ヤンデレな蜘蛛子を見てみたかったけど誰も書いてなかったので書きました


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衝動書きしたので変なところがあるかもしれませんが、許してください
もっとヤンデレ蜘蛛子を書く人に増えてほしい


ヤンデレ蜘蛛子の神隠し

 

 拝啓父さん母さん×二。俺はこの度転生というものを経験しました。それも魔法とかステータスとかがある世界に。

 ……いややっぱクソだなこの世界。ふざけんなよ邪神D。いつか絶対一泡吹かす……のは蜘蛛子にでも任せるとして、俺は生き延びることに専念しなければ。

 

 そう、俺は前世の段階からこの展開を知っていた。日本のとある高校のとある教室で異世界の勇者と魔王の放った魔法が暴発し、クラスメイトが全員転生することになるというこの展開を。それは偏に俺がこの世界線を「蜘蛛ですが、なにか?」という作品のものだと知っていたからだ。

 テンプレ異世界ファンタジーに見せかけたミスリードと徐々に明かされていく裏設定満載のラノベであるこの作品の世界観は、だいぶハードかつダークなものだ。普通にポンポン人が死ぬし、そうでなくとも軟禁とか死闘とか色々面倒なものに巻き込まれる危険性がある。なんだこれ地獄かね?

 しかもそんな世界で生き残るために信じられるのは、究極的には己の力のみ。しかし俺は自分をあの化け物大戦争についていける人材だとは思っていない。

 

 というわけで俺は考えました。自力じゃどうにもならないのなら、強者に媚を売ればいいじゃない、と。

 

 吸血っ娘のことをそれなりに気にかけ、鬼くんや勇者パーティと交流を深め、邪神と疑似的に恋仲になり、一匹の蜘蛛を庇い世話役を引き受けることで恩を売った。

 前世の出来事なんて精々多少心象を良くする程度の働きしかないが、それでも生存確率を底上げする効果くらいはあるだろう。というかあってくれ頼むから。

 

 そんな風に生存フラグを撒きまくった俺が転生したのは、人族のそれなりの地位の貴族の息子だった。……まあハズレではない、のか?魔物に生まれれば強くなれる可能性が高い、というか強くならないと死ぬ弱肉強食のデスゲーム。一般人の子に生まれればエルフの里に誘拐コース。その辺りを考えれば悪くはない転生先だと言えるだろう。まあシュレインたちと縁ができるのは避けられなさそうだが、それも必要経費だ。

 まずそもそも俺が目指していたルートは二つ。物語にはほぼ関わらないけどさらっと生き延びるモブルートか、強者の庇護の元ひっそりとお荷物にならない程度に働くしたっぱルートのどちらかだ。今の環境のことも考えると魔族側に着くのは難しい。となるとここは前者を狙いつつ蜘蛛子たちが干渉してきたらいい感じに仲間という名の駒にでもしてもらうコースでいくか。

 ……え?同族を裏切ることに対する忌避感?そんなもんねえようるせえよ生存こそが正義正しいのは俺……ってなおふざけは抜きにしても、あっちの方がこの世界的にはマトモなことしてるしね。多分勇者になる予定の元クラスメイトは放っておいても「天の加護」スキルの効果で原作に近い動きをするだろうし、俺がわざわざ彼らに味方する必要はないのだ。

 そりゃ確かに俺は強いよ?吸血っ娘がやらされてた蜘蛛ん(ク○ン)式トレーニングに近いものを、死にたくないっていう一心で幼少期から実行してるからね。多分勇者補正でステータスが上がったシュレイン相手でも勝てると思う。でも所詮はその程度だ。俺は結局この世界のシステム内上位陣にすら届かない雑魚でしかない。だからこそ強者側に着いておく必要があったんですね。

 

 そんなことを考えながら、アナレイト王国の学園に入学すること数ヶ月。先生たちとの最低限の接触だけを終え、俺はモブとしての生を満喫……はしてないけどそれなりに楽しんでいた。だって今の時期は命の危険ほぼないし。懸念点であるユーゴーもシュレインにヘイトを向けさせておけば原作通りに事が進むはずだ。俺がやることといえば適当に手を抜きながら授業に参加することと、裏で死なない程度に死ぬほど痛い修行をするだけ。既に今の段階でも人族勢転生者全員を相手にしても余裕なくらいの戦闘力はあるが、スキルやステータスは鍛えておいて損はない。ヤバいのに襲われても生き延びられる確率が上がるしね。

 

 その事件が起きたのは、そんな風に仮初めの平和を楽しんでいたある日のことだった。

 

 ユーゴーによるシュレインの暗殺未遂事件も無事(?)終わり、そろそろ勇者ユリウスの死も近いか……なんて今後の動きについて考えつつ学園内の廊下を歩いていた俺は、今日も今日とてシュレインたちに絡まれながら日々を過ごしていた。

 

