ウルトラマンアバドン【完結】   作:りゅーど

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黒いローブの青年
古代怪鳥バードン
冷凍怪獣ラゴラス
疾風魔人フラカン
古代怪獣ゴモラ
宇宙恐竜ゼットン
暴君怪獣タイラント
寵愛神ブレシス
暗黒怪盗アルセーヌ
イマージュバレバドン
宇宙忍者バルタン星人サコミズ
登場


無謀編
砕け散るラピスラズリ


 紗和はひとり仕事をしていた。

 草木も眠る丑三つ時。頭のいい彼女が珍しく手こずっているようである。

「うーん、終わんないなあ」

 そう彼女が呟きつつ仕事をしていると、背後に気配を感じた。

「っ!!」

 すぐさま銃に手をかけた。

「何者だ!」

「君に名乗る名前などない」

「……なら、敵ということで」

 銃を取り出して銃口を向ける。

「ボクになんの用? 今すぐここから出てけ。さもないとみんなを呼んで捕らえるよ?」

「無駄だよ……絆というまやかしに繋がれた君に私は殺せない」

 その青年は黒いローブを身にまとっている。その黒いローブのフードを深く被った途端、彼の姿がモロボシ・ダンへと変貌した。

 反射的に銃弾を放つ紗和。

 ダンに化けた男は悲しそうな死んだ目で紗和を見ていた。

「私を殺すというのか? ラピス……」

「……父、さん?」

 震えた手で銃を下ろす紗和。ダンは続けた。

「……ラピス。闇はいいぞ」

 また姿が変わる。今度はウルトラマンジョーニアスの人間態であった。

 ヒカリ超一郎ではない、「ジョーニアス」というU40人だ。

「ジョーニアス……さん!?」

 しかし二人の共通点は目に光がないこと。病んだかのようなオーラが漂う。

「……絆の由来を知っているかい? ラピス」

「絆の……由来?」

「絆というのはねラピス、それは馬などの家畜を繋ぎ止める鎖なのさ」

「ち……違う! そんなわけない!!」

「悲しい事に本当なのさ。信じられないだろうけれどもね」

 必死に否定しまくる紗和をやんわりと諭すように言うジョーニアス、いやフードの男。

 そう言うとジョーニアスはまた姿を変えた。今度はウルトラマンゼロの人間態、モロボシ・シンである。

「ゼロ……兄さん。に、兄さん……嘘だよね? 絆が……家畜みたいなものじゃないよね? 兄さんなら分かるよね?」

 紗和は、冷や汗をかきながら不安な眼差しで問いかける。

「……まだそんなまやかしに縋り付くか、ラピス」

 そう言うとシンは、冷酷な目で紗和を見た。先程のダンやジョーニアスのように、目に光がない。

「…………に……兄さんがそんなことを言うはずがない!! ……兄さんはそんな死んだ目はしない! 兄さんは……兄さんは……ッ……(ボクが……間違っているの?)」

 震える手でシンに銃口を向けるが、撃つ気はない。

「撃ってみろ。お前との家族の絆はそれまでってことになるがな」

「ッ!!」

 銃をその場に落とす。

「違う……違う……ッ……違う!! 兄さんを打てない! 兄さんはボクの大切な……兄さんだから! 大切な家族だから打てるはずがない! なのに……どうして……どうしてこんなに震えているの?」

「……ラピス。よく聞くんだ」

 そう言うと、僅かに顔が綻んだ。

「ッ……違う……違う……違う……ッ!?」

「絆というものはまやかしであり、この世界に本当の友情や愛情なんてものは無い。代わりができればとって捨てられる」

「違う……違う……! そんなはずは……ない! ボクはそんなの教わったことはない! げ、現に! みんなボクの側にいてくれる! だから……違う!」

 紗和は耳を塞いでしゃがんだ。

「それはお前がレイオニクスだからだ。強力なレイオニクスだから畏れられ、そして祟られぬようにされているというだけだ」

 冷徹に告げるその声に感情などない。

「!! ……レイオニクスの力があるなら……みんな、ボクに優しいの?」

「少なくともお前の取り巻きは、レイオニクスという希少価値に目をつけただけだろう。お前以上のレイオニクスなんてごまんといるというのに」

 彼は続けた。

「もしお前が無能だったら、今頃お前は捨てられていたということに気づかないなんて……」

「……ぐっ……ぐぅ……! ちがっ……違う……ッ……みんなそう思ってボクの側にいる……はずない! そんなの……そんなのあり得ない……! ボクは……確かに最初は独りぼっち……一部の記憶さえ消えてる……それでもみんな……助けてくれた……だから……ぐぅ……! そんな、はず……」

