この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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遅くなりました。
誤字脱字の訂正ありがとうございます


紅魔の里10

「さてと、ようやくついたな。危うく日が暮れるかと思ったぜ」

 

めぐみんを乗せたキャスターを押すこと数十分、里から少し外れていると聞いていたがまさかここまで遠くにあるとは流石の俺でも思わなかった。

 

「日が暮れるとは失礼ですね。私はあそこ辺りからここまで毎日往復していたのですよ」

「うえ…マジかよ」

 

どうやら彼女達の通っていた学校がこの辺りにあったようで、彼女達はいつも往復していたそうだ。

これはあくまで聞いた話だが、いつも何の苦もなく通っていた学校をいざ卒業した何十年後に、何かの用事でもう一度向かった際に異様に遠く感じるアレと同じだろうか。

まああの時は若くって力も体力もあったから楽だったのかも知れないが。

 

「ゆんゆんはめぐみんの家には行った事あるんだよな?」

「ええ、まあそれなりにはありますけど」

 

どうやらゆんゆんはめぐみんの家に泊まった事があるが、その逆はなかったようだ。

遊ぶ場所はどっちかの家に片寄るのが基本的だが、それでも一度も行った事がないのは意外だった。

 

「それで、どうすればいいんだ?」

「どうすれば、とはど言う事ですか?」

「いや、ここは紅魔族の総本山みたいな所なんだから特別な儀式とか呪文とかが必要かと思ってな」

 

そう、ここは初心者の街アクセルと比べても田舎に位置するため変な習慣があるんじゃないかと言う先入観が俺の中に浮かんでいるのだ。

村社会において最初の挨拶は重要で、それを間違えてしまったらその後の関係にレッテルを貼られて損な立場に追い込まれてしまうこともしばしばあるらしい。

 

「一体私の故郷を何だと思っているのですか。普通にそこのチャイムを押せば私の家族が普通に迎えてくれますよ‼︎」

 

流石に馬鹿にしすぎたのか、ぐるぐる巻きの状態で彼女は体をくねらせながら体を弾ませ俺に抗議する。

 

「悪い悪い。この間までアルカンレティアに居たからつい癖でな」

「あの人達と紅魔族を一緒にしないでください‼︎」

 

紅魔族としてはアクシズ教徒と一緒にされることは心外のようで、いつか爆裂魔法を否定された時と同じような勢いで彼女は怒り始めた。

 

「まあまあ、これに関しては俺も悪かったよ。そろそろめぐみんの家族に挨拶をしようか」

 

キレ散らかしながらとれたての魚の如くピチピチ跳ねる彼女を宥めながら家に備え付けられているであろうインターホンを探し、そのボタンを押す。

 

「あれ?誰も出てこないな?」

 

ボタンを押し家の中からインターホン独特のベルの音が鳴り響いたことから、機械の故障では無い事は確認できる。

と言うことは留守と言う事になる訳だが。

 

「おかしいですね」

 

返事どころか物音一つしない状況に家の主の娘であるめぐみんは眉を顰める。

 

「あのモンスター侵攻の後に打ち上げとかやってて今は居ないんじゃないのか?」

 

全員エリート集団とはいえ、あれだけの魔力を消費したのだからそれなりに消耗するだろう。紅魔族の皆がそうかは分からないがそれを補うと言う建前で今尚飲み会をしている可能性も否定できない。

 

「いえ、あのモンスター襲撃の際に私たちの家族はいませんでした。あの人たちは疲れることはまずしませんし間違いはないでしょう」

「そういうもんか?」

 

目立ちがり屋で爆裂魔なめぐみんと違って家族は逆に表立って外には出たがらないらしい。

 

「それでどうするの?このまま帰る訳にも行かないでしょ?」

 

この後の予定を決めていないのでこれからどうするかを考えないといけない事を危惧しているようだ。

しかし参ったな、このままでは外でゆんゆんの両親が帰ってくるまで待たないといけなくなってしまう。

 