「……聞いてるか?ボタニカ」

「聞いてる聞いてる、ユーゴーの件だろ?まあつっても俺は何も言えないけどな」

「本当にか?何か隠しているんじゃないのか?」

「俺みたいな凡人が何を隠すんだよ、カティア」

「凡人であるように見せかけてるんじゃないかって言ってるんだよ」

「そんなことないって。才能って面じゃお前らの方が数段上だよ」

 

 実際これは事実だ。俺は原作知識を使ったズルをしたからこそ彼らに勝てるだけの力を得たのであって、才だけを見れば確実に劣っている。俺が凡人未満の人間であることは、前々世から変わらないらしい。

 っと、話がそれたな。にしてもなんでこいつら俺にわざわざ絡んでくるんだか……前世では多少仲良くしてたとはいえここまで慕われるようなことをした覚えがないんだが……ん?

 

「……なんだ?」

 

 ほんの瞬きの間に、あいつらの声が消えた。いや、声だけじゃない。姿形もない。俺が立っていた場所さえも変わっている。何より……

 

「危機感知が全く反応してないってのはどういう要件だ?」

 

 危機感知。読んで字の如くスキル保有者に対しての危険を感知してくれるスキルである。明らかに俺個人を狙ったこの状況下で、危険がない方がおかしい。それなのに反応が一ミリたりともないってことは……

 

「システム外の存在……神の御業ってやつか」

 

 音もなくゆっくりとこちらに向かって歩を進める、どこまでいっても「白い」人物が視力が強化された俺の目に映る。随分と大物が来たな。

 

「カミサマがわざわざなんの用だ?」

 

 白織。「蜘蛛ですが、なにか?」の主人公である「私」の最終進化形にして、正真正銘この世界観における「神」である。この時系列だと裏で暗躍しまくってる頃合いのはずだが、そんなやつが何故俺に?

 

「……見つけた」

「っ!問答無用かよ!」

 

 糸が、彼女の身体に勝るとも劣らない純白の糸が、彼女という存在を象徴する無数の蜘蛛の糸が俺に襲いかかってきた。

 

「燃えろ!」

 

 ロナント(変態爺)式の魔法強化法で火力の上がった火炎魔法が、糸を根こそぎ焼き尽くす。……これは効くのか。

 だが油断はできない。というかそれ以前に意図が読めない。なんで白織はわざわざ俺のところに来た?目的はなんだ?それがわからないことには作戦も立てられない。

 

「……」

「またそれかよッ!」

 

 糸波の第二波が迫りくる。火炎魔法の術式を構築しつつ空間魔法を試すが、上手くいかない。まあここ確実にあいつのフィールドだしな。逃走は実質不可能か。

 

「何が目的だよ!」

 

 再び糸を燃やし尽くした俺は叫ぶ。せめて一言二言返事が欲しいんだがね。そんなことを考えていた時だった。

 

「ぁがっ……!?」

 

 体に力が入らない。魔力が上手く回せない。スキルも不調だ。明らかに何かされた。()()()()

 

「後ろ、かよ……!」

 

 幻覚、あるいは分身。どちらかはわからないが嵌められたらしい。感知系統のスキルが軒並み機能していない状態での不意打ち回避は流石にきついか。

 

「俺みたいな凡人に何の用だよ」

「……迎えに来た」

「は?」

 

 それだけを口にすると彼女は布製、いや糸製の首輪らしきものを地面に横たわる俺の首元に近づけた。

 まずい。あれはまずい。外付けのスキルではなく、俺自身の直感が、魂がそう警鐘を鳴らす。あれを着けられたら俺という存在の何かが終わる。そんな確信があった。

 

 体を動かして抵抗しろ。

 

気付けば糸に縛られていた肉体は、指一本たりとも動かせない。

 

 魔法を使って退けろ。

 

それなりに鍛えていた魔法は、構築しようとする同時に霧散させられてしまう。

 

 何か、何か使えるスキルはないのか。

 

高速化する思考が、今打てる手は何もないと囁く。

 

 蜘蛛の巣に捕らわれた獲物のように、もがけばもがくほど雁字搦めになっていく。

 

「捕まえた」

 

 そんな心底愛おしいものに触れるような声を最後に、俺の意識は闇に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 私特性の首輪を取り付けられ、静かに眠り倒れ込む彼を抱き留める。

 ああ、これが彼の温もり。ただの蜘蛛だった前世では味わうことの出来なかった、大好きな人の温かさ。それを感じるだけで胸の奥から喜びと同時に仄暗い感情が溢れ出してくる。

 

 これで彼は私のもの。もう絶対離さない。

 

 それにしても彼は強かったなー。まあ人族にしては、という注釈が付くけども。でも実際私たちみたいな人外を抜けば、転生者内で最強だろう。スキルの質も量も、それらを使いこなすセンスと経験も、全てが他者の数段上を行っている。そんな客観的事実を知っていてもなお、彼は止まろうとしなかった。彼はこの世界の行く末を、「原作」を知っていたから。

