この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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誤字脱字の訂正ありがとうございますm(_ _)m
とても助かっています。


紅魔の里13

「さあ‼︎カズマよ、早く行くのです‼︎」

「お前が仕切ってんじゃねぇ‼︎」

 

不覚にも互いに向き合っていた時間が長かった為か、途中で痺れを切らしためぐみんが勝手に始まりの掛け声を上げた。

勝負というものは最初の一歩を踏み出すまでの駆け引きが重要だと思っていたのだが、あの女から見ればただ単に意気地がないように見えたのだろうか?

 

「ほら坊や、連れのお嬢ちゃんが早く行けって言ってるわよ?」

 

めぐみんが掛け声を挙げてしまった事で緊張感が削がれしまい変な空気が場に流れていたところでシルビアが仕切り直しを催促するかのように声を掛けてきた。

 

「…ったく、しょうがねーな‼︎」

 

ここまでお膳立てされて行かないとは流石に言えないので、仕方なしに構え直してシルビアに立ち向かう。

 

まずは様子見で支援魔法無しで斬りかかる。

相手の獲物は鞭だろうか?腰に提げられていたロープの束を取り出し展開しせ見せているが、バインドに使うロープの可能性もある。

 

いや…魔王軍幹部がバインドなんて姑息な技使うのか?

念のため用心はしておくが、それでも使って欲しくない感は否めない。

搦手を主としている俺に対して相手も搦手を使うとなれば、生きている年数や幹部という役職に就くだけの実力それらの要因を合わせてるとそいつは俺の上位互換という事になる。

そうなれば俺の勝率は地の底まで低下してしまい。最悪逃げ場を失い命の危険に晒される。

 

奴の持つ獲物に注意しながら剣を振りかぶり斬りかかる、まず狙うは腕で戦意を削ぐのが目的だ。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

「あら、可愛いこと」

「何⁉︎」

 

反撃が来ることを考えていたが、帰ってきたのは攻撃ではなく単純な白刃取りだった。

しかもそれは両手を使ったものでは無く片手の人差し指と中指の間で挟んだものだった。

 

「ふふふ、あれだけ大見え切った事言うのだから警戒したけど、ただのハッタリだったようね」

「クソッ‼︎動かねえ」

 

剣を前後に引っ張ったりして引き抜こうとしたが、やはり抜けることは無かった。

やはり調子に乗って支援魔法を使わないでいけるんじゃね?とかイキったこと言わないで全力で行けば良かった。

 

「残念だったわね坊や、折角可愛い娘の前でカッコいい所見せようとしたところを邪魔しちゃって」

「うるせーよ‼︎惨めになるから言わないで貰えませんかね⁉︎」

 

「カズマ…もの凄くカッコ悪いです…」

 

剣をがっしりと抑えられた状況で後ろを振り向くとめぐみんが少しガッカリしたような表情でこちらを見ていた。

この野郎…爆裂魔法しか使えない癖に何言ってやがると思い睨もうとしたが、これはこれで名誉挽回のチャンスがあるんじゃないかと有ることを閃いた。

 

「この様子だとあの憎たらしい紅魔族の仲間が来る前にカタが着きそうね。それじゃ坊やをどうしてくれようかしら?」

 

はぁ、とため息を吐きながら奴はそう言うと剣を挟んでいた力を強め始める。奴は俺の剣を破壊しようと言うのだろうか。

感知スキルで紅魔族を居場所を探るが悲しくも俺たちとの距離はあまり近づいてはおらず、やはり待つときの時間は待たせるよりも長く感じるとはこの事だと何処ぞの専門家気取りなことを頭の中で考えてしまう。

しかし、それで残念だでしたと終わる訳はなく、時間は残酷にも進み行くので早急に行動に移さないといけない。

 

「はっ‼︎笑わせるぜ紅魔族が来たら一蹴される癖に俺みたいな雑魚相手にイキがってんじゃねえ‼︎」

「何っ‼︎」

 

