誤字脱字の訂正ありがとうございます。
今回は久しぶりに打ち込んだので色々とグダグダしているかもしれません…
「成る程、そのまま慰めていたら寝てしまったと言うわけだな」
「ああ、そうなるな」
あの後気づけば寝てしまって居たので仕方なく俺の眠っていたベットへと彼女を運び寝かせる。
ダクネスは俺が向かった後もそこで待っていたらしく驚いた様な顔をしながらも俺を迎えてくれた。
「それでアイリスが記憶を取り戻したけどダクネスはこれからどうするんだ?」
ダクネスと示し合わせた作戦はアイリが記憶を失って居る事を前提としたものなので、彼女が記憶を取り戻した以上何かしらの変更をするのかそれともこのまま彼女の存在を隠しながら作戦を進行しなくてはいけないか決めなくてはいけない。
「そうだな…私としては事を全て終わらせてからゆっくりと戻そうかと思っていたのだが…こうなってしまってはな…」
流石の彼女もこうなる事は予想して居なかったのか俺が問いかけると、彼女にしては珍しく少し戸惑っていた。
「取り敢えずは王都攻略作戦を考えよう、アイリスの事はその後で考えれば大丈夫だろ?」
「ああ、そうだな」
結局アイリが記憶を取り戻そうが戻さまいが状況が変わる訳では無いので、今は目の前の事に集中しなくてはいけない。
王都の地図をテーブルの上に広げ、実際に見てきたであろうダクネスの話を合わせて情報を補完していく。
「成る程な…おおよそはこれでいいな。アイリスはダクネスに任せていいか?」
「ああ、今度こそ必ず守って見せよう」
アイリの記憶が戻った事は彼女が戦力に加わった事と同義で今の俺たちに足りなかった個の力を補う事ができる。しかし今回の戦闘でアイリを失ってしまえば作戦自体の意味が無くなってしまう。
本来の作戦通りこのまま後ろに引かせておきたいが、彼女が王女である事が王都側に漏れている可能性が否定できない以上一人にするのは危険すぎる。
彼女自身の実力はダクネス曰くこの国の冒険者の中でもトップレベルに君臨する程のものらしく、即戦力になるとの事だ。
俺の教えてきたものに失っていた戦闘経験が加わったのであれば、そこら辺の敵に殺される事は無さそうだが…
「問題はお前たちを追い詰めたローブのやつの存在だな、あいつが居なければ前回もやられる事は無かったんだよな?」
「ああ、あの王兄自体は特に身体能力が高い訳ではないからあのローブの男がいなければ問題はない筈だったんだ」
未だ謎が多いローブの男。
ダクネスに情報を集める様に言ってここまで情報収集させては居たのだが、その存在の尻尾は疎か影すら掴めずにいる。
ダクネスはともかく全盛のアイリですら手が出せなかったと言うのは現状不安要素以外の何者でも無いのだ。
どんなに作戦が上手くいったところでそいつにアイリを捕らえられるか殺されるかされてしまえば全てがひっくり返ってしまう。
案の定今回の作戦は俺が単独で先行しなくてはいけない。アイリを連れて行く事は出来ないのでダクネスに警護してもらう事になる。
作戦を簡単に纏めると俺が先行し場を混乱させながらダクネス率いる本隊が城に攻め込むというものになっている。
本隊に居るダクネスに同行する事になればアイリの周りには兵士の集団が集まって居ると言うことになるので、最悪そのローブに遭遇した場合でも数で押し切る事ができるだろう。
できれば合流する前にローブと接触出来ればいいのだが…
当日に何処に誰かが居るなんて事は予測出来ない以上、出来る事は出来るだけ準備したいがその戦力も時間も今の俺たちにはないのだ。
「作戦はそれで大丈夫そうだな。後はアイリスの状態だな、ダクネスから見てどうだった?」
「ああ、急に記憶が戻ってパニックにはなってはいたが、すぐに自分を取り戻して冷静になっていたぞ。それからさっき言ったようにはずっとお前の前で座っていたな」
「成る程な…」
流石は一国の王女だがやはりまだ不安が残るところはある。
眠っている彼女の頭を撫でる。
早く決着をつけてアイリに安全な生活を送らせ無くてはと自身を鼓舞する。
「ここを出発するのは明日の夜になる」
「そんなに遅くて大丈夫なのか?」
「ああ、問題がない訳ではないのだが、武器や人員の派遣にどうしても時間がかかってしまうのだ」
「そうか、というかそうだよな」
