ウルトラマンアバドン【完結】   作:りゅーど

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即斬怪獣 ヴィラール
登場


日常編
破壊者舞い降りし日


 これは、なんだ? 

 これは、記憶。

 俺の、忌々しい記憶。

 あの時、俺は……。

 ──行かないでくれ、兄さん! 

 ──やめろ! やめろぉおおお!!! 

「うわぁぁぁあ……ッ!?」

 アバドンは目を覚ました。見渡す限りのエメラルドグリーン、目に悪いほど眩しき光。ここはM78星雲、光の国。

「……夢かい。そらそうだわさ……」

 軽く自分の顎に掌底でパンチ。

 目を覚ますアバドン。

 今日も今日とてプラズマスパークタワーは能天気に輝いており、同僚達も飛び回っている。

「あーあ、めんどくせえ」

 アバドンは悪態をつきながら、宇宙警備隊の本部へと向かった。

 

 本部へ行く理由だが、それはウルトラの父──本名を『ウルトラマンケン』という──からの勅命が原因である。

 

 エメラルドグリーンの眩しい、菱形を集めたかのような姿をしている建物が俺の視界に入る。この建物こそが、宇宙警備隊の本部だ。

 アバドンは、大隊長室に入った。

「おお、来たか」

「はいはい、来てやったよ」

 一対のウルトラホーンがあり、鍛え抜かれた肉体は美しく、どっぷりと髭を蓄えたこのウルトラマンこそが、宇宙警備隊大隊長のウルトラマンケン……『ウルトラの父』である。

「貴様、大隊長に何たる無礼を───」

 口の悪いアバドンに、ウルトラの父の秘書の「ウルトラウーマンセリク」が食ってかかってきた。

「セリク、口を慎みなさい。これは彼の性分だ、諦めたまえ」

 アバドンは、そういう扱いか、と軽くイラついた。

「で、ケン。アンタ、何用で俺みてーな落ちこぼれを呼んだんだ?」

「あぁ、その件なんだが、お前には地球に行ってもらう」

「はいはい、地球ね……ん? オッサン、今何つった?」

「地球だ」

 なお、別時空の地球である。

「……俺みてーな落ちこぼれに、地球に行けと?????」

 アバドンは本気で驚いた。なぜ、俺に地球へ向かえと? と疑問に思った。

 アバドンは、ウルトラの父に質問した。

 なぜ向かわせる? という問いには、地球がピンチだから、と返され、そもそも行く意味は? と聞くとはぐらかされる。

「俺は辞退する……」

「悪いが、これは確定事項なんだ……今の地球を救えるのは、君しかいない。それと、地球に行く際はくれぐれも気をつけたまえ」

「……ちっ。わぁったよ、行きゃいいんだろ!」

「……すまない」

「はいはい、行ってきますよ」

 気乗りはしないが、向かうしかあるまい。そう思いつつ、アバドンは出口に向かおうとした。その時である。

「あぁ、それとだ」

 アバドンは、ウルトラの父に呼び止められた。

「……なんだよ」

「いや何、これを渡しておきたくてな」

 ウルトラの父は、アバドンの手に、()()()()()()()()()手のひらサイズの箱を渡してきた。

「なんやこれ」

「とある惑星の小石を、これで集めてから地球に向かうんだ」

「……サンキュ」

 踵を返してアバドンは外に出る。

「アバドン」

「……なんだ?」

「地球を、我々の第二のふるさとを護ってくれ」

「……分かってる。やるしかねーなら俺がやる。てめぇは黙って精々威張ってろ」

 アバドンは、話もそこそこに地球へと向かった。

 

 地球に行く前に、とある惑星の小石を大量に集めていたのは言うまでもないが。

 

 20XX年、地球では怪獣被害が勃発していた。

 朝鮮半島は完全に怪獣の巣窟となり、ロシア、中国も大幅に弱体化。アメリカ、オーストラリア、そして日本が怪獣被害をなんとか抑えている。

 特に日本は群を抜いており、自衛隊の他に防衛チームが造られ、今や日本は期待の星だ。

 日本の首都、東京。

「ヴァァアルァァアアアアアア!!!」

 今日も、怪獣が現れた。

 その手は鎌になっていた。ギラリと黒光りしていて、血がぽたぽたと滴り落ちている。右の鎌の先端には、ベムスターの生首が刺さっていた。おそらくは、宇宙からやってくる際に殺したのだろう。

 三日月のような角が頭から生えている。鼻先にも、大きな一本角。鎧を想起させる紫色の毒々しい外皮が恐怖を覚えさせた。

 太く長いしっぽが、ビルを薙ぐ。

 この怪獣の名はヴィラール。即斬怪獣ヴィラールである。

 

【挿絵表示】

 

