この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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お待たせしました誤字脱字の訂正ありがとうございますm(_ _)m


紅魔の里8

「それで、この私の爆裂魔法を一体どのように使うと言うのですか?」

「ああ、内容は至って簡単なんだけど」

 

杖を握り締め、今にも爆裂魔法を放ちたいと言わんばかりにウズウズしながらこちらに問いかけてくるので、それに対して小声で説明する。

 

「あの小鬼どもの集まっている場所に爆裂魔法を放って欲しいんだよ」

「え、あそこにですか?別に私は構わないのですが、カズマが考えた作戦にしてはにしては単純すぎませんか?」

「いいんだよ、俺が考えているのは爆裂魔法であいつらを殲滅する事だけじゃないからな。とにかく今は時間がないから早く頼む」

「まあ、いいですけど。後で詳しく説明お願いしますよ」

 

説明の為に立ち止まってしまったので、これ以上の停止は相手方に察せられるだろう。そうなれば奴等は俺達に変な小細工をさせる前に総力を持って一斉にこちらに向かって突撃してくるだろう。

 

「では、期待に応えましてお見せしましょう‼︎」

 

バサッとマントを翻して杖を前に突き出すと、彼女は俺の指定した場所に向かって爆裂魔法の詠唱を始める。

これで俺を待ち伏せている連中らは全員一掃できるが、俺たちが逃げないように周囲を囲むように配置されている連中らは一掃できない。

それに関しては賭けの要素が強いが、何とかできる可能性がある。

 

「カズマさん…このままめぐみんに爆裂魔法を放たせて大丈夫なんでしょうか?」

「ああ、多分大丈夫だろ。最近なんだかんだ言って爆裂魔法使う機会もなかったし」

 

ハンスを倒して以降なんだかんだ言って戦闘で爆裂魔法を使う機会はなく、ただいつもの日課の様に湖やベルディア城跡地に打ち込むばかりで刺激がなかったのだろう。

雑魚的複数体なら威力過多で扱いづらいのだが、こうしてモンスターが多数居るのであるならめぐみんの爆裂魔法は強力な一手になる。

 

「詠唱終わりました。いつでも撃てますので指示をお願いします」

「おう」

 

いつもなら俺の指示なしでどこかに爆裂魔法をぶっ放していたのだが、やはり機嫌がいいのか珍しく俺に指示を仰いでくる。

 

「よし、今だ‼︎爆裂魔法を放て」

「はい、それでは期待に応えまして…」

「いつもの能書きはいいから早く放ってくれ‼︎敵に勘づかれたらおしまいなんだぞ‼︎」

「あーもう‼︎せっかく久しぶりにモンスターに爆裂魔法が放てて気分が良いというのに横槍を入れないでくださいよ‼︎」

 

諸行無常、戦況はゲームのように待ってくれる訳はなく、常に動きき続けている為いつもの様なくだらないやりとりをして居る間に裏をついたアドバンテージを覆されかねない。

 

「いいから早く頼む」

「…分かりました、では放ちましょう。穿て‼︎エクスプロージョン‼︎」

 

ようやく動き出した彼女の呪文により俺たちの前方に魔法陣が出現し、それらが周囲を囲んだかと思うと一瞬にして臨界点に達し強烈な爆発音とともに俺たちは爆発によって生み出されたかなりの土や埃などの質量の多い爆風に当てられ吹き飛ばされそうになる。

 

結構距離をとったつもりだったが、めぐみんの爆裂魔法も日々進化して居るのか、俺の予想した威力を想像以上に超えてきた。

 

「流石に距離が近すぎたか、2人とも大丈夫か?」

「えぇ、何とか」

 

爆風を防ぐために顔面を追っていた腕をどかし、彼女達の安否を確かめるために後ろを向くと、めぐみんを後ろから支える様な形でゆんゆんが踏ん張っていた。

 

