この女神の居ない世界に祝福を   作:名代

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遅くなりました、誤字脱字の訂正ありがとうございます。


赤髪の悪魔1

「はぁ…次は私の番ってことね…」

「…?」

 

赤髪のお姉さんは俺の顔を見るなり少し呆れたような顔をしながら額に手を当てる。それはまるでPTAの役員の順番が回って来た母親の様なそんな感じだった。

 

「それであなたは何故こんな所で寝っ転がっているのかしら?」

 

まるで見たくも無い現実に直面し、それでもそれを受け入れるように俺の事を二度見すると覚悟を決めたのか話しかけてくる。

 

「へーそうなの、あなた記憶が無いのね」

「そうなんですよ」

「それじゃあ自分の名前もわからない感じかしら?」

「いえ、多分ですがサトウカズマと言う名前があるかと思います、自分の知り合いがそう言ってたので確証はありませんが」

「へぇ」

 

 

彼女は道端に転がっている俺に手を差し出し、俺はその手を取り起き上がると何故かそのまま彼女の後をついていく流れになり、俺は傷ついた体を無理やり動かしながらも自分の状況を大分ぼかしながら説明する。

 

向かっているのは一体何処なのだだろうか?

坂道を登っていることから多分山道である事は確かだが、気温や周囲の植物虫から見て村で見たものに近いので多分そこまで遠くに行っているわけでは無いようだ。

 

「あの…これってどこに向かっているんですかね?」

「私の目的地?それはついたら分かるわよ」

 

シーと口元に指を立て悪戯っぽく彼女は笑いながらそう言った。

 

突然出会った俺を拾ってくれたのはありがたかったが、彼女の目的が分からないと俺の計画も立て辛い。

幸いにも実力はかなり高い様で、道中で出会う魔物達を魔法で一捻りしてしまう程のものなのでもしかしたら有名なウィザードなのかもしれない。

 

「お姉さんは名前は何て言うのですか?」

「私の名前?そうね…まあ名乗るほどじゃ無いからそのままお姉さんでいいわ」

「じゃあ姐さんで」

「どこのヤクザかしら…」

 

何か気の強いお姉さんの様な感じがしたので、任侠ものに出てくる女将みたいな感じの呼び方をした所少し嫌そうな顔をされたが呼んではいけないとは言われなかったのでこれで通そうかと思う。

 

「それで姐さん、結構魔法の腕がいいみたいですけど冒険者かなんかですか?」

「そうね…そういう感じかしらね」

 

何を質問しても何か腑に落ちない様な解答ばかりしてくるが、それでも何故か煩いなどの拒絶が無いので質問を続ける。

まあ相手を知ることがコミュニケーションの第一歩と誰かが言っていた気がしていたが、深入りすればする程相手に飲まれる危険性があるので注意したいところだ

 

 

 

 

 

 

「ほら着いたわよ」

「ここは…」

 

歩くこと数時間、全身の痛みは未だに癒え切らないがそれでもある程度落ち着いてきたタイミングで彼女の目的地に辿り着く。

場所は周囲に下の景色が見るので恐らく山頂であろう事はわかるが、その景色を占めるものの殆どが木々だったので結局ここは何処なのかまでは分からなかった。

 

そして彼女の指差した場所には山小屋がポツンと建っており、周囲には何か煙が立ち込めていた。

一瞬火事かと勘繰ってみたが、煙が白い事と周囲に卵が腐った様な匂いがする事からして多分火事では無い。

 

「ここはあまり知られてはいないけど、その道の人達からは有名な露天風呂よ」

「何だそれは…」

 

結果として秘湯なのか名泉なのかよく分からない説明がされたわけだが、そんな事は今はどうでもいい事だ。

 

「あなたの傷を癒すには丁度いいのでないかしら?効能に治癒促進の文言があるわ」

「そ、そうだな…確かに全身傷だらけのままじゃ見栄えが悪いからな」

 

全身の痛みがいまだに癒えていない現状を打破してくれるのは有り難いが、これが何かの罠では無いかと勘繰ってしまう。

しかし、これから何をするにも今は肉体を回復させなくてはいけないと判断し、ここは彼女に従っておくのが正解だと思いそのまま後に着いていくことにした。

 

「え?一緒に入るんですか?」

「まあそうね、あなたが入っている間待つのは退屈だからね」

 

小屋の規模的に温泉は男女別に区切れるほどの規模はないだろうと思い、先に入るか姐さんに先に入って貰うか確認を取ると俺の事を男と認識していなかったのかさも当然の様に一緒に入る流れとなった。

