ユニゾン・ワールド   作:新人ガイア

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天草機関

融合事変前のある世界で風鳴機関と双璧を成した人類守護を掲げる日本の特務機関。
人命を優先するために他国への技術提供や時に機密情報の公開など自国や組織を脅かしかねない行動をするが世界各国から賛同者により世界政府に高い信頼と影響力を得ており切るに切り切れない存在となった。
国を守るために人命を蔑ろにする風鳴機関とはよく衝突し犬猿の仲である。
現当主の天草至導(しどう)は風鳴訃堂(ふどう)に「国を守るのも必要だが、そこに住まう民がいなければそれは国ではなく唯の墓標だ」と吐き捨てた。

融合事変後はその高い組織力で各国を束ね地球連邦の設立を提唱した。
連邦政府の幹部は天草機関が選出した人物で構成されており実質連邦政府の支配者である。


第四話「そこで自爆だ!!」

第三基地作戦司令部のモニターには偵察ドローンのカメラから送られる映像が映し出されている。

映像には突如として形を変えたPSを纏う一颯の姿が捉えられており突然の事態に司令部は混乱していた。

 

「アレは、一体・・・」

 

いまだ状況が理解できないレナルド司令、そんな司令の元に歩み寄る者がいた。

 

「ようやくセブンスライトを起動したか。かなり危うい状況だったがまぁ聖遺物の同化が上手くいったから良しとしよう。」

「貴女は!?」

 

その人物は一颯の部屋に侵入した不審者の少女であった。金色のミディアムヘアーと赤い目の幼女は白衣を羽織りとメガネを掛け不敵に笑う。

 

 

 

場所は変わり倉庫前

 

グレアはPSの姿が変わり困惑する一颯を観察していた。

 

(あのPSの形状・・・連邦が最近開発した試作機の『サンダーボルト』に似ている。同型機か?いや似てはいるがシステム構造が根本的に違う、サンダーボルト系は確か従来と同じ量子変換による装着か前面の装甲が開閉して入るタイプのどちらかだった筈。別の機体の形状を変える機能は無い。それにあの盾・・・結果を出すにはまだ情報が少ない。今はこの機体を持ち帰るのが大事か、だがおそらくあっちが・・・・。)

「ハハッ!なんだソレ。そんな隠し玉があるなら最初から使ってくれよ?それとも焦って頭から抜けてたって奴かッ!」

 

グレアは地を蹴り一颯に急接近する。一颯もグレアに気づいて構えをとる。

右腕を引き、体を捻って渾身の力を込めた拳を振りかぶり一颯を襲う。それを左に体を傾かせ回避する。

 

(コイツ!速いッ!?)

 

ヴィンディケーターの時と桁違いに反応速度が上がっていることに驚愕するグレア。攻撃を回避されカウンターを警戒するが当の一颯は体を傾けた途端左へゴロゴロと転がっていった。

 

「ぐあッ!!」

「・・・・・あん?」

 

想定とは違う光景にグレアは呆気にとられる。

 

(くッ!なんて性能だ!?自分の思い通り、いやそれ以上に先に機体が動く!!)

 

さっきまで使っていた通常機を優に超えるセブンスライトの性能に振り回され奔走される。そんな一颯の問題などお構いなくグレアは跳躍し左足を伸ばしてかかとを一颯の頭目掛けて振り落とす。

 

「ッ!!」

 

敵の動きを確認し転がって直撃を回避するがちょっと転がるという一颯のイメージと裏腹に機体は勢いよく体を回し数メートル先の倉庫の壁に激突し頭をぶつける。

 

「ぐおぉぉぉ・・・・・!!」

(・・・・・・・機体の性能に本人が付いていけてないのか。)

「はぁ・・・せっかく面白くなったと思ったのに持ち主が素人じゃその機体もうかばれないぜ。」

 

グレアの挑発を聞きながら立ち上がり機体の情報を整理しする。

 

(このままじゃ駄目だ。折角もう一度戦う力を手に入れたのに・・・なにか、なにか武器は無いのか!格納されてる装備は・・・・無い。内蔵されてる武装は・・・・こっちも無い!他にある武装は・・・)

 

必死にヘルム内のモニターから武装に関する情報を探すがいっこうに見つからない。ただ一つだけ登録されている装備を除けば・・・

 

(万能型支援光粒子盾『ビスレスト』・・・・・・・この盾だけッ!?」

 

盾しか装備がないという滅茶苦茶な事実に思考が途中から本音に変わっていた。

 

「考えはまとまったかルーキー!!」

「くッ!クソぉォォォ!!」

 

