この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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遅くなりました
誤字脱字の訂正いつもありがとうございますm(_ _)m
今回は途中でデータが吹っ飛び急いで書き直したので文章がおかしくなっているかもしれません。


紅魔の里9

「ではこちらへ、いつもでしたら他の国の方々がいらっしゃられるのですが、今日は運よく空いておられるそうです」

 

ゆんゆんと一悶着あった後、俺たちはそのまま使用人に案内されるがまま屋敷の中へと案内される。

 

「へーやっぱり族長なだけあって広いな」

 

族長とは言えこんな片田舎でのあったのなら規模はそれなりかと思っていたが、中には入ってみればかなりの広さだった。

 

「こんなに広いなら普通溜まり場になったりしなかったのか?」

 

ゆんゆんは女子なのではっきりと断言はできないが、ここまで広いお屋敷で会ったのなら普通は友達が勝手にでも集まって行き付けのバーみたいな状態になると思う。

しかし、先程の使用人の発言からすると客人は俺達が初めてだったらしい。

 

「そうですね…なんだかんだ言って私は外で遊ぶ事が多かったですね、それにゆんゆんも私の家で遊ぼうとは言って来ませんでしたからね。まあ、どうせ誘おうとしたけど結局何も言えなかった的なオチだろうとは思いますけどね」

 

「それはなんだか…まあ妥当だな」

「ええ、後皆族長の家ということで遠慮していた事もあるでしょう」

 

使用人と一緒に先に進むゆんゆんに続きながらめぐみんに問いかけると、やっぱりそんなものかと思った通りの返事が返ってきた。

 

「そう言えばゆんゆんに姉妹とか居なかったんだよな?」

「いませんよ。もしゆんゆんに兄弟みたいなのがあったなら、流石にあそこまで拗らせはしなかったでしょう」

「おいおい、今日はやけに辛辣だな。まあけどその考え方には納得かな」

 

弟や妹相手にお姉さんするゆんゆんも見て見たかったが、そうなれば俺たちとパーティを組むなんて今は存在しなかっただろう。

そう考えれば彼女がボッチであってくれて良かったと心から思う。

まあ本人からしたら解消したいコンプレックスなのだろうけど。

 

「2人共聞こえていますからね‼︎」

「ヤベっ」

 

はははと笑っていると聞き耳を立てていたのか前から本人直々のお叱りを受ける。 

 

 

 

 

 

「少々お待ちください。…失礼いたします」

 

廊下を進み建物の最奥部あるであろう部屋に案内され使用人は俺達に待つ様に伝えると、そのまま部屋にノックをして部屋の主人に話しかける。

 

「何だ?今日は誰とも会う予定が無いはずだが、それとも里に何かあったのか?」

 

ノックの返事の主は声からして中年の男性のものだった。

多分この声の主がゆんゆんの父親だろう。

何だろうか、ただ人と会うと言うだけなのにものすごい緊張感に襲われる。

 

「いえ、本日は特に予定はありませんが、お嬢様がお見えになっています。それも珍しくお友達を連れて」

「何だと⁉︎」

 

使用人の言葉を聞くや否や扉の向こう側からけたたましい音が響いたかと思うと、しばらくしたのちに音は消え小さな声で入れとこちらを呼ぶ声が聞こえてくる。

 

そして、それに応じてゆんゆんは久しぶりにに会うと言うのに何の躊躇いもなく扉を開け放った。

 

 

 

 

 

「あーはっはっはぁーっ‼︎成る程な‼︎いきなり来てしかも友達も来ていると聞いたから一体何事かと思っていたがそう言う事だったのか‼︎」

 

里の長(ゆんゆんの父)は見た瞬間の印象では革ジャンに指の出たグローブそして鎖を纏った娘とは似つかないザ・紅魔族のような風貌でなかなかにコワモテの風格を漂わせていた。