感知スキルで周囲を確認すると先程まで集結していたモンスター連中らの気配はおおよそ灰燼に帰していた。

 

「うぇ…マジかよ」

 

念の為爆心地を視認しようと進んでいくと、そこには出会った時に見たクレーターよりも直径が数倍のある陥没ができていた。

日々上がったレベルに応じて分配されるスキルポイントを爆烈魔法を強化する為に分配していたと思っていたが、まさかここまで極めていたとは流石に思わなかった。

 

「どうですか私の爆裂魔法は‼︎私の爆裂魔法も日々進化しているのです、アルカンレティアの時と比べて威力が桁違いでしょう‼︎」

「あーそうだな、すごいすごい」

 

自信満々にそう言いながらバタンと地面に力無く倒れる彼女を横目に適当に返事を返す。

紅魔の里を外敵が侵入しないように守っていた深い森林にポッカリと大穴を作ってしまった事に多少の罪悪感を感じるが、自分たちの身を守るために仕方なかったと思う事にして見て見ぬ振りする。

 

ここまでは良かったのだが、問題はここからになる。

 

「なあ、紅魔の里はこの近くなんだよな?」

「そうですね、一応この辺りだとは思いますが」

 

めぐみんの爆裂魔法で地形が変わってしまった事で自信がなくなったのか、少し不安そうにゆんゆんが返事を返した。

…流石に爆裂魔法に巻き込まれて消失したとかないよな。

 

「いくら私の爆裂魔法が神がかっているとは言え、流石に里を滅ぼす力はまだありませんよ。“まだ“ですけどね」

「不穏なこと言ってんじゃねぇよ」

 

地面にぐったりと倒れながらめぐみんはそう言い笑う。

一体どこからそんな自信が湧いてくるのだろうか?

 

「そんなことはさて置き、そろそろ来るから警戒しとけよ」

「え?このまま里まで運んでくれるのではないのですか⁉︎」

「甘ったれるな‼︎俺はお前のお母さんじゃないんだぞ‼︎」

 

寝っ転がって居るめぐみんにドレインタッチで魔力を渡し、歩ける様になるまで回復させる。

 

「…さてと」

 

感知スキルには集合してくるモンスターの反応。

そして俺の予想していた反応もまだ遠いが一緒に付随して反応している。

 

「ゆんゆん、あの沼みたいな魔法できるか?」

「はい、できますけど。良いんですか?それだと逃げられなくなりますけど?」

「ああ、それは特に気にしなくていい。あと弓矢を防ぐために風の防壁を頼む」

「分かりました」

 

俺の指示を不思議そうに思いながら彼女は魔法を発動させ、周囲に沼を張り巡らせ俺たちの周囲に風のカーテンを生成した。

彼女はその展開では逃げられないと言ったが、そもそも周囲に配置した魔物は排除できていないので必然敵に囲まれるのは決まっている。

 

「来たな、ここからは持久戦だから気張っていこうぜ‼︎」

 

モンスターが視界に入る範囲で此方に向かってきたことを確認し、大声を出しながら気合を入れる。本命の軍隊みたいなやつは殲滅できたので3人で持ち堪えることは可能だろう。

…まあ、気張るのは魔法を維持するゆんゆんなのだが。

 

「これで時間は稼げますが、このままだと私の魔力が尽きてしまいます‼︎」

「大丈夫だ‼︎問題ない」

 

爆発音を聞きつけたのか他にもモンスターがゾロゾロと集まってくる。

状況だけ見れは完全にこちらが追い詰められた形になる。

 

そして俺たちを守るように張り巡らされた沼に足を踏み入れ、スキルなのかそれとも元々の性能なのかこちらサイドまで泳いでくる個体もいくつか見られる。

 

「カズマさん‼︎」

「わかってる‼︎」

 

剣と他に持ってきていた折りたたみ式の弓を鞄から取り出し、弦を弾きながら狙いを定めて矢を放つ。

 

「狙撃‼︎」

 