「どうする?めぐみんの里帰りはまた後にするか?」

「いえ、その必要はありません。カズマは気にせずインターホンを押し続けてください」

 

めぐみんはこの事態に全く動じることは無く続けて押すように催促する。

 

「分かったよ、けどいいのか?壊れても俺は知らないぞ」

「構いません。どうせ壊れたところでそのままになるだけですから」

「駄目じゃねえか‼︎」

 

再び催促されたので仕方なしにインターホンのボタンを複数回押すが、返ってきたのは先ほどと同じ沈黙だった。

 

「なあ、これ意味あるのか?正直いって無駄骨折らされているような気がするんだけど」

「大丈夫です。気にせずそのままお願いします、できればもっとしつこい感じで」

「どういうことだよ…」

 

仕方なしに続けてインターホンを押す。

今度は音が全て鳴り終わる前に続けて音が重なるように連続でボタンを押し続けた。

 

……。

しかし返ってきたのは沈黙だった。

それをめぐみんに問いかけると彼女はただ続けろと言葉を吐くのみで全く相手にしてくれない。

 

…仕方ない。

人の家の施設で遊ぶのは忍びなかったのだが、家主の娘からの命令なら仕方ない。

そう自分に言い聞かせて俺はボタンを押し続ける。

 

そうだ、せっかくだからリズムに乗せて音を鳴らそう。

あまり学校に行ってなかったせいで曲のレパートリーは少ないがどこぞのクラシック程度ならリズムぐらい取れるだろう。音階は知らんがな。

 

 

……そうして俺は一つの音階のみで構成された何処ぞのクラシックを奏でる羽目になった。

 

「聞いたことのないメロディーですね。カズマさんの国の歌とかですか?」

「ん?まあそうだな。曲名は覚えていないけど国の人の殆どは聞いたことがあると思うぞ」

「へーそうなんですね」

 

押す押す押す押す。

その行為を果たしてどのくらい続けたのだろうか、最後の方には俺たちの会話は無くなり辺りには沈黙とインターホンの音だけが響き渡っていた。

 

「なあ、もう帰ろうぜ」

 

流石に指が疲れてきたのでそろそろめぐみんにやめるように打診する。

 

「いえ、大丈夫です。私たちの行為はついに深淵にたどり着いたようです」

「は?」

 

めぐみんがそう言い出した途端にこちらに向かっている様な小さな足音が聞こえる。

 

「馬鹿な感知スキルが反応するだと⁉︎」

 

先程まで何も反応しなかった感知スキルが足音の主を捉えた。

感知スキルは基本的に潜伏スキルを無効化できるはずだが、スキルレベルの差が大きいと、どちらかを無効化して効果を発揮できると前に聞いた事がある。

 

「カズマは私の家族を侮りすぎです。あの方達は自身の私利私欲の為ならどんな不可能も可能にしてしまいますよ」

「マジかよ」

「さて、そんな話をしていたらきますよこの足音ですと…」

 

めぐみんが足音の正体を説明しようとした瞬間目の前のドアが開け放たれそこからめぐみんを小さくしたような髪をふたつ結びにした少女が現れた。

 

「だからウチは新聞はいらないって言ってるでしょ‼︎」

 

出てきて最初に出てきた言葉が新聞の契約を勧誘する業者の拒否だった。

と言うかこの紅魔の里に新聞と言う文化があると言うことが驚きだったが、この子の様子を見るに本当にあるようだ。

アクセルにいた時にはそんなもの見たことなかったのだが、この地域一帯に発行されているのかそれとも紅魔の里だけに発行されているのか真相は…どうでもいいか。

 

「おいおいマジかよ」

「紹介しましょう。あれが妹のこめっこです。私に似て才能を感じると思いませんか?」

「ああ、そうだな別に意味でだがな」

 

「あーこめっこちゃんだ、久しぶりだね」

「あーゆんゆんだ‼︎」

 

こめっこと呼ばれた少女はゆんゆんと久しぶりの再会を果たし、つもる話でもあるのかしばらく戯れる。

そしてその少女はゆんゆんとの話を終えた後にようやく俺の足元に目を向ける。

 

「久しぶりですねこめっこ元気にしていましたか?」

 

これが本来のめぐみんなのだろうか?その表情は優しさに溢れており、やはりお姉さんなんだなーと思う。

まあロープでぐるぐるにされてキャスターに乗せられていなければ完璧だったんだけどな。

 

「お、お姉ちゃんが悪いお兄ちゃんに捕獲されてるー⁉︎」

「っておいー⁉︎」

 

どうやら大切な姉をぐるぐる巻きにしている俺は悪者なのだろうか?

