ユニゾン・ワールド   作:新人ガイア

6 / 8
現在公開可能な情報


天使

ノイズとは異なる自然災害
発生計数はノイズより低くノイズ出現から数分後に出現するのが多い
出現後はノイズと同じく人を襲うが人より建造物を優先する傾向がある
天使はノイズのように人に触れ灰にするのではなく光を放ち当たった対象物をマナに変換し無に帰す。これを一般に〈浄化〉といい信仰者の間では神の裁きという声も上がっている
人が多く密集する場所での出現が多く、その習性を利用し各エリアの基地を中心に都市を形成し被害の拡大を抑えている。
エリア11の第三基地は天使の出現を集中させる目的もあり軍の中で激戦区として恐れられている


第五話「嵐の後の反省会」

某所・シンジケート拠点

 

シンジケート拠点の一室、テレポートジェムによる帰還に用いられる帰還室に転移するグレア。傷ついた胸を抑え苦悶の表情を浮かべる。

 

「・・・・・い、痛ってえぇぇェェェェぇェェェェぇェェェェ!!」

 

そして地べたに転がり痛みに悶えていた。

 

「チクショウあの野郎!守るとか言いながらおもいっきし切り刻みやがってぇ!!つうか防御フィールドを丸ノコのように回すとか常人が考えるもんじゃねぇだろ!?いてぇ!痛てぇよチクショウが!!」

 

しばらくのたうちまわった後、ピタッと動きが止まり、ゆっくりと上体を起こす。その顔は既に平静を取り戻しておりさっきまで悶え苦しんでいたのが嘘のようだ。

 

「ふぅ~。だが目指すべき方向性は掴めたな。(奴のあの動きは機体スペックによるものではなくもっと別のもの・・・・奴があのスーツを着る前に欠片が体内に入り込んだのが見えた。恐らくあの流れ者が言ってた機械と肉体の融合に近い物のか?であれば操縦者の意思に反応しスーツが動作するよりも格段に処理速度が上がるはず!だとすれば・・・)ッ!・・・とりあえず治療しなきゃな。」

 

胸の痛みで自分が怪我人であることを思い出しその場を後にした。

 

 

 

 

 

数分後

 

メディカルルームで治療を終えたグレアは意気揚々出てくる。胸の傷は塞がり包帯を巻かれコートを肩に羽織り帰還した仲間達が居る格納庫へ向け歩き出す。

 

 

グレア視点

 

 

いや~設備の整った医療技術に優秀なメディカルスタッフ、テロリストとは思えない充実した環境には驚かされるばかりだ!しかも必要であれば機体の素材も融通してくれるとオレにとって天国といってもいいものだ!長居する気はないが・・・

 

「無事に戻ってきてなによりだが私が渡したシードを他人に渡すとはどういうことだ?」

 

げっ!あの茶髪と叡智の結晶(メガネ)は流れ者のパラケルスス・・・・面倒だなぁ。

 

「仕方ねぇだろあいつらの実力じゃあ一番隊の足止めは荷が重すぎたんだ。お前の”現代錬金術”ならなんとかなると思ってな?現にうまくいったろ?」

「だが一時の間でその後瞬殺されただろ。アレの制作に私がどれだけ苦労したt「グレアッあアアァァァァァァ!!」。」

 

荒々しい猛り声と殺気が迫ってきたのでサッと後ろにさがる。目の前を包帯で巻かれた右腕が通り過ぎ本体のミイラ女がオレを睨む。あ、このギラギラした目はオータムだ。生きとったんかワレ!!

 

「おぉ!オータム生きてたのか!!てっきり自爆したかと思ったぞ?いやぁオレの作戦もまだまだだなぁw」

「ッ!!テメェエエエ!!」

「やめろオータムッ!」「怪我塞がってないんだぞ!?」

 

軽く煽ってやったらあっさり怒り出した。仲間(仮)の傭兵たちに取り押さえられながらもオレに噛みつこうと暴れてやがる。実に使いやすい。

そんで後ろから殺気だけを飛ばすエム。殺気を向けるだけで噛みつく気力はないようだ。右目を包帯でくるまれ右腕はギプスで固定されて服もボロボロだ。まぁあの鳶一折紙(天使スレイヤー)を相手して生きてるだけよしとするか。

