ミリムの弟   作:西鍋ヒリカ

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今投稿しないと冗談抜きで半年更新出来なさそうだからした(釈明

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遥か遠き望郷の黄金郷(エルドラド)

整備されていないゴツゴツした道を、荷車を引いて進んで行く。

時折、石か凸凹ある地形のせいで車体が揺れることで、荷物が荷台から溢れ落ちそうになるが、力ずくで揺れを抑えてどうにか事なきを得ている。

いつ物をぶちまけても可笑しくない、なんとも危なっかしい綱渡り。

そんな荷台の様子を横目で見つつ、ハァ…、と溜息を吐く。

なんとも気が抜けない。

 

ーーーとりあえず目指すは西方諸国最大国、ファルムス王国。

 

気合いを入れ、再び歩き出す。

進むは荒れに荒れている獣道。あからさまに車輪がガリガリと音を立て、小石で車体が跳ねるわ、獣畜生どもが襲ってくるわで散々ではあるけれども。

 

 

姉と遭遇するより圧倒的にマシなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで、最終的な目的地について話しておこうと思う。

姉に見つからない場所であることは言うまでもなく、具体的な場所の見当であるが、なるべく辺境であるのが望ましい。というよりは忘れ去られた竜の都から最も遠い場所。魔王の絶対不干渉領域が存在しなくなった以上は、物理的に遠ざかるに限る。

 

その場合、大陸内で一番良いのは不毛の大地であるが、あそこは確かダクリュールなる魔王が治めていたし、悪魔が湧くという噂もある。

いざこざは姉襲来の次に恐るべき事態である。

 

となれば、あとは一択。別大陸に逃げる。

 

つまりは黄金郷エルドラド。

別大陸はここしかないだろうし、少なくとも俺はここしか知らない。

幸いにも旧い知人が居り、頼るとすればエルドラドしかない。

だがしかし、一つ問題があった。

 

ーーーエルドラドには、どう行けば良いのか。

 

そう、本土にあてはあっても、その前に行き方がわからないのだ。

これのせいでエルドラドは今まで選択肢の中に入っていなかったように思われる。

 

エルドラドは自然と資源に恵まれており、食糧難も起き辛く資源を他所から仕入れる必要がない。なので、国交はよく知らないが経済面では自己完結している節がある。だから、余程のことがないとエルドラド行きの船が無いのだ。一から船を造る選択肢もあるが、そんなことしてたら姉に捕捉される。あと素人の作った船とか沈みそうだし、初心者が船の操縦とかそんなの遭難する、とか考えられるし。

 

詰んだ、と正直思った。俺の貧相な想像力ではエルドラドしか思い浮かばかったため、それ以外の場所だとそれこそ不毛の大地くらいしかなく、すわ(悪魔や魔王と格闘してでも)住み着いてやるよぉ!と千年越しのヤケを起こすかと思われた。が、しかし、俺は思いとどまって考えてみた。

 

ーーー分からないなら調べればいいのでは?

 

というわけでユニークスキル閲覧者(ミワタスモノ)を使用。

これは半径千㎞を空からの視点で見ることの出来るスキルで、人一人映るくらいまで注力して見ることができる。がしかし、視覚のみで音も匂いもしないので、読唇術でどうにか聞き取り調査を、そして並行して視認による裏付け調査を行う。結果、西方諸国で実に興味深い事実が判明した。

 

なんと、エルドラドと人身売買を行なっているそうだ。

しかも異世界から召喚された子供を、エルドラドの主である魔王レオンが、だ。

 

裏社会の話とはいえ東の帝国に本拠地を置く巨大な秘密結社がわざわざ西方諸国に拠点を置き、一国の長、しかも魔王が直々に取り引きをしているのだ。きっと両国間も相当深い繋がりがあるに違いない。

 

話によると密かにふつうの商品の流通があるみたいなので、そっちを選ぶが。

 

ということで、まず目指すはファルムス王国。

 

規模一番デカいから、という安易な考えではあるが、想定される到達時間に丁度エルドラドからの船が停泊するそうなので、余分な荷物は売り捌いてから不法渡航する予定だ。金を積んだら正式に乗せてくれないかな。姉さん、情報収集能力皆無だし。そもそも人間に興味無いし。そこから居場所がバレることは無い。そのあたりの心配いらないのはありがたい。余計な心配が減る。

 

