ユニゾン・ワールド   作:新人ガイア

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2融合事変前の世界(折紙・燎子)

AIT(天草インテリジェンス)により顕現装置(リアライザ)が普及し魔法が日常化した世界。
折紙は魔術による悪用を防ぐため魔導士養成学校で魔術の基礎を学び、燎子が率いる国連魔導士師団に入団した矢先融合事変に巻き込まれた。


第七話「休日の第三基地」

やや曇りがかった空の昼下がり、エンジンの駆動音鳴り響く第三基地の自室で天草一颯は悩んでいた。

 

(療養とはいえ休みを貰ったのは良いのだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この休みをどう有効活用すればいいんだ?)

 

軍属したとはいえ初陣から即重症しリハビリと軍に復帰するための訓練に明け暮れていた彼にとって初めて何もしない日が訪れたのだ。今までの自身の課したスケジュール通りに動いていたため、予定も何もない休暇をどうしたらいいのかその答えを彼は出せない。

 

(博士から渡された資料もとい映画を見たが参考になるものはなかった。一本目のキャプテン・アメリカは星条旗を模した柄のタイツ着た変態が盾を投げたり縁で殴ったりする非現実的な映像だし二本目のイングヴェイはほぼ女の口説き方だけだった。博士は俺に何をさせたいのか?四時間以上時間を無駄にしてしまった。)

 

渡されたセブンスライトの参考資料は参考のさの字も役に立たず昼過ぎの虚無期間の存在を大きく見させるだけだった。

 

(う~ん・・・・これが暇を持て余すと言うものか。実感すると何もしないというのはなぜか危機感を感じてしまうな!いや冷静に考えてみろ、俺はこの基地に来て日が浅い。そしてこの基地の事をよく理解していない。地図はあるが知っているのと実際見るのとでは理解がだいぶ違うのだ。これだけ広い基地だ各施設の事を知ることも隊員にとって必要なことだと思う。)

 

思い立ったが吉日。一颯は軍帽をかぶり(私服など無く常に軍服を着てる)部屋を出るのであった。

 

 

 

部屋を出て基地の正面ゲートまで歩いた一颯は基地に向かい合い地図を開く。

 

「此処が現在地で、ここが研究施設、その横が訓練施設で中央が食堂、それから・・・」

 

東京湾を埋め立て建設した第三基地の広大な施設の場所を把握し何処から見ていくか思案する。

 

(流石に全部を見て回るのは無理だなこれだけ広いと一週間はかかる。なら最初は軍港でも見てみるか。海外のエリアに装備を運ぶ船や噂のセイレーン艦隊が見れるかもしれない!)

 

セイレーン艦隊とは連邦軍がエイリアンの技術や顕現装置(リアライザ)などの技術で建造した最先端の飛行船や戦艦などの総称である。ビーム兵器や最新の艦載機を惜しげもなく使われ海の支配者を自負する程の存在なのである。

軍港は正面ゲートから一番遠いところである為一颯は移動手段に悩む。ただでさえ広い基地を流石に徒歩で行くのは時間が掛かる、その為、地図にのっている地下道に目を付けた。

各施設の入り口に出れるよう無数に張り巡らされている地下道はエスカレーターを地面に引いたような動く歩道【ムービング・ウォーク】が備え付けられており徒歩でも最速で移動できるようになっている。

行先を決めた一颯は地図をしまい地下道に向けて歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

「ようやく着いた・・・」

 

当初の予定を大きく外れ地上を携帯用セグウェイで移動した一颯は腰に手をやる。

 

(まさか地下道がこの前の襲撃で軍港側の通路が崩壊してるなんて…五分で着くはずが十数分も掛かってしまった。)

 

ため息を吐くも軍港から香る塩の匂いにより不満は消えていく。

改めて軍港を見渡すと三日月のように内側に広がる造りをし陸上には大量の格納庫が建造されている。その船着き場の左奥から手前にかけて黒塗りの未来的なつくりをした船がいくつも並んでいた。表面の模様はネオンの様に点滅しておりどこか不気味さを感じさせる。

 

「駆逐艦Pawnに軽巡洋艦のKnightがニ十隻ほどか、噂の飛行艦のデビルフィッシュが見れたらよかったんだけどなぁ・・・あれは?」

 