側から見れば悪者だろう。

 

 

 

 

 

 

 

「あーしんどかった」

 

時間は日没を迎え周囲は徐々に暗くなっている。

こめっこと呼ばれた少女と対面を果たした後奥から現れた両親にとっちめられたり、めぐみんの送った事実無根とは言い難い手紙の内容を問い詰められたり色々と大変だった。

アクセルの街から持ってきたお土産も、何とかゆんゆん宅への分は死守できたがほとんど持っていかれてしまった。

 

そしてさらに色々あったのだがめぐみんの家に泊まる話になった所でゆんゆんが物凄い抵抗を見せ、こうして彼女の家に向かっているわけだ。

 

「それにしてもすごい家族だったな、何というかすごい圧だったよ」

「そうですね、めぐみんの家族ですから…」

 

俺の評価に若干頷きながら彼女も続く。

当のめぐみんはと言うと、家族会議という名の談笑を終えた後に俺達について来ようとしたのだが妹のこめっこに追い縋られて留まる形になったので現在はゆんゆんと2人っきりという訳になる。

 

「流石にゆんゆんの親父さんは帰ってきているよな?」

「ええ、多分大丈夫だと思いますよ。お父さんの会議は大体内容がありませんからすぐ終わりますし」

 

結構ひどい言い草だが、親子ならではの関係性だろう。

ここまで彼女に気を遣わせずにものを言わせられる関係というのは中々に貴重だ。

 

「それで飯はどうする?何処かで食っていくか?ゆんゆんの行きつけの店とかあったら紹介してくれよ」

「そんなこと言われましても…」

 

ついうっかりといつもの癖で聞いてしまった。

ここはゆんゆんの故郷であり、そこでゆんゆんはボッチと呼ばれていた過去を持っている。そのゆんゆんに行きつけの店を聞くというのは些か酷というものだろう。

 

「それじゃあ適当に店でも探すか?」

「そ、それでしたら私のうちで食べていきませんか?」

「え、いいのか?でも突然押しかけて飯をくださいは流石に図々しくないか?」

「別に構いませんよ。話は事前に済んでますから気にしないでください」

 

どうやら最初からその腹づもりだったようだ。

食費が浮くのでそれに関してはいい事なのだが、ゆんゆんの親父さんと一緒の食事となるとそれはそれで緊張するというものだ。

 

用意させるだけさせて置いて他の場所で食べるから食事は要らないなんて事を言ってみようものなら俺の株はだだ下がりだ。

 

 

 

 

 

その後俺はゆんゆんの家へと案内される。

再びあのやり取りを見るハメになるのかと思ったが、今回は流石にその様な事はなく普通に鍵を使って家の中に入って行った。

 

昼にはそのまま親父さんの部屋に案内されたが、今度は客室だろうか少し豪勢な感じの部屋に案内される。

 

「へー凄いな。こんなゴージャスな部屋使ってもいいのかよ?」

「はい、構いませんよ。普段使う事なんてそうそうありませんから、けどだからと言ってあまり無茶苦茶にしないでくださいよ」

「はいはい、分かってるって」

 

部屋に着いて早々に荷物を放り投げ、豪華そうなソファーに飛び乗るようにもたれ掛かると、何か嫌な予感を感じたのかゆんゆんに窘められる。

俺が部屋に入り落ち着いたことを確認したのか、彼女は部屋に戻るといいながらドアの外へ出て行ってしまった。

 

何しに行ったのだろうかと考えたが、深く追及しない方がいいだろうと思い、部屋の粗探しをすることにした。

 

