この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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遅くなりました。
いつも誤字報告してくださってありがとうございますm(__)m


アルカンレティア4

「どうしたもんか…」

 

目の前で伸びている二人を見ながら、近くのテーブルに備え付けられている椅子に腰を掛ける。

旅行前日に気分を盛り上げようかと思いパーティの様な飲み会を行ったのだが、ハメを外すあまり飲み過ぎてしまった様で最後にどうなったかに着いての記憶はすでに忘却の彼方だ。

 

時計を確認すると予定していた時間と比べてまだ余裕がある。これから二人を起こして治癒魔法をかけるにしてもまだ時期尚早だろう。既に準備を済ませていた事が幸いしたのか、旅行に向かう準備は既に完了しているので後はこの屋敷を戸締りして出発するくらいである。

 

多分起きるであろう二人にメモを残し、軽くシャワーを浴びて散歩がてらに外に出る。

まだ朝早くと言う事もあってか、辺りが薄暗く陽が本格的に出てくるまでは少し肌寒く、この時間にやっている店もだいぶ限られて来る。

魔法でおおよその二日酔いは消えるのだが、それでも若干の気持ち悪さの様な不快感が残ってしまうので残ったそれを回復させるのには、また色々と方法があるのだ。

酔い覚ましに効きそうな物品はおおよそ日本に居た時と同じで、電解質の多い飲料水や良く分からない成分の入った栄養剤等々あるが、この世界にも似たようなものはある。

しかし、魔法が発展してしまっている為かなかなかその品々を入手と言うか販売している所を見ないのだ。

だが、そんな俺にも頼りになる店があり、あまり行きたくは無くウィズ魔法武具店と言う名前で商いをしているそうだ。まあウィズの店なんだが……。

 

「邪魔するぞー」

「何⁉︎我輩の邪魔をするのなら…」

「あーいいって…そのセリフ聞き飽きたから」

「ふむ…流石の貴様もようやく我輩の考えに気づいたのであるか、成る程‼︎ではそのままお帰り願おうか‼︎」

「うるせえ‼︎面倒な事言って食い付いてくんじゃねえ‼︎」

 

容赦なく飛んでくる罵声に対応しながらズケズケと店に入る、ちなみに開店前なのでこの件は俺が全面的に悪いのは内緒だ。

 

「ふむ…成る程な、二日酔いに聞く薬が欲しいと言う訳で、その薬をうちの店で買いたいと言うわけか…中々に殊勝な行いであるな、開店前に乗り込んできたのでどうしてやろうかと思っていたがお客様であるのであればまた話は別だ」

「お前は本当にブレないな、まあいちいち説明しなくて済むのは助かるんだけどさ。それじゃ商品を…うお⁉︎」

 

商品を渡してもらおうとバニルに近づくと、俺の下方注意だったのか何かを踏んづけ躓いてしまう。

開店前なのでもしかしたら陳列中の商品を間違って踏んづけてしまったのかもしれない、しかもバニルが管理しているこの店の商品を踏んでしまったと言うことは必ず弁償させる事になる、しかもかなりの値段を乗せられてぼったくられる事間違えなしだ。

 

「って何だよ…ウィズか。いやいや何でウィズがここに寝転がっているんだよ!しかもなんかボロボロだし」

 

足元に目を向けると、なぜかボロボロになっているウィズが寝っ転がっていた。体勢的に転がされたと言った方が正しいが、多分自分の意思でそうなったとは言えないぐらいの惨状だった。

 

「うむ…気づかずにそのまま買い物を続けておれば良いものを、全くつくづく貴様と言う人間は余計な事に気づいてしまうな」

 

バニルは俺が転がっているウィズに気づいた事が不味かったのか、困った様な表情を浮かべる。そもそも気付かれたくなければ奥の部屋まで運べばいいものをわざわざここに放置している時点で気付かれる事はほぼ必然だろう。

 

「それで?何でここにウィズが寝転がっているんだ?しかもなんか焦げてるんだけど」

「そうであるな…」

 

ふむ…と顎に手を当てながらバニルはどう説明しようかと悩む。今更何があった所で特に驚かないので早く説明して欲しいものだ。

 

「ふむそう思うのであれば、あったことをありのまま説明してやろう」

 

そう言いバニルはその重い口を開いた。

 

 

 

「成る程な…それはまぁお気の毒にしか言えないな…」

 