シルビアが調子に乗り出したタイミングで掴まれた剣を支点にして奴の顎下を支援魔法全開で蹴り上げる。

先程の一件で俺がただのハッタリかました雑魚だと思い完全に油断したのか、俺の攻撃は防がれる事も避けられる事もなく正確に奴の顎を狙い打てた。

 

「油断大敵覚えてやがれ‼︎」

「このクソガキ‼︎」

 

蹴り上げ突然の攻撃に怯んでいる隙に剣を奪い返し後方へと避難する。

 

「成る程カズマはこれを狙っていたのでしたか…私はてっきりカズマのよく言う舐めプをして返り討ちにあったのかと思いましたよ」

「当たり前だろ?俺が何もなしに丸腰で向かうかよ」

 

取り敢えず尊厳は回復させたが、これで相手は本気で俺に向かって相手してくる事になるので本当の戦いはこれからだ的な展開にフェーズが移行してしまい、命の危険はグッと上がってしまう事は確定だろう。

 

「弱かったから適当に痛ぶって私の実験コレクションにしてあげるだけで勘弁しようかと思ったけど、どうやら坊やは本気で私を怒らせたようね」

「実験台で勘弁するって、もう結果がゴールしてんじゃねーかよ‼︎」

 

奴は俺に蹴られた顎を押さえながら今までの余裕は無しといった感じで俺のことを睨みつけている。

何の準備なしにこのままいけば殺されるのは確実だろう。いくら支援魔法を使ったところでようやく力のステータスがドッコイやや下回るくらいなのだから。

 

「覚悟はいいかしら?もう油断はしないわ」

「ははっこれは流石に参ったな」

 

相手の手札が鞭だけしか判明していない以上このまま続けは今度は確実に負けるだろう。

しかし、奴の時間はもうお終いで、ここからはずっと俺たちのターンになるので気にする必要はない。

 

「さあ覚悟しな…何⁉︎」

 

シルビアが鞭を振り上げたタイミングで横から光剣を手に纏ったゆんゆんが突然現れ奴目掛けて斬りかかり、惜しくも奴の体を引き裂くことは出来なかったが代わりに奴の左腕を切り落とし反動を利用して俺たちの元へと跳躍した。

 

「クソ…もう来たのか‼︎」

「カズマさんお待たせしました‼︎里のみんなすぐこちらに到着します」

「さあ、お前らはもうお終いだな‼︎」

「…全くこの男は…」

 

美味しいところを獲った事にウキウキしているゆんゆんと掌を返したような態度の俺に対して呆れているめぐみんという相反した2人を横に構えながらシルビアに向き合う。

 

「これで勝ったと思わない事ね、私はグロウキメラよこの程度の損傷すぐに治せるわ…」

 

出血部を押さえながら切り落とされた腕を拾い、それを患部の切断端同士合わせるとモノの見事に接着され、指を開いたり閉じたり動作の確認をしている。

 

「シルビア様あの小娘の言ったように忌々しい紅魔族の集まりがこちらに向かっているようです‼︎」

「何ですって⁉︎」

 

感知スキルで確認してみると意外な事に先程まで相手いた距離が大分埋まっていることに気づく。

途中テレポートでショートカットしたのだろうか?

しかし、だとしたら大人数でこっちに向かって来ないだろうかという疑問が残るが、紅魔族の考えを理解するということはそれなりの沼にハマる気がするのでやめておこう。

 

「今回は見逃してあげるわ‼︎次会った時は覚悟しておきなさい‼︎」

 

状況が急展開を迎え場の雰囲気が一気に撤退の流れへと切り替わる。

このまま逃せばまた面倒な事になるのは今までの経験上火を見るよりも明らかだ。

 

「ゆんゆんちょっといいか?」

「はい、何でしょうか?」

 

撤退の指示を出し、ルートの説明をしているのか奴等の動きが少しだけ滞っている隙にゆんゆんに話しかける。

 

「やれ」

「えぇ…」

 

逃げようとする奴らに指を指し、たった一言彼女に指示するのだった。

そうアイツらは俺を怒らせてしまったのだ。

 

「仕方ありませんね…」

 