 

「お前は殺らないのか?捨て駒にした恨みくらいぶつけてもいいんだぜ?」

「チッ。お前のその人の神経を逆撫でする性格は生まれつきなのか?だとしたら救いようのないゲス野郎だなお前。」

「あぁ。お前等のようなゴミがいるからオレもこうならなくちゃいけないんだよ。」

 

お互い侮蔑を込めた罵り合いを繰り広げオレは嘲笑うが耐性が無いのかエムはイライラしてオレを睨む眼光が鋭くなる。もう少し罵ったら銃でも奪って撃って来るかもな。よ~しそれじゃa

 

「それくらいにしてもらえるか。」

 

ッ!!背筋から凍り付くような悪寒!それに部屋一体の温度が冷え切っていくようなこの重圧はッ!!

 

「「ウィンターッ!!」」

 

冬の名を関する亡国機業の用心棒ウィンター。白を基準としたボディスーツに空色のライダージャケットを羽織り鬼を模した仮面で目元を隠している男。手には二メートルを優に超える黒い太刀を握っている。

こいつの纏うオーラは冷たく重く恐ろしい。それは周囲にまで及びまるで命を凍てつかせる絶対零度のようだ。

 

「・・・・戻っていたのか。」

「あぁ。方々の任務が一段落して報告に行くところだ。・・・あまりオータムたちをイジメないでくれ。ただでさえ組織としての連携が芳しくないんだ。無駄な争いは避けたい。」

「んなことはわ~てるよ!オレはコイツらのような馬鹿じゃねぇんだからな。」

「なら良い。では報告に言ってくる。」

 

あぁさっさと行っちまえ!

 

「な、ウィンター待てよ!」

「私を無視するな!」

 

ウィンターが部屋から去るとオータムとエムがその後を追う。はぁ~ようやく一息つけるワケダ。

 

「はいッ麦茶どうぞ!」

 

そこらに転がってる木箱に腰を下ろすと左から麦茶の入った紙コップが差し出される。オレはそれを受け取り差し出した本人の頭を撫でる。

 

「おう、ありがとよヨハン!」

「うわッ!もう~!子ども扱いしないでくださいよアニキィ~」

 

コイツの名前は『殺生院ヨハン』。身長は140くらいの小柄で金色のショートヘアーにアホ毛(触ろうとすると恐ろしく怒る)が一本ピコンと立ってるエメラルド色の目が特徴的な子だ。オレやヴォルフェスをアニキと慕いここまでついてきた見かけによらずキモの据わった奴だ。

 

「いや~こうも気の利いて人柄がよく顔も良い可愛い後輩がいてオレは幸せだよぉ~。これで男じゃなかったら抱きしめてたのになぁ・・・はぁ~」

「流石にそれはボクでも引きますよアニキ。」

「君はロリコンなのか?それはそれで問題だと思うが非合法組織には気にするモノではないか。」

「んなわけあるかッ!!可愛い子は大であれ小であれ愛でるもんだろ!?」

 

まったくパラケルススの奴まだ居たのか。いい加減どっか行ってくれねぇかなぁ~。

内心でそんなことを思いながら近くにあったテーブルに無造作に置かれた端末を拾い上げシンジケート、正確にはスティールドーンのデータベースにアクセスする。

 

「それにしてもウィンターさん凄いですよねたった一人で任務をこなしてるんですから。」

「奴が只者じゃないのは今に始まったことじゃない。・・・うわぁ~相変わらず仕事が速いモンで・・・」

 

オレはウィンターが受けていた依頼に関する情報をヨハンに見せる。こういった情報はスティールドーンが独自に収取しオレたちが裏切らないように記録しているんだからイヤになる。

 

「わぁ~凄いですね連邦の機密史料保管庫に侵入して警備のPS装着者を無力化。厳重なセキュリティで守られた扉や無人機を刀で切り裂き保管された神性異物【ヌアザの銀腕】と聖遺物【選剣・カリヴァーン】の剣先を強奪・・・五右衛門ですか?」