バニルの口から語られたのは聞いてみればあっけないものだった。

店の運営をしているのがウィズに当たるのだが、あの事件以降その運営にバニルが加わり人手が増えスタッフは二人の二人三脚になった。そして実際に働いてみればウィズは売れるかどうか分からない品を次々と発注を繰り返しては在庫の肥やしとしていたそうで、今は殆どバニルによって商品の管理をしているのだが、経営者がウィズである以上その当人が直接仕入れることは一応可能らしくバニルが油断している隙を見てはロクでも無い品を仕入れてくる様だ。

そして今回の件で流石に痺れを切らしたのか、直接その体に刻み込んでやるぜとバニル式なんとか光線で死なない範囲で痛めつけたらしい。

 

「そうであろう、我が苦しみに共感してくれた貴様にこの商品をくれてやろう」

 

バニルが何かを差し出す。どうやら返品する予定の物を一つ俺にれるらしい。

 

「で?これは一体何なんだ?」

 

渡されたものは何やら筒状の物で何かスイッチの様なものが見える。正直これだけで何なのかなど分かる筈もなく、仕方なしに内容を確認する。

 

「それは簡易式水洗トイレだな」

「何だよ、結構便利そうじゃねぇかよ」

「しかしな…流す時に大きな爆音とあり得ないほどの水が流れるらしい」

「使えねぇじゃねえか‼︎」

 

スコーンと地面に叩きつける。叩きつけた拍子にスイッチが起動しないかヒヤッとしたが、そのまま転がっていったので安心する。

 

「まあいいや、とりあえず商品を早く出してくれないか?まだ早いって言っても今日出発の予定だからなるべく用事を済ませておきたいんだよ」

 

茶番に付き合うのも悪くは無いのだが、このままだと変に時間を消費して馬車のチケットの購入時間に間に合わなくなってしまう可能性が出てきてしまう。

 

「ふむ、そうであるな…ん?ほうほう小僧チケットが余っている様だな」

「まあ、そうだけど。それがどうかしたか?ああ、もしかして一緒に行きたいのか?」

「…何を勘違いしておる。我輩が一人で外に出よう物ならあのポンコツ店主がロクな買い物をしないのでな、これは提案であるがこの店主を連れていってはくれまいか?実はこの後に商談があってこの店を離れなくてはいけなくてはならないのだ」

「成る程な…言いたい事は分かったけど、せっかくのパーティー水入らずの旅行だからあまり他の人を入れたくは無いんだけどな…」

「なに…勿論タダとは言わぬよ。こう見えても我輩は悪魔であるからな、こう言うギブアンドテイクを疎かにしないのだ」

「マジか…お前が言うと何か怖いな。大丈夫なんだろうな」

 

そういいバニルは何かを取り出すとそれを俺に向けて渡す。

 

「何だこれ?ペンダントか?二つともデザイン的にどこかで見たことある様な気がするんだけど、何だっけな?」

 

ほれと渡されたペンダントを受け取り、そのデザインを確認すると二つとも何かの紋章をあしらった飾りがぶら下げられている。この紋章の一つはどこかで見た様な気がするが、果たしてどこで見たのだろうか?

多分誰かが持っていた事は確かだったが、人の身に付けている物をジロジロと眺める様な行為をあまりしたくは無いので控えていたのが仇になった様で、今のところは謎のペンダントになる。

 

「それはかの有名なエリス教とアクシズ教のペンダントになっている。使い分ける事でこの先の旅行で役に立つであろう物である」

「マジか…」

 

要するに宗教の会員証の様な物である。

そう言えば前にクリスが同じ様な物をぶら下げていた事を思い出いだす。それに教会にデカデカと同じデザインの紋章が描かれていた事も思い出した。

人間一度知れば芋づる式に記憶が呼び起こされると言うが、まさにその通りに今までの映像などがフラッシュバックする。

 

「それでアクシズ教って何だ?エリス教は聞いたことあるけどそっちは聞いたことないな?」

「そうであるか…まあ知らないのであるのであれば幸せであったな小僧、しかしこれから貴様の行く道には必ず忌々しいアクシズ教との関わりが出てくるであろう。この我輩が保証する」

「へー、そうなのか。でも宗教ならこの街にもあるのか?アクシズ教の教会があるのか?」

「あるにはあるのだが、今のところ非公認でな。そのうち進出してくるのでは無いかと思ってはいるのだ」

「へーそれでエリス教と比べてどんな感じなんだ?」

「うむ…そうだな…。我輩からは何とも言えん…というよりかは口にしたくは無いな、一度その目で確かめてくるといい」

 