スラスターの加速を利用し渾身の右ストレートを繰り出すグレア。打つ手がないは一颯はやむなく左手に装着されているビスレストを構えグレアの前に突き出す。拳が盾に直撃すると盾から発せられる衝撃にグレアは吹き飛ばされる。一瞬の出来事に動揺するがすぐ体勢を立て直し一颯に向き直る。

 

「ぐッ!?。・・・・・・・・・・今のは。(衝撃の吸収と反射・・・さっきのビームが拡散ならあの盾を攻略するのは骨が折れる。だが相性が悪いだけでオレが勝てない通りは無い!!)。」

 

攻撃を加える度に一颯の解析を進めていくグレアは再度接近し拳を振るう。立ち向かうべく盾を構える一颯だがグレアは直前で攻撃を止め、素早いステップで背後に回りこみ右足を鞭のようにしならせ背中を蹴り上げる。

苦悶の声を漏らし飛ばされる一颯だが痛みはそれほどなく、スラスターで体制を立て直しグレアに向き直る。

 

(さっきまでのダメージが嘘のように軽い。この機体の防御性能のおかげか?とても頼りになるがまだ思うように動かせていない。向こうはもうスコートロンを使いこなしている。どうしたらいいんだ?このスーツをどう活かせばいいんだ?)

(蹴り飛ばしたこっちが痛くて向こうは大したダメージはないみたいだな。あの盾といい機体自体の強固さ・・・今までの情報から考えるにおそらく防御特化型と見ていいだろう。前衛向きの機体ではないのをふまえて導き出される答えは・・・自爆、イヤイヤ待て落ち着け早まるなオレそれはとっておき、まだ出す時ではない。だがそろそろ潮時だ。他の仲間たちも限界の筈、だがせめて・・・装甲の一つはもらって帰らないとなぁ!!)

 

お互いにいろいろと考えているが幾分グレアの方が頭の回転が速く決断も早く地を蹴り仕掛ける。

一颯はまだ答えが出ないまま戦いに集中せざるを得ない。そんな状況に流石に限界が来たのかとうとう一颯は奇行に走る。

 

「だあぁッ!!解るかんなもんッ!!」

 

駆けだした一颯は盾の縁を右手で掴みいっかい回ってグレア目掛けて放り投げた!

 

「んなッ!?ごふッ!!」

 

勢いよく駆けだしたグレアと勢いよく投げられた盾。グルグルと回転し面積の少ない側面の装甲が顔面に激突し背中から地面に滑り込む。

 

(守りの要の盾を投げるとか・・・どんな思考回路してッ!?)

 

起き上がり目を開けると盾を回収して跳びかかる一颯が目の前まで迫り左腕に持つ盾で顔の右頬を殴る。

 

「ごハァあああああああああ、へぶッ!?」

 

続けてくり出した盾を振り戻しアッパーを浴びせる。

 

「もんじゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

さらに拳を握り締め盾を突きだす。すると盾の装甲がスライドしエネルギー状の装甲を展開し回転しだす。回転するシールドは騒音をたててスコートロンの胸部に触れ、ガリガリとビブラニウムの装甲を削り落としていく。

 

「グッ!?ぐおおおおぉぉォォォォォォォォォ!!」

 

刃と化したシールドがスコートロンの装甲を削り火花を散らしながらグレアを吹き飛ばす。やがて火薬を積んだコンテナに突っ込み大爆発を起こす。

 

 

 

 

 

 

時を少し遡り日下部燎子はオータムのISアラクネの糸により動きを封じされていた。

同じく折紙もIS黒騎士を纏う亡国機業構成員エムと刃を交え動きを抑えられていた。

 

『くッ!手あたり次第糸を巻き付けて!!』

「ハハハッ!手こずらせやがって。こうも全体を抑えられればいくらお前でももうどうにもできまい!!」

 

地上は走る要塞の全体を糸で絡め捕るクモンガが高笑いし、

空中は黒と白の刃が交差しやがて刃同士が衝突し鍔迫り合いとなる。

 

◇上空

 

「ほぉ、お前強いな。」

 

黒騎士の大剣フェンリル・ブロウをクリーヴリーフ一本で受け止める折紙に感心し賞賛の声を述べるが―――

 

「そういうあなたは弱いわね。」

「何・・・」

 

対する折紙は冷たく憐みの言葉を述べた。

格下と見られ激高したエムはクリーヴリーフを振りはらい上段の構えから一気に振り下ろす。だが対する折紙はもう一方のクリーヴリーフを展開し横一閃に振う。両者が通り過ぎぶつかり合った刃はちいさな火花を散らしエムの大剣が両断された。