そして彼女に続くように部屋に入り椅子に座り真剣な空気が続くのだが、そこで最後にめぐみんが加わった瞬間に場の空気が和らぎ、ゆんゆんが今回この里に来た経緯を説明した瞬間何かのわだかまりが消えたように笑っていた。

 

「ど、どう言う事なのお父さん?いきなり笑われても状況が全く分からないんだけど」

「そうだったすまんすまん。お前がいきなり友達を連れて来てしかもそれが男とあっては一体何が始まると思っていてだな」

「そ、そそそそんな事は今はいいのよ‼︎今はこの手紙のことを聞いているの‼︎特にこの「この手紙が届く頃にはきっと私はこの世には居ないだろう」ってこれは何⁉︎」」

 

「あーそれか!それは紅魔族の挨拶みたいなもんでな。というか学校で習わなかったか?他にも私は今シンガポールに居ますとか色々あったんだが」

「そんなこと習わなかったわよ!それにシンガポールって何処‼︎」

 

「あーそうだったな、ゆんゆん達は早くに卒業してしまったんだったな」

 

紅魔の里にも学校なんてモノがあったんだなと思う。

成る程、あの変な個性も学校の教育の賜物と言う事らしい。恐るべき洗脳教育、ww2後にでGHQが教育に手を出してきて日本人の思想を根本から変えたと何処かで聞いたのだが、それはあながち嘘では無いらしい。

 

「私たちが卒業した後にそんな事が行われていたの…」

 

ガックシと項垂れるゆんゆん。

里のピンチということでわざわざ危険を冒してでも様子を見に来たというのに、実際に来てみたら何事もなく自分の勘違いだったという事がわかれば流石の彼女もがっかりするだろう。

 

「そうだ‼︎魔王軍が近くに来ているって書いてあったけどあれはどうなの?また何かの表現なの?」

「あーあれか、確かに魔王軍はこっちに来ているな」

「やっぱり…」

 

どうやら魔王軍が来ているということは本当らしい。

まあ実際に先程まで相対して戦っていたのでそこは本当だろうことはわかっていたが。

 

「それで基地が破壊できないとか書いてあったけどそれは大丈夫なの?」

「ああ、それに関してはなかなかに難しい話でな…今でも里の重鎮達と会議をしているところだ」

 

先程まで楽観的だった族長の表情は真面目な雰囲気になり、空気が重くなる。

 

「やっぱり…魔王軍に関しては拮抗している状況なの?」

 

恐る恐る彼女は尋ねる。

里の周りにあれだけの数が配置されていたのだ、今はこうして平和とは言えブッコロリー等々が偵察を兼ねて遊撃して均衡を保っているのかもしれない。

 

「それが、その基地を観光資源にするか破壊して無くしてしまおうかで意見が分かれていてな」

「…」

「どうしたゆんゆん急に黙り始めて、ああそう言えばゆんゆんの考えを聞いていなかったな、それでどっちがいい?」

 

繰り返される的が外れた族長の発言にとうとう心が折れたのか口をポカーンと開けながら彼女は呆然と絶句していた。

 

「なあゆんゆんお前の親父さん殴っていいか?」

「いいですよ」

「ゆんゆん⁉︎」

 

ふざけて言ってみたが予想外に許可が下りてしまった。

 

「話は戻りますが魔王軍の施設があると言うのであれば魔王軍幹部も派遣されていると言う事ですよね」

 

思わず言ってしまった発言に許可が下りてしまいどうしようかと思っていたが、話を戻すようにめぐみんが口を開いた。

 

「ん?ああ、そうだね魔法に関して結構高い耐性を持ったものが派遣されているよ、時間的にはそろそろかな」

 

「それはどう言う…」

 

[魔王軍警報‼︎魔王軍警報‼︎手の空いているものは今すぐ里入り口のグリフォンの像の前に集まってください。敵の数は数千に及びます」

 

特徴なんですがと聞こうとしたタイミングで里に備え付けられていたスピーカーの様なものから警報が鳴り響いた。

 