成る程な…しかしアクシズ教か…。どの世界にもアクシズと名のつくものはロクでもないと言うがこの世界でも同じ様だ。

エリス教とアクシズ教、前の世界にも宗教はあったが、それぞれに棲み分けというものがあり、イザコザも時にはあったが、それなりにうまく回っていた様には見えた。

 

「何か使い方とかあるのか?儀式的なものに使うとか、魔力を灯すと何かが起こるとか?」

「そのような物は無いな。本来であればその崇拝する女神の加護が得られるのだが、どこにも属していない貴様にとってのそれは何の加護もないただのペンダントになっている」

「意味ねえじゃねえか‼︎」

 

ガックシと膝を折る。

要するにただのアクセサリーというわけである。

この世界での宗教は基本的に用紙に名前を書き込めば簡単に申請ができるという物だが、その後に色々と洗礼の様なものがある所もあるらしく手続きを踏まない限りは加護は得られないらしい。

そんなに効果があるというのなら俺も加入してみようかと思ったが、宗教によって得られる加護は教徒の人数に割られて割り振られるらしく、俺が入った所で目に見える様な変化は得られないそうだ。

そうなればただの心の拠り所にしかすぎず。必要な人には重要だが、生まれてこの方何も信じていない無宗教の俺にとっては無意味な話だ。

 

「そうカッカするでないぞ小僧。確かに装備品としてのそれを見るにはただの重りにしかならぬが、アルカンレティアに行くのであればその二つは貴様にとってかなりの恩恵をもたらすであろう」

「おいおい…アルカンレティアってそんなに魔窟なのか?パンフレットには温泉街とし書かれていないのだが…」

 

よくある話なのだが、大抵観光先について書かれている書物には悪い事は一切書かれてはおらず、良い事だけしか書かれて居ない事がある。

俺の持つアルカンレティアについての知識はゆんゆんの持ってきた雑誌に依存するため、分析的視野が位浅さか狭まっているのだろうか。

今更だが、ゆんゆんの持ってきたパンフレットというか書籍に限定した書物で知識を得たという事に今更ながらに不安を感じる。ゆんゆんの人間性は信頼のおける人物なのだが、彼女自身のセンスが些か世間とズレているのは確かだろう。いつも隣にいるめぐみんの感覚が世間からかなりひねくれたもので気付かなかったが、ゆんゆんの常識も異世界の俺とめぐみんの中では真っ当に見えていたが、他の人物と比べたら些かずれているのだ。

 

「何か旅行前にめっちゃ気分が下がってきたんがけど…どうしてくれんだ?」

「ふむ…なかなかに良質な悪感情だな我輩の好みであったなら喜んだのだが、生憎その感情は我輩の好みではないのでやめるがよい」

「はっ倒すぞ‼︎」

 

相変わらず行動というか考えが読めないなと思いつつも足元に目を向ける。そこには未だに目を覚まさずに寝転がっているウィズの姿が映る。

 

「なあバニル…要らない鉄板とか道具ってあるか?」

「む?何をいきなり藪から棒に…なるほどな、その用具と素材であれば店の裏に転がっておるから好きに使うが良い。貴様には何だかんだ贔屓にしてもらっておるからな」

「ありがとうな」

 

流石は見通す悪魔、いちいち説明する手間を省けることに関してはかなり便利な能力だが、使用者の性格がいかんせんよろしくないのが玉に瑕だ。

奴に礼をいいウィズを店に残し裏手に回る。

 

裏には何かの工房なのか色々な道具などが並べられている。多分商品の簡単な加工を行うのだろうが、俺からすればまだ見ぬ作業場感があって中々にグットだ。

素材は片付け忘れたのか転がっている物を使用すれば良いとの事で、早速落ちている廃材を使用してDIYを行っていく。

いきなりの作業でどうなると思ったが、流石異世界!どんなものもスキルを取って仕舞えばある程度の所までできる様になってしまう。考えてみれば恐ろしい話だが、手っ取り早く知るには別に構わないだろう。

 

資材をかき集めて組み立てていく。そして出来たのがこのリアカーである。

クリスの神具運びの際に使用した物よりかは小さいが、人間を数人運ぶには十分すぎるだろう。

そう言えばクリスは何処でリアカーを手に入れたのだろうか?この街を探せど同じ様な物を見たことがない。もしかしたらこの世界にはないのかも知れない。

 

