次回からまた間隔が空くかもしれません。
「何…だと⁉︎」
意識が既に微睡んでいた事もあり状況が未だに飲み込めていない。
無理もないと言うか、無理しかない現状に混乱するが、それでもこのままだとお互いに話が進まないので何としても話を繋げて場を持たせないと行けないし、今後俺たちの関係にどう影響するかも未知数だ。
「悪いんだけどもう一回言ってくれないか?寝起きだから聞き間違えたかもしれないんだけど」
「か、カズマさんの子供が欲しいって言いました!」
確認してみたが、どうやら聞き間違えた訳ではないようだ。
…やべぇ…どうしようか…
内心こうして冷静を装っているが、心臓の鼓動が魔王軍幹部と相対した時に比べても比べ物にならないくらいに頻拍しているようで、本来聴こえないはずなのに拍動が聞こえる様な幻聴まで聞こえてくる。
俺も十数年生きて来たが、その間に女性経験は無かったのでこう言う場合にどうしたらいいのかよく分からないし、下手に知ったかぶれば後々馬鹿にされかねないし彼女の信用を失うことになる。
まずは状況を整理しよう、今俺はベッド上で仰向けで寝ている状態の上に布団が乗っていて、そしてその上にゆんゆんが四つん這いで乗かっている状態にある。
そして緊張しているのか興奮しているのか、暗くても分かるくらいに呼吸が乱れ、眼が今までに見たこともない程に赤く光っている。
「…本気で言っているのか?」
念の為に確認する。もしかしたら何か事情があってこうしている可能性があるかもしれない…いや、何の事情があってこの状況になるのかさっぱり分からない。
もし脅されているのであれば俺の所に相談しに来ても夜這いに来ることはないだろう。
ドラマとかなら政略結婚とかありそうだが、生憎ゆんゆんは貴族の出身ではなく一応は村娘の筈…いや待てよ、確か自己紹介の時に紅魔族の長の娘とか言っていたな…もしかしてあの手紙は縁談の手紙だったのだろうか?
だとしたら、どこかの権力者の子息との強制的なお見合いからの結婚となるだろう。特に気の弱くて優しいゆんゆんの事だ、実際に目の前で本人と相対してその相手が強く出ればその要求を無下にはできない筈。
聡い彼女のことだそんな自分の性格を誰よりも理解しているのだろう、こうして俺の元にきて既成事実を作り回避しようって事なのだろう。
頭の中でピースが噛み合ってくる。
間違っている気がするが、それを否定できるほど今の俺には余裕がないのだ。
「…本気です、でなければわざわざここまで来ません」
俺が考えている時間を待っていたかのようなタイミングで生唾を飲み込むような音共に彼女はそう答えた。
「あれだろ、あの手紙は里の実家から来たんだろ?」
「ええ、確かにそうですけど…見たんですか?紅魔の里の手紙は本人以外の方が読むと制裁を受けるような仕組みになっていますけど…」
相変わらず恐ろしい里だな…
「いや、見ていなけどさ、ゆんゆんの状況を見れば大体わかってくる」
「そうなんですね…で…それで…あの…カズマさんの答えを貰ってもいいでしょうか?」
オドオドとしながら彼女が返答を求めてくる。
ここまでしておいて答えをはぐらかされて終わるなんて彼女からしたらたまったものじゃないだろう。
少しずつ進めてきた彼女との付かず離れずの関係をいきなり何段飛ばしに進めてもいいのかと、焦燥に似たような感覚に囚われる。
人間関係とは歯車の様なもので早すぎても遅すぎても上手くはいかないと誰かが言っていたことを思い出す。
しかし、このまま燻り答えを先延ばしてしまえば、いずれゆんゆんは俺から離れてしまいどこか遠くの手の届かない所に言ってしまうだろう。
「俺は別に構わないけどさ、それでゆんゆんはいいのか?自分の関係のない不本意なタイミングで俺と関係を持ってそれで後悔はないのか?」
臆病な俺が話す最後の警告というか確認。