「せっ千だって⁉︎」

 

先程まで戦っていたモンスターの数はざっと数えて百体に満たなかったのだが、今回この里に押しかけてきたのはその十倍以上ということになる。

流石にまずいと思いながら外を眺めると、里の皆の様子は俺の考えとは違ったように遅くまるでデパートの出し物を見に行くようなそんな雰囲気だった。

 

「おいおいこんな調子で大丈夫なのか⁉︎」

「ええ、特に問題はないかと思いますが。よろしかったら見て行かれたらどうですか?」

 

思わず詰め寄ってしまったが、族長はそんなことに臆することなく里のお祭りなんですよー的なテンションで集合場所へと案内する。

 

 

「な…何じゃこりゃ⁉︎」

 

そして案内されるがまま再び里の入り口にあったグリフォンの石像の前に案内されると、そこからは絶景が繰り広げられていた。

 

それはまるで上級魔法の無駄遣いと言った方が正しいのだろうか、魔法自体はゆんゆんがよく使うので新鮮さは無いのだがそれでも里の人総出で放たれる魔法は側から見ればアートの様な綺麗さを感じるものだった。

 

「どうです?すごいでしょう!これを観光の目玉にしようかと思うんですがどうでしょうか!」

「うわぁ…これじゃどっちが悪なのか分からなくなっちまうな」

 

笑顔で笑い声をあげる紅魔族に方々に反して、嘆き慄き悲鳴を上げながらそれでも自分の使命だと命を捨てでもこちらに向かってくるモンスターを見ると何とも言えない気分になってくる。

しかし、この世は無常で力無きものは強者によってねじ伏せられるのが道理なのだ。

 

「ん?あれは」

「どうかしました?」

 

小鬼やゴブリンの集まりの中に1人だけ気配の違う存在を見つける。

体躯は俺たちよりも背が高いくらいだろうか、後は服装からして女性で動きからモンスターの軍隊を指揮していて感知スキルでわかるのは…

 

「あいつが魔王軍幹部か…」

「やっぱりそうなんですね」

 

距離が遠いので詳しくは分からないが感知スキルではこちらに対してハンス並の殺気を飛ばしている事が分かる。

流石の魔王軍幹部なことはあってか、遠目でも強者だと分かるがそれでも紅魔族総力を持った魔術総攻撃は対処しきれない様で徐々に後ろへと後退していった。

 

「フン‼︎甘いですねそのような魔法をちまちま打った所で取りこぼすのが道理‼︎この私が真の紅魔族の力を見せてあげましょう‼︎」

「えっ?なんでそんなにピンピンしてんの?」

 

2人で眺めていると先程まで歩くのが精一杯だっためぐみんがいつも調子で俺達の前に居た。

どう言うことだ、俺は確かにドレインタッチの応用でマナタイトから抽出した魔力を流したがそれでも爆裂魔法が撃てるほど流した覚えは無いと言うか出来ないぞ。

 

「フフフ、あまりこの私を舐めないで下さい。一度背を向けたとしてもここは私の故郷ですからね、いつかこうして里のピンチになった時にガス欠にならない様に数発は打てる様にマナタイトを隠していたのです‼︎」

「なっ‼︎何だって⁉︎」

 

フハハと高笑いする彼女に対して今回だったら被害を受けるのは俺じゃないし、それにいざとなったら親御さんが何とかしてくれそうだし、止めなくてもいいかなと思っている俺がいる。

 

「そんな⁉︎里にいた頃はそこまでの余裕は無かったじゃない‼︎」

「……」

「え?どう言うこと?」

 

ゆんゆんに図星を突かれてしまったのかめぐみんは言葉に詰まってしまい沈黙が帰ってくる。

 

「それはそれ、これはこれです。結果として今の私は爆裂魔法を打つ事ができるのでその過程はいいでしょう‼︎」

「まさか…」

 

