誤字脱字の訂正ありがとうございます。
こうして俺たちはウィズの経営する魔道具店に向かう。
向かう理由は色々とあるのだが、そんな事よりもゆんゆんの警戒っぷりが半端ない事は確かな事だろう。
現にこうして俺を先頭に立たせ、尚且つめぐみんの後ろに隠れながら、まるで悪さをした後に咎められると分かっていながら帰る子供の様なそんな雰囲気を感じさせるほどだった。
「あのですね…こう後ろに張り付かれ続けられると、とても歩きづらいので止めてもらえますか?」
「酷い…いつも爆裂魔法を放った後にめぐみんを運んでいるのは私なんだからこれ位いいじゃない」
「はぁ…まあそうですけど、そんなにあの悪魔に思考を覗かれるのが嫌でしたら、そもそも人に見られたら恥ずかしいと思う行為をしなければいいじゃないですか?」
「しょうがないじゃない‼︎まさか二枚目の手紙がアルエの考えた小説だなんて思うわけないじゃない‼︎」
先頭に立ちながら街を進んで行くと後ろの方で不満が爆発したのか2人でいつもの様な喧嘩が始まった。
クエスト中や屋敷にいる時はいいのだが、こうも街中でうるさくされると、何故かこのパーティーのリーダーである俺にありもしない噂話を立てられて被害を被るのだ。
街道で作業をしている住民達が作業を止めてこちらを見ながら噂話の様なコソコソ話を始めて来ている。
うわぁ…と内心ヤバイなと思いつつ流石にこれ以上は不味いので、俺は意を決して彼女らの仲裁に入ろうかと思う。
「ゆんゆんはあの悪魔に思考を覗かれたら嫌なんだろう?」
「…まあそうですけど」
「良し‼︎それだったらこれを巻けば良いじゃないのか?」
ゆんゆんが悪魔を避ける理由は何となくわかるというか、原因は昨日のあの一件の事である事は同じ当事者であるので嫌でも分かってしまうのだ。
この弱点とも呼べる事件を未だに吹っ切れていないこの状況下であの胡散臭い悪魔の元に向かう事に関しては正直言って俺も嫌だ、何なら一生行きたくは無い。
しかし、嫌だからやらないと言うわけにはいかないのだ。ここは異世界とは言え現実である以上子供みたいな甘い事は言っていられないのである。
そして、俺はある事を思いついてしまった。
あのバニルがどう言う理論で俺たちの思考を読むのかは分からないが、俺たちに干渉する以上何かしらのパスの様なもので繋がれてそこから覗かれているような気がしなくもない。
ならば、そのパスとやらを遮断すれば良いのでは無いだろうか?
方法は色々思いつくのだが、いかんせん準備に時間がかかりそうだ。
思考を読まれることに関しては俺の前にいた世界に対策があった事を思い出す。
道具に関しては簡単で一つあれば事足り、しかも丁度俺の手荷物の中にそれは存在している。
試してみる価値はあるだろう。
…まあ失敗してもいつもの事だろうし大丈夫だろう。
俺は徐に懐からあるものを取り出し、乱暴に中に入っているそれを引っ張り出し何も言わずに彼女の頭にそれをぐるぐる巻きなるように巻きつける。
「…えっとこれは一体なんでしょうか?カズマさんが自信満々行った手前あまり言いたくは無いのですが、これで効くとは思えないのですけど…」
紙のようなそれを巻かれた彼女は何処か不安げに手を伸ばしながら俺に抗議する。
酷い言い草だなと思いつつも、立場が逆だったら俺も文句を言っているなーとも思うので、ここは言い返さずに丁寧に説明しようかと思う。
「これはアルミホイルと言ってな、食べ物を保存したり熱を使って調理する際の下敷きになったりするんだよ」
「それで、便利なのかはよくわかりましたけど、それをなんで私の頭に巻きつけたのでしょうか?」
「…まあそれはだな…」
この世界はおおよその事が魔法で何とかなってしまうため、こうした調理道具のような物が不足している傾向にある。
冒険者も基本は日々の報酬を使って酒場で食事する事が多く、長期などの時間のかかるクエストなんかでは道端で肉を焼いたり保存の効く物を持ち運ぶ事が普通なので道具は必要では無いことが多く、この世界でこう言ったものが発展する機会がなかったのだろう。
正直俺も魔法の便利さを教えられ、こう言った物を使っていた事を忘れていた。
しかし、この世界の料理は意外にも単純な行程なものが多く、味も大雑把なのだ。
