この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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遅くなりました、誤字脱字の訂正ありがとうございますm(_ _)m


紅魔の里16

「はぁ…何で俺が…」

 

シルビアに脅され仕方なしに例のコマンドを打ち込む。

これで紅魔の里が滅びたら俺のせいじゃね?と思わずにはいられないが、こっちも身の危険を感じるので仕方ないと思って欲しい。

それにあれだけの戦闘力を持つ紅魔族なら、世界を滅ぼす兵器の一つや二つを破壊してくれるだろう。

 

「…ほらよ、これで良いだろ?」

 

コマンドを打ち込み、それが認識された途端にドアから電子音な様な音が鳴ると先程までの頑健さが嘘のようにスルスルと開いていった。

 

「やるじゃない…坊や」

 

先程まで苦戦していた物をあっさりと解決された事にかなり引きながらも、一応上司の経験があるためか部下を労うように俺に賛辞の言葉を送る。

こいつもこいつで色々と苦労してんだなと思ったが、それを言うのは癪なので黙っておくことにした。

 

「もたもたしていないで早く行くわよ」

「おわっ‼︎」

 

どすんと背中を押され開かれたドアの中へと体を押し込まれる。

通路の側面に手すりは無かったが、経年劣化でざらついていたので掌を押し付けるだけで何とか止まることができる。

 

「何すんだよ‼︎転んでサスペンスみたいになったらどうしてくれるんだ‼︎」

 

踏みとどまり、思わず罵声を挙げながらやつを叱咤する。

 

「あら御免なさい、ここまで協力してくれたから中を見せてあげようかと思って?」

「悪意ない様な顔でヒデェこと言いやがるな…」

 

念願の扉が開かれたことで上機嫌なのか、今なら何でもお願いを聞いてくれそうな雰囲気で笑っている。

…まあ実際にお願いしたら即答で断れかねないんだが。

 

「仕方ないか…取り敢えず着いていくけど目的の物を見つけたら俺は帰るぞ」

「えぇ、良いわよ。坊やが望みならあのお嬢さんの所まで届けてあげるわよ」

「はいはい、そりゃどうも」

 

一寸先も暗闇しかない通路を千里眼スキル等々で把握しながら進んでく。

余裕そうな態度をかましているが、着々と滅びに向かっていると言う現実を未だに受け入れない状況にある。

 

階段の一歩一歩に重さを感じる。

今まで誰も踏み込めなかったと言う謎施設に入ると言う事は、これはもう未知との遭遇と言っても良いだろう。人間には知識欲と言う新しい見地を見出す好奇心というものが備わっていると言っても過言ではなく、意外にもこの状況を楽しもうかと思ってもいる自分もいるくらいだ。

しかし、それが敵の幹部の案内でなければの話だが。

 

はぁ…。

こんな事なら昨日ゆんゆんを言いくるめてここに侵入しとけば良かったなと今更ながらに思う。

 

 

 

「着いたぞ、ここがこの地下室の終着点だ」

 

狭い道を進み、ある地点に着いた途端に急に感知できる幅が広がった。

他にも家具や研究か何かに使われる施設なのか、様々な影も感知できる。どうやらこの部屋は紅魔の里の民が昔研究か何かに使ってたのだろう。

 

「いろいろな物があるな、こいつは…」

 

所々に試作品なのか色々な機械が転がっている。

スキルを凝らしてよくよく見てみると、それは俺の世界の漫画本だったり2世代位昔のゲームウォッチだったり何だか懐かしいような古臭いものが色とりどり並べられていた。

 

何故こんな所に俺の世界の物があるのだろうか?

