この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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話を進めようと思ったら全然進みませんでした。
誤字脱字修正ありがとうございますm(__)m


アルカンレティア7

「それで教会って何処にあるんだ?」

 

ゴタゴタを纏めて宿を出るところでめぐみんに尋ねる。色々回ったが何処が彼女の言う協力者がいるのかは未だにわからない。

 

「教会ですか?それでしたらここからでも見えますよ。ほらあの頂上にある奴ですよ」

「おい待て。あれか?この都で一番大きなやつか?」

 

めぐみんが指差す先にあるのはアクシズ教の本拠地になってそうな程に巨大な場所だった。都の一番上にあるのだからそうだとは思っていたが、まさかめぐみんの知り合いとやらがそこに居るとは思わなんだ。

 

「めぐみん…その知り合いの人って大丈夫な人よね。まさか教祖様とかじゃ無いわよね?」

「安心してください、あの人はただのシスターですよ」

 

いつも振り回されているからだろうか、ゆんゆんが不安そうにめぐみんに尋ねるが、彼女はそれをいつもの心配性かとうんざりしながら返す。

 

「取り敢えずカズマ、早い所潜伏お願いします。この人数でこの街を普通に歩くのは流石の私でもカバーしきれません」

「ああ、そうだな。今かけるよ」

 

めぐみんに言われるがまま潜伏スキルをかける。

 

「あのー」

「どうしたウィズ?」

 

いざ行くぞと言うタイミングでウィズが声をあげた。

 

「申し訳ないのですが…これから向かう場所が教会でしたら私はちょっと…」

「ああ、そうだったなすっかり忘れてたよ。それじゃ悪いんだけど留守番頼めるか?」

「ええ、申し訳ありません」

 

彼女に申し訳なさそうに言われ彼女がリッチーである事を思い出した。

アンデットである彼女が教会に行って仕舞えば瞬く間に浄化されてしまうだろう。そうなれば俺はバニルに保護監督者の責任に問われ危うく酷い目に遭う所だった。

 

「こうなっちまったけど、三人で行くか。道案内はめぐみんに頼めるか?」

「ええ、任せてください。と言いたい所ですが、さすがの私もあの教会に行くのも大分久しぶりになってしまいますのでダメだった時は諦めてください」

「マジかよ…」

 

そう言えばなんだかんだ言ってめぐみんがこの都についてまともに外に出ていないなと思い返す。

たまに地元に戻り前あった道などは区画整理によって殆ど変わってしまい、目印だった建物もだいぶ建て替わり一瞬違う場所に来てしまった様な感覚に囚われることがあると何処かの人が言っていた事を思い出した。

 

「取り敢えず任せるよ。別に迷宮って訳じゃないんだから最悪方角通りに行けば着くだろう」

 

例え道が分からなかったとしても方角さえ合っていれば大体着くことが多い。俺の幸運値が高い事に起因しているのかもしれないが。

 

「それでは行きますよ」

 

おーと三人で適当に声を上げ電車ごっこの様に進み出した。

正直潜伏スキルがなければ恥ずかしさのあまりに死んでしまいそうな気さえしてくる。この歳になって隊列組んで進行だなんて金を積まれてもやりたくは無かったのだが、あの勧誘集団に襲われる回数が減るのであれば仕方ないだろう。

 

「あの…どうして私が一番前なんでしょうか?」

 

隊列を組み進んでいると不満なのだろうかゆんゆんが文句を言ってきた。

 

「何でって…何でだろうな…」

「ふざけないでくださいよ‼︎めぐみんは道案内でカズマさんは潜伏の役割があるんですから変わってくださいよ‼︎」

「いや…急にそんなこと言われてもな…」

 

ちなみに列は前方にゆんゆん、真ん中に俺、そして後方にめぐみんがいる。

何故こうなったかと言われれば最初にめぐみんが俺の背中にひっついてきたので、手持ちぶさになった手でゆんゆんの肩を掴んだ事になっている。

 

「どうするよ、ゆんゆんはああ言っているけど変えるか?」

「いえ、別にこのままでいと思いますよ」

 

一応道案内という要を握っているめぐみんに確認を取るといやいやと首を振りゆんゆんの頼みを一蹴した。

 

「だってさ、めぐみんがああ言うんだからこのままな」

「何ですかそれ⁉︎」

 

正直道のど真ん中で順番を変えるとなると住人に見つかるリスクがあるので、できればこのまま行けるのであればそれがいいのだ。

 