…まずは掛軸等々だろう。

こんな豪華な客間を普段は使わないなんて絶対に何かしらの曰く付き部屋の可能性が高い。

もしかしたらお札の様なものが貼っている可能性があるかもしれない。

 

…まあ何かあっても浄化魔法があるから大丈夫だろうし…というか普通に浄化魔法使って成仏させてしまえば霊障とか起こらないだろうから日本みたいに儀式とかお祓いとか必要なかったな。

 

「異世界なのに夢もクソも無いな…」

 

異世界で科学が進歩していない代わりに魔法やスキルなんかが発達してしまっているので、普段はある事も無い事も証明できないオカルトもこの世界では当たり前の光景となっている。

 

…まあ、それでも見てみるのが俺なんだけどな。

 

何も無いと分かっていながらも周囲を探索してしまうのが冒険者の性なのだろう。

とりあえず周囲を見渡すと掛軸なんてものはなく、代わりに額縁に収められた絵が壁に立てかけられていた。

しかも部屋のコンセプトとは絵のテイストが違う等々色々な要因を見て、何か胡散臭そうに急遽立て掛けられました感が物凄いなんか曰くのありそうな感じがプンプンする。

 

これでいいか。

 

取り敢えず、と意味もなく額を掴んで持ち上げて退かす。

他人の家にお邪魔して勝手に家具をいじる行為はあまり褒められたことでは無いが、何かあった時にこっちの命が危険に晒されるので仕方がないのだ。

 

重たい額縁を地面に置きながら、綺麗になった壁を見ると

 

「マジかよ…」

 

話は変わるが、昔夏に林などで遊んでいた際大きな石を退けるとダンゴムシやミミズが一面にびっしりと埋め尽くされた光景をよく見ただろう。

話は戻るが、その光景を彷彿させるように額縁があった一面によくわからない文字で書かれたお札が所狭しとびっしりと貼り付けられていた。

 

どうやらこの屋敷は俺たちの済んでいる屋敷と同じ様に何かが住んでいる可能性があるという事になる。

 

…どうする?

取り敢えず浄化魔法行っちゃう?

 

「お待たせしました、カズマさん遅くな…って何してるんですか⁉︎」

 

どうやら間の悪いタイミングでゆんゆんが帰ってきたようだ。

 

「いや、別に何かをしているとかじゃなくてな、嫌な予感がしたから額縁ごとずらしたらこんな感じに」

 

特に何も感じなかったが、好奇心で気になったから退かしてみましたなんてことを言えば確実に絞られるので、ここは敢えて直感に沿って行動したらこうなったという事で話を続ける。

 

「けど、こんな部屋に案内するゆんゆんもどうかと思うぞ」

 

無理かもしれないが話を逸らしながら責任をゆんゆんに押し付けるという秘技を使用することにした。

 

「いえ、そのお札はお父さんが昔に「カッコいいだろう部屋に飾ろう」とか言い出して壁に貼っていたので使用人に頼んで今日隠してもらったんです」

「マジか⁉︎」

 

どうやらあの壁に貼り付けられたお札は霊障を鎮めるものではなく、ただかっこいい的な厨二心をくすぐる為にゆんゆんの親父さんがあつらえた物らしい。

 

道理で感知スキルが反応しない訳だ。

試しに一枚剥がして眺めてみると教会に居るシスターが持っている道具見たいな神聖なオーラの様な違和感を何も感じず、感知スキルを集中させても全く反応がなかった。

 

「何だよビビらせやがって」

 

細かく破り捨てたかったが、流石に族長の私物を破壊する訳には行かないので勢いそのまま壁にぶち当てる。

心配して損したぜ。

 

「まあ確かにここまで貼られていましたらビックリしますよね」

「当たり前だろ」

 

取り敢えず俺はこのお札を見なかった事にして額縁を元の場所へと戻す。

 

「これで元通りだな」

「はぁ…」

 

勝手に探索した俺に向けてなのか、それとも客間にお札を貼りまくった自身の父親に向けてなのか呆れたように彼女は溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