ふと唐突に思い出す。

予備に持ってきたマナタイトはほとんど使ってしまったので無いとは思うのだが、それとは別にめぐみんのカバンにマナタイトが仕込まれているかもしれない可能性を失念していた。

 

「めぐみん‼︎お前まさか屋敷にあった高純度のマナタイトを持ってきたんじゃ無いだろうな‼︎」

「ギクッ⁉︎」

 

この世界でのマナタイトは流通量に対して値段が決まる一種の金銀プラチナの様な扱いを受けている。

金持ちの間ではそれを資産として保有して値段が上がったところで売買すると言う一種の投資のような事をしていると、どこぞの貴族から聞いたので俺も少し初めてみるかと思い数個購入したのだが、今回彼女はそれを持ち出してきてしまったのだろう。

屋敷自体には俺たち以外が入ればクリス直伝鏖殺トラップが発動するので安心していたが、まさかめぐみんがその存在に気付いて持ち出しているなんて考えもしなかった。

 

「流石カズマですね。その鋭い推理力感服いたします、ですがそのマナタイトも既に私の体に吸収されてしまっている以上これはもはや後の祭りというやつですね‼︎」

 

時既に遅しとめぐみんは爆裂魔法の詠唱を早口で唱えながら周囲に魔法陣を展開させていく。

 

「あーそうかよ、よし決めた‼︎この里に居る間お前は俺の許可なく爆裂魔法を放つなよ。もし撃ったらそのマナタイト代を賄うまで報酬抜きだ‼︎」

「え゛っ」

 

事実上の死刑宣告に慄きながら彼女はモンスターの集団に対して爆裂魔法を放つ。

流石スキルを全て爆裂魔法に回しているだけあってその威力は凄まじく、そしてここに来るまでの間にスキルを強化したのか先程のゴブリンを一掃した時よりもだいぶ威力が上がっていた。

 

「ふっ、汚ねぇ花火だぜ。カズマもそうは思いませんか?」

「思わねぇよ…」

 

さらば俺の投資人生とめぐみんに報復はしたのだが、それでも拭えない何とも言えない負の感情が俺の心を覆った。

 

爆裂魔法が放たれ大部分の魔王軍のモンスターが駆逐されたことにより撤退せざるを得なくなったのか後退を始める。

結構な威力だったので魔王軍幹部もついでに倒してしまったらよかったなと思ったのだが、やはり周囲の部下が庇ったのか服の裾が少し焦げているだけで特に怪我を負っているような感じには見えなかった。

 

魔王軍が引いていく最中、周囲を見渡せばめぐみんが爆裂魔法を打った事により羨望の眼差しを向けているものや、逆に紅魔族のアークウィザードという敷かれたレール通りに上級魔法を取らないで爆裂魔法を習得した彼女に対して軽蔑の眼差しを向けている輩も数人確認できる。

 

やはりめぐみんは異端者の集まりである紅魔族の中でも更に異端者であるという事が確認できる。

 

 

 

 

 

その後ゆんゆんの親父さんは今回の一件で緊急に会議をする事になったと言いながら何処かへ行ってしまい、俺たちは里の端の方へと取り残されてしまう。

目的としていた紅魔の里の安否確認は予想外の形で完了してしまったので、やる事は無く手持ちぶさになってしまうので爆裂魔法を打って魔力切れになっためぐみんを拾い上げるとそのままゆんゆんの元へと向かった。

 

「いやー圧巻だな、まるでハリウッドのSF映画でも見ている気分だよ」

「エスエフ?一体それは何でしょうか?