「取り敢えず、この順番でよろしく頼むよ」

 

えぇ…と彼女は項垂れたが、現実は甘くはないと言う事でこのまま進む事にした。

 

めぐみんの指定している道は俺の予想通り険しく、裏道から獣道まで様々な道があった。特に住宅街の囲いの塀の上を三人手を繋いで伝歩いたのは結構ギリギリで危なかったと今でも思う。

それでも効果はあったのだろう。道中で勧誘にあった回数はほぼ数回とかなり数を絞れた。だが、もう一度同じ道を通れと言われれば答えはノーだろう。

最終的に教会前についたのはいいのだが、入り口までの直線だけは警戒のためか何もなく隠れる場所が全く見当たらない。

 

「それで、これからどうするよ。お得意の裏道とやらは流石に使えないぞ」

「ええ、そうですね」

「え?何か方法があるんじゃないの?」

 

問い詰めると彼女は意外とあっさり無策だと告げる。

 

「別にここは警戒しなくても大丈夫ですよ。なんと言ってもアクシズ教の総本山ですからね、来ると言えば殆ど信者の方々ですから余程挙動不審でなければ同じアクシズ教の仲間ど思って勧誘はされません」

「確かにな…それは盲点だったな」

 

めぐみんに言われてハッとする。

灯台下暗しとはこの事を言うのだろう。教徒でない信者がわざわざ教会に来る筈がない、それも悪名高きアクシズ今日となればより一層だろう。

 

「取り敢えず潜伏かけながら表から教会に入るか?」

「いえ、その必要はありません。彼女の事です、どうせまた良からぬこ事を考えてるのでしょう大体の場所は見当がつきます」

 

めぐみんにどうするか尋ねると呆れた様に彼女は教会の敷地に端にある小屋を指し示した。

どうやらそこに例の人物が居るのだろう。しかし、めぐみんが呆れていると言う事はまたロクでもない人物なのだろう。タイプは色々あるが、できればみんなよりまともなタイプがいいと思うのは贅沢だろうか?

 

「取り敢えず行ってみるか。まあ居なかったら居なかったらで中に入れば大丈夫だろ、取り敢えず虱潰しにやって行こうぜ」

 

考えても仕方ないのでめぐみんが指し示す外れにある小屋に向かう事にし歩みを進める。

小屋自体はそこまで古くはないが普段人が住むには少し小さいくらいだ。多分物置小屋に使われてでもいるのだろう、ただ周りの手入れが物置小屋にしてはかなり丁寧に行われているので違和感を覚える。

 

「薄っら明かりがありますね。多分中にいますね…」

「中にいるのか?だったらこじ開けるか?」

「流石にそれはいけないんじゃないでしょうか?」

 

無理矢理開けようと取手との隙間に剣を当てがいこじ開けようとするジェスチャーをとるとゆんゆんに止めろと注意される。

何か他に方法は無いのだろうかと思考を巡らすと、そう言えばクリスに解錠スキルを教わったな事を思い出し懐から冒険者カードを取り出し確認する。

ポイント自体はバニルの件で余裕はあるのでこれくらいなら大丈夫だろうと思い習得する。

 

「よし‼︎これで大丈夫だ、行くぞおま…」

「どうやら鍵は掛かっていない様ですね。失礼しますよ」

 

淡々とスキル習得の流れを目の前で行ったが、めぐみんはそんな俺の行為など目に入らなかったのだろう、無慈悲にも扉を開いた。

俺の予想では流石に鍵がかかっているだろうと思っていたが、そんな事は無くめぐみんの突拍子のない行動により扉が開かれ室内が明らかになった。

思考がガチガチに固まって柔軟な思考が出来ていないと思い知らされるいい機会になったのは良いのだが、これではただでさえ無い様なものと扱われていた面子がなくなってしまう。

 

「居ますかーって探すまでも無かったですね」

 

扉を開けた先には金髪の髪色をしたシスターが部屋の隅で何やらコソコソしていた。

しかも周囲にはここからでは良く分からないが白っぽい粉の入った袋を持っていた。これはどう見てもヤバい何かを身体に取り込んでいる最中では無いだろうか?