その後彼女が淹れてきたのか色々あって冷めかけてきた飲み物を頂きながら小休止しながら2人揃ってソファーに寛ぐ。

 

「なあ格好はこのままでいいのか?仮にも族長の家なんだから正装とかしないといけないんじゃないのか?」

 

今回はただ遊びに来ただけなのだが、それはそれとして仮にも族長の家にお邪魔するどころか宿泊までさせて頂こうという話になるわけだ。

そこでこんな格好で行こうものなら相手方に顰蹙を買ってしまうことは避けられないだろう。

 

「別に気にしなくてもいいですよ。それに族長と言っても貴族ではないのでそこまで畏まる必要はないと思います」

「へーそういう感じなのか」

「だからといっていつもの様にふざけないで下さいよ」

 

ピシャリと彼女に釘を刺される。

確かに貴族ではないが彼女が言うのならそうなのだろう。

それにこの世界での貴族は金髪碧眼という特徴を持っておりこの国を収めている王女も確かその様な特徴を持っていると聞いたことがある。

そういえばダクネスもそんな感じだったが、もしかしたら実はとんでもない貴族だったりするかもしれないが、だとしたら何故冒険者をしているのだろうか?

おおよそ察しはつくが面倒なので追求はやめておこう。

 

話は戻るがこの世界での正装は一体どんな格好なのだろうか?

日本では基本的にフォーマルな格好としては詰襟だけども、この微妙に進んでいるのか後退しているのかわからない世界での正装は同じように詰襟の様なものなのか、それとも転生物でよくあるありきたりの様な中世の貴族のような格好をしているのか。

 

「そういえば紅魔族の正装ってどんな感じなんだ?」

 

考えるのが面倒なのでいっその事事彼女に聞いてみることにした。

果たしてどんな回答が帰ってくるのか楽しみだが、大体そんな時はろくな事が起きないのがこの世界の定石だろう。

 

「紅魔族のですか?えぇ…」

 

俺の質問の意味をうっすら察したのか彼女は嫌そうな表情と共に溜息を吐いた。

どうやら何かしらの彼女のトラウマを刺激したようだ。

 

「そうですね…私たち紅魔族の正装は基本的にローブと包帯があれば大丈夫ですよ」

「そんな感じなのか。思ったより普通だな」

 

意外とあっさりした返事に拍子抜けする。普段着からしてすごい感じなので正装となったら俺の想像を超えた物凄いことになると踏んでいたのだが。

 

「いえ、これはあくまで基本です」

「基本?もっと何かあるのか?」

 

どうやら彼女の言葉には続きがあった様で、ローブと包帯以外にも何かある様だ。

 

「はい、あくまでその二つは基本で、そこから身分や年齢に合わせて鎖やらグローブやらよくわからないバッチとか色々細かいものがついてくるんです」

「成る程な…」

 

どうやら最初の正装はデザートでいうプレーンに相当するらしく、そこから色々な要因に合わせて色々なアイテムをトッピングして行くと言う形になるわけだ。

種族ごとに文化が違うというが、中二病もここまで発展した文化となるとそれはそれで面白いことになっているなと思わずにはいられないのと、この里に生まれなくてよかったと改めて思う。

 

「ちなみにゆんゆんの親父さんはどんな感じになるんだ?」

「え、お父さんですか?」

 

ここまで聞いたのなら族長である彼女の父親はどんな格好になるのか気になるのは必然だろう。

 

「そうそう、写真は…この世界にはなかったな。絵とかあったりしないか?」

「いえ…特にそう言ったものはありませんけど。そうですね…何と説明したらいいかわかりませんが全身金属まみれでしたよ」

「マジかよ」

「えぇ、何か物足りない…派手さが欲しいな、もっとシルバー巻くのはどうだろうか?とか言いながら銀色の鉱石で作られたアクセサリーをつけれるだけ身に纏っていましたね」

 

どうやら彼女の父は生粋の紅魔族のようだ。

 