件のセイレーン艦隊を魅入っていたら反対岸に大きな輸送艦が停泊してるのに気が付いた。船首には皇神グループのエンブレムがプリントされており船から黄緑色のカマキリのような見た目の機動兵器が何台も格納庫へと移送されていた。その光景を眺めていた一颯は見慣れた人物を発見し駆け寄る。

 

「タクマ隊長!」

「ん?あぁ天草か、どうしたんだこんなところで。」

「療養のために休暇を頂いたのですが普段働く時間に何もしないというのはとても落ち着けず、折角なので基地の施設を見学しようかと思って。タクマ隊長は今何を?」

「見ての通り皇神グループから納品された戦車の搬入作業の指揮さ。見えるだろ、第九世代戦車【マンティス】だ。」

 

船の方に視線を向けると船から降りてくるマンティスが列を成し格納庫に向かって走行していくのが見える。中にはEDFの搭乗式強化外骨格コンバットフレームに担がれて運ばれるのもいる。

 

「こうしてみると意外と機動兵器をまだ使ってるんですね。」

「そうだな、PSの普及によって兵器の需要が一気に変わったが、中にはビークルの方が上手く扱える隊員も少なくない。そこで政府は利用数の多い兵器を選別し生産と供給の管理を行うようにしたんだ。だから今でもコンバットフレームとかの人気あるビークルは健在なわけだ。」

「そういえばタクマ隊長達の世界の【ウォーメック】てビークル見なくなりましたよね。二年前は他のビークルと一緒に活躍してたのに。」

「俺達の世界では結構強かったがほかの世界のに比べたらデザイン的に問題があってな。」

「あぁ~、某宇宙戦争に出る帝国軍の歩行戦車に似てますもんね。」

 

製造されなくなった理由がなんともおかしなことに「ハハハ・・・」と苦笑いをこぼすタクマであった。

作業の手を緩めず雑談をするタクマ達のもとに歩み寄る男がいた。

桃色の髪と修道士のような服を着た長身で顔の整ったイケメン。

近づいて来るのに気づいた一颯はそう思った。

 

「やぁタクマ隊長。先程予定通りマンティスの納品が終ったよ、皇神から連邦への愛をたっぷり込めてね!!」

 

突如愛を囁き男は両手を広げタクマに報告をする。何故か男の声は妖艶で色っぽさを感じさせる。

満足したのか不敵に笑いポーズを解いてようやく一颯の存在に気付く。

 

「あや?そこのキミは誰かな?」

「彼は最近一番隊に入った新入りの天草だ。」

「天草一颯です!階級は一等兵であります!」

 

敬礼をし自身の紹介する一颯を見た男は雷に打たれた衝撃を感じたじろぐ

 

「んはぁ~!?」

 

髪が揺らめき服がしわくちゃになるのも構わず自身の体を撫でまわす。

 

「嗚呼!嗚呼なんてことだ!この胸の高鳴り、これはまさしく・・・・・・・・・愛だ!!」

「愛、ですか?」

 

いきなり意味不明なことを口走る男に一颯は臆することなく聞き返す。

 

「あぁそうだ少年!ワタシの名はパンテーラ。愛おしい少年よ、ワタシの愛を受け止めておくれ!」

「え?いやそれは困ります。」

 

いきなりの告白に当然困惑する一颯。

 

「俺には愛というのが何なのかよく解りません。せっかく貴方の様な美しい方の申し出に、俺はどう受け止めればいいのかわからない・・・」

 

否、真剣に悩んでいた!

一颯の返答にとうのパンテーラは驚いたように目を見開き、タクマもまさかの答えに呆然していた。

 

「いやまともに答えるな!コイツは誰にでも愛とかなんとか言ってるんだ。というかまさか…そっち系なのか?」

「そっち系?」

 

一颯はタクマの言うことの意味が理解できず首をかしげる。

 

「フ、フハハハハ!!これは驚いた!愛を知らないとは実に愛らしい!!少年よ、愛を知らないのなら学ぶがいい!愛を理解した時、改めてワタシから愛を送ろう。」

 

パンテーラの手が一颯の顎を捉え、クイッと持ち上げる。

 

「・・・・・穢れの無い綺麗な目だ。その輝きはきっと世界を照らしあまねく人に愛を広げるだろう。」

 

一颯の瞳を凝視しうっとりとした表情でパンテーラはささやいてくる。

そこへ緑のプロテクターとフルフェイスのヘルメットを着けた皇神の構成員の男がやってきてパンテーラに敬礼をする。

 

