この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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恥ずかしい事に感想や評価のシステムがある事に気づきました。評価感想をして頂いた方、応援ありがとうございます。この調子で頑張って行きたいと思いますのでよろしくお願いします。



カズマの日常

握手を終え、ウィズと一緒に残りの魂達を退魔魔法で成仏させ、帰り道の途中で別れてアクセルに向かう。

 

「ウィズさんが良い人で良かったですね」

 

帰り道2人で草原を歩いていると、彼女が呟く。

 

「そうだな、状況が状況だったけど普通魔法ぶつけられて剣を当てられたら怒るよな。本当良い人で助かったよ」

 

交渉が上手くいき気持ちが高ぶっている俺を咎める様に

 

「あまり自覚が無いみたいですね…良いですか?リッチーは強力な魔法耐性や魔法の掛かった武器以外の攻撃の無効化、他にも触れただけで状態異常を起こすとても恐ろしい相手なんですよ」

「マジか⁉︎あんだけおっとりしてんのにそんな恐ろしい人だったのかよ‼︎」

 

リッチーの恐ろしさを踏まえて再び先程の事を思い返す…恐怖で足が震えそうだった。

ヤベェな俺、マジで良い人で良かった…

 

「はぁ、やっぱり無自覚だったんですね」

 

彼女は呆れた様に両手をあげる。

 

 

 

 

 

「は〜あ」

 

今現在、俺は酒場のベンチで座りながら休憩している。暫くすれば彼女との待ち合わせ時間になるだろうが、先程のドタバタの影響かなんだか疲れてしまった。

あの後、彼女と別れ馬小屋で一晩過ごした後、朝一番でギルドに行きウィズがリッチーである事を伏せながら昨日の一件を説明し、結局はゾンビメーカーは現れないとの報告を済ませた。幸いにも俺よりも早く来たウィズが事前に説明してくれていた為か、思ったよりスムーズに進み一応見廻りと言う形で報奨金が支払われた。

教会では流石のウィズも近づけなかったのか、話が行き届いておらず難航したがヒール等々の講義代金として先程頂いた報奨金を差し出す事で事なきを得た。

後はスキルポイントがたまり次第にウィズのお店に行けば一件落着だ。一応名刺は貰っているのでいつでも行けるが、なんか怖いので念の為ゆんゆんを連れて行こう。

 

「お待たせしました、待ちましたか?」

 

思い出に耽っていると、いつの間にか約束の時間になってしまい彼女が現れる。時計を確認すると時間丁度を示していた。

 

「いや別に、て言うか時間丁度だぞ…ってなんだその荷物は?」

 

椅子から立ち上がり、気になった彼女の荷物について尋ねる。現在彼女背負っているリュックはゴブリン討伐の際に比べるとやや劣るが、それでも大き過ぎる程だった。

こんなサイズプレゼン前の社員でも持たないぞ。

 

「これですか?中には雨具とか汗を掻いた時の着替えとか…」

 

流れてくる沢山の内容に頭が直ぐに理解する事を辞めた。何というか初めて遠足に行く心配性の子供の持ち物みたいだ、そして結局使わずに只の荷物になり後悔するのが目に見える。

 

「却下だ」

「えぇ⁉︎な、何でですか⁉︎もしもの時何かあったらどうするんですか?」

 

話している途中で遮られ尚且つ全否定され、流石の彼女も黙ってはおらず声を荒らげ抵抗する。

心配な気持ちは分かるが今回は買い物だ、前回みたいに何処かに置いて行けるわけでは無いのだ。

 

「ちょっと買い物に行くだけだろ、何時ものゆんゆんの荷物位だったらハンドバックだけで充分だよ‼︎」

 

背後に回りバックを掴むと、そのままもぎ取る様に後ろに引っ張るが彼女は意地でも離さないつもりか肩紐をガッチリ掴み丸まりながら抵抗する。

 

「いっ嫌です‼︎いつもはぐれた時はこの中の遊び道具で時間を潰しながら一人で帰るんですよ‼︎コレが無かったら私孤独に耐えきれなくなって死んじゃいます‼︎」

「あっ」

 

彼女の言葉に唖然としてしまい思わずバックを離してしまう。

 

「えっ⁉︎」

 