「それでゆんゆんはどんな感じになるんだ?」

「え?私ですか⁉︎」

「当たり前だろ?ここまで来たらゆんゆんはどんな格好になるのか気になるのは当たり前だろ?」

「あ、当たり前なんですか⁉︎」

 

それはそうと彼女の正装とやらが気になる。

一応は族長の娘なのでかなり派手になるのだろう。めぐみんと違ってシックな感じに纏まっているので普段とは違った側面を格好だけでもいいから見てみたいものだ。

 

「そんな事言われましても…私は里の皆さんとは違って普通の格好しかしませんから…」

「何だよつまんねーな」

「つまらないって何ですか⁉︎」

 

どうやら変わり者で構成された里での変わり者は俺達と同じ感性という事だろう。

何かの行事で全身シルバーアクセサリーに身を包んで顔面が真っ赤に染まった彼女の姿を拝んで見たかったが、どうやらそんな機会は存在しないようだ。

 

 

 

 

「あ、そうだ‼︎」

 

ふと、面白い事を思いつく。

今まで女性の家に遊びに行った事がなかったのでそうすれば良いのか分からなかったが、ある程度のデリカシーを守れば友達の家感覚でも大丈夫なような気がしてきた、

 

「え?何でしょうか…カズマさんの表情を見るに何だかすごく嫌な気がしますけど…」

 

俺の発案に対し彼女は失礼にも非積極的だ。

 

「折角だからゆんゆんのアルバムとか見せてくれよ」

「私のアルバムですか⁉︎」

 

昔の思い出、彼女の過去を知るにはもっとも便利なツールだ。これなら気兼ねなく…ってよくよく考えたら結構デリカシーないこと言っているな。

だが、それに気付いたところで全ては後の祭り。言葉にしてしまった事を取り消せないのはどの世界も共通だろう。

 

それはそれとしてこの世界にもアルバムみたいな事を残す風習はあるらしく、いくつかの周期に合わせて絵にして姿を風景と合わせて残すそうだ。

ダストはそんなものは存在しないとか言っていたが、他の皆はそれなりに残していて貰っていたらしく、たまに仲良くなった冒険者仲間から見せてもらう事もしばしばある。

 

最近ではスキルが確立してきたのか枠に入れた風景等々を絵として紙に移すという技術があるようで、しばらくすればモノクロの写るんですが販売されそうな勢いすら感じる。

 

「せっかくだし昔のゆんゆんの姿でも見たいと思ってさ」

「姿でもって何ですか⁉︎まあ別にカズマさんなら構いませんが…」

 

どうやら彼女的にはOKだったようで、しばらく待ってて下さいと言いながら彼女は客間を後にして自分の部屋に向かって行ってしまう。

どうせだったら潜伏スキルでついて行こうかと思ったが、見つかった時が怖いのでやめておこうと思う。

 

彼女が居なくなり再び部屋に静寂が訪れる。

 

「…」

 

今度は何をしようか。

先程は夥しいほどのお札が出てきてかなりの恐怖を感じたが、他にも何か別の不思議アイテムが隠されている可能性があるのだ、人間喉元過ぎれば熱さを忘れるという様に解決した安心感からかもう少しだけ何か出てくるんじゃ無いかという好奇心が湧いてくる。

やはり紅魔族の族長なだけあって趣味もキレッキレなのだ。

 

…しかし今度はどこを探せばいいのだろうか?

他によく聞くのは畳の下だが、生憎ここはフローリングの様な場所にカーペットを部分的に敷いている感じで畳を張っている場所はない。

 

であれば押し入れか?