その当人は突然現れては部屋にズカズカ入ってきためぐみんに反応してかギクリと反応して恐る恐る背後に振り返った

 

「いやー別にサボっていないですよ⁉︎…ってめぐみんさんじゃないの⁉︎随分とまた久しぶりな人が出てきたわね」

「はぁ…貴方にはできれば会いたくは無かったのですが、仕方がありません」

「え?何で私あって早々文句を言われているの?」

 

めぐみんに呼ばれ上司か何かにサボっているのが発見されたのと勘違いした様で、他の人では中々に見ないくらいにビクッっと背筋を伸ばして驚いた後こちらに振り向きざまに言い訳を垂れていた。

そして呆れた様に対応するめぐみんに若干の理不尽さを感じながら彼女らの会話は続いていく。

 

「それでめぐみんさんは私に何か用なのかしら?そして後ろにいる2人はどう言った関係なのかしら?女の子の方は貴方の様にかなり可愛いんだけども⁉︎」

 

質問に次ぐ質問にめぐみんは質問をすることが出来ずに対応に迫られる。やはりめぐみんが躊躇っていたあたりに結構ヤバ目の奴なんだろう。

 

「そうですね…2人の名前はゆんゆんとカズマで私のパーティーメンバーです」

 

このままでは話が進まないので取り敢えず名前だけ紹介される。

 

「そしてこの女性はセシリーです。アクシズ教のシスターで…」

「貴方のお姉さんでーす」

 

紹介の途中で飽きたのかめぐみんに向かって飛びかかり後ろから抱つく様な形になる。飛びつかれためぐみんはやはりそうきたかと渋い顔をしながら肘打ちで迎え撃った。

 

「…随分と欲望に正直になってきましたね。貴方には理性がないのですか?」

「…くっ、さすがね…私が見込んだ事はあるわね」

 

淡々と話すめぐみんに鳩尾を抑え悶えるセシリー。

彼女からすればいつもの日常なのか、2人はいつも通りの様な雰囲気を放っていた。

 

「大丈夫でしょうか…このままだと話が進まない様な…」

「さあな、そこはめぐみん次第だろ…あいつが上手く手懐けられなければ多分どうにもならないだろう」

 

アクシズ教の教徒に関してはトラウマがある為か、教徒に関して動物の様に扱ってしまう。

そして、その事に若干の罪悪感を感じるが、自分がやられた事を思い出していくとスーとどうでも良くなっていく。欲望に忠実になった人間は殆ど動物と同じと言っても過言ではないだろう、それであれば同じ人間と思っているとひどい目に遭うのは道理だろう。

 

「それで本題に入るんだけどお姉さんに何か用なの?まあ用も無しにここに来るわけないわよね?」

「そうでした、危うく貴方のペースに乗せられるところでした」

 

ベラベラと話すセシリーに何とかツッコミを入れて対応していて、完全に彼女のペースに乗せられているめぐみんに、ふと思い出した様に彼女が尋ねた。

 

「昔に私に渡したアクシズ教のペンダントがあるじゃないですか?あれをもう2つ程用意して頂きたいのですが?」

「ああっ‼︎あの時にあげたペンダントの事ね!そうね…できれば上げたいのだけれども勝手に持ち出すと私が怒られるのよね…」

 

やはり流石のアクシズ教とは言え勝手に教徒の証であるペンダントを持ち出せないのだろう。

 

「そこを何とかお願い出来ませんか?使用すると言っても旅行の間だけの短い時間になりますので、あまり迷惑をかけないと思いますので」

 

だが、それでも諦めずに食い下がる。

 

「そうね…まあ数日くらいなら何とか誤魔化せそうだけど…そうよ‼︎こう言うのはどう?今私達が抱えている問題を解決するのを手伝ってもらうと言うのは?」

 

食い下がるめぐみんに提案をふっかけるセシリー、何だか雲行きが怪しくなってきている。

大抵こういった時にはロクでもない事を頼まれて頼み事以上の労力を消費してしまうのだ。

 

「カズマさん…何だか嫌な予感がしてきましたよ。この流れですとまたおかしな事に…」

「諦めろ…ああいう手合いは俺達じゃどうにもならない」

 

長い付き合いなのか、ゆんゆんも何かを感じ取った様で俺の服の袖を引っ張りながら小声でそんな事を言ってきた。

 

「落とし所としては悪くはありませんが、まずは内容を聞かせて頂きたいですね」

「そうね…話せば長くなると思うけど覚悟はいいかしら?」

 

待ったましたと言わんばかりにテンションを上げ彼女は話を始めた。

 

「そうね、まずは私がアルカンレティアに帰ってきた所かしらね」

「いえ、流石にそこは関係無いと思いますので本題からお願いします」

「もう、全く随分と冷たいのね、前会った時は事ある毎に私に助けてお姉ちゃんとか言っていたのに」

「勝手に記憶を捏造しないでください!それに助けを求めてきたのは殆ど貴方じゃないですか!」

 

