この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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ゴブリン狩り(帰路)

ゴブリン退治を終え、隠していた荷物を回収する。後は帰るだけだが、馬車の時間は明日の朝まで無いのでとりあえず小屋に戻る事になった。

 

「やっぱりか…」

 

今までうまく行き過ぎていた事に少し違和感を覚えていたが、どうやら嫌な予感は的中したらしい。

帰りの坂道を登る途中にポツンと、俺達を待ち伏せるかの様に黒いサーベルタイガーの様な大きな牙を持ち合わせた猛獣が居た。

 

「なあゆんゆん…あれが初心者殺しか?」

 

奴から目を逸らさずに彼女に問いかける。多分俺の予想は正しいが、彼女に確かめなくては気が済まなかった。それ程までにあの猛獣は黒く恐ろしい。

 

「そうです…あれが初心者殺しです」

 

初心者殺しに相対しながらも、体勢や息遣いに全く持ってブレを出さずに彼女は答えた。

落ち着いているとは言え彼女はアークウィザード、元は後方に立つべき立場である以上、前に出すわけにはいかない。

左手で彼女を下がらせ剣を構える。無理矢理呼吸のリズムを整え手足が動く事を確認し、互いに距離を詰めていく。

対する初心者殺しも彼女から何かを感じ取ったのか、警戒しつつこちらに滲み寄る。

互いが睨み合って早数秒、この緊張状態を打ち破ったのは彼女の魔法だった。

 

「ライトニング」

 

先程とは違う中級魔法、彼女の手から雷撃が前の俺を越えて初心者殺しに向かって放たれる。

初心者殺しはそれを軽く避け、着地の衝撃を利用して彼女に飛び掛かる。

 

「ファイヤーボール‼︎」

 

彼女はそれを見越して火球を飛ばす魔法を発動する。火球は空中にいる初心者殺しに一直線で向かうが、奴は身体を捻りそれを回避した後、体勢を立て直す為に一旦後方に下がる。

 

「カズマさん…上級魔法を使います、暫く時間稼ぎをお願いします」

 

彼女は先程のやり取りで中級魔法では太刀打ちできないと思ったのか、俺にそう言い残し後方に下がるとそのまま呪文の詠唱を始める。本来ウィザード系の職業と組む場合は前衛が惹きつけその隙に魔法を唱えるのがセオリーだ。

不味いな…俺の頭にはあの獰猛な生物を倒す術どころか足止めする方法が見出せない。突っ込んでも避けられたら彼女の守りが無くなるし、かと言って止まっていても近付かれる。

そんな俺の考えなどお構いなく、初心者殺しはこちらに向かって来る、奴にはもはや俺など眼中にないかの様にスピードを上げる。

こっちは無視かよ。

焦りにも似た感情に支配される、ここで彼女がやられれば全てが終わりだ、考えろ!何でもいい!何か使えるものは‼︎

 

「こんチクショウ‼︎」

 

ヤケクソ気味にかつ無理矢理に彼女と初心者殺しの間に入り、魔法を唱える。

 

「クリエイト・アース」

 

これはふと思いついた作戦、しかしながら確実性の無い無謀な賭け。

唱え終わると手の平にサラサラとした土の様な砂が握られ、それを彼女に飛びかかった初心者殺しの顔面目掛けて投げる。

 

「ウィンド・ブレス」

 

投げられた砂は風に乗せられそのまま初心者殺しの目に直撃する。

目に直接砂風をぶつけられ、流石の初心者殺しも体勢を崩し地面に叩きつけられ悶絶する。

 

「カズマさん、下がってくだい‼︎」

 

詠唱が終わったのか彼女の呼びかけに反応し後ろに下がる。

 

「ライト・オブセイバー」

 

唱えると、彼女の挙げていた手の平に光が溢れ出し一つの柱となる。これは初めて会った時に彼女が使用した魔法、改めて見るとその規模の大きさに足が竦む。

生成された巨大な光剣を安定させると、地面でもがいている奴に向かって振り落とす。

目が潰されていても何かを感じ、もがきながらも体勢を変えるも、それは叶う事はなく目の前に出現した圧倒的な出力を前に成す術も無く蹂躙される。

こうして、恐れていた初心者殺しの一件はあっけなく終わった。

ふぅと溜息を吐き、持っていた剣を腰の鞘にしまい置いておいた荷物を拾いあげ肩に掛ける。

 

「何とかなりましたね…このままカズマさんが食べられないか心配でしたよ」

 

うー、と緊張が解けたのか背中を伸ばし呼吸を整える。

 

「でも、面白い魔法の使い方しますね、ゴブリンの時といい。里の皆さんは上級魔法でパパッと一掃してしまうので…」

 

両手の平を合わせながら俺を褒め称える。いや、褒めてるのかこれ?