放たれた矢はそのまま一直線に沼を泳いでいるモンスターの眉間に命中し、見事その命を奪い去った。

 

「よっしゃ‼︎」

 

やはり狙撃スキルは技術の他に幸運のステータスに依存すると言っていたが、その言葉に間違いはなかったようだ。

 

そしてそれに気を良くしたのか、それとも勢いがついたのか続いて複数本矢を放ちそれら全てをモンスターに命中させ沼の底へと沈めていく。

 

「カズマ、これでは埒があきません‼︎早いところ残りのマナタイトを私に渡してもう一度爆裂魔法を放ちましょう‼︎」

「それをすると全ての作戦が台無しになるだろ‼︎」

 

こちらにに向かってくるモンスターを全て撃ち落として居る最中、特にやることのないめぐみんが名案を思いついたと言わんばかりに俺の袖を引っ張りながらそういった。

 

 

 

「カズマさん…そろそろ限界です」

 

数十分にも渡る持久戦の末ついにゆんゆんの魔力が尽きてしまい、広範囲に作られた沼と上空を覆っていた風の魔法が解除される。

そして魔力を使い切っためぐみんの如くそのまま地面に倒れる。

 

「カズマ‼︎このままではまずいですよ‼︎」

「ああ、分かっている‼︎」

 

風の防壁を失ったことで今まで防がれたいた矢がこちらに向かって降り注ぐ。

このままではまずいのでめぐみんを引き寄せゆんゆんのそばまで行き、矢を放ちこちらに向かって飛んでくるものを選別し撃ち落とす。

 

…まだか‼︎

 

気配は既に近くまで来ている。だが、そこから何の反応がない。

一体何が…………そういうことか‼︎

 

「クソ‼︎このままじゃやられる‼︎誰か助けてくれ‼︎特別な一族で何時もは頼りにならないが、誰かが困っていると放っておけなくて全力で助けてくれるそんな頼りになるやつは居ないのか‼︎」

 

「「困っている様だな‼︎君たちは実に運がいい‼︎この私達が全て解決しよう‼︎」」

 

俺の必死の演技により先程まで隠れていたであろう人たちが俺の前に姿を表す。

なぜ近くに来て動かないと思っていたが、やはりこちらが困ったタイミングになるまで出て来ない算段だったのだろう。

俺がこの世界に来る前に流行っていた主人公最強系によくある、ありきたりな主人公像を語ったのだが、それが公を制したようだ。

 

「あなた達は…」

 

俺達とモンスターの集団の間に現れたのは4人程、最初に現れたのは黒いローブを着ていたのだが他にいるやつはライダージャケットの繋ぎなど、それぞれに時代を感じさせられる様な格好をしていた。

そして、その全員の目は興奮しているのか目がゆんゆんやめぐみんのように赤く光っている。

その瞬間俺は勝利を確信した。

 

「大変だったね、あとは俺たちに任せてくれ‼︎」

 

リーダーぽい青年が俺たちにそう言うと、4人ともそれぞれ違った詠唱を唱え始める。

モンスターの方といえば、突然現れた紅魔族に困惑して戸惑っているようだ。

 

「「いくぞ悪党ども‼︎ライト・オブ・セイバー‼︎」」

 

4人の掛け声とともに彼らの手に見慣れた光剣が生成され、それを全員が同時に薙ぎ払う。

ただでさえ高出力で威力の高い上級魔法を4人がかりで放ったのだ、めぐみんの爆裂魔法には遠く及ばないが、それでもそのスケールは圧巻でまるで隕石が落ちてきたような衝撃がこちらまで伝わってくる。

もちろん相手はタダでは済まず、砂埃が晴れた頃にはほぼ全滅したのか、モンスターの数は激減していた。

 

「君たち大丈夫だったかい?……これはこれは、遠く轟く爆音に惹かれてここまで来てみればめぐみんにゆんゆんじゃないか?一体どうしたんだい?」

 