 

「―――――――――――は?」

 

何が起きたのか解らないエムは切られ半分の長さになった大剣を呆然と眺めていた。そして現状を理解し折紙に向き直り二対のランサービットによる砲撃をおこなう。折紙もブラスタークによる迎撃を開始する。

エムの放った螺旋状のエネルギー砲は折紙の魔力砲に対衝突するが、拮抗するどころか容易に押し込まれランサービットを破壊されてしまう。

 

「馬鹿なッ!?」

「あなたのISはとても強い。けどあなたはそのISを使いこなせていない。機体性能に頼っているだけのあなたに私が負ける通りは無い!」

「ッ!貴様が、その機体を使ってる貴様がぁ!それをいうかぁ!!」

 

エムは残された腕部ガトリングガンを乱射する。だが圧倒的な実力差を見せつけられ逆上したその目はろくに標準が定まらずかすりもしない。当たりもしない弾丸を横目に折紙はエム目掛けて加速しクリーヴリーフをクロスさせ振り払う。刃はエムの体の直前で展開された絶対防御に阻まれ一瞬だけ止めるがすぐ砕けその肉を切る。楔の力により絶対防御の力も弱められ操縦者の命を完全に守ることは出来なくなっている。切られたエムは地に落ち胴体に大きなⅩの傷を刻まれ血がにじんでいた。

 

 

 

◇地上

 

 

身動きの取れない燎子に近づくオータムは不敵な笑みをしながらナイフを取り出す。

 

「さぁて、テメェのその堅苦しい装甲を削ぎ落として中身を晒してもろおうか?」

『(マズいわね、一颯だけを向かわせて結構立つ。既に倉庫の方でも戦闘が起きているようだし急いで加勢に生きたいのにこうも全体を拘束されては・・・)仕方ないわね、少し本気を出しますか。』

「ハッ!そんな状態で何ができるってんだw寝言は寝て――」

《オーバードライブ起動》

 

全身を糸で固定されてる燎子の言葉を強がりと思ったオータムは笑い飛ばそうとしたが突如燎子のクアッドリガが金色の光を放ち絡みついていた糸を吹き飛ばしていった。

 

「なッ!?」

『さあッ!こっからは鉄拳制裁タイムよ!!』

 

オーバードライブ。かつてクローサーと言われた兵士が使っていたエナジーコア・タイプSの決戦機能であり融合事変後、連邦軍が解析しウィル博士の助力により改良型のタイプZが開発された。第三基地のPAギアにはこのタイプZが導入され大きな戦力増加を可能にした。そんなタイプZを贅沢にも二十個もクアッドリガに使用しておりその機体性能はISを優に超えるほどといわれている。

 

オーバードライブを起動した燎子はオータム目掛け殴りかかる。クアッドリガは金色の残像を残しながらオータムに接近し光輝く右腕を突き出す。

オータムはISのハイパーセンサーでギリギリ捉えるがそれだけ、見えていても避けられるという訳では無く避けられるほどの身体能力を持っていなかった。拳は無慈悲にもオータムの顔面を捉え彼女を宙へ飛ばす。殴り飛ばされた彼女に自由は許されず回り込んだ燎子の左アッパーを受け空へと飛ばされる。続けて燎子は跳躍し両手を合わせオータムの無防備なお腹目掛け振り下ろす。

地面に叩きつけられた彼女は虫の息でかろうじて生きていた。たった三回の攻撃でアラクネの装甲は全体的にひび割れ満身創痍の状態となりもはやろくに動かない。

オータムを完膚なきまでに叩きのめした燎子はその巨体のバーニアでゆっくりを地に降り彼女を見下ろす。

 

「ガッ・・は・・・ば、化け物が・・!!」

『えぇそうよ。人類を脅かす化け物どもを相手するんだもの、同じ化け物にでもならないと勝ち目ないでしょ?』

 

忌々しく睨むオータムに毅然とした態度で答える。

 

 

 

「あなたたちに勝機は無い。」

『大人しく投降しなさい。今なら牢屋に入れられる程度で済むわよ?』

 

ISを大破され重傷を負わされたエムとオータムは悔しさのあまりに歯を食いしばるがまだ戦うことを諦めてなどいなかった。二人は拡張領域(バススロット)から黒い種のような物を取り出しソレを渡したグレアの事を思い出す。

 

 

任務開始前の事、出撃準備をしようと移動していた二人の元にグレアがやってきて例の黒い種を渡した。

 