 

「何と無くだよ、何と無く。こう、何て言うかよく分かんねえけど思いついた感じかな?これからも魔法剣士カズマさんに期待あれって感じかな?」

 

これは下級魔法を覚えた時にふと、思いついた事で。よく漫画である魔法のコンボ技、炎と氷の魔法を合わせて無に帰す魔法とは行かなくても良いところまではいくだろうと思ったが、何とかなった様で。

 

「これなら中級魔法も楽しみですねって、言いたいところですけど…多分カズマさんのステータスですとあまり威力が出ないと思いますので他のスキルをお勧めしますよ。それに魔法なら私が居ますから‼︎」

 

俺の隣を歩いている少女は、とんでもない笑顔で恐ろしく残酷な事を口にする。ついでに最後に自己アピールしてやがる。

 

「スキルの事は一旦置いといて、取り敢えず帰ろうか」

 

今回の戦いでだいぶレベルも上がりスキルポイントも余裕が出るくらいには溜まっている。一旦帰りまたクリス達に頼んでスキルを教えて貰うのも良いかもしれない。

 

「そうですね、何だかんだ言って一泊してますからね。このままあそこで一泊してから朝の便で帰りましょう」

 

またボードゲームしましょうと言い出す彼女に、いい加減飽きるだろうと突っ込みながら帰り路を進む。下手に幸運が高い俺は運の要素が強いゲームには勝ってしまうので、負けず嫌いの彼女に再戦を迫られるのである。

クタクタの体を引きずって先程の小屋に着くと、疲れが溜まっていたのか壁に寄りかかり、そのまま落ちる様に眠りについた。

 

 

 

 

夜中ふと目が醒める。

部屋が暗い事からまだ夜だと判断出来る、何時もなら二度寝する所だが今回は状況が違う。

常に発動する敵探知が反応したのだ。これは俺自身に悪意や敵意を持った者を自動的に判断し知らせる便利な能力である。

敵が居るなら仕方ない、後々煩いかもしれないが彼女を起こし退治しないと行けない。アクセルの街みたいに高い外壁があるならともかく、ここはただの小屋で多分何かしらの効果は施されているのだろうが集中的に狙われたら不味いのだろう。

起こそうと思い彼女の布団に近づいた所で気付く。

布団自体は昨日と同じ所に引かれていたが、そこには彼女が居なかった。

暫く思考が停止する。

何故だ?可能性は二つ、一つは先に敵に向かっているか、もう一つは単純に夜風に当たっているかなどのエトセトラ。戦闘音が聞こえないから多分前者は無いだろう、しかしこのままだと彼女も一応そうなのだが、俺の命が危ない。

ここで取るべきことはただ一つだろう。そう、ここから出て闘うのみ。

敵探知の反応から、相手の大きさは先程のゴブリンより大きいが脅威度は初心者殺しよりも数段劣る。完全勝利は出来なくとも彼女が戻って来るまでの時間稼ぎが出来れば大丈夫だろう。

襲撃までのプランを頭の中で練っていく、こればかりはゲームで学んだ知識が役に立つ。

いくつかのパターンを作り終え、剣を腰に下げるとそのまま裏口から外に出ていく。その後潜伏を使いながら叢や茂みに入り周りを観察する。

小屋の正面入り口にそびえ立つ様に、先程のゴブリンよりも大柄で2メートルは超えるであろう巨漢がそこに居た。姿はゴブリンなのだが成長したのか又は奴らのボスなのか見た目のベースとなっている物はゴブリンである。

興奮し、表情は遠くて見えないが雰囲気から見て多分怒っているのだろう、ベターにも持っている棍棒を振りながら雄叫びをあげる。既に小屋には誰も居ないしこのまま朝まで待っていても良いのだが、彼女の荷物がそのまま残っている。あの中には彼女の大切なのかよく分からんが色々入っている、それは何とかして守らなくてはいけない。