「おまけに奴は自前のスーツを持ってない、それなのに奴は生身でこれをこなすんだ。まるでIS学園の世界最強(ブリュンヒルデ)みたいで恐ろしいだろ?」

「神性異物、人の肉体を侵食しかつての神の力を発現する文字通り人にとっての異物。そんな異物とかの王の聖剣の欠片を盗んでスティールドーンは何をしようとしてるのかね?」

あいつ(ゼクサ)が何を考えてるかなんてオレらが知るか。オレは奴らから依頼を受けていかに成功率を上げる作戦を練るか、それさえすりゃいいんだよ。」

「その作戦に毎度自爆を組み込むのはいただけねぇがな。」

 

ウィンターの事で話をしていたらいつの間にかヴォルフェスがやってきてた。

 

「おぉヴォルフェスお疲れさん。」

「お疲れって言われてもやられたオータム達の回収するまでジッとしてただけがな。」

「だが楽だっただろ?一番危険な仕事を与えてんだ安全策としてはいい方だったと思うんだがねぇ~」

「へッ!あんなじれったいやり方俺の性分じゃねぇ!次は絶対前線で戦うからな!!」

「はいはい解ったよ次は盛大自爆するプランを考えておくから期待しとけ。」

(((自爆しない作戦はないんだな・・・)))

 

なんだよその不満そうな顔は?オレの作戦に問題でもあんのか?

 

「とッ忘れる所だった!ゼクサの野郎が呼んでたぞ、今回の仕事の報告を聞きたいそうだ。」

「はぁ?なんでオレなんだよ。そんなのお前からでもいいだろ?」

「幹部達を交えての大事な会議も兼ねてるらしい。自覚無いようだがお前奴らに一目置かれてるんだぞ?」

 

はぁ~ゼクサの野郎・・・どうせディセンダーに言われてオレを呼んでんだろう。たくッ!組織の長もスポンサーには頭が上がらねえってか?まぁコイツ(スコートロン)の事で言いたいあ事もあるしちゃちゃっと終わらせるか。

 

「はぁ~めんどくせぇ~。ヨハン、”ソーニャ”に遅れると伝えといてくれ。」

「任してくれアニキ!!」

 

疲れて重い腰を上げヴォルフェス達に別れを済まし格納庫をあとにする。

 

 

 

 

 

グレアたちと別れたウィンターは長い長い廊下を歩いていた。

そのあとをオータムとエムが追いかける。

 

「待てよウィンター!」

「どうした、オータム?」

 

オータムに呼び止められ歩みを止めるウィンターは二人に向き直り応える。

 

「どうしたもこうしたもねぇ!!なんでアイツ(グレア)の下で活動しなきゃいけねぇんだ!」

「奴の作戦のせいで危うく死にかけた。それにISも大破される始末だ。」

 

二人はグレアの作戦の不満を訴えてきた。それを黙々と聞き思案しウィンターが口を開く。

 

「お前たちの言い分はよく解った。だが総合で考えてグレアの下で行動してた方がいい。」

「なんでだ!?」

ここ(シンジケート)の指揮系統をスティールドーンが握っているからだ。彼らはゼクサの目的の為なら命を投げ出す連中だ。倫理から逸脱した者がどれだけ非道かくらいお前達も解らない訳じゃないだろ?奴らにとって亡国機業は仲間じゃない、あくまで利害が一致した敵同士だ。隙あらば切り捨て葬ると常に思っているだろう。だから傭兵の彼の下にいれば動きやすいと言うことだ。」

「どういう事だ?」

 

ウィンターのグレアへの信頼に疑問を持ったエムが問う。

 

「奴は傭兵の立場でありながら独自の指揮権を預かっている。このフロアの一画も彼の管理下にあるようにグレアはスティールドーンに、正しくはゼクサにいたく気に入られている。それに・・・彼は仲間を捨て駒というが今までの作戦で死亡者も拘束者も出していない。最終的自爆するところはどうしようもないが仲間と思っているうちはお前達の身の安全は保障されると思うわけだ。」

「は!随分甘い事ぬかすな!安全とか今さら気にしてッ「亡国機業はもう君たち五人しかいないんだぞ、スコールにこれ以上負担を増やす気か?」ッう!!」

 