「パンテーラ様!まもなく本艦が出航します。急ぎ乗船してください!」

 

マンティスの搬入が終り、輸送船は錨を引き上げ皇神本社へ戻る為の準備が進められていた。

パンテーラは酷く残念そうな顔をし、一颯に添えている手を名残り惜しそうに離すのであった。

 

「嗚呼、もう別れの時が来てしまったのか!胸躍る一時ほど早いものは無く、愛のように儚い・・・」

「そう落ち込むことは無いと思いますよ、織姫と彦星のように離れていても再びあいまみえる時が必ずきます。それが人の縁。これも貴方の言う愛なんじゃないんですか?」

「ホウ!?なんと素晴らしいことを言ってくれるんだ君は!!そうだね、また君と会えるという()を糧にワタシは行こう!少年よ!しばしの別れだ!次会う時はゆっくり愛を確かめ合おうではないか!!」

 

また会うと言うことに希望を見出したパンテーラは意気揚々と輸送船へ歩き、乗船する前に今一度一颯を見てニヤリと笑みを浮かべるのであった。

 

 

パンテーラを乗せた輸送船が軍港を出て徐々に遠ざかっていくのを確認しようやく一颯が口を開いた。

 

「とても素敵な方でしたね。」

「本気で言ってるのか!?」

 

変人ともいえるパンテーラを素敵と言える一颯に今一度驚きの声を上げるタクマ。

とうの一颯は彼が何故驚いているのか解らず首をかしげている。

 

「では俺は他の施設を見ていくのでこれで失礼します!」

 

一颯はタクマに敬礼をしその場を駆け足で去っていく。

 

「・・・・・・・大丈夫かな?」

 

走り去る一颯を見ながらタクマは彼の今後が不安で仕方が無いのであった。

 

 

 

 

タクマと別れ軍港を後にした一颯はまた携帯用セグウェイで移動し、トレーニング施設前にたどり着く。

 

「此処は肉体強化に必要な器具が充実してるらしいから今後使うだろうな。」

 

地図によると隊員の希望に合った運動器具からいろんなスポーツのコートなどが地下に何個も用意されてるらしい。トレーニング施設に限らず第三基地の各施設は地下に幾つもの部屋を設けておりこの基地だけで第三の全てをまかなっていると言っても過言ではない。

早速玄関をくぐりフロントで利用手続きを済ませた一颯は一階の運動器具広場を探索した。

 

「このあたりは健康ランド的な手ごろなダンベルから体操選手向けみたいな大型なの器具までそろってるんだな・・・・・ん?」

 

ならんでいる道具を見回していると奥のサンドバックが並ぶエリアでまた見慣れた人物を目撃してしまった。

深い溜息を吐きながら一颯はサンドバックをボッコボコに殴り続ける彼女に声をかけた。

 

「謹慎中になにやってるんですか、日下部副隊長。」

 

許可もなくグランドクロスを使用したため謹慎処分を受けた二人のうちの一人日下部燎子がサンドバックを見るも無残なほどに殴り壊していた。呼吸を整え規則正しくブレのないまっすぐなストレートでサンドバックを吹き飛ばした所でようやく一颯に気付く。

 

「あぁ一颯じゃない。謹慎て言われても部屋でじっとしてるなんて性に合わないし、一番隊は任務とあらば謹慎でも出動しなきゃいけないからこうして体を慣らしてるのよ。それに反省してるなら過去の失態の改善の為にも鍛えるしかないわ!!」

「言い訳になってませんよそれ・・・」

「細かいことは気にしない気にしない!てかアンタこそ何してんの?筋トレ?」

 

謹慎の事など気にも留めず燎子は一颯に詰め寄る。

今の燎子の格好はトレーニングウェアとスパッツという普段の軍服とは違い肌の露出が多く、細マッチョ系の体と胸の膨らみがあわさりとても扇情的で一颯は普段の燎子にない色気に戸惑ってしまう。

 

「///!んんッ!俺は折角の休暇ですので基地の施設を見て回ろうかと思って」

「で、あたしを見つけたと。なら観るだけじゃなくやってみたらどお?知ってるのとやってるのとでは大きく違うんだし。はいこれグローブ!すぐ新しいの掛けるから。」

 

物を言わさず燎子はグローブを一颯に渡し、新しいサンドバックを掛けて場を整える。

 

「はぁ、そういうのでしたらお言葉に甘えさせてもらいます。」

 

特に断る理由もないため一颯はグローブをはめ、サンドバックの前に立ち構えをとる…

 

…が!!