ゆんゆんも同じ気持ちだったようで、いつもなら姑息な手を使おうとすると大体抵抗していたのだが今回に限っては特に抵抗もなく俺の指示を受け入れて詠唱をはじめた。

 

「めぐみんも詠唱‼︎」

「今日のカズマは鬼畜ですね…」

 

ゆんゆんが来た事で自身の役目を終えたと判断して爆裂魔法の準備をキャンセルした様だが、俺はそこまで甘い男ではないので再び放てるように催促する。

追い討ちをかけるようにさんハイ‼︎と手を叩きながらめぐみんに命令すると彼女は呆れながらも再び爆裂魔法の詠唱を始める。

 

「フハハハハハハハ‼︎いい気味だぜ‼︎」

 

最初にゆんゆんが放った中級魔法が奴等の列の中辺りに激突して列が崩れ始める。

そして中級魔法を放っている間に詠唱を済ませた上級魔法を続け様に先頭に放つがシルビアが何かしらの小細工を使ったのか、その魔法は中級魔法のように直撃はしなかったがそのまま周囲にばらけて取り巻きに二次被害として浴びせられる。

それにより陣形は崩れ奴らは烏合の衆へと零落してしまう。

 

「折角の機会ですので我が力を見せてあげましょう‼︎エクスプロージョン‼︎」

 

奴らに距離を取られゆんゆんの魔法範囲外に出たところでめぐみんの詠唱が完了し、烏合の衆全体をカバーした状態で爆裂魔法を放つ。

流石に距離が前回の総力戦と違って近かったので威力は抑えられていたが、それでもギリギリ影響がない範囲まで出力を上げていたのだろう爆風が向かい風となって俺たちの体に浴びせられる。

 

「今回は不満な結果に終わりましたね…60点です…」

「次回に期待だな」

「2人は何を言っているんですか…」

 

爆風をなんとか凌ぎきったところでめぐみんがボソッ何かを呟く。どうやら自分の放った爆裂魔法に点数をつけているらしく、今回は彼女のお眼鏡には叶わなかったようだ。

 

「取り敢えず今回は何とかなったな」

 

一件落着と適当に誤魔化しながら爆裂魔法によって抉れた地面に背をむけ見なかった事にした。

上級職であるアークウィザード集団の紅魔族ならこの程度のクレーター位簡単に直してくれるだろう。

 

 

その後、遅れて来た紅魔族の方々に事の顛末を説明し、俺たちは再び元の場所へと戻る事となった。

その際に話を聞いていたが、どうやらゆんゆんだけがテレポートで飛んできたのは演出だったようでその時の説明をすると里の皆がウンウンと頷きながらゆんゆんのことを褒めていた。

 

一体何を考えているのだろうか…

状況から考えてメンバー全員でテレポートして来てくれた方が効率的には良かったのだが、多分彼達にはそんな考えは無く魔王軍幹部の事を全くもって危険視していないのだろう。仲間が1人で助けに来たと言う格好良さを優先したのだろう。

まああれくらいの圧倒的な実力差があればその考えに辿り着くのは自然な事だろうけど、それでも少しは警戒した方が良いだろうとは思わずにはいられない。

 

話を聞けばいつもはもっと大々的に攻めて来ていたらしいが、今回はめぐみんが見つけなければ危うく里に侵入を許してしまってた状況にある。

奴らも何かしらの考えがあって来ているのだろうか。

 

何か嫌な予感がするが、今回はあくまでお客さんの立場なのでなるべく深入りしない方がいいだろう。

戦力差は圧倒的で奴らだけでは到底敵うはずはないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

そうして俺たちはめぐみんと別れ一旦屋敷へ戻ったのだが、今回の迎撃祝いでパーティーを開くらしく、なんかうるさそうなので疲れて眠っている彼女を置いて屋敷の外へと繰り出す事にした。

どうせなら叩き起こそうとしたが、彼女が居る時には行き辛い店を見つけてしまったのだ。

 

