冷凍怪獣 ラゴラス
登場
ガレド星人たちが新たな住居を得て一人になった家で、慎太郎は呟いた。
「捌きてぇ」
慎太郎がポツンと零した言葉であった。
最近は一切料理をしていない。多忙なためだ。まあ実際は、物語の都合というか私がダークサイドを描きたかっただけだったためなのだが。
そんな慎太郎は、家にこもりカワハギを無心で捌いていた。
手馴れた手つきでカワハギを捌く。
「うへぁ、肝がパンッパンじゃねえか」
「身ぃハリ良すぎかよ」
「でーれ捌きやすいげ」
悲しいかな、慎太郎はもはや独り身。独り言が自然と口をついてしまうのが独身男の悲しき習性なのである。
カワハギのあらを味噌汁にし、肝醤油でカワハギの薄造りを食らう。そして合わせるのはなんとビール。
そう、昼間っからビールなのである。ビール腹に無縁なのが腹立たしいことである。太ればいいのに。なお、『諸星慎太郎』はしっかりとハタチを超えているし、なんなら『ウルトラマンアバドン』は143000歳である。でもこれだけは言っておきたい。お酒は20歳になってから。
肝醤油のたっぷりついたカワハギとビール、合わないはずがない。酒が進む、米が進む。ひとりぼっち、最高。
彼は「うおォン、俺はウルトラ火力発電所だ」と思いながらモグモグと食う。
だだっ広いこの家に、今は一人。宝石の保管庫から宝石を取り出して金に変え、それで研究資金を研究班に渡したり自ら使ったり。非番の日は、たいていそんな生活を送っていた。
そんなある日。
CETは警察の手に負えない仕事の依頼と、巨大な魚影を見たという通報を同時に受け出動した。遂に新型機のお披露目だ。
水中を時速180kmで潜行し、最大潜航時間は96時間。最大で13000メートルまで潜水可能で、130457.6
核魚雷とメーサー砲を搭載し、水上と水中を駆ける海原の覇者。
その名も『ダイビングオルカ』。
ダイビングオルカは二隻作られ、一隻目を扶桑、二隻目を山城と名付けられた。
CETはかなりの大世帯のため、チームが決まっている。その得意分野で闘うのだ。
水中戦のエキスパートである『ミズヤレハナ』、陸上戦の達人たちである『オオヤマツミ』、空中戦のスペシャリストである『タケミナカタ』、そしてオールラウンダーの集団である『フツヌシ』。以上の四チームが、戦闘担当のチームだ。勿論物作り特化や整備の天才たちもいるにはいるが。
さて、慎太郎、いやフツヌシのメンバーは山城に搭乗した。ミズヤレハナのメンバーは扶桑である。
「ダイビングオルカ スタンバイ」
「システムオールグリーン」
「ダイビングオルカ サリーゴー」
海底2000メートル。紛うことなき海の底だ。
そこに怪獣がいた。見れば、近くには船の残骸がある。
一同は察した。これが魚影の正体だと。そして一同は理解せざるを得なかった。これが、警察の手に負えない失踪事件の犯人だと。
ボディラインは流線的で、どうやら鱗は一面に覆われているらしい。
首にはエラがあるが、定期的に人類で言う胸部が膨らんだり萎んだりを繰り返している事から肺呼吸の能力も備えているだろう。
尾鰭は非常に進化しており、まるで獣の尾であった。
顔面は鮭の成魚のように口吻が湾曲している。その口腔内には小さな歯が何本も生えていた。その眼球は暗く透き通り、頭部全体の形状も鮭の頭部に酷似している。
「あッ」
ミズヤレハナのリーダー、伊東カナが小さく叫んだ。
「あの怪獣は知ってるよ! 巨大魚怪獣 チルカームだ!」
チルカームは魚雷攻撃を受け急速浮上した。
「くそ、どうすれば」
慎太郎がそう思った矢先、ネットが広がった。
カナが行ったそのネット捕縛で、チルカームは動きを止める。
その刹那、紗和が動いた。
「ラゴラス! やっちゃえ!」
『バトルナイザー モンスロード』
ラゴラスが海底からぶち上がり、チルカームを凍結させる。浮力を得たチルカームは水面に急浮上。ラゴラスとCETも追いかけた。
海面で氷をぶち破ったチルカームは、まるで飛んでいるかのように地上をめざし跳ねた。
CETはダイビングオルカで、ラゴラスは海面を僅かに凍らせてその上を滑りつつ向かった。
無人島にチルカームは降り立った。ラゴラスはチルカームの前に立ち、ダイビングオルカも海面に浮上した。
ラゴラスの蹴りとチルカームの蹴りが交錯する。僅かにチルカームの方が遅く、ラゴラスの一撃はチルカームにダメージを与えた。
ラゴラスの放つマイナス240度の冷凍光線は、チルカームの腕を壊死させた。
チルカームの咆哮が響き渡る。その刹那、チルカームはウォーターカッターを放射した。
ダイビングオルカはメーサー砲でチルカームに攻撃をする。チルカームが怯んだが、しかしそこは意地で持ち直す。
そして、ウォーターカッターを放った。
ラゴラスは、その身代わりになった。
ラゴラスに大きな痛手が走る。
「見てられねぇ」
そういうと慎太郎は、ウルトラマンアバドンに変身した。
「おいラピス嬢、俺が手を貸してやるよ」
一方松本は、空を見上げた。何だか嫌な予感がする、そう呟くと松本はベルトを起動し、ウルトラマンヴェラムへと変身。
地球の近くに現れた怪獣達から地球を守るため、大気圏外での戦闘を開始する。
「よぉし、ウルトラファイトといこうじゃねえか!」
そう宣言したヴェラム。地球に来る前、アバドンや他の戦士と共に共闘したダレルの姿が、脳裏によぎった。
さて地球。
海面から超弩級の砲撃をしつつ、アバドンやラゴラスのダメージを回復するサポート係になったダイビングオルカは、その機動力を生かして縦横無尽に海を駆けた。
チルカームが混乱する。その時、アバドンはグンジョウアクアへとフォームチェンジ。数多の砲撃で狙い撃ちだ。
そこにラゴラスの冷凍光線である。
チルカームは少しずつ後退した。
煙が舞う。
「やったか!?」
「この勢いだし、どうせ死んでるわよ」
「あ、おいバカ! それ禁句だっての!」
……古橋と基町が生存フラグを建ててしまったせいで、悲しいかなチルカームは未だピンピンしていた。
アバドンは腕に高圧水流の刀を作り、チルカームに切っ先を向けこう叫んだ。
「てめぇ、捌き散らしてやろうか!」
アバドンの背後に鬼神が見えた。
その瞬間、全員はとんでもない光景を目にすることになる。
チルカームが、
「言ったろ? 捌き散らすって……!」
アバドンは生き生きとしていた。まるで、捌くことが性に合っていると言わんばかりに……
チルカームの首に一太刀。その次に背骨の神経をアバドワイヤを使用して削り取る。いわゆる神経〆である。
三枚におろし、腹骨をすき、その体にラゴラスの冷凍光線が照射される。そうしてチルカームは死んだ。呆気ない最期であった。
その後には、三枚におろされた死体が残ったのみである。
CETはそれらを回収。水圧等への研究に使用するとの事。
一方慎太郎はと言えば……
「はぁーチルカームのルイベうっま」
チルカーム、食べてました。
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