長々と話を始めようとする彼女を制する様にめぐみんがバッサリと話を両断する。これ程までにめぐみんに対して心の中でガッツポーズをした事はないだろう。

しかし、上手く立ち回ったと思ったそれが、また新たな無駄話の引き金となり逆に話がこじれてしまう。

 

「まあ、時間がない様だから特別にざっくりと説明してあげるわ」

「やっとですか…」

 

それから長い言い合いの後に彼女の気が済んだのかようやく話を始める。それに対するめぐみんはもはや疲れて目が死に始めている。

 

「何から話せばとかよく分からないけど、簡単に言えばこの街の温泉にところてんスライムが溢れかえっているのよ」

「は?」

 

めぐみんは言っている意味が分からないと言った表情を浮かべた後こちらに目線を送った。

 

「安心しろ、俺にもさっぱり分からん」

 

取り敢えず率直な感想を伝える。

 

「今は落ち着いているのだけど、そうね…ちょうど私がここを留守にしていた頃の話になるのだけど」

 

 

そう言い彼女は語り始めた。

 

まあ途中余計な話が話が多かったのでまとめるが、彼女がこの都を留守にしている間に事は起こったそうで、この温泉街の数カ所の温泉にところてんスライムが一時的に溢れ返ったらしい。

幸いモンスターとしては弱かったので処理に時間は掛かったものの、被害としてははそこまで酷くはならなかったそうだ。

だが、時折隙を見てはところてんスライムが現れ入浴中の客を襲うことが起こるらしい。

 

まあ、完全にハンスの行なっている実験に違いないとは思うが、奴の言っていた統率はどうにかすると言う言葉はどうやら完全ではないようだ。

 

「成る程、つまりペンダントを渡す代わりに我々にその原因を解明してほしいと言うわけですね」

「そう言う事よ。めぐみんさんはそこら辺の理解が早くて助かるわ」

「仕方ありません、観光をメインにしながらついでに調べるとしますよ。それでペンダントはいつ用意できますか?明後日の夜になる前には帰ってしまいますので、できれば明日の朝ごろに頂ければいいのですが」

「その心配はないわ。ペンダントならここにあるわ」

 

めぐみんがペンダントを用意できる時間を確認していると、そんな事は気にするなと胸元から二つのペンダントを取り出しそのままめぐみんに渡した。

 

「え?どう言う事ですか⁉︎こっそりくすねて来るのでは無かったのですか⁉︎そのリスクを負うから代わりにスライムを探す話ではないのですか‼︎」

「それはそれよ。私も忙しくて何度かペンダントをなくす時があるの。だからこうしてたくさん持っておけばいざと言う時に困らないでしょう?」

「何ですかそれ…そもそも忙しいからって大切な物をなくしますか?」

「そんな細かい事は気にしてはいけないわ、それでどうかしら?ペンダントは渡してしまったのだけれど私の依頼を受けてくれるのかしら?」

「すでに渡しておいてそれを言いますか…いいでしょうセシリー貴方の依頼を受けようじゃないですか‼︎」

 

売り言葉に買い言葉。やはり上役にいる為か、他の教徒とは違って口が達者であのめぐみんが上手く丸め込まれてしまっている。

ここに来て多少の依頼をこなす事に関しては別に構わないのだが、その内容が実に不味い状況を生み出そうとしている。

 

スライムをばら撒こうとしているハンスに、その出所を辿ろうとするアクシズ教に所属するセシリー。その相反する依頼に板挟みになってしまうと俺が何もできなくなってしまう。

 

「流石めぐみんさんね、私の見込んだ通り依頼を受けてくれると思ったわ‼︎正直受けてくれなければ教会に居る頼もしい方達に頼んで貴方達をアクシズ教に招待する所だったわ」

「うわ…よくもまあ卑劣な事を考えつきますね…。ですが珍しいですね?貴方でしたらこう言った面倒事は真っ先に知らないフリすると思っていたのですが?」

「えっ⁉︎ま、まあそうよね‼︎私もこの都の事はこの気に入っているの。だから困っている人を助けてあげようと思うのは普通のことよ」

「何か怪しいですね…」

「そ、そんな事は無いわ‼︎考えすぎよ。それに今日は随分と遅いので早く帰って明日に備えたほうがいいわ‼︎」

 