「俺の国での演劇の種類かな?まあ色々あるんだよ」

 

他にも様々なジャンルがあるのだが、そもそも映画とは何かをこの世界の住人であるゆんゆんに教えるのは些か難易度が高いなと思い適当にはぐらかして見て見ぬふりをすることにした。

 

「あのーそろそろ魔力を分けてもらえませんか?そろそろ揺れるのも限界と言いますか…」

「駄目だ」

「ですよねー」

 

はははと適当にゆんゆんと談笑していると足元のめぐみんから悲鳴のようなお願いが聞こえてくる。

現在めぐみんはバインドにより全身ロープでぐるぐる巻にされ、さらに急拵えで作られたキャスターの上に乗せられて揺られているのだ。

本来であれば板と人の間にクッションの様なものが引かれるのだが、生憎そこまでの素材はなかったのでそのまま直に乗せられ整備された綺麗な道ではなくどちらかというと獣道に近いガタガタした道を躊躇いなく進んでいる。

その点を加味すればめぐみん史上過去最悪な運ばれ方になるのだろう。もし仮に俺がやられるとしたら全力で拒否したいところだ。

 

…まあやっているのは俺なんだが。

 

「それでこの後どうすんだよ。みんな家に戻って俺は簡易宿泊所にでも泊まるか?」

 

一応観光を謳っているくらいなので宿泊施設位のものはあるだろう。

まあ無ければ無いで里の端っこで寝袋を使って眠ればいい話なのだが。

 

「そうですね…私はあるえに制裁を加えに行こうかと思います」

「あるえ?あぁあの手紙に書いてあった小説の書き主か、そういえば同級生だったんだよな…っておい⁉︎ゆんゆん?ゆんゆーん‼︎」

 

彼女はそう満面の笑顔でニッコリしながら青筋を浮かべながらそう宣言すると俺の静止など聞かずにそのまま俺達を残して里の中へと進んでいってしまった。

 

「不味いですね…」

「不味いって何がだ?笑顔で表情が引き攣っているのはいつもじゃないか?」

「その発言は私としてもどうかと思いますが。まあそうですね、ゆんゆんがキレれているのはいつもの事なんですけど、流石に相手が悪いですね」

 

めぐみんの声に反応して下に目をやるとめぐみんにしては珍しく少し焦燥した表情を浮かべていた。

 

「成る程な…そいつは紅魔族でも変わり者なんだな」

「そこは否定しませんけどね、それよりもそろそろ縄を…おぉ⁉︎」

 

何か言うめぐみんを無視しながらキャスターを押しながらゆんゆん元へと急ぎながら向かう。

ゆんゆんにわざわざ手紙を送るほどの者だ、友達までは行かなくても気は合う同級生と言うことになる訳だから一度見てみたい気はなくはないのだ。

 

「カズマ⁉︎せめてゆっくりお願いします‼︎ここからあるえの家は遠く無いのですぐ着きますか…あ痛た⁉︎」

 

めぐみんの静止を聞かずにゆんゆんの後を追った。

 

 

 

 

そして辿り着いた先はあるえの家ではなくその近所だろうか、公園のベンチで物思いに耽っていた長髪の少女の元にちょうどゆんゆんが向かっていた所だった。

 

「あれがあるえか?なんか想像と違うけど、あれはあれで成る程なーて感じか」

「えぇ、そうですね。あの長髪と格好はあるえですね」

 

折角の再会に水をさしてしまったら悪いと思い公園の入り口にキャスターを止め遠くから眺めることにする。

果たして彼女達はどんな再会劇を見せてくれるのだろうか(笑)

 

「あーるーえー‼︎」

 

ゆんゆんはあるえの名前を呼びながら読書をしている彼女の元へと向かっていった。

 

「おや、これはゆんゆん久しぶりじゃないか?里を出て暫くしたけどもう帰ってきたのかい?」

「それよりも言うべき事があるんじゃないないかしら!‼︎」

「?」

 

先方のあるえ自身何故彼女が怒っているのか分からないようだ。

まあそれは仕方ないと言えば仕方ないのだ。あくまで彼女は自分の作成した小説を送っただけで、彼女自身感想を話して貰いたい事はあっても彼女自身から話すことは無いのだ。

そうなっている以上誰が悪いのかと言うとその手紙の内容で勘違いしたのはゆんゆんの方なのだ。

 

「あの手紙よ‼︎あの手紙のせいで…」

 