 

一颯は目の前に吊るされてるものがサンドバックではないことに気付いて思考が停止する。

 

「あの・・・副隊長?コレは一体?」

 

それは・・・サンドバックというにはあまりに大きすぎた・・・・大きく、分厚く、重く。そして鋼鉄すぎた。

 

「ん~それ?損傷が酷くて廃棄される予定だったラウンドハンマーの装甲板よ。」

(なんちゅうもん使ってんだこの人!?)

 

よく見れば吹き飛ばしたサンドバックも同じ装甲板だった。表面はボッコボコに凹み、かつての原形をとどめていなかった。

ふと一颯は燎子の手を見て驚く。先程まで装甲板を殴っていた手はテーピングなどしておらず、拳にいくつもの傷跡があったのだ。

 

「まさかいままでもコレを殴ってたんですか?」

「そうね、普段は重火器バラバラ撃ってるけど最終的に頼れるのはこの拳だけだからね!敵は天使とか並の相手じゃないし普通のトレーニングじゃ意味ないのよ。だから鉄を殴ることにしたの。でもこのところ張り合いなくてねぇ~タングステン合金とかすぐ壊れちゃうの。ビブラニウムとか希望してるんだけどなかなか許可が下りないし、はぁ~退屈だわ。」

(おいおい嘘だろ!?戦艦の主砲でも耐えれるラウンドハンマーの装甲を素手で壊すとか軽く常人の域を超えてるだろ!?この人の体どうなっているんだ?)

 

あまりにも常識離れした燎子の腕力に一颯は驚嘆する。だが同時にこんな人外と一緒にトレーニングをしてもいいのかと疑問に思ってしまう。このままだと確実に装甲板を殴り続ける、そんな未来が頭をよぎってしまった。

いい知れない不安を抱えた一颯はそっとグローブを外し燎子から離れるように後ずさる。

 

「すいません副隊長、他の施設も見て回りたいので俺は此処で失礼します。」

「え?」

「サイタマはお一人でなってください!!失礼しましたッ!!」

 

クルっと燎子に背を向け全速力で施設を脱出する。いきなりの事で何が何だかわからず、燎子は呆然と一颯の後姿を眺めていた。

 

「・・・ハ!?ちょっと!なんでいきなり埼玉が出てきたわけ!?おぉ~い!!」

 

漫画やアニメを見ない燎子にはサイタマの意味など知らず、その叫びは一颯に届くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

燎子の装甲板トレーニングから逃げた一颯は格納庫エリアにたどり着いた。

ここは各部隊専用の格納庫が並ぶエリアで各部隊との連携・情報の共有をしたり技術班に自分の装備を強化してもらうなど次の任務に備える場である。

辺りを見渡せばトラックや装甲車、PSを纏った隊員たちが行き交い緊急時でもないのに慌ただしかった。

縫うように隊員たちを避けつつ激戦区特有の空気を肌に感じながら一番隊の格納庫たどり着いた。

シャッターは開いており中に入るとクアッドリガとアリス・リコリスが待機状態で鎮座していた。装備の細部に至る所まで整備が行き届いておりまるで新品のような輝きを放っていた。

装甲も入念に磨かれたのか照明の光を反射し鏡のように眺めている一颯の姿を映し出している。

 

「はぁ~・・・凄いな(整備が)。」

「本当に凄いですよね(機体が)。」

 

あまりにも素晴らしい仕上がりに見入っていた一颯がポツリと感想を述べると一番隊の整備士、更識簪が一颯の隣に立っていた。どうやら見るのに夢中で簪がいたことに気付いていなかったようだ。

 

「あぁ、更識さんも整備班に入ってたんですね。」

「私は博士の助手ですからね、必然的にそうなります。」

「じゃあこれは更識さんが?」

「あ、いえ、、これは博士がほとんど自分で仕上げて、私はプログラミングを少しだけ・・・」

 

先ほどまで落ち着いた態度でせっしていた簪だが整備の事を聞いた途端あたふたしだし気落ちしたのか黙りこくってしまった。聞いてはいけなかった話題と察し一颯はすぐさまあやまり場の空気を戻す。

簪を気にしていないようで一颯はホッと安心し、ふと疑問に思ったことを思い出し簪に問いかける。

 