それはサキュバスランジェリーと言ったもので、アクセルでも聞いた事のある例のあのお店と同じような雰囲気を感じる。

ダスト曰く、あのお店にはたくさんのサキュバスが在籍してお客の要望を聞いてそのアンケートに沿った夢を夜な夜な見せて男の精気を奪っていくという物になるらしい。

初期の冒険者は俺のように馬小屋で過ごすことが多く性欲の処理がままならないので、こう言った店は俺たち男性冒険者にとっては必需品らしい。

 

俺はこの世界に来て早々ゆんゆんと会っており、なかなか1人にさせて貰えなかったので縁がなかったのだが、今回くらいは羽目を外してもいいだろう。

できれば誰かの紹介で来て見たかったが。今回は流石に1人の方がいいと判断する。

バレたら後々面倒くさそうだし。

色々な建前を頭の中でごちゃごちゃ言いながら潜伏スキルで気配を断ち、周囲の人間に悟られる事なく店の前に移動して扉を開く。

 

「いらっしゃい外の人。1人ならそこのカウンターにでもどうかしら?」

 

出迎えてくれたのはゆんゆんと同じくらいの少女だった。

背丈は大体ゆんゆんと同じくらいだが、長い髪の毛が腰の方まで伸びている。やはり紅魔族は美男美女に富んでいるのだろうか、あのブッコロリーですら何もしなければイケメンのような気がするすし。

入った瞬間可愛い娘に会えたのはいいのだけれども、入った瞬間に俺は違和感を覚える。

 

「あれ?ここは酒場なのか?」

「ええそうよ、ここは紅魔族の随一知力を持った者が考えた酒場兼宿だよ。君たち外の人はいつもそう言うね?」

 

どうやらここは普通の酒場らしい。

入った瞬間に迎えてくれた者の気配が完全に人間だったのでそんな気がしたのだが、やはりサキュバスが関係してくるのは名前だけだったようだ。

 

「お兄さんは確かゆんゆんの友達だったね。それじゃあ…我が名はねりまき、紅魔族随一の酒場の娘いずれはこの酒場の女将となるもの‼︎」

「おーそうなのか」

 

やはりというか、そうなるだろうと思ったが紅魔流の挨拶をされたので俺も仕方なく考えて来た挨拶を返す。

するとやっぱりめぐゆんのパーティーに居るだけはあるねと、ありがたい感想が返ってきた。

 

「それで?この酒場はねりまきが経営しているのか?」

 

先程やがては女将になるものと言っていたが、この酒場には現在お客は居らず俺と彼女の2人だけの状況になっている。

本来であればねりまきに親父の店長が居る筈だと推測できるが、そのような気配はまったく持って感じられなかった。

 

「それは違うね、今日はゆんゆんの居るお屋敷でパーティーがあるから、お父さんがそこで使うお酒を運びに行ってる所。その間の留守番ってわけ」

「そうなのか、大変だな…」

 

やはりこの世界は俺たちの居る世界とは違って子供にも労働をさせるらしい。発展途上であるこの里では彼女の様な子供も外に働かされ、自身のチャンスを蔑ろにされてしまうのだろう。

何となくこの里の裏側を見てしまった気がしなくもない。俺はこれから彼女とどう接したらいいのだろうか…

…なんちゃって。

 

適当な正義を振りかざした事を考えながら取り敢えず何する?と聞かれたのでシュワシュワを注文する。

 

「お客さんはゆんゆんの友達なようだしサービスするよ」

「おー嬉しいこと言ってくれるね。それじゃあ今夜はここに居座ろうかな?」

 

日本ではセクハラと言われそうなおじさん的なセリフをかましながら出てきたシュワシュワに口をつけるとその場の雰囲気の効果なのだろうか、いつも飲むものより美味しく感じる。

やはりブランドや熟成年数的なものがあるのだろうか?

