「マジかよ‼︎」
遠くにいたキャベツ達は瞬く間にこちらに接近し、第一陣で疲弊した冒険者に激突し倒して行く。
「疲労した冒険者は避難しろ‼︎」
近くにいた誰かの掛け声に反応し、冒険者達は街に逃げて行き幾許の人数が残る。
その中にはクリス、ダクネスも含まれている。
「何だ、お前も残っていたのか」
ダクネスに目が合うと彼女から話しかけてくる。
「まあね、ここで逃げたらあいつに晩飯を奢らないといけないからな」
互いにキャベツを捌きながら会話を続ける。
ん?あいつの攻撃キャベツに当たってなく無いか?
スティールをかまし潜伏の状態で回収をしつつ彼女を観察すると、どうやら振った剣はキャベツに当たらずに空をきっている。
「えぇ…」
それ前衛として大丈夫なのかよ、人のこと言えないけど。
「そうなんだよね…ダクネス何故か攻撃系統のスキルを頑として取らないんだよね…」
あんぐり口を開けてると、またいつのまにか隣にクリスが居た。
「大丈夫なのかよ!あんたの所の前衛⁉︎」
振り向きながら突っ込むと 、彼女はハハハ…と頬を掻きながら乾いた笑いをする。
「まあ、あれはあれでいい所があるんだよ」
どこに?と聞こうとしたが野暮なのでやめておこう、人のこと言えないしな。
「それにしてもいい感じだね!さっき教えたばかりなのに、私の教えた盗賊スキル使いこなしてる」
「おうよ!この調子で他のスキルも頼むな」
「えー、それは君の誠意次第かな?」
ハハハと今度は楽しそうに笑うと、少し離れたダクネスの所にキャベツが集まってたのでそちらに向かうと言いそちらに走っていった。
しかし俺と話していた事が災いしたのか彼女は潜伏スキルを使い忘れてしまい、飛来したキャベツが彼女の脇腹に激突した。
「…っ‼︎」
大きい打撃音とともに、彼女が横に吹っ飛び勢いそのままころがっていく。
「クリス‼︎」
潜伏スキルを使用しながらクリスに近寄る、幸い大事には至らなかったが打撲だらけだった。
「私は大丈夫だから君は逃げて…」
強がるクリスに追い打ちをかけるようにキャベツ達はこちらに向かって飛来する。
まずいと思いながら、腰にかけた剣を抜きキャベツにぶつけながら軌道を逸らす、キャベツの激突と共に手首にかなりの重さが掛かるが何とかなりそうだ。
「クソ‼︎埒があかない、てか何で切れねんだよ‼︎」
仲間の仇と言わんばかりに、手を休める事なくキャベツ達はこちらに向かってくる。
「君もしかして片手剣スキル取ってないでしょ、お礼に後で紹介してあげるよ」
声が掠れながら彼女はそう言いスティールでいくつかのキャベツを行動不能にしていく。
しかしそれも長くは続かずに、途中クリスはぐったりし、キャベツを弾いていた俺の剣は横から来たキャベツに弾かれる。
「よくぞ耐えたな、カズマと言ったか、私の友人を守ってくれた事に礼を言おう」
剣を失い、とうとう成す術を失った所にダクネスが俺達の前に現れ、キャベツの体当たりを一身に引き受ける。
「おいダクネス!ここはいいからお前は逃げろ」
注意喚起するが、彼女はそれを聞かずに立ち続ける。
「何を言っているんだ、お前は私の友を庇った!ならばお前達は私が守ろう‼︎」
彼女そう言いながらもキャベツの体当たりを受け続ける、攻撃を受ける度に自慢の鎧は剥がれ落ちやがては自分自身の肉体を犠牲にし、まさに肉の壁と言った所だろうか。
「はぁ…はぁ…んんっ⁉︎何のこれしき‼︎」
何だろう、辛そうな状況なのに悦に浸って…
「あいつ‼︎喜んでやがる‼︎」
俺の思いとは裏腹に彼女の表情は幸せそのものだった…何だろう心配した俺が馬鹿らしくなった。
しかしどうするか?この状況も長くは持たないだろうし、考えようにも…
取り敢えずクリスを安全な位置に運ぶ為に
