいい事に彼女が凄んでくる。その姿はさながら取り立てのヤクザの如くか。
「仕方ない、気分を害してバイブスが下がったなら上げるしか無いよな。ここで待っていろ」
「ええ、別に構いませんが…何をするつもりですか?と言うかバイブスって何ですか?カズマの国の言葉ですか?」
まさか本当に何かするとは思っていなかった様で、驚きながらも律儀に座ったまま部屋を出て行った俺の帰りを待って居てくれる様だった。後バイブスの意味って何だっけか。
めぐみんの部屋を出て最初に向かったのはラウンジの倉庫だった。
ここには常日頃クエストの報酬のおまけみたいな、お捻り的な物で渡されるシュワシュワ達などが収納されており、他にも色々な雑貨や日の目を浴びていない家具たちが仕舞われている。
そこから多量のシュワシュワを引っ張り出すとその内の一本をその場で一気飲みして、そのままゆんゆんの部屋に向かった。
ヤバイ、空きっ腹のシュワシュワは酔いの周りが尋常じゃ無い。
「オラ‼︎パーリィーの時間だぜゆんゆん‼︎お前のため込んだ菓子の使い所がようやく見つかったぜ‼︎」
ゆんゆんの部屋に着いて早々にドアを蹴破り、正確には一度ドアノブを捻り壊れるのを防いでからになるが、疲れ果てながらも旅行誌を読み耽っていたゆんゆんは蹴破られて入ってきた俺に対して今までに見た事無いくらいに驚愕した。これはレアなゆんゆんだなと思いながらも挨拶がてらに彼女をパーティに招待する。
「な…今度は一体なんですか⁉︎って酒臭い‼︎」
「臭いとは失礼だなゆんゆんよ、いいからそのお菓子の山を持ってラウンジに来やがれ」
「え、嫌ですよ。それにもう何時だと思って居るんですか‼︎明日のことを考えてささっと浄化魔法かけて酔いを覚まして寝てくださいよ」
ノリでやっているのにまともな解答をするとは、そこはやはりゆんゆん。まだまだグループに馴染むには及ばないな。
だが、今夜の夕食で食材をほぼ使い切ってしまった以上、このままではつまみが無い状態になってしまうので何としても彼女の協力が必要になる。最悪買いに行ってもいいのだがそれだと気持ちが下がってしまう。
「だったら仕方ない。これからめぐみんとパーリィーだけどそこまで言うんだったらもう二人でやるよ。邪魔したな」
「え?ちょっとどう言う事?二人でってめぐみんも居るってこと?」
秘技、押してダメなら引いてみる。彼女の境遇から考えればこれほどまでに効く作戦はないだろう。しかも三人という狭いコミュニティーの中一人残ると言う事がどれ程までに残酷な結果をもたらすかは火を見るより明らかだ。
正直心が痛まなくは無いがそれでもやらなくてはいけないのだ。
「あのー私も参加してもいいでしょうか…」
「ああ良いとも」
状況が変わりバツが悪そうにゆんゆんが申し出たので、俺は快くそれを受け入れた。
ゆんゆんを無理やり丸め込み多量のお菓子を抱えさせ先にラウンジに向かわせる。ウキウキしている後ろ姿に罪悪感を覚えるが、それはそれだ。
そして、俺は再びめぐみんの部屋に向かう。
「遅かったじゃ無いですか。てっきり忘れて寝てしまったのかと思いましたよ」
扉を開くと俺が部屋を後にした時と同じ体勢で微動だに動かず待っていためぐみんに悪態を突かれる。
「ああ、悪いな。ちょっとゆんゆん引っ張ってくるのに時間がかかった」
「ゆんゆん…?どいうことですか?」
「いいから来い‼︎」
酔いが醒めないうちにめぐみんを抱き上げそのままラウンジに連行して行く。普段であれば自分から女の子を抱き抱えるなんて体が砕けてもしないが、酔っている状態なら問題なく遂行できる。
「あ、ちょっと‼︎何するんですか⁉︎というか酒臭⁉︎さては酔っ払っていますね、普段飲ませないくせに自分だけ飲むなんて卑怯ですよ‼︎」
「安心しろこれからパーリィーだからな。シュワシュワ飲み放題だぞ‼︎」
「ほ、本当ですか‼︎流石カズマです。信じていましたよ‼︎」
先程までの反抗的な態度から一転、喜びに満ちた笑みを浮かべながらラウンジへと向かい先に待機していたゆんゆんと合流してそのまま酒盛りとなった。
療養期間もあってか暫く飲めなかった事もあり、普段よりタカが外れた俺たちはシュワシュワを飲みに飲みまくり夜中かけて飲み明かした。
「やば…やっちまった」
朝目覚めて起き上がると、目の前には酔い潰れてか真っ直ぐうつ伏せで倒れている二人が視界に入った。周囲には飲み終わったシュワシュワの空き瓶が尋常では無い本数が転がっていた
今思えば何でこんな事をしたのか思い出せないし、思い出したとしても正気の沙汰とは思えなかったので自然災害か何かで済ませる事にして、冷蔵庫に入っている冷水を一気飲みして目を覚ます。