急に後ろからの引っ張りが無くなり彼女は勢いそのまま前傾に転がってしまい、重い音ともに酒場のテーブルに激突する。

 

「わ、悪いゆんゆん、思わず離しちまった」

 

多分頭をぶつけたんだろう、彼女は頭を抱えながらいてて…とその場でうずくまっている。

 

「安心しろよ、はぐれても探してやるし置いて行くことは無いからさ」

 

はぁ、と溜息をつき照れ隠しに頭を掻きながら彼女近付きながら手を差し出す。

 

「本当ですか?君誘ってないのに何で居るのとか言わないですか?」

「言わねぇよ⁉︎何処のイジメ集団だよ‼︎」

 

彼女のネガティブキャンペーンに唖然としながら引っ張り起こす、荷物の重みが加わっているのでかなり抵抗を感じたが何とか堪える。

 

「そうですか…えへへ、では一度部屋に戻りますので置いて行かないでくださいよ」

 

彼女は照れ臭そうに笑いながら荷物を背負いながら入り口に向かおうとした時だった。

 

「皆さんお待たせしました‼︎キャベツの出荷、集計が現時点を持って完了致しました。つきましては手が空いている方から受付へと報酬の受け取りをお願いします」

 

ギルド全体にアナウンスが響き渡る。座っていた者、昼間から酒を飲む者、その他有象無象の冒険者が挙って受付に向かった。

 

「うわぁ、こりゃ暫く取りに行けないな。しょうがない…ゆんゆん先に荷物纏めてきなよ、俺はここで空くのを待ってるから」

「わ、分かりました‼︎では行ってきます」

 

てててっと受付に向かう人たちの流れに逆らう様にギルドを後にした。

あの調子だと数時間掛かるな。

ボーとしながら長蛇の列を眺めていると、どうやらパーティーの代表者が纏めて受け取るらしいのか一人が大金を持ちながらテーブルに運び分配している。

五人パーティーで大体100万エリス位の札束…となると5人で割って一人頭20万エリスって所か、なかなかの儲け案件だったんだな。もっと真面目にやれば良かった。

クリス達の保護に回ったとは言え最後まで捕獲作業していたんだ、あのメンバー達よりかは儲かるだろう。

 

 

だいぶ列も回転したのか、幾分か人が減って来て彼女が戻ってきた。

 

「お、お待たせしました…」

 

急いで来たのだろう肩で息を切らせながら小型のバック片手に彼女が対面の椅子に座る。

 

「まだ列はあるんだからそんなに急がなくても大丈夫だぞ」

「それはそうですけど…」

 

そんなに出かけるのが楽しみだったのだろうか、普段と比べて落ちつきが無い。本当に今まで友達が居なかったのだろうか?

 

「そろそろ行ってくるから少し待ってろ」

 

そうこうしているうちに列は大分勢いを失い、先程までの人混みはバラバラに散っていった。

 

「お待たせしました、サトウさんですね」

 

受付の人は何人もの相手をしていて疲れたのか、遠くを見ながら少しふらふらしていた。

 

「ではこちら報酬の1000万エリスです。確認できましたらこちらに代表者、サトウ様の署名をお願いします」

「アッハイ…てえぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」

 

突然の事態に思わず大声で叫ぶ。

1000万って何だよ‼︎宝くじでも当たったのかよ⁉︎サラリーマンの平均年収の何倍だよ‼︎

 

「えっとコレ何かの間違いじゃ無いんですか?」

 

恐る恐る尋ねると、どうやら間違えではなく本当の事らしい。

 

「ええ残念な事に間違えではありませんよ、内訳を見ますとサトウさんが200万エリス、これは収穫された物の中に経験値が高いキャベツが多かったのが理由ですね。そして残りはゆんゆんさんのですね、私は遠くで見ていただけなんですけど最後の竜巻で纏めて収穫していたのが要因かと…お陰で生き残って他の地方に向かう筈だったキャベツまで収穫してしまい、キャベツ市場はこのアクセルで独占され価格が高騰しました。なのでざっくり見積もって800万エリスで合計1000万エリスに成ります」

 

ドン、と1000万の札束と、受け取り証明書の用紙が目の前に置かれる。普段ならサラサラと軽々しく書いていたものが、今この時だけはペンを握る手が重い。

 

「コレが1000万の重みか…」

 