取り敢えずコミックを漁っていると昭和の古臭い漫画群の他に、誰かの日記か研究の記録をまとめたものか分からないが、一冊のノートを発掘する。

 

何だこれはと思いパラパラと内容を確認する。

生憎色は分からないが、それでも文字は筆圧で線となっているので読み取ることができる。

 

そこに書かれた内容は簡単で、某移動要塞デストロイヤーを作成した日本人がそれよりも昔に紅魔族を作ったと言う内容だった。

つまりアイツらは遺伝子改良型人間という事になる。

 

恐ろしやチート能力…ついに日本人は魂の解明にでも成功したのだろうか?

 

まあそんな事はさて置き、この施設に置かれている世界を滅ぼしかねない兵器の詳細について書かれている。

名前は魔術師殺し、文字通りあらゆる魔法を無効化する効果で紅魔族を滅ぼすにはうってつけの兵器という訳だ。

流石にこれをシルビアが手にしたら紅魔族は奴に対してなす術無く淘汰されるだろう。

 

しかし、その兵器には弱点があり物凄く燃費が悪く、実用には程遠いと製作者は答えている。

これなら大丈夫だろうと高を括ることも出来るが、相手は魔王軍幹部。もしかしたらそれを解決する何かを持っているかもしれない。

 

彼女自身をグロウキメラだと言っていた事を思い出すが、キメラということは人体構造に熟知していると言っても過言ではないだろう。

ならば部下を利用した生体電池的な物を使いこの魔術師殺しを運用すると言う事もあるかもしれない。

 

いや、もしかしてそのために俺を連れてきた可能性もあるが、チート技術を持つ研究者がエネルギー不足と言ったのなら、俺如きを生体エネルギー化したところで大したエネルギー量にならないだろう。

そんな事を考えつかないほど奴も馬鹿ではない。

 

この魔術師殺しも危険だが、だからといって何も対応策を思いつかない程当時の紅魔族も馬鹿ではなかったようで、対魔術師殺し用に超電磁砲と名付けられたライフルを作成していると言った内容の記載がされている。

かなり見覚えのある内容だが、そのような兵器を果たしてもの干し竿として利用するのだろうか?

 

…まあこのノート自体かなりの年季が入ってるから忘れ去られても無理はないが、雨による劣化とか大丈夫だろうか。

 

 

 

 

「どうやら外部から来た侵入者を排除するとかそう言った機構はないようね」

「ああ、そうだろうな」

 

そんなこんなで俺が研究室を漁り始めていた事で特に罠が無かったと判断したのか奴がこの部屋に入ってくる。

要するに食事で言う毒味を意図せずに行わさせられた訳だが、勝手に飛び出て行ったのは俺なので何も言わずに頷いた。

 

「へぇ…これがねぇ?へぇ…中々に禍々しいじゃない」

 

先程まで周辺の物を漁っていた訳だが、とりわけ大きな何かが部屋の中心に置かれている。

これが例の魔術師殺しの訳だが、形状は蛇を模していて幾つかの機械が分節的に連結しており、それぞれのパーツを動かしながら進行する様な感じだろうか?

 

「それをどうする気なんだ?いくらこの世界を滅ぼす兵器と言っても使い方が分からなければ意味ないだろ?分かるのか?」

 

奴の間合いから離れた事を確認し、機械に触れ感銘している奴に問いかける。

これで俺を再び頼ろう物ならスキルを使って全力でこの部屋を脱出するだけなのだが、果たしてどのような答えを返してくるのだろうか?

 

「その必要はないわ、さっきから言っているでしょう?私はグロウキメラよ?この機械と同化さえしてしまえば使い方なんて知らなくても使いこなすことが可能よ」

「何…だと⁉︎」

 

奴がそう宣言した瞬間、機械に触れていた奴の体は腕からドロっと溶けるように融解し徐々に機械と融合を始める。

 

「させるか‼︎」

 

距離を取ったのが仇になったが、それでも何もできないわけではなく。懐に仕込んだナイフを引き抜き投擲する。

 

「あら随分と粋なプレゼントね‼︎お姉さんゾクゾクしちゃう‼︎」

 