「ダクネス、悪いんだがもう少し囮を頼む、俺はクリスを安全な位置に運ぶ‼︎」
ダクネスに背を向け、クリスを持ち上げる。
重たっ‼︎
漫画みたいに軽々と持てるわけはなく、足を子鹿のように震わせながら運ぶ。
クソッ‼︎ここに来てレベルの低さが…後、重って言わなくて良かった。
クリスを預け、再びダクネスの所に戻ると、彼女を囲むように周囲にはキャベツの大群が展開され次々と体当たりを繰り返している。クルセイダーにはデコイという敵を引き寄せるスキルが有るらしいが多分それを使っているのだろう。
クリスを運ぶ間、キャベツの攻撃を一身に受けるダクネス、なんて凄い奴なんだ…アレで興奮してなければな‼︎
「遅いぞカズマ‼︎このキャベツの大群の攻撃を一身に受ける私‼︎まるで…」
「言わせねーぞ‼︎」
興奮が最高潮に達したのか、さっきまでの凛とした雰囲気は見る影なく、そこには一人の変態がいた。
その後は、なし崩し的にプリーストが彼女にヒールを掛けながら、ダクネスに集まっていくキャベツを他の冒険者が狩っていくスタイルになるが。
「このままじゃ埒があかないぞ‼︎」
思ったよりも数が多く、減っているとは思うが見た感じのキャベツ数は変わってないように見える。
このままだとジリ貧だ、どこかに大きな威力を持った術使いが居れば…いれ…居たわ。
ゆんゆんの事を思い出したその時だった。
「カースド・トルネード」
澄んだ響きと共に魔法が発動する。
先程のトルネードとは威力も規模も桁違いな強風の渦が出現し、周りのキャベツを巻き込んでいく。
ゆんゆんは、遠くから走ってきたのか、肩で息をしながら俺を見つけると。
「カ〜ズ〜マさ〜ん‼︎」
多分、いや確実に怒っている。激おこゆんゆん丸と言う奴だ。
「いやアレは、そのアレだ勝負だから仕方ない」
竜巻を制御しながら彼女が迫ってくる、凄く後が怖いので目を逸らす。
「アレはアレだしそれはアレだったんだ、つまり俺は悪くない」
それっぽい単語を並べゆんゆんを説得に掛かる、それっぽいと言ってもアレを連呼しているだけなのだが…。
チラっとゆんゆんを見ると、声のトーンとは比べ物にならないくらいニコニコと笑顔だった。
「カズマさん、言いたい事があるなら私の目を見て言ってください」
いくつか考えていた言い訳も吹っ飛び。
「すいませんでした‼︎」
俺は潔くゆんゆんに謝罪することにした。
ゆんゆんの魔法によりキャベツの群れは一掃され、俺は彼女の冷たい目線に突き刺されながら酒場に向かう。
酒場に着くと先に帰った者達が祭りの様に盛り上がっていた、騒いでいる人達の間を縫いながらも空いている席を見つけ確保しウエイトレスに注文する。
「まったく…今回は許しますけど、次は無いですからね」
プンプンと彼女はそう言って、提供されたキャベツ炒めに箸を伸ばす。
「何も言えません…」
勝負の結果も途中までは良いとこだったのだが、最期の所で圧倒的な差をつけられてしまい俺の惨敗となった。結局この食事も俺の奢りとなった。
明日賞金がもらえると言っても所持金が足りるかな…
取り敢えずキャベツ炒めに箸を伸ばす。
「何これ美味っ‼︎」
流石は飛び回るキャベツな事はある、味は予想を超える程美味しく歯応えも良い感じだった。
「当たり前じゃ無いですか、このキャベツを食べる為に食通は追い掛けながら旅をするらしいですよ」
まじか、でも何となく分かる気がする程このキャベツは美味しく収穫するだけで貰える経験値も美味しく、二重の意味で美味しい。
けどキャベツ追っかける為にこの世界に来たわけじゃ無いからな、この案は無しだな。
「ちょっとお花摘んできますね…」
キャベツを味わっていると、彼女は立ち上がるとそそくさと何処かに行ってしまう。