マジか…と思いながらも内心美女と一緒に入れるのかと思いワクワクしていたが、謎の後ろめたさに冷や汗をかいている自分に気づく。

 

「それじゃあ、先に待っているわ」

「あ、はい」

 

小屋の中に入ると無人の癖に男女別の更衣室が申し訳なさ程度の規模で設置されており、今までの緊張感とは何だったのかと思いながら着替えを済ませ奥の扉を開ける。

 

扉を開けると本来は許されないがバスタオルで全身を包んだ姐さんが温泉の端で寛いでいた。

 

「そんな所で突っ立ってないで、あなたも早く入りなさいよ」

「…はいそうですね」

 

乳白色の湯船に浮かぶ二つの何かに見惚れていると、姐さんはその邪な視線に気付いたのか呆れた様にため息を吐き俺に早く入る様に促した。

渋々湯船に足を入れ熱さに慣れ切らないうちに全身を湯船に入れ、その温度差に戦慄する。

 

「それで記憶は戻りそう?」

「…いえ、ただ傷は癒えてきました」

 

湯船に体を沈めるとまるで回復スポットに入ったかの様に傷口や痣が引いていき、最終的には疼いていた痛みまでもが修復された。

そして緊張のせいか姐さんの方を向けないので視線を逸らすと、まるで悪戯をする少年のような表情で俺の隣まで近づき顔を近づけながらそう言った。

 

「そうそれは残念だったわね、それにしてもあなたの反応中々に面白いわね。想像と違ってウブだから面白くなっちゃた」

「勘弁してくださいよ…」

 

近距離で俺の頬をつ突き、くすくすと笑う彼女を横目に思春期の男子を弄ぶんじゃねえと心の中で抗議しながら話を再開させる。

 

「それで姐さんは温泉に入るためにわざわざこんな所まできたんですか?」

「そうね、こうして色んな場所の温泉を楽しむのが趣味なのかもしれないわね」

「そうですか、それじゃあいろんな場所に行かれているって事ですね」

「ええ、色々なところへ行ったわ」

 

謎の温泉トークを繰り広げながら姐さんについて色々と探る。

視線はあくまで彼女の顔を見続ける…いや下を向いたら多分もうどうにかなってしまうかもしれないので理性で押さえつける。

 

「話を聞いていて思ったんですけど、体を治す系の効能が多いですね。何か患ってたりするんですか?」

「あら?あの会話でそこまで察したのね。私の半身が行方不明でね、その影響か少し調子が悪いのよ」

「半身?生き別れの姉妹とかですか?」

「違うわよ、そうね…簡単に言うなら相棒みたいなものね。黒猫みたいな感じの見た目をしていて今も何処かに居るはずだけれど」

「その影響で体調が悪いんですか?」

「そういう事よ、以前は紅魔の里とか言う頭のおかしな人たちの住んでいる所に封印されていたんだけど、いざ迎えに行ったら居なくてね…今は何処に居るのやら」

「大変なんですね…」

 

彼女もきっとその半身がいない事で何かしらのデバフみたいのがかかってしまっているのだろう。

ため息を吐きながら遠い目をする姐さんに人間色々あるんだなと思いながら俺も遠い目をしながら考えを巡らす。

 

巡らすと言っても現状の確認でしかないが。

とりあえずゆんゆん達は無事だろう。彼女の事だから多分こうなる事を想定して医療の充実している場所をテレポート先に指定して飛んでいる事はわかる。怪力の少女もまた同じだろう。

 

問題はアイリだ。

彼女が俺の妹で無かった事は髪の色等々で語るまでもないがクレアと言う貴族に捕まったと考えると、おいそれと時間を潰している場合ではない事は明白だ。

あの貴族の行動を考えるとあの部屋にあった物と同じ薬を無理やり飲まされている事は確実だろう。

俺の考えだが、ゆんゆんの言葉と状況を考えれば部屋にあった薬の一つはアイリの髪と目の色を変えるもので、もう一つは俺の記憶を消す物だろう事が推測できる。

 

であれば今のアイリは俺の様に記憶を消されている可能性が高い。

あの貴族の行動と性格からして記憶を失ったアイリはクレアによって自分に都合が良い様に記憶を植え付けられているのは火を見るよりも明らかで、それに伴い彼女を利用して周囲の環境も変えられている可能性も高い。

 

だが、仮にそれがわかっても今の俺にできる事が思いつかない。仮にあったとしても結局ゆんゆん達と合流する事が唯一の道筋だろう。

それに何をするにもまずは記憶を取り戻すのが先決だ。

 