魔法の放出を終えモンスターが居なくなったことを確信した末、バッとリーダのような青年がこちらに振り向き俺たちの安否を確認し始めたが、俺を見た後に隣のめぐみんを見て気付いたようだ。

やはり同じ紅魔族、地元が同じでも学年が違えばほぼ他人みたいな感じかと思っていたが、やはり里社会なのか皆知り合いのようだ。

 

「そういうあなたはブッコロリーではありませんか、お久しぶりですね」

 

やはり久しぶりに里のメンツにあって懐かしくなったのか、思い出話を始める。

同郷の知り合いに会うと言うのも中々に楽しいものである。楽しそうに思い出話に浸る5人を見ながら俺にはその機会がもうないだろうなと若干センチメンタルになりながら彼女らの会話を眺める。

 

「…それで何でまた紅魔の里に?最強の魔法使いになるまで帰って来ないんじゃなかったのかい?」

「いえ、この里がピンチだと聞いてゆんゆんと共に駆けつけてきたのですよ。ですが安心しました、その様子だとまだ大丈夫そうですね」

「え?どう言うことだい?」

 

ピンチと言われていまいちピンと来ていないのか頭にクエスチョンマークが浮かんでいる。

どうやら俺たちとの間で認識の齟齬が生まれているようだ。

 

「それよりもそちらの方は同じ冒険者の方かい?」

 

まあいいやと里がピンチかどうかの話は置いておかれ、俺の紹介へと話は移る。

 

「コホン、では失礼して。我が名はブッコロリー‼︎紅魔族随一の靴屋の倅‼︎アークウィザードにして上級魔法を操るもの‼︎」

 

何処かで見たようなと言うかゆんゆん等が事ある毎に行うあいさつの別バージョンを見せつけられる。

紅魔の里では当たり前の挨拶だと言っていたが、こうして目の前で見せられるとやっぱりそうなんだなーとマジマジに思う。

 

しかし、いつまでも唖然としている俺ではなく。

 

「我が名は佐藤和真と申します。アクセルの街で数多のスキルを習得し、魔王軍幹部と渡り合った者です」

 

高らかに叫ぶのは恥ずかしかったので、あくまでクールキャラを装いながら返事を返す。

 

「「おぉー‼︎」」

 

適当に返したつもりだったが、それでも彼らには好評だったようだ。

 

「外の人がこの挨拶を見ると大抵は微妙な顔をしたりするんだけど、ここまで完璧に返してくれるなんて‼︎やはりめぐみんのパーティーメンバーだね‼︎」

「当たり前です‼︎何重にも度重なる厳選の末に見つけた冒険者でからね」

 

たらい回しにされていた事を仲間の厳選とは大きく出たなと思いながらも、せっかく里に戻ってきたのだから黙っててやろうと思う。

 

そして、ブッコロリーの話に成る程なーと当時ゆんゆんと出会った時のことを思い出す。

確かにあの時の俺は微妙な顔をしていたと思う。ただ、この世界に来たてだからこれが主流だと思ったので何処まで微妙そうな表情をしていたかは思い出せないが。

 

その後、俺を含めてよくわからない厨二トークを昔を思い出しながら発言し会話に混ざる。

やはり、生まれてからこの年まで厨二漬けだったこともあってか選ばれるワードも厳選・熟成され若干ドン引く場面が多々あるが、それでも久しぶりにバカできて面白かった。

 

「…あの…そろそろ私に魔力を分けてもらえないでしょうか…」

「あ、やべっ⁉︎」

 

魔力を使い果たしダランと地面に寝そべっているゆんゆんが半泣きになりながら苦言を呈した。

ピンチになったら助けに来るだろうと思っていたのであえてそうしていたのだが、助けに来た後にそのままにしていた事に気づく。

 

「悪い悪い、今魔力を渡すから‼︎」

 