一応値段は確認しているが、そこまで高いものはなくむしろ設定は良心的なものだ。

 

「私もちょうど暇していた所だし、確か今はアクセルで冒険者していたんだよねそこでのめぐゆんの事聞かせてよ」

「ああ、いいとも」

 

雰囲気に酔っているせいか少しハードボイルド気味に言葉を選びながら話を進める。

昔はこんな酒場に来て店員と話をするなんて非効率的でお金の無駄でしかないと思っていたが、こうして実際にその場の雰囲気と共にシュワシュワを味わうと言うのも悪くはない。

シュワシュワではなく酒だったらいいのだが、あいにくこの世界でのお酒はシュワシュワしかないので諦めるしかない。

 

「それで、2人はどんな感じだったの?やっぱり出会った当初からイチャイチャしてたの?」

「出会った当初か…確かにイチャイチャしてたな…むしろイチャイチャしかしてなかったな…」

 

この世界に来た時のことを思い返す。

めぐみんが来た時はかなりの衝撃を感じたものだ。何せ爆発事件の犯人だった訳で、しかもゆんゆんと同じ紅魔族という特徴で最初に俺と会うと言う奇跡に近い再会を果たしたのだから。

 

「そんな2人の中に入るって相当勇気が必要だったんじゃない?それとも誘われた感じ?だとしたら経緯を聞きたいね」

「いや、そもそも最初から2人いた訳じゃないんだよ」

「そうなの⁉︎そうなるとどっちかと先にあっていた事になるけど!どっちなの?」

 

どうやら彼女はゆんゆんとめぐみんの2人がパーティーを組んでいた所に俺が混ざって来たと考えていた様で、考えとは違った現実に戸惑いつつ事の次第を俺に聞いてくる。

 

…しかしそうなかった可能性だが、2人が揃っている所に3人目の仲間として俺が入るとなるとそれはそれでかなりハードルの高い事になっているなと思う。

しかし、そうであったのなら2人でパーティーを回して行けたかと思うとそれはまた違うなと思わずにはいられない。何せ2人ともアークウィザードなのだ後衛二人では討伐系のクエストはゆんゆんが優秀だとしても難しいだろう。

 

「最初はゆんゆんだな。俺が困っていた所を助けて貰ったところが始まりだね」

「へー私は最初はめぐみんを捕まえてなし崩し的にゆんゆんを仲間にしたかと思ったんだけど、違ったみたいだね」

「捕まえたなんて人聞きの悪いこと言わないでくれ、むしろこっちが捕まったくらいだよ」

 

正確には押し付けられたと言ったほうが正しいが。

やはり客観的に見ればめぐみんを先に絆した方がゆんゆんと仲良くなるのは易しそうだ。

今後俺たちのパーティーに対して内部破壊をしにやって来る資格がいるかもしれないので、彼女との仲良くの仕方を古くからの友人に聞いておくのもいいかもしれない。

 

「そうなの?ゆんゆんの事だからお客さんの方からゴリ押して仲間にしたかと思うったんだけど」

「どちらかと言うと外堀を埋められたと言った方がいいかもな、巻き込まれたとも言うかな」

「へーそうなんだ。まああの2人もおとなしそうな顔をしてかなりヤンチャしてたからね」

 

どうやら2人の伝説はアクセルに来る前から始まっていたらしい。

どんな事にも過程があるらしく、彼女達の行動も何かしらの原因があるのかもしれない。

 

「ヤンチャってどんなことしてたんだ?」

「そうだね…まず猫を拾って来たことがあってね…」

 

それからはめぐみんを主軸とした2人の話を彼女が知っている範囲で話してもらった。

途中彼女にも酒を奢りつつ、酔った所で色々と踏み込んだ質問もしてみた。

それは中々に面白く、そして彼女達は彼女達で色々と苦労して来たんだなと、改めて2人の存在のありがたさを思い知ったのだ。

 

「さて、私も話したんだからお客さんもそれからの話を答えてよ」

「そうだな、何から話せばいいのか分からないから出会った時の所から話そうかな」

 

俺も酔いが回って来たのか、普段なら言わない事も言ってしまいそうま雰囲気になっているのを感じるが、彼女も大分踏み込んだことを言ってくれたので俺も少しくらいは喋ってもいいだろうと話を少し盛りながらアクセルに来てからの話を彼女に話した。

 

 

 

 