 頭を抱いてもがきだす。それとともに、シンの姿がジョーニアスへと変貌した。

「お前を助けた理由は、ただひとつ。お前にレイオニクスの適性があったからだ」

 冷徹な言葉のナイフが、紗和を襲った。

「──────────ッ! じゃあ……ボクは……みんなに……騙されているってこと? ……ボクの力を利用するために……騙してるの?」

「結局、お前は搾取される。絆というまやかしで騙されているだけだからな」

 冷徹に返すジョーニアス。

「……絆の……せいで? …………ボクが知ってる絆は……間違っているの?」

 ジョーニアスがダンに姿を変えた。

「ラピス、絆という概念自体が間違いなのだよ。地球人に友情を持ったところで、何万年も経てば顔なんて忘れてしまうだろう? それと同じだ」

 その言葉には説得力があった。ウルトラ族は何万年も生きるからである。そして地球を恋しく思う気持ちがある事も。

「……地球人の……顔と……同じ。いつか……忘れられる。絆は……いらない存在ってこと?」

 紗和の雰囲気が変わった。

「絆というまやかしに縋り付くな。信じられるのは己のみだ」

「…………そっか……そうなんだ…………その絆……壊しても怒られない?」

「どうせあってないようなものだ」

 そういうと本来の黒ローブへと戻り、紗和に囁いた。

「思う存分壊したまえ。裏切り者の血を引くものよ」

「…………うん……壊す……みんな、ボクがいらない存在なら……ここ、いらない……全部……ぶっ壊す。絆も、何もかも」

 隠し続けた右目が開眼された。白い部分は黒く、黒目であった部分は血のように赤い。服装も赤黒のパーカーへと変化した。

 紗和は部屋を出てフラフラと歩き回りながら……基地を破壊しはじめた。

 鳴り響くエマージェンシーコール。夜勤中の職員が駆けつけた。

 紗和は手榴弾で職員を虐殺した。

「ひっ、ひぃいい!?」

「うわぁああ!?」

 次々と職員が死んでいく。

「こちらレイ! こちらレイ! 迫水隊長応答して下さい! 迫水隊長、応答して下さい!」

 オペレーターが迫水に連絡をした。

「こちら迫水……なに!? 紗和が暴走しているだと!?」

 迫水は当然走り出した。途中で慎太郎と合流したようだ。

「……みんな……みぃんな……ボクがいらないと思っている。ボクがいらないなら……いらないもの、破壊する。ここも……何もかも……全部全部ぜぇんぶ…………破壊って……こ〜〜んなに、楽しいんだ……」

 紗和は死体の頭を持って外へ出ようとする。

 人前では真顔になるが、一人でいると破壊を楽しむかのように不気味な微笑みを見せている。

「待て!」

 迫水が叫ぶ。その手には注射器が持たれている。

「…………なに? 隊長? ……ボクもう帰るんだけど……」

 死体を投げる。時速はなんとメジャーリーグの投手並のスピードだ。

(イヤ)ァアアアッ」

 慎太郎が回し蹴りで死体をはじき飛ばす。それと同時に迫水は、その注射器を己に刺した。

「…………注射器で……なにをするの? ……ボク、今から遊んでくるんだけど……帰ります」

「ふぅー……ッ! 紗和! いや、ウルトラウーマンラピス!!」

 迫水の体に課せられたリミッターが解除された。

「…………ドーピングみたいなの? 隊長……そんなに弱いっけ?」

 そう言って手榴弾を取り出す紗和に、迫水は言った。

「私は、確かに弱い! だけれども……君を助けることはできるだろう! たとえそれが、ウルトラマンの天敵であろうともッ! ウルトラマンを憎むものでも! 私は君を、助ける義務がある!!」

 そう言うと迫水の身体に光が点る。

 その腕は見慣れたハサミ型になり、その足は尖り始める。顔は蝉ともエビともとれぬ異形へと変わり、聞き慣れた声が聞こえてきた。

「……助ける? 助けるの? ……ボク、みんなに裏切られてるじゃん。嫌われているじゃん……みんな……ボクがいらないんだ。って……あれ? ……バルタン星人? でも、良いや。ボク、もう帰るから……慎太郎。隊長……お疲れ様……」