急いでゆんゆんに魔力を流す。

幸いマナタイトのストックは少しだけ残っていたので事なきを得たが、なかったら危ないところだった。

 

「2人ともいい仲間を持ったね。里まではまだ少しあるからテレポートで案内するよ」

 

ブッコロリーはそう言うとテレポートを唱え俺たちを里へと案内した。

 

…いいなテレポート。

落ち着いたらウィズに教わりに行こうと心に誓い、そのまま光に身を委ねた。

 

「…そういえば言い忘れたね、紅魔の里へようこそ外の人、そしてお帰りゆんゆん・めぐみん」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが紅魔の里か」

「そうですね。いらっしゃいませカズマさん‼︎」

 

紅魔の里に着くと、ブッコロリー達は巡回があると言いまた里の外へとテレポートで何処かに行ってしまった。

もしかして気を使ってしまったのでは、と思ったがたまには人の好意に甘えておこうと思いあえて気にしないふりをした。

 

「それにしてものどかだな」

 

里の人間全てが上級魔法を扱うアークウィザードと言うほぼチートじみた性能を持つ紅魔族が住まう里と聞いたので、もっとドロドロした魔女の里みたいな感じか研究施設が並ぶマッドな感じかと思っていたのだが、いざ来てみれば片田舎の村みたいな感じだ。

 

「随分とまたリアルな石像だな」

 

里を入り口から一望した後、正面に石像があることに気づく。

石像に関してはそれなりに博物館で見たが、それにしてはキメが細かすぎるしまるで生き物をそのまま石にしたような感じだ。

 

「この石像ですか?これは里の方が昔にグリフォンを石化魔法で石にしたものを記念に飾っておこう思って置かれたものですよ」

「そのまんまじゃねぇーか‼︎感心して損したぜ」

 

ズコッと昭和の漫画の如くずっこける。

通りでリアルな訳だ。

この技術があるなら石像技師の需要が減ってしまうな。

 

「それじゃあ、この石像にブレイクスペル放ったら元に戻るのか?」

「えぇ、理屈ではそうなっていますけど…戻さないでくださいよ?」

「しねーよ‼︎俺をなんだと思ってやがる‼︎」

 

もし戻れるなら、寝ている時に石化してもらって朝になったら起こしてもらうのもいいかもしれない。そうすれば若さが1.5倍くらい持続するかもしれない。

…いや止めておこう。

もしかしたらそのまま放置されかねないし、その考えが主流になったらアイドル達が誘拐されて石像に変えられて保存されるとかよく分からない展開も起きそうだ。

 

そういえば主人公が石になったゲームもあったなと思い返す。

 

「それでこれからどうすんの?」

 

ブッコロリーの反応から見て里がピンチと言うのはどうも違ったような気がすると言うか、里はのどかで平和そのものだった。

だが、もしかしたら違う可能性も出てくる。里の重鎮達だけが知っている内容でブッコロリーみたいな末端には知らされず族長のゆんゆんだけに手紙で知らされた場合のケースも有り得なくもないのだ。

 

「そうですね…まずは私の家にいきましょう。お父さんに事情を聞いて見ないことにはわかりません」

 

ゆんゆんも同じ様な考えを持っていたのか、一度族長に会って事情を聞こうという流れになる。

 

「では、案内しますのでついて来て下さい」

 

そういい、なぜかウキウキで彼女は自分の家に案内を始めた。

折角の里帰りだし、なんだかんだ言って暫く実家に帰って来てないから久しぶりの再会になるなと思いながら彼女の後をついていった。

 

 

 

先頭にゆんゆんを行かせめぐみんと2人で後から続いていく流れとなっている。

 

「めぐみんは行かなくていいのか?」

 

ふと疑問に思ったので尋ねる。

 

「え?何処にですか?カズマは時々主語を吹き飛ばすのでよくわかりません」

「ああ、そうだったな悪い悪い。めぐみんの方の実家には帰らなくていいのか?」

 