アクセルからこの関所までの距離はそこまでないのだが、ここから王都となるとそれなりに時間がかかってしまうのだ。
「ああ、すまないが今は待つ事しか出来ない」
外の景色を眺めながら彼女はそう言うと、伝令の者が来たなと付け足し部屋をにした。
「…」
疲れてベットに眠る彼女を見ながら考えに耽る。
全てが順調に進んだとして彼女が得られるものと言えば身分の保証と新たなる試練だろう。
出来る限り彼女に教えられる事は教えてきたが、一国の主である彼女が背負うものを考えればそんな事は付け焼き刃でしかないのだろう。
今回の戦で勝利を収めれば王兄についていた貴族などの処分など多岐にわたる要因により、この国の勢力図が変わるだろう。
根本的にはダスティネス家とシンフォニア家の両家が牛耳る事には変わりないが、問題なのはその周辺の関係でそれにより国の経営関係などの引き継ぎをしなくてはいけなくなりそのゴタゴタを突かれてしまう可能性もなくは無い。
もし俺が彼女に敵対する組織であったなら必ずその隙を突くだろう。
起こる事は起きるべきして起こるので、今憂いたところで何かが変わる訳ではない。考えることを一旦辞めて何かする事にした。
「お兄様‼︎関所中探して姿が見えないと思ったら、こんな所にいらしたのですね」
「おお、アイリか。目が覚めた様だな」
何だかんだ言って怪我の具合が悪くなると困るので何もせずに、外で作った椅子に座りながら武器や道具の手入れをしていたのだ。
「ララティーナから聞きませんでしたか?今お兄様も叔父勢力に命を狙われているのですよ」
「そう言えばそんな事言ってたな、まあでも今は油断してないし感知スキルがあればやられる事もないだろ?」
流石の俺も外で丸腰でいる訳は無く、きちんと武装を用意しながら感知スキルで周辺の警戒をしているので例え何が来ようと迎え打つ事ができる状態にある。
まあ、山で襲ってきた爺さん見たいなチートを使われたらひとたまり無いが、そんな奴が来たなら関所の中に居ようが大して変わらないだろう。
「…はぁ、お兄様はああ言えばこう言いますよね…」
「おう、分かってくれて何よりだよ」
呆れながら溜息を吐く彼女を横目に見ながら投擲用兼小細工用の短刀を研ぎ始める。小道具だと思って侮っていると窮地に足を掬われるのでこう言ったタイミングで手入れをしなくてはいけない。
「…もう仕方ありませんね」
そう言いながら彼女は近くに生えている木を細剣で一瞬のうちに切り倒し、ものすごいスピードでばらしたかと思うと勢いそのまま小さな椅子を組み立てそれを俺の隣に立て座った。
どうやら俺と同じ事ができるとアピールしたかったのだろうか、ドヤ顔をしたのち俺の横を陣取りもたれかかってきた。
「これでひとまずは安心ですね」
一体何が安心なのかわからないが、彼女が近くに居てくれる分には守りやすいので問題は無い。ただ周囲には殆ど正体がバレている様なものなので後々変な噂をたてられないかは心配ではある。
彼女に関して色々聞きたい事があるが、それを今の彼女に問い詰めると言うのは些か酷と言うものだろうと思うので、今はまだただの俺の妹として扱うのがいいのだろう。
やらない善よりやる偽善とは言うが、結局の所ただの自己満足だろう。
「それで体調は大丈夫なのか?」
「はい、問題ありません」
道具の手入れの佳境が過ぎたあたりで隣で眺めていた彼女に話しかける。
「それじゃあお手合わせ願おうかな」
「いいのですか?病み上がりで本調子じゃないとララティーナから聞いていますけど」
「大丈夫大丈夫、そこまで本気のやつじゃ無いから」
彼女が大丈夫だと言っていたので、折角だから組手の相手をしてもらう事にした。
ルールは簡単で彼女が椅子を作った時に余った木材で作った木刀を使ってどちらが一本を取るのかという至極簡単なものになっている。
記憶が戻った以上彼女は俺の知るアイリでは無くなってしまっている。
ステータスは変わらないが、自覚していないと発動しないパッシブスキルというものも存在する上に今まで学んできた知識も追加されているので、昨日の彼女と思って相対しようものなら痛い目を見るのは必然だろう。
覚悟を決め彼女と向き合う。
感知スキルは対象の脅威を気配の大きさとしてある程度だが測れる機能がある、それに準じて彼女の存在を測るとその規模は今までとは比べられない程強大だった。
…これは死んでしまうかもな。