ペンダントを受け取りもう帰るだけだと言うタイミングで何気なくめぐみんが尋ねると、彼女はまるで悪戯の証拠隠滅がバレそうな子供の様な反応を示した。

 

「なんか怪しいですね…」

「怪しくなんかないわ、それよりも早くここを出ないと他の仲間達に見つかるわ。そろそろ勝手に抜け出して1時間くらい経つもの、きっと心配になって探しに来るに違いないわ‼︎」

「ぞれに関しては多分大丈夫です。前から貴方は何かあるたびに勝手に抜け出していましたからね、おおよその方達はすでに諦めて貴方がいなくても何とかなる様に分担しているでしょうね」

「ひ、酷い‼︎そんな言い方するなんて…実はめぐみんさんは悪魔だったりするんじゃないかしら‼︎」

 

多分嘘泣きだろうが袖で目元を隠しながら涙声で訴えかける。

 

「貴方にとってはそれで誤魔化せているつもりでしょうが、前にそれで痛い目を見ましたからね今回は容赦なく行きますよ」

「あ⁉︎ちょっとそこは」

 

嘘泣きを止めながら必死に抵抗するセシリーを腕力で無理やり引き剥がして先程まで彼女がコソコソ何かをしていた所まで無理やり進んでいった。

 

「めぐみんさん今なら間に合うと思うの、だから早く戻って来るのはどうかしら?」

「そのセリフが最早答えを言っている様な物です。私に見つけられる前にとっとと答えを言ったほうが身のためですよ」

 

流石にここからだとめぐみんの様子が見えないので千里眼のスキルを使用して視線だけで追う事にする。

めぐみんが奥の方に行くと、取り敢えず彼女のいた所に向かい周囲を物色し始めた。特にスキルを持っていないので発見できるとは思えないが、やはり野生の感の様なものが働いたのか地面に薄ら広がっている白い粉を発見する。

まずはしゃがんで周囲を確認する。多分大元の物はすでに犯人によって隠されてしまっているだろう、具体的に言えば彼女の修道服のポッケとが怪しい所だ。

周囲を探って特に何も無かったので、彼女はそれを指で少しなぞる様に掬いそのまま舌で舐める。

 

「ペロッ、これはところてんスライム‼︎」

 

舐めとり若干の間があった後に、粉の正体が分かった様でその正体の名を口にした。正直毒性のある物質だったら怖いからやめてほしいので今度注意しようと思う。

彼女の発言に対して何か反応があるのかと思いセシリーの方を見ると、どうやら観念したのかそれともまだ逃げられるのか少し余裕を持っているといったどっちとも取れる表情をしていた。

 

「セシリー少し貴方に聞きたいことがあります」

「何かしら?」

 

両者間合いを取りながら話を始める。

 

「ところてんスライムが出てきたのは貴方がこの都を出た後ですね?」

「そうなるわね」

 

「貴方の好物はところてんスライムでしたね」

「そうよ」

 

「ところてんスライムが自然発生したと言う話は聞いたことがありません、誰かが持ち込まなければこの様な事にはなりませんよね?」

「ええ、そうね…」

 

「最後に一ついいでしょうか?前からこの小屋に大量に隠し持っていた、ところてんスライムの粉は何処に行ったのですか⁉︎」

「…君の様な感の良いガキは嫌いだよ‼︎」

 

 

 

徐々に質問のやり取りに不穏な空気が漂ってきた後、最後に核心を疲れたセシリーがついに本性を現した。

結構ノリノリなのが腹立たしいが。

 

「ゆんゆん確保してください‼︎」

「え⁉︎私⁉︎いきなりそんな事言われても‼︎」

「大丈夫です!セシリーの筋力はかなり低いです。ゆんゆんのステータスなら力だけで押さえ付けられます」

「わ、分かったわ‼︎すいませんセシリーさん少しだけ抑えます」

「やった‼︎美少女に抑えられるなんて中々に無い光景だわ‼︎これは後でゼスタ様に自慢できるわね…って痛タタタタ‼︎この子も結構力が強いわね…お姉ちゃんの体が折れてしまうからもう少し優しくしてもらえるかしら?あとできるだけ体を密着させると抑えやすくなるわ」

 

2人で抑えにかかるが、やはり相手はアクシズ教徒のシスター。試合に負けて勝負に勝つとはこの事だろう。

 

「この‼︎相変わらずブレませんね‼︎こうなったら合わせ技行きますよ、良いですかゆんゆん3・2・1で行きますよ‼︎」

「わ、分かったわ昔にやったあれね‼︎」

 