潜伏の効果は依然として俺の姿を隠している、しかしこれは一度存在を知覚されてしまえば効果が消え、再び認識の外に出なければいけなくなってしまう。なので必然的に初発の一撃でどこまで行けるのが重要になる、俺のレベルが低くても此処は一応アクセル付近に分類される、そうであるならあのゴブリンでもこの剣で傷をつける事は可能だろう。

残るは俺の覚悟だけだろう。腰にかけている剣に手を当て重くなった腰を上げ、ゴブリンから見て後方に位置する様に回り込む。相対的に見て近づくので先程よりゴブリンを観察できやすくなる。

首元には鎖を編み込んだものか頑丈そうなマフラーの様な物を巻き、頭には他の冒険者から剥いだのか兜見たいな物を被っており重要な器官は守られている様だ。

しかし奴の体の構造は人と殆ど同じだろう、ぱっと見の印象ではゴブリンの筋肉の構造は人と同じ様に伺える。ならば内臓の位置も自ずと予想できる。体が大きい分威力は大きいが、弱点もまた多くなるのだ。

 

「よし‼︎佐藤和真覚悟を決めろ」

 

両頬を叩き自分自身を鼓舞すると腰の片手剣を引き抜き、ゴブリンの足元に向かって走りだす。距離にして数メートル、しかしこの数メートルで気づかれてしまえば全てが終わる。

ゴブリンの足元に近づき、すぐさま剣をゴブリンの右アキレス腱に突き刺し切り抜ける。

バチン、という張り詰めたゴムが切れて収縮する感覚が手元に感じ、支えを失ったゴブリンは前方に手を着き倒れる。勢いそのまま反対を切ろうとするが流石のゴブリンもそこは察知したのか棍棒を横に凪防ぐ。

 

「おわっ」

 

予想の一つのパターン通りの攻撃に対し後方に下がる事で回避し、その途中にクリエイトウォーターとフリーズの合わせ技を使い、ゴブリンが着いていた手と右足を一時的に地面に凍らしつけ動きを封じる。

しかし、こちらの体勢を整える間に、奴は咆哮と共に力を入れ氷を砕き体を起き上がらせる。ゴブリンの右足はアキレス腱を完全に断たれ、膝を軽く曲げ棍棒を杖代わりにし立っている。潜伏の効果は完全に失われ正面切って奴と正対する。

アキレス腱を断たれたという事は、走る事は構わずにその場に立ち尽くす事になる。つま先を上げ踵打ち歩行になるが歩く事は可能だろうが、膝が曲がらなくなる為隙だらけになるので多分それは無いだろう。

此処で遠距離系のスキルが無い事がいたたまれるが、今無い物をねだっても仕方ない。

再び剣を持ち直し構えると、奴も迎え討つつもりだろうと右膝をつき、空いた手で棍棒を構える。

奴の右足を先手で破壊出来たのはまさに僥倖だったと言えるだろう、踏み込みが出来なければ威力は大分落ちる、打撃武器は下半身と上半身の連動が重要となる、踏み込みやステップを使えなければおおよそ攻撃方向は限られてくる。

 

「覚悟しろよ」

 

構えた剣を片手に、奴に走り突っ込んで行く。

奴は右手で棍棒を振りかぶりそのまま下ろす、右で振りかぶったという事は必然的に右に隙が出来る。近づき振り下ろしきる前に奴の右側に跳ね、躱すと同時にサイドに回り込み、奴の脇腹に剣を突き刺しすぐさま抜く。

体に異物が入るのは相当な苦痛だろう、奴は雄叫びをあげると今度は棍棒を右に払う。それを事前に読んでおき奴の背中から反対から回り込んで左側に逃げる。あの棍棒を受ければいくら足が使えないと言っても俺の体を破壊するだけの威力はあるだろう。

回り込んだ先で奴の左脚の腿に剣を突き刺しすぐさま抜く。俗に言うヒットアンドアウェイ戦法、レベルが上がったと言っても奴の一撃が致命打なら当たらないに越した事はない。