結局の所俺はゆんゆんに関しては臆病者なのだ。
これは男女差別になってしまうが、女の子の方から迫って来て配偶者がいないのにそれを断るというのはその子を傷付ける事に他ならない。
つまり俺は彼女の答えに1人では答えられない程のチキンと言う訳だ。
「私は…カズマさんなら良いと思っています」
彼女は真っ直ぐに俺の目を見てそう言った。
その表情からは一切の迷いは無く、本当にあのゆんゆんかと俺自身疑うほどだった。
「私はカズマさんと出会うまで色々な人達と出会って来ました、どの方も皆良い人で私がパーティーに混ぜて欲しいと言えば皆二つ返事で私を迎かい入れてくれました。最初はみんなアークウィザードである私を珍しがったりしたりして歓迎してくれるのですが、クエストの最後の方では…これは無意識かもしれませんが、どの方も最後には私を仲間とは認めずに何処か距離を置いて私と接していました…」
まるで自分の意思を表明するかの様に彼女は語り出した。
その内容は彼女自身の普段から感じていた周りの自分に対する扱い事だ。
アークウィザードである彼女は初心者が集まる街であるアクセルにおいてはかなり珍しい部類に入るだろう、これは受付のお姉さんから聞いた話では才能ある上級職の人、特にサポートに着くアークウィザードやプリーストはパーティーのリーダになる事は無く、そして周りの職業が下級なり低いと、自身のレベルが上がり周りと合わなくなると今いるパーティーを抜け他の街のレベルの高い冒険者とパーティーを組んで更にレベルを上げると聞く。
必ずしもそうなる訳ではないが、俺も何名かそう言った事例を見ているので完全には否定できない。
なので、必然的にアークウィザードであるゆんゆんは、この街の冒険者からすればいずれ居なくなる上級職という事になるのだ。
程よく言えば、ソシャゲで言うフレンドのお助けキャラといった方がいいだろうか?強力なキャラで攻略する上で必須になるが、結局は自分では無く他人、つまりパーティーの戦力の外の力という事になる。
1人でクエストをこなしてしまう彼女は、仲間になれば強力な助っ人となるがその力は麻薬の様なもので、一緒にいれば居るほどパーティーの運用は彼女無しでは立ち行かなくなってしまい、最終的には頼りになる仲間ではなく、あてになる仲間という扱いになり、もはや対等では無くなってしまうわけだ。
初心者とは言え、まともなパーティーのリーダであれば彼女の力というインフレに対して事前に気づくか、もしくは途中で気づき彼女を遠ざけるだろう。力の差というのは大きくても小さくてもその物たちに溝を生むのである。
それに彼女の極端な内気の性格も自身の孤立化を助長しているのもあるのだろう。
俺自身、彼女の力に頼りきりにならないように努力をしているつもりであるが、それでも彼女の力に頼りきっている現状に危機感を抱いていないわけではない。
しかし、だからといってそれが彼女を遠ざける理由ではないし、幸いにも他のパーティーメンバーと言えば爆裂一強だが同じアークウィザードなのでインフレやバランスなどの問題は特に無かったのかもしれない。
「その後に1人でクエストをこなしていると1人で貸し出し用の武器でジャイアントトードのクエストを受けた人がいるという話を受付のルナさんに聞きました。普通はレベル1の冒険者が受ける初めてクエストは誰かがサポートに付くのが慣わしらしいですけど何故かその人は誰も付けずに街の外に向かって私が着く頃には心配した通りにジャイアントトードに襲われかけていました」
それは多分俺だろう。
あの時のお姉さんはなんか素っ気ないと思っていたけど、まさかこんな事情があった事は初めて知った。多分俺が来た時からゆんゆんの相手を押し付けるために俺を1人でクエストに向かわせて仕組んだのだろうか?