受け取り証明書の説明欄を何度も確認する、もしかしたら何処かに移譲の旨が書かれているかもしれない、この薄っぺらい俺の人生史上最も書類を確認したがいつも通りの証明書だった。

 

「何だよ驚かせやがって、ほほいのほいっと」

 

先程の心配など無かったかの様にサラサラと署名を済ませ受付に渡し1000万の大金を受け取る。

ズシンと物理的な重さとはまた違う重さが手にのし掛かり手が震えだす。

 

「耐えろ…耐えるんだ俺」

 

他の奴に盗まれたりしない様に札束を抱え込みながら潜伏を使い人混みを避けながら彼女のところに向かう。

 

「おかえりなさい、どうでしたか?今回は沢山収穫した気がしますので自信ありますよ」

 

人混みの中誰も俺を避けてくれないので潜伏を解除しこそこそと人の間を縫って進むと彼女に見つかる。彼女的には自信がある様でウキウキしているのが目に見える…まあ実際とんでもない額なんだけど。

 

「ほらよ」

 

ドシン、と抱えていた札束をテーブルの上に降ろす。

 

「は?」

 

予想を超えた額の札束を目の前にして唖然としたのか、彼女の目は点になった状態で硬直している。

 

「それでコレがゆんゆんの分だな、大事に使えよ」

 

そこから俺の取り分である200万を抜き取り、ボンと残り800万エリスの札束を彼女の前に置く。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい私こんなに貰えません‼︎何かの間違いじゃ無いんですか⁉︎」

「間違いじゃ無いよ、これはゆんゆんの実力だよ」

 

悔しいが搦め手を講じたのにこれだけの差をつけられてしまった以上、内訳通りに渡す事が俺の出来る最大の礼儀である。

そして札束を前にしてワタワタと彼女が慌てふためいた後急に札束を数えたかと思うと、そこから300万を抜き取り俺に渡す。

 

「これは二人で行ったクエストなので、この報酬は二人の物にしましょう。誰がどう頑張ったとかじゃなくて二人でどれだけ頑張ったかが重要だと私は思います」

 

照れて恥ずかしそうに彼女は笑う。最初に勝負を仕掛けたのは君なんだけど、とは言わないでおこう。

 

「それもそうだな、俺たちは一心同体、辛い時も楽しい時も報酬も一緒に山分けだな」

 

彼女が差し出した300万エリスを受け取り鞄にしまう。これで俺も小金持ちってわけだ。

 

「じゃあそろそろ行こうか」

 

鞄を頑丈にロックし、椅子を後ろに引き立ち上がり、後ろをついてくる彼女と共にギルドの外に出る。

まだ昼頃なので日は上空に位置しており、色々するにもまだ時間がある。

 

「取り敢えず先に俺の買い物に付き合ってもらっていいか?」

 

トコトコと目的地に向かいながら念の為に確認する。

 

「別にいいですよ、私はこの辺りのお店は一通り見て回ったので今日はカズマさんに合わせます」

 

彼女は嬉しそうにコクンと頷き

 

「あ、でもあの串焼き食べてみたいです」

 

早速自分の言った事とは真逆の行動に出る彼女に呆れながら、串焼きを売っている屋台に向かった。建物は祭りで使う様な鉄パイプに厚いビニールを覆った簡素な構造で中で焼いて売っているのだろう、匂いがここまで漂ってくる。

 

「あの、すいません串焼き二本ください」

 

自分で言ったからだろうか、早足で屋台に向かい俺より先に注文を済ませる。

 

「おっ!何だ嬢ちゃん今回は男連れて来てんのか?いやぁ熱いね、何だ嬢ちゃんのボーイフレンドって奴か?まあ何にせよ良かった良かった‼︎」

 

屋台の主人だろうか、やけにガタイの良いおっさんが彼女を見ると、まるで近所にいる人みたいな台詞を吐いた。ああいう野次は世界共通なのだろうか…

 

「いやまだそんなんじゃ…」

 

店主のおっさんに盛大に冷やかされ、彼女は最初こそ言い返していたが途中恥ずかしくなったのか俯いてぷるぷる震えていた。

 

「おう坊主」

「え、何ですか?」

 

からかわれている彼女を眺めてると、突然横に居る俺に話が振られる。

 