あくまで模擬戦なので死ぬ事は無いのだが、それでも強大になった彼女の相手となるとそれなりに覚悟が必要になる。
「それじゃあこの石が地面に落ちたら開始で」
適当にルールを決め、拾った小石を上に投げる。
クリスと模擬戦をする時によく使っているスタートだが、たまに蹴飛ばして俺の方に飛ばして来たなと古い思い出が頭をよぎり、そのまま小石が地面に落下し開始のゴングが鳴らされた。
「行きます‼︎」
彼女が丁寧にそう宣言しながら木刀を守りから攻めの構えに直すと俺に向かって一直線に向かって走り距離を詰めたかと思うと視界から消えた。
「危な⁉︎」
視界から消えたということは後ろに回られたか、懐に潜り込まれたかの二択だろう。まあ上空という線はあるがそこまで対応する余裕はないのでそれは無いと思いたい。
感知スキルは飛び飛びだが、後ろに気配を感じる事は無かったので多分懐に回られたのだろう、下を向いて確認したいがそれをすれば全てが後手に回るだろう。
まさか初手でやられるなんて事は俺のプライドが許さないので、なんとか跳躍し彼女の下段斬りを回避する。
そして彼女には悪いが、その肩を踏みつけ彼女の後方へと回避しすれ違いざまに背中を斬りつける。
「流石お兄様ですがまだ甘いです‼︎」
彼女は攻撃する手を止めてはおらず、横なぎをそのまま続けながら一回転し俺の斬り付けを受け止め、そのまま踏み込みながら宙に浮いている俺の体を前方へと押し込む。
「なっ⁉︎」
体勢を崩され、その隙を狙うように木刀の切先がこちらに向かって放たれる。
反撃しようにも空中では踏ん張る地が無く、なすがままにされてしまうので、風の魔法を利用しすぐさま体を捻り何とか連撃の連鎖から抜ける。
地面に不完全な形で落下して少しダメージを負ったが、それでも何とか体勢を立て直して向き直る。
「流石お兄様ですね、この型に嵌って抜け出したのはお兄様が初めてです」
「お褒めに預かり光栄だよ」
謎のマウントの様な褒め言葉を戴いたので適当に返す。
…やはり記憶を取り戻した為、技のキレや種類威力全てが今までよりも向上している。
事前の準備や搦手が使えないという言い訳があるが、今まで彼女に戦い方を教えて来た身としてはここで無様に負ける訳にはいかないのだ。
再び彼女が構え直したかと思うとまた視界から消え、気づけば目前へと迫っていた。
えい‼︎と叫びながら放たれた突きを直前で躱しつつ彼女の腕を掴みそのまま一本背負いし前方へと投げ飛ばすが、彼女はそれをブリッジの体勢で着地し身体を捻りながら俺を身体を巻き込む。
マジかよと思いながら、このままでは俺が投げられると思い腕を離し距離を取る。
何かしらの回避はして来ると思っていたが攻勢へと転じてくるとは流石の俺も思わなんだ。
しかし、俺のターンは終わっているわけでは無かった様なので、体勢を立て直している最中の彼女の足を払うように剣を薙ぐと、彼女は絶妙な体勢のまま身体を跳ねらせそれを回避する。
何という柔軟性を持った身体をしているのだろうか、女性の方が柔らかくなる様に作られていると聞くが、それは本当だったようだ。
攻撃を躱されあっという間に体勢を立て直され反撃を許してしまう。
続いて来るのは突きの応酬、彼女の木刀は細くその細剣故のフットワークの軽さを利用してか、物凄い速度で連続して突きが放たれる。
「マジかよ⁉︎」
まるで漫画の様な芸の細かさに一瞬心を奪われそうになるが、このままでは蜂の巣にされるので木刀を片手に持ちかえ、それら全てを上体の動きと空いた片腕で払い躱していく。
やはり細剣で軽量なため攻撃の威力は低く、側面から強化した状態での払い除け、少し痺れるくらいには衝撃があったがダメージを負う事は無かった。
剣を払い、隙ができたタイミングで自身の剣技を割り込ませるが、それを上体を逸らすような形で躱されるがそんな事は分かっていたので反撃のリスクを覚悟しながらもう一歩踏み込み追撃する。
そして彼女もそれを見なす事は無く俺の剣技に沿わせる形で剣技を放った。
「カズマ‼︎アイリス様を連れて何をしているんだ‼︎」
互いにやられる思ったタイミングでダクネスが割り込んできた。
これから決戦だというところで怪我なんてされたら溜まったものでは無いだろう。
「怒られてしまいましたね…」
「だな…」
二人とも互いに向けていた得物を降ろし、そのまま地面に座った。