なのでこうして調理道具を作り、そして広めることでこの世界の食文化を広げようといった目論みがある。そしてその調理道具を開発した俺の元にたくさんのお金が舞い込んで行くという算段だ。
その中でも特にアルミホイルを作り出すのは中々に苦労した。
単純にアルミを薄く伸ばせば良いだけなので簡単かと思っていたのだが、この世界にはそもそもアルミという概念が無く、道具屋などににあるのは武器に使われる硬い鉱石だけで可塑性の高く加工しやすいと言われる物ですら俺からしたら硬く感じられる物だった。
流石に無理かと思ったが、この世界にはスキルという物があるので鍛治スキルを取り道具屋に売っている鉱石を片っぱしから集めて合金等々加工した果てにようやくアルミににた金属を作り出すことに成功したのだ。
その金属は完全なアルミ程ではなかったのだが、それでも大体は同じ位と言っても過言でも無いくらいに近づけさせることに成功したのだ。
そしてその努力の結晶を現在ゆんゆんの頭部に巻き付けている。
側から見れば銀色の帽子を被った変人しか見えないが、彼女も紅魔族であるので例え変な格好をしたところで周りからの目線はあまり変わらないだろう。
意味は分からないと思うが、正直俺も意味が分からない。
「よく言うだろ?思考盗聴の傍受電波は頭にアルミホイルを巻くのが有効だってな」
あとついでにネジに噛ませるワッシャーを用意すれば完璧なのだが、この世界に需要があるとは思えなかったので止めておいた。
「へーそうなんですか。カズマさんのいた国ではバニルさんのように相手の考えている事が分かるモンスターがよくいたのですか?」
「いや、居ないけど」
俺のふざけた説得に納得したのか、彼女が俺に問いかけてくる。
てっきり「何ふざけているんですか‼︎」とキレながら破り捨てられると思っていたが、意外にも信用してくれたようだ。
まあ、それに関しては心は痛むが、逆に考えればやった事がない以上もしかしたらバニルの思考盗聴に効くかもしれない。
だが、これが効いたら今度からあれを巻いて買い物に出向くのもいいかもしれない。
しかし、頭にアルミホイルを巻いて外出するのもどうかと思うし、恥ずかしいので帽子の内側に巻いて行くとしよう。
「カズマちょっと良いですか?あの銀色の紙みたいな奴で本当にあの悪魔の力を防げるんのですか?そしてその事とは別に私にも銀色の奴を貰えませんか?あの銀色からは何だか強い力を感じます」
「何でだよ‼︎」
意外にも本物の方の紅魔族の琴線に触れたようでめぐみんが要求してくる。
色々実演するつもりでたくさん作ったのだで数には困らないので別に構わないのだが、めぐみんが頭に巻こうものならこのパーティーは皆狂っているとしか言いようがなくなってしまう。
「一つくらいならいいか、とりあえず一巻渡すから大事に使えよ」
「わーありがとうございます」
ゆんゆんの頭に巻きつけた余りをそのままめぐみんに渡すと、初めておもちゃを貰った子供の如く喜びながらそれを手に取りそれを自身の持っている杖に巻きつけた。
ウィザードはその特性上非力になるので、持つ杖は木製で軽めの物を持つのがセオリーになり、基本的に金属を使うようなものは珍しいのだ。
それをアルミホイルを巻きつけることで彼女の杖に金属特有の光沢が生まれ、他のものとは一味違う仕上がりになったのだ。
「はぁ…銀色の帽子に銀色の杖か、何だが玄人感が出てきた感じだけどチープさが目立つな」
銀色を纏ったとは言え所詮は代替品のアルミホイルなので何処か安っぽさが出てしまう。それを説明しても多分意地になって聞かないので本人が気づくまでは黙っておこうかと思う。
「何だかんだ言っているうちに着いたか」
ふざけている間にウィズのいる魔道具店につく。
看板には例の如くクローズの文字が書かれている。多分またウィズが何かやらかしたのだろう。
「邪魔するぜー」
店の扉を開け放つと開店の準備の途中なのか、店の中央のテーブルに何やらアイテムが発動した状態で置かれており、その隣にバニルが何か考え事をして居るのか口元に手を当てながら固まっていた。
何時もならウィズが出迎えてくれるのだが、彼女の様子が見当たらない。多分奥の部屋で在庫管理をして居るのだろうか?