 手榴弾を投げると、同時に眩しい光が辺りを包む。

 慎太郎は無言で腕を掴んだ。

「! …………離して。痛い……離せよ」

 慎太郎は、軽く怒りながら話した。

「……そうか、そうか。つまり君はそういう奴だったんだな……! 他人の心を簡単に踏みにじれるようなウルトラマンだったんだな! ウルトラウーマンラピス!」

「…………なにが? 帰りたい……帰る……だから離せ」

「仲間じゃなかったのかよ!」

 重たい拳が紗和の頬に入る。

「うっ!?」

 その場に倒れる紗和。

「いっったいなぁも〜〜…………どのみち君も悪魔の弟じゃん。君もいつか……裏切られるよ? 良いの? ボクはね……みんなから嫌われているみたい。ボクの力のために利用して……嫌われているんだ。だからボクの力がいらなければ見捨てるの……だから…………君、世界一、邪魔」

 そういって紗和は、毒液となって消えた。

「畜生ッ!」

 地団駄を踏む慎太郎に、迫水が言った。

「こんなこともあろうかと、フードに分身を忍び込ませておいた」

「…………みんな……明日……好きなだけ……遊ぼう♪ 今は夜だから……今はぐっすりお休み……♪」

 紗和はスマホに向かって話している。怪獣達も紗和に乗り気のようだ。

 

 翌朝、慎太郎は辺りの人を恫喝しながら紗和の情報を集めた。

「殺されたくなけりゃ情報を吐きな(情報を吐けば殺さないとは言ってない)」

「はっ、はい!」

「右目がおかしくなっている女だ。どこにいる」

「あ、あの森へ行きました」

「そうか、すまんな。しかしこれじゃただの時間泥棒だ。謝礼金だ」

 そう言うと情報源の男に現金の2万円を渡したようだ。

 慎太郎は嵐のように街を駆け抜けつつ探した。

 

「…………フフッ……みぃんな……楽しんでくれるかな? 特に、あの2人は……」街がよく見える森の、これまた上の方にいる。煙と何とかは高いところがお好きな模様。

 

 いっぽう、肇は森を探している。その度にフラストレーションを溜めているようだ。

「ああくそ、いっその事この森を燃えカスにしてやろうか!」

 

 それじゃあ……始めようか。みんな……行っておいで♪」

『バトルナイザー モンスロード』

 バトルナイザーから全ての怪獣を出す。好き放題に暴れ出して街を破壊しはじめた。

 

 二人が異変に気づいた。

「クソが! ふざけんなよウルトラのメスガキの分際で!」

「……あああああのアホんだら!!」

「「変身!!」」

 慎太郎と肇が変身した。

「フフッ……♪ 2人が来てくれた♪ ボクを楽しませてね……♪」

 楽しそうに笑った。そして嗤った。なんて滑稽なのだと。

 怪獣達は二人に襲いかかる。どんなに殴られてもビクともしない。

「アルセーヌ! 君がッ! 泣くまでッ! 殴るのをッ! やめないッ! ラピスはッ! どこだッ! 言えッ! 言わねぇと殺すぞッ!」

 アバドンが分身し、恫喝をしながら光の丸太ん棒を以てリンチを始めた。それほど憔悴している事の証左である。

「……ミンチにしちゃえ」

 紗和が指令を下す。するとアルセーヌの力が跳ね上がった。たじろぐアバドン。同時に、ヴェラムはイマージュを使用した。

「イマージュ! 焦土に変えろ!」

 イマージュバレンタインは自爆でラピスの怪獣を襲った。

「イマージュ!」

 イマージュバレバドンが空爆を仕掛ける。その爆風に乗じ、迫水はバルタン星人サコミズへと変貌した。

「なんとかするか……アルセーヌ……ご苦労様……♪」

 アバドンとヴェラムのカラータイマーが突然鳴り出した。

 そう。アルセーヌは暗黒怪盗とも呼ばれている。

 つまり、エネルギーを奪う事も容易い。

「ぐっ……急に力がッ」

「まあ待て。イマージュ!」

【メディアラハン】という回復技が二人を包み、二人のカラータイマーが青になる。

 アバドンはカロリーメイトを食うと、ノワールブラッドレイ・シュトロームで森を焼いた。

「あの回復技も……盗んでくればよかった。……あ」

 火が近づいてくる。

 紗和は、「…………おい……悪魔のウルトラ戦士ども」と呟いた。

 