「いつもの様にその方を助けるとその人は今まで出会った方とは何処か違うようなそんな雰囲気を感じました。何処か変な人だなと思いましたが、その人は私の事を本当の仲間の様に…友達の様に接してくれました…カズマさんと出会ってからそこまで時間は経っては居ませんが…それでもこんな私と今まで過ごしてくれたのはカズマさんだけだったんです…」
最後の方は感極まって泣いてしまったのか嗚咽等々で聞き取れなかったが、ゆんゆんがそこまで俺のことを思っていてくれていたのかと思うと、先程まで自分が考えていた事が失礼だった事を思い知らされる。
ここまで好意を剥き出しにぶつけられて何もしないというのは流石に彼女に失礼というものだ。据え膳食わぬはなんとやらとよくいうだろう。
赤い光から零れ落ちている涙を指で掬いながら未だに俺の上にいる彼女を抱き寄せる。
「疑ってごめんな…」
自分が臆病なばかりで嫌な事まで思い出させてしまった事に反省しつつ彼女が泣き止むまで背中を撫でながら待つ事にする。
何というかまさか俺が女の子を泣かせる時が来るとはなとぼんやりと考えながら待っていると、彼女の嗚咽は収まりそして心地よい寝息が聞こえてきた。
何かと思い横を向けば何処か安心したような表情で彼女は眠っていた。
「…」
え?マジか、ここまで来て…
「マジかよ⁉︎」
半ば上からのしかかられる体勢で体を固定させられた状態でゆんゆんに眠られてしまったので身動きが取れず、彼女を起こそうとすれば行為に及びたいが為にわざわざ起こす変態野郎になってしまうので憚られる。
結局の所、俺はお預けを食らってしまったという事になる。
「はぁ…」
ここまで期待しておいてこれは無いだろうと思いながらも、一線を越えなかったという結末に安心感というか残念と言うか何とも言えないモヤモヤした感情に包まれる。
まあ、明日になったら色々と聞いてどうするかはまたその後にでも考えれば良いだろう。
結局の所俺たちの関係に進展はなかったが、ゆんゆんが俺の事をどう思っているか分かっただけでもよかったのだろう。
今はそう自分に言い聞かせてこの感情を落ち着かせる。そう、もしかしたらこれが最優の選択だったのかもしれない。
あの後、何やかんや朝までぐっすり寝ていた俺たちは目覚めてそうそう気まずくなり、俺はそれに耐えきれずに話しかけると、彼女は顔を真っ赤にしながら
「へ、返事はまた後で聞かせてください‼︎」
と言ってそそくさと自分の部屋に帰ってしまった。
昨晩は緊張のしっぱなしだったが、過ぎ去ればあの時の緊張やドキドキは嘘のように無くなりいつものような平静さが戻ってくる。
その後着替えを済ませて荷物の整理等々して朝食を食べるのを忘れていたなと思い出しラウンジに降りていき扉を開けると、そこには正座させられているゆんゆんと椅子に座り何か審判を下していそうな雰囲気のめぐみんがいた。
「それで?手紙には何が書いてあったのですか?昨日あの様な状態だったので心配して見にくれば部屋にいなかったでは無いですか?それも含めて説明お願いします‼︎」
取り敢えず潜伏スキルを使いながら気配を消して、彼女らに気づかれないようにこっそり近づきながら食事の準備をする。
話の内容からしてどうやら昨日のことを責められてるようだ。
まあ、なんだかんだ言って優しいところのあるめぐみんの事だ、放っておけば良いですよなんて言ってはいたが、なんだかんだ心配になって夜中に様子を見にきたのだろう。
そして、姿の見えないゆんゆんに心配になって彼女を探しに外まででたのだろうか?彼女の目元にはクマが出来ていた。
もし潜伏スキルを使用していなかったら危うく俺まで巻き込まれるところだった。
「それはね…深い事情があってね…」
めぐみんの追求に対して答えがしどろもどろになり彼女の求める答えをうまく説明できていない。
それもその筈で何せ当の本人は親友が自分が探し回っている間、俺の部屋に夜這いを仕掛けていたなんて口が裂けても言えないだろう。
…そういえば、関係ないかもしれないけどベルディア戦の夜にめぐみんも夜這いにかけてきたなと思い出す。
なんだかんだ言って2人は仲良し親友なのでもしかしたら男を手篭めにする方法も同じなのかもしれないし紅魔族全体にも言えることかもしれない。
まあ違うとは思うけど、その晩の時はゆんゆんが探し回ってたなと思い出す。
結局の所お互い様だろう。
…まあ俺が言えたことでは無いのだが。
「深い事情ですか?ほうほう聞かせて貰おうじゃないですか、昨日この屋敷に居なかった理由を」
「ま、まずこの手紙を見て‼︎」
めぐみんの追求を流れるのに限界を感じ切羽詰まったゆんゆんは里から送られてきたであろう手紙をめぐみんに渡す。
本人からの許可を得た事によりカウンターが無くなり、どこにでもあるただの封筒となったそれからめぐみんは二枚の便箋を取り出すと声に出して読み始めた。
「えーなになに…この手紙を読んでいる頃には私は居ないだろう…」
めぐみんが読み始めた手紙の内容を聞くとどうやら里の近くに魔王軍の基地ができた様で、その基地に対して手を焼いている様で里は危機に迫られているようだ。
そして内容は綺麗に纏まった所で手紙は二枚目へと移る。
内容はいきなり御伽噺調に変わり何かの物語を聞かせていられている様だったが、その内容は里の皆が居なくなり最後に残ったゆんゆんが旅先で出会ったヒモ男と子を成して十数年後にその子供が魔王を討伐すると言うものを紅魔の里の有名な占い師が占ったと言うものだった。
何というメチャクチャな内容だろうか。
俺はもっと里特有の政治的で人間関係的なしがらみから来ているのかと思っていたが、開いてみれば存外ファンタジー的な内容だった。
「成る程ですね…それで昨日はずっと悩んでいたと言うわけですか、実にゆんゆんの父親らしい内容ですが…ん?と言うことは昨日はカズマの部屋にいたと言う事ですか⁉︎」
何故ヒモ男から俺にたどり着いたのかは謎だが、多分めぐみんから見た消去法で見た結果男が俺だけだったのかもしれない…そうだよな?