「ヴァァアルァァァァァァァァ!!!」

 瓦礫の山を作っていく。そのヴィラールの顔に、鉛玉がぶち込まれる。

「いよぉっし! 命中!」

「バルカン砲! てぇーっ!!!」

 飛行機から鉛玉が撃たれていた。

 被弾する度に外皮がヘコむ。だが、それだけだ。

 ヴィラールは効いていないように、いや効いていないからこそ闊歩する。

 ジリ貧か、と思った瞬間、ある隊員が新兵器のスイッチを押した。

 その名も「ライトン60爆弾」。ライトン60爆弾を喰らったヴィラールは、ダメージを大きく受けたのか、直ぐに撤退した。

 

 それから1時間ほどして、アバドンが降り立った。アバドンは人間に化けた。右眼を長い黒髪で隠し、タンクトップに赤いパーカー、それに極真空手の道着を想起させる長めで裾のぶかぶかなズボンを着用している。

 アバドンは、少し考えて、人間体の名前を「諸星慎太郎」にした。後輩のウルトラ戦士たちの人間体から掠めとった。具体的には、モロボシはウルトラセブン(モロボシ・ダン)から、モロボシ、シンはウルトラマンゼロ(モロボシ・シン)から、シンは初代ウルトラマン(ハヤタ・シン)とウルトラマンダイナ(アスカ・シン)から、そしてタロウはウルトラマンタロウ(実際の名前もそうだが、下の光太郎から抜粋)から取られているのだ。

 慎太郎は、ゆっくりと歩みを進めた。幸い、あのジャラジャラした石はある。数個取ったのだ。また、あの箱も見られない所にあるようで、暫くはこの石を売っぱらって食い繋ごうと思っていた。

 

 買取店で、慎太郎はその綺麗な赤い石を見せた。ルビーだ。

 店主は、しばらく観察した後、少し席を外した。

 はて、と慎太郎は疑問に思った。これは無価値なのか? と不安になった。

 店主は、すぐに戻ってきた。

 開口早々、彼は「あんた、凄いものを持ってるじゃないか」と慎太郎の肩を叩いた。慎太郎はムッとして、その手を払い除けた。

「値段は?」

「聞いて驚くなよ、こいつぁ3カラットのルビーだろ……」

「勿体ぶるな」

「ざっと、40万円くらいだな」

「よっ……」

 慎太郎は絶句した。一日だけで40万円を稼いだのだ、無理もなかろう。

 慎太郎は、その日の内に換金を済ませ、40万円を財布に突っ込んで街をうろつくことにした。

 

 ウロウロすること数時間、正午。

「やばい。これが人間の体か。腹が……減ってきた……」

 あまりの空腹に、慎太郎は歩をとめた。ふと横を見ると、ドアの隙間から美味しそうな香りを放つ食堂が。

 よし、ここにしよう、と慎太郎は意を決して入った。

 からからから、と小さな音を立てて扉が開く。

 色々な人がいる。土方や学生、サラリーマンやOLなど、様々な人でひしめき合い、そして皆幸せそうに飯を頬張っている。

 慎太郎は、店員に言われるままに空席に座った。

 慎太郎は、箸の使い方こそ知ってはいたが、食事については全く興味関心がなかった。そのため、何があるかを知りたかったのだ。

 彼は、何も知らない状態で780円のソースカツ丼(大)を注文した。

 隣に座っていた女性は、「食べれるの?」という顔をしたが、慎太郎は気づかなかった。

 しばらく待つと、ソースカツ丼が出てきた。

 慎太郎は驚いた。大きめの器には飯が詰められ、そしてその上に何切れもの……下手をしたら十切れを超えるトンカツが乗っかっていたのだ。

 だが、慎太郎の胃は好奇心とともに摂取したがっている。慎太郎は、胃袋の声に従い、トンカツをひと口食べた。

 慎太郎の目が開かれる。

 纏った衣は歯触りが良く、衣に覆われた柔らかい肉はひと噛みするだけでいとも簡単に解け、口の中で溢れ出る肉汁はソースと交わりえも言われぬ美味さを醸し出す。慎太郎はすかさず、米と共に食した。米特有の甘みが、カリカリの衣と濃いめのソースと肉本来の旨味と交わり合い、まるで美味しさのカルテットを上演しているかのようだ。

 勢い付いた慎太郎は、どんどんソースカツ丼を胃袋に収めていく。慎太郎の好物にソースカツ丼が入った。

 うまい、これ程うまいものがあったとは。慎太郎は未知との遭遇に心を躍らせていた。

 左の目をキラキラと輝かせながら、一心不乱にカツ丼を掻き込む慎太郎を見て、思わず「よく食べるねぇ」と呟いた者がいた。

 慎太郎は食べ終わると、即座に会計を済ませた。

 慎太郎の食べた器には、米粒のひとつも残っていなかった。

 

 さて、慎太郎は満腹の状態で街を歩いていた。皆談笑しつつ歩いている。今朝のヴィラールの襲撃は自衛隊と防衛隊が守った。今度も守るはず、という根拠の無い安心感の中。そんな中、慎太郎は僅かな振動をキャッチした。