『なんだいこのゴミは?』

『ゴミとはひどい言い草だな。あの流れ者がくれた秘密兵器だぞ?』

『秘密兵器だと、このしなびた種がか?』

『そうさ!なんでも人間の破壊衝動と理性を融合させ驚異的なパワーと超人的な危機回避能力を得るんだそうだ。半ば暴走状態に近いが意識はちゃんと保たれるらしい。』

 

明らかに胡散臭い売り文句に目を細める二人、こんなものを渡すグレアに不信感を憶えるのも無理はない。

 

『なぜそのような物を渡す?それが本当なら貴様のような外道がみすみす私達に渡す訳がない。』

『そうだ!あたしたちを捨て駒って言ってるお前が敵に塩送るようなことする訳ねぇ!』

『はぁ・・・心配だから渡したってんのに随分嫌われたもんだなぁ。』

 

利用し利用される関係の彼等だ。信頼関係など無くそれ故に呆れるグレアは淡々と説明を始める。

 

『今回のお前たちの任務は噂に名高い遊撃一番隊の足止めだ。天使すら屠る化け物相手に弱体化してるISには荷が重い。化け物を相手取るには同等化け物にでもなるしかないだろう?まぁこれは最終手段として記憶の片隅にとっておいてくれればいいし使わないならそれでも構わない。まぁ精々頑張れや♪』

 

 

 

(・・・・・あの野郎、こうなることが解っててあたしたちにこれを渡しやがったな!!)

(忌々しい。はなから私達を切り捨てる腹積もりだったか!だがいいだろう、黒騎士で勝てぬというのなら化け物でもなんでもなってやる!!)

 

二人は種を天に掲げ握りつぶす。すると拳の中から赤黒い光があふれだしやがてイバラとなって二人の体に巻き付き飲み込んでいく。

 

「ぐっ!?があぁあぁaaaaaa!」

「むぐっ!?んんんんn!!」

 

エムとオータムを飲み込んだイバラは徐々に形を変え闇の球体へと変化する。そしてオータムを包む闇は突如八本の足を生やしエムの方は蛾のような翅を形成し球体を起点に変化する。変化が完了した闇が砕け散るとその全貌が明らかとなる。

全長3mを超える黒い巨大な機械蜘蛛。蜘蛛の頭部にはオータムの上半身が同化しており、蜘蛛を模した仮面を着けていた。

もう一方は濃い紫色の機械の蛾。エムの上半身が本体となり下半身は蛾の腹となっていた。背中から生える生物的な翅から鱗粉のようなエネルギー粒子を放出し宙を待っている。

 

Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!

 

おぞましい二体の咆哮が基地中に響き渡る。

 

『なんなの一体?形態移行(フォーム・シフト)?』

「蝶かと思ってたけど蛾だったのね。」(たぶん違います)

 

咆え終わる二体の怪物は折紙と燎子に狙いをつけ襲い掛かる。

巨大な八本の脚を動かし迫るオータムに対する燎子はガトリングによる迎撃を行うが弾はオータムの体にはじかれダメージを与えられなかった。目の前まで近づいたオータムは前足を燎子目掛け突き刺す。燎子は(毎度)巨体に似合わない素早い動きで回避し後退しながらガトリングを斉射するがまたも弾かれる。さらにオーバードライブの限界時間が過ぎ、反動で機体性能が低下してしまう。

 

(ん~これはマズいわね、出来れば早く方をつけたいんだけど・・・)

 

エムは大きな翅を羽ばたかせ腕を鋭い刃へと変え折紙目掛けて空を駆ける。折紙も両腕のクリーヴリーフを展開しエムの左腕に狙いを定め右腕を振るう。クリーヴリーフと刃となったエムの腕はぶつかりあい火花を散らしいなす形で両者をすれ違わさせる。お互いが向き直り再度突進、今度はお互いとも真正面から剣を振り刃越しの押し合いとなる。

 

(先程とはまるで別物、手心を加える余裕はなさそう・・・)

 

さっきまでボロボロにやられていた奴らとは思えないほど強くなった相手に折紙と燎子は攻めあぐねる。

 

再び接近するオータムに燎子はパイルナッコを使い振り抜くが蜘蛛の頭部の眼前で軽やかなステップで回避し口から糸を吐く。バックパックからホバーユニットにかけて機体後部全体を糸で固定され身動きが取れなくなった。

 

『しまったッ!!』

 

見た目の大きさと攻撃的な荒々しさからは想像できない身軽でトリッキーな動きに動揺し油断した燎子はすぐさま立て直そうとするが横薙ぎに振るわれる巨大な脚に薙ぎ払われその巨体が宙に飛ぶ。