「へーそうなんだ、やっぱり君の推しはゆんゆんなんだ?私はめぐみん派だね、強気な様で実際推しには弱そうだからね」

「マジか…やっぱり同じ女性だからこそ見えるものがあるのか…」

 

時間は経ち、長い話を終える頃には2人ともすっかり酔っ払ってしまっていた。

ベルディアやバニルを倒した時にも盛大に宴を開いたのだがその時と比べてかなり飲んでしまっていると自覚はしているのだが、案外ねりまきと飲むのも悪くはない。

2人の事に関しての話を他の人とすると基本的に同情されるだけで愚痴るだけになってしまっていたが、今回は互いの知らない彼女達の話を擦り合わせるように話す事がこんなに楽しいとは思わなかった。

 

 

 

 

 

「おー帰ったぞ‼︎留守番ありがとう…って外の方じゃないですか。これはこれはいらっしゃいませ、娘が迷惑をおかけしました」

 

どうやら族長宅の飲み会が終わったらしく、この酒場の主であるねりまきの親父さんが帰って来た様だ。

やはり娘は父に似るのだろうか、めぐみん・ゆんゆんといい、そこはかとなく父親に似ている気がする。

これは俺の経験則で必ずしもあっている訳では無いが、2人兄弟や姉妹の場合基本的に上の子が母親似で下の子が父親似の事が多い様な気がする。もちろんエビデンスはないので確実性には欠けるが。

 

「すいませんねこんなに散らかってしまって」

「何言ってるの、現在進行中なんだけど」

「いえいえ、散らかしたのは俺なんで気にしないでください」

 

どうやら店主はねりまきが店を散らかしてそのまま俺の接客していたと思ったらしく、そのことを周囲の瓶を拾い上げ片付けながら謝罪した。

確かにこの量の瓶を見たら俺たち2人で飲んだとは到底思えない。改めて見ると2人とはいえかなり飲んだなと恐ろしさまで感じるほどだった。

 

「そうですか、娘が大変迷惑をお掛けしました」

「やめてよ、まだ何もしてないんだけど⁉︎」

 

お客さんが飲み過ぎるのを止めるのもスタッフの責務と考える人も居ると昔にテレビで聞いていたが、この店主もその部類のようだ。

一応問題はないと謝罪し、残ったシュワシュワに口をつける。

 

「それで、なんでめぐみんが爆裂魔法に手を付けたって話なんだけど」

「そうだね…そればかりは流石の私も分からないかな」

「そうだよな…めぐみんも適当にはぐらかして爆裂魔法の凄さを長時間力説して結局説明してくれないからな」

「昔から上級魔法を取れるのにスキルポイントを溜め込んでいるとは思っていたけど、いつの間にか爆裂魔法を習得してたね」

 

どうやらねりまきでも知らない事があるようだ。

それはそうと店主の方はそろそろ店じまいなのか出来るところから片付けを始めている。

今日は飲み会があるから普段来ない酒飲みは来ないと踏んで彼女を店番にしていたのだろう、その分営業時間が短いのも納得だ。

 

「まあなんだかんだ言って、あるえとかと比べるとそこまで仲が良かったて訳じゃないから、詳しくはそっちの方に聞いた方がいいかも」

「あーあるえか…そう言えば来た時にあったな」

「そうなんだ、さすがだね。お客さん意外と女たらし?」

「馬鹿野郎⁉︎そんな事あってたまるか」

 

どうやらねりまきと言う女性は彼女達の親友ではなかった様だが、ゆんゆんの話を聞いていると多分めぐみん以外親友と呼べる人は居なかったんじゃないかと思える程だった。

めぐみんが十八番で使うツッコミのように思っていたワードは冗談ではなく本当の事なんだなと改めて思ったが、これだと笑えないなと若干頬が引き攣るのを感じた。

 

それはそれと、女たらしだなんて不名誉にも程がある。こちとらこの世界に来て女の子2人と同じ屋敷に住んでいながら手が出せない状態にあるという拷問に近い生活を送っているんだ、それを知らずに知ったような事を言わないで欲しいと言うか、相手はねりまきだし言ってしまおう。