「昨日の紹介で気になっていたのですが、IS学園の生徒だった貴方が何故博士の助手に?」

 

先日の自己紹介で彼女がIS学園の生徒であったことは知っている。だが彼女がなぜ学園を離れウィル博士の助手となったのか、一颯はその経緯と理由が気になっていた。

一颯は知らないが更識簪は元日本の代表候補生でそれなりに優秀であった。わざわざ連邦軍に入隊する必要もなく学園でISの研鑽を積む事も出来ただろう。

簪は一度呼吸を整え語り出す。

 

「きっかけは大したことじゃないです。融合事変が起きてみんなどうしたらいいのか解らないなか天使に襲われて必死になって戦って、敗れて、専用機を失って途方に暮れていた時博士に出会って言われたんです。『武器を振り回すだけが戦いじゃない。情報を集めたり調べることだって立派な戦いさ。』て。・・・一颯さんは今の行方不明者の数をご存知ですか?公式に発表はされていませんが数億人にのぼるんですよ。」

「そんなに!?でもその数はおかしくないですか?」

 

簪の話に驚きを隠せない一颯だが彼女の話には矛盾があった。聖罰により数億人の死者が出たのは解かる、だが彼女はそれとは別に行方不明者がいると言ったのだ。

 

「なにもおかしくはないですよ。そもそもこの世界は複数の世界が混ざり合って今の形になってるんです。では融合事変が起きる前の世界の人たちは一体何処に行ったと思いますか?」

「それは・・・」

 

一颯は答えることは出来なかった。自分が知り得なかった現実が今のこの世界に起きていることを自覚することで頭が一杯だった。

 

「私の大切な人もその一人に数えられています‥‥でも、私は今もあの人が生きてると信じています!あの時、博士の手を握った時決めたんです。必ずあの人を見つけ出すって。戦う武器はないけど私は自分の知識と技術で戦っていきます!!」

 

彼女の目に迷いはなく力強かった。そんな彼女の覚悟に一颯も力になりたいと思うのだった。

 

「きっと見つかりますよ。力になれるか解りませんが俺も出来るかぎり強力しますッ!」

「フフ、ありがとうございます。ところで、一颯さんはなぜこちらへ?非番だった筈では?」

「そうですが、これといった趣味も無く時間がもったいないと感じて、せっかくなら基地の施設を見て回ろうかなと。あ!鳶一隊長見てませんか?さっきトレーニング施設で副隊長が謹慎無視して鍛えてたのでまさかと思うんですが。」

「あ~・・・あっちの奥でくつろいでますハイ。」

 

裏口に続くドアを指さした簪は気まずい表情を浮かべる。先程の自身に満ち溢れた目は光を失い関わりたくないかのようにドアとは逆の方向を見つめる。

 

(なにがあったんだ?)

「それじゃあ私は仕事があるのでッ!セブンスライトの事でなにかあったらラボの方に来てください!!」

 

急用を思い出したのかそれともその場を離れたいのかそそくさと走って(逃げて)いった。

残された一颯はただ呆然と隣のラボへと避難する簪を眺め、しばらくして折紙がいる裏口へと向かうのであった。

扉を開け外に出ると目に映ったのは山積みになったタイヤやビールを入れるかご、折りたたまれたダンボールが区切りとして敷かれている柵にのしかっていた。

どうやら不用品置き場として使われているみたいだ。

そんなゴミ溜めの真ん中に彼女(折紙)はいた。折紙はアンプに腰掛け自前のエレキギターで曲を奏でていた。

ビートを刻み、軽快に絃を弾いく、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯で。

 

(歯ギターーーーーーーーーーーーーーーーー!?)

 

普段の冷徹なイメージからは想像できないヘビーでメタルな演奏をする折紙に一颯は驚愕し度肝を抜かれていた。

 

「・・・・なに?」

 

一颯に気付いた折紙が絃から歯を外しギターを膝に置いて問いかける。

声を掛けられた一颯は放心状態だった意識が覚醒し我を取り戻す。

 

「ハッ!!すいませんあまりにも想像だにしなかった光景を目の当たりにしたので思考が停止していました!」

「そう、・・・意外だった?」

「いえ、その・・・歯ギター、するんですか?」

「ええ。学生の頃バンド組まされてそれからずっと。歯ギターは良い、音程が直で伝わって気分が落ち着く。」

「へぇ~そ、そうなんですか。(歯ギターで高揚してる・・・こんな隊長はじめてみた)。」

 