「え、い…いやそんな…そんな事ないわよ?」
「へーそうでしょうか?」
しらを切るゆんゆんに対して疑いの目で見つめるめぐみん、彼女を探して街中を駆け回ったのであれば、話をはぐらかすだけのゆんゆんなど信用はできないのだろう。
「紅魔族は昔から嘘をつくと目が青くなる特性があると言いますがゆんゆんは特に濃くでますからね」
「うそ‼︎本当に⁉︎」
多分めぐみんがカマをかけたのだろうと思い、明らかにわざとらしいだろうと思っていたが、ゆんゆんはそれに見事に引っかかってしまう。
「はぁ…やはりカズマの所にいましたか…それでどこまで行ったんですか?」
「どこまでって…あの後結局寝ちゃって…」
まるで修学旅行の女子トークの如く期待込めたトーンで聞いてくるめぐみんに対して逆に申し訳なさそうに俯きながら彼女は答える。
結局盛り上げるだけ盛り上げて本命に関しては何もしていなかったのだ。
「はぁ…夜這いまでかけておいて何もしなかったてどう言う事なんでしょうか…ねえカズマ、どうせそこに居るんのでしょう?」
テーブルに備え付けられた椅子に座りながら食事に手をつけながら2人の会話を聞いていると、いきなりめぐみんの目線が俺の方に向いた。
「うぉっ⁉︎マジか‼︎」
突然の事にびっくりして素っ頓狂な声をあげてしまう。
「はぁ…潜伏を使って隠れるのでしたらせめて家具を動かさない方がいいですよ。最初は何かと思いましたがカズマが潜伏を使っていると気づいたらそれ以外考えつきませんよ」
どうやら朝食を食べる準備をしていたのでそれでバレたようだ。確かに触れたものの気配をも巻き込むとあるが、道具の位置が変わればめぐみんみたいな記憶がいいタイプには違和感を覚えさせてしまうのだろう。
今度から気をつけよう…
「え?カズマさんいたんですか⁉︎」
「…まあな」
潜伏を解き突然現れた俺にゆんゆんはビックリするが、やはり昨日のことを引きずっているためか少し対応がぎこちなくなっている。
「その様子を見ると本当に何もしていない様ですね…はぁ…まあらしいと言えばらしいのですが…」
めぐみんは何処か残念なような安堵したような複雑な表情を浮かべながら溜息を吐く。
「それで話を戻しますけど、ゆんゆん、あなたは色々と勘違いしている様なので確認しますけどこの手紙をよく読みましたか?」
「え?どう言う意味よ?他に何か仕掛けでもあるの?」
「いえ、特に仕掛けがあるわけではありませんが、単純に手紙毎に差出人が違いますよ」
「え?」
呆れながら確かめるめぐみんだったが、案の定彼女の予想通りだったようで手紙の真意に気づかなかったゆんゆんは彼女から手紙を引ったくると、まるで読み漏らしがないか確かめる校閲者の如くすごい眼差しで手紙を再び読み始めた。
「あ…」
めぐみんの言った事の意味がわかったようで、終わったと口で言わなくてもわかるようにゆんゆんは膝から床に向かって崩れ落ちる。
「結局どう言う意味なんだ?内輪すぎて俺には内容が全然入ってこないんだけど」