そのまま放物線を描いて飛んでいくと思ったがオータムが吐き出す糸に絡め捕られ時計回りに振り回し周囲の倉庫群に叩きつけ二転三転と振りまわし続ける。

壁を突き破り別の建物にぶつけられ地面に激突しクアッドリガの装甲が凹みひしゃげ火花をちらす。やがて糸が切れ瓦礫にほおり出され土煙を巻き上げる。

 

『ゴホゴホっ!エホッ!つぅ~!!・・・あぁ~さっき私がやったことの仕返しのつもりかしら?結構痛かったわよ・・・』

 

瓦礫が盛り上がり、中からボロボロになったクアッドリガが姿を現す。両腕のガトリングは全部グニャグニャに折れブースターは潰れホバーユニットはバヂバヂと火花を散らし機能を停止していった。

 

(機体の86%が停止したか、いよいよマズい状況ね。ここまで私が手こずるなんて二年前の総力戦以来かしら?)

 

昔の記憶を掘り起こし燎子は自傷気味に笑う。そんな燎子にトドメを刺そうと大きなアゴを開き直進してくるオータムが迫る。

 

 

 

 

 

 

クリーヴリーフを受け止める腕を振るいふり払うエムは翅を動かし突風を起こす。折紙は突風を随意領域(テリトリー)で防ごうとするが随意領域が上手く形成できず崩壊していく。崩壊した隙間から風が入りリコリスの装甲に無数の傷をつける。

 

「ッ!?マズい!!」

 

危険を感じ守りの体勢を取るが吹き荒れる風が折紙を飲み込むと機体全体を切り刻んでいく。随意領域が展開できずなすすべなく切りつけられる折紙は収集できる限りの情報を集め考えていた。

 

(風による損傷ではない、彼女が発している鱗粉が原因?アレが随意領域の展開を妨げていると見るなら辻褄が合う。ハイペリオンが無い今のリコリスでは分が悪い・・・どうすれば?)

 

対応策を模索するも打開策が出ず突風に閉じ込められCR‐ユニットだけでなくワイヤリングスーツや生身を切りつけられ窮地に立たされる。だがそれでも瞳に焦りの色はなくエムを見据えチャンスを窺う。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

両腕の刃を重ね突風の檻に突撃するエム。エムの刃が折紙の胸を捉え檻ごと突き破る。

だが刃は折紙の胸に届かず胸の前に展開された五ミリほどの小さな防御随意領域に防がれそれ以上奥に進まなかった。

範囲を縮小し意識を集中することで阻害された空間でも随意領域を展開し防御力を限界まで引き上げたのだ。

 

「くぅ!!」

 

だが防いだはずの折紙は口から血を吐き苦悶の表情を浮かべる。

ピンポイントで防御随意領域を展開し直撃はまぬがれたが高速で突進してきたエムの刃を受け止めたために突進から生まれた衝撃波をもろに受け肉体にダメージを受けてしまったのだ。

わずかに生まれたスキを逃す筈もなく防御随意領域を切り裂き、再度突風を起こす。

随意領域を切り裂かれ、回避行動をとった折紙は直撃はまぬがれたが突風による損傷でリコリスの機能が低下しており飛行しているのがやっとの状態であった。

 

(微細な粒子が機体の隙間に入り機能障害を起こしているみたい。無理に武装を使用すれば暴発する恐れもある。・・・・ここまでか・・)

 

「シぃnEえlelelelel!!」

 

フラフラと飛行する折紙を追いかけ刃を突き出すエム。動きが悪くなっていくリコリスを動かしエムへ向き直る。

 

「くッ!!」

 

自分を殺さんとする凶刃が眼前に迫り、そして―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宙を浮き牙が折れる蜘蛛とズタズタに刃が切り落とされ動揺する蛾がそこにいた。

 

(は?/はぁ?)

 

地には紫色のワイヤリングスーツと青と金色のCR-ユニットを纏った燎子が黄金のガントレットを天に掲げ、天には純白と金色のCR-ユニットを纏った折紙が白銀と漆黒の二振りの実体剣を持ち地を見下ろしていた。

 

エムの刃とオータムの牙が二人を襲おうとした寸前、折紙と燎子はお互いの武装をパージし新たなCR-ユニットを纏い、オータムを殴り上げ、エムの腕を武装箇所だけ綺麗に切り落としたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司令部

 

「ッ!?鳶一少佐及び日下部大尉が【カール・ズ・マーニュ】と【サノス】を起動しました!!」

「なんだと!?」

 

オペレーターの報告に驚きを隠せないレナルド司令が声を上げる。

 