ブルブルっと軽く痙攣しながら彼女はそう言うと、俺の投擲したナイフなど意に介さず、そのまま受け止める。

受け止めると言っても昨日のように素手で受け止めるのではなく、そのまま自身の体で受け止めると言った感じだ。

奴の体は既に固体を保ってはおらず、俺のナイフは一瞬奴の体に受け止められたかと思った所で重力によってそのまま下に落下した。

 

「間に合わなかったか‼︎」

 

奴との融合は止められなかったが、まだ機械の主導権を完全に握っているわけでもない。

腰の剣を抜き取り、牽制の雷の魔法を放つが魔術師殺しは電源がなくても効果を持つのか、俺の雷撃は直撃する前に弾かれそれた魔法は周囲に二次被害となって降り注ぐ。

 

「魔法がダメなら物理はどうだ‼︎」

 

支援魔法にて身体を強化し、脚力任せに跳躍して元々のコクピット乗り込み操縦席に剣を差し込む。

差し込まれた剣は先程の魔法攻撃とは違い、意外にもすんなりとその身を貫く事に成功する。

 

これなら行ける‼︎

 

そう確信した時だった。

 

「甘いわね坊や、それは私が融合する前にするべき事だったのよ」

「何⁉︎」

 

もう少し時間がかかると思っていたが、奴の機械と融合する速度は俺の予想を超え僅か数分のうちに完了されていた。

それにより、この魔術師殺しの主導権は奴に移り突き刺された俺の剣はコクピットを奪い返すように押し出され、どこからか生えてきた奴の腕に俺の足が囚われそのまま下に叩きつけ返される。

 

「痛いじゃない…この私の体に剣を刺すなんて坊やって意外と乱暴なのね」

「はっ…汚ねぇマーメイドだぜ‼︎」

 

コクピットから奴の上半身が現れ、姿がまるで人魚のような感じへとシフトする。

唯一の弱点でありそうなコクピットは既に奴の肉体が占領しており、そう易々と近づくことはできないだろう。

 

魔法も通事ない、物理攻撃は実力が違いすぎる。

この状況下で俺ができる事といったら。

 

「逃げるんだよ‼︎」

 

全力で回れ右をしたのち真っ直ぐ部屋の入り口へと全力でダッシュする。

 

「え?ちょっと‼︎そこはどうにかして私に反旗を翻すところでしょ‼︎いきなり逃げるだなんて…」

 

奴が逃げる俺に対して何か言っているようだが、こっちは命がかかっている以上なりふり構っている暇はないのだ。

それに奴も変化した自身の体にまだ慣れてはいないようで、全身を使用した動きはどこかまだぎこちなさを感じる。

ならば、俺が全力を出せば逃げ切ることは可能だ。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーっ‼︎」

 

色々な意味で緊急事態なので後先構わずに全力で道を突き進む。

そして奇跡的にも入り口の扉の前にたどり着く。

 

これ再びコマンドを入力したら扉が閉まったりしないかな、と思いつつ全力でコマンドを打ち込むと俺の予想通りに扉が音を立ててしまり始めた。

 

「ミッションコンプリート」

 

グッと心の中で親指を立て、自業自得の状況下の自身を自画自賛する。

里のみんなや、ゆんゆんの親父さんにどう言い訳しようかこれから考えないといけないなとと思いながら、これからどうしようかと考え込む事にする。

 

やはりアイツを倒さないと先には進まないだろうな…

ゆんゆんの事だ、里の皆に俺がつれ攫われた事を伝えるだろうから、勘のいい里の人間は俺が何かした事に気づくだろう。

そうなれば最悪俺の首よりも恐ろしい事になる事は想像するまでもない。

 

「か、カズマさん‼︎」

「ん?ゆんゆん‼︎無事だったか‼︎」

 

奴を締め出し一息ついていると、どうやら彼女たちの方で俺を捜索していたのか少し煤けたような風貌になったゆんゆんが現れた。

 