「ほう、なんだ小僧か。大体開店前にやってくるのは貴様ら位だから見当はついておったが、こうも予想通りだとつまらんな」
「うるせーよ‼︎こっちはお前に用があってきてんだから少しはその毒舌を抑えやがれ」
「ほう…用だと?小僧と何か約束した覚えは…あったな」
「忘れてんじゃねーかよ」
はっと昔した約束を思い出したようで、その時の様子は仮面越しであまり表情が分からないバニルにしては珍しくわかりやすかった。
そう、俺はこの悪魔と契約をしているのだ。
契約といっても、寿命を半分差し出して願いを叶えてもらうとかそう言ったものでは無く、単純に金銭のやり取りを行う商談というものだ。
さっき見せたようなアルミホイルと言った様な俺の居た世界で扱っている道具をこの世界に持ち込んで、それを商品化するといった感じだ。
一見アイディアや構造さえ分かっていれば簡単に見えるかもしれないが、アルミ同様加工しやすい鉱石等がこの世界にはまだ少ない。
これは単純にこの世界の人たちの求めるものが武器や防具など高度が求められるものが多く、加工しやすい柔らかい素材のものは滅多にお目にかかれない。なので先程言ったように合金で何とかしたのだが、そのアイディア商品一つごとに素材から作り出すと言うのは中々に効率が悪い。
仕方なしに加工の簡単な木製の道具が多くなってしまったが、そこはバニルが何とかしてくれるだろう。俺はあくまでアイディアを売りにきたのだ。
「それで、目的のブツはそのカバンにあると言うわけだな。それでは拝見させて頂こう」
「おうよ、見た目は悪いかもしれないけど商品一つ一つは一級品だぜ」
「成る程な…」
そう言いながらバニルは俺の持ち出した商品を鑑定する質屋の店員が如く覗き込んではふむふむと頷き出した。
普段の様子からイメージされるバニルの像からは想像できない光景に若干笑いそうになるが、ここで笑うと全てが台無しになってしまうので控えたい。
「成る程それでウィズさんのお店に行きたいと言っていたんですね、見た事がない物ばかりですけどどこから仕入れたのですか?」
俺が店に入りバニルと話し終えて客用の椅子に座ると、安全と判断したのか店の外にいた2人が中に入ってきた俺の正面に並んで座った。
ちなみにまだ頭にアルミホイルを巻いている。
「あれは俺の国にあったものを俺がこの国にあったもので再現したものなんだよ」
「へーそうなんですか。あれがカズマさんの国にある道具なんですね、どうりで見た事がないと思いました。それでその道具をバニルさんに買い取ってもらおうというわけですね」
「ああ、そうだよ。俺がやらなくても結局他の誰かが同じ様なものを作りだすからな、だったら俺が先に作ってその利権を独占しようって考えだ」
「あ、相変わらず凄い事を考えますね…」
そう、結局のところ早い者勝ちなのだ。
最初はこの世界に他の世界のものを持ち込むのはどうだろうかと思ったが、よく考えてみればあの女神からその様な事は一切言われてはいないし、何なら竹とんぼの様なものを何処かで見た様な気がする。
そうなれば遅かれ早かれ他の転生者が日本の技術を持ち込むのも時間の問題になってくる。
ならば早いところ利権を確保してその後は著作権の利用料金でウハウハ過ごしていこうという考えだ。
「それで他に何かあるんですか?いくつか用事があるとか言っていましたが」
内心ほくそ笑みながら差し出されたお茶に口をつけていると不思議そうにめぐみんがたづねてきた。
「ああ、それはまた別にあって本当はこっちの方がメインなんだけどな」
お金の事で頭がいっぱいになっていた事もありめぐみんに突っ込まれてハッとする。
そう言えば本来の目的は他にあり、バニルの商品紹介はあくまでついでなのだ。
「それで…」
「小僧、鑑定が終わったぞ」
本来の目的を伝えようと思った所に丁度鑑定が終わったのか、バニルが俺の元に向かって用紙を持ってくる。
そしてお金の話になる。
バニルの示した条件は簡単な二択でつき百万かまとめて三億かと言った内容だ。
「成る程な…永久的に百万か一括で三億か…」
「三億‼︎カズマさん三億て言ったら一生遊んで暮らせるじゃないですか‼︎そんな事になったらますます外に出なくなってしまうんじゃないですか⁉︎」
「うっせ‼︎余計なお世話だ‼︎」
唐突に突き出された金額にパニックになったのか、ゆんゆんが俺の肩を揺らしながらとても失礼なことを言い出す。
確かにパニックになるのはわかるけど俺のお金だと言う事は分かって居るのだろうか?