「ほう、かの大帝と死の王か。天草機関が開発した世界に十機しかないと言われる王の名を関するCR-ユニットをまさか一番隊の二人が保有していたとは・・・・これは各基地が黙っていないだろう?」

 

意味深なことを口にする少女に咳払いをし毅然とした態度を取り繕う司令。そんな司令の様子を見て少女は愉快そうににやける。

そこへ暗い司令部の明かりが届かない隅から闇に紛れるように諜報員の岩動が現れ少女に説明を始めた。

 

「それについては既に至導(しどう)代表より許可を得ています。なにより第三基地は各エリアへの足掛かりを担ういわば守護の要です。原則に縛られず人々を守護するためには他の基地のような体制では駄目なんですよ。」

「なるほど、人を守る為なら法も国も取り壊すか、風鳴とはまことに正反対なのだな天草の頭首は・・・だからこそ地球連邦として成り立つか。そうでなくては私が此処におもむいた意味が無いからな、せいぜい楽しませてもらうぞ!」

 

少女はハッハッハッ!と高らかに笑い戦闘の様子を眺め期待に思いを馳せる。まるでこれから起きる騒乱を楽しむかのように。

 

 

 

 

 

 

 

【カール・ズ・マーニュ】を纏う折紙は自身が持つ二振りの剣【ジュワユーズ・リアリティ/ファンタズム】を見比べた後視線を地上に向ける。

ブラスト小隊たちが交戦する広場では未だ硬直状態、一颯が向かった倉庫は炎に巻かれ黒煙が立ち込めて状況がつかめない。それを確認しエムを見おろし攻撃を開始する。

肩の鎧のような装甲が変形し非固定ユニットのブースターとして火を吹き加速する。

 

「グッ!?アァァァァァァ!!」

 

動揺していたエムは折紙の接近に気づきもう一方の腕を突き出し応戦する。

 

「ジュワユーズ!!」

 

折紙は剣に魔力を纏わせエムの刃に這わせるように回転し腕の装甲を輪切りにする。

 

(なにがおこった!?何故私の刃が切り落とされて…)

 

目の前の現実が受け入れられないエムの思考は乱れ折紙の姿を見失っていた。そこへ追い打ちをかけるように翅の一つが切り落とされ体勢を崩しようやく折紙の事を思い出し警戒態勢をとる。

 

(ぬおッ!?翅が切られた!?奴はどこだ!?どこから来る!?)

「もう十分楽しんだでしょ?」

 

周囲を見回し警戒するエム、だがそんな警戒も虚しく腹の装甲が切り落とされ素足があらわとなる。

片翅を失い体を支える事も出来なくなったエムは徐々に地上へと墜ちていく。

形勢は逆転し勝機と見た折紙速度を上げエム本体に向けて進み双剣を振るう。

 

(ッ!!装甲の硬質化!なんとしても防がなくては!!)

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

(駄目だ!間に合わないッ!!)

「でも遊びはもう終りッ!!」

 

必死に我が身を守ろうと黒騎士だった物の装甲を体全体に纏わせようとするが纏う速度よりも速く翔る折紙の斬撃が装甲を切り刻んでいく。

 

「ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

両者の方向が響き渡り装甲の欠片が地に落ちていく。

ジュワユーズの刃は確実に黒い装甲を削いでいき遂にエムの本体を引きずり出しその首を掴む。

 

「ぐっ、あぐ、!!」

「あなたに戦う力はもうない、投降して。」

 

完全に無力化されたエムの首を掴みながら淡々と勧告し地上に向かって降りていく折紙。

その様子を物陰から窺う男がいた。

 

 

 

 

 

Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!

 

地に叩きつけられたオータムはすぐさま起き上がり【サノス】を纏う燎子に向かって突き進む。

自分の間合い入ったオータムは鋭利な脚を巧みに操り燎子を切り刻もうと迫るが身軽になった燎子は軽やかなフットワークで避け逆に蜘蛛の顔にカウンターを喰らわす。

カウンターをくらったオータムはより攻撃の勢いを上げるがその度に両腕の手甲による強力な打撃を受けひるむ。

攻撃してる自分がやられてることにシビレを切らしたオータムは糸を吐き出し捕えようとする。その糸を燎子は左手で掴み引っ張り上げオータムを引き寄せる。引き寄せられ近づくオータムに合わせるように右腕を振り落とし蜘蛛の頭を殴りつける。蜘蛛の頭が地面にめり込み身動きがとれなくなることに焦るオータム、その眼前に立つ燎子はジャブでオータムの頭を殴る。

 

「Gaフっ!?クソガ!!」

 