ギターを掲げ歯ギターについて熱く語る折紙。自分は一体何を聞かされているのか?そんなことを思う一颯を見て何を勘違いしたのか、折紙がギターを差し出す。

 

「弾いてみる?」

「え?」

「ギターに興味ないの?」

「いや、(ギター自体は)興味がない訳では無いんですが…(歯で弾いた絃がなぁ。)」

「なら持ってみて。」

「あ、はい。」

 

半ば強引にギターを持たされ折紙が肩を掴む。

 

「それじゃあ歯ギターの練習を始めましょう。」

「なんで歯ギター前提なんですか!?」

「歯ギターしか弾けないから。」

「ウゾダドンドコドーン!」

 

ギターを突っぱね折紙から距離を置く。

 

「そ、それはまたの機会でお願いします!」

「そう、それは残念。」

 

教えを断られた折紙は残念そうにうつむき、指でチューニングをし始める。

 

(弾けるんじゃん!)などいう思いは押し殺しあらためて折紙を観察する一颯なのであった。

 

「それにしても、やっぱり隊長も謹慎無視してここにきたんですね。さっき副隊長がジムでトレーニングしてましたよ。」

「一番隊はどんな時でも最前線で活躍する部隊、だから謹慎中であっても出動は絶対。なら部屋で何もしないよりこうして出撃の準備をした方が反省になる。」

「うわッ!副隊長と似たような事言ってる!!」

「それは心外。副隊長はなにも考えず本能で動いてるだけ、私はプランを考え効率的に動いている。」

「五十歩百歩も甚だしいですよ!!」

 

ビシッとなにもない空間をたたきツッコむ一颯、度重なるツッコミで疲れ息が荒くなっているが折紙はそんな事露知らず問いただす。

 

「それで、なにかよう?」

「いえ、ようというほどでは無いんですが・・・基地の場所を把握しようとあちこち見て回っている所存で。」

「そう・・・研究施設は関係者以外立ち入りを禁止されているからおすすめしない。新兵なら尚のこと。」

「そうでしたか、どんな装備を作っているか気になっていましたが残念です。」

 

最先端の軍事技術をお目にかかれないことに大きなため息を吐き一颯は肩を落とした。

 

「・・・休みなのにやりたいことはないの?趣味とか、それくらいあるでしょ?」

 

休日なのに基地内を散策し仕事に近いことをする一颯。折紙はそんな一颯に違和感のようなモノを感じ彼を問いただすことにした。

 

「そうですね・・・自分の趣味や好みがどんなものだったのか(・・・・・・・・)解りませんからね。」

「その発言は変。どういう意味か説明をこう。」

「実は俺、融合事変前の記憶が無いんですよ。おまけに次元難民だからどの世界で生きてたのかすら調べようがなくて・・・。」

 

アハハと笑って平静を装っているがその表情は暗かった。隊長を困らせないようなるべく明るく振る舞いながら事実を明かしたが今でも自分が何者だったのか不安で仕方ないのだ。今の一颯にはいろんな物事に執着がなくなにかをやりたいという意欲もない。そんな空っぽな自分でもなにか出来ることが無いかと考えた結果、次元難民の徴兵制度を利用し軍に入った。

だが彼は未だ何も成せていない。なにもない自分の気を紛らわす術すら浮かばずこうして基地を見回りなにかを得ようと奔走するのが彼の限界なのだ。

そんな彼をを見て折紙は目を閉じ、ギターの弦を弾きながら彼に語り掛ける。

 

「無理をしてなにかを得ようとする必要はない。そういうのはいつの間にか宿っている物だから。」

「そういうもの・・・ですか?」

「ここまで歩き回ってなにか得られた?失った物ばかり目がいくから大事なことを見失う、なにかを得たいならこれからの事に目を向けるべき。」

「これからのこと?」

「歯ギターよ。」

「アノスイマセン、感動的な雰囲気が出来そうなとこで無理やり歯ギター吹き込むのやめてもらえませんか!?」

「・・・・・・・・・・・・・・はぁ。冗談よ」

「せめて本音と建て前を逆にしましょうよ!!なんでそんなに歯ギターに固執するんですかッ!?」

「フフ、すこしは表情が明るくなったね。」

「え?あ・・・」

 