「この嬢ちゃんはな、何時も一人ぼっちでよくこの辺りに買い物に来るんだよ、仲間どころか友達も出来ないって何時も言っててな、この辺りで商売やっている仲間たちと心配してたんだが、けどあんたみたいな仲間が出来たみたいで安心したよ。足手まといになる事は無いとは思うが宜しくやってくれ」

「な、何言っているんですか⁉︎私そんなこと言ってませんよ!」

 

照れ隠しなのだろうか、店主に飛びかかろうとするが肉を焼くプレートに邪魔され阻まれる。

 

「ほらよ、祝いに二本おまけしておいたから、味わって食えよ」

 

店主は彼女の妨害を物ともせずに俺たちに串焼きを渡す。取り敢えず彼女に串焼きを持ってもらい会計を済ませる。

 

「毎度あり‼︎また顔見せに来いよ」

 

お釣りを受け取り屋台の店長に見送られながら目的地に向かう。この世界の串焼きは日本の少ない割に高い物とは違い、安価でボリュームは大きめだ、着くまでに食べきれるか心配だが多分大丈夫だろう。

それよりも

 

「何だよ結構話せる人居るじゃん」

 

道中串焼きを食べ歩きながら言いそれを聞いた彼女は文句あり気な顔をしながら

 

「違います…あの人は商売ですから、もしそれ以外でしたら話しかけもしないですよ」

 

最後には悲しそうな顔をしながら彼女は串焼きを頬張る。

 

「そんなもんか?」

 

彼女に釣られながら俺も最後の串焼きを口に入れ、ごみとなった串をティンダーで燃やす。

 

「うわっ器用ですね、私のもお願いします」

 

はいよっと、彼女から串を受け取り燃やす、これが本当の串焼きってな。

 

「カズマさんって下級魔法の扱いだったら街一かもしれませんね」

 

俺の魔法の使い方に前から思っていたのかボソッと洩らす。正直褒められているのか分からないが彼女の事だ褒めているのだろう。

 

「そうだな、俺は基本職の冒険者だし、こういう風に小さなものを組み合わせてやっていかないとまともにやってけないからな」

 

闇の炎とやらで無双したいとこだが、いかんせん使い勝手が悪すぎる。今出来る使い方としてはファイヤーボールの様に飛ばす位だろうか?色々練習したいとこだが二次被害が凄すぎるので練習しようにも場所がない状況だ。それにこの世界に来て初めて出した炎の騒ぎもまだ古くは無い、発生源が俺だと分かれば何かの責任問題になりかねない。

 

「そうですね。あっそう言えばクリスさんでしたっけ?盗賊のスキルもいくつか教わったそうじゃ無いですか、近くにキールのダンジョンって言う初心者用のダンジョンがありますので…その、今度行きませんか?」

 

考え事をしていると横からそんな事を言う、ダンジョンか…悪くは無いが初心者用なら宝などは大体持ち出されているはずだろう。ゲームみたいな世界だが俺達に合わせて設定されている訳では無い以上只の無駄骨に終わる可能性が多い。

 

「その提案は良いんだが、もっと誰も行ったことのない未踏のダンジョンとか無いのか?」

 

せっかくアークウィザードも居る事だし、俺にとって分不相応な難しいダンジョンでも大丈夫だろう。

 

「そんなのある訳ないじゃ無いですか…此処は初心者が集まる街アクセルですよ。大体のダンジョンは捜索し尽くされてますよ」

 

やはりと言うか、そんな甘い様な返答は帰って来ず。自分自身でレベルを上げて未開の地や森林とか捜索するしか無いのか…

 

「まあ、練習という事で行きましょうね、もしかしたら隠された部屋とか出て来るかもですよ」

 

何だかんだでダンジョンの探索が決定してしまった。盗賊スキルと言っても敵感知と窃盗と潜伏の3つしかないしどれもダンジョンで役に立つとは思えない、後でクリスに教わりに行かなくては…

 

「はぁ」

 

後の事を考えると面倒臭さに溜息が出る、漫画とかだと一瞬で終わる準備作業も現実だと一々土台作りからやらないといけない手間の多さにフィクションへと想いを馳せる。

 

「何溜め息ついてるんですか?私から誘って何ですけど嫌なら別に前みたいにカエル狩りでも大丈夫ですよ」

 