目的はゆんゆんの家だとしてもそれは俺たちだけで済む話なので一度実家に挨拶しに行っても大丈夫だろうと思う。

 

「別に構いませんよ、私も事の顛末が気になりますからね。家族に会うのもこれの後でも別に変わりませんので」

 

なんか冷たいなと思いながら彼女の方を向くとめぐみんには珍しく少しソワソワしていた。

なんだかんだ言って家族のことが気になるのだろう。しかし、ここはパーティーメンバーとしてきている以上その責務を優先しているのだろう。

 

「お前も大変だな」

「え、何がですか?」

「いやなんでもない」

 

適当に話をぼやかす。

 

「カズマこそいいのですか?このままゆんゆんの家まで着いて行ってしまって?」

「え?どう言うこと?」

「族長に会うと言うことはゆんゆんの父親に会うと言うことです。もしかしたら無事に帰れるかどうか分からないかもしれません」

「マジで…ゆんゆんの親父さんものすごく怖かったりするの?」

 

めぐみんの言葉に不穏な雰囲気を感じとる。

仮にもこの紅魔の里を束ねる族長なのだ。使える魔法や魔力もきっと桁違いなのだろう。

ゆんゆんは娘だからお咎めないかもしれないけど、もし失礼な事をして仕舞えば俺の命が無くなってしまうのかもしれない。

 

…と言うことはもしかしたらゆんゆんに友達がいないのは親父さんが恐ろしすぎて触らぬ神に祟り無しと、誰もゆんゆんに近づけなかった事になってしまうでは無いだろうか?

成る程、何故彼女が病的なまでに人見知りだったのかと思っていたが、そういう家庭的背景があったのだなと今更に気づく。

もしかしたらボッチイジリも知らぬ間に彼女を傷つけてしまっていたのではと思い控えようかと思う。

 

「…カズマが何を考えているかは大体顔に出ていますけど、多分それは無いと思いますよ」

「えっ違うの?後ナチュラルに俺の考え読むのやめてくれない?終いには頭にアルミホイル巻くよ?」

 

どうやら俺の考えは違った様だった。

であれば先程のめぐみんの発言は一体なんだろうか?

 

「…はぁ。もういいです、カズマの事ですから変な方向に考えすぎてたどり着けないと思いますよ」

「バッカお前そう言うこと言ってんじゃね‼︎傷つくだろう」

 

「では言いましょうか?ゆんゆんがパーティーメンバーとは言え男を家に連れてくる訳ですよ、しかも流れ的に紹介する事にもなるでしょう。少なからず私が居るとはいえ日々知らない男と少人数で過ごしていたとしれば父親ならば心配の一つや二つあるでしょう。そしてカズマとゆんゆんの事ですから変な所で墓穴を掘らないか心配しているのですよ」

 

「あー成る程ね。それは流石に気づかなかった」

「…やっぱり気づいていませんでしたか」

 

成る程な、確かに父親の経験がなかったからというか、この歳で経験してたらヤバいやつだが…いやこの国じゃ大丈夫か。

兎も角、事前に話がこじれるファクターを事前に教えてくれたことは感謝しないといけない…と言うことは。

 

「成る程な、だから家に帰らないで俺たちについてきてくれた訳か」

「今更気づきましたか?感謝するのであればこの里でもいつもの習慣に付き合ってくださいね」

「…まぁそれはその時だな」

「おい、何故そこで詰まる?今のは感謝すべき所だろう」

 

こんな所に来て何時もの面倒な習慣に付き合わなくちゃいけないのかと話をはぐらかすと、めぐみんがドスを効かせた声で突っ込んできた。

 

「取り敢えず気をつけるよ、ありがとうな」

「えぇ、どういたしまして」

 

何処か悲しそうな表情のめぐみんに礼を言いながらゆんゆんの後に続いた。

 

 

 

ゆんゆんの家はやはり一族を束ねる族長故か里の中央に建っており、俺の予想を遥かに上回ったものだった。

 

「でかい屋敷だな」

「そうですか?カズマさんの住んでいるところよりかは小さいと思いますけど」

「いやまあそうなんだけどさ」

 

確かに俺達の住んでいる所よりかは少し小さいが、あれは貴族が使っていたものであって普通の一般人が住む様な場所ではない。

まあ確かにゆんゆんは族長の娘なのでこの里では貴族に分類されるのだろう。しかし、金銭感覚は俺たちよりも若干低いところを見るとやはり庶民なのか?