「私はなんとか無事でしたけど…カズマさんは無事でしたか?どこか怪我とか?」

「心配すんなよ、特に何もされてないよ」

「よかった…」

 

安心したのか胸を撫で下ろすゆんゆん、立場が逆ならかなりの心配をしたことを考えると、彼女の心労は相当な物だろう。

 

「それで、この謎施設で何かあったんのですか?この施設は古代文字によって守られていて私たちの知恵を集めた結界殺しも通じないと聞いていますけど…」

「ああ、それなんだけどな…」

 

流石に何もなかったでは済まされないので事の顛末を俺が開錠したのではなく、シルビアが自身の謎スキルを使ってこじ開けた事にして説明する。

 

「そんな…この中には世界を滅ぼす兵器が眠っていると、昔授業で聞いたことがあるのですが大丈夫でしょうか?」

「多分大丈夫じゃないだろうな…ここは俺がなんとかするからゆんゆんは里のみんなに逃げるように伝えてくれ‼︎」

「わ、わかりました‼︎」

 

そう言い、俺はゆんゆんに魔術師殺しの性能等々を伝え彼女と別れ、そのまま洋服屋に向かってダッシュする。

目的はあのノートに記載された超電磁砲だ。

 

わざわざ魔術師殺しの抑止力として作られた兵器だ、使い方こそわからないが機械弄りには自信があるのでなんとかなるだろう。

 

後ろから物凄い轟音が響いていることからシルビアが中から外へ扉を食い破ろうとしている事がわかる。

時間はもうそんなには残されてはいない。

身から出た錆だが、嘆いていては何も始まらない、早くあの超電磁砲をこの手に収めて対策を練らなくては…

 

 

 

 

 

 

ゆんゆんと別れ俺はあのチェケらが住まう店に辿り着いたわけだが、やはり開店時間になっていないため当然店は閉まっているわけだが、あの超電磁砲は外干しの物干し竿として利用されていたことを思い出し、店主には悪いが塀をよじ登り中へと侵入する。

 

「悪いなチェケらの旦那」

 

店主に謝りながら、先日見た通りにかけられていた超電磁砲と名付けられたライフルを引き上げその手に収める。

 

「うぉっ‼︎」

 

そのタイミングだった。

あの扉を食い破ったのだろうか、それとも天井を破壊して地表に出たのか轟音が鳴り響き、俺が立っている地面ですらその振動で地震が引き起こされている。

 

《緊急事態発生‼︎緊急事態発生‼︎魔王軍幹部襲来‼︎今回は魔術師殺しを奪取され魔法が通じません‼︎至急退避を‼︎繰り返します‼︎》

 

そして、そのタイミングで里にアラートが鳴り響く。

やはり一族の長の娘だけあってそれなりに権限を与えられ信用されているのだろう。

 

よかったなお前は一人じゃないんだなと伝えたいところだが、今はそれどころではない。

 

アラートにより里の皆が起きたのか、里の皆がそろぞろと家から出てくる光景が視界に広がる。

 

手に入れるものは得た。ならば早く現場に向かうのが筋だろう。あの規模の機械が里に入り込んだらこの里は一瞬のうちに火の海になるだろう。

紅魔族はテレポートという魔法が使える以上荷造りさえ終われば即座に転移する事ができるだろう。

ならば、俺はこの超電磁砲の使い方を模索しながら奴に時間稼ぎをすべきだろう。

 

深呼吸をし息を整えると先程まで居た謎施設へと走り出す。

 

 

「カズマと言ったかな?これは君が起こした事なのかな?」

 

家から飛び出し各々どこへ行くのかと思ったが、何故か皆揃って謎施設の方へと向かって行ってしまっている光景となっている。

一体どういう事なのだろうかと思いながらもたまたま近くに居たあるえとか言った少女に話しかけた次第だが、何故か俺が犯人だと勘づいているようだ。

 