 首輪から彼の魂に絡みつく糸が、彼の全てを教えてくれる。彼の苦悩も、努力も、策謀も、全てがわかる。

 

『マジかよ……ここ「蜘蛛ですが、なにか?」の世界線かよ……しかもこのクラスの所属ってことはあっちの世界に転生確定演出じゃん……俺は三回も死にたかねえぞ?どうするどうする……考えろ……どうすれば生き残れる……?』

 

 前々世の記憶からこの世界で起きることし知ってしまい、付き纏う死の恐怖に震えていたことも。

 

『んじゃ自分に向けて魔法を……った!痛すぎだろ!?これを何回もやんの?死ぬだろそれ。……いやでもそうしないと死ぬしな……んじゃもっかいった!切実に痛覚軽減が欲しくなるわ!』

 

 今世では幼少期から痛みを伴う一般人からしたら地獄のような鍛錬を積んでいたことも。

 

『根岸ー、飯でも食おうぜー。……いやんな露骨に引くなよ。俺のことをどういうやつだと思ってんだよ』

『なあ、別に他人に対して悪印象を抱くことを否定するわけじゃねえけどよ。人を見た目だけで判断した挙げ句、それを本人に聞こえるようにわざわざ口にするのはどうなんだよ』

『「ありがとう」?……いや、気にすんな。こっちの都合で勝手にやってるだけだしな。いやほんとに打算しかないからそれで感謝されてもな……

 

 前世の吸血っ娘の孤独に寄り添ってあげていたことも。

 

『笹島ー、なんか暗い顔してんじゃん。話くらいなら聞くぞ?』

『別に正義感が強いのは悪いことじゃないだろ。まあ時には周りに合わせることも大事だとは思うが……ストレス発散くらいなら手伝うぜ?』

『いやーマジで助かった。お前に戦い方を教えてもらったおかげでD……じゃなくて若葉を守るのに役立ったわ。まあ狙われてたの主に俺だけど。とにかくほんとに助かった。ありがとな』

 

 前世の鬼くんが抱えていたものを少し軽くしてあげていたことも。

 

『青春高校生ごっこならぬ青春恋愛ごっこでもしようぜ?少しは面白くなるかもだしな』

『ちょっ!?ヤンキーに狙われた彼女を助けるために彼氏が本気出すシチュエーションを俺でやるのは無理が……ああもうやってやるよその方が面白そうだもんなぁ!』

『なんでそこまで振り回されてるのに付き合い続けるのかって?そりゃあ媚を売っておくためだけど。お前にこんな面白そうな存在をみすみす死なせるのは惜しい、って思わせられりゃ及第点だよ』

 

 あのDを相手にご機嫌取りに徹し自らの生存率を上げようと画策していたことも。

 

『こいつをわざわざ殺す必要はねえだろ』

 

 打算まみれの優しさで、見返りだけを求めた見せかけの慈悲で私の命を救ってくれた上に世話までしてくれたことも。全部、全部把握した。

 ……まあ彼が打算ありきで行動していたことに関してはDにネタバレされてたけど。なんなのさあいつ。彼の居場所を教えてくれたことだけは感謝してるけどさ。

 

『彼は結局のところ自分のためにしか行動していないのですよ。まあそれに対してあなたがどう思うかは勝手ですが。それこそ敵意を抱こうが、恋慕を寄せようが……自分のものにしてやりたい、なんて思っても。私はあなたの選択を尊重します』

 

 Dの言葉が脳裏をよぎる。なんか誘導された感が否めないけど、だとしても私のやることは変わらない。

 彼は私のものだ。吸血っ娘にも鬼くんにも山田君たちにも、それこそDにだって渡さない。

 彼が助けてほしいと望むなら、生き延びたいと願うなら、私がその願望を叶えてあげる。その羽根を毟って、その心を奪って、永遠に出られない檻の中で、死ぬまで飼ってあげる。

 

「……大好きだよ。だから、ずっと一緒にいてね?」

 

 私の白い糸に包まれて眠り姫のような姿になった彼の頬に、そっと唇を落とす。

 目が覚めたらどんな顔を見せてくれるだろうか。さっき見せてくれた敵意剥き出しのカッコいい顔もいいけど、どうせなら私にメロメロになって蕩けた顔も見てみたい。まあそこはじっくりやればいいか。いくらでも時間はあるんだし。

 

 だってもう、彼は「私」のものだから。

 

 




「彼」
原作知識を元に全方位に媚を売りまくって生存率を上げようとした結果、病んだ蜘蛛に捕まった愚か者
幼い頃から原作知識を元に鍛え上げてきた実力は純粋な人間の転生者内(勇者化シュン含む)の中ならぶっちぎりで最強だが、人外組には一歩足りない程度の戦闘力でしかない


「私」
病みに病んだ蜘蛛の神
この後彼を自分のものにするために色々する




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