…しかし三億か定期的百万か、後者は貯金の目減りを気にしなくてもいいけど商品の使用料から来る以上いずれば減ってきて無くなる危険性を孕んでいる、ならば一括で三億もらった方が良いのではないだろうか?
俺も何だかんだこの街を気に入っているし屋敷も借りている以上抜け出す理由を見つけ出す方が難しいが、それでも何かあった時にこの街から抜け出さなければいけなくなった際にまとまった金があった方がいいだろう。
「カズマの事ですから一括で受け取ると思いますが、何かあって財産を差し押さえられたら没収されますよ。それを考えたらここは定期的な百万エリスが私としてはおすすめですよ」
悩んでいると横からめぐみんの助言が飛んでくる。
確かに言われてみると今後めぐみんらが何かしでかして、その責任問題によって責任者である俺の財産が押さえられた場合その後の生活が困ることになってしまう。
しかし、その際に定額で百万エリスを受け取っていれば、バニルの事だ多分その組織に内緒で俺に渡して貰うことも可能だろう。
流石は知性の高い紅魔族…自身の体験談が混ざっているかもしれないが機転が効く。
「分かったよ、俺は三億の一括で頼む」
「ほう…」
結局のところ月百万で計算すれば25年かかる計算になる。
それだけの時間があればバニルの事だ、自身のダンジョンを制作して篭ってしまうだろう。悪魔の契約上多分金銭の受け渡しはあるのだろうが、多分俺がそこまで受け取りに行かなければいけないのは目に見えている。
そんな面倒なことがあるのならここで一度まとめて受け取って間に合わなかった他の道具たちを次回にまとめて渡し、定期的に受け取るのもいいかもしれないと言う考えにたどり着いたのだ。
「成る程な、これで全てではなかったのだな。商売道具が増えることはいいことだな、さすが小僧といった所だ。そこの小娘2人に夜這いを掛けられることはある」
「あっ‼︎ちょっと馬鹿⁉︎」
結局ゆんゆんにどう対策しても当事者の俺がいる限り奴に昨日のことを知られるのは不可避と言うことだったことに今更気づく。
「結局カズマさんが居るから無理だったじゃないですか⁉︎」
ゆんゆんもその事に気づいたのか俺に向かって抗議する。
そして最初からその腹づもりだったのか、突然に話を捻じ曲げながらバニルが話を続け出した。
「フハハハハハハハハハハハ‼︎小娘‼︎貴様は少しは疑うことを覚えた方が良いぞ、そんなんだから両親の手紙と友人の小説を間違えてしまうのだ‼︎」
「〜ッ‼︎どう言うことですかカズマさん‼︎これで防げるみたいな事言ってたじゃないですか‼︎」
立ち上がると共にカサッと頭に被っていたアルミホイルを地面に落とす。
やはりこの方法では政府の思考傍受電波は防げてもバニルの見通す力は防げなかったようだ。
「いや⁉︎違っ!くはないけどさ…」
何とか言い訳を考えようとするが、完全に俺が悪いので何も思いつかずに思わず止まってしまう。
「フハハハハハ‼︎残念だったな小娘‼︎どちらにしろそのような銀紙で我輩の見通す力を防げる訳はないのだ‼︎フハハハハハハハハハハハ‼︎」
怒るゆんゆんにそれをさらに掻き乱すバニル。
その場は側から見れば混沌としており、めぐみんに至っては面倒なのかそれとも飛び火を恐れてか完全に他人のふりをしながら道具屋に並べられた商品を眺めている。
そしてゆんゆんは羞恥心が極まったのか何かの詠唱なのかよく分からない言語で呪文を唱え始めた。
「ゆんゆん落ち着け‼︎ここで魔法を放つのは不味い‼︎」
「フハハハハハハハハハハハ‼︎随分と直情的ではないか小娘‼︎そんな事だから知人の手紙と小説を勘違いしてしまうのだ‼︎フハハハハハハハハハ‼︎こんな美味な悪感情は久し振りであるぞ‼︎」
「いっ!いやぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
行き場を失った感情に身を任せながら暴れようとするゆんゆんと必死それを抑えにかかる俺にそれをさらに煽り立てるバニル。そして無関与だと主張して他人のフリをするめぐみんでこの店の中は苛烈を極めた。