俺のため息に何かを感じたのかオドオドと自分で取り付けた約束を変更しようと提案する。

ここ数日で彼女に自信が出て来たのか強気な発言が目立って来たが、しかし根っこは変わらない様でたまに言い過ぎた様な気がしたらこちらの顔を伺う様に見て来る。

 

「いやそうじゃ無いさ、これからどうしようかなって?」

 

不安そうにこちらを向く彼女に取り敢えずで何か適当に考えた事を言う。

 

「そうですね、私達のパーティーの目標を考えないといけないですよね。そう言えばカズマさんはどうしてアクセルに来たんですか?」

「どうしてって言われもな…そう言うゆんゆんは何でこの街にきたんだ?」

 

答えづらい質問には質問で返し相手の回答をノリで返す。テストでは0点だが、しかしここは現実、点数などは存在しない。

 

「わ…私ですか?私はその…里を出て行ったとも…ライバルに会うためにここに来たんですけど、何処に行ったのか全然分からなくて…でも荷物はギルドに預けてあるらしくて探しに行ってすれ違いになっても嫌ですし…」

「成る程、それで何処かに行こうにもこの街から拠点をズラせなかったって訳か」

「はい、情けないですけどそうなりますね」

 

えへへと悲しげに笑い

 

「私は言いましたよ、次はカズマさんの番ですよ」

 

ついでに話をそらす作戦は失敗に終わり、今度は俺の番だと催促する。

しかし予想外なマジな話におちゃらけた話で返すわけにはいかない。けど女神に連れて来られたって言っても多分信じないしな…

 

「本気て言われれば本気なんだが、実は俺魔王討伐を目標にこの街にやって来たんだ」

 

間違ってはいないが、現在それしか目標がなかった。まだこの世界に来て数日、何をするにも金は必要で冒険者以外の仕事に土木や商売が存在するが法律関係等々を覚えるのは面倒臭そうだ。

 

「それ…カッコイイですね‼︎」

「えぇ⁉︎」

 

予想外の反応にこっちがびっくりする。てっきり笑われるのかと思ったがどうやら彼女には高評価だったらしい。

 

「魔王を討伐すれば里のみんな…めぐみんも私を認めてくれる。いいわ‼︎カズマさんその目標に私も付き合わせて貰います‼︎」

 

ズガガン‼︎とゲームなら雷が落ちて来そうな雰囲気を漂わせながらポーズを決め彼女は宣言した。

 

「おぉ〜」

 

パチパチと手を叩きながら、話の主役を取られた俺は観客に回る。

 

「で、そのめぐみんって奴がライバルなのか?」

「そうです…ライバルって言うのは私が勝手に言っているだけなんですけどね、めぐみんは私よりも魔力値が高く紅魔の里でも天才と言われている位の才能と知能を持っているのですけど…」

「マジか⁉︎ゆんゆん以上だと⁉︎」

 

短い時間だが彼女とクエストをこなしていて破格の存在だと思っていたがそれ以上が居るのか…

 

「ん?ですけどって何だ?なんかあるのか?」

 

彼女の語尾の音量が下がった事に違和感を覚える、大抵のこう言う事には何か嫌な事が含まれる物だ。

 

「それがですね、めぐみんはその才能を持ちながら…あっ着きましたよ」

 

話の良い所だったが目的の店に着く。

 

「本当だ、よし買い漁るか」

 

拳を片手に当て鼓舞すると、そのまま店に入る。

 

「いらっしゃいませ」

 

店員に挨拶され、中に入ると数多ある装備品の陳列に目が奪われる。これが異世界の装備屋かよ、まあ日本に装備屋は無いんだが…

 

「よしゆんゆん、冒険者の俺が装備できそうな物を頼む」

 

しょっぱなからの他力本願、現実でもそうだったがこう言う身に付けるものは自分で見るよりも有識者に任せた方が良い。

 

「自分の装備くらい自分で選びましょうよ‼︎」

 

流石の彼女もこれはダメらしくNGが出る。

 

「頼む‼︎こんな事ゆんゆんにしか頼めないんだ」

 

仕方ない、ここは頭を下げ諦めて選んでもらえるようにするしかない。

 

「し、仕方ないですね…今回だけですよ‼︎」

 