模擬戦はダクネスの介入により中止となったので仕方なく武器を自然に還しシャワーを浴びることになった。
途中お湯が水になるなどアクシデントはあったが、特に何も無く行動を終える。
「お兄様〜」
「おう、アイリも終わったみたいだな。それじゃあダクネスの所に行くか」
結局やること言えば特に無い訳で、作戦の打ち合わせと言うことでダクネスの元へと向かう事になった。
「お兄様失礼します、えい」
「お…おう」
彼女はそう言いながら俺の左腕に絡みついて来た。
何だろうか、記憶が戻ってからかスキンシップが少し過ぎる様な気がするが、きっと家族がいなくなって心細いのだろう。
とりあえずされるがままダクネスの居る部屋へと向かう。
ダクネスに割り当てられた個室に行くわけにはいかないので一応司令室とやらに向かい、そこで最後の調整を行う事になっている。
「入るぞダクネス」
「カズマか、構わないぞ」
ノックをして中にいるだろうダクネスに問いかけると返事がすぐ返ってくる。
「さっきは随分と…アイリス様も一緒でしたか」
どうやらさっきの事を注意しようかと思ったがアイリが居たので怒るに怒れなかったようだ。
「それで作戦とはどの様な形になっているのでしょうか?」
「ああ、それがだな」
テーブルに王都の地図や設計図を広げながら先程ダクネスと共に計画した作戦を説明する。
「成る程、その様な話になっていたのですね」
うーむとどうしようか考え込むアイリを眺めながら彼女がどう返すか待つ。
「お兄様と離れるのはどうかと思うのですが、ララティーナはその辺りはどう思いますか?」
「そうですね、今回の作戦ではこの男が単独で行動する事によって出来た隙を突くという形になってしますのでアイリス様と同じ部隊に入れるとなると作戦が成り立たなくなるかと…」
俺が一人で侵入して色々と暗躍する事に関して些か不満があるのか、少し強めの口調でダクネスに問いかける。
「では私もお兄様に同行すると言うのはどうでしょうか?まだこちらの兵士達は私が私である事を確信している者は居ないのでしょう?」
「そんな…我が儘を仰らないでください、おいお前も何とか言ってくれないか?」
アイリが我が儘を言うのが珍しいのかダクネスが少し動揺しながらも俺に宥める様に促す。
「いいかアイリ、お前は俺たちのシンボルなんだから裏舞台に立たないで表に出ないといけなんだ。皆んなアイリのために戦ってるんだから分かってくれ」
「お兄様がそう仰るのでしたら…」
何とか彼女を説得し話を進める。
俺が教えた技が潜入系に富んでいるのでもしかしたら腕試しをしたくなっているのだろうか?
今回は無理かもしれないが、いずれ時間を見つけてやらせてやるのもいいかもしれない。
「細かい所も決まったし後は寝て待つだけか、明日の夜出発なんだよな?」
「いや、申し訳ないのだが時期が早まった。もう少し時間がかかると思っていた予定がすんなりといった様でな明日の昼前の出発になる」
「へぇ、まあ早いに越した事は無いからな」
明日はアイリを連れてのんびりと話をしようかと思っていたが、それは叶わないようだ。
まあ早ければ早いほど関所の件を悟られ準備されるリスクが少なくなるので悪くは無いのだが、俺としては何だかなといった感じだ。
「そういえばあのローブに関してについてだが、アイリは何か覚えているのか?」
正直あまりアイリに対してこの話は触れたくは無かったが、ローブのやつが全てをひっくり返す可能性を持っているのでここでわかる事は全て把握して対策を立てておきたいのだ。
ダクネスと二人で決めた時は数で押し切る形になっていたが、アイリが何か有益な情報を持っていればローブのやつを打破するキッカケになるやもしれない。
「お父様やお兄様を殺めた方ですね…彼と言っていいのか私には分かりませんが、その腕は本物でしょう」
「そうか…」
「私とララティーナ2人掛かりでも相手にならない程の実力となると他所の国の冒険者かもしれません。少なくとも今まで手合わせた人の中にあれ程の実力を持っていた方が居れば今頃騎士団で一目置かれているでしょう」
「そうだな、私も色々と稽古をつけて貰った事があったがあそこまでの実力者は居なかったはずだ」
「実力を隠していたとかそう言う事は無かったのか?」