そしてなんだかんだ言って不味いと思っためぐみんが加わり、何とか店の内装や商品を壊すことなくゆんゆんを抑えることに成功する。
しかし、犠牲は出てしまい仲間1人がこうして今も苦しんでいる。
そう、これは仕方がなかったのだ。
1秒を争うこの状況において無駄なことはできずに、一手一手に最善を尽くさないといけないので例え何が起きてもそれは仕方がない必要な犠牲なのだ。
…そう。
現在めぐみんはゆんゆんと一緒に俺のバインドで固定されているのだ。
あれは俺のとっさの閃きでめぐみんに拘束するから抑えてくれと言った所、ゆんゆんが壁に背を預けていた為必然的に前から抱きつく形となり。それを俺が前からバインドで拘束したもんだからその状態で固定された状況になってしまったのだ。
「ファヒャクハフヒへフファファイフォ‼︎」
「あの…暴れたのは謝りますので拘束を解いて頂けませんか…」
ゆんゆんも我に帰ったのか、冷静に拘束を解くように頼んでくる。
そしてめぐみんは体勢が悪かった事や身長も低い事もあってか丁度ゆんゆんの胸に顔面を挟まれる形で拘束されてしまっている。
なので何かを訴えかけている様だが、何を言っているかはさっぱり分からない。
あとできればその場所を変わってほしい。そこは男のユートピア、アヴァロンなのだ。
「ほう、小僧。貴様はあの小さい方の小娘と場所を変わりたいと思っているのか?残念であるな」
「なにナチュラルに人の心読んでいるんだよ、はっ倒すぞ‼︎」
「フハハハハハハ怖い怖いであるな‼︎我輩は書類をつくるので一度裏へ向かうぞ」
何だか一周して落ち着いてしまっている俺に同調しているのかバニルも落ちついた様子で俺を煽ってくる。商売相手になった以上手を出してはこないと思ったのだが、やはり気を抜くと俺に被害が出てくるようだ。
しかし、人の事は言えないのだが、やはり性格に難はあるけど2人とも見てくれはいいよなーと拘束された2人を見ながらしみじみ思う。
もし俺が百合好きであったのならこの光景は世界遺産の光景に匹敵するほどの価値を持つのだろう。
「あの…めぐみんが動かなくなってきたんですけど…」
「あ…やべっ‼︎」
邪な事を考えていたせいか、時間が経ってしまいめぐみんは酸欠になってしまったのか先程まで煩かった叫びが聞こえなくなってしまっていた。
「すまんめぐみん‼︎今すぐ解除する‼︎」
ブレイクスペルを使いバインドを解除しゆんゆんから引き離すと、やはり酸欠になったのか顔色が真っ青になっためぐみんが転がり落ちた。
「ぜぇーぜぇー全く…せっかく止めに入ったというのに、あなたたちは私を窒息死させるつもりですか⁉︎」
「悪いって」
肩で全力で呼吸し全身に酸素を行き渡らせる彼女に対して謝り回復魔法をかける。
側から見たら幸せな光景でも、当事者からすれば地獄でしかないと言うのはよくある事だろう。
幸せそうだからといって必ずしも幸せとか限らないのだ。
「それで他に用事があるとか言っていましたけどそれは大丈夫なんでしょうか?」
「あぁ、そうだったな」
ぐったりとしためぐみんを椅子に座らせるとゆんゆんが思い出したように言った。
もう何回目だ?このやりとりはと突っ込みたくなるが、色々な事が短いスパンで連鎖的に起きてしまっているのでなかなか本題に辿り着けないのだ。
「そういえばウィズはどこに行ったんだ?さっきから姿が見え無いんだけど?」
改めて椅子に座り直しバニルが書類を作成している最中に問いかける。
ああ見えて一応は店長なのでいつも店には立っているはずなのだが、今日に限っては一度もその姿を見ていない。
「あぁウィズの事か?あやつなら店の奥で引き籠っておるぞ」
「何でだよ?また何かロクでもない物でも仕入れたのか?」
前に一度彼女がくだらないものを沢山仕入れた事があり、その際にバニルと喧嘩になりボロボロにされていた事を思い出した。
その際は足元に転がされていたのだが、今回は前回の教訓を活かして店の奥に押し込んだのだろうか?