そう考えれば足取りは自然と軽やかになる。思わず顔がほころぶ。

俺の安寧の日々はそこにある。目指せ、黄金郷。

 

思いっきり足を踏み出したところで、ガシャン、と不穏な音がした。

後ろを振り返れば、陶器の破片が散らばっていた。

 

ーーーあ、一番高いティーカップ割れた。

 

幸先不安過ぎる。何も無いといいが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……ル………、………、……者、………を再……し、…………………に………………? ………/………》

《………。……………………に……、……………た。》

《………。…………を……………か? ………/………》

《……………………の『………断』………、…………さ…………。》

 

 

《なお、この結果は秘匿されます。》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不気味な像、金でできた机に豪奢な椅子、そして高級な革と綿の使われる紫のソファー。一見すると豪華だが悪趣味とも成金趣味とも捉えられかねない部屋。その一室に座すはジスターヴの王、クレイマン。魔王が一人である。優雅に紅茶を啜りながら、近々破棄されるジュラの森不可侵条約についてと新たに誕生するであろう魔王ーーすなはち、豚頭帝(オーク・ディザスター)について思考を巡らせる。

己が所属する道化連盟の働きによりほぼ確実にジュラの森を支配下に入れる策。他の魔王たちの介入が一番の不安要素であったが、それも数名を一枚噛ませることで可能性としてゼロにまで近づけた。

利権を幾分か獲られるであろうことが痛手ではあるが、豊富な資源の採取、奴隷市場の拡大等々、それでも余りある恩恵を受けることができる。それになにより、

 

「"破壊の暴君"には、そういったことは興味ありませんからね。」

 

破壊の暴君(デストロイ)ミリム・ナーヴァは強者との戦闘以外に惹かれることは珍しい。オーク・ディザスターについても新たな強者(遊び相手)という面にのみ、興味を示していた。利権を獲ること無く、最古参の魔王でありかつて世界を滅ぼしかけたという云われもあるので他の魔王の抑止力としても有効である。なんとも都合の良い話である。

 

「フレイと手を結んで正解でした。」

 

独りごちる。フレイがミリムの説得に当たったことにより、こちらに被害が及ぶまでも無く良い利益を得られるのだ。

 

ーーええ、感謝していますとも。今後とも良い駒として働いて欲しいものです。

 

クレイマンにとって、道化連盟以外の者は使えるか使えないかの駒でしかない。今回フレイは使える駒だった。それ以外に思うことは、無い。

 

ーーミリム、と言えば。

 

ふと、扱い難いと思っていたが意外と扱いやすかった駒、ミリムについて想起することがあった。

 

ーー前々から、ジュラの森の不可侵の条約についてやけに気にしてましたね。

 

食いつき方についてもそうだがヴェルドラのことを持ち出し慰めれば、暫し逡巡した後、引き下がるという出来事が幾度かあった。

当時はあのミリムということもあり多いに焦ったが、何回も続けば自然と慣れる。だが執着に対して不気味なほどあっさり引き下がるものだから妙な引っかかりを覚えたものだ。

 

ーー少し、調べてみましょうか。

 

そんな考えがよぎる。ミリムの弱みかもしれない。暴君の弱みを握れば上手い具合に操れるやもーーーーー

 

ーーいえ、やめておきましょう。

 

それは竜の逆鱗とも考えられる。逆鱗でなくとも、機嫌を損ね要らぬ損害を被るのは正直ごめんだ。慎重に、冷静に、振舞ってこそのクレイマンだ。力の部分はラプラスやティア、フットマンの得意分野で、知略は自分とあのお方の担当である。であるならば失敗は許されない。あのお方と同じでなくとも似通った土俵に立つのであれば。

 

ーー全てはカザリーム様とあのお方のため。

 

計画の成就が最優先である以上は余計なことに気を回してはいられない。

 

ーー私は次の手について考えましょう。

 

オーク・ディザスターの件は実行段階に入った。ならそれはラプラスやゲルミュッドの仕事である。策略は常に先を見据えなければならず、私にできるのは場を整え、確実性を高めるのみ。

 

こうしてクレイマンは思考に沈む。クレイマンは策士だ。蜘蛛の糸のように策を巡らし、絡め取るのがクレイマンの役目だ。

しかし、いつかは糸が切れる日が来る。切られれば、そこに乗る蜘蛛は落ちるのを待つだけ。

 

張られた糸が切れるまで、あと少し。


















好き勝手やった自覚はある。後悔はしているが、反省はしていない。
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