ウィンターの仲間の安全を考えた方法を甘いと断じようとしたオータムだったが自分たちの置かれている立場を突き付けられ言葉を失う。

融合事変の際多くの構成員の行方が解らなくなり後ろ盾の米国も聖罰により浄化され亡国機業は壊滅した。残党となったスコールたちは各地を逃げ回ってる最中ウィンターと出会いシンジケートの噂を聞き今に至った。今の亡国機業の地位はシンジケート内でもっとも低く奴隷と大差ない扱いで戦闘に投入されていた。今の今まで無事だったのはウィンターという抑止力があるからだ。

 

「不満はあるだろうがグレアと共にいれば自分も安心して任務に専念できる。それに・・・・いやなんでもない。」

「なんだよお前らしくない。言いたいことあんなら言えよ。」

「いや大丈夫だ気にしないでくれ。そろそろ報告の任に戻らなくてはならないからこれで失礼する。」

 

話を打ち切りウィンターは廊下の奥へと向き直る。

 

「ウィンター、報告が終ったら私と一戦交えて欲しい。」

 

だが歩き出す前にエムが試合を申し込んできた。

 

「お前その体で何言ってんだ?」

「いや構わない。最強を目指すなら負傷時の立ち回りも学んでおいた方がいいだろう。」

 

オータムはあきれたがウィンターは生真面目なのかエムの期待に応えるべく承諾したのであった。

 

「おい本気か!?だってこんなボロボロだぞ!?」

「たいした問題じゃない。片方の腕が動くなら武器は持てるしいくらでも応用が利く。むしろ万全な状態でないと勝てないとかほざく奴がいたらそれこそ笑いものだ。エムにはいかなる状態でも勝てるように鍛えておきたい。」

「感謝する。」

「うわぁ・・・・お前ら結構ハードだな(汗)。」

 

鍛えることになると加減を知らない二人を見て呆れながらどこか微笑ましいと感じるオータムであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミーティングルーム。主に任務の報告などに使われる部屋。

その入口で鉢合わせするグレアとウィンター。

 

「げッ・・・・」

「む?」

 

この部屋の通路は格納庫から別々のルートから左右に分かれ収束し繋がってるため別の道から進んでいても向かうところが同じなら必然的に鉢合わせしてしまう。

 

「お前・・報告しに行ってたんじゃねぇのかよ?」

「少し立て込んでいたのでな。遅くなってしまった。」

「あっそ。」

 

お互い深く詮索するわけでもなく軽口を交わし部屋に入る。部屋の中は薄暗く前方に大きなモニターと周囲に複数の小さなモニターがありこちらの姿を捉える監視カメラが四隅の天井に着けられている。

 

「あ~かったるいわぁ~。何でオレが殺すことしか能のないバカ共の為に報告しなきゃいけないんだがまったく・・・」

 

これから組織の幹部と話し合うというのにグレアは面倒くさく悪態をつく。

 

「その誰にも物怖じしない性格には感心させられる。」

『全く、相変わらず口の減らない奴だねぇ、傭兵風情が・・・ッ!』

 

大きなモニターの右上の小さなモニターが光り、紫の髪の女性の姿を映し出す。

スティールドーンの幹部の一人、【エリザベス・ハクフォート】だ。

 

「テメェも同じ傭兵だろうが、二年の間に脳の老化が早まったか?オバサンw」

『チッ!このっ・・・!!』

『相も変わらず規律を乱す悪しき舌よ。その醜き口をゼクサ様の御前で開くことすら罪深い。』

 

続いてエリザべスを映しているモニターの下にある別のモニターからフルフェイスマスクの男が映し出される。

同じくスティールドーンの幹部の一人でゼクサの副官【トリスタン・アレキサンダー・クルーザン】。

正直彼の独特な口調は解りづらくて疲れる。ただでさえ出番も少なく口数も少ないのに癖のあるキャラで出ないで欲しかった。恨むぞ!