「いや、これはあの魔王軍幹部の仕業だよ」

「…まあそういう事にしておこうか。それでわざわざ私に話しかけてきたんだ何か緊急性があると見たけど」

「それなんだが、どうして皆謎施設の方に向かっているんだよ?普通は逃げないか?」

 

しらを切りながらも平然と俺の気になっていることを質問しする。

 

「それはだね…まあ君は外の人だから理解することはできないかもしれないが…」

「前置きはいいから早く言ってくれ」

 

「…むぅ、仕方ないな君はそれで希望に応えて簡単に説明しよう。我々紅魔族はこう言ったイベントに目がない事は君もめぐみん達を通して知っているだろう?」

「ああ、そうだけど…ってまさか⁉︎」

「そう、そのまさかさ。里のみんなのこの行為に意味なんてものは無いのさ」

 

どうやらこいつらは筋金入りの紅魔族と言う訳だ。

理解に苦しむが、そもそも種族が違うのでこればかりはどうしようもないのだ。

 

「結局目的はただ面白そうだからって事でいいのか?」

「もちろんだとも、私たち紅魔族の行動理論なんて分かって仕舞えばそんなものさ」

 

こいつは自身の特性を理解しつつもそれを受け入れて楽しんでいるのだろう。

色々な人間にあったが、こいつを敵に回したら後々厄介になりそうだなと俺の本能が告げている。

 

 

 

 

 

そして俺たちは例の謎施設へとたどり着く。

先程までは謎々しい雰囲気を漂わせていたのだが、奴が地面を突き破ったのか周囲はえぐれその真ん中に奴は佇んでいた。

 

皆、それぞれ自身の力を見せつけるように魔法を放ち奴に向けて攻撃するが、やはり魔術師殺しと言われるだけあってか、里の皆の攻撃は全て弾かれ周囲に二次被害の雨となって降り注いでいた。

 

「無駄よ‼︎愚かな紅魔族の皆‼︎この魔術師殺しがある限りあなた達は私に傷一つつける事すらできないわ‼︎」

 

そう高らかに宣言しながら気持ち良さげに両手を挙げる。万歳でもしているのだろうか?

まるで映画のワンシーンだなと心で突っ込みながら手にした超電磁砲を弄り始める。

 

銃の扱い方は映画や動画で一時期学んだが、この銃は製作者がうろ覚えだったのかそれとも俺の考えた最強の超人的な感じで魔改造されたのかよくわからないが、所々モデルとなったであろう銃器とは違った特徴が盛り込まれていた。

 

こいつはややこしい事になりそうだな…。

ガチャガチャしながらも何とか使えそうな感じになったが、肝心なところでエネルギー切れのアンプが点滅していることが確認できた。

要するに発動させるには魔力か何かが必要なのだろうか?

 

柄にはインジケータのようなメモリもあるのでドレインタッチの逆の要領で魔力を流すと、ほんの数ミリだけだがメモリが進むことが確認できた。

成る程な…

 

要するにこの銃の発動条件はかなりの魔力を要する事になるわけだが、幸いにもこの里の皆は高レベルのアークウィザード集団だ。

このくらいの魔力を集めることくらい苦ではないだろう。

 

「おい、皆この機械に…」

 

この超電磁砲の説明をしようとした所、里の皆はシルビアに向かって何かを宣言していた。

 

「くっ‼︎恐ろしい手練れだ…今回の勝ちはお前に譲ろう‼︎だが安心するなよ!我々は地べたを這いずり、敗北という名の泥水を啜ってでも戻ってきてやるからな‼︎」

 

そう言いながらテレポートで姿が消えていき、それに続くように他の里の皆も決め台詞を残しながらテレポートで消えていった。

 

「げっ…マジかよ」

 

よりにもよってこのタイミングで逃げると夢にも思わず、空いた口が塞がらないがそれは振り向けば奴も同じようで俺と一緒になって呆けていた。

 

「これだから紅魔族は嫌いよ…」

 