「いや、今回は大分まともなものであったぞ、丁度そこにあるではいか?」
バニルは書類を書きながら俺が居る所とは反対側のテーブルを指さす。
そこにはなにやら筒状の物が置いてあり、そこから白い煙が立ち込めていた。
いつも何か変な薬品の気化した匂いが立ち込めていたので今更感があって気づかなかったが、その煙を認識するとやはりこの道具屋が煙たい事に気づく。
「おいバニル、これはいったい何なんだ?ウィズが居ないのに何か関係でもあるのか?」
忙しいであろうバニルにお構いなしに質問を続ける。
おっちょこちょいとはよく言ったが、仮にもアンデットの王様である彼女の事だから大抵のことで店の外まで追いやられることは無いだろうとは思うが、いったいこれは何なのだろうか?
「これはあれであるな、アンデット除けの魔道具でな蓋を開けると煙が出てきてアンデットを寄せ付けないと言うものだ」
「へーそれは便利だな」
そう言えばこの世界には死んだ後未練を持つとなるとかいうアンデットが居る事を思い出した。
なんだかんだ言って遭遇したことは殆ど無かったので気づかなかったが、夜中外で歩いているとどこからか湧き出して冒険者を襲うとか受付のお姉さんが言っていたな
ある意味子供の教育的な存在でそんなに現れるとは思っていなかったので忘れていたが、こう言った道具がある以上大勢の人が迷惑しているのだろう。
「それでこれが…まさか?」
「察しがいいな小僧、その通りである。あのポンコツ店主は事もあろうか商品が実際に使えるものかを確かめるために開けてしまったのだよ。自分自身がアンデットである事を忘れてな!フハハハハハハハハハハハハハハハハハ‼︎」
「うわぁ…」
まあ、やりそうかと言われればやりそうだけど、まさかここまでとは思わなかったぜ。
と言うか…
「だったら止めろよ‼︎何当たり前のようのそのままにして過ごそうとしているんだよ‼︎結局ウィズが居なくちゃいつまで経っても開店できないんだろ?このままだと不利益がかさむぞ‼︎」
「ほう、これはまた耳に痛い話であるな‼︎いやいや失礼!奥から惨めなあやつの悪感情が美味でな、つい閉めるを忘れてしまったのだよ‼︎フハハハハハハハハハハハハハハ‼︎」
どうやら殆どワザとに近い犯行だったようだ。
このままだとどうしようもないので魔道具の蓋を閉めドアと窓を開け、商品に影響がない程度に風の魔法を使い換気をする。
そして時間がかかったが、空気が外ほどではないが澄んできたことを確認して奥からウィズを呼び出すと、先程のめぐみんよりも酷く青白くなったウィズが奥からやってきた。
「どうもありがとうございます。まさかこんな事になるなんて恥ずかしい…」
出てきて早々俺にお礼を言いながら謝罪する。
「フハハハハハハハハこれでようやく店が開けるな感謝するぞ‼︎」
「お前が閉めれば解決だったろ‼︎」
そんなウィズを嘲笑うようにバニルが例を言う。
「それで私に何か用でしょうか?商談に関しては先程話が済んだみたいですし?」
「ああ、違うんだ。これから紅魔の里に行きたいから近くまでテレポートで運んで欲しいんだ」
昔ゆんゆんと出会った頃に一度故郷の話をした際に地図を見せてもらったのだが、紅魔の里の近くにアルカンレティアがあった事を思い出したのだ。
そしてウィズは帰りの馬車でテレポートの登録の一つにアルカンレティアを追加したと言っていた事も一緒に思い出した。
ならばウィズにアルカンレティアまでテレポートで飛ばして貰いそこから徒歩で歩いていけば解決というわけだ。まあ途中強い敵がいれば探知スキルで探って逃げればいいだけの事だし、いざとなればゆんゆんもいるから大丈夫だろう。
「分かりました、この煙を止めてくれたお礼も有りますので、それで今すぐ行きますか?それともまだ用事がありますか?」
了承し、尚且つゲームの分岐点の様なセリフを言うウィズを横目に。
「バニル、三億エリスは帰ってきたらでいいか?」
「それは構わぬが期日は守るが良しだ、我々悪魔は契約には煩くてな出資者の都合がある手前、商談の際に貴様のサインが必要になるのだ」
バニルから提示された日付はかなり少なかったが、それでも故郷の安全を確認するだけだからそこまでの時間はかからないだろう。
「わかったなるべく早く帰るよ‼︎それじゃウィズ頼む‼︎」
2人に準備は大丈夫か確認すると先程他人の振りをしていた時に何か見つけたのか、めぐみんが何かを購入した。
そして用件が済んだことを確認すると3人とも距離を詰める。
「では行きます、テレポート‼︎」
俺たちは目を瞑り淡い光に身を任せてながら包まれ目的地へと飛ばされるのであった。