 

「まるで聖書みたいな言い回しだな。オレの挑発で規律が乱れるようならゼクサはその程度の指導者だったてことだなwだいたい品や礼儀なんかで世界が変わるか馬鹿馬鹿しい。テメェのその古臭い言い方も近代化改修して歴史に適応したらどうだ優等生君(オールドマン)w」

『き、貴様!!』

『安易な挑発に乗るな!お前(グレア)も組織の輪を乱すようなことをするんじゃあない!』

 

クルーザンを諫める新たな声、エリザベスとは真逆の左上のモニターに顔に傷のある褐色のいかつい男が映し出されていた。エリザベス達と同じ幹部の一人【ルード・ヴァン】だ。

スティールドーンの分隊指揮官を務める巨漢で隙あらば部下と共に連邦政府に襲撃をかけようとしているがグレアの指示で行動を制限されている。

 

「だったらテメェがまとめやがれ!テメェら無能共が馬鹿やってからオレが策を練らなきゃいけねぇんだぞ!」

『ウッ・・・』

 

グレアの剣幕にたじろぐルード。昔グレアの態度が気に喰わず作戦中に殺そうとしたのだが自爆に巻き込まれ死にかけたことがあり彼に強く言えないのだ。

部屋はすっかりグレアのペースにのまれ混沌を極めていた。そんな空気を打ち壊すかの如く中央のモニターが付き右目に眼帯を付けた強面の男が映し出される。

彼こそがスティールドーン、ひいてはシンジケートを統率する悪名高いテロリスト【ゼクサ・ノーマッド】。強権的、傲慢、雄弁。野心家、しかし彼の悪行は自らの内にある行動原理に明確に則っており、彼自身もそれを重視している。目的の達成を最優先とし、そのための手段を択ばない。

 

『・・・皆集まっているようだな。』

「おせぇぞゼクサ!人呼んどいて遅れるとか非効率的だろうが!!」

 

だがそんなことグレアには関係ない。組織のリーダーに対してもこの態度、部下である三人の顔(一名仮面の為解らないが)は穏やかではなく寧ろ恐れている。

 

『それはすまなかったな、こちらもなにかと忙しくてな。・・・さて話を聞かせてもらおうか?』

「ハイハイなるべく早く終わらせてやるかんな。」

 

流石に自分から長引かせることはしないらしくグレアは煽ることはぜず普段とはうって変わって丁寧な口調で任務の結果報告を述べる。

 

「任務実行前に用意した異星人とその機動兵器を導入し連邦軍の意表を突くことに成功。及び軍の注意を広場に集中させあえてスコートロンを狙っているとにおわせ主力である遊撃一番隊を格納庫へ誘導、亡国機業のIS乗りに足止めさせ時間稼ぎにあたらせる。その間に格納庫内に仕込ませておいた転送装置で内部に侵入、保管されていた新型PS【スコートロン】の奪取を完了した。多少イレギュラーな事態が発生し連邦の未確認PSと交戦、スコートロン胸部装甲を斬り刻まれることになったが部隊全員撤退し事なきを得た。・・・以上がスコートロン強奪任務の結果だ。どうやら噂の新型は連邦が既に着用してたようだ。まんまとやられたよ。」

 

報告を終えたグレアはヤレヤレと手を振り一息つく。

 

『あれだけ大口叩いといて・・・・連邦が本物の新型を持っていたのなら何故奪わなかったッ!!』

 

グレアの報告を聞いてルードが声を荒げる。

だがグレアは呆れたと言わんばかりに溜息を吐き説明をする。

 

「はぁ~。オレの任務は”スコートロン”の強奪であって未確認PSの強奪は請け負ってねぇんだよッ!!そんなにとって欲しかったんなら追加依頼しとけ馬鹿が!なんならテメェが奪って来いよ?どうせ基地手前でお縄に着くのが関の山だろうがなw」

『グ、グレアテメェッ!!』

「もっとも新型PSの情報はオメェさんらからの情報だったからなぁ~連邦の情報操作に踊らされ偽の情報をつかまされたんだろう。それはそちらの落ち度ってもんじゃあねぇのかなぁ~ああッ?」

『はぁ!?調子乗ってんじゃないわよガキがッ!!』

『やめろ馬鹿共。グレア、お前から見てその新型はどう思う?使えるか?』

「ふ~む・・・結論から述べると無用だな。スコートロンを超える性能は驚かされるがこれといって凄まじい機能があるわけでもなくただ固いだけ。まさに盾そのものだ。お前の理想の役に立つような代物ではなかったな。(他に機能があれば別だが)」

『そうか、お前が言うのならそうなのだろう。今回はよくやった。それでウィンター、例のモノは手に入れたのか?』

 