中々に調子を崩さない彼女に痺れを切らしたのか、とうとう実力行使に出る事になり2人がかりで関節技を繰り出そうとしている。

 

「「せーの3・2・1‼︎」」

「え?ちょっとそれは待って…痛たたたた‼︎人間の体はその方向には行かないわ⁉︎」

「良い加減観念してください‼︎証拠はもう挙がっているんですよ!」

「分かったわ‼︎もう冗談よ‼︎冗談‼︎話すから密着はそのままで力を緩めて貰えるかしら?」

 

あくまで抱きつかれた体制を維持しようとする彼女に2人は力を緩めとうとせずにそのまま続行する。

 

「痛たたたたっい!しかたなかったのよ‼︎まさか外に出ている間に全部無くなっているなんて思わないじゃない‼︎」

「ようやく認めましたね‼︎貴方が言った時点でそんな事だろうと思いましたよ‼︎前回も貴方のところてんスライムが逃げ出していましたからね」

 

どうやら過去に犯行していたみたいで今回は再犯に当たるらしい。

そうなって来ると、ハンスの用意したところてんスライムの出所はここなのだろうか?あれだけ嫌がっていたアクシズ教の本陣のど真ん中に奪いに来たのだろうか?

 

罪の告白をして罪悪感が無くなったのか2人の拘束をスルリと抜け出し立ち上がり、呆気なく出し抜かれた2人は重心を預けていた相手がいなくなった事によりバランスを失いそのまま地面に倒れ込んだ。

 

「取り敢えず事が悪化しない内に証拠隠め…じゃ無かった、問題を解決して欲しいのよ」

「心の声ダダ漏れじゃねえか」

「そんな酷いこと言わずにお願いね」

 

罰の悪そうに彼女は笑うと彼女は俺に向かって近づいて来る。

どうやら挨拶したいのだろうか?だとしたら別にここまでする必要は無いのだが…

 

「カズマさんね。さっきも紹介してもらったけど私はセシリー宜しくお願いね」

「ああ、こっちもよろしく…」

 

手を差し出されたので握手を求められたと思いこちらも手を差し出す。

本来であればその場で両者の手を握り合いながら終わるのだが、彼女はそれでは終わらずに俺の手ごと体を手前に引かれ俺はバランスを崩して前のめりになってしまう。

それと同時に彼女は一歩前に踏み出し俺の懐に入り込む。鮮やかな手際に戸惑ったが俺もただではやられる訳には行かないので初撃は諦めてカウンターを狙いに構える。

彼女は踏み込んで早々の空いた手を肩に乗せ上体を固定し頭がこちらに近づいて来る。噛みつき攻撃でもして来るのだろうか?

 

「うぇ…」

 

しかし、彼女が何かしらの動きをした後に来た感覚は痛みでは無く、生温い蛞蝓が貼った様な感覚だった。

 

「やっぱりね…この味は!…これはところてんスライムの味ね‼︎」

 

直後自分の首筋を舐められた事に気づく。

しかも彼女のセリフから俺がところてんスライムに対して何かしら関与している事を見抜いている。

不味い…このままだと俺が盗んだと誤解されてしまう。

 

「大丈夫よ…みんなには内緒にしてあげる」

「何…だと⁉︎」

「ところてんスライムの所持はすべての国で禁止されているものね。何かあったら相談しに来なさい、お姉さんが同好の誼みで少し分けてあげるわ。実はまだ別の隠し場所があるわ」

「…ああ、その時は頼むよ」

 

どうやら同じところてんスライムを愛する者と勘違いされた様だ。

それはそれで不名誉な事だが、それを否定してしまえば俺から何故ところてんスライムの粉が付いていた事に関しての理由がなくなってしまうのでここは話を合わせておく事にする。

しかし、ところてんスライムって食べ物だったんだな、てっきり何かの儀式にでも使う物だと思っていたのだが。

 

「それでは皆さんところてんスライムの件よろしくね」

 

その後色々あったが、何とか2人分のペンダントを受け取りところてんスライム事件の顛末を頼まれ、げっそりした表情で俺たちは宿へと戻っていった。

幸いペンダントの効果なのかアクシズ教徒に絡まれなくなったのは幸いだが。何か大切なものを失った様な気がしなくもない。

取り敢えずの目標は2人をうまく誤魔化しながらスライムを配置しないと行けないと言う相反した行為を互いにバレずに行うと言う事だ。

                                                                                                                                                                                                 

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