言いかけたところで何かに気づいたのか、遠くにいるこちらでも分かる程に彼女の顔が真っ赤に紅潮した。

 

「あの手紙?ああ、そう言えばゆんゆんの親父さんが手紙を出すと言っていたからついでに混ぜて貰ったけど、その手紙がどうしたって言うんだい?」

 

ゆんゆんが最後まで言わなかった事により出てきた単語を断片的に読み取ったのか一応テーマまでは推測できたようだ。

しかし、会話のリードをしたが当のゆんゆんがダンマリを決め込みあるえの頭にはクエスチョンマークが浮かんでいる。

 

何故彼女は黙ってしまったのだろうか。

いや…

 

そもそも手紙の件において発生してイベントを思い返すと、それはあまりに他人には言えない内容だった事に気づく。

あの言い淀んだ続きの言葉はこうなるだろう。

 

あの手紙のせいで同じパーティーの人と一緒に寝ちゃったのよ、と。

まあ表現としては完全にアウトだが、実際の内容はとてもプラトニックなものだ。他人がどう受け取るかはまた別だけども。

 

「どうしたんだい?急にきて急に黙られたら流石の私も困るのだが…」

 

何かに違和感を覚えたのか読んでいた本を閉じてゆんゆん元へと近づく。

 

「とにかく‼︎小説を送るなら別々に送って‼︎一度にまとめられるとお父さんの手紙だと勘違いしちゃうじゃない‼︎」

「ほう…成る程そう言う事だったか、それは悪い事をしたね」

「わ、分かればいいのよ‼︎」

 

あるえという少女はクールビューティ系なのか、表情を崩さす丁寧にゆんゆんに接している。

恐ろしき少女あるえ、もし性別が男だったら危なかったところだったぜ。

 

「それはそうと君に送った小説は紅魔英雄伝の最初だったね。それを勘違いしたということは…ふっ成る程な」

 

何故かこちらに目線が行き、そして何かに気づいたのか不敵に彼女は笑いながら納得した。

 

「なあめぐみん、あのあるえって子めぐみんと同じ眼帯していないか?もしかしてあの眼帯って紅魔族で流行ってたりするのか?」

 

何か嫌な雰囲気がしたのでこちらで話を始め他人の振りをする。

根拠は無いが俺の本能があの女の子は不味いと言っている。

 

「いえ、そう言う訳ではありませんよ。あの眼帯はこの里を出る前に彼女が私にくれた物ですから同じ物なのは当然の事です」

「成る程な、お前も色々と青春みたいなことしてんだな」

「まあ、特に特殊効果的なものはありませんが、この里を出た証みたいな者ですからね」

 

どうでもいいタイミングでどうでもいい伏線的なものを回収してしまう。

 

とりあえず向こうはどうなっているんだろうと目線を向けると、何やらあるえがゆんゆんの肩を掴んでおめでとうと言っているのが見えた。

不味いな、ゆんゆんが何も言い返さないので話だけがどんどん先に進んでいっている。

 

「そこにいる2人もこっちにきたらどうだい?」

 

やはり気づかれたと言うか喋り声が聞こえるほど近くに居たのだから気づかれるのも当然だろう。

ここでごねて他人の振りを突き通すのも無理があるので観念して2人の元へ向かうのが正解と見る。

 

「え?2人ともいつの間に、結構距離を離したつもりだったんですけど」

 

あれで距離を稼げたと思う彼女は相当頭に血が昇っていたのだろう。

 

「久しぶりだねめぐみん、なんだかんだ言ってゆんゆんの事が心配だったのかい?」

「いえ、彼女がどうしてもパーティーに入れて欲しいと言うので仕方無く仲間にしてあげているだけです」

「それどう言う事よ⁉︎頼み込んで来たのはめぐみんの方でしょ‼︎」

 

どうやら同郷の仲間には意地があった様で自分の立場とゆんゆんの立場を入れ替えようとしているが、惜しくもゆんゆんに阻止される。

 