グレアの説明を聞き納得したゼクサは興味なさそうにウィンターの報告を聞く。

 

「依頼にあった神性異物と聖遺物は研究班に送り解析中だ。近いうちにそちらに解析結果が送られるはずだろう。」

『わかった。計画は着実に進みつつある。【アンリミテッドワークス】が完成した今我らの戦力は連邦を凌駕した!後は【ティアマト】の完成と例の物が手に入れば良いのだが…進捗はどうなっている?』

 

ゼクサはウィンターの報告を淡々と聞きすぐ視線をグレアへ移す。

 

「だいたいの設計は完了してそっちの技術者が組み立ててる筈だ。だが肝心の炉心なんだが……まだ目途が立っていない。一つでアレをまかなえるだけの火力がなぁ~……世界を燃やすほどの炎があれば手っ取り早いんだがなぁ~例の物はオレの専門外なんでそっちで何とかしてくれ。」

『貴様!ゼクサ様の手を煩わせ『よかろう。』ゼクサ様!?』

 

グレアの態度に耐え消えなくなったクルーザンが声を上げるがゼクサの了承に驚き言葉を失う。

 

『会議はここまでだ!お前たちは持ち場に戻り役目を果たせ!グレアはスコートロンのデータを提出しろその後は改造するなり好きにするがいい。』

『『『はッ!!(御意!!)』』』

「ヘイヘイ」

 

幹部を映したモニターが消えゼクサのミニターだけが残るのを確認したグレアたちも部屋を出ようと扉に向かう。

だが・・・

 

『グレア、お前はそこに残れ。』

「あん?」

 

グレアだけ呼び止められた。

ウィンターは一度グレアを見据え、すぐに扉へと向き直るのであった。

部屋に一人残されたグレアは心底イヤそうに溜息を吐く。

 

「で?なんなんだよオレだけ残して?他になんか要件があんのか?」

『イイヤ。私からは何もない。・・・・私からはな』

「・・・・・・・・・・あぁそういう事か」

 

含みのある一言で何かを察したグレアは視線を全モニターに向け、右端の一つのモニターが薄く輝っていることを確認する。

 

「最初からずっと見てたんだな・・・・ディセンダー。」

 

―――――キタイドおリnO働キヲシテイル用ダナ。――――

 

ノイズの混じった声のような意識のようなものがグレアの頭に直接伝わってくる。

それはディセンダーの声であり聞こえるのはゼクサを含んだごく少数、指を数える程度しかおらず、グレアもその一人なのだ。

頭に入ってくる不快感にグレアは眉を顰めながら口を開く。

 

「言われた通りの事を忠実に従っただけだ。わざわざそんなことを言いに来たのか?」

 

―――イイ矢。御マエ2アタラシイ任務をヨウイシタ。hi奇ウケ手呉れるな?――――

 

「はぁ?ついさっき帰ってきたのにもう次かよ!人使いあれぇなぁ。」

『グレア、ディセンダー様にそのようなk』

 

―――鎌ワン。―――

 

『ハッ!失礼いたしました!!』

 

目的の為なら手段を選ばない冷酷なゼクサが相手に媚びを売る異様な光景。何度も見てきたグレアにはもう見飽きた光景で早くこの場を出たいと本音を押し殺しながらディセンダーの真意を探る。

 

―――報酬ㇵ素手にワタシてR。Zuぼん乃ヒダリノぽけっとを白べテミロ―――

 

一瞬「は?」と思ったグレアは言われた通りズボンの左ポケットに手を突っ込む。

ポケットの奥の方まで突っ込んだところでなにかビンのような物が入っていることに気づく。それを取り出してよく見ると、ホルマリンのような液体で満たされた筒状のカプセルの中に骨のような物が固定されていた。

一目見た瞬間グレアはそれを理解した。それはグレアがずっと望んでいた代物だったからだ。

 

「こ・これは!?」

 

―――オマエがずっと欲しがっていた神性異物・【アシュヴァッターの脊髄】だ。それで望んでいたモノを作るがいい。任務はもう一度ポイント3に戻りある人物の手伝いをしてもらう。―――

 