このまま彼女を置いて帰ろうと思ったが可哀想なのでやめておこう。
飲み物でも頼もうかと思いウエイトレスを呼ぼうとすると
「あ、やっぱりここに居た」
横を向いた時にこちらに近づいたクリス達に遭遇した。
「おー無事だったか」
二人は先ほどとは違い落ち着いた格好をしている、どうやら一度帰って着替えたのだろう。
「お陰様でこの通り五体満足だよ」
彼女は両手を広げ無事な事をアピールすると、後ろからダクネスが
「あの竜巻は君の連れの魔法だったそうじゃないか、ぜひ礼を言いたかったのだが」
「ゆんゆんは今少し諸用があるみたいでな、少ししたら戻ってくると思うけど…どうする待ってるか?」
流石にトイレとは言いづらく少し誤魔化す、これがデリカシーという奴だ。
「いや構わぬさ、彼女程の実力なら度々会う機会がありそうだしな…それに…それにだ‼︎あの力強い竜巻に巻き込まれたらと思うと今でもこうふ…ゾッとしていた所だ、あの竜巻に巻き込まれ一緒に巻き込まれた人や物と一緒に揉みくちゃにされ‼︎最後にはどこか知らない場所に吐き出される‼︎考えただけで興奮が止まらない‼︎次会う事があれば是非彼女に‼︎」
「あぁ‼︎もういいから‼︎お礼言いにきたんでしょ‼︎お、落ち着きなよ‼︎」
興奮する彼女をクリスが必死になって押さえつけるもクルセイダーである彼女の力には勝てず、仕方なしに引きずっていく。
「そうだ、君にスキルを紹介する予定だったね、今度暇があったら声かけてよ私はいつでも空いてるから」
そう言えばそんなこと言ってたなと思いながら暴走したダクネスを運ぶクリスを眺める。
ああ言うところが無ければ美人でいい人なんだけどな。
あれと言う間にダクネスが外に引きずり出されると、見計らった様にゆんゆんが帰ってくる。
「見てないでゆんゆんも来ればよかったのに」
今までボッチだったゆんゆんの事だ、どうやら隠れて見ていたのだろう。
「え、私なんかが話しに入っても迷惑だと思うんですけど…」
その遠慮こそがボッチの原因だと思うのだが
「カズマさん、あの方達と仲が良いんですか?」
あまり触れられたくないのかおずおずと彼女は話題を変える。
「仲が良いって言うか、スキルを教えてもらった関係かな」
俺も仲が良いかと言われると反応に困る、俺が仲いいと思っていても相手がそう思ってなかった場合だとかなり心にくるものがある。
「そっか…カズマさんにはもう知り合いが…私は大分前からこの街に居るのに…やっぱりこの街に来ないで里で大人しく一人で居た方が良かったのかな…ライバルを追っかけてこの街に来たけど何処かに行っちゃたみたいだし、本を参考に色々してみたけど全然ダメだったし…」
グスンと彼女は俺がきて早々に知り合いが出来て悔しいのか少し落ち込む。
無理も無いだろう、彼女にとって友達を作る事は何よりの目標で、それをこの街に来て数日の俺が簡単に談笑する位の友達を作っているの見れば嫌になる。
「すいません、突然こんな事言って…迷惑ですよね…こんな面倒くさい人嫌ですよね…」
感情を抑えるのに限界が来たのか彼女の目から涙が流れる、この街に来て時間を潰す相手は居てもこうして話す相手は居なかったのだろう。
何となく俺もその気持ちはわかる、この世界に来て彼女に会わなければ俺もこの街で一人ボッチかもしれなかったのだから。
俺はそんな彼女の肩に手を置き
「何言ってんだゆんゆん俺たちはパーティだろ、パーティメンバーは互いの命を預け合うんだから友達よりも格は上だろ、それに俺はゆんゆんに命預けてるんだ今更何しようが嫌ったりはしないさ」
「そう…ですよね…」
それを聞き、安心したのか彼女は手で顔を隠しながら静かに泣いていた。