 

そんな事はさて置き。兎も角中に入って族長に手紙の件に関しての真意を尋ねなければいけないのだ。

 

「それでは入りますよ」

 

そう言いながら家の玄関に相当する門の様なところにあるチャイムを押す。

どう言った原理かは分からないが、スピーカの様なものから声が聞こえてくる。

 

「はい、どちら様でしょうか?今日は族長との予定はないと把握していますが」

「いえ違います。私です」

 

インターホンの出てきた声は初老ぐらいのおじいさんの様ななかなかに渋い声だった。

 

「私?はて、その様な方は存じませんね」

「え?ちょっと待…」

 

ブツンと通信が切れる。

どうやらゆんゆんの一族の使用人は一味違うらしい。

 

「鍵とか、持ってないのか?」

「いえ…私の家の鍵は里を出るときに失すといけないので部屋にしまったままなんです」

「え?何それ本末転倒じゃね?」

「あははははははは…も、もう一度行きます」

 

イマイチ何がしたいのか分からないゆんゆんに話をはぐらかされる。

そして次こそはと言いながら再びインターホン的なものを押すと、また同じような声質の声が聞こえてくる。

 

「はい」

「あ、お久しぶりです。ゆんゆんです。お父さんから手紙を頂いて事情を聞きにやってきました」

「そうでしたか、いきなり誰かと思いましたがお嬢様でしたか。これは失礼しました、今開きます」

 

ビーとサイレンな様な音が鳴り響いたかと思うと目の前にあった門が開き始めた。

何これヤクザの大元の屋敷かな?

 

門が開かれると庭に相当する場所は母親の趣味か花畑になっていた。

 

「なあ、家族と折り合い悪いのか?」

「いえ、別にそんな事は無いとは思うのですが…」

 

はぁ…とため息を吐きながら俺たちについて来るようにと先行する。

 

「では行きますよ」

 

庭を進むと本命の屋敷が見えてくる。

入り口には先程の声の主か白髪を生やした執事のような老人がいた。

 

「おかえりなさいませ、お嬢様…ムム⁉︎そちらの後ろにおられるのはお友達ですか⁉︎」

「あ、どうもゆんゆんとパーティー組ませて貰っています佐藤和真と申します」

 

どうやら玄関では分からなかった様で俺たちの姿を視認した瞬間、鳩が豆鉄砲を喰らった様な表情をする。

ゆんゆんの性格からしたら今まで男の友達を連れてきた事は無かったんだなとしみじみ思う。

 

「な、なんと⁉︎お嬢様が初めてお友達を連れてきたと思ったら男性の方とは‼︎私いきなりの事に動揺を禁じえませぬ‼︎」

「え?ちょっと落ちついて…と言うか変な事言わないでくださいよ‼︎」

 

俺が着いてきた事に余程驚いたのか、思わず膝を崩して地面に着きながら号泣し始めた。

 

「初めてってめぐみんは一度も来た事が無かったのか?」

 

なんだかんだ言って子供の頃からの長い付き合いだと前に聞いた記憶がある。であるなら一度くらいは家に訪問する事があってもいいだろう。

 

「ええ、そう言われてみると一度も来たことがありませんでしたね」

「本当に親友かよ…」

 

突然明かされた真相に呆れながら、おいおいと男泣きする執事とそれを宥めるゆんゆんの光景を俺たちは呆然と眺めた。

 

 

 




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