頼られて嬉しかったのか頬を赤らめながら、彼女は仕方なしにと言った態度を崩さない様に店に並ぶ装備を選びに店の奥に向かった。

本命は彼女に任せ俺は俺で装備品の類を眺める。やはりと言うか何というかどれも専用職業が決まっており現在彼女が見ている共通の装備コーナは他の物と比べてやや狭めだ。冒険者という基本職は足台な事が多く大体が転職に必要なステータスまで届いたら転職するので俺みたいな冒険者は殆どいないというか居ないらしい、なので冒険者用の装備は無くこうして共通用の装備になってしまう。

しかし流石は初心者の集まる街、どれも安価な物が多くファストファッション店の様だ。それにこの世界にもやはりブランドという概念があるのか、〇〇作など書かれているタグなども見受けられ、ただの布の服にもかかわらず奇抜なデザインであるだけでウン万エリスもする代物もある。

アクセサリーコーナーもあり、これは装備するだけで何か付加効果を与える代物らしい。

 

「カズマさーん」

 

こっそり買い物を済ませていると、見立てが終わったのか彼女に呼ばれる。

 

「これなんてどうでしょうか?カズマさんのステータス的にも動きやすいと思いますよ」

 

ほーん、と思いながら彼女から受け取った服を受け取り更衣室にて着替える。

 

「どうですか?」

 

着替えている途中に彼女が聞いてくる。

 

「サイズ的にはピッタリだな」

 

完全に着替え終わり鏡を眺める。

 

「おぉ…」

 

首から肘まで覆った緑のマントに素朴だが民族衣装の様なカットソーに動きやすいズボン、その上に固定するかの様に籠手と脛と胸当てをつける形になっている。

今までジャージ姿の自分しか見てなかったのもあるが、この世界のファンタジー感のある服を来た自分を鏡を通して眺めるとようやくこの世界に来たんだな、と何とも言えない感情が込み上げてくる。

しかし彼女は感極まっている俺を見て何か勘違いしたのか

 

「えっあっどうしましたか?気に入りませんでしたか?カズマさんのステータス的にこれ以上の装備だと動きに支障が出てしまいますし…少し効果は下がりますが他の物にしますか?」

 

わたわたと慌て出す彼女に

 

「違うよ、ありがとなゆんゆん。なんか感動してな」

 

ポンと肩を叩き、そのまま会計に向かう。どうやら装備したままでも会計が出来るらしく、ジャージに着替えるのも面倒なのでそのまま会計を済ませ店を後にする。

 

「これで奇異の目で見られる事も無くなったな」

 

彼女にジャージの入った袋を持ってもらい、店の前のガラスの反射された自分の姿を眺めながらポーズを決める。

 

「カズマさんのあの服はニホンっていう国の民族衣装なんですか?」

「何て言えば良いのか?運動用の衣装って感じかな、日本でいう戦闘用の装備みたいなもんだよ」

 

へーそうなんですかと良いながら、俺のジャージを袋から取り出し広げて眺める。汗臭いだろうからやめて欲しいのだが…。

 

「前から気になってましたけど、思っていたよりも軽いですね、それに伸縮性もあって確かに動きやすそうですね」

 

へー、ほーと一通り弄るとそのまま袋に詰める。

 

「防具は整った、次は武器屋に行くぞ」

 

ジャージを受け取りそのまま隣の武器屋に向かう。店の構造自体は同じで今度は武器が並べられており、思ってた通り職業の壁が立ちはだかっていた。

 

「剣は流石に私はわからないですね…こればかりは直接握って振ってもらった方がいいと思いますね」

 

今回は武器なので彼女もお手上げの様だ、仕方ない言われた通りに共通の装備を眺める。

剣には重さや切れ味など各種ステータスがありこれが上がれば上がるほど扱いが難しくなりステータス通りの効果を発揮できない場合もあるそうだ、なのでギルドから貸し出されたショートソードを参考に一番しっくり合うものを選ぶ。

 

「これだな」

 

値段はそこそこするが何かの加護が宿っているらしい、威力は他の装備に比べれば低いが俺のステータスで装備できる奴からしたら高めだし、奥の部屋にある試し切りの藁の棒を何回か切るとやはり高いだけあって難なく切れる。リーチも貸し出し用の剣と同じでグリップも安定している。