適当な事を考えながら作成したリアカーを店の前に運び中にいるウィズを引き取りに行く。途中バニルにまた色々言われたがそれを適当に流してこうして屋敷の前へとたどり着く。

 

「帰ったぞー。みんな起きているか?」

 

外の日陰にウィズを乗せたリアカーを降ろし、屋敷の中に入り二人を確認する。ウィズの店で些か時間を消費したと言ってもまだ時間に多少の余裕があるので少しくらいならトラブルがあっても大丈夫だろう。

 

「おーい…ってまだ寝ているか」

 

ラウンジに入ると俺の予想通りに二人がグッタリと出発した時と同じ様に倒れていた。吐瀉物等々なかったのは幸いだが、改めてみれば家具等々が散らかったままで、その惨状を見て我ながらよくここまではしゃいだなと感心する。

どうせだったら早くに起こして治癒魔法を掛けておけば良かったと後悔する。それであればこの時間までに各自で色々と片付けをして貰えたのだと思う。

 

「起きろーってまあ起きないか…」

 

瓶がほとんど空いているので多分三人で全部飲んだんだろう。俺自身体のコンディションから見てそこまで飲んでいないと思う、しかしそうなれば残りを二人で飲んだことになる。

そうなれば此処までぶっ倒れているのは必然だろう。

 

適当に二人に治癒魔法を掛けながら呼びかけるが返事がない。不安に思い脈や呼吸を見たが特に問題はない様なので仕方ないと屋敷中の戸締りを済ませ、二人を持ち上げるとそのまま外に停めて置いたリアカーにウィズと一緒に転がし、荷物も載せた。

 

側から見れば人身売買の卸売業者だな、と何かあったら嫌だなと思いながらリアカーを運びながら馬車乗り場に向かう。

馬車乗り場に着き、チケットの手配を済ませる。小さいドラゴンの幼体と相席になってしまったが、特に問題はないだろうしむしろほぼ貸し切りに出来るのは中々に僥倖だ。

時間に間に合う様に馬車の小屋にリアカーを運び、女性陣を乗せていく。途中本当に人身売買の卸売業者だと勘違いされたが、スタッフに俺の顔見知りが居たので事情を説明すると同情されたが何とか無事に乗り込ませることに成功する。

 

「出発まで残り数分か…楽しんでるかお前ら‼︎」

 

イエーイと拳を振り上げるが、帰ってくるのは寝息だけだった。詰め込まれたゆんゆんのバックの中身のゲームは何の為に役立つのだろうと思いながら昨日の残りのつまみを口に運ぶ。

さてアルカンレティアまで1泊2日掛かるそうだが、果たして無事に行けるのだろうか。まあスタートは最悪だったが、みんな寝ていた事もあり特に面倒な問題はなかったのは幸いだ。

しかもウィズは魔道具店以降目を覚ましていないので気づいたらアルカンレティアと言う謎の展開に面食らうだろうなと思う。荷物は事前に予測していたバニルが荷物を用意してくれてたので最悪の事態は免れたのだが、それでも人間関係の都合とか色々あるだろう。

よくサプライズで海外旅行だとか言うが結局当人の都合が合わずにキャンセルになったと言う話を聞いたのも古くはない。

 

「異世界に来て初めての旅行だと言うのに全くだらしが無いぞ」

 

適当に文句を垂れては見たが、よく考えれば二人は自分が原因だと言う事を思い出し、目が覚めたら責めるのはやめておこうと決めた。

 

 

 

 

 

馬車に揺られること数分、馬車の小屋に取り付けられた窓から遠方に砂煙の様なものが見えるので千里眼を使い確認すると、何やら動物の様なモンスターなのか分からないが群れで走っている様だ。

 

「おっちゃん、遠くで走っているのは何なんだ?」

 

馬車の操縦士に向かって話しかける。容姿から見て中年くらいだろう、この仕事についてから結構長そうなベテラン感を感じるので聞いてみることにする。

 

「え?遠くですか?特に何も見えませんがね…まあこの時期なら走り鷹鳶くらいなもんでしょう」

「何すかそれ⁉︎」

 

走り鷹鳶?走り高跳びをもじった物なのか?にしてはふざけたネーミングセンスだ。稀にゲームとかで敵の名前を考えるのが面倒になってそこら辺にある物を利用して変な名物を作ると言うが、ほぼそれに近いんじゃないのだろうか?