だが、どうすれば記憶を取り戻せるのだろうか…

    

「あの姐さん?」

「急に思い詰めた様に黙ったかと思ったら今度はどうしたのかしら?」

「記憶ってどうやったら戻りますかね…」

 

 

 

 

 

 

 

「成る程…そんな事があったの…色々苦労した様な感じはあったけどそこまでだったのね…」

「そうですね…はい」

 

あれから観念して記憶を失ってから今までの事を全てを話した。

俺が話している間、姐さんは俺の話を疑う事はせずに真剣に聞いてくれたが、ここまで俺に対して積極的だとかえって不安になる。

 

「何かしてあげたい気持ちはあるけど、今の私にあなたの記憶を戻す術はないわ」

「ですよね…」

 

俺の話を聞き、それを理解しての判断だったのだろう。彼女は俺の話を聞き終わると申し訳なさそうにそう言った。

 

「ただ、少ない可能性に命を賭けれるのであれば、あなたの問題を解決する方法は無くは無いわね」

「え?」

 

ポツリと彼女は言うべきかどうか悩んだ末に、聞こえるか聞こえないくらいの音量でそう言った。

 

「これからいく場所は一度見たらもう戻れなくなるかもしれない上にあなたの記憶が戻る保証はない、それでも行くのであれば紹介してあげるわよ」

「それは…」

 

彼女が出した条件、それは俺が潜ってきたであろう修羅場の話を聞いても尚危険だと言うのでれば相当なレベルの物である事が予想できる。

そしてそれは彼女が恐ろしい程の気配を纏っている事がその裏付となる。

 

「このまま行けば私は私の半身を探す旅に戻るのに反対の方へ行かないといけないから早く決めて欲しいんだけど」

「…少しだけ待ってください」

「良いわよ、少しだけね」

 

彼女から許可を貰い、考えをまとめる。

仮に彼女からの申し出を断ったとすると俺はこの先彼女について行くか一人でこの山を降りなくては行けなくなる。

彼女に着いていけば何処かしらに行ける可能性があるが、かえってゆんゆん達の元から離れてしまう危険がある。

そして一人で下山したとして遭難してしまうリスクも存在する。丸腰の状態で遭難しようものなら野生の魔物の餌になって終了だろう。

 

かと言って申し出を受ければ俺の命が危険に晒される。見たら戻れなくなると彼女は言っていたので多分聞いてもそれは教えてもらえないのだろう事は言うまでもない。

 

…なら。

 

「分かりました、姐さんの案に乗ってみようかと思います」

「…そう」

 

姐さんは自分で言っておいて何してんだろうと思っていそうな表情で俺の要望を聞き届けると、そのまま踵を返して進み始める。

 

「着いてきなさい、ここからはあまり遠くはないからすぐに着くわよ」

「はい」

 

少し早く歩いていく彼女を追いかけながら俺達は山を降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたわ、ここが入り口」

「え?ここがですか?てっきりもっとちゃんとした所かと思っていたんですけど」

 

着いていった先は先程までいた所と同じ様な山奥で、彼女は草木を払い除けながら何処かの崖下にたどり着きそこで大きな岩を見つけると、壁と岩の隙間まで伝う様に進んで壁と岩の隙間を指差した。

彼女に促されながらその隙間を覗くと何処かに続いているのか細い通路のようなものが見える。

 

「私たちの界隈なんてそんなものよ、さあ入りなさい」

「良いですけど大丈夫なんですか?」

「ええ、大丈夫よ。…今の所は」

「え…」

 

隙間に体を滑り込ませながらその隠し通路のような道を進んでいく。

 

「この道はある場所に繋がっている道の一つよ」

「へーそうなんですか。と言うことは他にも道があるって事ですか?」

「そうね、ただ他の通路はもっと綺麗ね」

「…そうですか」

「まあ仕方ないといえば仕方がないのよ」

「何かあったんですか?」

「いえ特に何もないのだけれど…そうね、ここは人間の街にある施設を模して作られた施設みたいなものだから細部はあやふやなのよ」

「そうなんですか」

 

そんなこんな話ながら狭い通路を進んでいく、通路はしばらく人が通っていなかったのか所々カビの様なものが生えたり動物の死骸などが散らばっている。

 

「着いたわね、ここが目的の場所よ」

「ここがですか?俺には行き止まりにしか見えませんけど?」

 

促されるままついた場所は簡単に説明すると行き止まりで、周囲には特徴的な模様があるだけだった。

 

「そうね、このままだとここはただの行き止まりね」

「冗談きついですよ…ここで俺を殺す気ですか?」

「ふふっ…だとしたら」

「くっ嵌められたのか!」

 

彼女の答えに対して咄嗟に距離をとるが、先頭を進んでいたので後方には壁があり勢いそのまま壁に激突する。

どうやら温泉に案内して俺の傷を治して信用して油断した所で俺を殺す算段だったのだろう。彼女とは多分記憶を失う前に因縁か何かがあってその精算をしにわざわざここまで案内したのだろう。

さっきのあの悲しそうな表情は俺を殺すことに迷いがあって選択肢を出したが結果として、俺が自身を殺す方向に俺が選択してしまった事を悲しんだのだろうか?