いつの間にかディセンダーの声はノイズが除かれており、音が二重に重なったようになっていた。

【アシュヴァッターの脊髄】出自不明の背骨のような神性異物。不滅の炎を宿し、被験体に移植したところ体を燃やした例のある危険な代物。

 

「・・・いつの間に?」

 

―――メディカルルームでは随分リラックスしていたな。基地の中とはいえ油断大敵だぞ―――

 

「ハイハイそうですね。・・・受け取った以上引き受けるのはいいが、なんでオレなんだ?他の連中でもよかったんじゃないのか?」

 

―――これはオマエにしか務まらない仕事だ。それにこの任務はお前にとっても必要なものだ。お前の命運を左右する程にな・・・、どうあがこうとお前は己の選択から逃れられないのだよ。それが、世界の意思(運命)だ―――

 

【運命】。その単語を聞くだけでグレアの思考は加速し否定の眼差しをディセンダーに向ける。

 

「くだらねぇ。そんな誰が書いたシナリオで全て決められると思うな!!オレの選択はオレが考えて導き出した答えだ!!オレが此処にいるのもオレの頭脳で解き明かした証明だからだ!!その結果すら運命というのならオレはその運命を焼却して証明してやるッ!!よぉく見とけディセンダー!オレが世界を焼き払い全てを無に帰えすさまをな!!オレは・・・・・運命の焼却者だ!!」

 

―――・・・・・・・・・フッ!あぁ、楽しみだよ。お前が人の歴史を燃やし運命を否定する未来をな!!―――

 

しばし沈黙が続いた。一瞬のような、永遠のように思える長く短い虚無が流れた。

頃合いと判断しディセンダーが口を開くことでその沈黙を破る。

 

―――話は終わりだ。自分の部屋に戻り任務の準備にあたれ。―――

 

「あぁ、そうさせてもらう。」

 

モニターに背を向け一直線に部屋を出ていくグレア。グレアが退室したのを確認したのちディセンダーが口を開く。

 

―――奴の任務が終ったら研究データをすべて回収しろ。―――

 

『は?』

 

意外な命令に間の抜けた声を出すゼクサ。だがディセンダーは冷酷に内容を伝えていく。

 

―――この任務で奴は我々と袂を別つことになるだろう。どれだけ世界を憎もうと愛情で目的を見失うのが(グレア)と言う男だ。だが奴が残すものはお前達の役に立つだろう。それが世界の意思だ。―――

 

『はっ!仰せのままに!!』

 

会話は終り、モニターの電源が切れ部屋は暗闇に包まれた。

 

 

 

 

グレア視点

 

ようやく目的のブツを手に入れた。こいつがあればオレの理想のPSが作れるはずだ。

既に設計は出来ている。後はコイツ(神性異物)のマッチングが上手くいくかだが、、、、とラボに着いたな。

 

「ただいま~」

『お帰りなさいませ、グレア様。』

 

扉をくぐるとホログラムの球体がオレを出迎える。

彼女は【ソーニャ】、オレが作った対話インターフェイスを搭載した自作の人工知能だ。元々はオレのメンタルケアを目的に作った医療用AIだったがPSの設計や作戦の立案の検証などを一緒にやっているうちに学習しいつの間にかオレに助言などするほど賢くなってしまった。その為今は医療用でなくラボの研究開発補佐を担当している。

 

「ソーニャ、〈様〉はいらないと何度も言っただろう。まぁいい、すぐに【アルマデル】の設計図を開いてくれ。コイツの解析も忘れるな。その上で何処に組み込むのが最適か検討する。」

『かしこまりました。』

 

ラボ中央のモニターまで進み展開された設計図と神性異物のデータを見比べてみる。

 

『対象から検出される物質に微弱なマナを検知しました。アルマデルの設計上、神性異物を組み込む場合、人体の浸食を視野に入れなければいけません。』

 

さっそく問題点を突き付けてきたな。だがすでに対応策は考えてある。

 

「確かに神性異物の力を使うには人体の浸食は必要不可欠だ。だが直接でなくても力を抽出できるはずだ。神経接続プラグを利用した間接的な疑似浸食ならどうだ?理論上は可能なはずだが。」

『・・・・・・・・・・・可能ではありますが危険です。神性異物を使用して無事で済んだ例がありません。疑似とはいえマナ由来の物は基本的人工物との相性が悪いです。』

 