この世界は実はデジタルの世界で現実の俺は病院の実験室で寝かされているとかやめてほしい、仮にもしそうならぜひ起こさないで欲しいもんだ。

それにそうであるなら何でも知っているクリスは管理者の様な物だろう。

まあ住人と話して居て特に違和感を感じないので多分現実だとは思うが、走り鷹鳶については一度考え出した人間とあって話をしてみたい気にもなるが、すでに存命ではないだろう。

 

「ちなみに私が名付けたんじゃないですよ」

「へーそうなんですか」

 

その後適当に世間話をしていると馬を休ませるための休憩に入る。

操縦士は仲間の元に向かって行ってしまったので、今は俺一人だけになってしまう。

 

「いい加減に起きろよ…」

 

流石にそろそろ目覚めてもいいんじゃないかと思い手始めにゆんゆんを起こそうとゆさゆさと揺らすと起きたくはないのか売りながら抵抗する。

 

「う…うーん」

 

まるで日曜の朝に兄弟を起こす様なそんな抵抗を受けるが、そんなものは聞かないと言わんばかりに今度は思いっきり揺さぶる。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎って此処何処ですか⁉︎」

 

どうやら夢を見てうなされていたのもあったのか、ある程度刺激を与えると夢が変化したのかそのまま飛び跳ねる様に起き上がった。

 

「おはようゆんゆんもう昼だぞ。それに此処は何処かはわからないがアルカンレティアの道中だぞ」

「え⁉︎」

 

彼女は突然の事で訳が分からないと言った表情を浮かべている。

悪夢から目覚めたらまた新しい悪夢の始まりだったとはまさにこの事だろう。正直彼女に関しては同情を禁じ得ない。

取り敢えず酔い覚ましを渡して残った二日酔いを治してもらう。

 

 

 

 

「成る程、そう言う事でしたか。まあ本来なら謝るところですけど今回はカズマさんが悪いと思いますので謝りません」

「えー」

 

酔い覚ましの薬を彼女に飲ませた後に軽く事情を説明すると、むすっとした様な表情で彼女がむくれた。出来れば出発の前に風呂に入りたかったそうだ。

 

「まあ、何があったかは覚えてないけど悪かったって」

 

既に昨日の記憶は忘却の彼方なので何があったのかは思い出せないが、とにかく状況を見るに俺が悪そうなので誤っておく。

 

「まあ私は別に構いませんけど、今度から旅行の前は大人しくしましょう」

「あー、そうだな」

 

やらないとは言えないので適当に相槌を返す。

変に約束してしまうと、後々に厄介なことになりかねないのでここは上手く逃げるのが賢い選択だろう。

 

「それで何でウィズさんもここに居るんですか?確かメンバーはこの三人だけですよね?」

 

もしかして新しい女⁉︎見たいな昼ドラ的な展開になりそうだと思ったが、新しい仲間が増えた嬉しさが勝ったのか少し表情が緩んだ様な気がした。

 

「事情は後で話すとして、まず先にめぐみんを起こそう」

「そうですね…でも気をつけてください。めぐみんシュワシュワ飲んだ後の寝起きがめちゃくちゃ悪いので」

「マジで⁉︎ヤバくないか…それじゃあゆんゆんが起こしてくれよ!」

「嫌ですよ⁉︎何で私が起こさないといけないんですか‼︎私の方が付き合いが長いので八つ当たりが酷いんですよ‼︎特に二日酔いの日は酷いもんですよ!」

 

そう言えば前に飲んだ時は大抵朝方ゆんゆんがグッタリとしていたが、そう言った理由があったのか。

明かされた真実に戸惑いながらもゆんゆんに押し付けようと奮闘するが、それを尽く押し返される。今日のゆんゆんはいつもと比べて中々に強敵だった。

 

「待てよ…」

 

考えているとある秘策を思い付いてしまった。

 

「何ですか⁉︎急に黙らないでくださいよ‼︎カズマさんが黙ると大体ろくな事が起きないんですから‼︎」

「何だと⁉︎」

 

静かに考えを纏めていただけで此処まで酷い事を言われるとは流石の俺もビックリ大仰天だ。

 

「まあいい、此処は俺に任せてくれ」

「何かいい方法が思いついたんですか?」

「ああ、まずめぐみんが二日酔いの状態で起きてしまうのがいけないんだろ、なら要するに起きたと同時に二日酔いで無くなればいい訳だ」

「あの…推理小説風に言うのは構わないんですけど、早く結論を言ってもらえませんか?すごく嫌な予感がするんですけど…」

 