「まあそうですね…カズマからすれば分からないとは思いますが、紅魔族の里には1人小説作家を目指している変わった子が居まして、手紙の二枚目の内容はゆんゆんを登場キャラクターとして登用したオリジナル小説で一枚目とはなんの関連性のない自作小説になります」
と言う事は…ゆんゆんは何も関係のない小説を手紙の続きと勘違いして昨晩俺の元に来た言う事になる。
これは…何と恥ずかしい事態になってきたな…
しかもご丁寧に右下に紅魔族英雄伝とか描かれてるし文字のタッチまで違うといった次第だ
「あ、あるえのばかぁーーーーーーーーーっ‼︎」
めぐみんに事実確認をしていると全ての事の顛末に気づいて怒りが込み上げたのか、大声で叫びながら小説をぐしゃぐしゃに丸めながら地面に叩きつけた。
叩きつけられた紙屑はそのまま床をバウンドしてゴミ箱にホールインワンした訳だが、ゆんゆんからしたらそんな事はお構いなしなようだ。
「こうなったら紅魔の里に行くわよ‼︎あるえに文句の一つでも言わないと気が済まない‼︎」
ビシッと多分紅魔の里があるであろう方向に指を指しながらそう宣言した。
「…なあ、ゆんゆんってたまに普段から想像出来ないくらい行動力がある時あるよな」
「そうですね…でも里にいた頃はそんなものでしたよ、まあ私と妹しかいない時だけでしたけど」
「へー」
これまた珍しいと思いながらも部屋に荷造りに向かうゆんゆんを見送りながら残りの食事を口に運ぶ。
「…なあ、これって俺も着いて行かないと行けない感じか?正直アルカンレティアの疲れが抜けきっていないんだけど」
「…諦めてください。ああなったゆんゆんは心を折らない限り止まりません」
「まるで昔にへし折った様なことがあるような言い方だな」
「えぇ、否定はしませんよ。ただそうしなければゆんゆんがひどい目に遭うことになりましたからね」
やはり昔からの馴染みな事はあってか彼女の事を知り尽くしているようだ。
しかし、紅魔の里か…噂では魔王城に近い的な話を聞いたことがる。そしてモンスターも近くにあるだけはあってか、かなり強いとも聞く。
まあゆんゆんがいれば大丈夫だとは思うだろうが、それでも俺は依然として弱いままなので注意が必要だなと思う。
「取り敢えず準備してくるわー、紅魔の里に行くに当たって何か必要なものとかあんのか?」
「そうですね、カズマに関しては特に何も必要ないと思いますよ。私たちの里も一応は観光名所としてやっていましてそれなりのインフラ等々ありますので、今まで通りの旅行の荷物で大丈夫です」
「成る程なわかったよ」
食器を片付けながらめぐみんに聞くと何処か懐かしそうにそう答えた。
なんだかんだ言って2人とも故郷に帰るなんて事は久し振りなのだろう。あるえとやらに文句を言いに行くと言っても結局は里に戻る口実でしかないのだ。
「そういえば一枚目の手紙は大丈夫なのか?里が滅びたとか言っていたけど、危険じゃないのか?」
二枚目のインパクトが強すぎて忘れていたが、そもそも里が壊滅状態になったから手紙が来たんじゃなかったのだっけ?