微笑みながら折紙は鏡を取り出しそれを一颯にむけた。鏡に映る自分の顔には焦りと不安の影はなくほのかに口角が上がって微笑ましい表情をしていた。

 

「君の戦いは始まったばかり、やるべきことも趣味もこれから見つけていけばいい。私達、遊撃一番隊と共に。」

「ッ!!はいッ!!」

 

折紙の言葉に感動した一颯は姿勢を正し綺麗な敬礼をするのだった。

 

ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ―――――――――

 

突如として鳴り響くノイズ警報。それにしたがい基地中が慌ただしくなる。

そして折紙たち一番隊のインカムに司令部より通信が入る。

 

『遊撃一番隊より報告!ブラスト小隊が担当する防衛エリアでノイズの反応を多数確認!直ちに現場に急行してください!!』

「「『了解ッ!!』」」

 

出撃要請を受け折紙たちは私物をその場に置き、格納庫へかけっていく。

格納庫には既に簪とウィル博士が到着しており、クアッドリガとリコリスに繋いでいるケーブル類を外す作業を行っていた。

遅れて燎子も格納庫に入り出撃準備を行い始めた。

 

「ブラスト小隊の担当エリアって此処からだと目と鼻の距離ですよね?」

 

鎧を纏うイメージを描き、意識を集中してなんとかセブンスライトを纏った一颯が折紙に問いかける。

 

「といっても各エリアの中で最大級の範囲を占めてる。防衛範囲が広い程被害も大きくなる。」

「あそこは住宅密集地と工場施設があるからノイズの出現率が比較的に多いのよ!」

 

準備を終えワイヤリングスーツを着た燎子がクアッドリガに搭乗し起動作業に移りながら一颯に伝える。

 

「マズいじゃないですか!?今ブラスト小隊はこの第三基地にもどってるんですよ!!」

「だからこそ早急な対応が必要・・・乗って。」

 

リコリスを装着し終えた折紙はクアッドリガの真上に飛行しリコリスの下部に備え付けられているプラグと固定具を同じくクアッドリガの上部装甲にある接続用のパーツに繋げた。

接続が完了し、飛行能力のないクアッドリガを輸送する準備が完了した折紙は一颯をリコリスのミサイルコンテナの間に乗るよう指示をする。

 

「あぁ、そんなに急がなくてもいいよ?」

 

一颯がセブンスライトのスラスターを吹かしリコリスの上に乗った時ウィル博士が待ったをかけた。

 

「博士どいて。急がなければ市民に多くの被害が出る。」

「だから急がなくていいんだってば!ビスレストさえあれば何処へだってひとっ飛びなんだから。」

「・・・どういうこと?」

 

今にも飛び出しそうな剣幕だったが、ひとっ飛びなどという博士の言葉にを訝しみながらも折紙は耳をかたむける。

 

「それを今から説明するからよ~く聞くんッ!?」

 

だが余裕綽々な態度で弁論をしようと思っていた博士は突如ノイズが出現したと言われている方角を向き驚いたような顔をした。

 

「・・・博士?」

 

なんの反応も示さず硬直したままの博士を心配した簪が近寄る。彼女の呼びかけに気付きなにかを悟ったように不敵な笑みで一颯たちに向き直る。

 

「ん~~~~どうやら気を付けた方がいいよぉ。ノイズの数が普段より多そうだ。出るかもしてないね、彼等の存在を察知した天使たちが。」

「「「「ッ!!??」」」」

 

【天使】、そのワードを発せられたことで場は一気に凍り付いていった。




パンテーラ「あぁ!せっかく我が愛の理解者に出会えたというのに離れ離れになるとはなんという事だッ!!少年の事を思うと狂おしい程に我が身を蝕んでいく!!」
タクマ「なんでこのコーナーの担当がコイツと一緒なんだ!?どう見ても人選ミスだろッ!!」
パンテーラ「おや~?怒っているのかい?ワタシが美しいばかりに!?」
タクマ「はぁ~(駄目だコイツ、はやく、なんとかしなければ…)」
パンテーラ「フフ、どうやら疲れてるみたいだね?ならばワタシの胸に飛び込むと良い!さぁ来たまえ!ワタシの愛を君にも与えてあげよう!!」
タクマ「うわあぁぁぁぁヤメロ!!それ以上ちかづくなアァァァァァァ!!」


次回「刀を持った変質者と撃槍」

パンテーラ&一颯「「皆も一緒にぃラブ&ピース!!」」
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