 先程、地球に来る際にちらと見かけた怪獣、ヴィラールのそれと同一の振動波である。

 慎太郎は真っ先に身構えた。

 案の定、地下から登場するヴィラール。今度はグドンの肉を食いながらの登場だ。

 民衆は一目散に逃げ出した。そんな中、ある少女は動けなかった。

 足がすくみ、一歩も動けない。慎太郎は、その少女を背負って走り出す。

「っえ、え?!」

「早く逃げろって、の!」

 慎太郎が走り、ヴィラールを撒く。その内に、少女の足の震えは止まり、走れるようにはなったらしい。

「あ、あの……ありがとうございます! 名前は?」

「……諸星慎太郎。じゃな」

 このとき、慎太郎は気付いていなかった。

 

 自分がなんだかんだで地球を守ることに。

 

 慎太郎は、ヴィラールのもとに駆けた。

 そして土煙を上げてストップし、舌なめずりをした。

 右手に光の力を集め、ベータカプセルに酷似したペンを作り出す。

 空に向かって、大きく掲げると、慎太郎は叫んだ。

「アバドンッッ!!」

 眩い光が慎太郎を包み、慎太郎は人間というヴェールを脱ぐ。

 光とともに巨大化し、彼はウルトラマンアバドンへと変身した! 

 

「ジュワッ!」

「ヴァァァアルァァァアアアア!!」

 ヴィラールと睨み合うウルトラマンアバドン。

 先手を取ったのはアバドンだった。

 アバドンは、ヴィラールの腹を殴った。衝撃波で、近くで起きた火事が鎮火される。

 ヴィラールは、アバドンの胸部を斬ろうとした。しかし、アバドンはとてつもなく鍛えた男だ。全くの無傷で、そこに立っている。

「ジュッ!」

 左ストレートがヴィラールの腹部に突き刺さる。さらに回し蹴り。何処か極真空手の動きにも似ている。

 バックステップをして避ける。バク転、ならびに側転は、アバドンは出来ない。何度やってもダメなのだ。だからこそ、ステップを多く使って戦う。そこに華麗さなどはなく、ただただ泥臭く戦う……まさに空手道。

 だがヴィラールも負けてはいない。ドロップキック一閃、アバドンの巨体が大きく吹き飛んで、ビルの瓦礫の下敷きになる。

「ぐあっ!!」

 ヴィラールは、大きな咆哮を上げ、アバドンの背中を幾度となく踏みつける。痛みが走り、鈍い音が鳴る。

 そんな中、アバドンは

 

 今にもブチギレる寸前であった。

 

 そしてヴィラールが背中辺りに刃物をぶつけた時、

 

 プチン─

 

 アバドンの

 

 堪忍袋の

 

 緒が切れた。

 

「でゅぁぁあ!!!」

 アバドンは立ち上がり、膝蹴りを────一発、二発、三発。右のミドルキックをしてまた膝蹴りを────一発、二発、三発。下突きを一発、二発、三発。さらに追い討ちの膝蹴り。腹部目がけて頭突きをしてから、アバドンはとんでもない行動に出る。

 ぐしゃ、と厭な音がなり、ヴィラールの目玉を指で抉った。視神経が僅かに指に付着し、銀色の手が血で染まる。指に付着した血がボタボタと垂れる。

 もういっちょ、と言わんばかりにもう片方の目玉を抉る。これでもう、視界は奪えた。

 アバドンは、手に赤黒い、丸い光の刃を形成した。

「アバドニックチャクラム」

 小声で呟いて、何発も放つ。真っ直ぐに飛び、腕を裂く。鎌がゴリゴリと削れていく。鎌が斬られ、血がボタボタと流れ落ちる。

 さらにアバドンはウルトラ念力を使い、ヴィラールの内蔵を一部破裂させた。もう瀕死なヴィラール。

 アバドンは一歩ひくと、両腕をクロスさせたあと、その腕を空に掲げ、両拳を胸の横に付ける。そして力を溜め、その腕を十字に組むと赤黒い光線が放たれた! 

「アバディウム光線!!」

 グチャグチャと肉片が飛び散り、ドリルのように腹を穿つ。

 まるでその姿はレッキングバーストやゼットシウム光線のようだった。

 ヴィラールの口から血が溢れ、光線が腹部を貫通し、そのまま、ヴィラールは息絶えた。

「ジュワッチ!」

 アバドンは空を飛び、消え去った。

 

「っはー……疲れた」

 先程の戦闘で多少なりとも疲れを溜めた彼は、壁に寄りかかった。少しぼうっとしていた彼は、隣に少女がいることにようやく気付いた。

「おわ、誰だお前(素)」

「先程はありがとうございました」

 ぺこりと頭を下げる少女。そんな姿を見て、「人助けは柄じゃないんだよなぁ」と困惑する慎太郎であった。




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