値段はウン十万エリス取られたが悪い買い物ではないはずだ、他にも念の為の仕込みダガーや投げナイフ等々購入する。

会計を済ませ入り口のベンチで待っている彼女を迎えに行くと、彼女は彼女で新しいワンドを買っていた様で慣らしに振っていた。

 

「終わりましたか?」

 

その姿を眺めていると目が合い、ワンドをしまいこちらに向かってくる。

 

「なんとかな、この装備でどうなるかは次回のお楽しみって事で」

 

ぽんぽんと、腰に下げた剣を叩き彼女に見せつける。この剣の加護があれば大分役に立つだろう。

 

「少し疲れたし、飯にしないか?」

 

上を見上げると日は随分と傾き5時位だろうか、串焼きしか食べてない俺は少し小腹が空いてきた。

 

「そうですね、買い物も済ませましたし、一旦ギルドに行きましょう」

 

借りた剣も返さないといけないし、丁度いいと二人酒場に向かった。

 

 

 

 

酒場に行く前に部屋に荷物を置きたいと、彼女と別れ先に酒場に向かい席を確保する。彼女の部屋はギルドから近くそこまで時間は掛からないだろうから先に飲み物を注文し周りの会話を盗み聞く。

 

「おい聞いたか、前から放置されてたこの街の近くの古城に住み着いた奴って魔王軍の幹部らしいぜ」

「マジかよ⁉︎幹部ってヴァンパイヤとかか?」

「分かんねーけど幹部が誰だろうと俺たちじゃ敵わねーのは変わらねえけどな」

「そうだな」

「「はははっははははははは‼︎」」

 

「あの頭のおかしい子が戻ってきたらしいぞ」

「あのって、頭がアレな子の事か?」

「何も知らないパーティーと組んで数時間位前に出て行ったのを見たんだよ」

「マジか〜、今日は撃たないといいんだがな、平原や岩場ならいいんだけど森とかに飛び火したら俺達が消しに行かないといけないんだからな…」

「最近平和になったとおもったんだけどな、まあ火消しで報酬が貰えるならそれはそれで美味しいんだけどな」

「それな」

「「ははははははははっははっは‼︎」」

 

「他にもな…

 

 

「カズマさんお待たせしました」

 

彼女に声を掛けられハッとする。どうやら声を盗み聞きしている間に寝てしまった様だ。

 

「悪い悪い、少し寝てたみたいだ」

「今日は大分歩きましたし考えましたから色々疲れが溜まった様ですね」

 

彼女はメニュー表を開き注文する。

 

「俺も食べ物は頼んでないんだ、一緒に頼む」

 

分かりました、と彼女の注文に合わせ注文すると料理が運ばれてくまでに時間が空くので

 

「そうだ、ゆんゆんに渡す物があるんだ」

 

鞄から袋を一枚取り出し彼女に渡す。

 

「何ですか急に…って私にですか⁉︎」

 

彼女はビックリしながら俺から袋を受け取り、開けていいですか、と確認し中身を開き取り出す。

 

「わぁ‼︎ありがとうございます‼︎大切にしますね」

 

中から出てきたのは、術者の魔力値を高めるマナタイトをあしらったペンダントであり、道具屋で俺がこっそり買っておいたものである。

彼女早速ペンダントを首にかけ嬉しそうに腰のポーチから取り出した手鏡でそれを眺める。

 

「今日は色々世話になったからな、これはほんのお礼だよ。これからもよろしくな」

「はい‼︎こちらからもよろしくお願いします!えへへ…」

 

お互い照れていると、丁度よく料理が運ばれ食事を始めた時だった

何の脈絡もなくそして唐突に

 

遠くで地響きを震わせながら爆発音が鳴り響いた

 

「緊急‼︎緊急‼︎街にいる水属性の魔法を使えるウィザード、プリーストの方は至急東の森の消火活動に向かって下さい‼︎もう一度繰り返します…」

「うぉ何だ⁉︎何が起こってるんだ⁉︎」

 

突然の爆発音と緊急の通達に驚きながら彼女に聞くと、何故か慌てず、うわーと言いたげな表情を浮かべ

 

「私行ってきますね。カズマさんはそのまま食事を続けていて下さい」

残りのご飯をかきこみ、完食するとそのままギルドの外へ走り出していった。

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