次の攻撃が来る前に奴から離れ再び距離を置く。

次の手を考えていると、ある事を思いつく。人間一つの考えが出てしまうとその思考に執着してしまうのだろうか、その考え以外に戦法が思い付かなくなる。

一か八かの勝負だ

刺された場所を腕で抑えながら蹲る奴に近づくと、俺に気づいたのか押さえていた手を離し棍棒に持ち替える。

今度は左に振りかぶる、横薙ぎが来るだろう。ゲームだったら上に飛ぶかローリングによる回避が無難だが生憎この世界にそんなものは無く、棍棒のリーチのギリギリ手前で止まる。

 

「黒炎よ」

 

奴が棍棒を振り切ったと同時に炎を放出する。出力は平原で放ったものよりやや強くしたものである、出力の他にも色々数値があって弄れるのだが、今回は実験なのでライター位の火力を想像する。

ボウッと、着火する様な音共に前方に黒い火炎球が放たれ、棍棒を振り切りガラ空きになった奴の懐に入るとあっと言う間に体全体に広がり、火炙りの刑にされた罪人の様になる。

着火からの燃え広がるスピードとその火力に呆然としてしまう。草木ならなんとなくわかるがこの程度の出力であの巨体を火達磨に出来てしまう。流石チートだと言われているだけはあるが、もし間違いが起きた事を想像すると脚が竦む。

奴は全身火達磨になりまさに断末魔をあげながら火力が足りなかったのだろう、一瞬で燃え尽きる事はなく苦しみもがいている。そのお陰か、単に辺りが何もない燃えない土の地面なのか周りに燃え移る事はない。

しかしその考えはすぐ後悔に変わる。燃え消える事ない炎を消そうともがいている奴の棍棒がいつのまにか俺の横に流れていた。

 

「なっ⁉︎」

 

咄嗟に剣を間に挟む、炎の燃え移りは防げたが威力は殺せず、そのまま側方に吹っ飛ばされる。数メートルの浮遊感と共に側方に木にぶつかりそのまま地面を転がる。

 

「ーーっ⁉︎」

 

視界が一瞬真っ白になり、あまりの激痛に肺の中の空気が漏れ出る。

マズイ、これはかなりヤバイ。

左肩が外れたか腕の骨が折れたのか、ぶつかった左上肢を動かそうとするだけで激痛が走る。

幸い疼痛はまだ残るが、動かさなければ何とかなりそうなので右手で抑えながら立ち上がる。剣は弾かれ何処かに飛んでいる。

よろよろと起き上がり周りを確認すると、先程暴れ回り火を消そうとした奴が黒焦げの状態でなお燃え続ける死骸となっていた。

小屋はあれだけ暴れまわったにもかかわらず、奇跡的に無事で今もそこに佇んでいる。であれば中の荷物も無事だろう、これで何とか彼女に顔向けできそうだ。

ゴブリンは死に周りが安全になったので気が抜けたのか、意識が保てなくなり。

俺はその場に倒れ込んだ。

 

 

 

薄い意識の中、揺られている様な揺動感に心地良さを感じつつ目が醒める。

先程まで暗かった周囲が明るくなり天井が山の小屋に切り替わっていた。多分彼女が運んでくれたのだろう。その証拠に看病に疲れたのか、俺が寝かされている横で彼女が壁にもたれかかりながら眠っていた。

ゆっくり上半身を起き上がらせると左手が動かない事に気づく。再起不能になったのかと思い視線を落とすと、そこには拾ったそこら辺の枝を上手く加工したのか当て木と三角巾がなされていた。これも彼女がやったのだろうか?

 

「…うっ…あっカズマさん起きたんですね‼︎良かった…このまま起きないんじゃないかと思いましたよ…」

 

俺の覚醒に気付いたのか少し泣きそうで大袈裟に彼女は騒ぐ。

 

「ありがとうなゆんゆん、色々迷惑掛けちまったな…」

 

女の子に色々やらせてしまい何だか恥ずかしくなり、頭を掻きながら誤魔化す。

 

「いえいえそんな‼︎私こそすいません…夜に寝付けなかったので小屋の周りの見周りついでに少し散歩してたら道に迷ってしまいまして…何とか知っている道にたどり着いて帰って来たと思ったらカズマさんがボロボロになって倒れて居たので…」

 

その後何とか応急処置を済ませてここまで運んで来たらしい。彼女ながらとても器用な事をする。

で、結局何があったのでしょうかと、彼女はこちらに質問する。

 