「あーあれですか?あれは気にしないでください。多分里のみんなが面白がって言っているだけなので」
「そ…そうなのか?」
「そうです…まあ私も歳の離れた妹が居ますからね、気にならないと言えば嘘にはなります」
「へー」
「何を驚いているのですか?妹がいることは何処かで言いませんでしたか?」
「いや、めぐみんもしっかりお姉ちゃんなんだなって」
「な⁉︎何をいきなり急に‼︎私だって家族くらいは心配します…まあ他の人はどうでもいいですが」
なんかやけに冷たくはないか?と思ったが相手は紅魔族、つまりはめぐみん達の元締めと言う事になる。
真剣に考えた事はなかったので薄々でしか思ってはいなかったが、紅魔の里というのは言い方を変えてしまえば中二病の巣窟という事になるだろう、ゆんゆん達は年齢が年齢なこともあってか何をしても、あーそんな時期もあったなと思うのだが、里単位になるといい年したおっさんやおばさんまでがああ言う風になってしまうと言うことに他ならない。
ああ、別の意味でのアルカンレティアの二の舞にならなければいいのだが…
宗教の次は人間性かと思わずにはいられないが、最近は個性を尊重しないといけない時代なので否定をする事はしない方がいいだろう。
まあ、アルカンレティアと違ってパーティーの大部分というかほぼメンバーは紅魔族なのだ、きっと俺にも抗体ができているので案外うまくいけるかもしれない。
「わかった、取り敢えず戸締りして支度が済んだら向かおう、後途中でウィズの店に寄るぞ」
そう言えばバニルの商談の話があった事を今になってを思い出す。
一応話ではアルカンレティアから帰ってきたら詳しく話そうと言う事になっているので、このまま紅魔の里に言ってしまうとあの仮面の悪魔がキレて商談が無しになってしまう可能性があるのだ。
「別に私は構いませんが、ゆんゆんを止めるのはカズマにお願いしますね」
「…はいよ」
そうしてめぐみんと別れて、部屋に戻って荷支度を済ませるとそのままラウンジに向かう。
せっかく時間をかけて元の収納場所に戻した小物達を再びバックに入れるのかと、前回の苦労を思い返しながらなるべく早く済ませたのだが、存外時間が掛かってしまい、俺の着く頃にはすでに2人とも準備を終えて俺の事を待っている状態だった。
おかしいな、女の子の身支度は永遠に掛かるとテレビで言ったいたんだけどな。
だがしかし、ゆんゆんの周りをよく見ると多分めぐみんに取り除かれたのだろうか、前に見た事のあるゆんゆんのお泊まりセットがいくつか纏められて玄関の隅に置かれていた。
多分俺を待っている間にめぐみんに取捨選択されて取り除かれたのだろう。
ゆんゆんのバックは外側に紐がついており、その紐を伸ばしたり絞ったりしてバックの容量を変えられるタイプなんだが、現在その紐は俺が見た時と違って割と雑に結ばれていたことがそれを物語っていた。
「何をしているんですか。早く行きますよ」
先程の気まずさは何処に行ったのやら、すでにゆんゆんは里に帰る事に頭が言ってしまっているのか少し楽しそうにそう言った。
やはり故郷というだけあって戻るとなると胸が躍るのだろう。
…いつか俺も故郷を懐かしむ時が来るのだろうか?。
魔王を倒せば帰らせてもらえるという話だったような気がしなくもないが、この調子でいけば多分他の俺みたいな奴らが力をつけて魔王軍の幹部を倒していくだろう。
俺自身が魔王を倒せるだなんて思わないが、もし魔王を倒して転生者に帰る権利が与えられたとして果たして俺はコイツらを置いて故郷に帰るのだろうか?
…まあ今考えなくてもその時がくれば嫌でも考えるだろう。
「悪いなゆんゆん、ちょっと寄りたいとこがあるんだ」
「え?まあ別に構いませんけど…何処に行きたいのでしょうか?」
「あぁウィズの店にちょっとな」
「ウィズさんですか?魔道具に関しては前回買ったものがまだ余っていますけど、何か必要でもありますか?」
「いや、そうじゃなくて用があるのはバニルの方なんだ」
「…」
ピシッとゆんゆんの表情が固まったのがわかる。
ウィズの店で少し顔が強張って何としても回避したそうに問いかけて来たが、バニルの名前を出すとそのまま表情が凍り付いたのだ。
ゆんゆんの事だ、多分昨日の事をバニルに詰られるのが嫌なのだろう。だから柄にもなく急いでいるていで俺たちの動きの主導権を握りたかったのだろう。
気持ちはわかるが、こっちは悪魔との信用問題に関わるのでそこは我慢してほしい。この商談次第では俺の資産はさらに増え夢の引きこもり生活を送れるかもしれないのだ。
「あれだ、特に長い話じゃないから時間も掛からないはずだし、話は俺だけで済ませるからゆんゆん達は外で待っていてくれ」
「…そうですね、それでしたらいいと思います。あっ決してバニルさんに会いたくないとかそんな事じゃないですからね」
「はいはい、わかってるよ」
断られると思っていたが、バニルに会わない事を条件に進めたら存外すんなり行くなと思い、驚きながらもこれなら大丈夫そうだなと荷物を背負いながら俺は2人を連れてウィズの店に向かった。
2人の関係の続きはまた里で書こうかと思っています…