確かにそうだ。マナはどんなものであれ人間に関りのあるものをマナに変換する浄化現象を起こす。ゆえにマナを動力にする技術がなく機械とは相性が悪い。

オレがいなければ話は別だが。

 

「マナは濃度によって浄化機能が左右される。微弱なマナ濃度なら浄化機能は低くPSに組み込んでもさしたる問題はない。それに、濃度を薄めて動力にしたエーテルリアクターもある。リアクターに接続すればマナの問題も解決するんじゃないか?」

『・・・・・・・・その答えが出ることは予測しており既に製造に至る段階まで考えた時点でもう理解していますが、本当によろしいのですか?』

 

ソーニャの言いたいことは解る。ずっと一緒に研究してきたんだ、オレがアルマデルを完成させることはどれだけ討論しても避けられないと言うことを。

そして完成させればもう後戻りはできないことも。

 

「フッ、いまさら自分の命なんて惜しくもないさ。初めから自滅するのを前提に設計してきたんだ。世界を、いや、この星を焼き尽くすためにオレはオレの全てをなげうって今まで生きてきた。あの日、オレの世界を否定した世界に報復するためにな!だからこそ必要なものを探し、解らないものを理解するために新しい知識を手に入れた!」

『おかげで科学者なのに医者やら考古学者じみたことをしていましたね。傭兵もでしたが』

「茶化すなよ(汗)。とにかくだ、アルマデルは完成させる。今まで得た知識と技術を駆使すればこの星を灰燼に帰すことは不可能ではない!荒れ地を緑豊かな大地に変える事も出来たんだ、今回だってそうさ、誰もが出来ないとほざきやらなかった空論を現実にし、全てを灰に帰してやるッ!!」

 

熱くなり語っていた自分の恥ずかしさを覚えたがソーニャは口を挟まず全てを聞いていてくれる。そこが機械のいい所でもあるが、それ故にこの世界にはオレを案じてくれる奴はいないんだと痛感させる。

 

『解りました。ですがこのことを友人のヴォルフェス様とヨハン様に黙っておくのですか?お二人はグレア様の事をとても信頼されておりましたのに。』

 

嗚呼そういえばあいつらがいたか。確かにあいつらは良い奴だ、こんな世の中でも夢に目指して必死に生きてる。

・・・・・・・・・だからこそ反り合えねぇ、オレのこれは夢じゃなく手段だ、アイツらの目指す場所とオレの行き着く先は全くの真逆だ。

それに・・・・・・・・オレは○○○○さえいればよかったんだ。

だからいいんだ。アイツには悪いが、この星もろとも消えてもらう。

 

「フゥ~。この話は終わりだ!さぁさっそく製造に移ろう!計算が合っていようと実際に試さないと解らないこともあるからな。一つ一つ検証していって確実のモノにしてやろうッ!!」

『かしこまりました。』

 

 

火種は蒔きにくべられ燃え上がった。後はこの火が世界中に広がり炎炎の焔となるようにするだけだ。

○○○○、待っていてくれ、もう少しで世界に復讐できるから・・・・・・・・・・・・・・あれ?

 

 

 

 

 

世界を憎む男は自分の目的が叶うことに喜び歪んだ笑みを浮かべるが自分が涙を流していることに気づき動揺するのであった。




ヨハン「う~~~~ん・・・・」
パラケルスス「おやヨハン君どうしたんだい?」
ヨハン「あぁパラさん。ソーニャさん見て思ったんだけど、うちのアニキ、傭兵なのに科学者ていうのがよくわからなくてどういうことなのかな?って。」
パラケルスス「パラさんて・・・君はウィンストンて知ってるかな?」
ヨハン「煙草のですか?」
パラケルスス「いや、それじゃなくてね。まぁ彼は戦いながら考える人と考えればいいのさ。」
ヨハン「戦いながら考えるって、なんか余計に解からなくなってきましたよッ!」
パラケルスス「まぁ彼はどれだけ行ってもハルクが関の山。どれだけ賢くなっても彼はトニー・スタークには成れないんだよ。」
ヨハン「さっきからなに言ってるのかよく解らないんですがぁッ!?」


次回「騒乱の夜明け」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。