 いっぽうサコミズは善戦していた。

 ゴモラの尻尾を軽々避けるやいなや、ハサミからバルカン砲を放つ。怯むゴモラに光線が一筋。さらに念力でフラカンの頚椎にダメージを与え、タイラントをガレキで封じ込める。暴走するブレシスの首に傷をつけ流血させたりラゴラスのアキレス腱をハサミで斬り裂いたり、さらにはゼットンを地面にめり込ませたりとサコミズ無双だ。

「フォッフォッフォッフォッフォッ……」

 あの声が、今はどこかかっこよく聞こえた。

 

 いっぽう、アバドンはショウブストロングに変身すると、巨大化したアバドストライカーを召喚。ヴェラムとのニケツで森を駆け抜けた。その際に、ヴェラムが地面にメディアラハンをかけ、土壌回復を図った。

「…………みんなは好きに暴れてて。回復させるときはさせる。だから……全部壊しちゃって♪」

 また怪獣達はサコミズへと暴れ出す。自分は陽気に2人を見ているようだ。紗和は何故か左目から涙を流している。そして、わずかに聞こえてきた……『助けて』と。

「……まてアバドン。今のは」

「……ああ、聞こえたぜヴェラっち」

「なにしてるの? ボクを殺せるんでしょ? 殺してみれば? だって2人とも……ボクが嫌いなんだし、ボクを利用してたんだでしょ? (真顔)」

 真顔で2人に罵倒をし続けるが……左目だけが、哀しそうな瞳になって涙を零している。そして聞こえてくる『ボクが……ボクが悪いんだ。ボ ク は 』という悲しげな声……まだかすかに自我が残っているようだ。

 アバドンはすぐさま闇の香りがする方向へとアバドストライカーを走らせる。丁度ラピスのいる場所へ。

 途中で超広範囲にメディアラハンを振りまき、あとは森の中をウルトラマンふたりがニケツしながら人間サイズで走り抜ける。

「早く来ないかなぁ? 2人のエネルギーを盗んでくれたから……2人のエネルギーをボクのエネルギーに変えて通常より動けるようになるからまだかなぁ〜?」

 呑気に待っている。それでも2人には聞こえる。

『ボクを止めて』

 アバドストライカーは下手なライダーのバイクなんかよりもずうっと速い。その時速はなんと亜音速まで達しているのだ。

「アバドン、そこか!」

「ようやく見つけたぜ、ウルトラのメスガキィッ!」

 イライラしながら紗和に近寄るアバドン。

「……なんで近づく? 悪魔の弟。ねぇ……君は、ボクを止める気?」

 人間サイズのアバドンが、「当たり前だ」と答えた。しかし、紗和の「ヘェー……大切な『兄』を助けられなかったのに……?」という言葉に堪忍袋の緒が切れた。

「……いま俺の兄の事をなんつったぁ!?」

「よせアバドン! ラピスの思う壷だ!」

「ベリアルは……ボクと同じことをしたよね。そのベリアルを止められなかったの……君じゃないか……」

「上等だ」

 そう言うとアバドンは分身し、紗和を捕まえる。

 グンジョウアクアの超能力が、紗和の毒液化能力を強奪したようで、毒液にはなれなくなった。

 先程の意匠返しと言ったところか。

「ッ!? ちょ、離せ!」

「君が泣くまで殴るのをやめない。お前がやった事は全部、俺たちにとっては─────」

「アルセーヌッ!」

 紗和がアルセーヌを再召喚した。

「我は汝、汝は我ッ!」

 肉壁となるアルセーヌ、だがアバドンは、空中に浮きつつ殴り始めた。いくつもの分身がアルセーヌなど意に介さない勢いで殴り始めた。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッア! ただただ無意味ィッ! 御苦労さんでしたァッ!!」

「うげあぉぁあああああああああああああああああああああああああああああッ!」

「……はあ。こうなったのはお前のせいだ。悔い改めろよ、ラピス」

 ヴェラムが呆れたかのように言った。

『痛い……痛い……痛いよ!』

「あぐっ……! ッ……ぐぅ……! ちが、う……違う……ボクは……利用されただけなの!」

『痛いよ……痛いよ……痛いよ、慎太郎……やめて……苦しいよ』

 心の底から苦しがっている紗和。

 しかし夜叉と化したアバドンは聞く耳を持たない。

 アルセーヌが粉砕されたことにも気付かずに、紗和を直に殴り始めた。

「ベリベリベリベリベリベリィッッ! ベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリッ! ベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリッ! УРАААААААААААААААААА(ウラァアアアアアアアアアアアアアアアアア)!!!! ベリベリベリベリベリベリベリベリベェッ! ベリベリベリベリベリベリベリベリッ! ベリィイイイッ!」