 

「あーそれは大変だね。お客さんも男の子だからね…やっぱりコッチもギリギリって感じ?」

 

と言う事で説明した訳だが、やっぱり下ネタは不味かったかなと思っていたが、やはりこの商売を続けている為免疫ができているのか寧ろ少し乗り気で話を広げてきた。

 

「そうなんだよ…その状況でサキュバスランジェリーとか完全に狙ってるだろう?」

 

酷く酔っているのか、それとも彼女のコミュ力なのか、普段は絶対言わないであることを滑らせてしまう。

 

「あ、やっぱり店の名前ってそう言う感じなんだ。外の方の男性は大体うちに来たら少しガッカリしてるような雰囲気がしてたから何でだろうと思ってたんだ、前にお父さんに聞いてもはぐらかされるし」

 

彼女はどうやら店の名前の意味は知らなかったようだ。まあ親父は知っていたようだが、それでも紅魔族随一の知力を持っているだけあって集客力も随一だ、かく言う俺もその掌で転がされて入店した訳だし。

 

「まあでもいいんじゃないか?俺は悪くはないと思うぜ。なんか悪い事してるみたいだし、改めて見ればお洒落でかっこいいだろ?」

 

まあゆんゆん達に行って来るとは到底言えないが、言うは易しと言うから取り敢えず言っておこう。

 

「そう言ってくれると嬉しいかな、それでそろそろ時間なんだけどさ」

 

彼女はそう言いながら店の時計を指す。

時計はちょうど日付が跨いだ事を表しており、かなり長い間ここに滞在した事も示していた。

 

「あー悪い悪い、それじゃそろそろ帰るよ」

 

上着を椅子から掬い上げ袖を通しレジスター的な機械のあるカウンターへと移動する。

 

「へー珍しいな」

「そうそう、珍しいでしょ。この計算する箱は代々受け継がれたものでね」

 

似たような物かと思ったら完全にコンビニによく有る一昔前のレジスターだった。

久しぶりにみる懐かしさに見ていると、皆によく言われるのか慣れたように彼女が説明を始めた。

 

「…それでお会計なんだけど…払えそう?半分は私が飲んだから半分はなんとかなるようにお父さんに言うけど…」

 

機械の説明を終えると申し訳なさそうに彼女は機械のボタンを押すとそこにはかなりの数字が並んでいた。

 

「いや別に気にしなくても平気だよ。これくらいなら出せるし」

 

カッコつけるようにエリスの札束をドンと出す。

これから商談で三億の収入があるのでこのくらいの出資ならポケットマネーで軽く賄えるのだ。

 

「え⁉︎お客さん結構お金持ちだね、そうか‼︎これで2人を釣ったわけか⁉︎」

「人聞きの悪い事言ってんじゃね‼︎ゆんゆんの屋敷に泊まっているから旅館代が浮いてるからその分だよ‼︎

 

ギョッとした表情でねりまきは驚いたリアクションをしたが、それをふざけて頷けばこの事は瞬く間に里中に広まるだろう。それだけはなんとしても防がなくてはいけない。

 

「冗談だよ、来てくれてありがとうね…あ、そうだこれ」

「なんだ?」

 

そうだと言って渡されたのは何かのスクロールだった。

攻撃用や防御はよく見るが、今回はまたデザインの毛色がまた違ったテイストの巻物なので何か補助的な物だろうか?

 

「これはうちの店の前が設定されたテレポートのスクロールでね、ある金額以上のお会計をしたお客さんに渡してるの」

「へー、それはまた律儀だね」

「まあ、うちは便が悪いからこうでもしないと外のお客さんが来てくれないからね」

「成る程な、さすがは紅魔族随一の知力を持った人が考えたお店だな」

「それじゃあ、また今度新しいめぐゆんの情報待ってるよ‼︎」

「おう、そっちも昔の記憶捻り出しておけよ‼︎」

 

会計を済ませ、テレポートのスクロールを受け取ると俺は酒場を後にした。




次回から話は進む予定ですが、少し休むかもしれません
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