「いや、それは無いと私は思う。騎士団の連中は悪く言えば自己顕示欲の塊みたいなもので実力を隠すなんて事はしないだろう、皆自身がいかに強いかと嘘までつく奴が居るくらいだ」
どうやら内通者では無い様だが、原則があれば例外があるというもの。
あれ程の実力を持つものがいれば、もしかしたら自身の力を周囲に隠し上手く立ち回ろうとする可能性もある。
よく脳ある鷹は爪を隠すと言うが、そいつも爪を隠している可能性がある。
「騎士団の上位数名は魔王軍幹部との戦いで亡くなったんだよな、残った上位の連中らの特徴を教えてくれないか?」
王兄と結託してクーデターを起こすには騎士団の監視の中何度も接触を図る必要があるはずなので、ローブの男に繋がる人間が必ず王都の内部に居なくては今回の事を起こすのは不可能に近い。
「そうだな…武器は見たことの無いものだったが、その装飾はなかなかなものだったな」
「そうなるとローブの方は貴族の出になると思います、騎士団に所属しているとは言え武器は消耗品なので見栄えに拘るのは貴族出の方達が多い気がします」
「成る程な、それで貴族出身の騎士はどれくらいいるんだ?」
二人に紙を渡しできる限りの名前と特徴を書いてもらう。
正直名前を言われてもピンと来ないので特徴をメインで頼むと伝えたが、意外にも貴族出の数は多くこれが階級社会かと嘆かずにはいられなかった。
「これ程までに数がいるのか…冒険者から騎士団に入るとか無いのか?」
「無いですね、基本的に冒険者は一攫千金の夢を追われている自由な方が多いので騎士団のような閉塞的な組織に入る方は早々いらっしゃいませんね」
「だろうな、貴族でない事にコンプレックスを感じるやつもいるかもしれないしな」
結局身分と言うものがあるのでどんなに実力が高くても身分が高い者を優先して昇格されてしまうのが現実なので、頑張っているものからすればたまったものではないだろう。
コネ入社の同期が何の功績も無いのに上司がそのコネ主となっている上役などにゴマをするために優先して昇格させるなどよくある話だ。
自由を求めた先に手に入れた力で入った騎士団で自由を奪われてしまったら本末転倒だ。
そもそも昔に冒険者を雇って騎士団に潜伏させていた可能性もなくはないが、既得権益もない冒険者出身の者がここまで融通を利かせられるとは思えない。
となるとやはり貴族出を疑った方がいいだろう。
その人となりが分かれば色々と対策が練れる筈なんだが、答えを導き出すには時間が足りなすぎる。
出来れば最初に俺と遭遇してくれれば勝てなくても時間稼ぎができるので嬉しいのだが、そう上手く行くはいかないだろう。
後回しにしていた案件に向き合ったはいいが、ここまで拗れるとは当時の俺も思わなかっただろう。
…こんな事ならゆんゆん達をアルカンレティアに押し付けないでここに呼んでおけば良かったと後悔するが、それはそれでややこしい事になりそうで怖い。
「取り敢えず、ローブの奴は闇雲に対策を立てないで当初と同じで数で押し切る案でいこう」
結局相手は魔王軍幹部ではなく人間一人なので圧倒的な数で攻めれば何とかなるだろう。
「作戦はこれで充分だろ、これ以上考えたら泥沼になりそうな気がする」
「そうだな、これだけ策を用意しておけば充分だろ。これ以上は現場の者達も覚えきれないだろう」
「考えすぎて頭が痛くなってきたから風に当たってくる…」
「あ、お兄様‼︎」
知恵熱というのだろうか、思考をし過ぎて少し頭が重くなっている気がしてきたので一旦外に出る事にする。
あの後もアイリを交えて作戦の最終調整を済ませたが結局思考の沼に落ちしまい泥沼化してしまったので早めに切り上げる事にしたのだ。
関所の屋上に出るとすっかり陽が落ちて夜になっていたので、夜風に当たりながら草原を眺める。
「いよいよ明日だな、アイリは大丈夫か?」
気づけば隣に居たアイリに問いかける。
「お父様も兄様も居なくなってしまいました、お母様は昔から居ませんでしたけど」
「ああ」
アイリはそう言いながら俺の手に自分の手を重ね抱きつく様に腕を絡ませる。
「それでも今の私にはお兄様が居ます、お兄様が居れば私はそれだけで充分です」
「アイリ…」
「だから私を置いてどこにも行かないでくださいね」
エヘヘと無邪気に笑う彼女の瞳はどこか濁っていた。
今回はリハビリを兼ねているので話があまり進みませんでした、次回王都奪還編です。