 何分も殴り続ける。絶叫が森に響いた。

「これじゃ鬼畜ヒーローじゃねえか! やめろアバドン!」

 ヴェラムが、【アギダイン】を発動。アバドンの肉体を燃やした。

「熱っ!?」

「…………ボクは……黒いアイツに……やられてただけなのに……」

 まだ姿は闇のままだが、攻撃はしてこない。怪獣達はバトルナイザーに戻ったようだ。

 

「反省の色が見えねぇなぁあ!? もっと殴った方がいいんじゃあないかヴェラム!」

「さすがにそれはやりすぎだ! お前だってウルトラマンなんだろうが!」

 到着早々口論を始める二人を一喝するかのごとくバルカン砲を撃つサコミズ。

 一瞬にして冷静になった二人は、静かに紗和を見た。

「……絆はいらないもの。絆は所詮、家畜を繋ぎ止める鎖のような存在。だから……全てを破壊した。絆はどのみちいつか切れる。だからみんなも……いつかボクを見捨てると思って……始めた」

『苦しい……痛い……苦しいよ、慎太郎……ボクは……黒いコートのアイツのせいで』

 紗和の心の声は2人にしか聞こえない。また黒いアイツが来ないうちに元に戻さないと……完全に闇に堕ちる。

「このバカ娘!」

 サコミズはハサミで叩く。

「心配したんだぞ! ウルトラ怪獣を出して街を壊したと思えば、今度は仲間を馬鹿にする。何故こんなことをしでかした! これは隊長命令だ、言え!」

 サコミズが怒鳴る。

 非常に凄みのある声だ。

「……黒いコートのようなものを着たアイツが教えてくれた。それと、兄さんと父さん……ジョーニアスさんが……絆はどのみち切れるもの。絆はいらない。絆は……家畜のようなものだって。だから、ボクはそんな絆はいらない。絆があるからいつかみんなボクを見捨てる。ボクの力を利用するためにみんなボクを頼っている。だから……そんなの嫌だから、全部を破壊した……それだけ」

「この大馬鹿者!」

 サコミズが怒鳴った。

「ッ……! でも……ボクは……元々独りぼっちだ……ボクは最初からいらなかったんだ。だから……ボクがいらないなら……いらないと言ったものを全て破壊するって……いや、破壊しろって……黒いローブを着たヤツが……言った」

 どのみち、紗和は誰かに利用されたということになる。

「黒いローブを身にまとった……誰の事だ?」

 サコミズは紗和に近寄った。

「寄るな!」と紗和は言った。

「……大丈夫だ」そう言うと迫水は人間態になり、武装解除を伝えた。

「や……やだ! また殴るでしょ!? また……またボクを独りにする気でしょ!? 絆なんて……絆、なんて……絆なんていらないんだよ!! アイツが言った! 絆は家畜のようなもの! だから壊そうとした! アイツが教えてくれたから!」

「絆の語源は、確かに家畜を繋ぎ止める鎖だ。だけど、転じて固く繋がったもの。つまり、このCETのメンバーみたいなものだ」

 そう言うと迫水は、紗和を抱き締めた。

「ッ!? ちょ……離せ! 離せよ!」

『隊長……ごめんなさいッ』

 ようやく、迫水にも聞こえたようだ。もちろん2人にも。

「……ごめんな。私の監督不行き届きだった。そして、寂しい思いをさせたな……」

 少しずつ右目が隠れていく。

「……大丈夫だよ、紗和」

 そして、優しげに笑う迫水。

「隊……長…………ごめんなさいッ……ボクは……ボクは……ッ」

 闇が一気に晴れていく。

「何を謝る必要がある。家族じゃないか……」

「────!!! …………迫水……隊長……ッ!」

 右目が隠されて、いつもの紗和に戻った。

「ッ……ッッ……ッ〜〜……」

 涙を流しながら、3人に……昨日のことを報告した。黒いコートみたいな格好をしたヤツと話した……全てを。

「……」

「要注意人物確定だね」

「CETから警察に委託しよう」

 迫水はそう言うと、森を抜け出した。

「……仕事の始まりだ」

 そういった慎太郎の声は、どこか怒りがこもっていた。




コメントなどよろしくお願いします。
ややダークサイドが見えていきますがどうぞよしなに。
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