それから奴が俺を見つけるのは必然で、目が合うとボソリと不満を言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「これはまずい事になったな…」

 

超電磁砲片手にシルビアと対峙するが、紅魔族は他にも居るようで後ろから現れては魔法を放ち、聞かないことを確認しては捨て台詞を放ってはどこかへテレポートして行ったのだった。

これは中々に酷い…

 

そう思いながら奴に同情しようと思ったが、このままだと魔術師殺しというなの大尾に轢き殺されそうなので距離を取りながら紅魔族の行為を傍観し続ける。

途中奴も痺れを切らして大尾を振るうが、紅魔の里の皆はそれを予測していたようで当たるか当たらないかの瀬戸際でテレポートを使用しながら攻撃を躱しつつも何処かへと飛び立っていった。

 

「お客さん。ちょうどよかった」

 

そんなこんなで呆然としていると後ろから声を掛けられる。

 

「おう、何だねりまきか…店の外くらい名前で呼んでくれよ。俺にはサトウカズマって名前があるんだからよ」

「そうだったね。それじゃあカズマ君でいいかな」

「…お、おう」

 

いきなり下の名前で呼ばれるのはアレだが、これはこれで何か別の扉が開いてしまいそうで怖い。

 

「ゆんゆんから伝言で君を連れて里の奥に飛んで欲しいってさ、ほら君ってテレポート出来ないから」

「ああ、成る程な…」

「ゆんゆんじゃなくてごめんね。あの子アレでも族長の子供だから本当はここに来たかったんだろうけど族長が許さなかったんだって」

「いや、そんな事だろうとは思ってたから大丈夫だし。それを聞いて安心したよ」

「そう?君がそういうのならいいんだけど、元々魔術殺しは里の極秘だったらしくてこうなったら族長が王都から騎士団を派遣する手筈になってるからカズマ君も早く逃げよう」

「別に構わないけど、何でそこまで詳しいんだ?」

「何でって、カズマ君も私の職業知っているでしょう?」

「何って酒屋の娘だろう?」

「そういう事、私のお父さんとゆんゆんのお父さんが話している所に何回もご一緒したからね」

「あーそう言うことか」

 

成る程なと納得する。確かに酒の席ならこう言った機密情報も漏れてしまうことも無い事はないのだろう。

本来なら許された行為ではないが、昔の兵器のことなら喋ってしまっても問題はないのだろうか?

 

「それじゃ行くから目を瞑っててね」

 

ポンと手を置かれテレポートを発動する前に目を瞑る。あの独特の浮遊感に漂いながら再び声を掛けられ目を開くと、そこは何処かの村だった。

 

「ここは?」

「ここは私紅魔族の里皆に何かがあった時に避難するように指定された場所だね」

 

強いて言うなら第二の紅魔の里だね、とねりまきはそう言うとこの村について説明を始める。

この村は先程ねりまきが言ったように避難地として制定され、使わない時は紅魔の里の外交やら搬入の際に使われる中継地兼休憩所として扱われるらしい。

基本的には使われない施設なのでたまにブッコロリーみたいのが掃除してくれるそうだが。

 

「それじゃ私はお父さんの所に戻るね。皆お酒を飲みたがっているみたいだし手伝わないと行けないからさ」

 

そう言いながら彼女は俺に手を振りながら奥の仮設酒場スペースへと歩いて行った。

 

しかし、仮設村か…数を見るにまだ里の総人口が来ているとは思えないが、皆まだシルビアに向かって例の作戦を繰り返しているのだろうか?

だとしたらかなり可哀想な事になっているなと憐んでやるしかないだろう。

 

そういえば他の皆は大丈夫だろうか?