顔に伝わる痛みで苛立ちを増したオータムはエムと同じように腕を刃と変え振り抜くが手甲に止められ腹を殴られる。続いてもう片方の刃を突き出すが回避し後ろに回り込まれ背中を殴られる。それから何度も腕を突き出すも防ぎ殴られ本体を纏う装甲にヒビが入っていく。しだいに攻撃の勢いが弱まっていき燎子は攻撃の手を増してうちのめしていく。ついには頭を掴み下に引き寄せ膝蹴りをくらわしひるんだオータムの腹を掴み機械蜘蛛から引きはがした。

 

「さぁて、見ての通りあんたはもう戦えないけどまだ続ける?出来ればもう降参してくれるとありがたいなぁ?なにせ今もこの力を抑えるので必死なのよねぇ?」

 

散々殴られボロボロになったISスーツでかろうじて大事な部分は隠せているが本体だった上半身はアザだらけで顔は鼻血で赤く染めあげていた。そんなオータムの頭を左腕の手甲で掴んでいる燎子は右腕を引き今にも殴り出しそうなのを必死で抑えていた。

戦う力を失い楽しむように殴られ圧倒されたオータムは抵抗する気力すら失いただ睨むことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

グレアを吹き飛ばした一颯は呼吸を整えながら燃え盛るコンテナの残骸を見据える。その先にはコンテナを払いのけ立ち上がるグレアの姿があった。

 

「つゥ・・あぁ~いてぇ。」

 

腹を抑え苦しむグレア、よく見ると腹部から胸に向けて大きな傷が出来ておりそこから血が流れていた。

 

「ビブラニウムの装甲を溶断する切れ味。やっぱり本命はそっちだったか・・・はは」

 

重傷を負っているというのに未だに余裕の態度を崩さないグレア。そんなとき広場の方で爆発が起きる。

 

「広場の連中はそろそろ限界か。エムたちもやられたようだしここいらが引き時か。」

「逃がすと思うか?」

 

一颯はグレアの前に立ちふさがり盾を構える。それをお手上げといわんかのように手を上げ首を振るグレア。

 

「だよな~状況は最悪、味方は孤立し援軍はない。とても逃げられる状況じゃない・・・・・・そこで自爆だ!!」

 

ヘルムを外し素顔を晒すグレアは指を鳴らす。すると倉庫から飛び出る影が現れた。それは一颯が無力化したグレームだった。グレームは一颯目掛け四足歩行で駆け出し跳びかかる。一颯は盾で受け止めるが無人のグレームは盾もろとも一颯に抱き着く。引き剥がそうとした瞬間グレームからピピピピピと音が鳴り始める

 

「ッ!コイツは!?」

 

それが何を意味するのか察した一颯は何もできず歯を食いしばり衝撃に備えた。そして間もなくしてグレームは機体を膨れ上がらせ爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

時同じくして広場の方でも動きがあった。テロリスト達のPSの目が点滅し背部が開閉し装着者を排出した。

 

「おわッ!?」

「これは!?」

 

突然の出来事で動揺するテロリスト達をよそにひとりでに動くPSは相対していたタクマ達に向かって走り出す。銃で応戦されても無人の為その勢いは止まらない。頭を射抜かれようが胴体が吹き飛ぼうが手足を動かし確実に対象に飛びつく

 

「うわぁ!!なんなんだこいつ!?」

「この!離れろっての!!」

 

取り付いたPSは振りはらおうと暴れる連邦軍を巻き込み大爆発し濃度の濃い煙を上げる。

 

「グレアからの合図だ!みんなずらかるぞ!!」

 

機体の自爆を確認したテロリストたちは懐からピンク色の液体が入った小瓶のような物を取り出し、それを地面に叩きつける。すると地面に魔法陣のような物が描かれ光り出しテロリスト達が消えていく。

煙が晴れたときには既にテロリストの姿はなく自壊プログラムによって残骸となったロケットだけが散らばっていた。

 

 

 

広場での爆発は燎子達がいる場所からも見え大きな煙が舞っていた。

 

「あの爆発は一体?」

 

爆音を聞いた燎子も視線を広場の方に向け状況の確認をしていた。そんな燎子を見たオータムは残った力で拘束を解き逃げ出す。

 

「なっ!まだそんな体力を!?」

 

逃げるオータムを追おとした燎子だったが停止していたはずの機械蜘蛛に覆いかぶされ動きを封じられてしまった。

 

「コイツなんで動いてるの!?しかもこの音って!!」

 

間近にいる燎子だから解かるが機械蜘蛛の中から小さな音が徐々に早くなっているのが聞こえていた。

そして内部から光が漏れ出し大爆発を起こす。

 