ならばそこから入り込む余地が…

 

「ぷっ…あははははぁーーっ‼︎」

「え?」

 

ここからどう交渉しようか考えていると何がおかしいのか彼女は腹を抱えて笑い始めた。

 

「ごめんなさい、少しからかっただけよ。あなたを殺す気なんて微塵もないわ」

「紛らわしいわ‼︎」

 

突然笑い出した彼女に俺があっけらかんにしていると、彼女は笑いを抑えながら調子に乗って悪ノリした事を謝罪した。

どうやら俺があまりにも本気で殺されると思っていた表情をしていたのでついやってしまったと説明を受けるが、俺自身ふざけるのは大概にしてほしいと抗議するのだった。

 

 

 

 

 

「それで?この行き止まりは何をすれば進むんですか?」

「それはこの模様を見ればわかる様に、転移魔法の術式が刻まれているから私が魔力を流せば指定された場所へいく事ができるわ」

「…そう言う事ですか」

「まあ私くらいになればテレポートで行けるのだけれども、あまり使いたくないのよね」

「えぇ…」

 

どうやらここが本当の目当ての場所ではなく、ここから目的の場所へと向かう中継地点だったらしい。

確かに周囲の壁の模様を詳しく見てみるとゆんゆんが俺を飛ばす際に展開した魔法陣の構成によく似ていた。

 

「その前に渡しておくものがあるわ」

「何ですか?」

 

魔法陣を展開する前に俺にしておかなければいけない事がある様で、彼女は腰に付けられた小物入れからワッペンの様なものを俺に差し出した。

 

「これは私の奴隷につける刻印が書かれたシールみたいなものね」

「これをつければいいんですか?」

「そうね、ここからいく先はただの人間がうろつくには危険がすぎるわ、だからこの刻印を貼り付けておけばあなたは一時的ではあるけど私の奴隷として振る舞えるわ」

「そうなんですか…でも奴隷って危なくないですか?」

「そうね…あなたは知らないと思うけど人を奴隷にするには結構面倒な儀式があるのよ、まあそれ以上に色々メリットもあるのだけれども…だからこれはあくまで印としての効果しかないから安心してちょうだい」

「えぇ…奴隷にも色々あるんですね」

 

奴隷という言葉を聞いて頭にアイリよりも少し小さい女の子の像が浮かんできたが、これは一体誰なのだろうか?

ともかく彼女からシールの様な物を受け取ると服を捲り、即腹部にデザインが描かれている面の紙を押し付けその上から水を掛ける。

 

馴染んだところで紙を捲るとあら不思議、紙に書かれているデザインが俺の腹に映っているではありませんか。

本来であればこう言ったペイント系は擦れて消えてしまうがインクに魔力を込めているらしく暫くは何をしても消えないようだ。

 

「これで貴方は私のものね」

「…何か嫌な言い方ですね」

 

先程からからかわれ過ぎているせいか、少しイラッとして来たので悪態をつくことにしてみる。

 

「ふふふ…少し貴方らしくなってきたんじゃない?」

「え?」

 

薄く微笑む彼女に少し不気味さを覚えるが、そんな事を考えている間に彼女が模様に魔力を注ぎ終わったのか転移の魔法が起動した。

 

 

 

 

辿り着いたのはまた別の空間で、周囲には同じ様な模様が描かれている所から多分帰りもここを使えば同じ場所へ戻ってこれる事が窺える。

そして周囲からは先ほどのまでは無かった歓声の様な声が聞こえてきた。

 

「行くわ、ここでは私の後ろを歩かないと変な正義感を持った奴に痛い目に遭わされるわよ」

「そうですか」

 

そう、ここで俺はあくまで姐さんの奴隷なので主人の前を歩こうものなら例え姐さんが許しても、他の奴隷への示しがつかない為、最悪、他の飼い主に殺されてしまう危険性があるのだ。

なのでここは彼女に従って後ろを着いていくことにする。

 

一体この場所では何が行われているのだろうか?