「成る程な、そう言う事にしておこう、それで君が噂のパーティーメンバーかい?」

 

目線をめぐみんから俺に上げるとまるで品定めをするように俺を足元から頭の先まで眺める。

同級生の相手である俺を見定めてでもいるのだろうか。

 

「ああ、カズマって言うんだよろしく」

「成る程、そう来るのなら私も挨拶しないといけないな」

 

ブッコロリー達の時の様に紅魔俗流の挨拶をしようかと思ったが、今更になって羞恥心が出てき始めたのでここはあえて普通の挨拶にしようかと思ったのだ。

 

「我が名はあるえ‼︎紅魔族のアークウィザードにして…

 

 

 

 

 

 

 

その後挨拶を済ませ会話の続きをと言うタイミングで彼女は何か予定を思い出したそうで、そそくさとどこかへ行ってしまった。

何かよからぬ事を企んでいなければいいのだが。

 

「用件は終わった感じか?」

「ええ、まあ」

 

はぁ、と何も言えなかった自分に嫌気でもさしているのだろうか溜息を吐く。

 

「それで今度はどこに行くんだ?何もなければ俺は宿を探しに行くけど」

 

ここに来る途中ある程度は宿泊施設がないか探したが、それらしいものは一軒もなかったのでこれから探さないと夜まで間に合わなくなってしまう。

 

「それでしたら私の家に泊まれば大丈夫ですよ。これでも使っていない部屋はたくさんありますから」

「え?いや流石にそれは悪いからいいよ。親父さんも居るだろうし」

 

流石の俺でもいきなり女性の家にお邪魔することはできないだろう。もし逆の立場だったら娘がいきなり男を連れてきて泊めろだなんて言われたら追い出してしまうかもしれない。

 

「大丈夫ですよ、お父さんには私から言っておきますし、同じ屋敷に住んでいるんですから今更問題ないですよ」

「そ、そう言うもんなのか?」

「えぇ、それにこの里にまともな宿はありませんからそれがいいと思います」

「まあゆんゆんがそこまで言うんだったらいいけどさ」

「そう言うもんですので大丈夫です」

 

半ば押し切られる形で俺の宿泊先が決定してしまう。

普通は男女逆ではないのか?と思うが時代は男女平等に傾いているのでこれも時代の変化だろうと受け止める事にする。

まあ時代の流れといってもここは異世界なのでそんな常識は通じないと思うけども。

 

「宿泊先は決まったとしてそれまでの間はどうすんだ?何かするには遅いけど何もしないには結構長いぞ」

「そうですね…今から行ってもお父さんは会議でしょうし…」

 

彼女は俯きながらこれから何をしようか考え始める。

まあ別に飲食店で早めの夜食でもいいのだが、どうやらその考えはいやらしく却下される。

 

「それでは私の家にいきませんか?一応家族の安否を確認したいのですが」

「あーそれもいいかもな」

 

俺たちの行き先の悩みはひとまずめぐみんの家に行くと言う方向性で決定した。

 

「それじゃ案内頼む」

「いやいや、そこはこの縄を解いてからにして貰えませんか。流石の私もこの状態で家は流石に嫌というか…」

 

めぐみんに道案内させようとしたが、それには現在の自分の処遇をどうにかして欲しいと直談判してくる。

 

「行きましょう、めぐみんの家はあっちです」

「そうか」

 

しかし、そうはさせないと何か恨みでもあるのか無感情な声でゆんゆんがめぐみんの家の方向を指さした。

 

「いやいやいやいや‼︎どうしてそうなるのですか‼︎久しぶりに帰ってきた娘が縄でぐるぐる巻きで再開とか全然笑えませんよ‼︎」

「大丈夫だめぐみん、側から見ればかなり面白い光景だから」

「鬼ですかあなた達は⁉︎」

 

勝手にマナタイトを使われた恨みが少し晴れた様な気がした。

 

 

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