 

 

「また爆発。これも貴方たちの仕業?」

 

広場と燎子がいる所と立て続いておこる爆発を目の当たりにした折紙は捕らえているエムに質問する。

 

「フン。さぁな?奴の考えなど私が知るものか。」

 

だが正直に答えるはずもなく折紙から視線を外す。これ以上追及してもなにも得られないと思った折紙はふと背後から迫る気配を感じ振り向きざまにジュワユーズを振るう。

 

「ッ!」

 

だが視界に映ったのが生身の人間だと気付くと剣を振るう手を止めた。

折紙に肉迫する赤毛の男、ヴォルフェスは折紙の振るった剣の腹に足を乗せ折紙の頭上を飛び越える。ヴォルフェスの動きを見失わないよう目で追っていた折紙だが自分の眼前に落ちてくるスタングレネードの閃光により視界を奪われてしまう。

ヴォルフェスはグレームを纏いエムを担いで折紙から遠ざかる。

 

「もしもの時に備えて待機とは言われたが本当に起きるとはな!だが自爆が実行されるってことは奴の思惑通りなんだろ、ならもうここに長居する必要はないな!」

 

エムを抱えながら走るヴォルフェスはオータムがいた方角に進みそしてボロボロになったオータムを見つける。

 

「オータム!」

 

急いで駆け寄り肩を貸し体を支える。

 

「くそッ!グレアの野郎あんな化け物を押し付けやがって!!」

「文句いうなら本人にしな。拠点に戻るぞ。」

 

エムを下ろしポケットから仲間たちと同じ容器を取り出し地面に投げ割る。地面に写し出される数式のような紋様に照らされヴォルフェス達を消していく。

 

 

 

「・・・・・逃げられたわね。」

「逃げられた。・・・・・」

 

視界を取り戻した折紙と自爆を受けた燎子は周囲を見回し対象に逃げられたのを理解し溜息を吐く。

 

 

 

敵のまさかの自爆に耐えた一颯は爆発のダメージにより息苦しさからむせていた

 

「ゴホゴホッ!」

 

呼吸を整え最初の位置から一歩も動いてないグレアを見る。グレアは広場の爆炎を見つめ満足そうに息を吐く。

 

「向こうは無事脱出できたようだな。後はオレだけか。」

 

グレアの手には仲間たちが離脱の為に使用した【テレポートジェム】があり、それを足元に放り投げる。

 

「ッ!逃がすか!!」

 

それが逃げる手段だと直感した一颯は駆けだす。

 

「なぁ、お前には守り抜きたい人は居るか?」

「は!?」

 

唐突に発したその一言で逃亡を止めようとした一颯の脚を止めた。一颯はグレアの言葉に解答できる言葉を持ち合わせていなかった。同時に人を守ると口にはしながら特定の誰かを守るという考えを持っていなかった自分自身に動揺してしまった。

そんな一颯の顔を見て何かを確信したグレアは不気味に顔を歪め口を開く。

 

「そのようすじゃあ誰もいないようだな。・・・・なぁお前。守りたい人がいないこんな世界、守る価値が本当にあるのか?お前もオレと同じ、この世界に殺された被害者だ。」

「俺が、お前と同じ、、だと?」

「そうさ。気づいたら自分だけが取り残され何も無い世界を生かされる。教えてくれよ。お前は一体、何を信じて守ってんだ?」

「ッう!!」

 

グレアの言うことは逃げるために自分を惑わすものだと理解してるがどうしても割り切ることが出来なかった。自分自身を見透かされているような感覚がして思考がまとまらなくなっていく。

 

「フッ。お前とはまた会いそうな気がする。次会うとしたらぜひ答えを聞かせてくれよ。じゃあな。」

 

転送の時間を稼いだグレアは一颯に手を振りながら消える。グレアを取り逃がした一颯は自分の不甲斐なさを悔やむが戦闘が終った為か体からこみあげてくる疲労感とめまいに襲われ意識を失い倒れる。

 

「俺は・・なにを・まもろうと・・・・」

 

意識を失った彼の口は無意識にそう口にしていた。

 




グレア「唐突ですが此処でシンフォギアク~イズ!!」
一颯「本当に唐突だな。」
グレア「問題です。とある事故で胸に金属の欠片が刺さり取り除こうにも命の危険がありそのままにするしかないがそれが戦う力の源になっている主人公のこの子はだ~れだ?」
一颯「ふっ。実に簡単な問題だ!答えはアイアンマッ」
グレア「シンフォギアって言ってんだろおぉぉぉぉぉぉ!!」


次回「嵐の後の反省会」
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