…まあ周囲の喧騒から大体予想がつくが。

 

 

 

 

 

姐さんに案内されるがまま進んでいくと少し広い円形の部屋に着き、壁を見ると同じ様な部屋がいくつもあるのかいくつもの通路が見える。

そしてその集合した部屋を抜けると他にも同じ部屋があるのかさらに円形の部屋に出て、それをいくつか繰り返してようやく転移部屋から出る事になる。

 

あまりの部屋の多さに俺の知らない通路がこの世界に蔓延っているんだなと、記憶がないながらに実感した。

もしかして来たことあるんじゃないかと思ったりもしたが、わざわざ奴隷のふりまでしないといけない所を見るに多分ないだろうと思う。

 

「着いたわよ、ここが目当ての場所地下闘技場よ」

「地下闘技場?ここって地下なんですか?」

「さあ、そこまでは流石の私でも知らないわよ」

 

幾たびの部屋と通路を抜けてようやく開けた場所に出ると、そこは円状の広場を囲むの観客席の最後席のようで周囲には人間の様な姿をした獣達が広場に向かって大声を上げている。

どうやら魔物にも知能を持つものが居るらしく、そいつらがこの観客席を埋めている。

 

そして円状の広場では人間と獣が戦いをしており、上の掲示板には人間と獣の写真が描かれオッズなのだろうか小数点を含んだ数字が書かれている。

どうやら獣と人間を戦わせてその勝者を予想するというものらしい。

 

「凄いな…あんな狭いスペースなのに地獄が出来上がってるよ」

「そうね…まあ貴方達人間が作った施設をそのまま真似したとオーナーが言っていたから、発祥は多分貴方達よ」

「えぇ…マジかよ」

 

どうやらこの施設は元は俺たち人間が作ったものを模倣して魔物達で運営しているらしい。

という事は、反対に俺たち人間の住んでいるあろう何処かの居住区にも同じ様なものがあるということになり、そこでは多分人と人同士が戦わされているのだろう。

 

もしかしたらそのオーナーに協力してもらえればその人が運営するであろう裏闘技場に繋がるゲートを教えてもらえるかもしれない。

そこでは多分ここと同じ様にいくつもの転移装置があってもしかしたらそこからゆんゆんの元へ帰れるかもしれない。

 

だが、ここのオーナーが協力的でかつ人サイドの闘技場が俺の想像通りであるなど数々の奇跡が連続して起きなければ難しい話だ。

 

「あなた今考えているわね…」

「…そうですけど、それは姐さんが試合を見ていて暇だったからですよ。こっちはどうやって記憶を戻すのか説明されていないので推測するしかないじゃないですか」

「そうね、言われてみれば説明していなかったわね…お詫びに貴方が推測した事を当ててみようかしら?」

「え?」

 

ポンと俺の肩の上に手を乗せながら妖艶な笑みを浮かべながら彼女は俺の思考を見通すように説明し始めた。

 

「あなたは私があなたの記憶をどう戻すかを考えてはいないわ、その代わりここからどうやってお仲間がいる場所へ行こうか考えている」

「何…だと⁉︎」

 

彼女の発言に背筋に緊張が走る。

 

「私の話を聞いてここがモデルとなった場所とここが繋がっていると推測して、そこからあなたの仲間のいる場所へここに来た様に転移しようという考えね」

「…そこまでわかるんですか?」

 

彼女の完璧な推理に唖然とし、完敗と言わんばかりに答え合わせを求める。

 

「はぁ…そうね、分かるというよりかはそう言う考えになる様にあなたに情報を渡したと言った方がいいかしら?あなた色々考える癖がある様だから考えを誘導されないように気をつけた方がいいわよ」

「そうですか…」

 

どうやら俺の行動と言うか癖を見抜かれ尚且つそこにつけ込まれていたようで、悔しい様な焦る様な何とも言えない様な感覚に支配される。

 

「けどここまで分かれば私の言いたい事もわかるんじゃない?」

「ここで戦って結果を残しオーナーから信頼を得てその通路へと案内して貰うって事ですか?」

「そういうことよ」

「え?でもそれだと記憶は戻らないんじゃ?」

「…そうね、私はあなたの問題を解決できるとは言ったけど記憶を戻せるとは一言も言ってないわよ」

「何…だと⁉︎」

 

果たして俺は無事に彼女達の元へ戻れるのだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ウォルバク編は色々あって急遽話を作り直したので少し違和感が多いかもしれません…
あと暫く忙しいので不定期更新です…
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