カッコよく名推理の如く解決法を説明する俺に対して現実を突きつける様な答えを催促するゆんゆん。その光景は側から見れば中二病に対して現実を突きつける様なそんな無慈悲さを感じさせるほどだった。

 

「要するに…ってまあ百聞は一見にしかずって言うしな、見てろって」

「えぇ…」

 

思い立ったら即行動。やはり現代を生きる人達に足りないものは行動力だろう、何事にも理由をつけては否定的な事を言うがその否定する理由を考える労力を行動に移せば、全てとは行かないが万事OKだろう。

 

「おーいめぐみん起きろ‼︎いい加減起きないと体が爆発するぞ‼︎」

 

適当に言いながらめぐみんの体を揺さぶる。俺の手には既に良い覚ましが握られている。

 

「あのー凄く嫌な予感がするんですけど…」

「うるせぇ‼︎責任から逃れた奴が後ろから文句言ってんじゃねぇ‼︎状況を変える事ができるのはな!死地に留まる当事者だけなんだよ‼︎」

「カッコイイ事言えば何やっても許されるわけじゃないんですよ‼︎」

 

あれだけ自分は関わりたくないと文句を垂れていたゆんゆんが後ろで止める様に警告してくる。

流石ゆんゆん、やはりこの世界での付き合いが長いだけの事はあってか俺の行動に関して何かしらの感が働くらしい。

だが時既に遅し、既にめぐみんは俺の手により半覚醒状態なのだ。

 

「う…ん?此処は…何処なんですか?確か飲み会を…」

 

そして揺さぶる事はや数分、ようやく周りが見えて来たのか今自分が置かれている状況に疑問を覚えている様だ。

 

「今だ‼︎」

 

めぐみんが覚醒し、状況を掴み始めたタイミングで手に持っていた酔い覚ましの入った瓶の蓋を開け、それをめぐみんの口に突っ込みビンの角度を変え中身の液体を彼女の喉へと流し込んでいく。

側から見れば拷問の様だが、ゆんゆんがそこまで警戒するとなれば手段を選んでいる場合ではないのだ。

 

「ん⁉︎んんんんんんん⁉︎んんんんん!ん⁉︎」

「ちょっと⁉︎何してるんですか⁉︎」

 

途中ゆんゆんがギョッとした表情でコチラを見た後、止めに入るが既に後の祭りで彼女が止める前に行動は完了しているだろう。

そして(ん)と言う文字がゲシュタルト崩壊しそうなほどに驚きのんを連呼しながら彼女は瓶に入った酔い覚ましを飲み干した。

既に治癒魔法でおおよその酔いは覚めているので、酔い覚ましを飲ませればおおよそいつもの通常営業に戻るだろう。

 

「ああもう‼︎カズマは私を殺す気ですか⁉︎」

 

飲み干したのを確認して力を緩めると、めぐみんは俺の手ごと瓶を払い除けながらそう言った。

 

「いや、殺す気はなかったんだけど、ゆんゆんが二日酔いの時の寝起きが悪いって言うからさ、だったら早めに目を覚してもらおうかと思ってな」

「いやいや、こんな事をされたら逆に目が覚めなくなりますから‼︎確かに寝起きが悪い自覚はありますが、ここまでされる筋合いはない筈ですよ‼︎」

 

完全に目が覚めたのか思いっきり怒鳴なってくる。

確かに寝起きに水一気飲みさせられたら怒るよな…

 

「お、おはようめぐみん調子はどう?」

 

横からヒョイっと顔を出すゆんゆん。心配になったのだろうか?

とんで火に入る夏の何とかとは言うが、今のタイミングで出てくるのは悪手だろう。

 

「だーれーがー寝起きが悪いですか‼︎大体その時に限って、あれめぐみんってお酒弱いんだ、子供なのね!とか煽ってくるからですよ‼︎少しは発言に気をつけたらどうですか‼︎」

「ご、ゴメンなさい‼︎」

 

そして始まるキャットファイト。何度も見て見慣れた光景だが、まさかここに来て見られるとは思わなかったぜ。

いい加減旅行先でもイチャつくのは勘弁してくれと言わんばかり荒れっぷりに、さっきまでの一人旅が懐かしいと思うまでである。

 

「二人は大丈夫そうだから、今度はウィズを起こそうか……え⁉︎何か透けてんだけど⁉︎」

 

ウィズを起こそうと近づくと何故か彼女の体が薄らと透き通っていた。

 

 

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