そう思い壁を見渡すが流石に客間に押入れは作らないだろう。

 

取り敢えずカーペットでも剥がすか…

 

カーペットを剥がして裏を見るがお札が張ってるなんてことはなくただの裏地が見えるだけだった。

 

「収穫なしか…」

 

お前は人の家に来て何をやっているのかと聞かれそうだが、そんなことは百も承知だ。

 

「ん?」

 

剥がしたカーペットを戻そうとした際にふと目がある物を見つける。

なんとカーペットの下には何処のSF映画に出ても恥ずかしくない位の何かのよく分からない魔法陣が敷かれていたのだ。

 

これは…一体⁉︎

と不思議そうに見ては見たものの、ここはアークウィザード標準搭載のエリート集団なのでこれくらいはあっても不思議は無いだろうし、発動して俺に危害を加えているわけでもない。

 

害は無い以上藪蛇展開になったら面倒なので、そっと何も見なかった事にしてカーペットを元の場所に戻す。

 

「戻りました、遅くなってすいません。アルバムを観る機会なんて暫くなかったので…」

「ん?あぁ別に構わないけど」

「…どうかしましたか?」

「いや、別に何もないよ」

 

女の勘か何か、よく分からないが俺から何かを感じ取ったのか頭にクエスッチョンマークを浮かべながら俺に訊ねてくるので目を逸らしながら適当にはぐらかす。

 

「それより早く見ようぜ」

「あっちょっとそんな急に引っ張らないでください」

 

話を誤魔化すように彼女からアルバムをひったくり中の写真を始めから舐め回すように眺める。

 

「へーこれがロリゆんゆんか」

「変な感じに呼ばないでください、片付けますよ‼︎」

「悪い悪いって」

 

やはり一人娘で大事にされているのだろう、事ある毎に記録して写真一枚一枚の間隔が今まで見て来た中で短い。

 

「やっぱりゆんゆんにも歴史があったんだなー」

「人を化石みたいに言わないでください‼︎今度カズマさんのアルバム見せてもらいますからね‼︎」

「ん?あー俺のアルバムか…悪いんだけど俺のアルバムは無いんだ」

「え?ご、ごめんんさい、そんなつもりじゃ…」

「違う違う、言い方が悪かったアルバムはあるんだけど…なんて言えばいいのか分かんないけど俺の国にあるから実質無いのと同じなんだよ」

 

そう、俺のアルバムは捨てられていなければ日本の俺の家にある筈なんだが、生憎元の世界に戻る事はできないので実質存在しないのと同義だろう。

 

「そ、そうなんですね。それじゃあ今度カズマさんの故郷に行ったときに見せて下さいね」

「まあそうだな、その時が来たら見せてやるよ。この俺の可愛い姿を見て卒倒するからな」

「それは楽しみですね。カズマさん昔はかわいい感じがしそうなので」

 

まあ方法が分からないだけで日本に行く方法は無い訳では無いのだ。いつか魔王を倒した報酬で日本を行き来する能力を手に入れるのもいいかもしれない。

 

「ん?」

 

それはそれとして彼女のアルバムを見てある事に気づく。

 

「あれ、ゆんゆんのアルバム殆どは家族かソロ…」

「…それ以上は言わないでくださいね」

 

喋っている途中で口を塞がれる。

思い立ったら口にしてしまう癖が災いしたのか言ってはいけないことを言ってしまったのだ。

果たして俺は何に気付いてしまったのか…そう、彼女とめぐみん以外の友達が映っている絵が一つも無かったのだ。

彼女のボッチ気質は俺が思っている以上に深刻のようだ。

 

塞がれた口を通してものすごい圧を感じたので俺はそれ以上の事を追求する事を止めて大人しくアルバムを楽しむ事にした。

 

 

 

「お嬢様、カズマ様お食事の用意ができました。旦那様もお待ちですのでお早めにいらして下さい」

 

そうして暫く雑談していると、入り口のドアがノックされ使用人の爺さんが声をかけてくる。

どうやら食事の準備が済んだようだが、果たしてこの会食がどんな結末を迎えるのか想像するだけで冷や汗が出る。

 

「いきましょうか。くれぐれも失礼なことはしない様にお願いしますね」

「さっきから思うんだけどそんなに俺って信用ない?」

「はい」

「即答かよ⁉︎」

「日頃の行いが悪いからそうなるんですよ」

 

自分のホームグラウンドにいる為かいつもよりも強気な彼女に若干戸惑うが、これはこれで新しい趣向だと思い楽しむことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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