なんだかんだ言ってめぐみんとは夕方の一件以降姿を見ていないしテレポートを使えないし、もしかしたら巻き込まれていなければいいのだが。

 

そんな不安を抱きながら周囲を見ると、視界の端によく見るとんがり帽子のシルエットが確認できる。

 

「あ、カズマではありませんか?潰しても死なないと思って心配しませんでしたが無事でなりよりです」

「相変わらずひでぇな」

 

飛んできた俺の姿を確認したのか、血相を変えて近づいてきたと思ったらとんでもない悪態を返される。

一体どう言う事だってばよ。

 

「めぐみんが無事なのは良かったけど、ゆんゆんはどこにいるんだ?」

「ゆんゆんですか?ゆんゆんは一応は族長の娘ですからね。奥の建物の中にいますよ」

 

そう言いながら雑に扱われた事に対して少し不満げにしながらも、ゆんゆんの居るであろう建物の奥へ指をさす。

 

「おう、それじゃあ行こうか」

「え?あ、はい」

 

何故か驚くめぐみんを連れゆんゆんの居るであろう屋敷へと向かう。

側から見たら里にある屋敷とはワンランク落ちるなと思いながら向かうと、玄関に執事の爺さんが薙刀を持って仁王立ちしていた。

 

「え?何これ。どう言う感じなの?」

「おや、これはお坊ちゃんではありませんか。無事で何よりでございます」

 

何故か坊ちゃん呼びになっていることはともかく、まずは状況を知りたいので中を通して貰うように頼み込む。

 

「ええ、もちろん。めぐみん殿も中へ」

 

昨日の死闘はいったい何だったのやら、執事の爺さんからしたらあの戦いはあの時点で終わっており特に気に留めることではない様だ。

 

「随分と気に入られていますね、何かあったのですか?」

「あーあれか?色々あってちょいと殺し合いをした感じかな…」

「はぁ…いったいあなたは何をしているんですか」

 

聞かれたのでありのまま起こったことをオブラートに包まずに説明したところ、いつもの様に溜息をつかれて呆れられてしまった。

 

「まあまあ、ほらゆんゆんの部屋に着いたぞ」

「それはそうとなぜ洋服屋の物干し竿を持っているのですか?確かにフォルムが我々の感性に触れるのはわかりますが、わざわざこのタイミングに盗んでくる物とは思えません」

 

部屋について彼女を呼ぼうとした所でめぐみんに引き止められる。

しかし何故このタイミングなのだろうか…

 

「これか?これはアレだよ。紅魔族の秘密兵器って奴だ」

「秘密兵器?この物干し竿が?とうとうカズマもおかしくなりました?秘密兵器と言うものはこの爆裂魔法を言うのです‼︎」

 

ビシッと上に杖が持ち上げられ詠唱の前駆段階である杖に収められたマナタイトの輝きとめぐみんの目が赤く光り始めた。

 

「分かったからやめてくれって、ここで放ったら洒落じゃなくなるからさ」

「わかればいいのです、それでそれが本当に秘密兵器なんですか?」

「ああ、それについてこれから3人で話そうかと思ってな」

 

そう勿体ぶりながらゆんゆんがいるであろう部屋の扉をノックする。

 

 

「はーい」

 

返事と共にガチャリとドアノブが捻られゆんゆんが現れる。

 

「よっ」

「ああ、カズマさんにめぐみん二人とも無事だったんだね…」

 

少し目を潤ませながら、とりあえず皆の無事を確認し喜び合う。

 

その後、互いに言葉を交わしながら情報を集約しようと思い彼女の部屋に入ると、備え付けられてあったテーブルを囲うように座りこれからに着いての話をしようと会議を始める事にした。

 

「それじゃあ、話を始めようか」

 

ねりまきの話では王都の騎士団が派遣されるらしいが、そいつらがシルビアを討伐できるとも限らないのだ。

それにこんな時間帯に派遣されるかどうかも怪しい所だ。

 

ならばその前に俺たちで何かできるかもしれない。

決してゆんゆんの親父さんや里に恩を売ろうとか、そんなやましいことはないのだ。

 

 




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