「夜ふと目が覚めてな、それと敵探知が反応したのに気付いて外に出たら大きなゴブリンが暴れそうだったから何とか追い払ったんだ」

 

闇の炎については触れない方がいいだろうと、最後の方をはぐらかす。

 

「追い払ったて…あの黒焦げの跡は何だったんですか?」

「それな、それは何だ…油をぶつけてティンダーで燃やしたんだよ、魔法の応用で使えると思ってビンに詰めて持ってきてたんだよ。俺は途中意識がなくなったからてっきり逃げたのかと思ってたんだけど、あのまま燃え尽きたんだな」

 

嘘に嘘を重ね、彼女の追求を逃れる。その後もいくつかの問答が続くが何とか誤魔化し切ったのは他の話。

その後馬車の時間も近かった為急いで馬車に乗り、アクセルへと帰った。

 

 

 

アクセルに着き馬車の操縦士に挨拶を済ませ、一緒に乗車していた人達に別れの言葉をかける。流石のゆんゆんも帰りの乗車券を貸し切ることは出来ずに先客と同室になり幾らか話す事が出来た。

因みにゆんゆんは俺の陰に隠れてこそこそしていた。

馬車から降り、所持金がほとんどない事に気づく、流石に寝泊まり移動費は馬鹿にはならず俺の経済を圧迫する。このままだと休む場所どころか銭湯にも行けない。

暫く自由行動ですね、と何処かに行こうとする彼女の手を掴む。

 

「先にギルド行かないかゆんゆん?」

 

いきなり手を掴まれビックリしたのか少し跳び上がったと思うと

 

「ちょっと待ってください、せめてシャワーを…」

 

彼女は申し訳そうに俺に告げるがゴブリンの討伐数の確認に冒険者カードが必要なので、無理矢理に彼女の手を引っ張っていく。

 

「えっ!ちょっとカズマさん⁉︎待って‼︎分かりましたから少しゆっくりに‼︎」

 

騒がしい彼女を後ろにやや駆け出し気味に道を進む。これは昨日居なかった復讐ではない、断じてだ。

ギルドの扉を潜り酒場の人達に挨拶を済ませ、そのまま受付へと向かう。

 

「あ、戻られたんですね…ってどうしたんですか?」

 

受付嬢は俺の姿を見るとビックリしたのか持っていた書類を落としそうになる。しかしそこは受付嬢、絶妙な身のこなしで体勢を整える。

 

「ゴブリンの親玉が居まして…」

 

あぁ、成る程と受付嬢は納得し、俺達に冒険者カードを出すように催促する。

 

「成る程、ナイトゴブリンが居たんですね。ほかにもゆんゆんさんのには初心者殺し…結構大変でしたね。」

 

2人の冒険者カードを確認し、何かを察したのか受付嬢は俺達を労った。

 

「ナイトゴブリンやその他を討伐されましたので、報酬に少し上乗せさせて頂きますね」

 

そう言い、嬢は冒険者カードと数十万エリスを俺達に差し出す。それを受け取りゆんゆんと2人で分ける。

 

「カズマさんはこの後予定はありますか?」

「特に無いけど…」

 

彼女は分けた報酬金を受け取ると少し不安そうに聞いてくる。何だろうか、これから何をするにもこの左腕は言う事を聞かないので落ち着くまで待って欲しいのだが。

 

「その腕なんですけど…」

「これか?気にしなくて良いよ、戦いによって出来た名誉ある勲章だからな。まぁ、暫くすれば大丈夫だと思うし、そろそろキャベツの報酬も出るしゆっくり休むさ」

 

ここに来てからずっと動きっぱなしな事もあるし、少し休んでも大丈夫だろう。

しかし彼女は引き退らずに。

 

「教会に行きましょう!あそこのプリーストさんは治癒魔法が得意なのでカズマさんの腕も治して貰いましょう‼︎」

 

自分の不在時に起きた怪我と言うことが原因で俺に対し罪悪感を感じているのか、彼女は申し訳なさそうにかつ大胆に俺の健康な方の腕を引っ張りながら教会に向かう。

 

「ゆんゆん⁉︎ちょっと待ってくれ流石にここで手を繋ぐのは…」

 

酒場の周りの目線が奇異のものを見る目から生暖かい物へと変わっていく。

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